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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作物

平成25(ネ)10057 著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載料未払請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年12月17日 知的財産高等裁判所

 背景色の中に,白色のグラスを大きく配置した図柄が、著作物ではないとした、一審判断が維持されました。
 控訴人は,本件図柄を一体として鑑賞した場合,本件図柄における文字は,思想,感情を表現するものとして,絵柄に融合しており,絵柄の美術性に含まれているし,本件図柄は,画面いっぱいに,大胆にグラスを描き,構\図的バランスは,ずしりと重量感を与え,色彩感覚豊かで美的に表現され,見る人の心を惹きつけてやまないのであって,ありふれた平凡な絵柄ではなく,美術性と創作性を兼ね備えていると主張する。本件図柄は,あくまでも広告看板用のものであり,実用に供され,あるいは,産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであるところ,応用美術であることから当然に著作物性が否定されるものではないが,応用美術に著作物性を認めるためには,客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性があり,純粋美術と同視し得る程度のものでなければならないと解するのが相当である。かかる観点から見ると,本件図柄のグラスの形状には,通常のワイングラスと比べて足の長さが短いといった特徴も認められるものの,それ以外にグラスとしての個性的な表\現は見出せない。また,ワイナリーの広告としてワイングラス自体が用いられること自体は珍しいものではない上に,図柄が看板の大部分を占めている点も,ワイナリーの広告としてありふれた表現にすぎない。そして,本件図柄を全体的に観察すると,上記ワイングラスの大きさや形状に加えて,控訴人の商号及びワイナリーや工場の見学の勧誘文言が目立つような文字の配置と配色がなされていることが特徴的であるが,これも,一般的な道路看板に用いられているようなありふれた青系統の色と補色に近い黄色ないし白色のコントラストがなされているにとどまる。そうすると,本件図柄には色彩選択の点や文字のアーチ状の配置など控訴人なりの感性に基づく一定の工夫が看取されるとはいえ,見る者にとっては宣伝広告の領域を超えるものではなく,純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを肯定することは困難である。控訴人が著作物性の根拠として強調する点は,宣伝広告の効果を向上させるための工夫とも共通するものであって,必ずしも芸術性を高めるものではなく,また,現代における芸術分野の区分の流動化が認められるとしても,上記に判示した純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを否定した判断を左右するものではない。したがって,本件図柄には著作物性は認められないというべきであり,その帰属について判断する必要もない。\n

◆判決本文

◆原審はこちら平成24年(ワ)第9468号

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平成24(ワ)25843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月18日 東京地方裁判所

 書籍内に記載された表についた、著作物性無しと判断されました。\n
 原告は,本件書籍の著作物性は本件書籍の各表が創作性を有することに基礎付けられている旨主張し,その創作性の具体的な内容として,本件書籍の各表\が,自動車に用いられるプラスチック部品につき最適の選択と配列を行い,その採用プラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されていることを挙げている。しかしながら,原告の上記主張は,本件書籍の各表を作成するに当たってのアイデアの独創性や,本件各表\に記載されている情報そのものの価値を主張するものにすぎず,これらは著作権法による保護の対象となるものではない。したがって,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。さらに,本件書籍の各表の記載内容は別紙対照表\のとおりであって,例えば,その1番目に記載の表には,「表\1.3 バンパーモジュールのプラスチック採用例」との表題の下,モジュールの分類として「バンパーモジュール」が記載され,その「構\成部品」(バンパー,フェーシア等)ごとに,これに使用されている「プラスチック」の種類及びその成形法が列挙されている。そして,証拠(甲1,乙1,4,10の1〜3・5・7・8・10〜12)及び弁論の全趣旨によれば,同表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形法等を当該分類項目に従って整理したものであること,このような事項を整理した表\は本件書籍の発行以前にも多数みられたことが認められ,この点は本件書籍の各表のうち他のものについても同様ということができる。そうすると,本件書籍の各表\は,自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な表の形式に整理したものにすぎないから,その表\現自体は平凡かつありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である。

◆判決本文

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平成24(ワ)16694 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟  平成25年07月19日 東京地方裁判所

 既製服などをコーディネートした衣服及びアクセサリーの選択及び組み合わせ方は、著作物性無しと判断されました。
 著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定しているのであって,当該作品等に思想又は感情が創作的に表\現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものとして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの又は表\現上の創作性がないものについては,著作物に該当せず,同法による保護の対象とはならない。そして,当該作品等が「創作的」に表現されたものであるというためには,厳密な意味での作成者の独創性が表\現として表れていることまでを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表\現として表れていることを要するものであって,表\現が平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえず,「創作的」な表\現ということはできないというべきである。イ また,著作権侵害を主張するためには,当該作品等の全体において上記意味における表現上の創作性があるのみでは足りず,侵害を主張する部分に思想又は感情の創作的表\現があり,当該部分が著作物性を有することが必要となる。本件において,原告らは,本件映像部分の放送により,本件ファッションショーの1)個々のモデルに施された化粧や髪型のスタイリング,2)着用する衣服の選択及び相互のコーディネート,3)装着させるアクセサリーの選択及び相互のコーディネート,4)舞台上の一定の位置で決めるポーズの振り付け,5)舞台上の一定の位置で衣服を脱ぐ動作の振り付け,6)これら化粧,衣服,アクセサリー,ポーズ及び動作のコーディネート,7)モデルの出演順序及び背景に流される映像に係る著作権が侵害された旨主張するものであるから,上記1)〜7)の各要素のうち,本件映像部分に表れているものについて,侵害を主張する趣旨であると解される。したがって,上記1)〜7)の各要素のうち,本件映像部分に表れているものについて,著作物性が認められることが必要となる。\n
ウ 原告らがどのような権利につき侵害を主張する趣旨であるかについては明確ではない点があるが,本件番組の放送により,原告会社の著作権(公衆送信権・著作権法23条1項)及び著作隣接権(放送権・同法92条1項)(いずれも,原告会社が原告Aから譲渡を受けたと主張するもの。)並びに原告Aの著作者及び実演家としての氏名表示権(著作者としての氏名表\示権につき同法19条1項,実演家としての氏名表示権につき同法90条の2第1項)が侵害されたと主張する趣旨であると解される。このうち,公衆送信権侵害が認められるためには,「その著作物について」公衆送信が行われることを要するのであるから(同法23条1項),上記公衆送信は,当該著作物の創作的表\現を感得できる態様で行われていることを要するものと解するのが相当である。そして,当該著作物の創作的表現を感得できない態様で公衆送信が行われている場合には,当該著作物について公衆送信が行われていると評価することができないとともに,「その著作物の公衆への提供若しくは提示」(同法19条1項)がされているものと評価することもできないから,公衆送信権侵害及び著作者としての氏名表\示権の侵害は,いずれも認められないものというべきである。エ 以上を前提に,まず,公衆送信権及び著作者としての氏名表示権の侵害の成否について検討する。\n
(2) 公衆送信権(著作権法23条1項),氏名表示権(同法19条1項)侵\n害の成否

ア 1)個々のモデルに施された化粧や髪型のスタイリングについて
(ア) 本件映像部分の各場面におけるモデルの化粧及び髪型は,別紙映像目録添付の各写真のとおりであり,「Iline1着目」は下ろした髪全体を後ろに流した髪型,「Anna1着目」及び「Anna2着目」は緩やかにカールを付けた髪を下ろした髪型,「Izabella2着目」は耳上の髪をまとめ,耳下の髪にカールを付けて下ろした髪型,「Tamra2着目」は全体に強めにカールを付けて下ろした髪型であり,また,いずれのモデルにも,アイシャドーやアイライン,口紅等を用いて華やかな化粧が施されているものということができる。(イ) しかし,上記化粧及び髪型は,いずれも一般的なものというべきであり,作成者の個性が創作的に表現されているものとは認め難い。また,本件映像部分における各場面は,約2秒ないし9秒間のごく短いものである上,動くモデルを様々な角度から撮影したものであることから,各モデルの顔及び髪型が映る時間は極めて短いものであるということができる。これに加えて,本件映像部分は,暗い室内において,局所的に強い照明を当てながら撮影されたものであるため,本件映像部分から,各モデルの化粧及び髪型の細部を見て取ることは困難であるというべきであり,原告らが主張するような,細部におけるアイラインの引き方やまつ毛の流し方,目元,唇等における微妙な色の工夫等(甲4〜甲7)を看取することはできないものである。そうすると,仮にこれらの点に創作性が認められるとしても,本件映像部分において,上記創作的表\現を感得できる態様で公衆送信が行われているものとは認められない。
(ウ) したがって,これらの点には著作物性がなく,また,仮に著作物性が認められる点があるとしても,これが本件映像部分において公衆送信されているものとは認められない。
・・・
以上によれば,本件ファッションショーのうち,本件映像部分に表れた点に著作物性は認められず,又は本件映像部分において,その創作的表\現を感得できる態様で公衆送信が行われているものと認められないから,本件映像部分を放送することが,原告会社の著作権(公衆送信権・著作権法23条1項)又は原告Aの著作者人格権(氏名表示権・同法19条1項)を侵害するものとは認められない。\n

◆判決本文

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平成24(ワ)25843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月18日 東京地方裁判所

 著作物でないと判断されました。
 著作権法の保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)をいうのであって,表\現の内容とされた思想,感情若しくはアイデアなどそれ自体又は表現ではあっても表\現上の創作性がないものについては,著作権法による保護は及ばない。そして,表現上の創作性があるというためには,作成者の独創性が現れていることを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表\現として現れていることを要するものであって,表現が平凡かつありふれたものである場合は,これに当たらないというべきである。 これを本件についてみると,原告は,本件書籍の著作物性は本件書籍の各表が創作性を有することに基礎付けられている旨主張し,その創作性の具体的な内容として,本件書籍の各表\が,自動車に用いられるプラスチック部品につき最適の選択と配列を行い,その採用プラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されていることを挙げている。 しかしながら,原告の上記主張は,本件書籍の各表を作成するに当たってのアイデアの独創性や,本件各表\に記載されている情報そのものの価値を主張するものにすぎず,これらは著作権法による保護の対象となるものではない。したがって,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。 さらに,本件書籍の各表の記載内容は別紙対照表\のとおりであって,例えば,その1番目に記載の表には,「表\1.3 バンパーモジュールのプラスチック採用例」との表題の下,モジュールの分類として「バンパーモジュール」が記載され,その「構\成部品」(バンパー,フェーシア等)ごとに,これに使用されている「プラスチック」の種類及びその成形法が列挙されている。そして,証拠(甲1,乙1,4,10の1〜3・5・7・8・10〜12)及び弁論の全趣旨によれば,同表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形法等を当該分類項目に従って整理したものであること,このような事項を整理した表\は本件書籍の発行以前にも多数みられたことが認められ,この点は本件書籍の各表のうち他のものについても同様ということができる。そうすると,本件書籍の各表\は,自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な表の形式に整理したものにすぎないから,その表\現自体は平凡かつありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である。

◆判決本文

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平成24(ワ)25843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月18日 東京地方裁判所

 アイデアの独創性や,本件各表に記載されている情報は、著作物ではないと判断されました。
 著作権法の保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)をいうのであって,表\現の内容とされた思想,感情若しくはアイデアなどそれ自体又は表現ではあっても表\現上の創作性がないものについては,著作権法による保護は及ばない。そして,表現上の創作性があるというためには,作成者の独創性が現れていることを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表\現として現れていることを要するものであって,表現が平凡かつありふれたものである場合は,これに当たらないというべきである。 これを本件についてみると,原告は,本件書籍の著作物性は本件書籍の各表\が創作性を有することに基礎付けられている旨主張し,その創作性の具体的な内容として,本件書籍の各表が,自動車に用いられるプラスチック部品につき最適の選択と配列を行い,その採用プラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されていることを挙げている。しかしながら,原告の上記主張は,本件書籍の各表\を作成するに当たってのアイデアの独創性や,本件各表に記載されている情報そのものの価値を主張するものにすぎず,これらは著作権法による保護の対象となるものではない。したがって,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。さらに,本件書籍の各表\の記載内容は別紙対照表のとおりであって,例えば,その1番目に記載の表\には,「表1.3 バンパーモジュールのプラスチック採用例」との表題の下,モジュールの分類として「バンパーモジュール」が記載され,その「構\成部品」(バンパー,フェーシア等)ごとに,これに使用されている「プラスチック」の種類及びその成形法が列挙されている。そして,証拠(甲1,乙1,4,10の1〜3・5・7・8・10〜12)及び弁論の全趣旨によれば,同表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形法等を当該分類項目に従って整理したものであること,このような事項を整理した表\は本件書籍の発行以前にも多数みられたことが認められ,この点は本件書籍の各表のうち他のものについても同様ということができる。そうすると,本件書籍の各表\は,自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な表の形式に整理したものにすぎないから,その表\現自体は平凡かつありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である。

◆判決本文

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平成24(ワ)13494 著作者人格権等侵害行為差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年06月28日 東京地方裁判所

 警告書、苦情申告書、答弁書をブログに掲載されたことが、公衆送信権侵害となるのかが争われました。苦情申\告書、答弁書については著作物性が認められました。ただし、差止のみで、損害賠償請求については認められませんでした。
 (ア) 前記前提事実(2)アのとおり,原告文書1は,原告が,南洋株式会社(通知人)の代理人として,平成23年10月4日,被告Y1に宛てて送付した通知書であり,表題,日付等の記載の後に,通知人の代理人として通知を行う旨及び被告Y1の作成するブログ内に通知人に関し事実に反する内容の記事が掲載されている旨を記載し,上記記事のURLを表\示し,さらに,上記記事の内容が事実に反し通知人の名誉・信用を著しく害し多大な損害が発生しているものである旨,上記記事の削除を求め,削除に応じない場合には仮処分申立てや損害賠償請求等の必要な法的措置をとらざるを得ない旨,以後問合せは通知人本人ではなく通知人代理人にされたい旨を記載したものである。上記原告文書1の本文部分は,上記URLの表\示部分を含めても17行,URLの表示部分を除けば13行からなるものである。
(イ) 原告文書1は,上記のとおり,前提となる事実関係を簡潔に摘示した上で,これに対する法的評価及び請求の内容等を短い表現で記載したものにすぎない。原告文書1の体裁,記載内容,記載順序,文章表\現は,いずれも内容証明郵便による通知書として一般的にみられるものであり,ありふれたものというべきであるから,原告文書1において何らかの思想又は感情が表現されているとしても,上記思想又は感情が創作的に表\現されているものとは認められない。この点,原告は,原告文書1は,用語や言い回しを厳選し,最も適切な表現を慎重に吟味して作成されたものであり,作成者の個性が表\れていると主張するが,原告の主張するような点を原告文書1から表現として感得することはできず,上記主張を採用することはできない。
(ウ) したがって,原告文書1に著作物性は認められない。
イ 原告文書2について
(ア) 前記前提事実(2)イのとおり,原告文書2は,原告が東京行政書士会会長宛てに提出した平成23年10月17日付けの苦情申告書であり,A4版5ページからなる文書である。原告文書2は,表\題,日付等の記載の後に,苦情の趣旨及び苦情の理由を記載し,さらに「第3 最後に」として,「申告者は,…多くの行政書士の方々が本当に真摯に依頼者のために業務に取り組まれていることをよく存じあげております。そのような中で,本件の苦情対象行政書士のごとく,行政書士法違反の非違行為を行う行政書士がごく少数でも存在することは,行政書士全体の社会的信用を貶めるものであり,適正に業務をされておられる大多数の行政書士の方々にも多大な悪影響を及ぼすものであると思います。」などと記載し,東京行政書士会に調査,対応を求める旨と,状況の改善がない場合には対象行政書士の東京都知事に対する懲戒を申\し立てる所存である旨などを記載したものである。
(イ) 原告文書2は,上記のとおり,行政書士会に対する苦情申告書であり,その文書の性質上,当然に記載すべき項目(日付,申\告者等の形式的記載事項や,申告すべき苦情の内容,事実関係の記載,上記事実関係の法的評価,非違行為に該当する考える理由等)を含むものであるということができる。しかし,苦情の内容,事実関係,その法的評価等に関する点については,記載すべき内容が形式的かつ一律に定まるものではなく,これらをどのような順序で,どのような表\現により,どの程度記載するかについては,様々な可能性があるものというべきである。そうすると,原告文書2は,上記のとおり表\現について様々な可能性がある中で,記載の順序や内容,文章表\現を工夫したものということができるのであって,このような点に,作成者の個性の表出がみられるものというべきであり,思想又は感情を創作的に表\現したものに当たるということができる。
(ウ) したがって,原告文書2には著作物性が認められる。 ウ 原告文書3
(ア) 前記前提事実(2)ウのとおり,原告文書3は,被告Y1が東京弁護士会に対し請求した原告の懲戒請求につき,原告が,平成23年11月16日,東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出した答弁書であり,事件番号,表題,日付等の形式的記載事項の表\示の後に,請求の趣旨に対する答弁,懲戒請求に至る経緯及び理由に対する認否,被調査人(原告)の主張を記載したものである。被調査人(原告)の主張においては,同人が作成した「かなめくじ」に関するブログ記事が,請求者(被告Y1)の事務所(「かなめ行政書士事務所」)を指したものではないことなどを示す事情として,「かなめくじ」というキャラクターを制作した経緯(「かなめくじ」とは有機物的な気色悪いキャラクターであり,これを「くそキモキャラ」と呼ぶこと,「かなめくじ」とは,「蚊」と「なめくじ」を合体させたものであること,人に嫌悪感をもよおす生き物のうちから,制作が容易でシンプルなデザインであり,かつ,グッズ化に向きやすい形状・性質のものであって,動作や動きの再現が容易であるなどの条件を満たすものとして,軟体動物をモチーフに選んだ上で,これに蚊の羽を合体させることにしたこと,「蚊」と種々の軟体動物の名称を組み合わせてみた結果,語感の響き等から「かなめくじ」を選ぶに至ったことなど)が詳細に記載されている。
(イ) 原告文書3は,上記のとおり,懲戒請求手続において東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出された答弁書であり,その文書の性質上,当然に記載すべき項目(表題,日付等の形式的記載事項や,懲戒請求理由に対する認否等)を含むものであるということができる。しかし,これらのうち,懲戒請求に至る経緯及び理由に対する認否,被調査人(原告)の主張については,記載すべき内容が形式的かつ一律に定まるものではなく,どのような順序で,どのような表\現により,どの程度記載するかにつき様々な可能性があり得ることは原告文書2と同様であるところ,原告文書3は,これらの点について工夫がみられ,特に被調査人(原告)の主張の内容及び表\現はこの種文書において一般的なものとはいい難いものというべきである。そうすると,原告文書3には,作成者の個性が 表現として表\れているものとみることができる。
(ウ) したがって,原告文書3は思想又は感情を創作的に表現したものに当たり,著作物性が認められる。
(3) 小括
以上のとおり,原告文書1には著作物性が認められないから,原告文書1に係る原告の請求(被告各ブログにおける原告文書1を掲載して使用することの差止請求及び損害賠償請求)については,その余の点について検討するまでもなく理由がない。したがって,原告文書2及び3についてのみ,以下の争点につき検討する。

◆判決本文

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平成24(ワ)9449 不正競争防止法,著作権侵害・損害賠償 不正競争 民事訴訟 平成25年07月02日 東京地方裁判所

 ワインの図柄について創作性無しとして請求棄却されました。不正競争行為(1号)にも該当しないと判断されました。
 著作権法2条1項1号は,著作物について「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定し,同条2項は「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする。」と規定している。これらの規定に加え,著作権法が文化の発展に寄与することを目的とするものであること(同法1条),工業上利用することのできる意匠については所定の要件の下で意匠法による保護を受けることができるとされていることに照らせば,純粋な美術の領域に属しないいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予\定されている図案やひな型などは,鑑賞の対象として絵画,彫刻等の純粋美術と同視し得るといえるような場合を除いては,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。これを本件についてみると,本件図柄は,その外形上明らかに被告のワイナリーの広告等の図柄として作成されたものであり,また,本件各原告看板は,本件図柄を利用して製作された広告看板そのものであって,いずれもいわゆる応用美術の領域に属するものと認められる。そして,本件図柄及び本件各原告看板は,訴求力のある広告効果を持たせるような配色,図柄の形状,字体の選択,各素材の配置等について一定の工夫がされているとはいい得るものの,広告の対象となる被告の名称及び施設の種類を表す文字とグラスの図柄の単純な組合せからなるもので,これらが,社会通念上,鑑賞の対象とされ,純粋美術と同視し得るものであると認めることは困難である。
イ さらに,著作権法上の著作物として保護されるためには「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)であることを要するが,前記著作権法の趣旨に鑑み,ありふれた表\現にすぎないものは,「創作的に表現したもの」には当たらないというべきである。これを本件図柄及び本件各原告看板についてみると,1)ワイナリーの広告看板に「ワイナリー」や「工場見学」という文字,ワイナリーへの方向を示す矢印及び距離,ワイングラスを想起させる図形を表示することは,一般的であると解されること,2)グラスの上及び中に配置した文字のバランスに工夫があるとしても,素材を用いて図柄を作成する上での配置としてありふれたものの域を出ないし,グラスの形状にも,格別の創作性は認められないこと,3)文字のうち「シャトー勝沼」の部分は毛筆体を思わせるやや角張った特徴のある書体であるが,書体の形態は文字の有する情報伝達機能を発揮するため必然的に一定の制約を受けるものであるから,書体に著作物性を認めるためには書体が顕著な特徴を有するといった独創性があることを要するところ,上記文字の書体にそのような独創性があるとは認められないこと,4)広告看板の背景や素材に濃い青色と白色と黄色,あるいはこれらの色と赤色を採用して組み合わせることは,他の看板においても見られるものであって(乙3),ありふれたものにすぎないこと,5)本件図柄及び本件各原告看板を一体として見たとしても,文字と図柄の単純な組合せにすぎず,全体として一つのまとまりのある表現物として創作性を有しているとは認められないことからすれば,著作権法上保護されるに足りる創作性があるということはできないと解される。\n
ウ 以上のとおりであるから,本件図柄及び本件各原告看板は著作権法上の著作物に当たらないと判断することが相当である。

◆判決本文

◆関連事件はこちらです。平成24(ワ)9468

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平成24(ワ)9468 著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載料未払請求事件 著作権 平成25年06月05日 東京地方裁判所

 ワインの図柄について創作性無しとして請求棄却されました。
 本件図柄について,上記意味における創作性の有無について検討するに,本件図柄は,やや紫がかった青色の横長の長方形の中に,縦横の長さがそれぞれその3分の2程度を占める大きさの白色のグラスを配置し,上記グラスのボウル内に,背景色と同色で,「シャトー勝沼」の文字を上下二段に分けて横書きし,さらに,グラス上方に,「シャトー勝沼」よりもやや小さい黄色の丸ゴシック文字で,アーチ状に「ワイナリー/工場見学」の文字を横書きしたものである。ウ 本件図柄は,上記のとおり,背景色の中に,白色のグラスを大きく配置したものであるが,本件図柄が,被告の運営するワイナリー等への案内看板の図柄として制作されたものであること(前記前提事実(2))を考慮すれば,その図柄にグラスの形状を採用することはありふれたものというべきである。また,上記グラスの形状は,通常のワイングラスよりもプレート部分がやや大きく,軸が短いものであるということができるが(乙11),上記形状は,グラスとして通常見られるものの域を出るものではないというべきであって,このような点に,作成者の個性の表出は認められない。また,本件図柄は,上記のとおり,グラスのボウル内に「シャトー勝沼」の文字を上下二段に分けて横書きで配置し,グラスの上方に,アーチ状に「ワイナリー/工場見学」の文字を配置したものであり,これらの文字は,見やすく分かりやすいよう配置され,表\示されているものということができる。しかし,本件図柄の案内看板としての性質上,本件図柄の中に,被告の社名である「シャトー勝沼」の文字や,「ワイナリー/工場見学」の文字を含むことは当然のことであり,これらを見やすく,分かりやすい位置に配置することも,その性質から当然に要求されるものというべきである。また,文字をグラスのボウル内に配置することや,アーチ状に配置することもありふれたものであり,作成者の個性の表出を感じられるものではない。そうすると,上記文字の配置・表\示は,案内看板における文字の配置・表示としてありふれたものというべきであり,創作性は認められない。なお,上記文字のうち,「シャトー勝沼」部分は,文字の太さや端部の形状に変化を持たせた,毛筆体に近い書体で描かれているものであるということができる。しかし,文字は情報伝達という実用的機能\を有することをその本質というべきものであるから,文字の書体に著作物としての保護を与えるべき創作性を認めることは一般的には困難であり,当該書体のデザイン的要素が,見る者に特別な美的感興を呼び起こすに足りる程度の美的創作性を備えているような例外的場合に限り,創作性を認め得るにとどまるものというべきところ,本件図柄における「シャトー勝沼」の文字が,上記程度の美的創作性を有するものとは認められない。また,上記文字のうち,「ワイナリー/工場見学」部分は,丸ゴシック体で描かれているものであり,上記程度の美的創作性を認めることのできないものであることは明らかである。さらに,本件図柄の配色(やや紫がかった青色,白,黄色)については,他の看板にも見られるものであり,ありふれたものというべきである上(乙11),本件図柄が被告の案内看板に採用される以前の被告看板においても,同様の配色が採用されていたことが認められるのであって(甲20の1の1,20の2の1,20の3の1),上記配色が,本件図柄の作成に当たり新たに創作されたものとも認められない。エ 原告は,本件図柄は全体として美術性を有し,美術の著作物に該当するとも主張する。しかし,本件図柄におけるグラスや文字の配置,色の選択,字体の選択等の各要素を全体として見ても,本件図柄が,全体として一つのまとまりのある絵画的な表現物として,見る者に特別な美的感興を呼び起こすに足りるだけの美的創作性があるものとは認められず,また,その構\成において作者の個性が表れているものとも認められない。したがって,本件図柄に美術の著作物としての創作性を認めることはできない。\n

◆判決本文

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平成24(ネ)10076 出版差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年04月18日 知的財産高等裁判所

 編集著作物性について、原審は著作物性無しとしましたが、一部についてこれを認めました。
 エ 認定のとおり,控訴人書籍漢方薬便覧部分においては,148の処方名,1000個以上の商品名の漢方薬から,臨床現場での重要性や使用頻度等を踏まえて,148の処方名,307の商品名の漢方薬を選択するとともに,195の処方名,1900個以上の商品名の生薬並びに生薬及び漢方処方に基づく医薬品の中から1の処方名(「ヨクイニンエキス」),2の商品名の生薬を選択した上で,これを「漢方薬」の大分類の中に含めたものである。控訴人は,「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるにもかかわらず,これを漢方薬として選択したものである(甲59,69)。そして,生薬である「ヨクイニンエキス」については,「ポケット判治療薬Up-To-Date(2008年版)」(乙2)及び「ポケット医薬品集2008年版」(乙3)では,皮膚科用薬の章に掲載され,「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)では,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬製剤」の章に掲載され,「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」に掲載されているのであって,これを「漢方製剤」の分類に選択した類書は,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に見られないところ,同書における漢方薬の選択及び配列については,控訴人書籍と全く同一の148の処方名,307の商品名の漢方製剤に加えて「ヨクイニンエキス」が選択され,控訴人書籍と50音順を崩した4箇所を含め,全く同一の配列がされていること,同書が控訴人書籍の発行後に発行されたこと等に照らし,同書をもってありふれていることの根拠とすることはできない。以上によれば,前記の漢方薬の薬剤の選択,特に「ヨクイニンエキス」を漢方製剤として選択したことには,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができる。
イ 薬剤の配列について
控訴人書籍及び被控訴人書籍の漢方薬便覧部分は,「処方名」(漢方処方名)を原則として50音順とし,例外的に,1)・・・4箇所のみ50音順を崩して配列している点において同一である。このうち,控訴人は,4)の「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるところから,全く別個に配列し,これを漢方薬の最後に配列したものである。また,上記2)の配列については,「桔梗湯」及び「桔梗石膏」は,いずれも生薬「桔梗」を含む漢方製剤であり,咽喉における症状に用いられる点で共通しているところ,「桔梗湯」は,・・・に記載された漢の時代から伝わる生薬の配合及び分量についての歴史的な処方であり,喉痛等に対して処方する機会が極めて多いのに対し,「桔梗石膏」は,原典を有しない比較的新しい処方であるため,まず「桔梗湯」の処方を考えることが臨床現場においては通常であること,また,「桔梗湯」は,単体で処方されることが多い漢方製剤であるが,「桔梗石膏」は,他の漢方製剤と共に処方されることが多い漢方製剤であるため,まず単体で処方することのできる「桔梗湯」を前にもってくることが臨床現場における使用に資することから,臨床現場の使用実態に即した配列にしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。さらに,上記3)の配列も,「桂枝加竜骨牡蛎湯」が,前記のとおり・・・に記載された漢の時代から伝わる歴史的な処方であるのに対し,・・・が,江戸時代に日本で書かれた「方機」という書物に記載された処方であるところ,歴史が深い処方の方が信頼が高く,臨床現場においてより頻繁に用いられているところから,・・を先に配列することとしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。このように,控訴人書籍における薬剤の配列は,漢方処方が,歴史的,経験的な実証に基づく薬効,中心的な役割を果たす主薬,基本方剤等,複数の分類基準によって区別される上に,基本方剤に新たな薬効を持つ生薬が加味されることで,多くの漢方処方に派生するという関係にあるところから,そのような歴史的,経験的な実証に基づく生薬の薬効及び基本方剤分類を考慮した配列にしたものである。そして,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に,上記1)ないし4)について控訴人書籍と同一の配列をしたものは見当たらない。被控訴人が発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5),「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においてすら,「ヨクイニンエキス」は,「漢方製剤」の分類の中には選択されず,それとは別の「その他の生薬製剤」又は「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」等に分類されていたものである。また,被控訴人が控訴人書籍の発行より前に発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,控訴人書籍及び被控訴人書籍とは異なり,上記1)ないし3)を含め,全て50音順に配列されていたものである。
ウ 以上によれば,控訴人書籍漢方薬便覧部分は,漢方薬の148の処方名を掲載したほか,多数の生薬の中から「ヨクイニンエキス」のみを大分類「漢方薬」に分類するものとして選択した上,漢方3社が製造販売する薬剤がある漢方処方名については,当該漢方処方名に属する漢方3社の薬剤を全て選択し,漢方3社が薬剤を製造販売していない漢方処方名については,臨床現場における重要性や使用頻度等に鑑みて個別に薬剤を選択したというのであるから,薬剤の選択に控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができ,上記のような考慮から薬剤を選択した上,歴史的,経験的な実証に基づきあえて50音順の原則を崩して配列をした控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の配列には,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているから,一定の創作性があり,これと完全に同一の選択及び配列を行った被控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の選択及び配列は,控訴人書籍のそれの複製に当たるといわざるを得ない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成20(ワ)29705
 

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平成24(ウ)9969 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年04月18日 大阪地方裁判所

 本件、星座板は著作物ではないと判断されました。
 そもそも,原告が著作者としての個性が現れているとして指摘する上記修正・変更の目的は,前記のとおり,実際に観測できる星の位置関係(星座の形状)と星座板上に描かれる星の位置関係(星座の形状)の違いを少なくするように調整をするものであったり,特徴点をやや強調するものであったりするものである。このようなことは,星座板の使用目的からすれば当然に行われる事柄であって,多かれ少なかれ,他社も行っていることである(甲16〜23〔枝番省略〕)。このような目的のもと,修正作業が行われた結果,異なる表現となりうるとしても,前記のとおり,共通する部分の方が圧倒的に多くならざるをえず,異なる表\\現とすることのできる部分はわずかであって,星座板の作成者の個性が表れるような表\\現となることは考えがたい。むしろ,一定の目的がある以上,選択の幅は,むしろ収束する方向へ働くのであり,現に,上記のとおり,その結果には大差がないことからすれば,平凡かつありふれたものと評価するほかない。したがって,これらの点についても,創作性のある表現ということはできない。\n
カ 星の形
原告は,星を表現するに当たり,点の大きさ,形を星ごとに異なるものとすることも可能\\であるから,表現の幅がある旨主張する。しかしながら,星を表\\現するに当たって,原告星座板で用いられている丸や星印の表現は特段の特徴があるものではないし,等級に応じて大きさを変えたり,色分けをしたりしている点も平凡かつありふれたものというほかない(なお,1等星から3等星までの色分けは,相違している。)。\n
キ 天の川
原告は,天の川をイメージとして描く方法が無限にあり,原告星座板の天の川も作成者のイメージに従って描いたものであるから,創作性がある旨主張する。しかしながら,証拠(甲8の1・2,甲18の1〜5,乙1〜4)によると,他社の作成する星座板には,原告星座板と同様に,天空と同系色(白っぽくしたもの)で天の川を描いたものが複数ある。また,それらの星座板と原告星座板に描かれた天の川の各形状(輪郭)は,細部で異なるものの,似通っていることが認められる。そして,原告星座板と他社の作成する星座板に描かれた天の川の各形状(輪郭)に係る細部の相違点について,何らかの特徴や表現上の個性が表\\れているとする具体的な主張立証はない。むしろ,天空で観測できる天の川に近いイメージを星座板上に再現しようとすると,その色彩や輪郭などを含む表現が,結果として,一定の範囲に収束しているものというべきである。これらのことからすると,原告星座板に描かれた天の川の表\\現についても,平凡かつありふれたものというべきである。
ク 銀河の北極
原告は,星座板を作成する際に銀河の北極を示すことは通常なく,原告星座板に銀河の北極部分を×印で描いている点に創作性がある旨主張する。しかしながら,そもそも原告星座板の商品カタログ,商品パッケージ及び商品自体(甲4の1〜4)を見ても,星座板に表示された×印(天の川で囲まれた領域のほぼ中央に位置する。)が銀河の北極を示していることに関する説明が見当たらない。その点を置くとしても,銀河の北極は特定の恒星を指すものでもなく,天球上で観測可能\\な点でもないのであって,前記アで述べた星座板の使用目的からしても特段の注意を引くものではない。仮に,これを選択して表現した点に何らかの作成者の個性が認められうるとしても,星座板の表\\現全体に占める割合が著しく僅少であり,特徴のある表現として感得することも困難であることからすれば,この部分のみをもって著作物性を認めるのは相当でないというべきである。\n(5)まとめ
前記(4)で検討したところによれば,被告星座板は,表現上の創作性を認めがたい部分において,原告星座板と同一性を有するにすぎないから,被告の行為は複製に当たらないというべきである。なお,原告は,原告星座板に高度の創作性が認められないとしても,実質的に同一のもの(デッドコピー)についてのみ複製権侵害が成立すると解釈することで,第三者の表\\現に対する不当な制約となることは避けられるから,原告星座板の著作物性を肯定すべきであると主張する。しかしながら,そもそも創作性のない表現は著作権法上の著作物として保護を受けることはできないものであり,これと実質的に同一のもの(デッドコピー)を複製したとしても著作権(複製権)侵害が成立することはないというべきであり,上記主張を採用することはできない。\n

◆判決本文

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平成23(ワ)40129 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年01月31日 東京地方裁判所

 著作権登録してあるにもかかわらず、著作物性無しと裁判所に認定されたと、文化庁長官を訴えました。当然、請求棄却です。
 原告は,原告が本件各登録申請を行った際,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない等の説明をさせるべき職務上の法的義務を負っていたのに,これを怠った違法があると主張する。しかしながら,文化庁長官がかかる義務を負うことにつき定めた法令はないし,仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても,これにより文化庁長官が上記のような義務を負うこととなるわけではなく,その他文化庁長官がかかる義務を負うことを認め得る根拠もない。したがって,原告の主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。
(2) 原告は,文化庁長官の行為が違法であるとして,文化庁長官が著作物ではない本件図柄について著作権登録原簿に登録をした,文化庁長官が原告に告知,弁解,防御の機会を与えることなく原告の著作権を没収した,などと主張するが,原告の主張は,独自の見解に立つものであって,失当というほかない。

◆判決本文

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平成21(ワ)26053 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年12月26日 東京地方裁判所

 一部の仏画について、創作性あり(著作物あり)・翻案されたと認定されました。
 被告仏画2(14)は白黒画であり,構図は原告仏画2(14)とほぼ同一であって,菩薩の姿態,髪や宝冠,装飾品の形状,着衣の流れ,冠帯の流れや翻り方をみても,原告仏画2(14)におけるものとほぼ同一であると認められる。また,菩薩の表情については,眼や鼻にやや丸みが加えられているが,やや視線を下向きにした祈りの表\情という点では同一であるということができ,構図や細部における表\現が上記のとおり原告仏画2(14)とほぼ同一であることとも相俟って,原告仏画2(14)と同様に,柔らかな祈りの雰囲気が伝わってくるものと認められる。他方,被告仏画2(14)は,原告仏画2(14)に比べてやや線が太く,薄墨でぼかしたように着色がされ,胸や腕の飾りの一部,宝冠から肩にかかる飾りの一部が省略されていることにより,原告仏画2(14)に比べて素朴な印象が加えられているものということができ,このような点は,被告によって付加された創作的表現であると認められる。ウ したがって,被告仏画2(14)は,原告仏画2(14)の柔らかな祈りの雰囲気を伝える表現上の本質的特徴を直接感得させるものであるが,新たな創作的要素を加えた別の著作物に該当するものであり,原告仏画2(14)を複製したものとはいえず,これを翻案したものに当たる。
・・・
以上のとおりであって,被告仏画2(1)1),2(5)1),2(7),2(12),2(13)1),2(14)(以下,これらを併せて「被告侵害仏画」という。)は,それぞれ原告仏画2(1),2(5),2(7),2(12)ないし(14)を翻案したものに当たる。

◆判決本文

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平成22(ワ)47569 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年12月27日 東京地方裁判所

ウェブページの著作物性が否定されました。
 本件画面1は,別紙原告画面目録1のとおり,画面上中央に「大道芸研究会」と太文字のタイトルを配置し,そのタイトルの下に更新内容の掲載欄を配置し,画面中央やや上に,「都合によりしばらくメールの送受信ができません。お急ぎの方は,下記へご連絡をお願いします。」と記載した文章及び横長の長方形の枠内に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載し,画面下中央部に写真の画像を掲載し,全体の背景に花柄模様の画像を使用したものである。上記写真の画像は,大道芸研究会の会員のCが撮影した写真を素材とするものであり(甲9,原告本人),また,前記ア認定のとおり,文字のフォントや背景の画像は,フロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものを素材とするものであるから,これらの素材自体は,原告の著作物であるとはいえない。b 原告は,本件画面1の画面構成は,画面上中央に「大道芸研究会」と黒い太文字のタイトルを,タイトルの下に更新内容の掲載欄を,画面中央やや上,赤色の四角い枠内に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載した点,タイトルの背景は桃色で電話とFAX欄の背景は黄色である点,画面下中央部に大きく写真を貼\っている点,背景に花柄模様の画像を使用している点において,原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり,画面全体として創作性がある旨主張する。そこで検討するに,著作権法が保護の対象とする「著作物」は,「思想又は感情を創作的に表\現したもの」(同法2条1項1号)をいい,アイデアなど表現それ自体でないもの又はありふれた表\現など表現上の創作性がないものには,同法による保護は及ばない。ところで,団体に関する各種の情報を掲載し,広報等の目的で開設された団体のウェブサイトのホームページ(ウェブページ)の画面構\成においては,1)団体名を画面の上に太文字で配置すること,2)各ページの掲載内容を示すタイトル欄をページごとに設けること,3)各記載内容にタイトルを設けること,4)タイトルを枠や図形の中に配置すること,5)画面上に,各種の大きさの枠を設けてその中に,あるいは枠を設けずに,更新内容,団体の連絡先,団体の説明,団体の活動内容及び入会に関する情報等の団体のホームページとして必要な内容を掲載すること,6)写真を中央に大きく掲載したり,小さめの写真複数枚を並べて掲載すること,7)写真に近接して写真の説明等を配置すること,8)画面内に他のページへのリンクの案内ボタンを複数並べて配列し,あるいは,単独で配置すること,9)図柄の背景や単色の背景を使用すること,10)文字・枠・背景に各種の色や柄を用いることは,いずれも一般的に行われていることであり(乙11ないし15,弁論の全趣旨),ありふれた表現であるといえる。しかるところ,原告が本件画面1に表\現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は,上記1),5),6),9)及び10)のとおり,団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては,一般的なものであって,ありふれたものであり,表\現上の創作性があるものと認めることはできない。また,原告が挙げる本件画面1の色合いの点については,これを認めるに足りる証拠はない(本件においては,モノクロの書証しか提出されていない。)。

◆判決本文

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