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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作物

平成20(ワ)27432 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成12年12月10日 東京地方裁判所

 ウェブページにおける説明について、著作物性が否定されました。
 原告は,本件コンテンツは,ウェブページとして視覚的にも操作性の面でも分かりやすくなるよう「サービスメニュー」ボタンが設けられ,その配置,分類及び表現(「HDD」,「サーバ/RAID」,「デジカメ/フラッシュメモリ」,「FD/MO/CD/DVD」)にも配慮がなされ,タブメニューも設置された上,その構成,分類及び表\現(「ホーム」→「データSOS とは」→「サービスの流れ」→「よくある質問」)にも配慮がなされていると主張するが,原告が本件コンテンツとして特定したウェブページ,すなわち,甲3の1の3枚目から5枚目には,「サービスメニュー」ボタン,及び「HDD」,「サーバ/RAID」,「デジカメ/フラッシュメモリ」,「FD/MO/CD/DVD」との表現は存在しない。仮に,これらが本件コンテンツに含まれるとしても,これらの分類,配置及び表\現は,ごくありふれたものであり,作成者の個性が現れているとはいえないから,これらを著作物と認めることはできない。したがって,この点においても,原告の本件コンテンツに係る著作権侵害の主張は失当というほかない。 ・・・ 原告は,別紙文章対比表の原告文章欄記載の下線部分を一まとまりとした全体的な構\成,記載順序,配列,小見出し等の具体的な表現において,被告文章は原告文章と表\現上の同一性を有しており複製に当たると主張する。確かに,原告文章と被告文章とは,別紙文章対比表のとおり,全体的な構\成,記載の順序,小見出しを有することにおいて共通するといえる。しかし,別紙文章対比表の原告文章欄記載の各下線部分は,当時,広く一般的には知られていなかったデータ復旧サービスについての一般消費者向けの広告用文章として,データ復旧サービスの基本的な内容を説明するものである。このような一般消費者向けの広告用文章においては,広告の対象となる商品やサービスを分かりやすく説明するため,平易で簡潔な表\現を用いることや,各項目ごとに端的な小見出しを付すること,説明の対象となるサービスとはどのようなものか,どのような場合に利用するものなのか,異なる商品やサービスとの相違点は何かをこのような構成,順序で記載することなどは,広告用文章で広く用いられている一般的な表\現手法といえ,原告主張の上記の全体的な表現に作成者の個性が現れているということはできない。\n

◆判決本文

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平成21(ワ)1193  著作権 民事訴訟 平成22年11月18日 東京地方裁判所

 赤ん坊の椅子について、著作物性は否定されましたが、不競法の商品形態に該当するとして請求が認められました。
 著作権法2条1項1号は,著作物を,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定し,同条2項において,「この法律にいう「美術の著作物」には,美術工芸品を含むものとする。」と規定する。これらの規定は,意匠法等の産業財産権制度との関係から,著作権法により美術の著作物として保護されるのは,純粋美術の領域に属するものや美術工芸品であり,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予\定されているもの(いわゆる応用美術)は,それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に限り,著作権法による保護の対象になるという趣旨であると解するのが相当である。本件デザインは,いすのデザインであって,実用品のデザインであることは明らかであり,その外観において純粋美術や美術工芸品と同視し得るような美術性を備えていると認めることはできないから,著作権法による保護の対象とはならないというべきである(なお,原告らは,ベルヌ条約加盟国では応用美術が保護されるから,本件デザインは我が国においても著作権法による保護の対象となる旨主張する。しかしながら,同条約は,応用美術の著作物に関する法令の適用範囲及び保護の条件について各国の法令の定めるところによるとしており(同条約2条7項,我が) 国の著作権法における応用美術の保護の範囲の解釈は上記のとおりであるから,我が国以外のベルヌ条約加盟国中に応用美術を保護の対象とする国があったとしても,本件デザインは我が国の著作権法による保護の対象とはならないというべきである。)。・・・・
 被告は,原告製品の形態のうち,特に,脚板と側面板との角度が約66度であることと,側面板に彫られた多数の溝があることは,技術・機能に由来するものであるから,これらの形態に自他識別力や出所表\示力を認めるのは相当でないと主張する。しかし,そもそも,原告製品が側面部分について側面板と脚板とから成る形態を採用していること自体は,何ら技術・機能に由来するものではなく,子供用のいすの側面部分の構\成としては様々な形態が採用可能であるから(甲12,27参照),原告製品のような形態を採用した結果として,側面板と脚板とが形成する角度を70度前後に設計することが適切となる(乙18)としても,そのことによって,上記形態自体が技術・機能\に由来するものとなるわけではない。また,座板や足のせ板の位置を調節する方法としては,ねじ等の留め具で留めたり,バネで調節したりするなど様々な方法が考えられるのであるから,側面板に多数の溝を設けることが技術・機能に由来するものであるとはいえない。\n

◆判決本文

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平成21(ワ)35164 著作権移転登録請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月03日 東京地方裁判所

 プログラム著作権の帰属が争われました。権利の特定はSOFTICの登録番号でなされていました。権利の特定が容易となるというプログラム登録制度の意義が活用されています。

◆判決本文

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平成22(ネ)10017等 著作権侵害差止等反訴請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年07月14日 知的財産高等裁判所

 神奈川県知事が著者である「破天荒力・・・」について、地裁は著作権侵害を認めましたが、高裁は逆転判断。
 既に説示したとおり,著作権法は,思想又は感情の創作的表現を著作物として保護するものである(著作権法2条1項1号)から,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表\\現上の創作性がない部分は,著作権法による保護が及ばない。すなわち,歴史的事実の発見やそれに基づく推論等のアイデアは,それらの発見やアイデア自体に独自性があっても,著作に当たってそれらを事実又は思想として選択することは,それ自体,著作権による保護の対象とはなり得ない。そのようにして選択された事実又は思想の配列は,それ自体としてひとつの表現を構\\成することがあり得るとしても,以上のとおり,原判決添付別紙対比表2記載の各被控訴人書籍記述部分の事実又は思想の選択及び配列自体には,いずれも表\\現上の格別な工夫があるとまでいうことはできないばかりか,上記各被控訴人書籍記述部分とこれに対応する各控訴人書籍記述部分とでは,事実又は思想の選択及び配列が異なっているのである。したがって,上記各控訴人書籍記述部分は,これに対応する各被控訴人書籍記述部分と単に記述されている事実又は思想が共通するにとどまるから,これについて各被控訴人書籍記述部分の複製又は翻案に当たるものと認めることができないことは明らかである。

◆判決本文

◆1審はこちら・東京地裁平成20(ワ)1586

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平成21(ワ)27691 損害賠償 著作権 民事訴訟 平成22年06月17日 東京地方裁判所 

 出版物の図表の著作物性が争われました。裁判所は、ありふれた選択手法であり、編集著作物としての創作性がないと判断しました。

◆判決本文

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平成22(ネ)10004 著作権侵害確認等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 論文の著作権侵害について、原審は複製翻案権侵害と認定しましたが、知財高裁は該当箇所は創作性無しとしてこれを取り消しました。
 第1論文の当該表記部分は,判断を含めた事実について,ごく普通の構\文を用いた英文で表記したものであって,全体として,個性的な表\現であるということはできず創作性はなく,また表現の本質的な特徴部分も認められないから,第2論文該当箇所は,第1論文該当箇所を複製したものということはできず,また翻案ということもできない。この点について,原告は,「Discussion」には,多数の書き方が存在するから,第1論文の当該表記部分は,創作性を有すると主張する。しかし,ある内容を表\現するに当たり,他の表現の選択が可能\であったとしても,そのことから,当然に,当該表記部分に創作性が生じると解すべきではなく,創作性を有するとするためには,表\現に個性が発揮されていることを要する。第1論文該当箇所は,いずれも,語句の選択,順序,配列を含めて格別の個性の発揮された表現であるということはできないから,原告の主張は理由がない。なお,第2論文は,第1論文と対比すると,表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において共通する部分が存在するが,「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容において相違すること,第2論文は,第1論文の全体記述及び個々の記述を総合勘案しても,第1論文の表現の本質的特徴を感得できるものではない点については,既に述べたとおりである。\n

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成18(ワ)2591平成21年11月27日東京地方裁判所

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平成22(行コ)10001 情報非開示処分取消等請求控訴事件 その他 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 委託者には著作権は譲渡されていないと判断されました。
 一般的に,著作権は,不動産の所有者や預金の権利者が権利発生等についての出捐等によって客観的に判断されるのと異なり,著作物を創作した者に原始的に帰属するものであるから(著作権法2条1項2号,同法17条),ソフトウェアの著作権の帰属は,原則として,それを創作した著作者に帰属するものであって,開発費の負担によって決せられるものではなく,システム開発委託契約に基づき受託会社によって開発されたプログラムの著作権は,原始的には受託会社に帰属するものと解される。また,旧岡三証券とOISとの間の本件委託業務基本契約(甲22)に基づくデータ処理業務は,上記認定の内容からすれば,情報処理委託契約であると解されるところ,情報処理委託契約は,委託者が情報の処理を委託し,受託者がこれを受託し,計算センターが行う様々な情報処理に対し,顧客が対価を支払う約定によって成立する契約であって,著作権の利用許諾契約的要素は含まれないと解される。本件においては,前記認定のとおり,旧岡三証券とOIS間において,昭和55年7月1日に締結された本件委託業務基本契約にも,著作権の利用許諾要素は全く含まれていないが,それは上記の理由によりいわば当然であり,また,証拠(甲61,62,70ないし73)によれば,そのような場合でも,委託者が,受託者に対し,システム開発料として多額の支出をすることは,一般的にあり得ることと認められるから,単に開発したソ\\フトウェアが主に委託者の業務に使用されるものであるとの理由で,委託者がその開発料を支払っていれば,直ちにその開発料に対応して改変された著作物の著作権が委託者に移転されるということにはならないことは明らかである。著作権はあくまで著作物を創作した者に原始的に帰属するものであるから,例えば,日本ユニシスとOISとの間の平成15年10月1日付「アウトソーシング・サービス委託契約書」(乙61)において,その第9条2項に,日本ユニシスが保有するプログラムをOISが改良した場合の改良後のプログラムの著作権法27条及び28条の権利を含む著作権が日本ユニシスに帰属する旨が合意されているように,その譲渡にはその旨の意思表\\示を要することは,他の財産権と異なるものではない。したがって,本件においても,上記のような明示の特約があるか,又はそれと等価値といえるような黙示の合意があるなどの特段の事情がない限り,旧岡三証券が本件ソフトウェアの開発費を負担したという事実があったとしても,そのことをもって,直ちに,その開発費を負担した部分のソ\\フトウェアの著作権が,その都度,委託者である旧岡三証券に移転することはないというべきである。そして,本件全証拠を精査しても,一度原始的にOISに帰属した本件ソフトウェアの著作権が,旧岡三証券がその開発費用を支出した都度,本件譲渡契約前にOISから旧岡三証券に対して黙示的に譲渡されていたことなどの特段の事情を認めるに足りる証拠はない。\n

◆判決本文

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平成20(ワ)32147 損害賠償請求事件 著作権 平成22年02月25日 東京地方裁判所

 図表が編集著作物に該当するかが争われました。裁判所は創作性なしとしました。
 原告は,原告図表は本件調査によって収集したデータないし原告が根拠ある推測をしたデータに基づき作成されたものであり,同データは原告独自の工夫と能\力によってのみ収集し得るものであるから,編集著作物性の判断に当たっては,このような素材の収集に要した労力等も考慮すべきであると主張する。しかしながら,著作権法により編集著作物として保護されるのは,著作権法12条1項に規定するとおり,編集物に具現された素材の選択又は配列における創作性であって,素材それ自体の価値や素材を収集するために費やした労力は,それ自体が著作権法によって保護されるものではない。したがって,仮に,原告が本件調査のために相当の労力を費やし,本件調査によって得られた情報ないし原告において算定した各種の推測値に高い価値を認め得るとしても,そのことをもって原告図表の創作性の根拠とすることはできず,原告の上記主張を採用することはできない。\n

◆判決本文

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平成21(ワ)6411 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年02月25日 大阪地方裁判所

 ぬいぐるみの著作物性について争われました。裁判所は、本質的部分が類似しないとして翻案権侵害を認めませんでした。
 「著作物のどの点に本質的特徴があるかは,当該著作物の著作者の創作的意図をも踏まえながらも,それのみならず,創作の対象となったモデル自体との対比や,同一のモデルを対象とした他の著作物との対比等も参考にしながら,法的保護に値する創作的な特徴を客観的な観点から認定するのが相当である。・・・他方,ぬいぐるみを観賞して愛でるにしろ,触れて遊ぶにしろ,その顔の表情はぬいぐるみの印象を決定づける重要な要素の1つであるところ,原告作品I群では,胴体に比べて頭部が横方向にはみ出しており,正面視の顔の輪郭形状は水平方向に扁平な楕円形である(なお,トムキャットでは,正面から見た場合の頭部の横幅は胴体と同じである。)。また,原告作品I群では,両目の間隔が離れており,鼻が両目を結んだ直線上にあって,目鼻が頭部のやや上部に位置することに加え,前脚と後脚の長さがほぼ同じで,前傾姿勢を取っていないことからすると,原告作品I群をそれぞれ全体としてみれば,見る者に優しく,ほのぼのとした印象を与えるものということができる。したがって,これらの形態は原告作品I群の印象を決定付ける本質的特徴というべきである。なお,原告作品I群の耳は,頂角が鋭角をなす二等辺三角形に近く,頭部から大きく突き出ており,この点も,原告作品I群を特徴づける要素といえる。・・・・そうすると,被告各製品は,原告各作品の本質的特徴を備えているとは認められず,また,前脚を短くした前傾姿勢を取ることによって,原告各作品とは異なり,今にも飛びかかってきそうな子猫の無邪気な印象を与えるものであり,原告作品I群の見る者に優しくほのぼのとした印象や,原告作品II群の上目遣いでのんきな印象とも大きく異なるといえる。そうすると,被告各製品からは,原告作品I群及びII群の本質的特徴を直接感得することはできないというべきであり,被告各製品は,原告各作品を翻案したと認められるほどに類似しているとは認められない。」\n

◆判決本文

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平成20(ワ)32148 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年01月27日 東京地方裁判所 

 編集著作物であることが否定されました。
 原告は,原告各図表が,原告が長年の実績と経験を基に相当の労力を費やして初めて取得することができるデータを,原告が独自の創意工夫を凝らして編集して作成したものであるから,編集著作物に該当すると主張する。しかしながら,原告は,原告が編集著作物と主張する原告各図表\に凝らしたとする「素材の選択又は配列」についての「独自の創意工夫」の具体的な内容について,主張立証するものでなく,前記(1)ないし(9)において認定したとおり,原告各図表と同様の素材を選択し,原告各図表\と同様の配列をした図表は,従前から数多く存在していることが認められる。そうすると,当該データの収集に相当の労力を要したり困難性が認められるか否かはさておくとしても,原告各図表\自体は,いずれもありふれた一般的な素材を選択し,一般的な配列をしたものにすぎないといわざるを得ず,これらが編集著作物であると認めることはできない。したがって,原告の前記主張は,採用することができない。なお,原告は,原告各図表で使用したデータが,収集に相当な労力を伴うものであり,たやすく収集できるものではない旨るる主張するところ,仮に,編集著作物における素材それ自体に価値が認められたり,素材の収集に労力を要するものであったとしても,素材それ自体が著作物として保護されるような場合を除き,それらの素材や労力が著作権法により保護されるものではない。したがって,仮に,原告がデータの収集に相当の労力を費やし,その保有するデータに一定の価値を認め得るものであるとしても,当該データ自体に著作物性が認められるものでない以上,それらの労力やデータが,原告各図表\の編集著作物としての著作物性を根拠付けるものとはなり得ず,原告の前記主張は,失当である。

◆判決本文

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平成20(ワ)1586 著作権侵害差止等請求反訴事件 著作権 民事訴訟

 ノンフィクション書籍について、一部複製が認められました。
 原告書籍のように,歴史的事実を素材として叙述されたノンフィクション作品においては,基礎資料からどのような歴史的事実を取捨選択し,その歴史的事実をどのように評価し,どのような視点から,どのような筋の運び,ストーリー展開,言い回し,語句等を用いて具体的に叙述したかといった点に筆者の個性が現れるものといえるが,著作権法は,思想又は感情の創作的表現を保護するものであり(同法2条1項1号参照),思想,感情又はアイデア,事実又は事件など表\現それ自体でないものや,表現であっても,表\現上の創作性がない部分は保護の対象とするものではないから,ノンフィクション作品においても,叙述された表現のうち,表\現上の創作性を有する部分のみが著作権法の保護の対象となるものであり,素材である歴史的事実そのものや特定の歴史的事実を取捨選択したことそれ自体には著作権法の保護が及ぶものではないものと解される。そして,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により著作物を有形的に再製することをいい(著作権法2条1項15号参照),また,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解されるから(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照),被告書籍記述部分がこれに対応する原告書籍記述部分の複製又は翻案に当たるか否かを判断するに当たっては,被告書籍記述部分において,原告書籍記述部分における創作的表現を再製したかどうか,あるいは,原告書籍記述部分の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要がある。そこで,以下においては,上記のような観点から,別紙対比表1ないし3,仙之助及び正造を主人公とした章全体の各原告書籍記述部分と各被告書籍記述部分を対比し,後者が前者の複製又は翻案に当たるか否かについて順次判断する。・・・・・・・・の記述に引き続いて,孝子は正造と離婚した後スコットランド人実業家と再婚したのに対し,正造は再婚することがなかった事実を指摘し,「正造が結婚したのは,最初から孝子というより富士屋ホテルだったのかもしれない。」と述べている記述である。そして,原告書籍記述部分は,上記のエピソ\ードを経て,婿であった正造が孝子と離婚後も富士屋ホテルにとどまり,生涯再婚することなく,富士屋ホテルの経営に精力を注いだ事実について,「富士屋ホテル」を正造の結婚相手に喩えて,正造が「結婚した」のは「富士屋ホテルだったのかもしれない」と表現した点において,筆者の個性が現れており,創作性が認められる。この点について被告らは,「〜と結婚したようなもの」という表\現は,何かに一心不乱に打ち込む状態を表すありきたりな言い回しにすぎないから,原告書籍記述部分は,原告による個性的表\現とはいえない旨主張する。しかしながら,原告書籍記述部分のように短い文章の表現の創作性の有無を判断するに当たっては,当該記述部分の前後の記述をも踏まえて,当該記述部分がいかなる脈絡の下で,どのような内容を表\現しようとしたものかをも勘案して総合的に判断すべきであり,また,語句や言い回しそのものはよく用いられるものであっても,ある思想又は感情を表現をしようとする場合に多様な具体的表\現が可能な中で,特に当該語句や言い回しを選んで用い,当該語句や言い回しを含む表\現がありふれたものといえない場合には,表現上の創作性を有するというべきである。\n

◆判決本文

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平成18(ワ)2591 著作権侵害確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月27日 東京地方裁判所

 論文について複製権侵害、翻案権侵害が争われました。裁判所は、複製権侵害であると認定しました。
 以上によれば,第1論文は,原告が,被告が作成した原稿について,原稿への書き込み及び口頭により,英語表現の訂正,付加や,記載の順序,内容等について指示をし,その指示を受けた被告が原稿の修文をしたり,新たに作成した文章を書き入れて,完成するに至ったものであって,第1論文は,原告と被告が共同で創作し,原告と被告の寄与を分離して個別的に利用することができないものというべきであるから,第1論文は原告と被告の共同著作物(著作権法2条1項12号)であると認められる。したがって,原告は,第1論文の共同著作者である。・・・・以上によれば,被告は,第1論文に依拠し,第1論文の「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)について,その創作的表\現を有形的に再製して第2論文を作成したものであるから,被告による第2論文の作成は,上記の限度において複製に当たるものと認められる。そして,被告は,第1論文の共同著作者である原告の同意を得ずに,第2論文を作成しているから,被告による第2論文の作成は,原告の第1論文の一部についての複製権の侵害に当たる。・・・・・原告は,第2論文は,第1論文に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,「Results」及び「Conclusion」の章のみを書き替えたものであり,両論文の読者は,その余の部分についての酷似を容易に感得できるから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものである旨主張する。ところで,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。これを本件についてみるに,前記(1)のとおり,第2論文において第1論文の創作的表現が有形的に再製されている部分は,「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)であって,しかも,両論文の「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容が異なり,その表現において類似する箇所は存しないことに照らすならば,上記部分から第1論文全体の表\現上の本質的特徴な特徴を直接感得することができるものではないから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものと認めることはできない。

◆判決本文

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