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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不使用

令和5(行ケ)10018  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和6年1月30日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判段階では、証拠を提出せず、知財高裁で使用証拠を提出し、不使用取消審決が取り消されました。

ア 被告は、前記第3の2〔被告の主張〕(1)のとおり、平成3年最高裁判決 は、本件において適用されるべきではなく、本件訴訟において、原告によ る本件訴訟の使用に関する新たな立証を許すべきではないと主張する。 しかし、商標法50条2項本文は、商標登録の不使用取消審判の請求が あった場合において、被請求人である商標権者が登録商標の使用の事実を 証明しなければ、商標登録は取消しを免れない旨規定しているが、これは、 登録商標の使用の事実をもって商標登録の取消しを免れるための要件と し、その存否の判断資料の収集につき商標権者にも責任の一端を分担させ、 もって審判における審判官の職権による証拠調べの負担を軽減させたも のであり、商標権者が審決時において使用の事実を証明したことをもって、 商標登録の取消しを免れるための要件としたものではないと解される(平 成3年最高裁判決)。平成3年最高裁判決の事案も、本件と同様、審判手続 段階において、商標登録取消請求の被請求人が商標使用の事実について何 ら主張立証しなかったものであり、本件において原告が本件審判手続の中 で本件商標の使用に関する主張立証をしなかったことにより、平成3年最 高裁判決が説示した商標法50条2項本文の上記趣旨が本件に当てはま らないとは解されない。したがって、被告の上記主張は採用することができない。
イ 被告は、前記第3の2〔被告の主張〕(2)アないしエのとおり、本件商標 の使用の事実が立証されたとはいえない旨主張する。
(ア) 前記第3の2〔被告の主張〕(2)アについて
証拠(甲13〜15)及び弁論の全趣旨によって、「Pleasure」の文字 が記載された本件眼鏡フレームを、オリエント眼鏡が原告の下請けとし て製造し、原告に納入したものであると認められることは、前記(4)のと おりであり、原告が、本件眼鏡フレームを使用した眼鏡を、原告の経営 する店舗で販売したことは、商標法50条2項にいう「登録商標の使用」 に当たると認められる。
甲1の1ないし3の写真は、本件眼鏡フレームが存在することを立証 するものであり、甲2の1ないし5等その他の証拠と併せて、要証期間 内に原告が商標を使用した事実を立証するものであるから、甲1の1な いし3の写真の撮影日が要証期間内ではないことをもって、原告が要証 期間内に商標を使用した事実が立証されていないとはいえない。 甲1の1ないし3の写真に撮影されている眼鏡が眼鏡フレームのみな らずレンズにも「Pleasure」の文字が存在している一方、原告のウェブ サイトに掲載された「オグラ眼鏡店オリジナル」の商品の中に眼鏡のレ ンズ部分に商標が刻印されているものが存在しないとしても、甲1の1 ないし3の写真に撮影されている眼鏡が実際に販売されたものであると 認められないことにはならない。
(イ) 前記第3の2〔被告の主張〕(2)イについて
甲2の1ないし5の「お客様カード」は、「Pleasure」の文字が記載さ れた本件眼鏡フレームを用いた眼鏡の販売の事実を立証する証拠である。 原告は、これらの「お客様カード」に上記商標を記載したことが商標法 2条3項8号にいう「取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し」 た行為に該当するなどとは主張立証していないから、上記「お客様カー ド」が同号にいう「取引書類」に該当しないとしても、前記(2)ないし(6) の認定及び判断は左右されない。 ジャーナル(甲7の1ないし4)及び日計表(甲8の1・2)には、\n「オグラ眼鏡店亀有店」との記載があるが、これらの書類に記載された 店舗の電話番号は、原告のウェブサイトに記載されたオグラ眼鏡店イト ーヨーカドー亀有駅前店の電話番号と同一であるから(乙4の1ないし 6)、上記資料に記載された「オグラ眼鏡店亀有店」はオグラ眼鏡店イト ーヨーカドー亀有駅前店を指すと認められ、このことからすれば、甲2 の1ないし5の「お客様カード」に記載された「亀有店」もオグラ眼鏡 店イトーヨーカドー亀有駅前店を指すと認めることができるのであって、 これらの「お客様カード」は、オグラ眼鏡店イトーヨーカドー亀有駅前 店における売上げに関する資料であると認められる。 ジャーナル(甲7の1ないし4)は、これのみをもって本件眼鏡フレ ームを用いた眼鏡の販売の事実を立証するものではなく、甲2の1ない し5の「お客様カード」等の証拠を併せて上記販売の事実が立証されて いるといえるから、甲7の1ないし4に本件商標あるいは「Pleasure」 の商標が記載されていないとしても、前記(2)ないし(6)の認定及び判断は 左右されない。
(ウ) 前記第3の2〔被告の主張〕(2)ウについて
前記(2)ないし(6)のとおり、甲4以外の証拠により、「Pleasure」の記載 のある眼鏡フレームを用いた眼鏡の販売の事実が立証されているといえ るから、甲4に関する被告の主張は前記(2)ないし(6)の判断を左右しない。 なお、被告は、甲4が「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類」\n(商標法2条3項8号)に該当しないから、商標の使用を立証するため の証拠とならないという趣旨の主張をする。しかし、原告は、甲4を同 法2条3項8号にいう「取引書類」に該当すると主張するものではなく、 「Pleasure」の記載のある眼鏡フレームを用いた眼鏡の販売が同法50 条2項の使用に該当する旨主張しているのであり、このような使用を立 証するために証拠として提出する資料が上記「取引書類」に該当する必 要もないから、被告の主張は失当である。
(エ) 前記第3の2〔被告の主張〕(2)エについて 現在の原告のウェブサイトの「オグラ眼鏡店オリジナル」の箇所に 「Pleasure」又は「PLEASURE」という名称の商品が掲載されていない としても、そのことをもって、前記(2)ないし(6)の認定及び判断は左右さ れない。
乙3の1ないし6及び乙4の1ないし6のウェブサイトの画面が、甲 2の1ないし5において「Pleasure」の記載のある眼鏡フレームを用い た眼鏡が販売されたとされる時期(令和2年11月11日から令和3年 3月7日)の原告のウェブサイトの画面であるか否かは、乙3の1ない し6及び乙4の1ないし6の画面の内容からは明らかでない。また、仮 に上記画面が上記時期における原告のウェブサイトの画面であり、この ウェブサイトに「Pleasure」又は「PLEASURE」の名称の商品が掲載さ れていなかったとしても、このことから、上記時期において原告の店舗 で「Pleasure」の記載のある本件眼鏡フレームを用いた眼鏡が販売され たことがあり得ないということはできない。 「オグラ眼鏡店新宿サブナード店」の店員が、令和5年4月29日、 被告代理人に対し、「『Pleasure』という商品は扱っていない、在庫切れ ではなく全ての店舗において既にその商品はない、昔はあったが現在は 取り扱いがない。」という趣旨の回答をしたとの事実を裏付ける証拠は何 ら提出されていない。また、仮に、上記店舗の店員が上記発言をしたと しても、その発言の根拠は明らかでなく、前記(2)ないし(6)の認定及び判 断を左右するものではない。

◆判決本文

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