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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

周知表示(不競法)

令和5(ネ)10048  販売差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年11月9日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

ブーツ「Dr.Martens」について、原審は、商標権侵害と不競法の周知商品等表示に該当するとして、差止を認めました。1審被告は控訴しましたが、知財高裁も周知商品等表示に該当すると判断しました。

これに対し、控訴人は、黒を含む暗色系のウェルトと明るい色合いの縫 合糸との組合せによって明暗のコントラストを演出する靴製品にさしたる個 性や特異性はない旨主張する。確かに「黒色のウェルトと明るい黄色の糸の ステッチ」という形態だけを単独で取り上げれば、靴製品のパーツ(ウェル ト、ステッチ糸)において普通に使用されることが想定される、ありふれた 色彩のうちの任意の組合せにとどまるものであり、それだけから特別顕著性 を認めることは、過剰な独占を認める結果になり相当でない。黒と明るい黄 色とのコントラストによってウェルトステッチが明瞭に視認できるという効 果があるにしても、控訴人の主張するとおり、これに類する明暗のコントラ ストが採用されている靴製品は他にも普通に見受けられるところ(乙32、 33)である。
しかし、本件において、被控訴人は、被控訴人商品を「被控訴人主張形態 (ア)ないし(ク)の形態的特徴を全て有するもの」として定義し(原判決別紙 「原告商品目録」)、これらの「形態上の特徴を全て備える被控訴人商品の 全体の形態」が被控訴人の周知の商品等表示であるとして、不競法2条1項\n1号の不正競争に係る請求を組み立てているところである(原判決15頁2 3行目〜24行目)。
当裁判所は、被控訴人のこの主張を前提に、黄色のウェルトステッチ(形 態(ア))だけでなく、形態(ア)〜(ク)を全て備える被控訴人商品の全体の形態 が商品等表示に該当するかどうかを検討し、そのような観点から、被控訴人\n商品の特別顕著性を肯定したものである。控訴人の主張は、黄色のウェルト ステッチ(形態(ア))だけに着目した議論としては首肯できるにしても、当裁判所の上記判断を左右するものではない。
(4) なお、これに関連して、原審の判断について付言しておく。
原審は、被控訴人商品が備える形態のうち、黄色のウェルトステッチ(形 態(ア))だけを取り上げて、これが周知の商品等表示に当たると判断してい\nるところ、この判断は、控訴人が控訴理由で批判しているとおり、弁論主義 に反するものであったといわざるを得ない。もっとも、被控訴人は、当審に おいて、原審の判断は被控訴人の主張と異なるものではないとの趣旨を述べ ているから、その瑕疵は治癒されていると解されるが、実体判断として採用 できないことは上述のとおりである。
3 被控訴人商品の形態の周知の商品等表示該当性その2(周知性の有無)に\nついて
(1) 上記1の認定事実のとおり、被控訴人商品を含む「1460 8ホール ブーツ」は、昭和60年以降現在に至るまで、被控訴人の日本子会社である ドクターマーチンジャパンを通じて我が国において販売されていること、そ の販売チャンネルは、同社の運営する実店舗72店舗及び公式オンラインス トアのほか、靴小売りチェーン、セレクトショップ等の正規取扱店が含まれ ること、「1460」シリーズの売上げは、令和3年度だけで10万足近く、 販売額で14億円余りに上ること、ドクターマーチンジャパンは、ファッ ション雑誌を中心に「ドクターマーチン」の広告を継続的に掲出しており、 被控訴人商品の写真が掲載されたものもあること、被控訴人商品は、雑誌等 メディアにも再三取り上げられており、その中には、「一目でドクターマー チンだとわかる黄色のウェルトステッチやロゴ入りのヒールループなど…も 特徴」、「ドクターマーチンのトレードマークともいえるイエローステッチ」 など、特に形態(ア)に具体的に言及し、これがドクターマーチンのブーツの 最大の特徴であるとの趣旨のコメントをするものが多いことが認められる。
さらに、被控訴人の依頼により行われたアンケート調査(本件被控訴人 調査)では、「店舗、通信販売サイト、雑誌等で革靴やブーツを見たり、過 去1年以内に革靴やブーツを購入した15歳から59歳までの全国の男女」 を対象に(1019人から回答)、被控訴人商品の写真を示した上で、当該 写真のように靴の外周に沿って黄色のステッチのある革靴やブーツはどこの ブランドの商品だと思うかと質問したところ、「ドクターマーチン」を想起 できた者は、30.7%(自由回答式)〜37.6%(選択式)であったと いうのである(前記引用に係る認定事実)。 以上によれば、形態(ア)〜(ウ)の特徴を備える被控訴人商品の形態は、需 要者の間に広く認識されており、周知の商品等表示に該当するものと優に認\nめられる。
(2) これに対し、アンケートの対象者を「15歳から69歳までの全国の男 女」とする本件控訴人調査の結果では、アンケートで示された写真から「ド クターマーチン」を想起できた者は全回答者の5.47%などとされている (乙15〜18)ところ、控訴人は、これは周知性を否定するものであり、 アンケートの対象者として、控訴人各商品及び被控訴人商品の需要者である 一般消費者を広く対象とする本件控訴人調査の結果を採用すべきであると主 張する。
しかし、本件控訴人調査は、被控訴人商品の全体の形態を示すことなく、 ウェルト、黄色のウェルトステッチ及びアウトソールが写っている部分のみ\nを切り取った写真を示して質問が行われている(乙15の2〔2頁〕)とこ ろ、被控訴人商品全体の形態の周知性が問題となっている本件において、適 切な質問方法とはいえない。また、需要者の範囲に関しても、革靴又はブー ツに関心のある消費者という属性を求めるのが適切というべきであり、この 点、本件被控訴人調査の対象者はやや絞りすぎ(特に「過去 1 年以内」の要 件)のきらいはあるものの、本件控訴人調査よりは、実際の需要者に近い対 象者の選定になっていると評価できる。

◆判決本文

原審はこちら。

◆令和2(ワ)31524
#知財 #訴訟 #不競法 #不正競争行為 #周知

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令和3(ワ)31529  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年9月28日  東京地方裁判所

イス「TRIPP TRAPP」について、デッドコピーではない場合に、商品等表示に該当するのか、著作権侵害かが争われました。東京地裁(40部)は、前者については、原告らの主張する本件形態的特徴は、そもそもその外延が極めて曖昧であり、原告製品のうち出所表示機能\を発揮する商品等表示部分を明確に特定するものとはいえないと判断しました。また、後者については、著作権侵害についても翻案ではないと判断されました。
最後に、原告製品と被告製品の写真があります。

ア 商品の形態に係る「商品等表示」の特定について\n
不競法2条1項1号又は2号は、他人の周知又は著名な商品等表示(人の\n業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品 又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表\示 を使用等することをもって、不正競争に該当する旨規定している。この規定 は、周知著名な商品等表示の有する出所表\示機能を保護するという観点から、\n周知著名な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤\n認混同させて顧客を獲得する行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保 するものと解される。そして、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的\n意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所 表示機能\を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みると、その形態 が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\を発揮するよ うな特段の事情がない限り、商品等表示には該当せず、仮にこれに該当した\n場合であっても、商品の形態は本来的には商品の出所表示機能\を有するもの ではないのであるから、商品の形態のうち出所表示機能\を発揮する商品等表\n示部分は、取引の実情等によって時間的にも場所的にも変わり得るものとい える。
そうすると、原告らが商品の形態の商品等表示該当性を主張する場合には、\n商品等表示として権利範囲を画する部分がそれ自体不明確であることに鑑\nみると、商品の形態のうち出所表示機能\を発揮する商品等表示部分を明確に\n特定する必要があるものと解するのが相当である(知的財産高等裁判所平成 17年(ネ)第10068号同17年7月20日判決参照)。
これを本件についてみると、原告らは、主位的に、原告製品全体の形態が 商品等表示に該当する旨主張して、商品の形態のうち出所表\示機能を発揮す\nるという部分を明確に特定していないことからすると、原告らの主位的主張 は、上記において説示したところに照らし、主張自体失当というほかない。 他方、原告らは、予備的に、原告製品の形態のうち、出所表\示機能を発揮す\nるという部分が本件形態的特徴であるという限度で特定して主張している ため、本件形態的特徴が商品等表示に該当するかどうか、以下検討する。\n
イ 本件形態的特徴の「商品等表示」該当性について\n
前記アのとおり、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有す\nる場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能\を 有するものではないから、不競法2条1項1号又は2号の規定の趣旨に鑑み ると、その形態が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\ を発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないという\nべきである。 そうすると、商品の形態は、1)客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特 徴(以下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、2)特定の事業者に よって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極めて強力 な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の出所を表\n示するものとして周知であると認められる特段の事情がない限り、不競法2 条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当であ\nる。
そして、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると主張\nされた表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品の形態が\n商品等表示に該当しないときであっても、上記表\示が全体として商品等表示\nに該当するとして、上記一部の商品を販売等する行為まで不正競争に該当す るとすれば、出所表示機能\を発揮しない商品形態までをも保護することにな るから、上記規定の趣旨に照らし、かえって事業者間の公正な競争を阻害す るというべきである。のみならず、不競法2条1項1号又は2号により使用 等が禁止される商品等表示は、登録商標とは異なり、公報等によって公開さ\nれるものではないから、その要件の該当性が不明確なものとなれば、表現、\n創作活動等の自由を大きく萎縮させるなど、社会経済の健全な発展を損なう おそれがあるというべきである。
そうすると、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると\n主張された表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態\nが商品等表示に該当しないときは、上記表\示は、全体として不競法2条1項 1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。\nこれを本件についてみると、前記認定事実、検証の結果(検証調書参照) 及び前記認定に係る子供用椅子の販売状況によれば、原告製品は、1)左右一 対の側木の2本脚であり、かつ、座面板及び足置板が左右一対の側木の間に 床面と平行に固定されている点(特徴1))、2)左右方向から見て、側木が床 面から斜めに立ち上がっており、側木の下端が、脚木の前方先端の斜めに切 断された端面でのみ結合されて直接床面に接していることによって、側木と 脚木が約66度の鋭角による略L字型の形状を形成している点(特徴2))と いう本件形態的特徴のほか、3)座面板と足置板を側木内側にはめ込んで固定 することによって、これらの部材を直接固定し、その余の固定部材を省いた 点(特徴3))、4)前後方向からみて、座面板、足置板、横木及び背板と、側 木が垂直に交わっており、側木内側の小さな略半円形状の溝部分を除き、直 線的要素が強調されている点(特徴4))、5)左右方向からみて、側木につい ては、これを一直線とし、その上端の2隅を直角とし、脚木についても、こ れを一直線とし、その先端側と後端側の各2隅の角度を略左右対称とした点 (特徴5))、6)上下方向からみて、身体に接触する曲線状の背板並びにこれ に対応する座面板及び足置板の後部波状部分を除き、座面板と足置板の前部 を直線状の形状とし、その2隅を直角とした点(特徴6))に特徴があるもの と認められる。
そうすると、原告製品は、これらの各特徴を全て組み合わせることによっ て、身体に接触する背板部分及びこれに対応する座面板及び足置板の後部波 状部分を除き、側木、脚木、横木、座面板、足置板及び背板という椅子を構\n成すべき最小限の要素を直線的に配置し、究極的にシンプルでシャープな印 象を与える直線的構成美を空間上に形成したという限度において、形態とし\nての特徴があるものと認められる。
他方、本件形態的特徴は、図面又は写真で特定されるものではなく(意匠 法6条、24条、意匠法施行規則3条各参照)、上記にいう特徴1)及び特徴 2)を文字で特定されるにとどまるものである。そのため、本件形態的特徴は、 それ自体複数の商品形態を含むところ、本件形態的特徴には、原告らが主張 するとおり被告各製品が含まれるほか、側木が曲線を含む形態、座面板や足 置板が曲線の形態その他の直線的構成美を欠く多種多様な形態を含むもの\nであるから、原告製品が形成する直線的構成美を欠く非類似の商品形態を広\n範かつ多数含むものである。しかも、原告らの主張によれば、本件形態的特 徴(特徴1)及び特徴2))は、本件形態的特徴のみに限るというのではなく、 例えば特徴3)が付加された形態も、本件形態的特徴に含むというものである から、本件形態的特徴は、座面板と足置板を固定するための複雑な部材を採 用する形態その他の究極的にシンプルな構成美を欠く多種多様な形態を含\nむものである。
したがって、本件形態的特徴は、そもそもその外延が極めて曖昧であり、 商品形態が商品等表示として認められる場合を限定する不競法2条1項1\n号又は2号の上記趣旨目的に鑑みると、原告らは、原告製品のうち出所表示\n機能を発揮する商品等表\示部分を明確に特定するものとはいえない。 のみならず、原告らにおいて本件形態的特徴をそのまま具備すると主張す る被告各製品についてみても、被告各製品は、座面板及び足置板を固定する ために、支持部材、丸みを帯びた固定部材及び略円形のネジ部材を設ける構\n成を採用し、特徴3)を有するものではない。そのため、被告各製品は、需要 者に対し、椅子全体として安定して使いやすい印象を与えるものの、複雑な 上記構成によって、究極的にシンプルな印象を与える直線的構\成美を欠くも のといえる。しかも、被告各製品は、前後方向からみると、背板中央に楕円 形の大きな穴が形成されており、かつ、固定部材を側木にネジ止めするため、 側木には円形状の穴が多数形成されていることからすると、被告各製品は、 直線的でシャープな印象を明らかに損なうものである。さらに、被告各製品 は、左右方向からみても、側木上部が床面と略垂直方向に折れ曲がっており、 一直線の側木で構成される原告製品の直線的でシャープな印象とは、全体と\nして大きく異なる印象を与えている。加えて、被告各製品は、上下方向から みても、座面板及び足置板の前部及び後部が端部から緩やかな曲線状に形成 されており、椅子全体として柔らかい印象を与えるものであるから、座面板 及び足置板の前部が直線で構成される原告製品の直線的でシャープな印象\nとは明らかに異なるものである。
これらの印象の相違を踏まえると、被告各製品は、座面板及び足置板の固 定において複数の部材を利用する点において、原告製品のような究極的にシ ンプルな印象を与えるものではなく、かつ、曲線的形状を数多く含む点にお いて、原告製品のような直線的でシャープな印象を与えるものではない。 したがって、直線的構成美を造形表\現する原告製品の高いデザイン性に鑑 みると、少なくとも被告各製品の形態は、究極的にシンプルでシャープな印 象を与える直線的構成美を欠くものであるから、原告らの出所を表\示するも のであると認めることができないことは明らかである。 以上によれば、本件形態的特徴に含まれる被告各製品の形態は、明らかに 原告製品の商品等表示に該当しないことからすると、本件形態的特徴は、全\n体として不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと認\nめるのが相当である。

◆判決本文

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令和4(ネ)2081  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年4月27日  大阪高等裁判所

 釣り具(浮き)の形について、不正競争行為(周知商品等表示の使用)かが争われました。大阪地裁(21部)は、特別顕著性無しとして、請求を棄却しました。大阪高裁も同様です。

控訴人は、需要者は、うきの選択に際してその形状の微細な差に着目して 商品選択をするから、特別顕著であるといえるためには、かけ離れた特異な 形態を備えている必要はなく、他のうきにはない形態を備えていれば足りる と主張する。
しかし、証拠(甲155、156、乙26、証人P2(原審)、控訴人代 表者(原審)、被控訴人代表\者(原審))及び弁論の全趣旨によると、釣り 具のうきの形態は、時代によって変化してきているが、その変化は、他の商 品一般に見られるような需要喚起のための装飾的観点からのものではなく、 より良い釣果を上げるための技術的工夫がうきの形態に反映され、徐々に改 良されていった結果であると認められるところ、より良い釣果を求めてうき に対して加えられる技術的工夫は、機能及び効用の側面等から自ずと一定の\n範囲に収れんすることになるため、商品ごとの形態の差は細部に及ぶ上、そ の差は微細なものになることが認められる。 そうすると、需要者が、より多くの釣果を求めて釣り具の選択をする際、 その形状や色彩を釣り具の性能を推知する資料として観察するとしても、も\nともと形態の差が細部に及ぶ微細なものである上、そもそも外観から観察し てうきの性能の優劣自体を判断することには自ずと限度があることから(控\n訴人が自立うきの性能を決する上で重要である旨主張する錘の量及び錘の位\n置は、うきの形態からは分からないはずのものである。)、結局、需要者は、 棒うき、円錐うき等といったうきの種類を商品形態によって見分けるとして も、その中で、さらに微細な商品形態の差に依拠して商品選択をするとは考 えられず、それよりも、釣り仲間や雑誌等の情報から得られる商品やその製 造者の評判ないし評価を主に参考にして商品を選択しているものと考えられ る。そうすると、上記のような商品群の中における商品選択の在り方を前提 にして、商品形態に特別顕著性があるといえるためには、他のうきとはかけ 離れた特異な形態であることが必要であって、これに反する前提に立つ控訴 人の主張は採用できない。そして、原告商品が他社のうきとはかけ離れた特 異な形態であるとも認められないから、その商品形態に特別顕著性があると いうことは到底できない。
また、控訴人は、原告商品に用いられた色彩にも特徴があるように主張す るが、その付された色彩は、明らかに釣り人が遠方から見て判別が容易な色 が選択されており、その色彩は、そのような目的において採用され得る色彩 の中でありふれたものにすぎないから、その彩色部分が他のうきと少し異な っていたからといって原告商品の色彩が出所表示機能\を有するようになった とは到底認められない。
(2) なお、補正の上引用した原判決「事実及び理由」欄の第3の2(3)エ(原判 決21頁10行目から同頁26行目まで)の記載に係る認定事実及び甲16 3の1ないし121、甲165の1ないし27によれば、原告商品の製作者 である控訴人の前代表者のP1は、クロダイ(チヌ)釣りの世界で「名人」\nと称され、多くの雑誌で特集が組まれる程度に同業界で著名な人物であり、 原告商品がそのP1が製作したうきであるという事実も多くの雑誌で紹介さ れている事実が認められるから、原告商品は、P1が製作したうきとして釣 り愛好家の間で知られている商品であること自体は認められる。しかし、前 記のとおり、需要者は、主に商品やその製造者の評判ないし評価を参考にし て商品を選択すると考えられることからすると、需要者は、原告商品を、そ の商品名を手掛かりとして、有名なP1が製作したうきであると認識した上 で他の商品から識別して認識するものと考えられる(現に原告商品自体のみ ならず、そのパッケージには、P1が製作したうきであることが一目で分か るよう行書体からなる「遠矢」の文字が記載されており、これによって他社 の商品であるうきと識別されていると認められる。)。 そうすると、周知性という点では、原告商品について、これを認める余地 があるが、それはあくまで「遠矢」ないし「遠矢うき」という商品名と結び ついて知られているものと認めるのが合理的であって、その商品形態の周知 性を裏付けるものではないというべきである。
(3) したがって、原告商品1ないし11の形態は不競法2条1項1号に規定す る「商品等表示」に該当するとは認められないから、不競法2条1項1号該\n当を前提とする控訴人の被控訴人に対する請求は理由がないというほかない。

◆判決本文

一審はこちら。

◆令和2(ワ)4530

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令和2(ワ)31524  販売差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年3月24日  東京地方裁判所

ブーツ「Dr.Martens」について、商標権侵害と不競法の周知商品等表示に該当するとして、差止が認められました。商標は「AirWair WITH Bouncing SOLES」(ロゴ化)「WITH BOUNCING SOLES」(標準文字)です。商標はブーツの足入れ口にタグのようにつけられてました。

2 争点1−1(原告商標1と被告標章が同一又は類似であるか)について
(1) 原告商標1について
原告商標1の外観は、別紙商標権目録1の登録商標欄記載のとおりであり、 黒地に、左半分部分に手書き風の字体で「AirWair」と、右半分部分の上部に 約4文字分の間隔を空けてゴシック体で「WITH」及び「SOLES」と、右半分部 分の下部に下向きの弧を描くように丸みを帯びた字体で「Bouncing」と、い ずれもオレンジ色がかった黄色の英文字が配されて構成されるものである。\n原告商標1の上記記載から、「エアウェアウィズバウンシングソールズ」と\nの称呼が生じると認められる。 また、「AirWair」は原告の社名であるものの造語と解されるから、原告の 社名を知っている者においては当該部分から原告の社名である「AirWair」と の観念が生じるものの、原告の社名を知らない者においては当該部分から特 定の観念が生じない。そして、「Bouncing」及び「SOLES」は、それぞれ英語 で「弾む」及び「靴底(ソール)」との意味を有することからすると、原告商\n標1の上記記載から、「弾む履き心地のソールを持つ AirWair」又は「弾む履 き心地のソールを持つ」との観念が生じると認められる。\n
(2) 被告標章について
被告標章は、別紙被告標章目録記載のとおり、黒地に、左半分部分に手書 き風の字体で「AirWair」と、右半分部分の上部に約1ないし2文字分の間隔 を空けてゴシック体風の字体で「WITH」及び「SOLES」と、右半分部分の下部 に概ね水平に「Bouncing」と、いずれも黄色の英文字が配されて構成される\nものである。もっとも、被告標章は、被告商品1のヒールループに付されて いるものであるところ、当該ヒールループが履き口の踵部分に深く縫い付け られているため、需要者が通常の使用状況において視認できるのは、 「AirWair」の「Ai」を除いた部分に限られる(甲44・1、5頁)。したが って、原告商標1との類否を判断するに当たっては、被告標章のうち「Ai」 を除いた部分(以下「被告標章対比部分」という。)を対象として対比するの が相当である。被告標章対比部分の記載から「アールウェアウィズバウンシングソールズ」との称呼が生じると認められる。\n
また、「rWair」のうち、「Wair」は「用いる」や「費やす」との意味を有す る英単語であるが、我が国の一般人にとってなじみのある語ではない上、冒 頭に「r」が付されているため、「rWair」が何かしらの意味を有する語である と理解できないと解されるから、当該部分から特定の観念が生じない。そし て、前記(1)のとおり、「Bouncing」及び「SOLES」は、それぞれ英語で「弾む」 及び「靴底(ソール)」との意味を有することからすると、被告標章対比部分\nの記載から、「弾む履き心地のソールを持つ」との観念が生じると認められる。\n
(3) 原告商標1と被告標章対比部分との対比
原告商標1と被告標章対比部分の外観を比較すると、文字の色味に違いが あるほか、「Ai」の有無、「WITH」と「SOLES」との間隔の幅、「Bouncing」の 字体と配置に差異があるものの、いずれも黒地に黄色味の文字で「rWair」、 「WITH Bouncing SOLES」と記載されている点において共通しており、両者 の外観は類似していると認められる。
また、原告商標1と被告標章対比部分の称呼を比較すると、両者は、「ウェ アウィズバウンシングソールズ」の点において共通しているものの、原告商\n標1の冒頭が「エア」であるのに対し、被告標章対比部分の冒頭が「アール」 である点に差異がある。もっとも、原告商標1及び被告標章対比部分の文字 部分はいずれも英語で表記されており、「エア」も「アール」も英語風に発音\nするものと理解できるから、「エア」と「アール」の称呼上の違いは実質的に 「エ」の有無にとどまり、両者の差異はほとんどないといえる。したがって、 原告商標1と被告標章対比部分の称呼は類似していると認められる。 さらに、原告商標1と被告標章対比部分の観念を比較すると、前者は「弾 む履き心地のソールを持つ AirWair」との観念も生じるものの、両者とも「弾 む履き心地のソールを持つ」との観念が生じる点で共通している。したがっ\nて、原告商標1と被告標章対比部分の観念は類似していると認められる。
(4) 小括
以上のとおり、原告商標1と被告標章対比部分は、外観、称呼及び観念に おいて類似するものと認められ、原告商標1と被告標章対比部分を含む被告 標章とが同一又は類似の商品に使用された場合には、商品の出所について混 同を生じるおそれがあるといえるから、両者は類似しているものと認められ る。また、前提事実(5)のとおり、被告商品1は、ブーツであることから、原告 商標権1の指定商品に含まれる第25類「履物」と同一であると認められる。したがって、被告標章が付された被告商品1を販売等した被告の行為は、原告商標権1を侵害するというべきである。
3 争点2−1(原告商品の形態が原告の周知な商品等表示であるか)について\n
(1) 商品の形態と商品等表示該当性\n
・・・
以上によれば、靴の外周に沿って、アッパーとウェルトを縫合してい る糸がウェルトの表面に一つ一つの縫い目が比較的長い形状で露出し、\nかつ、ウェルトステッチに明るい黄色の糸が使用されており、黒色のウ ェルトとのコントラストによって黄色のウェルトステッチが明瞭に視認 できるという原告商品の形態(ア)は、少なくとも被告が被告商品2を販売 した令和2年の時点において、原告の商品等表示として周知となってい\nたと認められる。

◆判決本文

原告被告商品、本件商標は下記へ。

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令和4(ネ)10098  不正競争防止法による差止請求、損害賠償請求と書類提出命令請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 シーリングライトの形状について、周知商品等表示または商品形態模倣に該当するかが争われました。東京地裁(29部)は、いずれも否定しました。知財高裁も同様です。

商品の形態は、本来的には商品の機能・効用の発揮や美観の向上等の見地\nから選択されるものであり、商品の出所を表示するものではないが、特定の\n商品の形態が、他の同種の商品と識別し得る独自の特徴を有し、かつ、その 形態が長期間継続的、独占的に使用され、又は短期間でも効果的な宣伝広告 等がされた結果、特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機 能を獲得するとともに、需要者の間に広く認識されるに至ることがあり得る\nところであって、こうした商品の形態は、不競法2条1項1号によって保護 される他人の周知な商品等表示に該当するものと解される。\n
前記認定事実によれば、控訴人が日本国内で販売してきた原告各製品は、 平成22年以降発売されているところ、原告各製品を構成するもののうち、\n本体部分(発光部分、台座等)は、世代製品ごとに構成が異なるものである\nが、シェード部分の形状は、各世代製品間で共通しており、控訴人が開設し たオンラインショップのウェブページ上でも、原告各製品の構成のうち、シ\nェード部分の形状が他社製品と違う点を強調している(前記1 イ)ように、 その外観であるシェード部分に特徴的な商品の形態があるといえる。
他方で、原告各製品の第1世代製品を開始した平成22年から遅くとも被 控訴人が被告各製品を日本国内で発売を開始した平成30年10月までの間 における原告各製品の販売数量は明らかではなく、また、原告各製品の特徴 的部分であるシェード部分のうち、少なくとも、原告製品2は、レ・クリン ト社が製造及び発売するモデル30と類似のプリーツ状のシェードであって、 独占的にその形状が使用されてきたものとはいい難い。
これらの点を措くにしても、周知な商品等表示というためには、前記 の とおり、原告各製品が原告の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲\n得するとともに、需要者の間に広く認識されるに至ることが必要であるとこ ろ、これらの点を認めるに足りる的確な証拠は見当たらない。控訴人は、長 期間にわたり原告各製品に係る広告宣伝を行った旨主張し、Faceboo kで行ったとする広告に関する資料(甲46)を提出するが、そのとおりで あるとしても、そもそも宣伝をすれば足りるというものではなく、宣伝等の 結果、遅くとも被告各製品が発売された平成30年10月の時点で、需要者 において原告各製品のシェードの形状が控訴人の商品であることを認識する に至ったことを証明する必要があるのであるから、控訴人の主張、立証は当 を得ないものというほかない。したがって、その他の点について判断するま でもなく、原告各製品の商品の形態が不競法2条1項1号に規定する「商品 等表示」に該当するとは認められない。\n
以上によれば、原告各製品の形態が不競法2条1項1号の周知な商品等表\n示に該当するものとして、被控訴人による被告各製品の販売が同号の不正競 争行為に当たることを前提とした控訴人の請求は、いずれも理由がない。

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1審はこちらです。

◆令和3(ワ)3418

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令和4(ネ)10095等  損害賠償請求控訴事件,同附帯控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

不競法2条1項1号の不正競争について、販売経路が異なるので混同生じないと主張しましたが、知財高裁も認めませんでした。

なお、控訴人は、控訴人による控訴人商品の販売行為のうち、需要者が、特定 の販売チャネル(医療機器カタログやオンラインショップに掲載された商品画像等 を通じて被控訴人商品の形態と極めて酷似する控訴人商品の形態に接した場合)を 経由したときに限り、不正競争行為に該当する旨主張する。
そこで検討するに、不競法2条1項1号が他人の周知の商品等表示と同一又は類似の商品等表\示を使用することを不正競争と定めた趣旨は、周知な商品等表示の主\n体である他人の商品又は営業との混同を生じさせる具体的な危険性がある行為を禁 止することにより、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得することを防止し、もって周知な商品等表\示が有する営業上の信用を保護し、事業者間の公正な競争を確保することにある。そして、 同号の「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」に当たると解されるために、 現実に混同が生じたことを要するものではなく、混同のおそれがあれば足り(最高 裁昭和44年(オ)第912号同年11月13日第一小法廷判決・裁判集民事97 号273頁参照)、また、同行為は、他人の周知の商品等表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と上記他人とを同一の商品又は営業の主体として誤信させる\n行為のみならず、両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な 営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為をも包含するものと解される(最高裁昭和57年(オ)第658号\n同58年10月7日第二小法廷判決・民集37巻8号1082頁、最高裁平成7年 (オ)第637号同10年9月10日第一小法廷判決・裁判集民事189号857 頁参照)。
本件についてみると、被控訴人商品の形態は、約34年間の長期間にわたり継続 的かつ独占的に使用されてきたことにより、需要者である医療従事者にとって、被 控訴人商品の出所を表示するものとして認識されるに至り、控訴人商品の販売が開始された平成30年1月頃の時点において、不競法2条1項1号所定の周知の商品\n等表示に該当するものであったと認められるところ、控訴人は、周知の商品等表\示 である被控訴人商品の形態と酷似した形態を有し、かつ、被控訴人商品と同一目的 において、同一の使用方法により使用される控訴人商品を、被控訴人商品と同一の 需要者に対し販売しており、需要者は、控訴人又はその販売代理店から控訴人商品 の実物を伴う説明を受けたり、カタログやオンラインショップに掲載された控訴人 商品の写真等を見たりすることによって、控訴人商品が被控訴人商品と同一又はほ ぼ同一の形態であると認識し、被控訴人商品の形態に化体された被控訴人の営業上 の信用により購入動機を形成し、控訴人商品を購入していたものと推認される。こ れらの事情を総合すると、控訴人商品の形態を認識した需要者をして、被控訴人商 品と混同させるおそれや、被控訴人商品の主体である被控訴人と、控訴人との間に 何らかの緊密な営業上の関係が存すると誤信させるおそれが具体的に存していたと いうべきである。そして、控訴人商品の販売がいかなる販売経路によるものであっ たとしても、需要者は、控訴人商品を購入するに当たり、周知の商品等表示である被控訴人商品の形態と酷似した控訴人商品の形態を認識することができるから、混\n同のおそれが存することは、販売経路によって異なるとはいえない。 また、差止請求がされる場合と損害賠償請求がされる場合において、不正競争行 為の成立する範囲を別異に理解すべき理由はない。

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令和4(ワ)2188等  不正競争行為差止等請求  不正競争  民事訴訟 令和5年1月23日  大阪地方裁判所

不競法2条1項1号の周知商品等表示ではないとして、逆に、被告商品が原告商品を模造した違法なものであることを摘示する部分は「虚偽の事実」に該当する(不競法2条1項21号)に該当すると判断されました。

原告形態A、同B及び同Cは、いずれもその形態を特定するのに必要とさ れるスピーカー・アンプ内蔵型マイクの全体形状及びこれを構成する各パー\nツの具体的な形状、寸法、位置関係といった構成要素を何ら具体的に特定す\nるものではなく、その構成要素の一部についてのみ抽象的、断片的に指摘す\nるにとどまるものである。加えて、スピーカー部がマイク下部の竿体内に組 み込まれた形態(原告形態A)は、抽象的な位置関係のみをいうのであれば、 そのような配置をしようとすれば避けられない形態であるし(そのように配 置すること自体はアイディアであって、商品等表示とは性質を異にする。)、\nストラップを通すリングがあること(原告形態B)や、端子カバーを開閉可 能につけること(原告形態C)は、いずれも落下防止や端子の汚損等の防止\nのために行われるありふれた工夫であって、出所表示として機能\するものと は到底考えられない。
原告は、原告形態Aないし同Cを組み合わせた全体的な形状が一般的なワ イヤレスマイク(ハンド型)と同様の円筒状様の形態であることを指摘して いるにとどまり、円筒形状であることを超えて、その全体形状及び各構成要\n素について何ら具体的に特定するものではない。したがって、原告形態Aな いし同C及びその組み合わせが、商品等表示として機能\するものとして特定 されているとはいい難い。 この点を措くとしても、原告商品はスピーカー・アンプ内蔵型のマイクで あり、原告は、原告商品をマイクとして広告宣伝していること(甲9の1〜 9の13)に照らすと、スピーカーが内蔵されているか否かにかかわらず、 マイク全般が原告商品の同種商品に該当するものと認められる。そうである ところ、マイク自体が、実用品であって、需要者がその形態等を鑑賞するた めのものではないことに加え、原告が主張するとおり、原告商品は、全体的 な形状が一般的なワイヤレスマイク(ハンド型)と同様の形態とするもので あるから、原告商品が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴(特別顕 著性)を有さないことは明らかである。 以上から、原告形態Aないし同C及びこれらを組み合わせた形態が原告の 「商品等表示」に該当するものとは認められない。\n
(2) したがって、本訴請求に係るその余の点を判断するまでもなく、原告の本 訴請求は理由がない。
2 反訴請求について
(1) 争点2−1(本件表示の内容が「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」\n(不競法2条1項21号)に該当するか)について 本件表示は、原告が、原告商品を模造した被告商品を販売している被告に\n対して販売の中止と損害賠償を求める訴えを提起した旨を摘示するものであ る。この点、「模造」とは、「実物に似せて造ること」を意味し(乙3)、 その言葉自体、本物でない、まがいものを作出するといった否定的に捉え得 るものであることに加え、訴えを提起したという表現は、本件表\示の全体の 文意からすれば、相手方が違法行為に及んでいることを摘示するものと解さ れるから、これに接した閲覧者は、被告が、原告商品を違法に模造した被告 商品を販売していると認識するものと認められる。また、本件表示が掲載さ\nれた時期や記載内容に加え、本訴請求のほか、原告が被告に対して原告商品 に関する訴えを提起したことをうかがわせる証拠はないことに照らすと、本 件表示中の訴えの提起は、本訴請求を指していると解される。\n そうであるところ、前記1のとおり、本訴請求には理由がなく、その他、 被告商品が原告商品を違法に模造したことを裏付ける証拠はないから、本件 表示のうち、被告商品が原告商品を模造した違法なものであることを摘示す\nる部分は「虚偽の事実」に該当するものと認めるのが相当である。そして、 本件表示を閲覧した者は、被告商品が違法な模造商品であると認識し、本件\n表示は、被告商品の市場価値を明らかに低下させるものといえるから、被告\nの「営業上の信用を害する」ものと認めるのが相当である。 以上から、本件表示は「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」に該当\nする。これに反する原告の主張は採用できない。

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令和4(ネ)10051 不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和4年12月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

赤い靴底のハイヒールで有名なルブタンが赤い靴底の販売差止、損害賠償を求めました。1審は請求棄却、知財高裁も同じく、混同なし、です。

このように、被告商品と原告商品は、価格帯が大きく異なるものであ って市場種別が異なる。また、女性用ハイヒールの需要者の多くは、実 店舗で靴を手に取り、試着の上で購入しているところ、路面店又は直営 店はいうまでもなく、百貨店内や靴の小売店等でも、その区画の商品の ブランドを示すプレート等が置かれていることが多いので、ブランド名 が明確に表示されているといえ、しかも、それぞれの靴の中敷きにはブ\nランドロゴが付されていることから、仮に、被告商品の靴底に付されて いる赤色が原告表示と類似するものであるとしても、こうした価格差や\n女性用ハイヒールの取引の実情に鑑みれば、被告商品を「ルブタン」ブ ランドの商品であると誤認混同するおそれがあるといえないことは明 らかというべきである。
また、普段は被告商品のような手ごろな価格帯の女性用ハイヒールを 履く需要者の中には、場面に応じて原告商品のような高級ブランド品を 購入することもあると考えられるが、こうした需要者は、原告商品が高 級ブランド(控訴人らが主張するように「ルブタン」がラグジュアリー ブランドであり、日本だけではなく世界中の著名人や芸能人が履くとい\nうイメージがあればなおさらである。)であることに着目し、試着の上で 慎重に購入するものと考えられるから、被告商品が原告商品とその商品 の出所を誤認混同されるおそれがあるとはいえない。
なお、原告商品及び被告商品ともに、公式オンラインショップだけで はなく、二次流通品を含め、ECサイトで販売されていることもあり、 原告商品の二次流通品の中には価格帯が大きく下げられて販売される こともあるが、公式オンラインショップでの売上げ実績は全体の売上げ 規模からして僅少であって(そのことは、需用者の多くが実際に商品を 試着して購入していることを示すものである。)、それぞれのブランド専 用のサイトであるし、また、公式オンラインショップ以外のサイトでは、 商品の画像だけではなく、商品の詳細な説明において、ブランドや靴の 状態が説明されているから、こうした流通形態があり、仮に、被告商品 の靴底に付されている赤色が原告表示と類似するものであるとしても、\n被告商品が原告商品と誤認混同のおそれがあるとはいえない。
エ 加えて、近時では、高価格帯のブランドが価格帯の異なるブランドとコ ラボレーションした商品が販売されることもあるが、その商品にはそれぞ れのブランドのロゴが付されており(前記1 エ)、その商品がコラボレー ション商品であることが需用者にとって一目で分かるようになっている (そうでなければ、コラボレーション商品として企画し、販売する意味は ないともいえよう。)。そうすると、仮に、被告商品の靴底に付された赤色 が原告表示に類似するとしても、被告商品にはそうしたコラボレーション\n商品であることを示すようなロゴはないから、需要者が、被告商品が控訴 人らのライセンス商品又は控訴人らとの間で何らかの提携関係を有する 商品であると誤認混同するおそれがあるともいえない。
これに対して、控訴人らは、前記第2の3 ウ aのとおり、被告商品も 原告商品と同じ高価格帯の商品であることを前提として、店舗又はオンライ ンショップで原告商品と被告商品の双方が販売されていることがあり得ると し、ブランド毎に区別して展示されていない場合等では、需要者が販売され ているブランド名を意識しないまま購入することがあり得る旨主張する。 しかし、原告商品は最低でも8万円、10万円を超えるものも少なくない のに対して、被告商品は、1万6000円から1万7000円の価格帯であ るから、これだけの価格差がある商品形態において、仮に店舗又はオンライ ンショップで原告商品と被告商品が並べて陳列されており、一部店舗でブラ ンド毎に区別して展示されていないことがあるとしても、実店舗では、靴の デザイン性だけではなく、実際に手に取って試着することが多く、ECサイ トでは、ブランド名や商品の状態が詳細に説明されているといった取引の実 情に鑑みれば、需要者が、被告商品の靴底に原告赤色と類似する色を使用し ているからといって、被告商品の出所が「ルブタン」のブランドであると誤 認混同するとはいえない。したがって、控訴人らの主張は理由がない。 以上のとおり、仮に、被告商品の靴底に付された赤色が原告表示に類似す\nるとしても、原告表示を付した原告商品であると誤認混同するおそれ(広義\nの混同を含む。)があるとはいえないから、原告表示が不競法2条1項1号に\n規定する「他人の商品等表示」に該当するか否かについて判断するまでもな\nく、被告商品の販売等が同号の「不正競争」に当たるとはいえない。 そうすると、被告商品の販売等が不競法2条1項1号の「不正競争」に当 たることを前提とした控訴人らの請求は、その前提を欠くものであるから、 その他の争点について判断するまでもなく理由がない。
3 争点2(原告表示の周知著名性)について\n
前記1の認定事実によれば、控訴人Xは、会社を設立以後、全世界に店舗 を展開して、原告表示を付した高価格帯の女性用ハイヒール(原告商品)を\n販売し、数多くの著名人や芸能人に愛用され、また、日本でも、平成10年\n以降は路面店等のショップで販売が開始されて、年間30億円を超える売り 上げを誇り、数多くの雑誌、メディア等で原告表示は「レッドソ\ール」とし て取り上げられ、一定の需要者には「靴底が赤い」女性用ハイヒールは「ル ブタン」のブランドを指すものと認識されているといえる。 しかし他方で、靴底が赤色の女性用ハイヒールは、原告商品以外にも少な からず我が国においては流通しており(前記1 )、女性用ハイヒールの靴底 に赤色を付した商品形態を控訴人らが独占的に使用してきたものとはいえな い。
また、本件アンケートは、東京都、大阪府、愛知県に居住し、特定のショ ッピングエリアでファッションテム又はグッズを購入し、ハイヒール靴を履 く習慣のある20歳から50歳までの女性を対象としたものであるが、本件 アンケート結果によると、靴底が赤いハイヒール靴を見たことがないものを 含め、原告表示を「ルブタン」ブランドであると想起した回答者は、自由回\n答と選択式回答を補正した結果で51.6%程度にとどまる(なお、本件ア ンケート調査結果では、赤いハイヒール靴を見たことがある人に限定して認 識率を評価するのが適切であるとするが、本件アンケート調査は、主要都市 で、しかも、ファッション関係にそれなりに関心のあるハイヒール靴を履く 習慣のある女性を対象としたものであり、その当否についても疑義がある上、 そこから更にこうした限定を付すことは明らかに相当でない。)。この結果に よれば、原告表示は、一定程度の需要者に商品出所を認識されているとはい\nえるが、それが著名なものに至っているとまでは評価することができない。 そうすると、原告表示が不正競争防止法2条1項2号に規定する「他人の\n著名な商品等表示」であるとはいえないから、そうであることを前提とした\n

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◆平成31(ワ)11108

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令和4(ネ)10010 商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和4年8月22日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

商標権者は、商標「小野派一刀流」指定役務41類「剣道を主とする古武道の教授」を保有しています。被控訴人(1審被告)は「小野派一刀流剣術」を使用していました。1審(は、商標的使用には当たらないと判断しました。また不競法についても、「商品等表示」の「使用」に当たらず、控訴人の周知な商品等表\示を認めることはできないと判断しました。知財高裁は原審維持しました。

ア 控訴人は、日本の伝統芸能や古武道における流派の意義、そして「小野派一\n刀流」の流派名の意義等を主張して、「小野派一刀流」は、流派の教え・系統を指す とともに、宗家を長とし門人によって構成される本流流派を継承する集団(団体)を\n指し、両者は密接不可分の関係にあるから、流派名としての「小野派一刀流」の使用 は、同時に集団(団体)としての「小野派一刀流」を想起させるもので、需要者が提 供される役務の出所を認識し得るような態様での使用に当たる旨を主張する。 しかし、本件全証拠によっても、日本の伝統芸能一般又はそのうち古武道一般に\nおいて、一つの流派について一つの集団(団体)しか存在しないという事情は認めら れない。この点、例えば、古武道振興会の「加盟流派」のページ(本件ウェブページ。 甲3の1)には、「荒木流拳法(K)」(代表はK)及び「荒木流拳法(L)」(代\n表はL)として、「荒木流拳法」という流派名を冠する加盟流派が代表\を異にして二 つ掲載されており、同様に「神道夢想流杖術」、「夢想神伝流居合術」及び「柳生心 眼流兵法」についても、同一の流派名を冠する加盟流派が代表を異にして複数掲載\nされている。また、古武道協会のウェブサイトにおける「各流派の紹介」のページ (甲33の1)にも、「天神真揚流柔術(新座市)」と「天神真揚流柔術(川越市)」 とが掲載されている。
そうすると、控訴人の主張するように、流派名と当該流派を継承する集団(団体) との間に密接な関係があることを前提としても、当該密接な関係により流派名が想 起させる集団(団体)が、直ちに特定の役務の提供等の一主体となるような特定の団 体であるということはできず、それは、当該流派を継承する複数の団体を含み得る より抽象的な集団にすぎないとみるのが相当である。 そして、本件全証拠をもってしても、「小野派一刀流」が古武道の流派の名称であ るということを前提にしてもなお、それが特定の役務の提供等の一主体となるよう な当該流派を継承する特定の団体を指すものであると認めるに足りず、「小野派一 刀流」について上記と異なって解すべき事情は認められない。 したがって、流派名としての「小野派一刀流」の使用が同時に集団(団体)として の「小野派一刀流」を想起させるものであるとの控訴人の前記主張は、訂正して引用 した原判決の第4の1における、本件標章使用が被控訴人らによる商標的使用であ るとは認められないという判断を左右するものではないというべきである。
イ 控訴人は、本件標章使用1)について、本件常識(小野派一刀流の教え・系統と これを継承してきた集団(団体)とが密接不可分であり、本流が宗家を長とし門人に よって構成される集団(団体)において継承されてきたこと、中でも正統は広範かつ\n強大な権限を有する宗家一人に継承されること)のほか、「小野派一刀流剣術」の名 称と共に「代表」等として被控訴人Y1が掲載されているという態様を特に指摘し\nて、本件標章使用1)が商標的使用に当たる旨を主張する。 しかし、訂正して引用した原判決の第4の1(2)(本件標章使用1)について)で認 定説示したとおり、「加盟流派」について掲載した本件ウェブページの記載の形式や 内容からすると、そこにおける「小野派一刀流剣術」の名称やその「代表」等の記載\nに接した者においては、その名称は古武道振興会において加盟を認められている古 武道の流派の一つの名称であって、併記された代表者の氏名及び連絡先もあくまで\nそのような流派の代表者及び連絡先として古武道振興会が把握しているものの記載\nであると理解するとみるのが合理的である(なお、前記アで指摘したとおり、本件 ウェブページには、同一の流派名を冠する加盟流派が代表を異にして複数掲載され\nている例があるところ、「小野派一刀流剣術」については代表を異にする同名とみら\nれる加盟流派が他に記載されていないことから、その記載に接した者においては、 加盟流派としては単一のものと理解することにはなるが、他方で、上記の例がある ことが同時に容易に看取できることからすると、「小野派一刀流剣術」に係る「代表」\n等の記載が、古武道振興会の加盟流派、換言すると古武道振興会の認識を離れて、客 観的に、流派としての「小野派一刀流剣術」の唯一の宗家や当該宗家から代表と称す\nることを許諾された者を示すものであると直ちに認識するとまではいえない。)。 また、訂正して引用した原判決の第4の1(1)(認定事実)からすると、本件ウェ ブページの記載に当たり、古武道振興会は、自律的に定めた「日本古武道振興会規 約」における会員に関する定めに基づき、会員資格や代表会員の資格の受継につい\nて判断しているもので、Bの死去後の受継の問題についても、平成30年度第1回 常任理事会において、自律的に判断がされたものとみられる(なお、その判断の前提 とされた事実関係について、本件証拠に照らし、明白な誤認があったというべき事 情や被控訴人らから古武道振興会を欺罔するような説明がされたといった事情も認\nめられない。)。そのような判断に基づいてされたとみられる本件ウェブページにお ける「小野派一刀流剣術」に係る記載(なお、古武道振興会規約は、古武道振興会 のウェブサイトにも掲載されていることが窺われる(甲3の1〜3)。)をもって、 当該流派に係る特定の団体が提供する何らかの役務の出所を認識し得るような態様 で被控訴人らが表示をしたものと認めることもできない。\n
したがって、「小野派一刀流剣術」の名称と共に「代表」等として被控訴人Y1が\n掲載されているという態様を特に指摘しての控訴人の前記主張は、訂正して引用し た原判決の第4の1(2)(本件標章使用1)について)の判断に影響を与えるものでは ない。控訴人が主張する本件常識も、前記アで説示した点に照らし、同判断を左右し ない。
ウ 控訴人は、本件標章使用2)について、「小野派一刀流剣術(G) Y1(東京 都)」との記載が太字でされていることや演武者名とは別に記載されていること、並 んで記載された流派について記載されている者が当該流派の宗家であることが需要 者に周知であること、本件常識や本件標章使用2)に係る武道大会等は古武道振興会 が主催等するものであること等を特に指摘して、本件標章使用2)が商標的使用に当 たる旨を主張するが、本件標章使用2)が被控訴人らによる被告商標の商標的使用と 認められないことは、訂正して引用した原判決の第4の1(3)(本件標章使用2)につ いて)で認定説示したとおりである。
前記アで説示した点に照らし、本件常識は、本件標章使用2)が被控訴人らによる 被告商標の商標的使用と認められないとの判断を左右するものではない。 また、訂正して引用した原判決の第4の1(1)(認定事実)のとおり、本件標章使 用2)がされた武道大会等は古武道振興会が主催等したものであること、古武道振興 会が主催する大会において使用されるパンフレットやめくりは、本件ウェブページ に掲載されている加盟流派の情報と同様に、古武道振興会に既に登録されている情 報に基づき、古武道振興会が主体となって作成、掲示、配布等するものであること (これは、古武道振興会が主催以外の態様で関与した武道大会等についても同様と 推認され、この推認を覆す事情はない。)や、本件標章使用2)に係るパンフレット の記載内容等を踏まえると、前記イで説示したのと同様、控訴人が指摘するその余 の点も、本件標章使用2)が被控訴人らによる被告商標の商標的使用と認められない との判断に影響を与えるものではないというべきである(なお、控訴人が指摘する 点のうち、本件標章使用2)に係る武道大会等は古武道振興会が主催等するものであ るという点は、むしろ、同判断の根拠となり得るものといえる。この点、本件全証拠 をもってしても、古武道振興会が、古武道の各流派の正当性について有権的に判断 する団体であるといった事情や、古武道の流派が加盟し得る唯一の団体であるとい った事情は見受けられない。控訴人の主張は、ひっきょう、被控訴人Y1について受 継を認めたという古武道振興会の判断を論難するものにすぎないというべきであ る。)。

◆判決本文

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