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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業秘密

平成26(ワ)6372  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成27年10月22日  東京地方裁判所

 本件名刺情報は営業秘密に該当しないと判断されました。
 原告は,本件名刺帳に収納された名刺に記載された情報が原告の営業秘密に当たる旨主張するが,名刺は他人に対して氏名,会社名,所属部署,連絡先等を知らせることを目的として交付されるものであるから,その性質上,これに記載された情報が非公知であると認めることはできない。なお,守秘義務を負うべき状況下で特定の者に対して名刺を手交するような場合には,その記載内容が非公知性を有することもあり得ようが,本件においてそのような事情は見当たらない。 また,本件名刺帳に収納された2639枚の名刺を集合体としてみた場合には非公知性を認める余地があるとしても,本件名刺帳は,上記認定事実によれば,被告Aが入手した名刺を会社別に分類して収納したにとどまるのであって,当該会社と原告の間の取引の有無による区別もなく,取引内容ないし今後の取引見込み等に関する記載もなく,また,古い名刺も含まれ,情報の更新もされていないものと解される(甲16参照)。これに加え,原告においては顧客リストが本件名刺帳とは別途作成されていたというのであるから,原告がその事業活動に有用な顧客に関する営業上の情報として管理していたのは上記顧客リストであったというべきである。そうすると,名刺帳について顧客名簿に類するような有用性を認め得る場合があるとしても,本件名刺帳については,有用性があると認めることはできない。 さらに,上記認定事実によれば,原告においては,従業員又は取締役が業務上入手した名刺の管理や処分につき就業規則等に定めを置いておらず,従業員等に対しこの点に関する指示をすることもなかったというのであるから,上記顧客リストの記載とは別に従業員等が所持する名刺については,その処分を従業員等に委ねていたと認めるのが相当である。本件名刺帳は,上記認定の収納及び管理の状況に照らせば,被告Aが原告から処分を委ねられた名刺を単に自己の営業活動等のために整理していたにすぎないものというべきであり,原告が管理していたとみることはできない。また,原告による管理を認め得るとしても,本件名刺帳が保管された引き出しは施錠されておらず,秘密とする旨の表示もなかったというのであるから,秘密管理性を認めることは困難である。\n

◆判決本文

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平成24(ワ)33981  不正競争  民事訴訟 平成27年2月27日  東京地方裁判所

 長嶋氏関連の取材メモやインタビューに基づく原稿について、著作権侵害は認めましたが、営業秘密については否定されました。
 ここで,「創作的」に表現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表\れたものであれば足りるというべきであるが,文章自体がごく短く又は表現の選択の幅に制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,作者の個性が表\れたものとはいえないから,創作的な表現であるということはできない。\n他方,インタビューを素材としこれを文章としたものであっても,取り上げる素材の選択,配列や具体的な用語の選択,言い回しその他の表現方法に幅があり,かつその選択された具体的表\現が平凡かつありふれた表現ではなく,そこに作者の個性が表\れていたり,作成者の評価,批評等の思想,感情が表現されていれば,創作性のある表\現として著作物に該当するということができる。 以上の観点から検討するに,本件送信原稿1ないし6(甲46の1ないし6)は,Dの付した別紙第一目録記載1ないし6の表題に内容が要約されているとおり,これらはいずれも長嶋氏の生い立ちからプロ野球選手として活躍し,選手としての引退後も読売ジャイアンツの監督として活動した時期について,本件送信原稿8(甲46の8)は「長嶋21世紀の巨人」との表\題に示されるとおり,将来にわたる読売ジャイアンツの展望等について,それぞれインタビューを受けた長嶋氏の返答を素材とし,これを一連の文章としたものである。また,本件送信原稿7(甲46の7)には「長嶋王さん語る」との表題が付されているが,読売ジャイアンツの同僚選手であった王貞治氏が長嶋氏について語っている部分,監督としての両氏についてのほか,王貞治氏自身について天覧試合での出来事やホームラン一般に関してインタ\nビューを受けた際の王貞治氏の返答を素材とし,これを一連の文章としたものである。これらは,前記1(2)で一部認定した公表済みの同旨の文章と対比しても,また文章自体からしても,インタビューに対する応答をそのまま筆記したものではなく,用語の選択,表\現や,文章としてのまとめ方等にそれなりの創意工夫があるものと認められるから,著作物性が認められるというべきである。 また,本件送信原稿12ないし14及び同16(甲46の12なしい14及び同16)については,長嶋氏がメジャーリーグのボンズ選手,柔道家の井上康生氏との対談や,長嶋氏が五輪についてインタビューを受けた内容,長嶋氏が折りにふれ取材記者等に語った内容を文章に表現したものであり,これらについても同様に,前記1(3)で一部認定した公表済みの同旨の文章と対比しても,また文章自体からしても,インタビューに対する応答をそのまま筆記したものではなく,用語の選択,表\現や,文章としてのまとめ方等にそれなりの創意工夫があるものと認められるから,これらについても著作物性が認められるというべきである。 以上によれば,本件送信原稿1ないし8,同12ないし14及び同16については,いずれも著作物性が認められる。
・・・・
不競法2条6項にいう「公然と知られていない」とは,当該情報が刊行物に記載されていない等,保有者の管理下以外では一般に入手することができない状態にあることをいうものと解される。 これを本件についてみると,前記1(2)で認定したとおり,原告は,本件営業秘密とされる内容と同一であるとするDのメモにつき,特段の秘密保持に関する契約等も締結することなく,日本経済新聞社に「私の履歴書」として連載することを予定して提供している。そして,原告が本件営業秘密であると主張する内容の一部につき,これとほぼ同旨の内容が日本経済新聞の「私の履歴書」に連載され,これは「野球は人生そのものだ」として単行本化もされているほか,前記1(3)で認定したとおり,東京読売新聞を含む全国紙の報道により公知となっている内容も存するものである。 そして,原告は,長嶋氏関連原稿は,いずれも原告の営業秘密に該当するものとして記事編集機に保存されたものであるとするところ,前記1(2),(3)で認定したとおり,記事編集機に保存された内容には既に公知となったものも多数含まれていることからすると,記事編集機に保存された内容の全てが非公知であるとは認められないこととなる。 これらを踏まえれば,本件営業秘密のうちの川上氏関連原稿に係る部分に ついても,平成25年10月31日にその一部が新聞記事として公表されるまでの分について非公知であるとの立証がないことに帰するほか,川上氏関連原稿につき,川上氏に対する取材を全く行っていないDにおいて,なぜ本件送信原稿15(甲46の15)の10行の文章を付加することができたのかについても合理的な説明がされていないことからしても,川上氏関連原稿の非公知性については原告による立証がされたものとは認め難い。\n以上の検討によれば,本件営業秘密が不競法2条6項所定の秘密管理性及び有用性を有するか否かはともかく,少なくとも非公知であるとの立証はないというべきである。

◆判決本文

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