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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

コンピュータ関連発明

平成27(行ケ)10093  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について審決は進歩性有りと判断しましたが、知財高裁は引用文献の認定誤りを理由に、これを取り消しました。
 甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「安全管理情報」 は,「工事にかかる安全情報で,事故歴等を入力しておくと,同じ工事 を次に行う場合に参考になる」情報であり(甲1の段落【0024】), 例えば,「代表作業用キーワード(細別)」が「コンクリート打設」で\n「規格」が「大」の場合は,「ポンプ車等車の出入りと通行人を誘導す る管理人 1」であり,「代表作業用キーワード(細別)」が「コンク\nリート打設」で「規格」が「小」の場合は,「1輪車運転中,障害物に よるバランスに注意」である(甲1の段落【0041】,【0044】, 図2及び3)。 しかるところ,上記「安全管理情報」の「ポンプ車等車の出入りと通 行人を誘導する管理人 1」とは,「大規模コンクリート打設」には, 「ポンプ車,コンクリートミキサー車,砂利運搬車の出入り等に関する 安全を確保するために交通整理を行う管理人が必要になる。」(甲1の 段落【0044】)というものであり,「ポンプ車等車の出入り」とい う「危険有害要因」に対応して発生し得る交通事故(「事故型分類」) に対する予防策として交通整理を行う管理人が必要であることを示した\nものといえるから,上記「安全管理情報」は,本件発明1の「危険有害 要因および事故型分類を含む危険情報」に該当することが認められる。 また,上記「安全管理情報」の「1輪車運転中,障害物によるバラン スに注意」とは,「障害物」という「危険有害要因」に対応して「1輪 車運転中に障害物によってバランスを崩すことによる事故」(「事故型 分類」)が発生し得ることを示したものといえるから,上記「安全管理 情報」も,本件発明1の「危険有害要因および事故型分類を含む危険情 報」に該当することが認められる。 そして,甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「原価管理 情報」及び「安全管理情報」は,甲1の図1ないし図3に示すように, いずれも「代表作業用キーワード(細別)」(「コンクリート打設」)\n及びその各「規格」(「大」,「中」,「小」)ごとに関連付けられて 格納されていることが認められ,「安全管理情報」の格納の態様は,「工 事名称」(「代表作業用キーワード(細別)」)に関連付けられた「要\n素」(「規格」)に関連付けられたものといえるから,甲1発明3の「デ ータ管理部」には,本件発明1の「前記要素に関連付けられた危険有害 要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マス ターテーブル」(相違点2に係る本件発明1の構成)が格納されている\nものと認められる。
(ウ) この点に関し,本件審決は1)甲1発明3においては,本件発明1 の「歩掛マスターテーブル」と「危険源評価マスターテーブル」に共通 に格納される「要素」に相当するものが存在しないから,本件発明1の 「要素」の構成を有するものではない,2)甲1の記載をみても,「デー タ管理部」に格納される情報をが「テーブル」として格納するとの記載 はなく,そのことが自明ともいえない,3)甲1発明3の「安全管理情報」 は,本件発明1のように工事にかかるリスクを抽出する目的で,各作業 工程において発生しうる危険としての「有害要因」とその「事故型分類」 とに整理分類して設定したものではないから,本件発明1の「危険有害 要因」及び「事故型分類」に相当する情報は含まれておらず,本件発明 1とは「危険情報」である点で共通するに留まるとして,本件発明1の 「危険源評価マスターテーブル」が存在しない旨認定した。 しかしながら,上記1)の点については,甲1発明3において,「歩掛 マスターテーブル」と「危険源評価マスターテーブル」に共通に格納さ れる「要素」に相当するものが存在することは,前記ア(カ)認定のとお りである。 また,上記2)の点については,前記(イ)認定のとおり,甲1発明3に おける「安全管理情報」の格納の態様は,「工事名称」(「代表作業用\nキーワード(細別)」)に関連付けられた「要素」(「規格」)に関連 付けられたものであるから,複数のデータ項目が関連付けられて「表」\n形式で記憶されているものと認められ,「テーブル」に該当するものと いえる。 さらに,上記3)の点については,本件発明1の特許請求の範囲(請求 項1)には,「事故型分類」に係る「分類」の方式や態様を規定した記 載はなく,本件明細書にも,「事故型分類」の語を定義した記載はない ことに照らすと,甲1発明3の「安全管理情報」は,工事にかかるリス クを抽出する目的で,各作業工程において発生しうる危険としての「有 害要因」とその「事故型分類」とに整理分類して設定したものではない からといって,本件発明1の「危険有害要因」及び「事故型分類」に相 当する情報に該当しないということはできない。 以上によれば,本件審決の上記認定は,誤りである。

◆判決本文

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平成26(ネ)10102  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、進歩性がないので104条の3により権利できないとした1審判断が維持されました。
 相違点に係る本件発明1の構成は,「危険源評価データ生成手段」が「前\n記演算手段を使用して,前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前 記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基 づき,当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該 抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成す る」(構成要件2−E)というものである。\n本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載には,「危険源評価デ ータ」が抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むことのみが特定され ており,その形式や態様等が特定されているわけではないから,「危険源 評価データ」は,抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むものであり さえすれば足りるものと解される。 他方,乙5発明において,「内訳データ」に含まれる「要素」である「規 格」に基づき,「危険源評価マスターテーブル」を参照し,「当該要素に 関連する危険有害要因及び事故型分類」(「安全管理情報」)を抽出して いることは,前記(4)オ認定のとおりである。 そして,乙5発明において,上記抽出した「安全管理情報」を利用する ためにこれをデータとして出力し,「危険有害要因及び事故型分類を含む 危険源評価データ」を「生成」するように構成することは,当業者であれ\nば格別の困難なく行うことができたことが認められる。 したがって,乙5に接した当業者であれば,相違点に係る本件発明の構\n成(構成要件2−Eの構\成)を容易に想到することができたものと認めら れる。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25(ワ)19768

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平成26(ワ)27277  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月14日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、均等の第5要件を満たしていないとして侵害不成立と判断されました。
 事案に鑑み,まず,前記1において認定説示した本件特許発明と被告方法とが相違する部分(構成要件F4と被告方法との相違部分)に関し,均等の第5要件(上記(1)5))の成否を検討する。
前記1(3)において認定説示したとおり,本件特許の出願人である原告は,本件特許の出願手続において,当初(分割出願時)は,「数量に基づく計算」を「Web−POSクライアント装置」により行うか,「Web−POSサーバ・システム」により行うかについて,本件特許請求の範囲により規定していなかったところ,第1手続補正により,本件特許請求の範囲に「3)商品オーダ内容の操作に関する表示制御,すなわち,上記Web−POSクライアント装置の入力手段を有する表\示装置に表示された上記商品の注文明細情報について,ユーザが,該入力手段により,オーダ内容(数量)を入力(選択)すると,該オーダ内容に基づく計算が上記Web−POSサーバ・システムにおいて行われると共に,その結果が上記Web−POSクライアント装置に通知され,また,ユーザが,該入力装置により,オーダ操作(オーダ・ボタンをクリック)を行うと,該商品の注文明細情報に対する該オーダ内容に基づく計算結果の販売情報または注文情報が該Web−POSサーバ・システムにおいて取得(受信)されること」との構\成を付加しようとしたこと,特許庁審査官は,同構成を付加する補正は,願書に最初に添付された明細書,特許請求\nの範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく,特許法17条の2第3項に違反するなどの理由により,第1手続補正を同法53条1項により却下する旨の決定をしたこと,原告は,同却下決定を受けて,第2手続補正により,本件特許請求の範囲に「ユーザが,該入力手段により数量を入力(選択)すると,該数量に基づく計算が行われると共に,」との構成を付加したことが認められ,また,同補正により,本件請求項1記載の発明は,「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」により行われるものに限定されたと解すべきである。
そうすると,原告は,本件特許の出願手続において,被告方法のような「該数量に基づく計算」が「Web−POSサーバ・システム」により行われ,その結果が「Web−POSクライアント装置」に通知される構成について,これを明確に認識しながら,あえて本件特許請求の範囲から除外したものと外形的に評価し得る行動をとったものというべきである(なお,原告は,前記1において認定説示した本件特許発明と被告方法とが相違する部分〔構\成要件F4と被告方法との相違部分〕以外については,被告方法が本件特許発明と同一であるか,少なくとも均等であると主張しているのであるから,同主張を前提とする限り,被告方法は,客観的にみて,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものにあたることになるといえる。)。
この点,原告は,第1手続補正が却下されているとか,第2手続補正のうち,構成要件F4に関する部分は,サポート要件(特許法36条6項1号)違反の拒絶理由の解消を目的としたものであるなどと主張するが,第1手続補正が却下されたとの事実は,出願人である原告が,被告方法のような「該数量に基づく計算」が「Web−POSサーバ・システム」により行われ,その結果が「Web−POSクライアント装置」に通知される構\成を明確に認識していたとの上記認定を左右するものではなく,また,原告が当該構成を明確に認識しており,第2手続補正により本件請求項1記載の発明が「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」により行われるものに限定されたと解される以上,第2手続補正のうち,構\成要件F4に関する部分についての補正の目的が原告主張のとおりであったとしても,被告方法のような構成をあえて本件特許請求の範囲から除外したものと外形的に評価し得る行動をとったとの上記認定判断が左右されるものではない。\nしたがって,均等の第5要件の成立は,これを認めることができない。

◆判決本文

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平成27(ネ)10047  差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年9月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許権侵害でないとした一審判断が維持されました。
 これを本件ホームアプリについてみるに,本件ホームアプリがイン ストールされた被告製品においては,利用者がタッチパネル上のショー トカットアイコンを指で長押し(ロングタッチ)すると,その際のホー ム画面のページ番号に応じて,画面上に左右スクロールメニュー表示が\n表示され,当該ページが,左端ページであれば「右スクロールメニュー\n表示」のみが,右端ページであれば「左スクロールメニュー表\示」のみ が,それ以外のページであれば「左右スクロールメニュー表示」がいず\nれも表示されるものであり(前記1(3)イ(ア)),左右スクロールメニュ ー表示は,利用者がタッチパネル上のショートカットアイコンを指で長\n押し(ロングタッチ)する操作を行うことによって表示されるものであ\nって,利用者がタッチパネル上の指の位置を動かすことにより,当該シ ョートカットアイコンを移動させる操作によって表示されるものとはい\nえない。 このことは,1)甲32の1及び2(控訴人作成の「被告製品の映像及 び映像説明書」)によれば,本件ホームアプリにおいて,タッチパネル 上のポインタ(ショートカットアイコン)を指で長押し(ロングタッチ) すると,ショートカットアイコンは,ぶるぶる振動する振動状態に遷移 し,振動状態になれば,ショートカットアイコンを移動させる操作(ド ラッグ操作)を行わなくても,画面右端に右スクロールメニューが表示\nされることが認められること,2)甲17の2(被控訴人作成の「IS04 取扱説明書」)によれば,「ロングタッチする」という項目に,「画面 の項目やアイコンを指で押さえたままにします。」と記載されているか ら,本件ホームアプリにおける「ロングタッチ」とは,ショートカット アイコンを指で押さえたままにすること,すなわち,指を移動しないま ま,ショートカットアイコンを押し続ける操作であり,指の移動を伴う ドラッグ操作は含まれないことからも明らかである。 したがって,本件ホームアプリにおいて,控訴人が主張する「操作メ ニュー情報」である左右スクロールメニュー表示を表\示させるための電 気信号は,ショートカットアイコンを押し続ける操作(ロングタッチ) が行われたことを検知した電気信号であって,ショートカットアイコン を移動させる操作(ドラッグ操作)が行われたことを検知した電気信号 ではない。 そうすると,本件ホームアプリにおいては,利用者が入力手段を介し て画面上のポインタ(ロングタッチをしたショートカットアイコン)の 位置を移動させる操作を行ったことを検知して,その操作をポインタの 座標位置を移動させる命令(電気信号)に変換し,処理手段がその電気 信号を受信することによって,控訴人が主張する「操作メニュー情報」 である左右スクロールメニュー表示を画面上に表\示させているものとは いえないから,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を 受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」(構\成要件E) 処理が実行される構成を備えているものと認めることはできない。\n

◆判決本文

 

◆ 一審はこちらです。平成26年(ワ)第65号

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平成26(行ケ)10231  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月6日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、本件発明の要旨認定が誤っているとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。  
 補正発明における「第1の写真アルバム」が格納されている「デバイス」 とは,請求項の記載上では「分散型ネットワークに参加しているいずれかのデバイ ス」であればよいから,特定のデバイスに限定されるものではない。また,「同期 させる手段」によって「同期」される「他の写真アルバムであって前記第1の写真 アルバムに関係付けられる他の写真アルバム」が格納されている「前記デバイス以 外のデバイス」も,請求項の記載上では「分散型ネットワークに参加している」デ バイスであればよいから,特定のデバイスに限定されるものではない。 そうすると,ある場合には修正された「第1の写真アルバム」が格納されている 「デバイス」が,別の場合には「同期させる手段」によって当該修正に「同期」さ れる写真アルバムが格納されている「デバイス」となることが想定されており,そ の逆の状況も想定されるから,分散型ネットワークに参加しているデバイスはいず れも,「第1の写真アルバム」が格納されているデバイスとなり得るし,また,「同 期させる手段」によって「同期」される写真アルバムが格納されているデバイスと なり得ることとなる。したがって,補正発明の装置においては,分散型ネットワー クに参加しているある特定の「デバイス」とそれ以外の「デバイス」と間において, 「写真アルバム」変更の検出による関連する他方の「写真アルバム」の自動的な同 期が,双方向に行われるものと認められる。
(2) 引用発明は,第2,3(2)ア記載のとおりに認定されるところ,サーバ2 及びミラーサーバ7は,更新オブジェクト情報やイベントをその都度受信端末へ提 供するが,仮に,受信端末側においてオブジェクトが変更されたとしても,更新オ ブジェクト情報やイベントが,データベース・サーバないし他の受信端末へ提供さ れることは想定されていない。すなわち,オブジェクトの変更等の検出による更新 オブジェクト情報の提供は,一方向にのみ行われるものと認められる。
(3) そうすると,引用発明は,補正発明における「分散された写真アルバムの 集合を自動的に同期させる」との構成,すなわち,ある特定の「デバイス」とそれ\n以外の「デバイス」と間において,「写真アルバム」変更の検出による関連する他 方の「写真アルバム」の自動的な同期を双方向に行う構成に相当する構\成を含むも のではない。この意味で,補正発明と引用発明との相違点は,補正発明の場合は, 「分散型ネットワークにおいて,写真アルバムの集合を自動的に同期させる装置」 であるのに対し,引用発明の場合は,「分散型ネットワークにおいて,多数のデー タベースへデータを同期させる装置」であると認定すべきである。
(4) 被告は,取消事由2は取消事由1を前提とした主張であるところ,取消 事由1は失当であるから,取消事由2も失当である旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,審決が,引用発明を「多数のデータベースへの データ配信システム」と認定した点に誤りはないものの,取消事由2における原告 の主張は,引用発明が「分散型ネットワークにおいて,不特定多数のデータベース へデータを同期させる」装置と認定すべきことを前提として,審決がこれを誤認 した結果,補正発明と引用発明との相違点の認定も誤ったというものである。 したがって,必ずしも取消事由1を前提とするものではなく,被告の主張は理 由がない。
(5) 審決は,上記認定の相違点の容易想到性を判断せずに補正発明の進歩性を 否定したものであるから,特許法29条2項の適用を誤ったものであり,取消しを 免れない。 264/085264

◆判決本文

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平成27(ネ)10019  特許権に基づく損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月15日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 クラウドシステムについての特許侵害訴訟(CS関連発明)にて、控訴審でも、技術的範囲に属しないと判断されました。1審は、詳細な説明(目的・効果など)を参酌して、技術的範囲に属しないと判断していました。
 控訴人は,甲30文献を根拠に,テンプレートが,仮想マシンの情報等を含 むデータファイルであり,複写の対象となる実体を有するものであって,ハードウ エア資源を割り付けられることによって仮想マシンとして機能するものであるから,\n被控訴人商品のテンプレートは,本件発明の構成要件Aの「レンタルエンジン」に\n該当するものであり,さらに,インターネット接続も含めて総合試験が実施され動 作保証がされた被控訴人商品の「テンプレート」は,「インターネットに接続する」 「レンタルエンジン」に該当する旨主張する。 そこで,検討するに,甲30号証によれば,仮想マシンによる仮想システムは, ユーザーが,ユーザーインターフェース画面から,所望の処理能力を有する仮想マ\nシンとそのOSを選択し,この選択された仮想マシンとOSに対してハードウエア 資源内の必要なハードウエア資源を割り付けることで行われる(段落【0003】), 構築した仮想システムを別のユーザーに複写したい場合には,テンプレートファイ\nルを複写して複写テンプレートを作成し,その複写テンプレートに新たなハードウ エア資源を割り付けて,元の仮想システムと同じ仮想システムを生成することが行 われている(段落【0006】),データセンタは,管理サーバや複数のサーバと複 数のストレージ及び複数のネットワーク機器を有するハードウエア資源群を備えて おり,ユーザーが作成する仮想マシンを有する仮想システムの情報を有するテンプ レートファイルに,ハードウエア資源群内のハードウエアを割り付けて仮想システ ムを構築し運用する管理サーバを有する(段落【0014】),ユーザーが,仮想マ\nシンとそれにインストールするOS等を選択してオーダーすると,オーダーした仮 想マシンを有する仮想システムのテンプレートがハードウエア資源群内のサーバの ハードディスク領域内に生成され(段落【0022】),管理サーバが,ユーザーが 作成した仮想システムのテンプレート内の仮想マシンや仮想ストレージに,サーバ やストレージなどのハードウエア資源を割り付けることによって,仮想システムが 構築され,運用可能\になる(段落【0027】)ことが認められる。そして,「サー バ群#1内には,複数のサーバが設けられていて,それらのサーバはスイッチSW を介してネットワークで均質に接続され,コアスイッチC−SWを介してネットワ ークNWに接続され,インターネットからアクセス可能である(段落【0016】)」\nとされる。 そうすると,甲30文献におけるテンプレートについても,それのみでは,実体 のある仮想マシン・仮想システムであるとはいえないし,テンプレートにサーバや ストレージなどのハードウエア資源を割り付けることによって,初めて実体のある 仮想マシン・仮想システムとして,インターネットからアクセス可能となることが\n認められるのであるから,このテンプレートと,テンプレートにハードウエア資源 を割り付けることによって生成される仮想マシンは,コンピュータ技術上同一のも のということはできない。そして,前記認定のとおり,被控訴人商品のテンプレー トは,デザインスタジオの頁において,メニューとして表示されるものであるから,\n被控訴人商品におけるテンプレートは,被控訴人商品のサービスポータルの表示画\n面において,顧客が利用する仮想マシン及び仮想システムの構成のメニューとして\nの選択候補を意味するにすぎない。 以上によれば,甲30文献によっても,被控訴人商品の「テンプレート」が本件 発明の「レンタルエンジン」に該当するものと認めることはできない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成25年(ワ)第16060号

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平成27(ネ)10006  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 インターネットオークション・ショッピングの価格比較サイトの運営が特許権侵害かが争われました。知財高裁は、侵害でないとした1審判断を維持しました。争点は複数主体による侵害、間接侵害、均等侵害など種々ありましたが、そもそも構成要件が欠落しているとして請求棄却です。
 前記(3)イ(イ)認定のとおり,被告サーバーは,被告サイトにアクセ スしたユーザーのクライアント端末の要求に基づいて,そのディスプレ イ上に,予め被告サーバーに保管されていた過去に開催されたオークシ\nョン商品の縮小画像のアイコン2を含む画面3を表示させ(原判決別紙\n物件目録の別紙図9,12参照),ユーザーによってアイコン2がクリ ックされると,当該クリックされたアイコン2に対応する上記商品の画 像4,落札価格等の商品情報を主表示した画面5を表\\示(同原判決別紙 物件目録の別紙図9,12参照)させる構成を有するが,被告サーバー\nに予め保管されていた過去に開催されたオークション商品の縮小画像,\n画像,落札価格等の商品情報は,ヤフー社が一般に公開しているAPI に接続してヤフー社が運営管理するヤフーサーバーから送信された「ヤ フオク!」のオークション情報であるものと認められる。 しかるところ,ヤフーサーバーから送信された「ヤフオク!」の上記 オークション情報は,「ヤフオク!」のWebサイトのWebページの 情報であり,そのWebサイトの運営又は管理の主体はヤフー社である から,「商品の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管 理する「Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページで ある「参加企業のホームページ」に該当するものと認めることはできな い。 控訴人は,この点について,ヤフーサーバーには,「ヤフオク!」の 個別のオークション商品ごとのWebページのデータがオークションコ ードごとの場所(ドメインないしURL)に保管されており,このオー クション商品ごとのWebページは,「ヤフオク!」における「出店者」 である参加企業が自由に編集可能なオークション商品ごとのWebペー\nジであり,その運用又は管理の主体は参加企業であるといえるから,「 参加企業のホームページ」に該当し,ヤフーサーバーには「参加企業の ホームページ」を保管する「バナーサーバー」が存在する旨主張する( なお,控訴人の上記主張は,前記第3の1(2)アのとおり,「争点1−イ」 に関するものであるが,その主張内容に照らし,「争点1−ア」におい ても主張するものと解される。)。
しかしながら,前記(3)ウ(イ)の認定事実によれば,「ヤフオク!」の サイトの個別のオークション商品のWebページには,「商品の情報」 (「即決価格」,「残り時間」,「入札件数」,「個数」,「開始時の 価格」,「最高額入札者」,「開始日時」,「終了日時」,「商品説明 を読む」等),「商品画像」(小さな画像をクリックすると,拡大表示\nされる。),「出品者の情報」(「出品者(自己紹介),「評価」,「 出品者への質問」,「出品者のその他のオークションを見る」),「商 品画像」等が掲載されるが,当該Webページは,ヤフー社が自ら運営 又は管理する自社のWebページであることが明らかである。 また,「ヤフオク!」のサイトのオークション商品のWebページに 掲載される「商品の情報」及び「出品者の情報」は出品者によって入力 され,「商品画像」は出品者によってアップロードされるが,その入力 項目はヤフー社によって設定され(甲74),Webページにおける各 情報の表示スタイルもヤフー社によって定められたものであり,表\\示さ れる情報の入力等が出品者によって行われるからといって,当該Web ページが出品者が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップペ ージとしてのホームページであるということはできない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成25年(ワ)247069

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平成26(ネ)10107  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月14日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないとした1審判断が維持されました。争点が「一覧出力形式」という用語の意味です。
 控訴人は,「一覧」とは「全体に一通り目を通すこと」という意味も包含するのであって,「全体を一目で分かるように」する場合に限る必要はないし,本件発明1に対する課題解決のための手段という観点からも,出願経緯からも,出力を1回に限定する必要もなく,被控訴人方法は構成要件1Dを充足すると主張する。\n確かに,「全体を一目で分かるように」するためには,全体が画面に表示される必要があるものの,その場合,画面への表\示までに送信されるデータが一度で出力されなければならない必然性はない。また,【0055】にあるとおり,本件発明1は,画面をスクロールする場合を含むのであって,この場合,画面上表示されない画像データについては事前に送信しなくても,表\示するためのスクロールの時点までに送信されていれば,全体を確認することができる以上,画面上表示されない画像データについては事前に送信しない方法も考えられ,このような観点からしても,画\n 像出力の回数を1回に限定する必要はない。また,本件発明1の目的,作用効果を果たすためには,事業者は,顧客に対し,預かった複数の品物の全てについて一目で分かるように,すなわち,複数の品物の全ての画像を含むように生成したウェブページとして1回の呼出操作で,ウェブページに含まれる品物に対応した画像を閲覧できるように提示する必要があるが,このことを表現するものとして,控訴人の主張するとおり,「一覧」は「全体に一通り目を通す」ものと解釈することも一応は可能\である。 しかしながら,そう解釈した場合であっても,顧客が自らの預かり品の「全体」の範囲を簡単に把握,理解できない方法では,すなわち,自分が行った1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表示されず,出力されていない画像が他に存在する構\成に基づく方法では,顧客が,表示されていない品物の存在を失念している場合には,他のカテゴリーにアクセスしたり,同一カテゴリー内にある他の画像を呼び出したりすることは考えられないのであって,自分が預けた品物を全て正確に把握するという上記課題を解決できないから,「全体に一通り目を通す」ことにならない。そうすると,1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表\示されない新旧いずれの方法についても,被控訴人方法がこの要件を欠くものとなる。 したがって,被控訴人方法は,本件発明1の技術的範囲に属しない。同様の理由で,被控訴人方法は,本件発明2及び3の技術的範囲に属さず,被控訴人装置も,本件発明4から6の技術的範囲に属しない。

◆判決本文

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平成26(ネ)10015  債務不存在確認請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審での訂正の再々抗弁も理由なしと判断されました。
 本件訂正発明1のメッセージ提供手段は,特許請求の範囲(甲7の2)の記載によれば,「前記連絡先番号に係る広告主に対し,前記広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するメッセージ提供手段」というものである。 ここに,「前記広告情報」とあるのは,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号と連絡先番号とを関連情報として有するデータベース」との発明特定事項中の「広告情報」を指すものであるから,この広告情報は,識別番号を有する「いずれの広告情報」を意味することとなる。すると,「前記広告情報に基づく架電である旨」は「いずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。このことは,1)本件訂正発明1が,識別番号に基づいて接続処理をするにもかかわらず,一転して,メッセージ提供手段が提供するメッセージのみがその識別番号を利用しないことが不自然なこと,2)メッセージ提供手段が提供するメッセージが,「広告情報に基づく架電である」それ自体を通知するものであるとした場合,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号」と,広告情報と識別番号との関連付けを明示した意味がなくなってしまうことからみても,肯定することができる。 したがって,特許請求の範囲の記載からは,メッセージ提供手段が提供するメッセージは,「いずれの広告情報に基づく架電である旨」すなわち「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。
(b) 本件明細書の記載
本件明細書(甲1)には,次の記載がある。
・・・
これらの記載によれば,CTI演算部は,あらかじめ記録された所定の応答音声データを応答検知部623Cから出力できるところ,その音声データを,識別番号に従った音声データとすることを妨げる記載はないから,本件訂正明細書の記載を参酌しても,上記特許請求の範囲の記載の検討結果を左右するものとまではいえない。 (c) 被控訴人らの主張について 被控訴人らは,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,本件訂正明細書の【0039】【0156】【図10】の記載からみて,「広告情報に基づく架電である」旨であると主張する。 しかしながら,当該メッセージの内容についての特許請求の範囲の記載は,前記のとおり解釈され,明細書における上記各記載のメッセージの内容は,例示にすぎないほか,その記載における「○○からの入電です。」の「○○」も,「広告情報を閲覧した利用者からの入電です。」の「広告情報」も,「いずれの広告情報」と解釈する余地があるから,被控訴人ら主張の記載は,メッセージ提供手段が提供するメッセージが,単に,「広告情報に基づく架電である」旨の通知であることを積極的に根拠付けるものとまではいい難い。 被控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(d) 小括
以上のとおり,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,広告主に対して,「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づき架電したきたか」を通知するものであり,その広告情報の具体的な内容を広告主に通知することと特定するものと認められる。
・・・・・
上記(a)〜(c)の記載によれば,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセージを提供しているといえ,このような架電接続方式は周知技術であったと認められる。 控訴人は,甲33は,広告に関するものではなく,受信者の利便を目的とするので,甲12A発明とは分野,目的を異にする旨を主張する。しかしながら,相違点である構成【訂正1−G】は,専ら通話の転送の際のメッセージ提供に係るものといえ,控訴人主張の甲33と甲12A発明との相違が,転送の際のメッセージの提供に係る甲33に記載の事項を,相違点に係る周知技術の認定資料とすることを妨げることはない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
c 容易想到性
甲12A発明は,電話3からの呼を受けたサーバが,その呼をアクセス先の電話に接続(転送)する架電接続方式であるといえる。また,上記bのとおり,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセー ジを提供する架電接続方式は周知技術である。 そうすると,甲12A発明と周知技術は,ともに呼の転送を行う架電接続方式であるから,甲12A発明において,周知技術を採用し,呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージを提供するように設計変更することに格別の困難性は認められない。そして,甲12A発明のサーバは,受けた呼が,どのような種類の広告を見た発信者からの呼であるかを認識できるのであるから(甲12の【0025】),呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージとして,どのような種類の広告を見た発信者からの呼である旨,すなわち,いずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものであり,その構\成をとったことによる効果も,甲12A発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
(ウ) 控訴人の主張について
1)控訴人は,相違点に係る本件訂正発明1の構成により,着信応答時に,直ちに広告効果があったか否かを広告主に伝えることを可能\とする顕著な効果を奏する旨を主張する。 しかしながら,相違点に係る本件訂正発明1の構成,すなわち,広告主に対しいずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供する構\成が,当業者にとって容易に組み合わせられることは,前記のとおりであり,そのような構成を採用した場合,着信応答時に広告効果があったか否かが分かるのは当然の帰結であるから,控訴人主張の上記効果は,甲12A発明及び周知技術から,当業者が予\測し得る範囲内のものである。 控訴人の上記主張は,採用することができない。 2) 控訴人は,甲12A発明は,架電がすべて広告情報を視聴した者からされるため,アクセス先に対して広告情報に基づく架電である旨のメッセージの提供をする実益はなく,甲12A発明に本件訂正発明1の構成【訂正1−G】を組み合わせる動機付けがない旨を主張する。\n しかしながら,甲12A発明の構成は,広告を視聴せず「アクセス先電話番号」に架電したユーザの存在を排除するものではなく,このことは,本件訂正発明1と全く同様である。\n控訴人の上記主張は,その前提に誤りがあり,採用することができない。 イ 本件訂正発明6 上記アの認定判断によれば,本件訂正発明6が,甲12B発明及び周知技術から容易に想到できたことは明らかである。

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対応する無効審決に対する取消訴訟はこちらです。平成26(行ケ)10184

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平成26(ワ)65  差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月27日  東京地方裁判所

 携帯電話の入力支援方法についての特許権の技術的範囲に属しないと判断されました。
 ア 振動状態のショートカットアイコンが移動可能な状態になることについて甲3,甲17の1,甲32の1・2及び弁論の全趣旨によれば,本件ホームアプリにおいて,振動状態でないショートカットアイコンにドラッグ操作を行っても指の動きに追従して移動することはないが,振動状態のショートカットアイコンにドラッグ操作を行うと,指の動きに追従して移動することが認められる。\nそうすると,ロングタッチは,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」とみることができる。原告は,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから,「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの座標位置を移動させる状態に切り替える命令」という意味であると主張する。\nしかし,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから(甲27),「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの位置を移動するよう仕向ける命令」すなわち「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味することは一義的に明確であって,これを「ポインタの位置を移動可能な状態に切り替える命令」であると解釈する余地はない。「ある行為をするように仕向ける」ことと,「ある行為が可能\な状態に切り替える」こととが異なることは明らかであるから,「させる」に前者の意味があるとしても,後者の意味があることにはならない。原告の主張は失当である。 本件明細書の段落【0052】〜【0101】の実施例の説明を見ても,構成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に対応するものとしては,「例えば,マウスにおける左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させること(ドラッグ操作)や,キーボードにおける特定のキーを押しつつマウスを移動させる行為,等が該当する。」(段落【0079】)とされ,「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」としているのであって,「ポインタの位置を移動可能\な状態に切り替える命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」とすることについては何らの記載も示唆もない。このような本件明細書の記載を参酌すれば,「ポインタの位置を移動させる命令」が「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味し,「ポインタの位置を移動可能\な状態に切り替える命令」を意味しないことは一層明らかである。\nしたがって,ロングタッチが「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」であったとしても,構\成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるということはできない。
イ 振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動することについて ロングタッチにより振動状態となったショートカットアイコンは,元々の位置よりやや下に移動して振動するものと認められる。 しかし,甲32の1・2によれば,Facebookアイコンをロングタッチすると,ロングタッチ中のFacebookアイコンのみならず,ロングタッチしていないEvernoteアイコンやTwitterアイコンも元々の位置よりやや下に移動して振動状態となっていることが認められる。 そうすると,ロングタッチが,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置」を「元々の位置よりもやや下に移動させる」ことを指示する命令ということはできない。ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動するのは,他のショートカットアイコン(非「ポインタ」)の移動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。
ウ 振動状態のショートカットアイコンが小刻みに振動することについて 甲32の1によれば,ロングタッチにより振動状態となったロングタッチ中のショートカットアイコン(=「ポインタ」)は小刻みに振動することが認められるが,これも,他のショートカットアイコン(非「ポインタ」)の振動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。
(6) 「ポインタの位置」を「『Multi Touch』ソフトウェアがカーソ\\ルや数値で表示する座標位置」とした場合原告は,甲32の1・2において「Multi Touch」と題するソフトウェアが赤いカーソ\ルの位置や画面左上の数値で表示する座標位置の変化をもって,「ポインタの位置の移動」であるかのような主張をする(原告準備書面(2)42頁)。しかし,原告は,「Multi Touch」と題するソフトウェア(及びこれにデータを提供していると主張する「MotionEvent」と題するソフトウェア)がどのようなデータを検出しており,それが本件発明にいう「ポインタ」の定義を満たすのかについて主張立証をしないから(指を離した状態でも,また「ショートカットアイコンが指に追従する」状態でなくてもカーソ\ルが表示されているのであるから,「タッチパネル上の指の座標位置」でも,「指の動きに追従するショートカットアイコンの座標位置」でもないことは明らかである。),当該ソ\フトウェアが何を検出しているにせよ,それが本件発明にいう「ポインタ」に当たると認めることはできず,仮にロングタッチにおいて上記ソフトウェア上のカーソ\\ルや数値で表示される座標位置が変動するとしても,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるとはいえない。(7) 本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでない場合被告の主張するとおり,本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでないと解釈した場合には,当然ながら,「ポインタの位置を移動させる命令」も存在しない。 (8) 以上のとおり,本件ホームアプリにおける「ポインタ」をどのように解釈するにせよ,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」であるとはいえないから,その余の点につき判断するまでもなく,本件ホームアプリは,本件発明の構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると……操作メニュー情報を……表\示する」出力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムであるとは認められない。

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平成26(行ケ)10153  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月5日  知的財産高等裁判所

 スロットマシンについて、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。理由は動機付けありおよび本件発明の認定誤りです。
 被告は,甲1発明の扉開閉監視手段(サブCPU82及びセンサ)は,設定値の変更とは無関係であるから,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16に記載の設定値の変更に関連する技術事項を適用する動機付けはない旨を主張する。 しかしながら,甲1発明の技術分野(遊技機)と,甲5,甲15及び甲16からうかがわれる周知技術の分野(遊技機)は,同一であり,特段の阻害事由がないのであれば,当業者は,公知の発明に周知の技術を適用しようと動機付けられるところ,上記特段の阻害事由は認められない。 のみならず,甲1発明の扉開閉監視手段は,甲1に,「図55はドアオープン監視機能画面を示している。スロットマシン1の電源が断たれている間,主に遊技店の営業時間外の間に,前面扉37が開けられたことを,例えばセンサといったハードウエアで監視している。そして,スロットマシン1に電源が投入された時に,サブCPU82は,そのハードウエアをチェックし,前面扉37が開けられた形跡を検出した場合には,図示するようなメッセージを液晶表\\示装置22に表示する。遊技店関係者は,このメッセージにより,営業時間外に遊技機に不正行為が行われた可\n 能性が高いことを把握することが出来る。」(【0265】)と記載されているように,不正行為の監視を目的とするものであるところ,その不正行為とは,とりもなおさず,設定の変更のことなのであるから(【0253】),甲1に接した当業者は,更なる不正手段の防止のために,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16からうかがわれる不正変更防止の周知技術を適用しようと,強く動機付けられるといえる。\n
・・・
相違点6は,本件発明1の構成【C9】を甲1発明が備えていないというものである。そして,構\\成【C9】は,本件発明1の構成【C2】によって遊技用記憶手段に含まれた,1)所定の確率に基づいて算出される払出率について設定された段階を示す情報を記憶する特定領域,2)遊技の進行状況に関する情報を記憶する領域として記憶すべき情報の重要度に応じて分けられた特別領域,及び3)一般領域の3領域のうち,一般領域に記憶されている情報を,設定変更手段による段階の変更の際に初期化すると特定するものである。 これら,「特定領域」「特別領域」「一般領域」が何を示すものかについては,本件明細書を参酌する必要があるといえるが,これら3領域のうちのいずれが段階変更の際に初期化されるかは,本件明細書の記載を参酌するまでもなく特許請求の範囲の記載から一義的に明らかであり,本件明細書の記載を参酌する必要はない。すな わち,構成【C9】により初期化されるとされたのは一般領域のみであり,特定領域や特別領域の初期化の有無については,構\\成【C9】は何ら限定を付すものではない。
ウ 小括
以上によれば,前記の審決は,相違点6が,一般領域の初期化に係るものであるのにもかかわらず,上記各刊行物記載の発明が,「特定領域」「特別領域」「一般領域」の区分という相違点1に係る事項を有しないことと,特別領域の初期化という相違点6とは関連のない技術事項を有しないことを理由とし,上記各刊行物に相違点6に係る本件発明1の構成の記載がないと判断したものであって,合理的根拠を欠くことが明らかである。\nそうであれば,この点において,審決の判断過程には,誤りがあるといわざるを得ない。

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平成26(ネ)10114  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁は、インターネットショッピングサイト「ZOZOTOWN」に対して、特許権に基づく、損害賠償請求を棄却した1審判断を維持しました。 1審判決はなぜかアップされてません。
 被告ウェブサイトは,被控訴人が多数のファッションブランドの商品を販売するインターネットショッピングサイトであり,被控訴人は,ブランド各社から納入を受けた商品を被告ウェブサイトにアクセスしたユーザーに対し,被控訴人の名義で販売しており,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン2(別紙1の図2)がユーザーによってクリックされると,関連商品が表示されるリンク先のページ(別紙1の図3及び図4)は,被控訴人の自社のページであること,被告ウェブサイトで表\示される他のページも,いずれも被控訴人の自社のページであり,被告ウェブサイトには,被控訴人以外の他の企業が管理するホームページに誘導するバナー広告が存在しないことが認められる。 したがって,被告ウェブサイトを使用する被告システムには,「商品の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページである「参加企業のホームページ」が存在するものと認めることはできず,ひいては,被告システムにおいて,「参加企業のホームページ」を保管する「バナーサーバー」が存在するものと認めることはできない。

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平成26(行ケ)10146  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年2月26日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明「電子カルテの指示文書作成装置」について、拒絶審決が維持されました。
 引用発明は,従前の紙カルテにおいては,患者別の医師指示簿から当日行うべきオーダーを抽出し,実施記録の記入に至るまでの間,かなりの量の人手による転記及び運搬作業を要し,その事務量の多さに加え,医療事故を招くミスを発生させるおそれがあり,また,医療チーム内の情報の共有化が困難であるなどの問題があったことから,それらを解決するために,医師が事前に一定の日付という条件が満たされれば実施するよう指示した処置,すなわち,「日付を条件とする処置」につき,条件が満たされ,看護師等が実施すべき状況に至ったものを自動的に選択し,同選択により確定した指示に係る処置を,画面に一覧表示してスタッフ等の関係者に伝えるネットカルテに係るものである(乙1号証)。
イ 甲2発明は,前述したとおり,処置の失念等の医療上のミス発生防止を目的の1つとしており,前述した引用発明の目的との間に共通性が認められる。また,甲2発明は,医師が事前に一定の「予見される症状」という条件が満たされれば実施するよう指示した処置,すなわち,「予\\見される症状を条件とする処置」につき,当該症状が現れて条件が満たされ,実施すべき状況に至った処置などを自動的に表示し,関係する医療従事者に伝えるという発明であり,医師による事前の条件付指示につき,当該条件が満たされ,実施すべき状況に至った指示に係る処置を自動的に選択し,同選択により確定した指示に係る処置を,表\\示して医療に携わる関係者に伝えるという点において,引用発明と共通する。 ウ 以上に鑑みれば,当業者において,医療上のミス発生防止を更に徹底するために,引用発明につき,対象とする医師による事前の条件付指示の選択肢を増やすことを考えて甲2発明を適用する動機は,十分にあるものといえる。\nそして,引用発明に甲2発明を適用すれば,対象とする医師による事前の条件付指示につき,引用発明に係る日付を条件とするもののみならず,予見される症状を条件とするものも選択できるようにすること,すなわち,相違点1のうち,前述した「1)条件に合致すると処置が確定する,ナースなどが実行する指示項目が,本願 発明においては,「日付」を条件とするもの又は「予見される症状」を条件とするもののいずれかであるのに対し,引用発明においては,前者のみであること」に係る構\\成に,容易に想到し得るものというべきである。 相違点1のうち,前述した「2)実施すべき指示につき,本願発明においては,操作者が選択して確定指示を発行するのに対し,引用発明においては,システムにおいて自動的に選択されて確定指示が発行されること」については,当業者が必要に応じて適宜決定し得る設計的な事項といえる。 以上によれば,相違点1につき,容易想到性を認めた本件審決の判断に,誤りはない。

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平成26(ワ)7856  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月24日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、構成要件を備えていないとして、特許権侵害が否定されました。
 前記前提事実及び上記認定事実に基づき構成要件1D並びに2C及び2Dにいう「第1記録領域」及び「第2記録領域」の意義についてみるに,まず,特許請求の範囲の「記録媒体の第1記録領域」及び「記録媒体の第2記録領域」との記載によれば,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体が有する記録領域全体のうちそれぞれ一部分を占める領域であり,相互に区別されて存在するものであることが明らかである。また,「第1データを・・・第1記録領域に書き込み」,「第2データを・・・第2記録領域に書き込\nむ」との記載によれば,データを書き込む際には,それが第1データであるか第2データであるかに応じて,記録領域全体のうちどの領域に書き込まれるのかが定まっているとみることができる。 このような特許請求の範囲の記載によれば,記録媒体の記録領域は,第1記録領域及び第2記録領域(並びに管理領域その他の領域)に物理的に区分されており,第1データが記録される第1記録領域に第2データが書き込まれたり,第2データが記録される第2記録領域に第1データが書き込まれたりすることはないと解すべきものとなる。 そして,上記の解釈は,前記(1)イの本件明細書の記載,すなわち,半導体メモリには第1記録領域と第2記録領域が形成されており,第1データの書き込みは第1記録領域の書込可能容量に達した場合に終了し,第2データの書き込みは第2記録領域の書込可能\容量に達した場合に終了する旨の記載に沿うものであって,本件明細書(甲4)の発明の詳細な説明及び図面に,これと異なる構成(第1データが記録されるべき領域への第2データの書き込み又は第2データが記録されるべき領域への第1データの書き込みを許容するような構\成)を示唆する記載は見当たらない。 そうすると,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体の記録領域を物理的に区分して形成された別個の領域であると解するのが相当である。
・・・
 被告機器及び被告運行管理方法においては,センサから出力され,一次記録領域に記録された加速度データを,トリガ判定閾値を超えるなどの条件を満たすデータ(原告が第1データに当たると主張するもの。以下「甲データ」という。)であるか,事故判定閾値を超えるなどの条件を満たすデータ(原告が第2データに当たると主張するもの。以下「乙データ」という。)であるかに応じて,記録媒体(CFカード)に形成された別個のファイルに記録するとされている(別紙被告機器・・・)。そして,原告の認めるとおり,CFカードの記録領域は物理的に区分されておらず,甲データ又は乙データに対応するファイルが記録領域全体のうちどの部分に形成されるかは書き込みをする際に定まるというのであるから,CFカード中の空き領域には甲データ及び乙データのいずれもが書き込まれ得るということができる。 以上によれば,被告機器及び被告運行管理方法は本件各特許発明の「第1記録領域」及び「第2記録領域」に相当する構成を有していないと判断するのが相当である。\n

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平成24(ワ)15693  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月23日  東京地方裁判所

 図書保管管理システム(CS関連発明)について、技術的範囲に属しないと判断されました。また、訂正の抗弁についても、「再訂正によって特許の無効理由が解消されるとは認められない」と判断されました。
 本件発明が物の発明であることに鑑みると,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する」との文言から,上記更新手段は,\n ステーションに搬送された状態で,図書が取り出された状態のコンテナ又は図書が返却された状態のコンテナに対して,記憶手段の記憶内容を更新するという構成を示していると解するのが自然である。そして,本件明細書等には,「図書館員がコンソ\ール54を操作して返却完了の指示を中央処理装置39に入力すると,図書コードと,…コンテナ番号とを組み合わせ,その組み合わせたデータを…前記ハードディスク47等に登録する。」(段落【0051】),「…図書館員がコンソール54を操作して取り出し完了の指示を中央処理装置39に入力すると,…更新する。」(段落【0058】)というように上記解釈を裏付ける記載はあるが,その一方で,本件明細書等には,ステーションに搬送されていない状態で,図書の取り出し又は返却の完了していない状態のコンテナに対して更新するものとする更新手段の構\成については,記載されていないし,かかる構成の示唆すらない。\nさらに,前記の本件明細書等の記載には,「…図書の取り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,…記憶内容が更新される」(段落【0010】),「このようなサイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段を採用することにより,…同一寸法の図書ならば,その寸法の図書を収容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となるので,…自動化による図書の取り出し及び返却作業の能\率を効果的に向上させることができる」(段落【0011】)と記載されており,これらの記載から,本件発明において前提とされるサイズ別フリーロケーション方式は,同一寸法の図書ならばコンテナ内に任意に返却することが可能な構\成,すなわち,同一寸法の図書であればその寸法の図書を収容するためのコンテナ内に空きのある限り任意に収容することが可能な構\成とされているものと理解することができる。そして,コンテナ内に空きのある限り図書を任意に収容するためには,図書の取 り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,更新手段が記憶内容を更新する,すなわち,図書の取り出しや返却が行われた状態にあるコンテナに対して記憶内容を更新することが必要であり,そのような構成が本件発明におけるサイズ別フリーロケーション方式の前提となっているものと解される。
ウ したがって,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する更新手段」とは,ステーションに搬送された状態で図書が返却された状態のコンテナに対して記憶内容を更新する構\成を具備する更新手段をいうものと解するのが相当である。
・・・
以上のイないしオによれば,乙22公報,乙26公報,乙23公報,乙27公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けること,又は,自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載されており,これらのことが従来周知の技術的事項であると認められる。 また,乙26公報及び乙27公報に記載されているように,自動倉庫に格納される収容物がコンテナ又は容器に収納した状態で格納されることは,周知の事項であり,乙27公報に記載されているように,収容物の寸法に応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従来から一般的に行われていることであると認められる。そして,このコンテナ又は容器が収容される棚領域が,収容物の大きさ(寸法)に対応したものとなることは自明の事項である。 以上によれば,前記イないしオから,「収容物の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を有する倉庫とそれぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の収容物を収容する複数のコンテナを備えた自動公庫」との事項が周知技術であると認められる。 キ そして,乙12発明と上記カで認定した周知技術は,コンテナ等に収容物を収容し,このコンテナを,棚等を有する収容場所に格納するものであるという点で共通するから,乙12発明に上記周知技術を適用することは, 当業者が容易になし得たことであると認められる。

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平成25(ワ)16060  特許権に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月16日  東京地方裁判所

 クラウドシステムについての特許侵害訴訟(CS関連発明)です。裁判所は詳細な説明(目的・効果など)を参酌して、技術的範囲に属しないと判断しました。
 上記アからすると,被告商品における「テンプレート」は,被告のサービスポータルの表示画面において,顧客が利用する仮想マシン及び仮想システムの構\成のメニューとしての選択候補を意味するにすぎないものと認められる。 この点,原告は,被告商品における「テンプレート」は,総合試験を経て動作保証された,即時稼働可能な状態で提供される仮想マシンそのものであり,予\め用意されたテンプレートのコピーにより仮想マシンが作成されるのであるから,構成要件Aの「レンタルエンジン」に該当する旨主張する。\nしかし,前記認定に係る本件発明の特徴からすれば,ユーザーからのリクエスト時にレンタルエンジンは実在するものでなければならないところ,上記のとおり,被告商品においては,ユーザーの選択により仮想マシンが配備される,つまり,ユーザーが選択しない限り仮想マシンは配備されず,ユーザー自らが必要な構成や機能\を選択してシステム構築を行うものであるから,ユーザーのリクエスト時に実在しない仮想マシンをレンタルエンジンととらえることはできない。まして,テンプレートをコピーすることにより仮想マシンが作成されることを前提としても,テンプレートを実在するレンタルエンジンととらえることもできない。ユーザーからのリクエスト時にテンプレート上に表\示されたリソースの動作保証がされていることと表\示されたリソースから構\成されるコンピューターが現実に存在することが異なることは明らかである。 ウ 以上のとおり,被告商品における「テンプレート」を,構成要件Aの「レンタルエンジン」ととらえることはできず,ほかに被告商品において構\成要件Aにいう「レンタルエンジン」に該当すると認めるべき構成は見当たらない。\n

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平成26(行ケ)10048  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月28日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性無しとした審決が維持されました。
 原告は,発明の容易想到性を肯定するためには,従来技術とは異なる何らかの構成を採用するに至る契機となる事実がなければならないにもかかわらず,審決は,明確な理由なく容易想到性を認めた旨主張する。\nしかし,引用例1発明及び引用例2発明は,複数の商品を置く場合の商品販売システムという点で共通し,引用例2発明は専門店についても含むことが明記され,書店における書籍の販売も含むものである。また,引用例1発明は,書籍の在庫不足の場合などに販売機会を喪失すること,立ち読みによる書籍の破損等を課題としているところ,引用例2発明は,売り場面積の有効活用,商品の汚損等を課題とするものであって,これを書店について考えれば,書籍の種類が少ない場合に多くの顧客を集めることができないこと,書籍の汚損が生じることを課題として含むものであるから,課題としても共通するものである。そうすると,引用例1及び引用例2に接した当業者であれば,書店において書籍ビュアーを置く際に,引用例2発明に開示されている商品見本の一部をディスプレイに置き換えるという技術及びディスプレイに書籍の外観を表示して書籍を陳列する方法と書籍を書棚に陳列する方法を混在させるという技術を適用して,書籍とともに書籍の外観が表\示されたディスプレイを書棚に置く動機付けがあるというべきである。 したがって,引用例1及び引用例2に接した当業者であれば,引用例1発明に引用例2発明を適用する動機付けがあるというべきであって,これにより,相違点(1)に係る構成を容易に想到することができるというべきである。\nしたがって,原告の主張は理由がない。
(3) 以上によれば,相違点(1)について,審決が,引用例2発明の商品見本陳列棚をディスプレイ群に置き換えることは可能であって,この置換えにおいて,商品見本陳列棚の一部をディスプレイに置き換えても,商品見本を陳列するという目的は達成でき,書店においては,引用例2発明の商品の陳列は書棚の書籍に他ならず,書棚の一部をディスプレイにしたところで,書籍の陳列という目的は達成できる旨判断したことは相当であって,原告の取消事由1は理由がない。\n

◆判決本文

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