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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作物

令和4(ワ)9090 損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和5年6月12日  東京地方裁判所

YouTube動画におけるテロップについて、著作物と認定され、約24万円の支払いを認めました。

(1) 前提事実(第 2 の 1)、証拠(甲 8〜10)及び弁論の全趣旨によれば、本件動 画は、動物等のイメージ画像等を繋ぎ合わせたスライドショー、BGM、本件テロッ プ及びこれを朗読したナレーションによって構成されるところ、スライドショー及\nび BGM のみではストーリー性が乏しく、本件動画の内容を正しく把握することは 困難であると認められる。その意味で、本件テロップ及びこれを朗読したナレーシ ョンは、その余の構成部分に比して、本件動画の中で重要な役割を担うものといえ\nる。また、このような役割を担う本件テロップの内容は、男性 2 人が群れを離れた 野生のライオンを保護し育てた後、野生動物の保護地区に戻したことや、後に男性 らの 1 名がこの保護地区を訪れた際の当該ライオンとの再会の模様等の一連の出来 事に関し、推察される各主体の心情等を交えて叙述したものである。表現方法につ\nいても、本件テロップは、動画視聴者の興味を引くことを意図してエピソード自体\nや表現の手法等を選択すると共に、構\成や分量等を工夫して作成されたものといえ る。 したがって、本件テロップは、その作成者である原告の思想及び感情を創作的に 表現したものであり、言語の著作物と認められる。\n
(2) 被告は、本件テロップと同様の文章の構成により本件テロップと同じエピソ\ ードを紹介するインターネット上の記事は本件テロップの公開前から散見されるな どとして、本件テロップの著作物性は認められない旨主張する。 証拠(乙 1〜4)によれば、本件テロップの公開前から、男性 2 人が野生のライオ ンを育て、保護地区に戻したことや、後に男性が保護地区を訪れた際の当該ライオ ンとの再会の模様等の一連の流れに関して、本件テロップと共通性を有する少なく とも 4 つの記事がインターネット上で公開されていることが認められる。そのうち の 1 つの内容は、おおむね別紙「既公開記事の内容」記載のとおりであり、本件テ ロップとその公開前から存在する記事とでは、アイデアないし事実を共通にする部 分があると認められる。しかし、その具体的な表現を比較したとき、各主体の心情\nその他の表現の内容及び方法においてこれらは表\現を異にし、本件テロップにおい ては、上記既存の記事には見られない創作性が発揮されているといってよい。した がって、この点に関する被告の主張は採用できない。
2 争点 1-2(複製権、翻案権及び公衆送信権侵害の有無)
本件テロップと本件記事の各内容を比較すると、本件記事には、本件テロップと 完全に一致する表現が多数含まれる。他方、相違する部分は、句読点の有無や助詞\nの違い、文言の一部省略等の僅かな相違のほか、例えば、本件テロップには、「ドイ ツ出身のCさんは幼い頃からずっと動物を大切に思ってきました。」とあるのに対 し、本件記事には、「この感動のストーリーは 2 人の人間から始まります。その 1 人 がCさん。Cさんはドイツ出身。幼い頃よりずっと動物を大切に思ってきました。」 とあるなどの相違部分が存在する。これらの相違部分は、表現の手法等に若干の違\nいが見られるものの、内容的には、本件テロップの表現を若干修正したり、要約又\nは省略したり、前後の表現を入れ替えるなどしているにとどまり、実質的にほぼ同\n一の内容を表現したものといえる。\n複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製する ことをいうところ(著作権法 2 条 1 項 号)、著作物の再製とは、既存の著作物に 依拠し、これと同一のものを作成し、又は、具体的表現に修正、増減、変更等を加\nえても、新たに思想又は感情を創作的に表現することなく、その表\現上の本質的な 特徴の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を\n直接感得できるものを作成する行為をいうものと解される。また、翻案とは、既存 の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体\n的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表\現するこ とにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得でき\nる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成 11 年(受)第 922 号同 13 年 6 月 28 日第一小法廷判決・民集 5巻 4 号 837 頁参照)。
本件記事は、記事中に本件動画が埋め込まれていること(甲 4)や、上記のとおり、本件テロップと完全に一致する表現を多数含み、相違する部分も、句読点の有無等の僅かな形式的な相違や本件テロップの表\現の僅かな修正、要約、前後の入れ替え等にとどまり、実質的にほぼ同一の内容を表現したものであることに鑑みると、本件テロップに依拠したものと認められると共に、著作物である本件テロップの表\現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者がその特徴を直接感得できるものと認められる。したがって、被告が本件記事を被告サイト上に投稿する行為は、原告の本件テロップに係る複製権又は翻案権を侵害するものであると共に、本件記事を送信可能化するものとして公衆送信権を侵害するものと認められる。また、本件記事が本件テロップに依拠していることから、上記著作権侵害行為につき、被告には少なくとも過失が認められる。これに反する被告の主張は採用できない。以上より、原告は、被告に対し、著作権(複製権又は翻案権、公衆送信権)侵害の不法行為に基づき、損害賠償請求権を有することが認められる。\n
3 争点 1-3(原告が本件テロップの著作権を主張することの信義則違反の有無)
被告は、原告が第三者の著作権を侵害して作成した動画による収益が減少したと して損賠賠償を請求し、また、本件動画全体としては請求が認められない可能性が\nあるため、本件テロップのみを対象として権利侵害を主張しているとして、原告の 請求が信義則に反する旨主張する。 しかし、そもそも、本件動画につき第三者の著作権を侵害して作成されたもので あることを認めるに足りる的確な証拠はない。その点を措くとしても、本件テロッ プは独立した表現物として把握し得るものであること、本件記事もそのような本件\nテロップに依拠して作成されたものとみられることに鑑みると、原告が本件テロッ プの著作権侵害を主張することをもって信義則に反するということはできない。こ の点に関する被告の主張は採用できない。
・・・
4 争点 2(原告の損害)
(1) 認定事実
前提事実、証拠(甲 14〜19(17 については枝番を含む。)、乙 11〜14)及び弁論 の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 原告は、令和 2 年 6 月 日に本件動画を投稿した。YouTube では動画の再生 回数等に応じて動画投稿者に収益が支払われるところ、上記投稿日から同年 月 日までの本件動画の再生回数は約 680 万 5000 回、推定収益は 309 万 6740 円で あった。また、推定収益の推移は別紙「推定収益の推移データ」のとおりであり、 上記投稿日から同年 11 月 30 日までの推定収益は 379 万 4863 円であった。
イ 令和 2 年 7 月 27 日、被告は本件記事を投稿して公開したが、同年 9 月 30 日 まで閲覧者はおらず、その後、原告の申入れを受けて本件記事を削除した同年 11 月 までの本件記事の閲覧回数は 154 回であった。
ウ 作家等文芸を職業とする者の職能団体であり、著作権管理事業を行う日本文\n藝家協会は、その著作物使用料規程である本件規程により、著作物を書籍として複 製し、公衆に譲渡する場合の使用料につき、本体価格の 15%に発行部数を乗じた額 を上限として利用者と協会が協議して定める額としている。
エ 原告は、本件訴訟に先立ち、本件記事につき発信者情報開示請求訴訟を提起 して発信者情報の開示を受けたところ、その際、原告は、弁護士に訴訟追行を委任 し、弁護士費用 44 万円(消費税込)、実費 1 万 4194 円を支払った。
(2) 逸失利益について
ア 主位的主張について
上記認定のとおり、本件記事の閲覧回数は、同年 月 1 日以降本件記事が削除 されるまでの間の 154 回にとどまる。このことと、本件動画の再生回数及び推定収 益、とりわけ推定収益の推移の状況に鑑みると、このような本件記事の投稿と本件 動画の再生回数ないし収益の減少との間に因果関係を認めることはできない。した がって、この点に関する原告の主張は採用できない。
イ 予備的主張について\n
原告は、本件記事により被告が得た収益の額ではなく、本件動画の経済的価値に 本件規程を参考にした仮想使用料率を乗じて、一回的な給付としての「著作権の行 使につき受けるべき金銭の額に相当する額」(著作権法 114 条 3 項)を算出すべき 旨主張するものと理解される。他方、被告は、このような原告の主張を前提としつ つ、本件記事により被告が得た収益の額を本件動画の経済的価値(ただし、その算 定対象期間は原告の主張と異なる。)に加算したものに仮想使用料率を乗じて「著作 権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を算出すべき旨を主張する。そ こで、本件においては、本件動画の経済的価値を基礎とし、これに仮想使用料率を 乗ずることによって、一回的な給付としての「著作権の行使につき受けるべき金銭 の額に相当する額」を算出することとする。 まず、本件動画の経済的価値は、本件記事の投稿期間とは直接の関わりがないと 思われることから、原告の主張のとおり、本件動画の投稿日から本件記事の削除日 までの収益額 379 万 4863 円をもって本件動画の経済的価値とするのが相当である。 他方、上記本件動画の経済的価値及び本件規程の内容を参酌すると共に、本件テロ ップは、本件動画の中で重要な役割を担うものではあるものの、画像等と一体とな って本件動画を構成するものであること、ここでの仮想使用料率は著作権侵害をし\nた者との関係で事後的に定められるものであることその他本件に現れた一切の事情 を考慮すれば、仮想使用料率については 3%程度とみるのが相当である。そうする と、本件テロップに係る「著作権の行使につき受けるべき金銭の額」(著作権法 114 条3項)は、12 万円をもって相当とすべきである。これに反する原告及び被告の主 張はいずれも採用できない。
(3) 発信者情報の取得に要した費用
ウェブサイトに匿名で投稿された記事が不法行為を構成し、被侵害者が損害賠償\n請求等の手段を取ろうとする場合、被侵害者は、侵害者である投稿者を特定する必 要がある。このための手段として、非侵害者には、特定電気通信役務提供者の損害 賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律により発信者情報の開示を請求 する権利が認められているものの、これを行使するためには、多くの場合、訴訟手 続等の法的手続を利用することが必要となる。その際、手続遂行のために、一定の 手続費用を要するほか、事案によっては弁護士費用を要することも当然あり得る。 そうすると、これらの発信者情報開示手続に要した費用は、当該不法行為による損 害賠償請求の遂行に必要な費用という意味で、不法行為との間で相当因果関係のあ る損害となり得るといってよい。 本件では、上記認定のとおり、原告は、発信者情報開示請求訴訟に係る弁護士費 用 44 万円(消費税込)及び実費 1 万 4194 円の合計 4万 4194 円を支出した。発 信者情報開示手続の性質・内容等を考慮すると、このうち 万円をもって被告の 不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

◆判決本文

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令和4(ネ)10106 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年6月8日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所

鉄道会社が、新聞記事をスキャンして、社内イントラネットにて閲覧できるようにしていた行為について、複製権侵害・公衆送信権侵害が争われました。1審は約200万円の損害賠償を認めました。知財高裁も同様ですが、損害額が上がっています。

1審被告は平成30年度掲載記事が「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)であり、著作物に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記認定のとおり、平成30年度掲載記事(甲9、10、乙14)は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表\現上の工夫をして記事を作成していることが認められ、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表\現されたものと認められるものであり、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」であるということはできない。
また、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り、報道を目的とする新聞記事であるからといって、そのような意味での創作性を有し得ないということにはならない。
したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。その他1審被告は、平成30年度掲載記事が著作物に該当しない理由を縷々指摘するが、いずれも採用することができない。

◆判決本文

原審はこちら。

◆令和2(ワ)3931

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◆令和5(ネ)10008

原審はこちら。

◆令和2(ワ)12348

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令和4(ネ)74 損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和5年4月27日  大阪高等裁判所

布団の花柄模様について、大阪高裁は著作物ではないと判断しました。1審はアップされていません。判決文の最後に、原告商品があります。

控訴人は、P1から本件絵柄の著作権を譲り受けたことを前提に、被控訴 人らの布団製造販売行為が、控訴人が取得した著作権の侵害行為であると主張 して本件各請求をしている。しかしながら、以下に述べるとおり、本件絵柄は 著作権法上の著作物ということができないから、控訴人は著作権を譲り受けた といえず、したがって主張に係る著作権の侵害を前提とする控訴人の被控訴人 らに対する各請求はいずれも理由がないというべきである。
(2) 本件絵柄は、テキスタイルデザイナーであるP1によって販売目的で量産 衣料品の生地に用いるデザイン案として制作され、現にその目的に沿って控訴 人に対して販売され、実用品である原告商品の絵柄として用いられたものであ り(前記第2の2(2))、いわゆる応用美術に当たる。控訴人は、本件絵柄が、 いわゆる応用美術であるとしても、布団の絵柄は実用的機能とは全く無関係な\n部分であるし、またP1が本件絵柄を完成させた時点では、本件絵柄と布団は 分離されているから、本件絵柄は、他の著作物同様の創作性の判断基準で著作 物性が認められるべき旨主張する。
そこで検討するに、著作権法2条1項1号は、「著作物」とは「思想又は感情 を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する\nものをいう」と規定し、同法10条1項4号は、同法にいう著作物の例示とし て、「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」を規定し、同法2条2項は、「こ の法律にいう『美術の著作物』には、美術工芸品を含むものとする」と規定し ている。ここにいう「美術工芸品」は例示と解され、美術工芸品以外のいわゆ る応用美術が、著作物として保護されるか否かは著作権法の文言上明らかでな いが、同法が、「文化の発展に寄与すること」を目的とし(同法1条)、著作権 につき審査も登録も要することなく長期間の保護を与えているのに対し(同法 51条)、産業上利用することができる意匠については、「産業の発達に寄与す ること」を目的とする意匠法(同法1条)において、出願、審査を経て登録を 受けることで、意匠権として著作権に比して短期間の保護が与えられるにとど まること(同法6条、16条、20条1項、21条)からすると、産業上利用 することができる意匠、すなわち、実用品に用いられるデザインについては、 その創作的表現が、実用品としての産業上の利用を離れて、独立に美的鑑賞の\n対象となる美的特性を備えていない限り、著作権法が保護を予定している対象\nではなく、同法2条1項1号の「美術の著作物」に当たらないというべきであ る。そして、ここで実用品としての産業上の利用を離れて、独立に美的鑑賞の 対象となる美的特性を備えているといえるためには、当該実用品における創作 的表現が、少なくとも実用目的のために制約されていることが明らかなもので\nあってはならないというべきである。
これに対し、控訴人は、著作権法と意匠法による保護が重複することについ て何ら調整の必要がないとする前提で著作権法による保護を求めていると解 されるが、両法制度の相違に鑑みれば、両法制度で重複的に保護される範囲に は自ずと限界があり、美術の著作物として保護されるためには、上記のとおり の要件が必要であるというべきである。実用品における創作的表現につき、無\n限定に著作権法上の保護を及ぼそうとする控訴人の主張は、現行の法体系に照 らし、著作権法が想定しているところを超えてまで保護の対象を広げようとす るものであって採用することはできない。
(3) 以上の観点から、本件絵柄についてみると、本件絵柄それ自体は、テキスタ イルデザイナーであるP1によってパソコン上で制作された絵柄データであ\nり、また、実用品である布団の生地など、量産衣料品の生地にプリントされて 用いられることを目的として制作された絵柄であるが、その絵柄自体は二次的 平面物であり、生地にプリントされた状態になったとしても、プリントされた 物品である生地から分離して観念することも容易である。そして、本件絵柄の 細部の表現を区々に見ていくと、控訴人が縷々主張するようにテキスタイルデ\nザイナーであるP1が細部に及んで美的表現を追求して技術、技能\を盛り込ん だ美的創作物であるということができ、その限りで作者であるP1の個性が表\nれていることも否定できない。
しかし、本件絵柄は、その上辺と下辺、左辺と右辺が、これを並べた場合に 模様が連続するように構成要素が配置され描かれており、これは、本件絵柄を\n基本単位として、上下左右に繰り返し展開して衣料製品(工業製品)に用いる 大きな絵柄模様とするための工夫であると認められる(本件絵柄は、原告商品 であるシングルサイズの敷布団では上下左右に連続して約6枚分、掛布団では 同様に約9枚分プリントされて全体に一体となった大きな絵柄模様を作り出 すよう用いられている(弁論の全趣旨)。)から、この点において、その創作的 表現が、実用目的によって制約されているといわなければならない。\nまた、本件絵柄に描かれている構成は、平面上に一方向に連続している花の\n絵柄とアラベスク模様を交互につなぎ、背景にダマスク模様を淡く描いたもの であるが(本件絵柄に用いられている模様が、このように称される絵柄である ことは訴訟当初から当事者間に争いがない 。)、証拠(乙2、丙3ないし13) 及び弁論の全趣旨によれば、アラベスク模様はイスラムに由来する幾何学的な 連続模様であり、またダマスク模様は中東のダマスク織に使用される植物等の 有機的モチーフの連続模様であって、いずれも衣料製品等の絵柄として古来か ら親しまれている典型的な絵柄であり、これら典型的な絵柄を平面上に一方向 に連続している花の絵柄と組み合わせ、布団生地や布団カバーを含む、カーテ ン、絨毯等の工業製品としての衣料製品の絵柄模様として用いるという構成は、\n日本国内のみならず海外の同様の衣料製品についても周知慣用されているこ とが認められる。そして、本件絵柄における創作的表現は、このような衣料製\n品(工業製品)に付すための一般的な絵柄模様の方式に従ったものであって、 その域を超えるものではないということができ、また、販売用に本件絵柄を制 作したP1においても、そのことを意図して、創作に当たって上記構成を採用\nしたものと考えられるから、この点においても、その創作的表現は、実用目的\nによって制約されていることが、むしろ明らかであるといえる。 そうすると、本件絵柄における創作的表現は、その細部を区々に見る限りに\nおいて、美的表現を追求した作者の個性が表\れていることを否定できないが、 全体的に見れば、衣料製品(工業製品)の絵柄に用いるという実用目的によっ て制約されていることがむしろ明らかであるといえるから、実用品である衣料 製品としての産業上の利用を離れて、独立に美的鑑賞の対象となる美的特性を 備えているとはいえない。したがって、本件絵柄は、「美術の著作物」に当たるとはいえず、著作物性を認めることはできないというべきである。
(4) 以上によれば、控訴人が譲り受けたとする本件絵柄は著作物ではなく著作 権そのものが認められないから、控訴人が本件絵柄について著作権を有してい るとは認められず、その結果、被告製品に付された絵柄が、本件絵柄に依拠し て作成されたものであり、また同一性が認められる範囲内にあるとしても、被 控訴人らの被告製品の製造販売行為をもって著作権侵害であることを前提と する控訴人の被控訴人らに対する請求は、その余の争点について判断するまで もなく理由がないというべきである。なお、控訴人が、控訴人において本件絵 柄の背景のダマスク模様の一部を改変して制作した原告絵柄4及び同5の著 作権侵害をいう部分があるが、その主張が認められないことは上記と同様であ る。

◆判決本文

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令和3(ワ)11472  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年5月11日  大阪地方裁判所

被告がAmazonに対して、著作権侵害申告をした行為が不競法2条1項21号の不正競争行為に該当すると判断されました。裁判所は、正面から商品を撮影した画像について、そもそも著作物ではないと判断しました。\n

前記(1)アのとおり、被告各画像のうち、写真集又は卓上カレンダーに 係る画像である被告画像1、2及び4ないし10は、販売する商品がどの ようなものかを紹介するために、平面的な商品を、できるだけ忠実に再現 することを目的として正面から撮影された商品全体の画像である。被告は、 商品の状態が視覚的に伝わるようほぼ真上から撮影し、商品の状態を的確 に伝え、需要者の購買意欲を促進するという観点から被告が独自に工夫を 凝らしているなどと主張するが、具体的なその工夫の痕跡は看取できない 上、撮影の結果として当該各画像に表現されているものは、写真集等とい\nう本件各商品の性質や、正確に商品の態様を購入希望者に伝達するという 役割に照らして、商品の写真自体(ないしそれ自体は別途著作物である写 真集のコンテンツとしての写真)をより忠実に反映・再現したものにすぎ ない。
(イ) 単語帳に係る画像である被告画像3は、前記同様に商品をできるだけ 忠実に再現することを目的として正面から撮影された商品全体を撮影し た平面的な画像2点と、扇型に広げた商品の画像1点を配置したものであ り、当該配置・構図・カメラアングル等は同種の商品を紹介する画像とし\nてありふれたものであるといえ、被告独自のものとはいえない。
(ウ) 以上より、被告各画像は、被告自身の思想又は感情を創作的に表現し\nたものとはいえず、著作物とは認められない。 (エ) また、商品名については、前記(1)イのとおり、いずれも商品自体に付 された商品名をそのまま使用するか、欧文字をカタカナ表記に変更したり、\n大文字表記を小文字表\記にしたり、単に商品の内容を一般的に説明したに とどまるありふれたものであって、著作物とは認められない。 そのほか、被告は、本件各申告には被告サイト上の商品の説明文に関す\nる著作権侵害も含まれるかのように主張するが、具体性を欠く上、その説 明が創作性を有するとは想定できず、失当である。

◆判決本文

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令和4(ネ)10079  著作権侵害による損害賠償、損害賠償反訴請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和5年1月31日  知的財産高等裁判所  横浜地方裁判所

 知財高裁(4部)は、1審と同じく、原告設計図の著作物性を否定しました。なお、原審はアップされていません。

 控訴人は、前記第2の3(1)アのとおり、設計図は、工事に携わる者の間の 共通言語であり、特に、設計者と施工者が異なる場合は、設計図面以外での 詳細な情報伝達手段はないから、原告設計図全体では創作性があると認めら れるべきである旨主張する。しかし、設計図が工事に携わる者に共通して利 用されるものであることは、むしろ、多くの場合、様々な関係者が施工内容 を理解することができるよう、作図上の表現方法や内装の具体的な表\現は実 用的、機能的でありふれたものにならざるを得ないことを示すものというべきであり、現に、原告設計図や原告設計図の具体的な表\現内容が実用的、機能的でありふれたものであることは、引用に係る原判決第4の2(3)における 説示のとおりである。 また、控訴人は、前記第2の3(1)イのとおり、原告設計図作成時点におい て被控訴人運営に係る既存店は、第三者が経営する店舗を譲り受けたものに すぎず、デザイン構築上準備段階のものであり、本件店舗が、被控訴人の経営する系列店舗で初の旗艦店であるから、原告設計図は創作性を有する旨主\n張する。しかし、ここで問題となっているのは、被控訴人運営に係る各店舗 に統一感を持たせる観点から、内装のデザインには一定の制約があったとい うことであり、各店舗の具体的な内装の先後関係ではないから、上記主張は 採用できない。
(2) 前記(1)によれば、原告設計図や原告内装について著作物性が認められない 以上は、その他の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない というほかないが、念のために、控訴人の前記第2の3(2)記載の主張につい ても触れると、建物やその内装の完成のための手段であり、通常それ自体が 鑑賞の対象となるものではない設計図の性質からして、設計に係る契約にお いては、特段の合意がない限り、設計報酬とは別に設計図ないし内装の著作 権についての使用料請求権が設計者に留保されるとは認め難く、本件で特段 の合意がされたと認めるべき証拠もない。これを裏返して言えば、控訴人は、 本件設計等契約において、被控訴人に対し、原告設計図に基づき、自ら又は 第三者をして本件店舗の内装工事を施工し、工事完了後は本件店舗で親子カ フェの営業を行うこと等を当然に了承していたもので、著作権ないし著作者 人格権を行使しないことが契約締結の前提となっていたものというべきであ る。 なお、原告設計図に基づき本件店舗の内装が施工されたことは事実であり、 また、補正の上引用した原判決第2の2(2)オのとおり、一審被告キャピタラ ンドと訴外アイ・イーエスとの間の本件店舗の内装工事に係る請負契約では、 デザイン・設計料は別途とされたものであるところ、それにもかかわらず控 訴人が誰からも設計図に係る報酬を得られないことについては同情すべき面 もあるが、報酬請求権が時効消滅した以上、やむを得ないというほかない。

◆判決本文

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令和3(ワ)5086  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年12月12日  大阪地方裁判所

原告の「桜のイラスト」の複製・翻案かが争われました。大阪地裁は、著作物性は認めたものの、創作性ある部分が共通しないとして、請求棄却しました。

3 争点2(被告各イラストが、原告各イラストを複製ないし翻案したものであり、 かつ同一性保持権を侵害するものであるかどうか)について(被告イラスト2に 関する判断)
前記2の認定によると、原告イラスト1は、現実の桜にみられる要素を原告な りの手法により適宜デフォルメして表現し、それらを組み合わせた上、認定に係\nる背景を付した所定の用紙上に配置するなどして1個のデザインとして完成さ せたものであって、認定した表現を含む表\現の総体としては原告の個性が現れた ものであって創作性があるといえ、著作物性を一応肯定できる(争点1)。 よって、進んで争点2について判断する。
この点、原告は、原告特徴1)〜9)が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴で\nあり、そのうち原告特徴1)及び3)〜9)が被告各イラストと共通し、被告各イラス トに接した者が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を直接感得することが\nできると主張するところ、原告は、主に被告イラスト2との対比において複製な いし翻案を主張したので、まず被告イラスト2について検討する。
(1) 原告特徴1)について
原告主張の原告特徴1)は、前記第3の2(1)に主張のとおりであるところ、 ここでいう「背景全体」とは、花の白いスタンピング(かすれ要素A)が原告 特徴2)として特定されてこれが除かれていることから、原告イラスト1から、 正面視花要素A、側面視花要素A、つぼみ要素A、かすれ要素Aを除いた部分 をいうものと解される。
そして、前記認定によると、同部分の具体的態様は、「色調の異なるピンク色 や一部オレンジ色が、不明瞭にぼかし味をもちながら配色された」ものであっ て、これと対応する被告イラスト2の要素としては、「赤みのある紫、青みのあ る紫、オレンジ色などがグラデーション、ぼかしを伴って全体としてはマーブ ル状に彩色され、前記すかしを伴ったスタンピング要素Bがランダムに散りば められている」背景部分が該当する。
この点、原告イラスト1と被告イラスト2の背景部分は、そもそもの枠の大 きさが異なることに伴う広がりの規模や、背景として認識される部分の形状が 大きく異なって特段の共通点を見出し難い上、被告イラスト2における、赤み のある紫、青みのある紫、オレンジ色などがマーブル状に彩色されている点は、 原告イラスト1にはみられない被告イラスト2の特徴というべきであって、こ れらの相違点の与える影響は大きなものがある。したがって、原告特徴1)で指摘する内容は、被告イラスト2との共通点を構成しないというべきである。\n
(2) 原告特徴3)ないし同4)について
原告は、原告特徴3)及び同4)が被告イラスト2にもみられると主張するとこ ろ、前記認定によると、原告イラスト1には、5または6個の正面視花要素A 等で構成されるまとまりが台紙の略左中央上、略右上及び略右下の3か所にあ\nることが認められる。また、原告特徴4)中の「空きスペース」に描かれた「適 宜桜の花」が具体的に何を指すかは必ずしも明らかではないが、右上上端及び 左中下端に見切れた正面視花要素Aが各1個、台紙略左下のおおむね中央に正 面視花要素A1個をいうものと解され、これらが同位置に配されている。
一方、被告イラスト2においては、3個の正面視花要素B等で構成されるま\nとまり(別紙被告イラスト2分析図でいうγ及びεのまとまり)、4個の正面 視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうδのまとまり)、5個の\n正面視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうα及びβのまとまり)\nが、袋体正面では15から20個、前記αからεまでのまとまりが回転を加え たうえでやや不規則に被告イラスト2の枠を埋めるように配されている。また、 これらのまとまりが不整形な形状のためにできたまとまりのない部分に正面 視花要素Bが単独で配されている。 そして、原告イラスト1にみられるまとまりと、被告イラスト2におけるま とまりを、それ自体で相互に比較しても、各構成要素(正面視花要素、側面視\n花要素、つぼみ要素)の構成や形態において同一のものは認められない上、被\n告イラスト2においては、まとまりの数自体や、まとまりの繰り返しによって 与えられる印象が強く、後述の各構成要素の相違点と相まって、「5ないし6\n個の桜の花をまとまって描く」というアイデアのレベルを超えた具体的な表現\n上の共通性を認めることはできない。また、桜の花を数個まとめて描くこと自 体は、自然の桜を描写する際に自然に着想することであって、他の桜のイラス トにもみられるありふれたものといわざるを得ない。また、原告特徴4)につい ても、原告イラスト1においては、被告イラスト2との対比において、まとま りとまとまりの間隔というものは観念しづらく、むしろまとまりの配置のない 略左下部に1個の正面視花要素Aを配したとの印象が強く、具体的表現におけ\nる共通性を感得できない。 以上によると、原告特徴3)及び同4)で指摘される内容は、被告イラスト2に みられる特徴とはいえず、共通点は認められない。
(3) 原告特徴5)、同6)及び同7)について
原告は、正面視花要素Aに関して、原告特徴5)、同6)及び同7)が特徴であり、 同特徴が被告イラスト2にも存すると主張する。 この点、まず、正面視花要素Aと同Bの花弁についてみると、前記認定のと おり、原告イラスト1における花弁は、「白色で基部付近はピンクないし淡い ピンク色が不均一の色調でぼかしたように配されている」のであり、花弁の白 と背景のコントラストが強く意識される一方、被告イラスト2における花弁は 「ごく薄い赤みないし青みのかかった紫色の下地に透明感のある白の小さな おおむね丸いドットが重なるように多数配されて前記薄紫の下地が透けて看 取できる」態様で描かれており、花弁それ自体も淡く着色されている上、背景 とのコントラストは弱く、全体として正面視花要素Bは同Aと相当に異なった 印象を受けるものである。したがって、原告特徴5)が被告デザイン2にも備わ っているとは認められない。また、原告特徴6)及び同7)についてみると、完全 に開花した桜を正面視で「5枚の花弁を放射線状に一体に、花弁ごとに区切ら ずに描き、花弁の中央部に略放射線状にランダムな長さ及び角度で8本又は9 本描く」ことや、同様にやや斜方視で、「5枚の花弁を略扇形に一体に、花弁ご とに区切らずに描いた上で、弧の部分にランダムに山を複数描き、花弁の下寄 りの部分に茶色の細い線でおしべ等を略扇形状にランダムな長さ及び角度で 6本又は7本描き、その先端を茶色の小さい丸で描いている点」は、前記認定 に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストにみ\nられるごく一般的な表現であり、ありふれたものであって、そもそもかかる特\n徴は、原告イラスト1の本質的特徴に当たらない。
(4) 原告特徴8)及び同9)について
原告主張の「先端に白色のつぼみがついた茶色の花柄及びがく片を、花から 適宜飛び出して描いている点」(原告特徴8))及び「つぼみには完全に閉じた状 態のものと、半開き状態のものがあり、前者はふっくらとした雫形状で、先端 がやや尖っていて、がく片は3本であり、後者は略扇形で弧の部分にランダム に山を複数描き、がく片は基本的に4本となっている点」についても、前記認 定に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストに\nみられるごく一般的な表現であり、ありふれたものといわざるをえず、原告イ\nラスト1の本質的特徴に当たらない。
・・・
(6) まとめ
以上のとおり、被告イラスト2は、アイデアなど表現それ自体でない部分又\nは表現上創作性がない部分において原告イラスト1と同一性を有するにとど\nまり、これに接する者が、原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を感得する\nことはできないから、依拠性を判断するまでもなく、原告イラスト1の複製及 び翻案に当たらない。よって、被告イラスト2を用いた被告製品2を被告が販 売した行為は、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するもの とはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということもない。

◆判決本文

◆当事者のイラストです

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令和3(ワ)21224  損害賠償金請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年11月21日  東京地方裁判所

ウェブページのフライパンの説明画像について、著作権侵害を認め、5万円の賠償を認めました。

本件において、原告が、本件各画像を含め、自己が著作権を有する著作 物を第三者に有償で利用許諾していたと認めるに足りる証拠はないから、 実際の利用許諾例に準じて使用料相当額を算定することはできない。 イ この点、原告は、新聞社や写真提供会社が提供する画像レンタルサービ スにおける使用料を根拠として、本件各画像の1ページ当たりの使用料相 当額は6万6666円を下らず、これに本件各画像が掲載されたウェブペ ージのページ数を乗じて使用料相当額を算定すべきであると主張する。 (ア) まず、ページ数を単純に乗ずることの当否について検討すると、原告 商品は、特長、材質、製造方法、メーカーなどが同一である複数のフラ イパンの一群からなる商品であるところ(甲12)、被告ストアにおける 本件各画像の利用態様も、複数の商品販売ページにわたって、原告商品 が等しく備える特長等を紹介する本件画像1)ないし7)の各画像の複製物 を共通して複製及び送信可能化し、本件商品画像については、当該ペー\nジで販売している商品に相当する画像1点を複製及び送信可能化したと\nいうものであることが認められる(前提事実(2)ア、イ、甲2)。このよ うな利用態様にかんがみれば、特に、全てのページにわたって原告商品 に共通する特長等を紹介する同一の画像7点については、異なる態様で 複数回利用された場合と同視することはできず、本件において、単純に ページ数(すなわち販売している商品の種類の数)を乗じて使用料相当 額を算定することが相当であるとはいえない。
そこで、更に検討すると、本件各画像は、商品群からなる原告商品の ネット通販用広告画像、すなわち販売促進資料として作成されたものと 認められることから(甲12)、原告商品の販売と無関係に本件各画像を 使用することは通常考え難く、仮に原告が第三者に本件各画像の利用を 許諾するとすれば、原告も主張するとおり、原告商品の日本国内の正規 代理店として、原告商品の再販売契約をするに当たり、その販売促進資 料として本件各画像全体を利用許諾するような場合が想定される。そし て、同一のオンラインショッピングモール上に出店しているとしても、 オンラインストア名が異なれば、商品の販売経路を複数有することにな るから、販売促進資料としての画像の利用許諾契約に当たっても、原告 商品を取り扱うオンラインストア数の多寡を考慮するのが合理的といえ る。アフロ社が提供している画像レンタルサービスにおいて、同一サイ トである限り、使用箇所を問わず同じ使用料が設定されている(甲7の 「ウェブ広告・ホームページ」欄の注記)ことも、オンラインストア数 に応じて使用料相当額を算定する方法の合理性を裏付けるものである。 以上のとおり、原告商品が一つの商品群からなるものであること、被 告ストアにおける本件各画像の実際の利用態様及び想定される本件各画 像の利用許諾の態様にかんがみれば、本件各画像の使用料相当額を算定 するに当たっては、本件各画像の複製物が掲載されたページ数(すなわ ち販売している商品の種類の数)ではなく、オンラインストア数を基準 とすべきであって、本件においては、被告ストアが一つであることから、 被告ストア全体にわたって本件各画像を1回利用したものとして算定す るのが相当というべきである。
(イ) 次に、本件各画像の具体的な使用料相当額について検討する。
a 原告が指摘する新聞社の画像レンタルサービスにおいて、具体的に どのような写真や画像が提供されているのかを認めるに足りる証拠は ない。しかし、新聞社が提供する写真は、いわゆる報道写真にみられ るように、ある事件や事象の一瞬を捉えているなど、構図やシャッタ\nーチャンス等に高度な工夫を凝らした創作性の高いものや、他の手段 では入手が困難な希少性の高いものである可能性があると考えられる。\nまた、アフロ社が提供する画像レンタルサービスについては、上記 のような報道写真とは異なる性格の画像も提供されていることがうか がわれるものの(甲7)、やはり、実際にどのような写真や画像が提供 されているのかは、本件証拠上認めるに足りない。
b その一方で、被告が指摘するシャッターストック社やピクスタ社の 画像レンタルサービスについてみると、証拠からうかがわれる具体的 な画像の内容(乙3、4)のほか、ピクスタ社では6200万点以上 の写真、イラストなどの素材について、料金が1か月間に利用できる 画像の点数に基づいて設定されていたり、未利用画像数を翌月以降に 繰り越せるといった条件で提供されていたりすること(乙2、4)に かんがみれば、これらのサービスにおいて低額な使用料で提供されて いるのは、汎用性のあるウェブサイト用の素材である可能性が高い。\n もっとも、商業的利用の可否など、その余の使用条件については、 本件証拠上判然としない。
c これに対し、前提事実(2)ア及び前記(ア)のとおり、本件各画像は、 商品販売ページを見た顧客の購買意欲を高めるように、原告商品を用 いて調理している様子を撮影した写真や特長等を述べた文言、画像な どを配置した原告商品に特化した販売促進目的の画像であって、報道 写真とも、シャッターストック社やピクスタ社が提供する汎用性のあ るウェブサイト用の素材とも、性格及び目的が大きく異なる。また、 前記(ア)において説示したとおり、原告が第三者に本件各画像を利用許 諾することが想定されるのは、原告商品の正規代理店として、原告商 品の再販売契約に当たって販売促進資料として利用されるような場合 であるから、専ら写真、画像等の利用許諾に伴う使用料をもって収益 を上げるというビジネスモデルに基づき設定された使用料の水準が妥 当するともいい難い。これらの事情に照らせば、原告及び被告の双方 がそれぞれ指摘する画像レンタルサービスにおいて規定されている使 用料の水準が本件においてそのまま妥当するとはいえない。
その一方で、前記(ア)のとおり、本件各画像は、原告商品の再販売契 約に伴う販売促進資料との位置付けで利用許諾されることが想定でき るから、本件各画像の使用料のみによって本件各画像の取得費用を回 収したり、原告商品の再販売によって得られる利益を超えたりするよ うな高額な使用料が設定されるとは考え難い。
このほか、本件各画像は、報道写真のように高度の創作性を有して おり代替可能性が小さいとまではいえないものの、原告商品に特化し\nた販売促進資料として工夫して作成されたものであり(前記(ア))、相 応に創作性を有する著作物であること(前記1)、被告ストアにおける 販売商品数は11点であり、本件各画像の利用期間が約3か月間であ ったこと(前記(1))、本件各画像の利用に当たっての将来の使用料額 を定める場面ではなく、原告の許諾を何ら得ることなく本件各画像を 利用した被告に対する損害賠償を請求する場面での金額の算定である ことなどを総合考慮すると、本件各画像の使用料相当額は合計5万円 と認められる。
ウ 当事者の主張について
(ア) 原告は、本件各画像の使用料相当額を算定するに当たり、いつも社に 本件各画像のデザイン制作料等として約700万円を支払ったことを考 慮すべきであると主張する。 しかし、原告がいつも社に委託したのは、ウェブサイト関連業務及び 検索エンジン最適化サービスであり、本件各画像の制作業務はその一部 を構成するにすぎないと認められるところ(甲12)、本件各画像のデザ\nイン制作のみに要した費用を認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって、本件各画像の使用料相当額の算定に当たって、原告が主 張する金額を考慮することはできない。

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