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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作物

令和1(ネ)10043  著作権に基づく差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年11月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 テキスト本の解説をネット配信する行為が、テキスト本の著作権侵害(翻案権)かが争われました。知財高裁は1審と同様に、著作物性は認めたものの、本件解説と本質的特徴を同一にするとは認められないと判断しました。

 ア 最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決(同平成11年(受)第9 22号,民集55巻4号837頁)は,言語の著作物に関してであるが, 著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な\n特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,\n新たに思想又は感情を表現することにより,これに接する者が既存の著作\n物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作\nする行為であるとしている。そして,翻案の意義は,本件問題のような編 集著作物についても同様であると解されるから,編集著作物の翻案が行わ れたといえるためには,素材の選択又は配列に含まれた既存の編集著作物 の本質的特徴を直接感得することができるような別の著作物が創作された といえる必要があるものと考えられる。
イ これを本件について検討してみるに,本件問題は,控訴人自身も主張す るとおり,題材となる作品の選択や,題材とされる文章のうち設問に取り 上げる文又は箇所の選択,設問の内容,設問の配列・順序に作者の個性が 現れた編集著作物であり,ここでは,このような素材の選択及び配列等に, その本質的特徴が現れているということができる。これに対し,被告ライ ブ解説は,作成された問題(すなわち,素材の選択及び配列等)を所与の ものとして,これに対する解説,すなわち,問いかけられた問題に対する 回答者の思考過程や思想内容を表現する言語の著作物であって,このよう\nな思考過程や思想内容の表現にその本質的特徴が現れているものである。\nこのように,編集著作物である本件問題と,言語の著作物である被告ライ ブ解説とでは,その本質的特徴を異にするといわざるを得ないのであるか ら,仮に,被告ライブ解説が,本件問題が取り上げた文を対象とし,本件 問題が提起したのと同一の問題を,その配列・順序に従って解説している ものであるとしても,それは,あくまでも問題の解説をしているのであっ て,問題を再現ないし変形しているのではなく,したがって,本件問題の 翻案には当たらないものといわざるを得ない。 この点について,控訴人は,本件問題と被告ライブ解説とはその本質的 特徴を同一にするとして種々主張しているけれども,上記に指摘した点に 照らし,採用することはできない。
(3) 被告ライブ解説は本件解説の翻案に当たるかについて
控訴人は,本件解説と被告ライブ解説とは,本件問題の読解対象文章及び 設問・選択肢の文章を前提としているということでは全く共通であるから, 個々の文言にほとんど共通性がないからといって,表現の本質的特徴に同一\n性がないということにはならない旨主張する。しかしながら,読解対象文章 及び設問・選択肢の文章を前提としていること自体からは,表現にわたらな\nい内容の同一性がもたらされるにすぎないから,表現の本質的特徴の同一性\nの有無は,別途,文言等の共通性等を通じて判断されるべきものである。し たがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 また,控訴人は,本件ライブ解説の個々の箇所について,本件解説との間 で表現上の本質的特徴の同一性を有する旨主張する。しかしながら,本件解\n説と被告ライブ解説とがいずれも本件問題に対する解説であることに由来し て内容の類似性・同一性はみられ,被告ライブ解説は,その内容については 部分的に本件解説と本質的特徴を同一にするといえるものの,その表現につ\nいては,控訴人の主張を踏まえて検討しても,本件解説と本質的特徴を同一 にするとは認められない。したがって,控訴人の主張は採用することができ ない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成30(ワ)16791

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平成30(ワ)14843  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年9月18日  東京地方裁判所

 写真の著作物が無料でアップロードされたとして、約30万円の損害賠償が認められました。

 本件各写真は,本件各商品を販売するために撮影されたものであると認めら れるところ(甲33),以下のとおり,いずれも,商品の特性に応じて,被写体の 配置,構図・カメラアングルの設定,被写体と光線との関係,陰影の付け方,背景\n等の写真の表現上の諸要素につき相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情\nが創作的に表現されているということができる。\n
ア すなわち,本件写真1ないし4は,ト音記号,楽譜又は楽器の柄のネクタイ を被写体とするものであり,ネクタイの下端部を手前にして波打つように配置され, 背景はネクタイの下端部が配置された写真下部を白色,写真上部を暗い灰色又は黒 色とし,陰影が明確に付されるなどして,ネクタイの柄や質感を視覚的に認識しや すいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているという ことができる。
イ 本件写真5ないし10は,弦楽器の柄のコインケース等の商品を被写体とす るものであり,本件写真5,7,9は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの, 本件写真6,8,10は,柄の部分を大きく撮影したものであって,商品の配置の 仕方や陰影の付し方により,商品の質感や弦楽器の柄を視覚的に認識しやすいもの となっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということがで きる。
ウ 本件写真11ないし40は,楽器を演奏する動物等の置物を被写体とするも のであり,本件写真11,14,17,20,23,26,29,32,35,3 8は,商品の前方を正面から撮影したもの,本件写真12,15,18,21,2 4,27,30,33,36,39は,商品の後方を斜め上から撮影したもの,本 件写真13,16,19,22,25,28,31,34,37,40は,動物等 の顔を斜め上から大きく撮影したものであって,背景は緑色,白色又はそれらのグ ラデーションとし,陰影を付すなどして,動物等の表情や演奏態様等を視覚的に認\n識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされている ということができる。
エ 本件写真41ないし44は,鍵盤等の柄のフロアマットを被写体とするもの であり,本件写真41及び43は,四角形状の商品の形態に沿って商品のみを大き く撮影したもの,本件写真42及び44は,その一部を大きく撮影したものであっ て,生地の質感や鍵盤等の柄を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販 売用の写真として相応の工夫がされているということができる。
オ 本件写真45ないし50は,写譜用のペンを被写体とするものであり,本件 写真45,47,49は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,本件写真4 6,48,50は,ペンの先端部分を大きく撮影したものであって,商品に光を反 射させ,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の質感や細かい模様を視覚的 に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされて いるということができる。
カ 本件写真51及び52は,写譜用のペンの替芯(5本)及びそのケースを被 写体とするものであり,ケースから突出する替芯につき長さを変えた状態で大きく 撮影したものであって,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の形状を視覚 的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされ ているということができる。
キ 本件写真53ないし61は,トランペット等の楽器の柄の黒色クリアファイ ルを被写体とするものであり,本件写真53,55,57,59は,商品を中央に 配置して全体を撮影し,柄の部分に光を反射させ,背景は黒色を基調とし,陰影を 付すなどしたもの,本件写真54,56,58,60は,柄の部分を大きく撮影し たものであって,トランペット等の楽器の柄を視覚的に認識しやすいものとなって おり,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。ま た,本件写真61は,商品を中央に配置して柄のない方向から全体を撮影したもの であり,背景を白色と黒色のグラデーションとし,陰影を付すなどして,商品の形 状を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工 夫がされているということができる。 ク 以上のとおり,本件各写真には,商品の販売用の写真として相応の工夫がさ れており,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができる。\n
(2)被告は,本件各写真が著作物であることを争い,取り分け,本件写真42な いし44は商品を上から撮影しているだけであり,本件写真45,46,50ない し52は商品の販売用の写真として一般的なものであるから,これらに創作性が認 められないことは明らかである旨主張するが,前記のとおり,本件各写真には,商 品の販売用の写真として相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情が創作的 に表現されているということができるのであって,被告の上記主張は採用すること\nができない。
(3) 以上によれば,本件各写真には創作性が認められ,前記前提事実(2)のとおり, これらは原告代表者によって原告の発意に基づき職務上作成されたものであるから,\nいずれも,原告の著作物であると認められる。
前記のとおり,被告は,原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害しており,これらについて,少なくとも,過失があると認められるから,不法行為による損害賠償責任を負っているところ,原告は,本件\n各写真の使用料相当額に係る損害(著作権法114条3項)として,著作権侵害に 係るものにつき合計46万3800円,著作者人格権侵害に係るものにつき合計4 万6800円の損害が生じたと主張する。
(2) そこで検討すると,前記のとおり,被告は,原告が本件各写真を原告ウェブ サイトに掲載することによって販売していた本件各商品を,本件各写真と実質的に 同一の被告各写真を被告ウェブサイトに掲載することによって販売していたもので あり,このような被告各写真の使用態様に加えて,被告各写真の掲載期間は長いも ので1年6か月にわたること,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,画像素材 の販売業者である「ペイレスイメージズ」のウェブサイトでは,画像素材の単品で の購入価格が432円から5400円までとされていると認められることなど,本 件訴訟に現れた事情を考慮すると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべ き金銭の額(著作権法114条3項)は,写真1枚当たり5000円と認めるのが 相当である。もっとも,原告の氏名表示権が侵害されたことによって,別途の財産\n的損害が生じたと認めるに足りない。
(3)ア これに対し,原告は,アマナイメージズの価格表において,画像素材1点\n当たりの使用期間1年までの使用単価は3万8880円,使用期間3年までの使用 単価は6万0480円,無断使用した場合には使用料金の200%を請求できると されていることを主張するが,弁論の全趣旨によれば,アマナイメージズは,画像 素材のレンタルや販売を業とする株式会社であると認められるのに対し,本件各写 真はレンタルや販売を目的として撮影されたものではないから,原告が主張する価 格表について本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114条3項所定の損\n害額の算定に当たって大きく考慮することは相当とはいえない。 イ 他方で,被告は,(1)本件各写真の創作性の程度の低さなどに照らせば,販売 用の広告写真1枚当たりの使用料相当額はせいぜい1000円程度である,(2)被告 において学遊社に本件各写真と同じカットでプロカメラマンによる写真撮影の見積 りを依頼したところ,ライティングを施すことを含む見積額が8万円であったから, 本件各写真の使用料相当額に係る損害は高くても合計8万円である旨主張する。 しかしながら,(1)については,前記のとおり,本件各写真は,商品の販売用の写 真として相応の工夫がされているということができるから,創作性の程度が低いこ とを理由として著作権法114条3項所定の損害額を著しく低額にすべきであると いうことはできない。
(2)については,証拠(甲41,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,学遊社は,被 告から提供を受けた本件各写真をサンプルとして参照し,本件各写真に対応する6 1カットの写真を半日でまとめて撮影した場合の撮影料を見積もったものと認めら れるところ,学遊社の見積りは,本件各写真をサンプルとして参照しているため, 被写体の配置,カメラアングル・構図等を検討する必要はなく,また,半日でまと\nめて撮影しているため,複数日にわたって撮影されたと認められる本件各写真と比 べて撮影費用が低額となっているとみる余地があることなどからすれば,見積額が 8万円であるからといって,本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114 条3項所定の損害額が同程度であるということはできない。
(3) そうすると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべき金銭の額(著 作権法114条3項)は,合計30万5000円(5000円×61枚)であると 認められる。

◆判決本文

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令和1(ネ)10045  標章使用差止反訴請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年10月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ピクトグラムの使用合意があること、およびその複製又は翻案には該当しないとした1審の判断が維持されました。複製又は翻案には該当しない理由は1審と同じです。

 まず,控訴人が主張する反訴原告主張合意については,これを記載した 契約書等の書面は作成されていない。また,控訴人が主張する平成14年 頃の反訴原告主張合意の成立にかかる事実経過(前記第2の5(控訴人の 主張)ア)も,これを裏付ける客観的な証拠は見当たらない。
ア そこで,控訴人と被控訴人との間の取引経過についてみると,各業態 の第1号店を出店する際の請求書をみても,店舗デザイン設計料とのみ あるだけで,反訴原告標章であるロゴや反訴原告ピクトグラムに係る制 作料,使用料については何ら記載されていない。そして,ロゴやピクト グラムについては,ハードオフ,オフハウス,モードオフ,ガレージオ フ,ホビーオフ,リカーオフといった各業態の第1号店を出店した(ハ ードオフのピクトグラムについては,平成7年頃に使い始めた)後は, コーナーの拡大などの必要に応じて更なるピクトグラムの制作・納品を しつつも,基本的にはそれまでに制作したロゴやピクトグラムを用いて 店舗デザインの設計等を行うのが恒例となっており,各業態によって差 はあるものの,制作したロゴ及びピクトグラムはその後の出店店舗でも 用いられていた。また,平成29年4月26日に請求するまで(前記1 において引用する原判決第3の1(15)),20年以上の長期間にわたっ て,控訴人は,反訴原告標章であるロゴや反訴原告ピクトグラムの使用 料を店舗デザイン設計(監理)料と別に請求したことはなく,制作料に ついても,その請求を裏付ける書面は基本的に存在しない。 ただし,控訴人から被控訴人に対する制作料の請求については,平成 16年3月22日の制作料(基本デザイン料)の請求(前記1⑴におい て改めた原判決引用部分第3の1(10))及び平成28年3月の制作料の請 求(前記1において引用する原判決第3の1(12)エ)が存在する。しか しながら,仮に反訴原告主張合意が存在したのであれば,かかる請求が できないことは控訴人にとって明らかであって,それにもかかわらず請 求したこと自体,それまでに作成・納品した制作料について将来も請求 できないことを認識していたからこそ,新たに作成・納品したロゴ等に ついて,制作料の支払合意を取り付けるべく,このような行為に及んだ と考えられるところである。なお,仮に,かかる2回の請求以外に,控 訴人が被控訴人に対し,口頭で,ロゴ等の制作料の請求をしたことがあ ったとしても同様である。 このような状況に照らすと,将来的に,控訴人,被控訴人の間におい て,店舗デザイン設計(監理)料等の名目で支払われた金員とは別に, 反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの制作料・使用料を請求する権 利が留保されていたとは考えにくく,むしろ,これらの制作料及び使用 料の支払義務を前提とする反訴原告主張合意がなかったことが窺われる。
イ また,契約終了に当たり,控訴人が被控訴人に当初交付した書類の内 容は前記1(2)に記載のとおりであるところ,かかる記載内容からは,無 償使用許諾を前提とする反訴原告主張合意の存在というよりも,むしろ, 使用料は店舗のデザイン設計料に含まれていたとの認識が窺われる。ま た,同書面には,制作料そのものについての言及は存在しない。
ウ 加えて,被控訴人においては,仮に反訴原告標章や反訴原告ピクトグ ラムの使用ができなくなれば,重大な不利益が生じることが明らかであ る。したがって,仮に反訴原告主張合意のような合意が存在するのであ れば,これによって生じる不利益の重大性に鑑み,合意の内容を書面化 することが通常であると考えられるところ,そのような書面が存在しな いことは既に指摘したとおりである。
エ 以上によれば,被控訴人は,店舗デザイン設計料等とは別に,ロゴや ピクトグラムの制作料,使用料を支払う意思はなく,控訴人も,被控訴 人からの店舗デザイン設計の依頼を受ける際に,ロゴや平成7年頃以降 はピクトグラムの制作をも必要に応じて行うことを前提としつつも,こ れらの制作料や使用料については,将来的にも被控訴人から引き続き店 舗設計業務の依頼を受けられることを期待したことから,明示的に制作 料や使用料として請求することはせずに,店舗設計業務を継続して受注 していく中で,これらについて実質的に回収を図っていこうという意向 であったと考えられる。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)37350

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平成30(ワ)5427  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年10月3日  大阪地方裁判所(21部)

 作成してもらったウェブサイトを依頼会社が別のサーバに移転して公開しました。これについて、本件の場合、著作権は被告が有するとして、著作権侵害とはならないと判断しました。

 本件において,原告は,被告ウェブサイトの公衆送信等の差止め及び削除,並び に金員の支払を求めているが,その根拠とするところは,一般不法行為等によるも のを除けば,原告ウェブサイトが原告の著作物であることであり,さらにその理由 として主張するところは,原告が原告ウェブサイトを創作的に制作したこと,及び 原告と被告ピー・エム・エーの契約により,原告ウェブサイトの著作権は原告に属 する旨合意されたことである。 これに対し,被告らは,原告ウェブサイトの著作権は,被告ピー・エム・エーに 帰属するとの黙示の合意があること,原告が原告ウェブサイトを制作したことによ ってその著作権が原告に帰属することはないこと,原告ウェブサイトの著作権を原 告に帰属させる旨を原告との間で合意した事実はないことを主張し,仮に原告に原 告ウェブサイトの著作権が認められるとしても,本件の経緯において,原告が被告 らに対し,原告ウェブサイトの著作権を主張することは,権利の濫用に当たる旨を 主張する。 そこで,まず,原告が原告ウェブサイトを制作したことにより,原告ウェブサイ トが原告の著作物と認められるか,次に,原告と被告ピー・エム・エーとの合意に より,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属すると認められるか,そして,仮に 原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属する場合に,原告が被告らに対し,著作権 を行使することが権利の濫用に当たるかにつき検討する。
(2) 原告ウェブサイトの制作による著作権の帰属
ア 前記認定したところによれば,被告ピー・エム・エーは,旧ウェブサイトを 訴外彩登に制作させ,訴外ユウシステムに管理を委託していたところ,集客力の向 上のために,まず旧ウェブサイトの本件サーバの移管を原告に委託し,さらにその 保守業務を原告に委託した後,本件制作業務委託契約により,旧ウェブサイトを, スマートフォンやタブレットに対応できるようにするなど,全面的にリニューアル することを求めたことが認められるのであって,原告ウェブサイトの制作は,原告 の発意によるものではなく,被告ピー・エム・エーの委託に基づくものであり,原 告が自ら使用することは予定せず,被告ピー・エム・エーの企業活動のために使用\nすることが予定されていたものということができる。\n
イ 上述のとおり,原告ウェブサイトは,元々被告ピー・エム・エーが訴外彩登 に制作させた旧ウェブサイトを,本件サーバへの移管後にリニューアルしたもので, 前記認定したところによれば,原告ウェブサイトのデザイン,記載内容や色調の基 礎となったのは,リニューアル前の旧ウェブサイトであることが認められる。 また,前記認定したところによれば,原告は,原告ウェブサイトを制作するにあ たり,ワードプレス専用のプラグインやフォント,写真を購入したり,ワードプレ スを利用して,原告ウェブサイトが利用しやすく顧客吸引力があるように構成した\nものと認められるが,一方で,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの株式 スクールとしての企業活動を紹介するものであって,その内容は,基本的に被告ピ ー・エム・エーに由来するというべきであるし,原告が,被告ピー・エム・エーか ら,その従業員を通じ,仕様や構成について指示及び要望を聞いて制作したもので\nあることは,前記認定のとおりである。
ウ 原告と被告ピー・エム・エーは,以上の内容・性質を有する原告ウェブサイ トの制作について,本件制作業務委託契約を締結し,例えば原告ウェブサイトの権 利を原告に留保して,原告が被告ピー・エム・エーに使用を許諾し使用料を収受す るといった形式ではなく,原告ウェブサイトの制作に対し,対価324万円を支払 う旨を約したのであるから,原告が原告ウェブサイトを制作し,被告ピー・エム・ エーのウェブサイトとして公開された時点で,その引渡しがあったものとして,原 告ウェブサイトに係る権利は,原告が制作したり購入したりした部分を含め,全体 として被告ピー・エム・エーに帰属したと解するのが相当である。 上記解釈は,原告ウェブサイト制作後も,原告が被告ピー・エム・エーに保守業 務委託料の支払を求めていることとも合致する。すなわち,原告ウェブサイトが原 告のものであれば,被告ピー・エム・エーがその保守を原告に委託することはあり 得ず,原告ウェブサイトが被告ピー・エム・エーのものであるからこそ,代金を支 払ってその保守を原告に委託したと考えられるからである。 また,上述のとおり,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの企業として の活動そのものを内容とするものであるから,原告がこれを自ら利用したり,第三 者に使用を許諾したり,あるいは第三者に権利を移転したりすることはおよそ予定\nされていないというべきであるから,原告ウェブサイトについての権利が原告に帰 属するとすべき合理的理由はない。さらに,原告ウェブサイトについての権利が原 告に帰属するとすれば,被告ピー・エム・エーは,原告の許諾のない限り,原告ウ ェブサイトの保守委託先を変更したり,使用するサーバを変更するために原告ウェ ブサイトのデータを移転したりすることはできないことになるが,そのような結果 は不合理といわざるを得ない。
エ 以上より,原告が原告ウェブサイトを制作したことを理由に,原告ウェブサ イトの著作権が原告に帰属すると考えることはできず,原告ウェブサイトの著作権 は,被告ピー・エム・エーに帰属するものと解すべきである。
(3) 合意による著作権の帰属
ア 本件保守業務委託契約において,同契約に基づいて,原告が制作したウェブ サイトの著作権その他の権利が原告に帰属する旨の規定(14条2項)があること は前記認定のとおりである。 しかしながら,本件保守業務委託契約は,訴外彩登が制作した旧ウェブサイトを 本件サーバに移管した後に,その保守業務を被告ピー・エム・エーが原告に委託す る際に締結されたものであって,原告がウェブサイトを制作完成することは予定さ\nれていないから,上記条項が何を想定したものかは不明といわざるを得ないし,同 条項が,その後に締結された本件制作業務委託契約に当然に適用されるとも解され ない。
イ 本件制作業務委託契約については,被告ピー・エム・エー名義で作成された 本件注文書の「仕様」欄に,「全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利 は,制作者のP1に帰属するものとする。」と記載がある。 しかしながら,被告P3本人の尋問の結果によっても,被告ピー・エム・エーが, 原告と上記記載に係る合意を成立させる趣旨で,本件注文書に上記記載をしたとは 認められないし,他に,原告と被告ピー・エム・エーとの間で上記記載に係る合意 が成立したと認めるに足りる証拠は提出されていない。
ウ 原告ウェブサイトの制作の対価を324万円と定める本件制作業務委託契約 において,制作後の原告ウェブサイトの権利が原告に帰属するとすることが不合理 であることは前記(2)で述べたとおりであり,あえてそのように合意するとすれば, その合意は明確なものでなければならず,本件においてそのような合意が成立した と明確に認めるに足りる証拠がないことは上記ア及びイのとおりであるから,被告 ピー・エム・エーと原告の合意によって,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属 したと認めることはできない。
(4) 権利の濫用
ア 本件の事実関係を前提とすると,仮に,原告ウェブサイトの一部に,原告の 著作物と認めるべき部分が存在する場合であったとしても,以下に述べるとおり, 原告が,その部分の著作権を理由に,被告ウェブサイトに対する権利行使をするこ とは,権利の濫用に当たり許されないというべきである。
イ すなわち,前記認定したところによれば,原告は,原告ウェブサイト制作後, その保守管理を行っていたこと,被告ピー・エム・エーは,平成29年秋の時点で, 原告に対する支払を遅滞し,本件サーバの更新料も支払っていなかったこと,本件 サーバを使用継続するには,同年11月30日に最低1万2960円(12か月分) を支払う必要があったが,被告ピー・エム・エーはこれを徒過したこと,同年12 月12日,本件サーバは凍結され,原告ウェブサイトの利用ができなくなったこと, 被告ピー・エム・エーはその直後に原告に13万8240円を振り込み,原告ウェ ブサイトを復旧するよう原告に依頼したこと,本件サーバの規約によれば,原告ウ ェブサイトのようなドメインが失効した場合,利用期限日から30日以内であれば, 更新費用を支払えば復旧可能であること,原告は,同月13日,被告P4に対し,\n原告ウェブサイトのデータは失われ,復旧するには再度制作する必要があり,その 費用は434万円余であると伝えたこと,被告ピー・エム・エーは,原告の提案を 断って,P6に,原告ウェブサイトの復旧を依頼したこと,P6は,原告ウェブサ イトのデータを利用して被告ウェブサイトを作成し,平成30年1月ころ公開した こと,以上の事実が認められる。 原告本人尋問及び被告P3本人尋問の結果を総合しても,原告が被告ピー・エム・ エーに対し,本件サーバの更新費用を怠った場合のリスクについて,適切に警告し, 期限を徒過しないよう十分注意したとは認められないし,原告ウェブサイトの利用\nができなくなった直後に被告ピー・エム・エーが金員を原告に振り込み,本件サー バの規約ではデータの使用が可能な期限内であるのに,原告が,データが失われ復\n旧もできないと説明したことが適切であったことを裏付ける事情や,復旧のために 434万円余もの高額の費用が必要であると説明したことの合理的理由は見出し難 い。かえって証人P6は,サーバが凍結された場合,サーバ会社に料金を支払えば すぐ復旧することができ,特に作業等をする必要はない旨を証言している。 前記認定したところによれば,原告ウェブサイトは,新たな顧客のために,被告 ピー・エム・エーの事業内容を紹介するのみならず,すでに顧客,会員となった者 に対するサービスの提供も行っているのであるから,原告ウェブサイトの停止は, 被告ピー・エム・エーの企業としての活動を停止することであり,その制作・保守・ 管理を行った原告は,当然にこれを了解していた。
ウ 前記イで述べたところによれば,原告ウェブサイトが停止するまでの原告の 行為は,その保守・管理を受託した者として不十分であったというべきであるし,\n原告ウェブサイトの停止後の原告の行為は,原告ウェブサイトの停止が被告ピー・ エム・エーを窮地に追い込むことを知りながら,これを利用して,データは失われ た,復旧できないと述べて,法外な代金を請求したものと解さざるを得ない。 上述のとおり,原告ウェブサイトの停止は企業としての活動の停止を意味し,既 に検討したとおり,原告ウェブサイトの著作権は全体として被告ピー・エム・エー に帰属すると解されるのであるから,被告ピー・エム・エーが,法外な代金を請求 された原告との信頼関係は失われたとして,原告の十分な了解を得ることなく,原\n告ウェブサイトのデータを移転するようP6に依頼したとしても,やむを得ないこ とであると評価せざるを得ない。
エ これらの事情を総合すると,仮に,原告ウェブサイトの一部に原告の著作権 を認めるべき部分が存在していたとしても,本件の事情において,原告がその著作 権を主張して,被告ウェブサイトの利用等に対し権利行使することは,権利の濫用 に当たり許されないというべきである。
(5) 本件動画ウェブサイトについて
前記認定事実のとおり,本件動画ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーがソー\nシャルキャストのサービスを利用して提供していた授業の動画を,被告インタース テラーが引き継いだ後に,サブドメインを変更したウェブページであって,原告ウ ェブサイト及び被告ウェブサイトとは,内容も形式も全く異なるものである。 また,原告ウェブサイトと上記動画はもともと関連付けられていなかったところ, 本件サーバ凍結後,原告ウェブサイトから会員専用ウェブページを閲覧することが できなくなったため,被告ウェブサイト上において,「ログイン」ボタンを押すと 上記動画に遷移するよう設定され,サブドメインの変更に伴いリンク先も本件動画 ウェブサイトに変更されたものである。 したがって,仮に原告ウェブサイトの一部に原告の著作権が認められる場合であ っても,本件動画ウェブサイトの設定が,原告の著作権(複製権又は翻案権)侵害 となる余地はないといわざるを得ない。

◆判決本文

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平成29(ワ)37350  標章使用差止請求反訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年5月21日  東京地方裁判所

 ピクトグラムが表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないとして、著作権侵害が否定されました。ただ、両者の具体例は掲載されていないので詳細は不明ですが、「H君」(「H」の文字を人間に見立て,両足,顔,耳,口,両手を連\n想させる装飾を施した部分をいう。),ボックスボイテル型の瓶のシルエット(反訴原告標章5),エレキギターの黒塗りイラスト等のようです。

 反訴被告標章1,2及び5の作成,使用等によって,反訴原告標章1,2 及び5についての反訴原告の複製権又は翻案権が侵害されるか否かを検討 するため,反訴被告標章1と反訴原告標章1が同一性を有する部分について みると,これらは,深緑色の長方形(横長)の中に白いアルファベット文字 が配置されていること,そのアルファベット文字の書体,大きさ,文字間の 間隔及び配置のバランス,全ての文字が円の構成要素とされていること,「O\nFF」と「USE」のアルファベット文字の上部に三つの白丸で弧を描くよ うな装飾が施されていることなどで共通している。 アルファベット文字について著作物性を肯定するためには,その文字自体 が鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていなければならないと解 するのが相当である。反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文 字が反訴被告の店舗で使用等をするために様々な工夫を凝らしたものであ ることは反訴原告が主張するとおりであるとしても,それらの工夫による反 訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字は,いずれも「オフハ ウス」という名称をよりよく周知,伝達するという実用的な機能を有するも\nのであることを離れて,それらが鑑賞の対象となり得るような美的特性を備 えるに至っているとは認められない。また,その余の共通点については,い ずれもアイデアが共通するにとどまるというべきであり,仮にアイデアの組 合せを新たな表現として評価する余地があるとしても,それらはありふれた\nものであるといわざるを得ないから創作性は認められない。 したがって,反訴原告標章1と反訴被告標章1は,表現それ自体でない部\n分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから,\n仮に反訴原告標章1が著作物であるとしても,反訴被告標章1を作成等する 行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえない。また,上 記と同様の理由から,反訴被告標章2及び5を作成等する行為についても反 訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではない。
ウ 反訴被告ピクトグラムの作成,使用等により反訴原告ピクトグラムについ ての反訴原告の著作権が侵害されるか否かを検討するため,反訴原告ピクト グラムと反訴被告ピクトグラムが同一性を有する部分についてみると,反訴 原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,いずれも,反訴被告で取り扱 う商品である具体的な工業製品の外観を示した図といえるものである。そし て,これらは,Tシャツの前部中央に表示された表\現が異なる反訴原告ピク トグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−01ない し4−03を除く全てについて,具体的な形状が異なる製品を選択してこれ を表現したものである。したがって,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピク\nトグラムは,基本的に,同じジャンルの製品を選択してその外観を表してい\nる点において共通するにとどまるといえるものである。また,反訴原告ピク トグラムと反訴被告ピクトグラムにおいて,選択された製品の配置の角度, 複数の製品の種類の選択,レイアウトにおいて共通するものはあるが,これ らは,いずれも,アイデアであるか同種の表現を行うに当たり通常考え得る\nありふれた表現といえるものであり,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピク\nトグラムが創作性のある部分において共通するとはいえない。また,反訴原 告ピクトグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−0 1ないし4−03におけるTシャツの形状は概ね同じであるが,これらは極 めてありふれたTシャツの形状であり,その形状についての表現に創作性が\nあるとは認められない。 これらを考慮すると,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは, 表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部分において同一性を 有するにすぎないから,仮に反訴原告ピクトグラムの全部又はその一部が著 作物であるとしても,反訴被告ピクトグラムを作成等する行為は反訴原告の 複製権又は翻案権を侵害するものではない。

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平成31(ネ)10026  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年8月7日  知的財産高等裁判所  横浜地方裁判所  川崎支部

 書籍における素材の配列について,創作性を有する行為ではないとして、編集著作物に該当しないと判断されました。原審はアップされていません。

 控訴人は,編集著作物において素材の選択,配列を決定した者は問題 とならず,配列を行ったのは控訴人であるなどと主張する。しかしなが ら,控訴人の主張が,決定権限を持たずに素材の配列に関与した者,例 えば,単なる原案,参考案の作成者や,相談を受けて参考意見を述べた 者までがおよそ編集著作者となるというものであるとすれば,そのよう な主張は,著作者の概念を過度に拡張するものであって,採用すること はできない。また,本件において本件書籍の分類項目を設け,選択され た作品をこれらの分類項目に従って配列することを決定したのが被控訴 人であることは先に引用した原判決認定のとおりであって,当審におけ る控訴人の主張を踏まえてもかかる認定は左右されない。
イ また,控訴人は,被控訴人の前件訴訟における訴訟行為を捉えて,本 件において被控訴人は自分自身が編集著作者であると主張することは許 されないなどと主張する。 しかしながら,そもそも控訴人が前提とするところの,前件訴訟にお いて被控訴人が編集著作者でないと自白し,本件書籍が編集著作物であ れば控訴人が編集著作者であると認めたなどとする事実関係を裏付ける 証拠はないから,控訴人の主張はその前提を欠くものである。かえって, 控訴人による本件訴訟は,前件訴訟においてAが敗訴したことを受けて, 原告を控訴人とするとともに,Aは控訴人の代理人であったなどとして, 実質的には前件訴訟と同様の事実関係の主張を繰り返すものに過ぎず, 前件訴訟の蒸し返しであるといわざるを得ない。 上記の控訴人の主張は採用できない。
(3) 以上によれば,控訴人が決定し,Aに行わせたとする事務自体,本件書 籍における素材の配列について,創作性を有する行為であったとはいえな いから,控訴人が本件書籍の編集著作者であるとは認められない。

◆判決本文

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平成28(ワ)8552  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年4月18日  大阪地方裁判所(21部)

 Tシャツに描かれた猫のイラストについて、著作権侵害が認められました。損害額について「法114条3項の著作権の行使につき受けるべき金銭の額を算定するに当たっては,特段の事情のない限り,販売店に対する卸売価格ではなく,販売店における小売価格を基準とするのが相当である・・」と判断しています。
 まず,原告イラストと被告イラスト1ないし4は,丸まって眠っている猫を 上方から円形状にほぼ収まるように描くとともに,片前足と片後ろ足と尻尾をほぼ 同じ位置でまとめて描きつつ,耳や片後ろ足を若干円形状から突出して描いている 点で共通している。これらの共通点は,前記1で認定した原告イラストの創作性が 認められる表現上の特徴部分そのものであり,上記各被告イラストの表\現上の特徴 は,原告イラストのそれと共通しているといえる。 他方,原告イラストでは猫の目の周囲が黒いのに,上記各被告イラストはそうで はないが,全体からすると微差にとどまるものというべきである。 また,上記各被告イラストでは,猫の胴体部分に波様の紋様が描かれており,原 告イラストの雲様の紋様とは異なっているが,前述のとおり,原告イラストの表現\n上の特徴は,上半分に猫と分かるよう描かれた模様が徐々に変化して抽象的な紋様 につながり,猫の片前足の付け根の模様が,下半分の紋様にも使われるなど,猫を 描いた部分と抽象的な紋様とが連続的,一体的に構成され,全体として略円形状の\nマークのような印象を与える点にあると解され,上記各被告イラストは,これらを すべて有していると認められるが,下半分の抽象的な紋様にどのようなものを用い るかは表現上の本質的特徴といえるものではない。\n以上より,原告イラストと上記各被告イラストとの上記共通点に照らせば,上記 各被告イラストは,原告イラストを有形的に再製したものと認めることができる。
イ 被告イラスト5ないし8について
上記アで認定した原告イラストと被告イラスト1ないし4の共通点は,被告 イラスト5ないし8にも認められる。 他方,被告イラスト5ないし8には,猫の前足が2本とも描かれる一方で,ひげ が描かれておらず,抽象的な紋様が唐草様であるといった相違点もみられるが,そ れらの前足は片後ろ足や尻尾とほぼ同じ場所にまとめて描かれており,前記1で認 定した原告イラストの表現上の特徴は維持されているといえるし,ひげの有無等の\n相違点は微差であり,抽象的な紋様の相違は本質的ではない。 以上より,上記各被告イラストは,原告イラストを有形的に再製したものと認め ることができる。
ウ 被告イラスト9ないし12について
上記アで認定した原告イラストと被告イラスト1ないし4の共通点は,被告 イラスト9ないし12にも認められる。 他方,被告イラスト9ないし12には,猫の前足が2本とも描かれ,そのうち左 前足が円形状の外に突出しているという相違点や,足裏(肉球)が見えるように描 かれている(したがって,猫が両前足を上げているように描かれている)という相 違点等が認められる。 しかし,右前足は片後ろ足や尻尾とほぼ同じ場所にまとめて描かれており,前記 1で認定した原告イラストの表現上の特徴が基本的に維持されているということが\nできるし,左前足が円形状から突出しているものの,耳や片後ろ足の円形状からの 突出の程度は原告イラストと同程度にすぎず,丸まって眠っている猫を上方から描 き,猫を描いた部分と抽象的紋様の部分が連続的,一体的に構成され,全体として\n略円形状のマークのように見えるという原告イラストの基本的な特徴は維持されて おり,上記相違点によって,原告イラストの表現上の本質的な特徴を感得できなく\nなるものとは認められない。 以上より,上記各被告イラストは,原告イラストの表現上の本質的な特徴の同一\n性を維持しつつ,一部を変更したものと認めることができる。
エ 被告イラスト13ないし16について
被告イラスト13ないし16は,被告イラスト5ないし8と類似している点 が多く,被告イラスト13ないし16では,顔の傾きや2本の前足の重ね具合,片 後ろ足が円形状の中に収められている点等が異なっているものの,ひげが描かれて いる点で原告イラストに近く,全体として前記イの判断が妥当するといえる。 したがって,上記各被告イラストは,原告イラストを有形的に再製したものと認 めることができる。
オ 被告イラスト17ないし20について
被告イラスト17ないし20は,そもそも丸まって眠っている猫を描いたも のではなく,前記1で認定した原告イラストの表現上の特徴との共通点がみられな\nい。したがって,上記各被告イラストは原告イラストを有形的に再製したものとは 認められないし,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持していると認めること\nもできない。
・・・・
 原告は,要旨,被告の卸売先である販売店の小売価格に,原告が利用するT シャツ販売サイトに準じた使用料率を乗じて,著作権法114条3項の損害の額を 算定すべきであると主張するのに対し,被告は,被告の販売店に対する販売金額(基 準卸値,卸売価格)に,より一般的な使用料率を乗じ,さらに販売店から返品され たものについては控除して,これを算定すべきであると主張する。
イ 被告に販売店から返品された商品の売上げを含むことの当否 著作権法114条3項に基づく損害を算定する基礎となる譲渡数量に,被告 が販売店から返品を受けた商品の数を含むべきか,換言すれば,使用料率を乗じる 売上額から返品分に係る売上額を控除すべきかについて,当事者間に争いがある。 しかし,被告は返品を受けた被告商品を含めて製造し,その時点で原告イラスト についての原告の複製権又は翻案権の侵害が発生し,それを販売店に販売すること によって一旦売上げが計上されたのであるから,被告が製造し,販売店に販売した 被告商品の数をもって上記譲渡数量と認めるのが相当であり,返品を受けた商品の 数(売上げ)を控除すべき旨の被告の主張は採用することができない。 この点については,被告が提出する乙14の第6条において,ジャージやTシャ ツに関する商品化権許諾契約の対価(使用料)は使用料単価に「製造数量」を乗じ て算定することとされ,その「製造数量」には見本品,試供品その他販売,頒布を 目的としない商品についても含まれるものとされており(同1条3項),まさに製 造された商品の数量によって使用料を算定することが定められている。被告商品は 上記契約の対象とされるジャージやTシャツと同じ種類の物品であるから,乙14 の上記条項は,被告商品についても,製造され,販売店に販売された商品の数量(売 上げ)をもとに使用料を算定することを正当化する根拠になると考えられる。
ウ 使用料率
(ア) 原告の主張について
まず,原告は自らがデザイナー登録してTシャツ等を販売しているサイト における報酬割合(甲24の2)や報酬パーセンテージ(甲45)を引用したり, 原告が実際に支払を受けていた報酬額と販売価格とを対比したりして,本件では少 なくとも25%の使用料率が相当であると主張している。 しかし,原告がデザイナー登録しているサイトは,前記1(1)で認定したとおり, デザイナー等を応援することをコンセプトとしたものであったり,デザイナーが自 らデザインしたイラストを付したTシャツを販売したりするためのサイトとしての 性質も有しており,原告イラストあるいは原告の作品自体を入手することを目的と して購入する者が多いと考えられるのに対し,被告による商品の販売態様は,主と して,ショッピングモールに店舗を構えるなどして,多種多様な商品を販売する販\n売店(量販店)に対して商品を販売するというものであり,販売態様が大きく異な っている。 また,原告がデザイナー登録しているサイトにおいては,上記性質上,必ずしも 一般的に,商品登録の際に多くの販売(売上げ)が見込まれるという性質のものと まで認めることはできないのに対し,被告は上記のような量販店に商品を販売する ことから,被告商品の製造販売を開始する時点で,ある程度の販売数(売上げ)が 見込まれるのが一般的と推認される。 このように,商品の販売実態も,原告が引用している販売サイトの例と,被告の 例とでは大きく異なっているから,上記のように著作物が複製等された商品が量販 店に対して販売され,かつ,ある程度の販売数(売上げ)が見込まれる本件におい て,「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を算定するに当た り,商品の販売態様や販売実態の異なる原告主張の販売サイトの報酬割合等を参考 にすることは相当でないといわざるを得ない。なお,原告は甲46ないし48の例 も引用しているが,その実態は以上検討した例と変わるものではなく,甲46ない し48にも以上の判示が同じく妥当する。
(イ) 本件の使用料率
a 上記(ア)の判示を踏まえると,本件では,著作物が複製等された商品 が量販店に対して販売され,かつ,ある程度の販売数(売上げ)が見込まれる場合 を前提とした使用料率によるのが相当であるところ,そのような契約の例としては, 被告が引用している乙14の契約の例が挙げられ,被告商品の販売態様・販売実態 と同じ例と認められるから,本件の使用料率を算定にするに当たって,これを参考 にするのが相当である。
b また,乙14の契約は,乙17ないし19(甲54の1ないし3も 参照)の各商品について商品化権を許諾した契約であるから,これらとは商品にお ける著作物の使用割合等が異なれば,当然,使用料単価(使用料率)も異なってく るものと考えられる。したがって,本件において乙14の契約の例を参考にするに 当たっては,被告商品における原告イラストを複製又は翻案した被告イラスト(被 告イラスト17ないし20を除く。以下同じ。)の使用割合,ないし売上げへの寄 与を考慮すべきである。 そのような観点から被告商品を見てみると,被告商品においては,被告イラスト のみを単独で付したようなものはなく,被告において作成した他のデザイン,他の 紋様と組み合わせる形で,全体的なデザインの一部として被告イラストが使用され ており,例えば,被告商品4,16,18及び21のように,被告イラストが比較 的目立つように付されている商品がある一方で,被告商品5のように被告イラスト が見えにくい商品や,被告商品19のように別のイラストの方が相当目立つ形で付 されている商品等があり,商品における被告イラストの使用割合は相当異なってい る。 したがって,本件の使用料率を認定するに当たっては,原告イラストを複製又は 翻案した被告イラストの商品における使用割合(大きさや数)を考慮するのが相当 であり,その際には,乙14で使用料単価(使用料率)が定められた乙17ないし 19の各商品においては,キャラクターが比較的大きく描かれていることを踏まえ つつ,相当な使用料率を認定すべきと考えられる。
c 被告の主張について
被告は,被告商品では被告のオリジナルな図柄も描かれていることを指 摘しているが,そのことは乙17ないし19の各商品においても同じであるから, 乙14を参考にする場合には,上記bで述べた被告商品における被告イラストの使 用割合の中で考慮すれば足りると考えられる。 また,被告は,被告イラストごとに,原告イラストと関連する程度に応じて使用 料率を考慮すべき旨を主張しているが,被告イラストは原告イラストを複製又は翻 案したもので,前記2の判示によれば,原告イラストの表現上の本質的な特徴を強\nく感得することができるものと認められるから,上記被告が主張する点を,使用料 率の認定に当たり考慮する必要はないというべきである。 さらに,被告は乙14の契約の例が国民的人気を誇るキャラクターについての契 約であることを強調しているが,乙14の契約においてどのような点を考慮して使 用料単価(使用料率)が定められたのかは不明であるし,また乙14の契約は商品 の小売価格が1万1000円ないし1万7000円であることを前提としたもので あるところ,被告商品の小売価格は,一部1万円を超えるものがあるものの,大半 は7000円程度であり,安い商品では5000円を下回っている(甲6ないし1 4,16ないし18,弁論の全趣旨)から,乙14の契約の例では,結果的に使用 料単価が高く設定されているとみることもでき,本件で乙14の契約の例よりも使 用料率を低くすべき事情があるとまでいうことはできない。
d 小売価格と卸売金額のいずれをもとに算定すべきか 著作権法114条3項の著作権の行使につき受けるべき金銭の額を算定 するに当たっては,特段の事情のない限り,販売店に対する卸売価格ではなく,販 売店における小売価格を基準とするのが相当であるが,その場合においても,被告 が当初販売店に卸売りした際に予定していた価格(定価,標準価格)に固定するの\nではなく(原告はそれを前提とする主張をする。),被告商品においては,季節の 変わり目に被告商品を値下げして販売することもやむを得ないと解されるから,販 売店が値下げして販売した場合には,その値下げ後の価格をもとに算定するのが相 当である。 そして,本件では,被告商品が販売店において,実際にいくらで販売されたかを 認めるに足りる証拠はないが,被告の卸売金額から逆算して販売店での販売価格を 認定することができ,被告は,販売店がこの金額で被告商品を販売することを前提 に,販売店に卸売りしたのであるから,この販売店での販売価格に基づき,原告が 受けるべき金銭の額を算定するのが相当である。 被告が販売店に対して卸売りした被告商品に係る卸売金額(返品分を含む。)は, 別紙「損害額(販売店関係)計算表(裁判所認定)」の「販売店関係の売上額(円) …4)」欄記載のとおりであるところ(乙12,13),被告は販売店に卸売りする に当たり,原則として小売価格を基準卸値の2倍の金額に設定していること(弁論 の全趣旨)を踏まえると,販売店における販売額は,その金額の2倍に相当する金 額(同別紙の「販売店における販売額(円)」欄記載のとおり)と認めることができ る。 以上に対し,被告が通販サイトにおいて小売りした被告商品については,被告が 実際に販売した金額(別紙「損害額(通販サイト関係)計算表(裁判所認定)」の\n「通販サイト関係の売上額(円)」欄記載の金額。乙13)をもとに算定することに なる。
e 上記a及びbで判示した諸事情を考慮しつつ,乙14を参考にする と,本件の使用料率は次の通り認定するのが相当である(別紙「損害額(販売店関 係)計算表(裁判所認定)」及び「損害額(通販サイト関係)計算表\(裁判所認定)」 の「使用料率」欄参照)。
(a) 被告イラストの使用割合,ないし売上げへの寄与が比較的高いもの 小売価格の5%被告商品4,16,18,21
(b) 被告イラストの使用割合,ないし売上げへの寄与が比較的小さいもの 小売価格の3%
被告商品19
(c) 被告イラストの使用割合,ないし売上げへの寄与が極めて小さい もの 小売価格の2%
被告商品5
(d) 被告イラストの使用割合,ないし売上げへの寄与が平均的なもの 小売価格の4%
上記(a)ないし(c)記載の商品以外のもの
f 上記d及びeをもとに著作権法114条3項に基づく損害の額を算 定すると,次のとおりとなる。
(a) 被告が販売店に販売した商品に係る分 別紙「損害額(販売店関係)計算表(裁判所認定)」の右下欄記載の\nとおり,合計121万9681円となる。
(b) 被告が通販サイトにおいて小売価格で販売した商品に係る分 別紙「損害額(通販サイト関係)計算表(裁判所認定)」の右下欄記\n載のとおり,合計3889円となる。
(c) 以上より,著作権法114条3項に基づく損害は,合計122万 3570円である。
(2) 慰謝料
本件で認定した被告の行為態様が,原告イラストを複製又は翻案した被告イラ ストを多種多様な衣類等に付して幅広く販売し,被告商品の写真を被告が運営する ホームページにアップロードするというものであること,原告イラストと被告イラ ストとが類似又は酷似しているにもかかわらず,被告は,本件訴訟で著作権侵害等 を争っていること,他方で,被告は,被告イラストを商業的に利用しているのであ って,原告イラストを揶揄したりすることを目的に翻案等しているのではないこと, 以上の点を指摘することができるのであり,その他の本件に現れた一切の事情を総 合すると,原告の著作者人格権侵害による慰謝料は30万円と認めるのが相当であ る。 原告イラストは以下です http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/670/088670_option1.pdf 被告イラストおよび対比は以下です http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/670/088670_option2.pdf

◆判決本文

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平成31(ネ)500  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年7月25日  大阪高等裁判所  棄却

 チラシの著作物性について1審と同様に著作物性無しと判断されました。 競業避止義務についても、合意なしとした原審を維持しました。

 控訴人は,被控訴人が旧大阪駅前店等の運営を控訴人に委託していたとい う両者の関係に照らし,被控訴人は控訴人に対し信義則上競業避止義務を負 うとも主張する。
被控訴人が旧大阪駅前店等の運営を控訴人に委託することになったのは, 眼科医であるP4が,その経営する会社においてコンタクトレンズ販売店を 営もうと考え,当時提携関係にあり,コンタクトレンズ販売店経営の豊富な 経験を有するP1に相談したことがきっかけであった(甲28,30,乙3 0,31)。この時P4は,控訴人への運営委託を通じて販売店経営のノウ ハウを蓄積し,いずれは独力で販売店経営を行うことを当然想定しており, P1もこれを当然承知していたと認められる。その意味で,控訴人と被控訴 人は,いずれもコンタクトレンズ販売店の経営を行う会社として,旧大阪駅 前店等の運営委託関係があった当時から競業関係にあったといえる。 競業者同士が提携関係にある状況においては,提携によって利益を得つつ, 一方が他方を出し抜いて自己の営業上の利益のみを追求する行動に出ること は,信義則に反すると評価される場合があり得ると考えられる。そのような 場合,信義則上相互に競業避止義務を負うと説明することもできるであろう。 しかし,提携関係が解消された後においては,両者とも営業の自由を有する のであるから,競業避止義務について特に合意をしたのでない限り,自由競 争の範囲内において自己の営業上の利益を追求して競業することが妨げられ ることはないのであって,一方が他方に対し信義則上競業避止義務を負うと いうことはできない。
控訴人と被控訴人は,平成28年6月までには提携関係を解消しており, また,上記(1)において判断したとおり,その間に競業避止義務についての 合意があったとは認められない。したがって,その後,被控訴人が控訴人に 対し信義則上競業避止義務を負っていたということはできない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)6322

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平成30(ワ)16791  著作権に基づく差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年5月15日  東京地方裁判所

 問題集は、編集著作物に該当する、解説は著作物と判断されましたが、本件解説の本質的特徴の同一性に欠けるとして、著作権侵害ではないと判断されました。 複製については、「被告は,実名は明らかにできないが,原告の経営する塾に在籍する複数の生徒から問題の原本を入手し解説講義を行っており,被告が本件問題を複製した事実は一切なく,生徒から任意に本件問題の原本を入手したものである。」と主張しています。

争点(1)(本件問題及び本件解説の著作物性の有無)について
(1) 証拠(甲4の1,5の1)によれば,本件問題のうち,国語Aの1は物語 文の,同2は論説文の読解問題であり,いずれも問1〜10から構成され,\n国語Bの1は物語文の,同2は説明文の読解問題であり,いずれも問1〜5 から構成されていることが認められる。\n また,証拠(甲4の2,5の2)によれば,本件解説には,解答部分,配 点部分,解説部分から構成され,解説部分には,設問ごとに,問題の出題意図,\n題材とされた文章のうち着目すべき箇所,当該箇所に係る文章の理解方法, 正解を導き出すための留意点等が記載されている。 他方,被告ライブ解説(甲1)は,本件問題について,同問題に係るテス トの終了後に,被告の担当者等がウェブ上の動画において口頭でその解説を するものであり,本件問題及び本件解説が画面上に表示されることはない。\n
(2) 著作権法12条は,「編集物…でその素材の選択又は配列によって創作性 を有するものは,著作物として保護する。」と規定するところ,被告は,本 件問題について,「どの部分を問題とするのか」,「何を問うのか」は問題 作成におけるアイデアにすぎないとして,本件問題は編集著作物に該当しな いと主張する。 しかし,国語の問題を作成する場合において,数多くの作品のうちから問 題の題材となる文章を選択した上で,当該文章から設問を作成するに当たっ ては,題材とされる文章のいずれの部分を取り上げ,どのような内容の設問 として構成し,その設問をどのような順序で配置するかについては,作問者\nが,問題作成に関する原告の基本方針,最新の入試動向等に基づき,様々な 選択肢の中から取捨選択し得るものであり,そこには作問者の個性や思想が 発揮されているということができる。本件問題についても,題材となる作品 の選択,題材とされた文章のうち設問に取り上げる文又は箇所の選択,設問 の内容,設問の配列・順序について,作問者の個性が発揮され,その素材の 選択又は配列に創作性があると認めることができる。 したがって,本件問題は編集著作物に該当する。
(3) 本件解説は,前記のとおり,本件問題の各設問について,問題の出題意図, 正解を導き出すための留意点等について説明するものであり,各設問につい て,一定程度の分量の記載がされているところ,その記載内容は,各設問の 解説としての性質上,表現の独自性は一定程度制約されるものの,同一の設\n問に対して,受験者に理解しやすいように上記の諸点を説明するための表現\n方法や説明の流れ等は様々であり,本件解説についても,受験者に理解しや すいように表現や説明の流れが工夫されるなどしており,そこには作成者の\n個性等が発揮されているということができる。 したがって,本件解説は創作性を有し,言語の著作物に該当するというべ きである。
2 争点(2)(複製又は翻案該当性)について
(1) 複製について
原告は,被告が本件問題及び本件解説の複製を自ら行っているか,仮に, 自ら複製行為を行っていないとしても,保護者又は生徒をいわば手足のよう に利用して複製をさせているのであるから,被告自身が複製を行ったと同視 し得ると主張する。 しかし,被告は,複数の原告学習塾の生徒から問題の原本を入手し解説を 行っている事実は認めるものの,問題を複製した事実は否認するところ,本 件においては,被告が自ら本件問題及び本件解説文を複製したと認めるに足 りる証拠はない。 また,被告が,指導者としての強い立場を利用し,保護者又は生徒に本件 問題等の複製を依頼し,あるいは,複製の費用を負担し,金銭や便宜を供与 するなどの働きかけをして保護者や生徒に本件問題等の複製を依頼したとの 事実を認めるに足りる証拠もない。そうすると,仮に,保護者又は生徒が本 件問題等の複製を行い,複製した本件問題の写しを被告に交付したとしても, そのことから直ちに被告自身が複製を行ったと同視することはできない。 したがって,被告が原告の有する複製権を侵害したとの主張は理由がない。
(2) 翻案について
ア 著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ, その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的な表\現に修正, 増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することによ\nり,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得す\nることのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成11年(受) 第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁 参照)。
イ 被告ライブ解説においては,前記1(1)のとおり,本件問題の全部又は一 部の画像を表示しておらず,また,口頭で本件問題の全部又は一部を読み\n上げるなどの行為もしていない。そうすると,被告ライブ解説は本件問題 の本質的な特徴の同一性を維持しているということはできず,被告ライブ 解説に接する者が本件問題の素材の選択又は配列に係る本質的な特徴を直 接感得することができるということはできない。 したがって,被告ライブ解説が本件問題を翻案したものであるとは認め られない。
ウ 本件解説に関し,原告は,被告ライブ解説と本件解説は同様の問題につ いて,同じ視点から解説したものであり,同じ目的の下,同じ解答に至る 考え方を説明したものであるから,その本質的な特徴は同一であると主張 する。 しかし,原告が翻案権侵害を主張する設問について,本件解説と被告ラ イブ解説の対応する記載を対比しても,表現が共通する部分はほとんどな\nい。例えば,国語Aの1の問5に関する本件解説と被告ライブ解説を比較 しても,共通する表現は「険のある」,「祐介」など,ごくわずかな部分に\nすぎず,被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持している ということはできない。本件解説の他の設問に係る部分についても,本件 解説と被告ライブ解説とで表現が共通する部分はほとんど存在せず,当該\n各設問に係る被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持して いるということはできない。 したがって,本件ライブ解説が本件解説を翻案したものであるとは認め られない。

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平成29(ワ)31572  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和元年6月18日  東京地方裁判所

 イッセイミヤケデザインのバッグなどについて、周知商品等表示・著名商品等表\示であると判断されました。なお、あわせて、著作権侵害かも争われましたが、「実用目的で工業的に製作された製品について,その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,・・・上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合がある」と一般基準を述べましたが、本ケースでは著作物性無しと判断されました。
判決文の最後にバックなど形状を示す写真があります。

 原告商品は, で述べたとおり,わずかな例外を除いて本件形態 1´を備え,メッシュ生地又は柔らかな織物生地に,相当多数の硬質な三角 形のピースが,2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるよ うに配置されることにより,中に入れる荷物の形状に応じてピースに覆われ た表面が基本的にピースの形を保った状態で様々な角度に折れ曲がり,立体\n的で変化のある形状を作り出す。一般的な女性用の鞄等の表面は,布製の鞄\nのように中に入れる荷物に応じてなめらかに形を変えるか,あるいは硬い革 製の鞄のように中に入れる荷物に応じてほとんど形が変わらないことから すれば,原告商品の形態は,従来の女性用の鞄等の形態とは明らかに異なる 特徴を有していたといえる。このことは,新聞や雑誌といったメディアにおいて「画期的なデザインのバッグ」(前記(1)カウ),「シンプルなピースが集 まって 自在に変化するユニークな形」前記(1)カカ),「三角形のパーツをつなぎあわせたフューチャリスティックなデザイン(前記(1)カテ),「特徴 がはっきりしているので販売企業がイッセイミヤケだとすぐ判別でき」る 前記(1)カセ)などと,そのデザインの独特さ,斬新さが取り上げられ,平 成19年秋にはデザイン性と機能性を併せ持ったアイテムだけを厳選して\n掲載するニューヨーク近代美術館のデザインショップ・カタログの表紙に採\n用されたことからも裏付けられ,原告商品の形態は,これに接する需要者に 対し,強い印象を与えるものであったといえる。 したがって,原告商品の本件形態1´は,客観的に他の同種商品とは異な る顕著な特徴を有していたといえ,特別顕著性が認められる。
・・・
 原告商品1ないし6は,ショルダーバッグ,携帯用化粧道具入れ,リュック サック及びトートバッグであり,いずれも物品を持ち運ぶという実用に供され る目的で同一の製品が多数製作されたものであると認められる。  著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を 創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するも\nのをいう」(同法2条1項1号)と規定しているところ,その定義や著作権法の 目的(同法1条)等に照らし,実用目的で工業的に製作された製品について, その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,その特徴と は別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できないもの は,「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」ということはできず著\n作物として保護されないが,上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性 を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合 があると解される。
(3) これを原告商品1ないし6についてみるに, のとおり,原告商品1な いし6は,物品を持ち運ぶという実用に供されることが想定されて多数製作さ れたものである。
そして,原告らが美的鑑賞の対象となる美的特性を備える部分と主張する原 告商品1ないし6の本件形態1は,鞄の表面に一定程度の硬質な質感を有する\n三角形のピースが2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰める ように配置され,これが中に入れる荷物の形状に応じてピースの境界部分が折 れ曲がることにより様々な角度がつき,荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変 形するという特徴を有するものである。ここで,中に入れる荷物に応じて外形 が立体的に変形すること自体は物品を持ち運ぶという鞄としての実用目的に 応じた構成そのものといえるものであるところ,原告商品における荷物の形状\nに応じてピースの境界部分が折れ曲がることによってさまざまな角度が付き, 鞄の外観が変形する程度に照らせば,機能的にはその変化等は物品を持ち運ぶ\nために鞄が変形しているといえる範囲の変化であるといえる。上記の特徴は, 著作物性を判断するに当たっては,実用目的で使用するためのものといえる特 徴の範囲内というべきものであり,原告商品において,実用目的で使用するた めの特徴から離れ,その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備\nえた部分を把握することはできないとするのが相当である。 したがって,原告商品1ないし6は美術の著作物又はそれと客観的に同一な ものとみることができず,著作物性は認められないから,その余の点について 判断するまでもなく,原告らの著作権侵害に基づく請求には理由がない。

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平成30年(ワ)第466号 著作権に基づく差止等請求事件 令和元年7月11日 奈良地方裁判所

 電話ボックスを金魚鉢にみたてた現代アートについて、著作物性は認めましたが、 複製ではないと判断されました。問題の作品については判決文よりも下記写真の方がわかりやすいです。https://this.kiji.is/521862833728078945?fbclid=IwAR3SJE_DfyKsf9UNjJTXiLG1XrQs9kzhhkcDdj6XMD9DBeFvihaoK9tcon8

 著作権法は,著作権の対象である著作物の定義について「思想又は感情を 創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属する\nものをいう。」(同法2条1項1号)と規定しており,作品等に思想又は感情 が創作的に表現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものと\nして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイディアなど 表現それ自体ではないもの又は表\現上の創作性がないものは,著作物に該当 せず,同法による保護の対象とはならないと解される。 また,アイディアが決まればそれを実現するための方法の選択肢が限られ る場合,そのような限られた方法に同法上の保護を与えるとアイディアの独 占を招くこととなるから,この点については創作性が認められず,同法上の 保護の対象とはならないと解される。
(2)そこで,原告作品の基本的な特徴に着目すると,1)公衆電話ボックス様の 造形物を水槽に仕立て,その内部に公衆電話機を設置した状態で金魚を泳が せていること,2)金魚の生育環境を維持するために,公衆電話機の受話器部 分を利用して気泡を出す仕組みであることが特徴として挙げることができる。 このうち,1)については,確かに公衆電話ボックスという日常的なものに, その内部で金魚が泳ぐ、という非日常的な風景を織り込むという原告の発想自 体は斬新で独創的なものではあるが,これ自体はアイディアにほかならず, 表現それ自体ではないから,著作権法上保護の対象とはならない。\nまた,2)についても,多数の金魚を公衆電話ボックスの大きさ及び形状の 造作物内で泳がせるというアイディアを実現するには,水中に空気を注入す ることが必須となることは明らかであるところ,公衆電話ボックス内に通常 存在する物から気泡を発生させようとすれば,もともと穴が開いている受話 器から発生させるのが合理的かつ自然な発想である。すなわち,アイディア が決まればそれを実現するための方法の選択肢が限られることとなるから, この点について創作性を認めることはできない。 そうすると,上記1),2)の特徴について,著作物性を認めることはできな いというべきである。
(3)他方,原告作品について,公衆電話ボックス様の造作物の色・形状,内部に 設置された公衆電話機の種類・色・配置等の具体的な表現においては,作者\n独自の思想又は感情が表現されているということができ,創作性を認めるこ\nとができるから,著作物に当たるものと認めることができる。
2 争点2(被告作品による原告作品の著作権侵害の有無)について
(1)被告作品と原告作品の対比
被告作品と原告作品を対比すると,次の点を指摘することができる(甲7, 22,25,26,51の1.2)。
 ア 公衆電話ボックス様の造作物
原告作品と被告作品は,いずれも我が国で見られる一般的な公衆電話ボ ックスを模した,垂直方向に長い直方体で,側面の4面がガラス張りの造 作物内部に水を満たし,その中に金魚を泳がせている。 しかしながら,原告作品は屋根部分が黄緑色様であるのに対し,被告作 品は屋根部分が赤色である。また,被告作品は実際に使用されていた公衆 電話ボックスの部材を利用しているのに対し,原告作品はこれを使用せず, アルミサッシや鉄枠等を組み合わせて制作されている。 イ造作物内部に設置された公衆電話機 原告作品と被告作品は,いずれも上記造作物内部に棚板を二枚設置し, 上段に公衆電話機が設置されている。 しかしながら,原告作品の公衆電話機は黄緑色様であるのに対し,被告 作品の公衆電話機は灰色であり,公衆電話機のタイプも異なっている。ま た,棚板について,原告作品は水色で,形は二段とも正方形であるのに対 し,被告作品は銀色で,下段の形は三角形である。
ウ 受話器部分
原告作品と被告作品は,いずれも受話器がハンガー部分又は本体から外 された状態で水中に浮かんでおり,受話器の受話部分から気泡が発生して いる。
(2)検討
ア 著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであり,既存\nの著作物に依拠して作成,創作された著作物が,思想,感情若しくはアイ ディア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作 性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合に は,著作物の複製には当たらないものと解される。
イ 前記1で判示したところによれば,原告が同一性を主張する点(前記第 2の3(2)ア(ア))は著作権法上の保護の及ばないアイディアに対する主張で あるから,原告の同一性に関する上記主張はそもそも理由がない。 なお,事案に鑑み,具体的表現内容について原告作品と被告作品との間\nに同一性が認められるか否かについて検討するに,前記(1)で指摘したとお り,原告作品と被告作品は,1)造作物内部に二段の棚板が設置され,その 上段に公衆電話機が設置されている点,2)同受話器が水中に浮かんでいる 点は共通している。しかしながら,1)については,我が国の公衆電話ボッ クスでは,上段に公衆電話機,下段に電話帳等を据え置くため,二段の棚 板が設置されているのが一般的であり,二段の棚板を設置してその上段に 公衆電話機を設置するという表現は,公衆電話ボックス様の造作物を用い\nるという原告のアイディアに必然的に生じる表現であるから,この点につ\nいて創作性が認められるものではない。また,2)については,具体的表現\n内容は共通しているといえるものの,原告作品と被告作品の具体的表現と\nしての共通点は2)の点のみであり,この点を除いては相違しているのであ って,被告作品から原告作品を直接感得することはできないから,原告作 品と被告作品との同一性を認めることはできない。

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平成30(ワ)38579    著作権  民事訴訟 平成31年4月26日  東京地方裁判所

 原告の発言が含まれているDVDを販売したとして著作権侵害と争いましたが、著作物性無しと判断されました。本人訴訟です。

 そこで検討するに,被告株式会社フジテレビジョン作成のDVDに収録されている 音声には,「A」(甲57の1),「ストップ。ははははは。」(甲61の1),「あたた」(甲62の1)と認識される可能性が否定できないものがあるが,これらの音声はいずれもその発言者が上記のように認識される可能\性がある音声を偶々発言したにす ぎないものと認められるから,その意味内容や表現として,原告の名前を発言したも\nのとも,原告の平穏生活権を侵害する発言とも,原告作品を発言したものとも認めら れない。そして,原告が提出する映像(甲1ないし68の各1)には,上記以外に, その反訳書(甲1ないし68の各2)において原告が指摘する発言が収録されている とは認められないから,被告らにおいて,原告の著作権(複製権,翻案権,同一性保 持権又は公表権),名誉権,プライバシー又は平穏生活権を侵害し,又は脅迫若しく\nは侮辱に該当する発言が収録された映像を放送したこと又はそのDVDを販売する などしたことを認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。そうす ると,原告の被告らに対する請求はいずれも理由がない。

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平成30(ネ)10081等  不正競争行為差止等請求控訴事件等  不正競争  民事訴訟 令和元年5月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(2部)は、マリカー事件について、中間判決をしました。論点は色々ありますが、1審の判断がほぼそのままとなっています。

 一審被告らは,一審被告会社は,「マリカー」の標準文字からなる本件商標を 有しており,「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから,仮に 被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても,差止請求や損害賠 償請求は認められない旨主張する。 しかし,本件商標の登録出願がされたのは平成27年5月13日であるところ, 前記4(2)で検討したとおり,その頃までには,原告文字表示マリオカート及び「M ARIO KART」表示は日本国内で著名となっており,かつ原告文字表\示マリカーも, 「マリオカート」を示すものとして,日本国内の本件需要者の間で周知になってい て,かつ後記8のとおり,一審被告会社の代表者である一審被告Yはそのことを知\nっていたものと認められる。
これに加え,1)一審被告会社が設立当初の商号を敢えて「株式会社マリカー」と していたこと,2)平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されて いた本件チラシには,「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状 態!!」と記載されていたこと(甲3,4),3)平成28年8月12日当時に品川 第1号店サイト1には,「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ 倍増」と記載されるとともに,「マリオ」のコスチュームを着用した人物の写真が 同記載に併せて掲載され,また,平成29年2月23日当時に品川第1号店サイト 1に「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されて いたこと(甲6の1,甲35),4)平成29年2月23日当時に,河口湖店サイト に「スーパーマリオのコスプレをして乗れば,まさにリアルマリオカート状態!!」 と記載されていたこと(甲6の2),5)後記6認定のとおり,一審原告の著名な商 品等表示である原告表\現物に類似する被告標章第2のコスチュームを用いた宣伝行 為や本件各コスチュームを用いた本件貸与行為が行われ,特に,平成27年11月 2日にアップロードされた本件動画1(甲42の1,甲43の1)の0:05秒時 点には「MARIOKART」という英語の音声が収録され,かつ同音声について,「マリ オカート」の日本語字幕が付けられていたことも考え併せると,一審被告会社は, 周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示が持つ顧客吸引力を不当に利\n用しようとする意図をもって本件商標に関する権利をゼント社より取得したものと 推認することができる。
したがって,一審被告会社が,一審原告に対し,本件商標に係る権利を有すると 主張することは権利の濫用として許されないというべきであり,一審被告らの上記 主張は理由がない。
なお,一審被告らは,原告文字表示マリカーは本件需要者である訪日外国人の間\nでは周知ではないと主張するが,これまで検討してきたとおり,本件需要者は訪日 外国人に限られないから,一審被告らの主張はその前提を欠いており,採用するこ とができない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)6293

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平成28(ワ)11067  著作権侵害差止請求事件 令和元年5月21日  大阪地方裁判所

 飲食店におけるオーダ管理、および売り上げ管理をおこなうプログラムについて、「原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されている指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式を採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されている」として、著作物性が否定されました。

 プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこ\nれに対する指令を組み合せたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号\nの2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュー ターに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\現をどのように組合せ, どのような表現順序とするかなどについて,著作権法により保護されるべき作成者\nの個性が表れることになる。\nしたがって,プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり, かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性 が表れていることを要するといわなければならない(前掲知財高裁平成24年1月\n25日判決)。
(2) 原告プログラムのソースコードの創作性について\n
ア 原告プログラムのソースコードのうち創作性が認められ得る部分\n前記1のとおり,原告プログラムは,原告が作成していたレジアプリケーション ソフトを基に,原告と被告が協議しつつ,原告がソ\ースコードを書くことにより完 成したものであって,顧客の携帯電話端末を注文端末として使用することができる 点や,店舗において入力した情報を店舗(クライアント)側ではなくサーバー側プ ログラムを介してデータベースに保持し,主要な演算処理を行う点等について,従 来の飲食店において使用されていた注文システムとは異なる新規なものであったと 一応推測することができる。また,原告の書いた原告プログラムのソースコード(甲\n3)は,印刷すると1万頁を超える分量であって,相応に複雑なものであると推測 できる(原告本人)。 そして,6)データベースにおける正規化されたデータの格納方法や,注文テーブ ル及び注文明細テーブルに全てのアプリケーションからの注文情報を集約するため の記述(甲18)等に,原告の創作性が認められる可能性もある。\n
イ コンピュータに対する指令の創作性について 前記(1)のとおり,プログラムの著作物性が認められるためには,プログラムによ り特定の機能を実現するための指令の表\現,表現の組合せ,表\現順序等に選択の幅 があり,ありふれた表現ではないことを主張立証することが必要であって,これら\nの主張立証がなされなければ,プログラムにより実現される機能自体は新規なもの\nであったり,複雑なものであったとしても,直ちに,当該プログラムをもって作成 者の個性の発現と認めることはできないといわざるを得ない。
コンピュータに対する指令(命令文)の記述の仕方の中には,コンピュータに特 定の単純な処理をさせるための定型の指令,その定型の指令の組合せ及びその中で の細かい変形,コンピュータに複雑な処理をさせるための上記定型の指令の比較的 複雑な組合せ等があるところ,単純な定型の指令や,特定の処理をさせるために定 型の指令を組合せた記述方法等は,一般書籍やインターネット上の記載に見出すこ とができ,また,ある程度のプログラミングの知識と経験を有する者であれば,特 定の処理をさせるための表現形式として相当程度似通った記述をすることが多くな\nるものと考えられる(乙12,被告代表者)。\nそうすると,ソースコードに創作性が認められるというためには,上記のような,\n定型の指令やありふれた指令の組合せを超えた,独創性のあるプログラム全体の構\n造や処理手順,構成を備える部分があることが必要であり,原告は,原告プログラ\nムの具体的記述の中のどの部分に,これが認められるかを主張立証する必要がある。
ウ 本件における主張立証
被告は,原告プログラムについて,1)レジ,2)キッチンモニター及び3)マスタメ ンテナンスの各プログラムのソースコードは,汎用性のあるソ\ースコードであり創 作性が認められないと主張し,被告代表者の陳述書(乙12)において,上記1)〜 3)の各プログラムのソースコード(甲4〜6)の大部分について,指令の表\現に選 択の幅がなく,一般書籍(乙6)やインターネット上にも記載のあるありふれたも のであることを指摘する。また,被告は,原告プログラムのうち他の構成について\nも,指令の組合せがありふれたものであると主張する。 これに対し,原告は,4)スタッフオーダー等によって入力された情報を,5)サー バー側プログラムを経由して飲食店用に最適化された6)データベースにおいて一括 管理し,レジやキッチンに出力する機能が一体となる点に創作性が認められる旨主\n張するが,これは,プログラムにより実現される機能が新規なもの,複雑なもので\nあることをいうにとどまり,それだけでプログラムに創作性が認められることには ならないことは前述のとおりであるところ,原告は,具体的にどの指令の組合せに 選択の幅があり,いかなる記述がプログラム制作者である原告の個性の発現である のかを,具体的に主張立証しない。 むしろ,乙6,12によれば,原告が開示した原告プログラムの1)レジ,2)キッ チンモニター及び3)マスタメンテナンスのソースコード(甲4〜6)に表\れる指令 の組合せのうちの多くは,原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されてい る指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式\nを採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されているもの も多いことが認められる。
エ まとめ
前記認定したところによれば,原告は,平成23年3月の時点で,一定のレ ジアプリケーションを完成していたが,これは「でんちゅ〜」そのものではなく, 「でんちゅ〜」を事業化しようとする被告代表者と協議しながら,「でんちゅ〜」\nのプログラムを開発したこと,平成24年12月までの原告と被告との法的関係は 不明であるが,「でんちゅ〜」の事業化の主体は被告であり,原告は,被告の依頼 又は内容に関するおおまかな指示を受けてプログラムの開発を行ったこと,「でん ちゅ〜」は平成23年に飲食店に試験導入され,平成24年以降本格導入されたこ と,原告は,少なくとも同年12月から平成27年7月の退社までの2年半余り, 被告の被用者として被告の指示を受け,前記導入の結果を踏まえ,「でんちゅ〜」 の改良,修正等に従事したこと,以上の事実が認められる。 上記事実の中で,平成24年5月22日の時点における原告プログラムの構\n成が,ありふれた指令を組み合わせたものであるには止まらず,原告の個性の発現 としての著作物性を有していたと認めるに足りるものであることの立証がなされて いないことは,既に述べたところから明らかである。 また,平成23年の導入以降,「でんちゅ〜」については,段階的に改良や 修正が施され,原告自身も,少なくとも2年半余り被告の従業員としてその開発, 修正に従事しており,前記認定のとおり,原告プログラムと被告プログラムには相 当程度の差異が認められるのであるから,仮に原告プログラムの一部に,原告の個 性の発現としての創作性が認められる部分が存したとしても,その部分と同一又は 類似の内容が被告プログラムに存すると認めるに足りる証拠はなく,結局のところ, 平成24年5月22日時点の原告プログラムの著作権に基づいて,現在頒布されて いる被告プログラムに対し,権利を行使し得る理由はないといわざるを得ない。

◆判決本文

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平成28(ワ)8552  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年4月18日  大阪地方裁判所

 猫のイラストについて著作物性ありと認定されました。

ウ 原告イラストの表現上の特徴\n
原告イラストについては,以下の表現上の特徴を看取することができる。\n
(ア) 原告イラストは,丸まって眠っている猫を上方から描くに当たり,円 形状の上部に配された猫の顔のあごの下から片前足を出して,その片前足を片後ろ 足や尻尾とほぼ同じ場所でまとめて描くことによって,ほぼ全体を略円形状の輪郭 の中に収める一方で,輪郭より外の部分等は描いていないため,全体が一個のマー ク(原告は家紋と表現する。)であるかのような印象を与える。\n
(イ) 原告イラストの基本的輪郭は円形状であるが,耳や片後ろ足が円から 若干突出して描かれているほか,猫の後頭部から肩にかけての部位は若干ふくらむ ように描かれ,機械的な真円ではないことから,猫がきれいに丸まっているという 基本的な印象を維持しつつも,柔らかく自然な印象を与える。
(ウ) 略円形状の上半分には,猫の頭部,片前足,片後ろ足及び尻尾が猫と 分かるように描かれているのに対し,略円形状の下半分は,雲を想わせる抽象的な 紋様となっているところ,略円形状の輪郭に沿って右回りにたどると,猫の顔や首 の白黒の模様が徐々に変化して雲を想わせる紋様となり,さらにたどると,猫の片 後ろ足と尻尾になるという形で連続的に変化しており,また,猫の片前足の付け根 は渦巻状になっているが,これを白黒反転させた紋様が下半分の雲を想わせる紋様 の中に三個存在するため,全体として,猫を描いた部分と抽象的な紋様の部分とが, うまく一体化している。
(2) 被告の主張について
被告は,平成23年9月以前から,原告イラストと同種のイラスト又は写真(乙 1ないし4)が存在していたことを理由に,原告イラストはありふれたものであっ て創作性がなく,美術の著作物に該当しないことを主張する趣旨と解される。 しかしながら,乙1及び2は,実物の猫が鍋の中で丸まって眠っている様子を上 方又は横から撮影した写真であるが,原告イラストは,実物の猫をそのまま忠実に デッサンしたものではないから,これらの写真によって原告イラストの創作性が否 定されるとはいえない。 また,乙3及び4は猫が丸まって眠っている様子を上方から描いたイラストであ るが,乙3及び4の絵には原告イラストとは異なる点が相当数みられ,これらによ っても,原告イラストがありふれたものであると認めることはできない。 なお,被告は,被告イラストを作成する過程で乙5を入手し,被告デザイナーに 渡した旨主張しているが,これが原告において原告イラストを作成した平成23年 9月までの時点で存在していたことを認めるに足りる証拠はない(甲31,32参 照)。
(3) 争点1についての判断
原告イラストは,前記(1)ウで述べたとおり,表現上の特徴を有するところ,前\n記(2)で検討したとおり,これらはありふれたものということはできず,創作性が認 められるから,原告イラストは,原告がこれを作成した時点で,美術の著作物とし て創作されたものと認められる。原告は,前記(1)ア及びイで認定した経緯により,原告イラスト作成後,それを広めるために,あるいは商業的に利用するために,Tシャツ販売サイトを介して,原告イラストを付したTシャツを販売したことが認められるが,これは原告が創作した美術の著作物を用いたTシャツを販売したにすぎないから,このことは,原告イラストの著作物性を否定する理由とはならず,原告イラストが応用美術に属するものとして,その著作物性を否定する被告の主張は,採用できない。

◆判決本文
原告表現、被告製品は以下です。

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平成29(ワ)27741  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所(47部)

 タイプフェイスが著作物性を有するかが争われました。東京地裁47部は著作物ではないと判断しました。

 著作権法2条1項1号は,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,\n文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」を著作物と定めるところ,印 刷用書体がここにいう著作物に該当するというためには,それが従来の印刷用 書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり, かつ,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければなら ないと解するのが相当である(最高裁判所平成10年(受)第332号平成1 2年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁)。
 (2) そこで,本件タイプフェイスにつき検討する。 この点,原告は,本件タイプフェイスが著作物性を有するかどうかの判断を するにあたっては,タイプフェイスがそれぞれの文字相互に統一感を持たせる ように大きさや太さをデザインしているものであるから,個々の文字をそれぞ れ独立に見て判断するべきではない旨を主張する。しかしながら,複製権等の 侵害の成否は,現に複製等がされた部分に係る著作物性の有無によって判断す べきであること,タイプフェイスは各文字が可分なものとして制作されている ことからすれば,被告により現に利用された文字につき著作物性を判断するの が相当である。したがって,以下では本件タイプフェイスのうち,被告により 利用された文字に限って判断する。 ア 対比表記載の本件タイプフェイス以外の各タイプフェイス(以下「対比タ\nイプフェイス」という。)欄の括弧内に記載された各証拠及び弁論の全趣旨 によれば,対比タイプフェイス欄に記載された制作年に対比タイプフェイス がそれぞれ制作されたことが認められるところ,原告の主張に係る本件タイ プフェイスの制作年である平成12年(2000年)までに制作された対比 タイプフェイスに限って対比した場合においても,被告により使用された文 字のうち,「シ」,「ッ」,及び「ギ」「ジ」「デ」「ド」「バ」「ブ」「ベ」「ボ」における濁点「゛」の部分(以下,単に「濁点」という。)以外の文字について は,本件タイプフェイスに類似する対比タイプフェイスの存在が認められ, 本件タイプフェイスの制作時以前から存在する各タイプフェイスのデザイ ンから大きく外れるものとは認めがたい。
イ 他方,本件タイプフェイスにおける「シ」,「ッ」,及び濁点の各文字につい ては,2つの点をアルファベットの「U」の字に繋げた形状にしている点に おいて従来のタイプフェイスにはない特徴を一応有しているということは できる。しかしながら,2つの点が繋げられた形状のタイプフェイス(CL EAR KANATYPE(乙17,97)及び曲水M(乙15))の存在を 考慮すれば,顕著な特徴を有するといった独創性を備えているとまでは認め がたい。
ウ 以上からすれば,本件タイプフェイスが,前記の独創性を備えているとい うことはできないし,また,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性 を備えているということもできないから,著作物に当たると認めることはで きない。
(3) これに対し,原告は,1)本件タイプフェイスのうち,「シ」「ッ」などの文字 は,2つの点を繋いで1本の曲がったラインで表現することにより文字の流れ\nを演出しているものであること,2)「ス」については,構成するラインを水平\n及び垂直に交わるように組み立てをし,全体を20度傾けることでカタカナの 「ス」であることがよく分かる構造となっていること,3)その他の文字につい ては,線が交わる部分を曲線にする手法,及び横画に細い線,縦画に太い線を 用いるという手法を巧みに組み合わせて全体の統一感を持たせたこと等を主 張する。 しかしながら,1)の点については,前記のとおり,従来のタイプフェイスに 比して,顕著な特徴を有するといった独創性を備えているという評価にまで至 るものではない。また,2)の点については,構成するラインを水平及び垂直に\n交わるように組み立てたものとしてMOULDISM Katakana(乙 14,102),全体を20度傾けたものとしてOVERLOADER(乙1 4,28の2)等の対比フォントが存在し,さらに3)の点については,Tec hnopolish(乙14,57)及びHappy Frame(乙14,7 2)等の対比フォントが存在することを考慮すれば,上記各点をもって本件タ イプフェイスが,従来のタイプフェイスに比して特徴を有するとは認められない。

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平成30(ワ)19731  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所

 脚を写した写真について著作物性ありとして、東京地裁47部は発信者情報の開示を認めました。該当写真は、判決文中にあります。

 写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャ\nッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影 の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一 つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表\れていれば創作性が 認められ,著作物に当たるというべきである。 これを本件についてみると,本件写真2は,別紙写真目録2記載のとおりで あるところ,フローリング上にスリッパを履いて真っすぐに伸ばした状態の両 脚とテーブルの一部を主たる被写体とし,大腿部の上方から足先に向けたアン グルで,右斜め前方からの光を取り入れることで陰影を作り出すとともに脚の 一部を白っぽく見せ,また,当該光線の白色と,テーブル,スリッパ及びショ ートパンツの白色とが組み合わさることで,脚全体が白っぽくきれいに映るよ うに撮影されたカラー写真であり,被写体の選択・組合せ,被写体と光線との 関係,陰影の付け方,色彩の配合等の総合的な表現において,撮影者の個性が\n表れているものといえる。したがって,本件写真2は,創作的表\現として,写真の著作物であると認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
2 争点2(公衆送信権侵害の成否)
(1) 本質的特徴を感得できるかについて
著作物の公衆送信権侵害が成立するためには,これに接する者が既存の著 作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることを要する。\nこれを本件についてみると,証拠(甲3の2,9)及び弁論の全趣旨によ れば,本件画像には,本件写真2の下側の一部がほんの僅かに切り落とされ ているほかは,本件写真2がそのまま用いられていることが認められる。そ して,本件画像は,解像度が低く,本件写真と比較して全体的にぼやけたも のとなっているものの,依然として,上記1で説示した,本件写真2の被写 体の選択・組合せ,被写体と光線との関係,陰影の付け方,色彩の配合等の 総合的な表現の同一性が維持されていると認められる。\nしたがって,本件画像は,これに接する者が,本件写真2の表現上の本質\n的な特徴を直接感得することができるものであると認められる。これに反す る被告の主張は採用できない。
(2) 本件画像アップロードと本件投稿の関係について
ア 前記前提事実(3),証拠(甲3,5,6,11ないし13)及び弁論の 全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 「たぬピク」は,「up@vpic(省略)」宛てに画像を添付したメール を送信すると,当該画像がインターネット上にアップロードされたUR Lが,送信元のメールアドレス宛てに返信され,当該URLを第三者に 送るなどして,当該画像を第三者と共有することができるサービスであ る。
(イ) 本件掲示板を含むたぬき掲示板(2ch2(省略))をスマートフォンで 表示する場合には,「たぬピク」により取得した,画像のURLが投稿されると,当該URLが表\示されるのではなく,当該URLにアップロ ードされている画像自体が表示される仕組みとなっている。これにより,\n当該URLをクリックしなくても,たぬき掲示板上において,他の利用 者と画像を共有することが可能となっている。\n
(ウ) 本件画像は,平成30年3月22日午後11時53分41秒に,「up @vpic(省略)」宛てにメール送信され,本件画像URL上にアップロ ードされた(本件画像アップロード)。
(エ) 本件画像URLは,同日午後11時54分46秒に,被告の提供する インターネット接続サービスを利用して,本件掲示板に投稿された(本 件投稿)。
イ 以上の事実関係を前提に,本件投稿によって公衆送信権の侵害が成立す るか検討する。
まず,本件画像は,前記ア(ウ)のとおり,本件投稿に先立って,インター ネット上にアップロードされているが,この段階では,本件画像URLは 「up@vpic(省略)」にメールを送信した者しか知らない状態にあり,いま だ公衆によって受信され得るものとはなっていないため,本件画像を「up @vpic(省略)」宛てにメール送信してアップロードする行為(本件画像ア ップロード)のみでは,公衆送信権の侵害にはならないというべきである。 もっとも,本件においては,前記ア(ウ)及び(エ)のとおり,メール送信に よる本件画像のアップロード行為(本件画像アップロード)と,本件画像 URLを本件掲示板に投稿する行為(本件投稿)が1分05秒のうちに行 われているところ,本件画像URLは本件画像をメール送信によりアップ ロードした者にしか返信されないという仕組み(前記ア(ア))を前提とすれ ば,1分05秒というごく短時間のうちに無関係の第三者が当該URLを 入手してこれを本件掲示板に書き込むといったことは想定し難いから,本 件画像アップロードを行った者と本件投稿を行った者は同一人物であると 認めるのが相当である。そして,前記ア(イ)のとおり,本件画像URLが本 件掲示板に投稿されることにより,本件掲示板をスマートフォンで閲覧し た者は,本件画像URL上にアップロードされている本件画像を本件掲示板上で見ることができるようになる。そうすると,本件投稿自体は,UR Lを書き込む行為にすぎないとしても,本件投稿をした者は,本件画像を アップロードし,そのURLを本件掲示板に書き込むことで,本件画像の データが公衆によって受信され得る状態にしたものであるから,これを全 体としてみれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る公衆送信権が 侵害されたものということができる。以上の認定に反する被告の主張は採 用できない。
3 小括
以上からすれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る著作権(公衆送 信権)が侵害されたことが明らかであると認められる。また,原告がかかる著 作権侵害の不法行為による損害賠償請求権を行使するためには,被告が保有す る別紙発信者情報目録記載の情報が必要であると認められる。

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平成27(ワ)16423    不正競争  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 漏れてましたのでアップしました。ソフトウェアのソ\ースコードを流用したことが、不正競争行為に該当すると判断されました。問題となったのは、原告ソフトウェアについて、原告外部の技術者としてその開発,制作に携わり,その後,被告から委託を受け,被告ソ\フトウェアの実際の開発,制作を担当したBの行為です。前訴で著作権侵害を争いましたが、1審、2審とも著作権を侵害しないと判断されています。損害認定については、原告の利益*被告の譲渡数量をベースとして95%の滅失事由があると認定されました。

 本件鑑定で用いられたソースコードの分析の手法及びその鑑定結果の概要\nは以下のとおりである。(鑑定の結果〔4頁ないし12頁,17頁,24頁ない し27頁〕)
ア 本件鑑定においては,原告の意見等も踏まえ,本件ソースコードのうち1\n14種類のソースファイルが鑑定対象とされ,本件ソ\ースコードのうち一つ または複数のソースコードに対して被告ソ\フトウェアの複数のソースコー\nドを比較すべき場合があることから,300組のソースコードのペアについ\nて,一致点の有無等が判断された。
イ 前記の300組のソースコードのペアについて,類似性や共通性を判断す\nるため,8種類のコードクローン検出(コードクローンとはソースコード中に相互に一致又は類似したコード断片をいう。)を実施した。\n8種類のコードクローン検出の方法の概要は,1)識別子とリテラルのオー バーラップ係数を用いて名前の包含度合いを確認する,2)識別子とリテラル のコサイン係数を用いて名前の一致度合いを確認する,3)識別子とリテラル の部分文字列のオーバーラップ係数を用いて名前の文字並びの包含度合い を確認する,4)識別子とリテラルの部分文字列のコサイン係数を用いて名前 の文字並びの一致度合いを確認する,5)コメントの部分文字列のオーバーラ ップ係数を用いてコメントの文字並びの包含度合いを確認する,6)コメント の文字列のコサイン係数を用いてコメントの文字並びの一致度合いを確認 する,7)キーワードや記号の系列にSmith−Watermanアルゴリ ズムを適用してソースコードの文字並びの一致度合いを確認する,8)前記ア ルゴリズムをソースコードの長さで正規化してソ\ースコードの構造の一致\n度合いを確認するというものであった。
ウ 前記イの8種類のコードクローン検出を実施し,1種類以上の方法で類似 性についての一定の閾値を超えたものを要注意コード・ペアとして取り扱っ た。この要注意コード・ペアは,300組中57組存在した。
エ 前記ウの結果を参考にしつつ,鑑定人が300組全てのソースコードのペ\nアについて目視確認を行い,共通性や類似性が疑われるソースコードのペア\nを選んだ。その結果,原告ソフトウェアのソ\ースファイルと被告ソフトウェアのソ\ースファイルには,1)「GlobalSettings.h」と「S ourceDefault.h」(順に,原告ソフトウェアのソ\ースファイル と被告ソフトウェアのソ\ースファイル。以下,同じ。),2)「GlobalS ettings.cpp」と「SourceDefault.cpp」,3)「S STDB.cpp」と「Mdb.cpp」,4)「AutoLocker.h」 と「SafeLocker.h」,5)「AutoLocker.cpp」と「S afeLocker.cpp」につき,共通性や類似性が疑われる箇所が発見された(類似箇所1ないし5)。
・・・・
鑑定人は,類似箇所1ないし4について原告と被告のソースコードが不自\n然に類似・共通する箇所が存在すると判断し,類似箇所5については原告と 被告のソースコードに類似性や共通性が見られるがその理由が不自然であ\nるとまではいえないと判断した。
・・・
キ 鑑定人は,類似箇所1ないし5について,原告ソフトウェアを参照せずに\n被告らが独自に作成することが可能であるか否かにつき,以下のとおり判断\nした。
類似箇所1について
原告ソフトウェアのソ\ースコードの一部がサンプルで公開されていた などといった外部要因がないことを前提とすれば,原告ソフトウェアと被\n告ソフトウェアの開発者は必ず同一人物である。被告ソ\フトウェアを開発 する際に原告ソフトウェアを参照した可能\性が高いが,参照せずに開発す ることが全く不可能であるとまでは言い切れない。\nもっとも,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの開発者が同一人物で あり,その人物の記憶を手掛かりとしても,原告ソフトウェアのソ\ースコ ードを参照せずに類似箇所1で見られるような細かい特徴まで一致させ ることは難しいと考えることが自然である。
・・・
類似箇所1ないし3について,本件ソースコードの被告\nらによる使用等があったと認められる。そして,Bが,原告ソフトウェアの開\n発に携わった者の一人であり,被告ソフトウェアについて実際の開発,制作を\n担当したこと(前提事実 )及び弁論の全趣旨から,Bは,被告ソフトウェア\nの開発の際,本件ソースコードの類似箇所1ないし3に対応する部分を使用し\nて被告ソフトウェアを制作等し,もって,類似箇所1ないし3を被告フェイス\nに対して開示し,また,被告フェイスにおいてそれを取得して使用したと認め られる。
類似箇所4について
前記1(1)によれば,類似箇所4については,被告ソフトウェアのデータベー\nスで用いられている52件のフィールドの名前が原告ソフトウェアのデータ\nベースで用いられているものと同じであると指摘されており,被告らもTem plate.mdbの複製について認めていることに照らせば,類似箇所4に ついては,類似箇所1ないし3についてと同様の理由から,Bから被告フェイ スに対する開示及び被告フェイスによるその使用があったと認められる。
・・・
イ 原告ソフトウェアが開発されるに至った経緯や原告ソ\フトウェアの開発 の際のBの勤務の形態等に照らしても,原告ソフトウェアの開発,制作は原\n告の指示に基づきされたといえるものであり,本件ソースコードは原告が保\n有すると認められる。そして,原告ソフトウェアの開発,制作に携わった者\nの一人であるBは,類似箇所1ないし3が本件ソースコードの一部であるこ\nとや,販売用ソフトウェアのソ\ースコードという本件ソースコードの性質や\nその開発等の経緯等から,それが原告が保有する営業秘密であることを認識 できたといえる。 これらを考慮すると,Bが原告ソフトウェアと販売上も競合する被告ソ\フ トウェアを開発,制作するに当たって類似箇所1ないし3を使用したことは原告から示された営業秘密を,図利加害目的をもって被告フェイスに開示し たものと認めることが相当である(不競法2条1項7号)。 被告フェイスは,被告ソフトウェアが原告ソ\フトウェアと同種の製品であ り,字幕データファイル等について互換性を有するという特徴を有するもの であることや,上記のような機能を有する被告ソ\フトウェアの開発を具体的 に行うBが原告ソフトウェアの開発に携わった者の一人であったことは認\n識していたと認められる。これらのことから,被告フェイスは,被告ソフト\nウェアの具体的な開発を委託したBによる被告ソフトウェアの開発過程等\nにおいて違法行為が行われないよう特に注意を払うべき立場にあった。不競 法2条1項8号にいう重過失とは,取引上要求される注意義務を尽くせば容易に不正開示行為等が判明するにもかかわらずその義務に違反した場合を いうところ,被告フェイスにおいて,前記の事情に照らせば,前記の注意義 務を尽くせば被告ソフトウェアの開発過程等においてBの不正開示行為が\n介在したことが容易に判明したといえ,被告フェイスは,少なくとも重過失 により,原告の営業秘密である類似箇所1ないし3をBから取得し,それら を被告ソフトウェアに用いて販売したと認めるのが相当である(不競法2条\n1項8号)。 Aについて,被告ソフトウェアの開発,制作に当たって,具体的な本件ソ\ ースコードを被告フェイスに開示した事実を認めるには足りないし,その他, Aにおいて,不正競争行為となる事実を認めるに足りる証拠はない。したが って,Aについて,不正競争行為は認められない。
イ 被告らは,類似箇所1ないし3が被告ソフトウェアのソ\ースコードと一致 ないし類似するに至った原因は,Bが,原告ソフトウェアを開発するに際し\nてライブラリの選択等のために独自に自らのパソコンで作成し,そのパソ\コ ンに残っていた簡易な評価プログラムやそのプログラムに含まれる変数定 義部分を被告ソフトウェアの開発の際にも参照したことにあり,そのような\n行為は非難されるべきものではないなどと主張する。しかしながら,同事実関係を裏付ける証拠はない。また,前記の評価プロ グラムは,それが作成,使用されたとしても,その評価の対象となる本件ソ\nースコードの存在を前提として作成,使用されたものと考えられ,変数定義 部分が前記評価プログラムの作成又は使用によってBのパソコンに残って\nいたとしても,それが本件ソースコードの一部である以上,前記に述べたと\nころと同様の理由により,原告から示された営業秘密であるとするのが相当 であり,また,Bにおいて,そのことを認識することができたといえる。こ れらに照らせば,被告らの主張は,Bにおいて類似箇所1ないし3を被告ソ\nフトウェアの開発の際に使用する行為が不競法2条1項7号にいう不正競 争に該当するなどの前記結論を左右するものではない。
・・・
前記(1)アのとおり,被告ソフトウェアの販売数は,主として業務用として\n利用されるドングル版が●(省略)● ここで,オンライン版とスクール版の前記個数については同一顧客によっ て更新された回数が含まれているところ,オンライン版とスクール版につい ては,価格(更新の価格も含む。)がドングル版に比較して相当安価に設定さ れていて,同一顧客による同内容のソフトウェアの継続利用とその更新を前\n提としている部分があると認められる。このことに原告ソフトウェアの価格\nから推測されるその利用方法を考慮すると,本件においては,オンライン版 とスクール版については,不競法5条1項にいう「譲渡数量」としては,同 一顧客に対する販売を1個とすることが相当であるというべきである。 したがって,不競法5条1項における被告ソフトウェアの譲渡数量は,ド\nングル版が●(省略)●であると認めるのが相当である。
イ 原告ソフトウェアの単位数量当たりの利益の額\n
前記 ウのとおり,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの価格は,基本編集機能\を搭載したもので28万円である。また,前記 オのとお り,主として教育用に利用される原告ソフトウェアの価格は,割引を考慮し\nない場合は2万4800円である。 そして,平成21年から平成23年までの間及び平成27年について,減 価償却費や人件費を控除して算出された原告商品の利益率は,最も利益率が 低い期間の利益率においても53.2パーセントを超えること(甲38の2, 甲133)及び弁論の全趣旨から,原告ソフトウェアの限界利益の利益率は,\n少なくとも40パーセントであると認められる。 以上によれば,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの前記利益\nの額は11万2000円(28万円×0.4),主として教育用に利用される 原告ソフトウェアの前記利益の額は9920円(2万4800円×0.4)\nであると認められる。 これに対し,原告は,原告ソフトウェアの価格は90万7200円である\nと主張する。しかしながら,前記 廉価版である「SSTG1 Lite」を14万2000円で販売している。 また,90万7200円という金額は高等機能オプションやデータのインポ\nート/エクスポートオプション等の大部分を搭載した場合における金額で あるところ,前記 のとおり,原告ソフトウェアを利用する顧客の中には\n個人の顧客もかなりの割合で存在しており,そのような個人の顧客が基本編 集機能に加えてそれらのオプションを搭載したものを購入しているか否か\nは証拠上明らかではなく,むしろ,証拠(乙5,42)によれば個人の顧客 の97パーセントは基本編集機能のみを購入していることがうかがわれる。\nしたがって,原告の前記主張は採用できない。
ウ 小括
前記ア及びイによれば,以下の計算式のとおり,主として業務用に利用さ れるソフトウェアの関係では2654万4000円が原告の損害額と推定\nされ,主として教育用に利用されるソフトウェアの関係では1123万93\n60円が原告の損害額と推定される(合計3778万3360円)。
(計算式)
●(省略)●
エ 推定覆滅事由についての検討
前記3のとおり,被告ソフトウェアに関連し,原告の営業秘密である類似\n箇所1ないし3についてB及び被告フェイスの不正競争行為が認められる。 ここで,類似箇所1ないし3はいずれも変数定義部分等であり,ソフトウェ\nアの動作に不可欠な有用な部分ではあるが,ソフトウェアの画面表\示,イン ターフェイスや動作といったソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制 御に直接的に関係する部分ではなく,また,類似箇所1ないし3の内容に照 らし,それらが被告ソフトウェアに対して他のソ\フトウェアでは一般的とは いえない特別の動作をもたらすものであるとは認められない。他方,前記1 とおり,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアのソースコードは,類似\n箇所1ないし5以外に類似している箇所があるとは認められず,ソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制御に直接的に関係する部分については原 告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの間に共通する部分は存在していない ともいえる。 これらを考慮すると,被告らの不正競争行為が被告ソフトウェアの利用者\nに関係する機能を同種のソ\フトウェアに関する機能と大きく異なるものに\nしたとは直ちにはいえず,被告ソフトウェアの売上げは,基本的には,被告\nソフトウェアの不正競争行為ではない行為により作成された機能\に基づく 商品としての価値や被告フェイスの営業努力等によって実現されていたと するのが相当である。
以上によれば,被告ソフトウェアの譲渡数量のうちの相当程度の数量の原\n告ソフトウェアについて,原告が販売することができなかった事情があると\n認めるのが相当であり,以上のほか,本件にあらわれた一切の事情を総合的 に勘案すれば前記ウの推定は95パーセントの限度で覆滅し,被告フェイス 及びBによる不正競争によって原告に生じた損害は,前記ウ記載の損害の5 パーセントであると認めるのが相当である。また,弁護士費用としては,10万円をもって相当と認める。 なお,被告らは,「おこ助」と称する字幕ソフトウェアがシェアを拡大して\nおり,原告ソフトウェアとの競合品が存在していることが推定覆滅事由に該\n当するなど主張するが,前記「おこ助」の販売台数や機能等の詳細は明らか\nでなく,むしろ,証拠(乙38,39)によれば前記「おこ助」は主として 聴覚障がい者向けの字幕制作のためのソフトウェアであることがうかがわ\nれることに照らせば,前記「おこ助」が原告ソフトウェアの競合品であるこ\nとを理由とした被告らの前記主張は認められない。

◆判決本文

前訴はこちらです。

◆平成25(ワ)181

◆平成27(ネ)10102

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平成29(ワ)16958  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所

 英会話のDVDが複製・翻案が争われた事件です。東京地裁46部は、一部の表現については創作性を認め、36万円の損害賠償を認めました。
 原告DVDと被告DVDの項目アにおける共通点である動画に社名を 表示することは,アイデアである。\n他方,項目イ及びウにおける原告DVDと被告DVDの共通点は,白い 扉を抜け,その先に英会話を学ぶ動機となるフレーズと共に写真が現れる というもので密接に関係するものといえるところ,英会話の宣伝,紹介用 のDVDにおいて,教材を利用することで新しい状況となることについて, 紺色の背景とする白い扉やその奥に広がる宇宙で表現するとともに,教材\nにより達成できる状況について,扉の奥に,その状況を表しているともいえる写真を英会話を学習する動機を示すフレーズとともに複数回示すこ\nとで表現しているものといえ,その表\現は,全体として,個性があり,創 作性があるといえる。 項目エにおける原告DVDと被告DVDの共通点のうち,英会話の宣伝, 紹介用のDVDにおいて,外国人と話している様子を用いる点はアイデア であり,そこにおける問いかけの表現は通常よく使用される,ありふれた\n表現といえる。\n項目オにおける原告DVDと被告DVDの共通点は,教材を学ぶことで 状況が変わることを,二度にわたる太陽の光を含む空の情景で示し,また, 自社の商品を用いることで交流の範囲が広がることなどを人物が写った 多数の写真を自社商品の周りを回転させることなどで表現しているもの\nといえ,その表現は,全体として,個性があり,創作性があるといえる。\n以上によれば,イントロダクションの部分の原告DVDと被告DVDは, 少なくとも,項目イ,ウ及びオにおいて表現上の創作性がある部分におい\nて共通するといえる。そして,上記共通する内容に項目イ,ウ及びオの内 容等を考慮すれば,上記部分の原告DVDの表現上の本質的な特徴を被告\nDVDから直接感得することができると認められる。
イ 受講者インタビュー(その1)(項目カ)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,当該部分において,「(商品名)を始めた人の中にはすでに新しいステー ジへと人生を開いていった人たちがたくさんいらっしゃいます」という音声 が流れ,その後,海外で活躍する女性を紹介し,その女性へのインタビュー の様子となる点,「英語を話す原点になったのが(商品名)だったのです」と いう音声が流れるとともに,同趣旨が赤色の文字テキストで表示される点な\nどが共通する。 他方,原告DVDと被告DVDの当該部分において,登場人物やインタビューの内容,表現は異なっている。\n上記共通点のうち,英会話教材の宣伝,紹介用の動画において,海外で活 躍する受講者を紹介した上でその受講者へのインタビューの様子を用いる ことや,その受講者の活躍の契機となったのが自社の教材であるという説明 をすることは,アイデアであるといえるし,また,それらを上記のような順 序で構成することは,通常行われることといえ,これらをもって表\現上の創 作性があるとはいえない。また,「(商品名)を始めた人の中にはすでに新し いステージへと人生を開いていった人たちがたくさんいらっしゃいます」, 「英語を話す原点になったのが(商品名)だったのです」との部分について, 英会話教材を宣伝,紹介する際に,教材による学習によって自らの状況が変 わったことを新たなステージへと人生を開くと表現することや,その契機等\nとなった商品を原点と表現することはありふれたものであるといえ,いずれ\nも創作性があるとは認められない。 したがって,受講者インタビュー(その1)の部分の原告DVDと被告D VDの共通点は,いずれもアイデアなどの表現それ自体でない部分又は表\現 上の創作性が認められない部分に関するものであるといえる。
・・・・
エ その他受講者インタビュー(項目ク)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,当該部分において,受講者への複数のインタビューの様子である点,「人 生が変わりました」との文字テキストが表示される点で共通している。\n 他方,原告DVDと被告DVDの当該部分において,登場人物やインタビ ューの内容,表現は異なっている。\n上記共通点のうち,英会話教材の宣伝,紹介用の動画において,受講者と される人物のインタビューの様子を用いることはアイデアであるといえる。 また,「人生が変わりました」という文字テキストは,表現であるということ\nができるとしても,教材を宣伝,紹介する場面で,教材による学習によって 自らの状況が変わったことを人生が変わると表現することは,ありふれた表\ 現であるといえ,創作性があるとは認められない。そして,インタビューの 様子に文字テキストを組み合わせることについても,普通に行われることで あり,このことをもって表現上の創作性があるとはいえない。\nしたがって,その他受講者インタビューの部分の原告DVDと被告DVD の共通点は,いずれもアイデアなどの表現それ自体でない部分又は表\現上の 創作性が認められない部分に関するものであるといえる。
オ 商品紹介(項目ケ)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVDは,当該部分において,まず,画面上部が光り,雲が浮かんでいる空の 様子となった後,画面の上方から階段が伸びてきて,階段を下から見上げ る構図となり,その後,空を背景に,最下段の階段の側面に英語学習のス\nテップのフレーズが表示され,そのフレーズの読み上げが終わると一段上\nの階段の側面が拡大されると同時に,その階段の側面に次の英語学習のス テップのフレーズが右からスライドして表示されるとともに,そのフレー\nズがナレーションされ,それを7回繰り返して,7つ目の英語学習のステ ップが表示されると,側面にフレーズが記載された階段が最下段まで表\示 されるという点で共通している。また,各階段の側面に表示されるフレー\nズは,原告DVDでは1)「聞くことを習慣化する」,2)「単語やフレーズの 音がキャッチできるようになる」,3)「言っていることが理解でき短い言 葉で反応できるようになる」,4)「短い言葉で自分の意思を伝えられるよ うになる」,5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言 葉のキャッチボールが長く続くようになる」,7)「意識せずに自然に外国 人との会話が楽しめるようになる」であるのに対し,被告DVDでは1)「流 して聞くことを習慣化する」,2)「単語,フレーズの音が聞き取れるように なる」,3)「言っていることが分かり,短いフレーズで返事ができるように なる」,4)「短いフレーズで自分の言いたいことが伝えられるようになる」, 5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言 葉のキャッチボールが長く続くようになる」,7)「意識せずに自然に外国 人との会話が楽しめるようになる」であるのに対し,被告DVDでは1)「流 して聞くことを習慣化する」,2)「単語,フレーズの音が聞き取れるように なる」,3)「言っていることが分かり,短いフレーズで返事ができるように なる」,4)「短いフレーズで自分の言いたいことが伝えられるようになる」, 5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言葉のキャッ チボールが長く続けられる」,7)「意識せず,自然に外国人との会話が楽し めるようになる」であり,その内容,表現はほぼ共通している。\n 他方,原告DVDでは,階段は側面も含めて青色であり,フレーズが白 色の文字で表示されるのに対し,被告DVDでは,階段は側面を含めて白\n色であり,フレーズが青色の文字で表示される。また,原告DVDと被告\nDVDにおいて,階段の背景はいずれも白色の雲がある青空であるが,具 体的な光景は異なる。
(イ)項目ケの部分の原告DVDと被告DVDの上記 の共通点は,空に浮か んだ階段を下から見上げる構図とすることによって,階段を上っていくイ\nメージを抱かせ,階段と英語学習のステップが結び付くものであり,原告 DVDと被告DVDでほぼ共通するフレーズの内容に照らしても,一定の 段階を踏んで英語学習を進めることができるなどのイメージを与えるも のである。そのようなステップが7段階あり,その内容がほぼ同一である ことをも考慮すると,この共通点は,作成者の個性が現れており,全体と して創作的な表現であると認められる。\nそして,上記共通する内容に項目ケの内容等を考慮すれば,項目ケの原 告DVDの表現上の本質的な特徴を被告DVDから直接感得することが\nできると認められる。
・・・・
原告は,原告DVDと被告DVDが,1)イントロダクション,2)受講者イン タビュー,3)商品紹介,4)商品特徴の説明,5)開発者等のインタビュー,6)商 品特徴の説明,7)エンディングという全体的な構成が類似することも主張する\nので,以下,検討する。
ア 前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,いずれも,1)イントロダクション(項目アないしオ),2)受講者インタビ ュー(項目カないしク),3)商品紹介(項目ケ),4)商品特徴の説明(項目コ ないしシ),5)開発者等のインタビュー(項目ス),6)商品特徴の説明(項目 チ及びツ),7)エンディング(項目テ,ト)という構成を有するということが\nできる。なお,上記各項目においては, 基 本的に,使われている写真,光景,登場人物やインタビューを受けた者が話 す内容などは異なる。
イ 原告DVDと被告DVDは,いずれも英会話教材の宣伝,紹介用のもので あり,このようなDVDにおいて,宣伝の対象である商品の購入等を促すと いう目的のために,商品の内容や特徴,商品を利用した場合の効果,サポー ト体制の説明をすることは,ごく一般的であるといえる。そして,商品の内 容,特徴や商品を利用した場合の効果を説明するために,受講者や開発者に 対するインタビューを用いることも,一般的であるといえる。 原告DVDと被告DVDの全体的な構成は,前記アのとおり,原告が主張\nする7つという少なくない要素において一致するが,その各要素は,上記の とおり,同種の目的を有するDVDにおいては,いずれもごく一般的といえ るものである。また,原告DVD及び被告DVDにおけるそれらの各要素の 順序について,特別の印象を与えるようなものであるとはいえない。これら を考慮すると,原告DVDと被告DVDの原告主張の全体的な構成について,\nそその各要素が共通する点をもって創作的な表現であるとは認められない。\nまた,前記 のとおり,被告DVDは,複数の部分において,原告DVD の表現上の本質的な特徴を感得することができる。しかし,それらの本質的\nな特徴を感得することができる表現について,英会話教材の宣伝,広告用の\n動画における表現としては関連するとはいえるが,それ以上にそれらが表\現 上及び内容上,相互に密接に関連しているものとはいえない。このことに, 全体的な構成の各要素が同種の目的を有するDVDにおいてごく一般的な\nものであること,被告DVDには,原告DVDの表現上の本質的な特徴を感\n得することができるとはいえない部分も多いこと(前記 )を考慮すると, 被告DVDに原告DVDの表現上の本質的な特徴を感得することができる\n部分があるとしても,原告DVD全体についての表現上の本質的な特徴を被\n告DVDから感得することができるとまではいえない。
(4)小括
以上によれば,被告DVDは,少なくとも,項目イ,ウ,オ,ケ,テ及びト において,原告DVDの表現上の本質的特徴を被告DVDから直接感得するこ\nとができる。 そして,対照表」及び「DVDスクリプト内容対照表\」における共通点の内容等及び弁 論の全趣旨に照らし,被告DVDは,原告DVDに依拠して作成されたものと いえる。 これらのことに,前記のとおり,原告DVDと被告DVDでは,画面自体は 異なり,原告DVDの表現に一定の修正,増減,変更等が加えられて別の表\現 となっていることなどから,被告DVDは,少なくとも,上記各項目において, 原告DVDを翻案したものと認められる。
2 争点2(編集著作物としての複製権,翻案権侵害の有無)及び争点3(言語の 著作物としての複製権,翻案権及び譲渡権侵害の有無)について
原告の主位的な主張のうち,編集著作物としての侵害の主張は,別紙「DVD の内容の対照表」の「イントロダクション」などの標題によって区切られた部分\nを一つの素材として,その選択と配列について創作性を有すると主張するもので ある。しかし,この主張は,少なくとも,前記1(3)の全体的な構成に関する類似\nの主張において述べたところと同様の理由により,理由がない。また,原告は, 予備的に,原告DVDに含まれるスクリプト部分の言語の著作物の侵害を主張す\nるところ,共通するスクリプトは,事実を述べるものか,英会話教材の宣伝,紹 介用の動画において,ありふれたものということができ,その順序にも表現上の\n創作性があるとは認められないから,原告の主張は理由がない。

◆判決本文

両当事者は、宣伝のキャッチフレーズについて著作権侵害を争っていましたが、こちらは1審、2審とも著作物性無しと判断しています。

◆平成27(ネ)10049

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平成29(ワ)6322  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年1月24日  大阪地方裁判所

 販促チラシについて著作物性が争われました。大阪地裁は著作物性を否定しました。
ア 原告は,本件チラシの表現のうち,1)「検査時間 受診代金[注:各文 言の上に『×』の記号あり]」や「検査なし スグ買える!」という宣伝文句(キャ ッチフレーズ)(上記(1)のア及びイ),2)「コンタクトレンズの買い方比較」という 表(同ア)及び3)「なぜ検査なしで購入できるの?」という箇所における説明文言 (同ア)の3点について,創作性があるとして,本件チラシに著作物性が認められ ると主張している。
イ しかし,まず上記1)は,旧大阪駅前店において採用された眼科での受診 (検査)なしでコンタクトレンズを購入することができるという特徴を表現したも\nのであり,眼科での受診(検査)が不要であると,検査時間や受診代金が不要とな り,また検査が不要である結果,コンタクトレンズをすぐ買えることになると認め られる。そして,上記1)の宣伝文句は,以上のビジネスモデルによる顧客の利便性を消費者に分かりやすく表現しようとしたものと認められるが,不要になる事項を\n文字(単語)で抽出し,その文字(単語)の上に「×」を付すことはありふれた表\n現方法であるし,「検査なし スグ買える!」という表現は,眼科での受診(検査)\nなしでコンタクトレンズをすぐ買えるという旧大阪駅前店のビジネスモデルによる 利便性を,文章を若干省略しつつそのまま記載したものにすぎず,そこに個性が現 れているということはできない上に,強調したい部分に着色等したり,「!」を付し たりするなどして強調することもありふれた表現方法にすぎない。以上より,上記\n1)に創作性があるとは認められない。 また,上記2)はマトリックスの表形式にすることによって,旧大阪駅前店と他の\n店舗や他の販売方法との違いを分かりやすく表現したものである。確かに,表\現方 法としては文章で伝えるなどの別の方法が存することは原告主張のとおりであるが, 本件チラシは販売宣伝のために作成されたものであるから,その性質上,表現が記\n載されるスペースは限られ,また見た者が一目で認識,理解し得るような表現をす\nべきことも求められるから,表現方法の選択の幅はそれほど広いとは認められない。\nそして,文字で表現しようと思えばできる事項を表\形式にまとめることは通常行わ れる手法であり(例えば,甲5の1枚目の料金表,甲23の1頁目の略歴の表\,乙 12の表,反訴状と題する書面の15頁の表\,反訴状訂正申立書の1ないし2頁の\n表参照),表\形式で比較するに当たり,縦の欄に旧大阪駅前店と他の店舗や他の販売方法を並べ,横の欄に複数の事項を列記し,マトリックス形式でまとめるというの も,ありふれた手法にすぎない(例えば,甲11,14,乙13及び14の表,反\n訴状と題する書面の12ないし13頁の表2つ参照)。そしてまた,ここで比較の対\n象としている事項の選択も,眼科での受診(検査)を不要とし,店舗に来店して購 入するという旧大阪駅前店でのビジネスモデルから自ずと導き出されるものばかり である。以上より,上記2)に創作性があるとは認められない。 さらに,上記3)の説明文言は,旧大阪駅前店では眼科での受診(検査)なしでコ ンタクトレンズを購入することができる理由を文章で説明したもので,その内容は 法規の内容や運用を説明した上で,旧大阪駅前店では,顧客の経済的・時間的な負 担の観点から,販売時に処方箋の有無を前提としていないことを説明したものにすぎない。これは上記のビジネスモデルの客観的な背景や方針をそのまま文章で記載 したものにすぎず,文章表現自体に特段の工夫があるとはいえない上,その記載方\n法も相当の文字数を使用して,しかも小さな文字で記載したものにすぎないから, その表現方法に何らかの工夫がみられるわけでもない。以上より,上記3)に創作性 があるとは認められない。 以上より,上記1)ないし3)の各記載について,創作性は認められない。
ウ 以上の点につき原告は,提携眼科を設けないでコンタクトレンズ販売店 をオープンさせるというのは,かなり思い切った試みであったとか,検査なしでコ ンタクトレンズを購入できる理由を書いた説明文言は適法性を支える要素となって いるなどと主張しているが,旧大阪駅前店におけるビジネスモデル自体が著作権に よる保護の対象になるわけではなく,そのビジネスモデルを表現した本件チラシに\nおける各表現方法自体がありふれたものにすぎないことなどは,上記認定・判示の\nとおりである。したがって,原告の上記主張によって,上記判断は左右されない。
(3) 本件チラシの各表現の組合せによる著作物性
原告は上記(2)の1)ないし3)等の組合せに著作物性が認められるべきであるとも 主張している。 確かに,上記1)ないし3)は,眼科での受診(検査)を不要とし,コンタクトレン ズをすぐ買えるという旧大阪駅前店でのビジネスモデルを強調するために,それが可能な理由等を小さな文字で説明する(上記3))とともに,当該ビジネスモデルに よって不要となる事項を文字(単語)で抽出し,その上に「×」を付すなどしてキ ャッチフレーズを用いたり(上記1)),マトリックスの表形式で他の店舗や他の販売\n方法と比較したりした(上記2))もので,それらを組み合わせることによって当該 ビジネスモデルを強調し,読み手に分かりやすく説明しようとしたものということ はできる。しかし,何かを強調し,分かりやすく伝えるために,説明文とキャッチ フレーズと表形式のものを組み合わせることそれ自体は,特徴的な手法とは認めら\nれないから,上記(2)で判示したとおり上記1)ないし3)の各表現に創作性が認められ\nないことを踏まえると,これらの組合せ自体にも創作性は認められない。 なお,本件チラシでは,さらに視力検査をしている男の子のイラストが組み合わ されているが,原告はイラスト自体の著作物性を主張するものではない上,広告宣 伝において適宜関連するイラストを配することもありふれた表現方法にすぎないか\nら,このイラストと組み合わせることによって,創作性が基礎付けられるとはいえ ない。 また,原告は当初,被告チラシの各商品の配列等が本件チラシとほとんど同一で あることを主張していた。しかし,本件チラシにおいては商品の写真を掲げつつ, その下側に商品名や値段等を記載し,適宜商品の説明やアピールポイント等を付加 しているところ,そのような各商品の配列等は,コンタクトレンズ販売店の広告と してありふれたものであると認められるから(乙1ないし6),創作性は認められず,原告の上記主張によって本件チラシの著作物性は基礎付けられない。
(4) 以上より,本件チラシに著作物性は認められないから,その余の争点につ いて判断するまでもなく,被告の行為に著作権・著作者人格権侵害が成立するとは いえない。したがって,被告の著作権・著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害 賠償請求には理由がない。

◆判決本文

原告、被告のチラシはこちらです。

◆チラシ

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平成30(ワ)6943  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年12月26日  東京地方裁判所(29部)

手書きの文章をデータ入力するソフトウェアのマニュアルについて、個性があらわれておらず、著作物ではないと判断されました。
 著作物は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又\nは音楽の範囲に属するものをいう(著作権法2条1項1号)ところ,創作的に表現さ\nれたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではな く,作成者の何らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが,他方,文\n章自体がごく短く,又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現\nが平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえ\nないから,創作的な表現であるということはできない。\n
イ これを本件についてみるに,前記第2の2前提事実(2)及び前記(1)に認定したと おり,本件マニュアルは,本件システムの機能や操作方法の説明を目的として作成さ\nれたものであり,その作成目的に従い,本件コメントは,各頁に表示された本件シス\nテムの画面の内容を説明し,同画面に関連する本件システムの機能を説明し,又は同\n画面に関連する本件システムの操作といった客観的事実を説明することを目的とし て作成されており,その性質により,機能や操作方法を分かりやすく,一般的に用い\nられるありふれた表現で示すことが求められることから,表\現の選択の幅は狭いもの である。そして,本件コメントでは,本件システムの機能等を説明するためにコンピ\nュータに関する用語が選択されているものの,当該説明において他の表現を用いるこ\nとは想定し難く,また,その他の表現も操作等を説明するものとして特徴的な言い回\nしが存するともいえない。 そうすると,本件コメントに原告の個性が表現されているとはいえないのであって,\n本件マニュアルに著作物性があるということはできない。これに反する原告の主張は 採用することができない。

◆判決本文

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