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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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令和2(ネ)10040  損害賠償請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和2年12月17日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 バーキンタイプのバッグ販売について、不競法2条1項1,2号違反とした1審判断が維持されました。

c 取引の実情
控訴人は,被控訴人商標が付された被控訴人商品と,控訴人商品等 は,価格,品質,商品名及びロゴ等の点で異なるので,取引の実情に 照らして,控訴人商品等と被控訴人商標は誤認混同を生ずることはな く,類似しない旨主張する。 しかし,被控訴人商標が付された被控訴人商品と,控訴人商品等が, 価格,品質,商品名及びロゴ等の点で異なるとしても,そのことから 直ちに,取引の実情に照らして,控訴人商品等の形状と被控訴人商標 が誤認混同を生ずることがないとはいえないし,類似性が否定される ことはない。被控訴人商品の新品は,被控訴人の直営店舗や専門店等 を通じて店舗又はインターネット上で販売されており,それらの販路 の数は比較的限定されているものの(弁論の全趣旨),高級ブランド バッグである被控訴人商品の中古品については,中古市場が成立して おり,店舗及びインターネット上で活発に取引がされている一方で(公 知の事実),控訴人商品等も新品は店舗(甲1,2,弁論の全趣旨) 及びインターネット上で販売され(原判決第2の2(1)イ(原判決3頁 14行目ないし19行目)),中古品もインターネット上で取引され ており(甲51〜61),このように,被控訴人商品と控訴人商品等 は,新品及び中古品のいずれについても市場に共通性があると認めら れる。また,中古品については,被控訴人商品であっても品質は新品 に比べて劣化しており,価格も新品よりは低廉である上,一般に中古 品は,ある期間使用された後に譲渡されるため,出所や商品名が新品 のように明確にされていない場合や,品質,商品名及びロゴの有無等 を十分に確認することなく取引が行われている場合(特にインターネ\nット上の取引の場合)が少なくないから(弁論の全趣旨),価格,品 質,商品名及びロゴによって被控訴人商品と控訴人商品等が明確に区 別されるとはいい難く,被控訴人商品の中古品が市場において活発に 取引されていることからすると,被控訴人商品と控訴人商品等の混同 の可能性が具体的に存在すると認められる。そうすると,前記a,b\nのとおり,控訴人商品等(控訴人商品及びバーキンタイプのバッグ) は被控訴人商標と外観上類似するから,価格,品質,商品名及びロゴ に相違があることを考慮しても,被控訴人商標を付した被控訴人商品 と控訴人商品等は具体的な取引において誤認混同のおそれがあるもの と認められる。したがって,取引の実情に照らして,控訴人商品等の 形状は被控訴人商標と誤認混同を生ずるおそれがあり,類似するもの と認められる。
・・・
(4) 争点4(被控訴人の損害)について
ア 控訴人商品等の販売個数について
(ア) 控訴人は,遅くとも平成22年8月11日以降,バーキンタイプの バッグを販売しており(甲41,弁論の全趣旨),平成30年2月14 日には,控訴人の店舗を訪問した被控訴人関係者に対して,控訴人商品 を販売した(甲1,乙34)ことからすると,控訴人は,対象期間(平 成22年8月11日から平成30年2月14日までの期間)において控 訴人商品等を販売していたものと認められる。そして,控訴人は,バー キンタイプのバッグを平成22年夏か秋頃に中国の業者から100個仕 入れ,それがバーキンタイプのバッグの最後の仕入れであったこと,そ の100個のバーキンタイプのバッグについて,被控訴人商標権の登録 がされた直後の平成23年10月頃の在庫は30個程度であったが,控 訴人はその頃からバザーに出品するなどして在庫処分を開始しており, 平成25年4月には在庫処分をほぼ終了し,平成26年1月か2月頃に, 最後の1点を販売したことを主張しており(本判決による補正後の原判 決第2の4(4)【被告の主張】ア(イ)(原判決13頁6行目ないし12行 目)),これらの控訴人の主張は,バーキンタイプのバッグの販売及び その前提としての仕入れという,控訴人に不利益な事実に関する主張で あるから,その主張に係る事実があったものと認めることができる。そ うすると,控訴人は,対象期間中に,少なくとも100個の控訴人商品 等を販売したものと認めるのが相当である。
(イ) これに対し,控訴人は,平成22年8月11日の時点においてバー キンタイプのハンドバッグが100個存在したという証拠はなく,平成 30年2月14日に誤って被控訴人関係者に有償譲渡したバッグは平 成22年頃に仕入れたバッグではなく,控訴人商品等をチャリティーバ ザーで販売したのは販売利益を寄付するためであったから,対象期間中 に少なくとも100個の控訴人商品等を販売したことはないと主張す る。 しかし,前記(ア)のとおり,控訴人は,バーキンタイプのバッグを平 成22年夏か秋頃に100個仕入れたことが認められ,仮に平成30年 2月14日に被控訴人関係者に有償譲渡した控訴人商品が平成22年 頃に仕入れたバッグではないとしても,控訴人が平成30年2月14日 時点において被控訴人商品に形態の類似した控訴人商品を譲渡してい たことからすると,控訴人が対象期間(平成22年8月11日から平成 30年2月14日までの期間)において,平成22年に仕入れたバーキ ンタイプのバッグや控訴人商品を含めて,控訴人商品等を,実際には1 00個を超えて販売した可能性があるとしても,少なくとも100個販\n売したことは,これを認めることができる。また,控訴人が控訴人商品 等の一部をチャリティーバザーで販売し,その利益の一部を寄付したと しても,それは控訴人が利益を得たことを否定する事情にはならず(寄 付は,利益の処分と評価すべきものであって,利益そのものを否定する 事情には当たらない。),控訴人が販売利益を寄付したことを裏付ける 客観的な証拠もないから,いずれにせよ,控訴人は控訴人商品等を10 0個販売したことにより利益を得たものと推認される。
イ 控訴人商品等の販売に係る限界利益率について
控訴人は,控訴人商品はサンプル品であって仕入処理が行われておらず, 購入した際の領収証等の資料はないと主張し,また,バーキンタイプのバ ッグの仕入れに関する資料は保管期間経過によって全て廃棄処分済みで あると主張して,これを提出しない。さらに,控訴人は,バーキンタイプ と同程度の販売価格のハンドバッグの仕入価格は販売価格の55%程度 であったから,バーキンタイプのバッグの仕入価格も販売価格の55%程 度であったと主張し,販売価格の55%の価格でハンドバッグの仕入れを 行ったことを裏付ける証拠として乙31(平成29年1月の取引の納品書) を提出する。しかし,乙31は,どのような態様の商品の仕入れに係るも のか明らかでなく,平成22年に中国の業者から100個仕入れたと認め られるバーキンタイプのバッグとは,仕入の時期,取引先,仕入数が異な るから,乙31により,バーキンタイプのバッグの仕入価格が販売価格の 55%程度であったことは認められず,その他に,これを裏付ける証拠は ない。控訴人がその他の経費として主張する梱包費用,送料については, 具体的な支出の有無や額を裏付ける的確な証拠はない。
そこで限界利益率について検討すると,上記のとおり,控訴人の主張に よっても,仕入価格が販売価格の55%を上回ることはない。また,控訴 人は,バッグ等の販売を業として行っており,控訴人商品等の仕入れ,販 売,経費等に関する資料を所持し,その内容を把握しているのが自然であ ると解されるにもかかわらず,これらを提出せず,その内容を明らかにせ ず,そのため,経費等も具体的に立証されていない。このように,控訴人 が,被控訴人主張の利益率(60%)を否認しながら,関連性の乏しい証 拠のほかは,本来提出されてもおかしくない証拠を含め,何ら証拠を提出 していないことからすると,控訴人は控訴人商品等の販売により相当高率 の利益を得たと疑われてもやむを得ない側面があること,及び60%とい う利益率が有名ブランドを模したバッグの販売による利益率として不当 に高いとは考えられないことなどの事情を併せ考えると,控訴人商品等の 販売による限界利益率を60%と認定することについて,これが高率に過 ぎるとして不当とする根拠はない。これらの事情を考慮すると,控訴人商 品等の販売による控訴人の限界利益は,平均して販売価格の60%であっ たものと認めるのが相当である。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成31(ワ)9997

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令和2(ネ)10034  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和2年11月4日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 「協同組合ビジネスサポート」に対して、「ビジネスサポート協同組合」が不競法2条1項1号による差止を求めました。知財高裁(2部)は、1審と同様に、周知要件を満たさないと判断しました。

2 争点1(控訴人表示が,控訴人の商品等表\示として需要者の間に広く認識 されているか)について
(1)ア 前記1のとおり,控訴人は,中小企業等協同組合法に基づいて設立さ れた事業協同組合であり,その組合員の資格は,前記1(1)アで認定した控訴人の 地区内の中小規模の事業者に限られ,一方,被控訴人も中小企業等協同組合法に基 づいて設立された事業協同組合であり,その組合員の資格は,前記1(2)で認定し た被控訴人の地区内の中小規模の事業者に限られる。 また,控訴人の事業内容は,前記1(1)アのとおり,高速道路割引ETCカード 事業,各種備品や消耗品,車両燃料等の共同購買事業,外国人実習生受入事業等で あるから,控訴人に加入する可能性のある事業者は,これらの事業に関心のある事\n業者であると認められ,一方,被控訴人の事業は,前記1(2)のとおり,高速道路 割引ETCカード事業,車両燃料等の共同購買事業,情報提供事業等であるから, 被控訴人に加入する可能性のある事業者は,これらの事業に関心のある事業者であ\nると認められる。 したがって,控訴人に加入する可能性のある事業者のうち被控訴人のそれと重な\nる事業者は,前記1(1)アで認定した控訴人の地区のうち北海道を除く25の都府 県内の中小規模の事業者であると認められる。
イ 不正競争防止法2条1項1号にいう「営業」は,取引社会における事 業活動と評価できるものを指す(最高裁平成17年(受)第575号同18年1月 20日第二小法廷判決・民集60巻1号137頁)ところ,本件においては,控訴 人及び被控訴人が行う上記1(1),(2)の各事業は,上記「営業」ということができ るものである。そして,控訴人の事業の需要者には,控訴人の組合員となって控訴 人の上記1(1)アの事業を行う可能性のある上記アの事業者及び同事業の取引の相\n手方となる可能性のある者を含むというべきであり,その範囲は,かなり広く,被\n控訴人の事業者と重なる範囲もかなり広いということができる。
ウ 前記1(1)アのとおり,控訴人の組合員数は342事業者あるいは2 94事業者であるが,この数は,上記の需要者の範囲からすると極めて僅かなもの であるといえる。また,控訴人の事業に関する取引高等の控訴人の事業規模を示す 証拠は提出されていないが,控訴人の上記の組合員数からすると,その規模も小さ いものと推認される。
また,前記1(1)イのとおり,控訴人が行っている宣伝,広告は,ホームページ の開設,パンフレットの交付によっており,上記の方法のほか,千葉信用金庫及び 商工中金に紹介してもらう方法も用いているが,これら以外の方法で宣伝,広告を していることを認めるに足る的確な証拠はないことからすると,控訴人の宣伝,広 告の規模,程度は極めて小さなものであり,また,その効果も極めて小さいもので あるというべきである。 以上からすると,控訴人が,平成6年3月から,自己の名称として,控訴人表示\n又は「関東ビジネスサポート」の表示を使用していることを考慮しても,控訴人表\ 示が控訴人の商品等表示として需要者の間に広く認識されていると認めることはで\nきない。
(2) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,組合員が多種多様な業種で構成されていることから,控訴人\n表示は多様な業界で周知となっていると主張するが,前記1(1)アのとおり,控訴 人の組合員数は342事業者あるいは294事業者であり,この数は多種多様な業 種の事業者の数からすると極めて僅かな数であるから,控訴人表示が多様な業界で\n周知となっているとは認められない。
イ 控訴人は,同業の事業協同組合で構成された互助団体に加入し,中心的\nな活動を行っていること(甲20)から,控訴人表示は周知となっていると主張す\nる。 しかし,控訴人が上記の互助団体においていかなる活動を行っているのか,また, どのような成果を挙げたか等についての証拠はないことを考慮すると,控訴人の上 記主張事実から,控訴人表示が周知となったと認めることはできない。\n
ウ 控訴人は,控訴人表示の需要者は,高速道路を業に伴って頻繁に利用し,\n長距離移動を日常的に行い,利用料金の割引を受けようとする事業者に限定される と主張する。 しかし,控訴人の事業の需要者は,前記(1)イ認定のとおりであって,高速道路 割引ETCカード事業にのみ関心のある事業者だけであると認めることはできない。
エ 控訴人は,商工中金等の金融機関がその顧客に控訴人を紹介していると ころ,このことは,控訴人の信用度が高く,控訴人の名称が浸透していることを示 していると主張する。 しかし,仮に,控訴人の商工中金等に対する信用度が高いとしても,そのことか ら直ちに控訴人表示が周知であると認めることはできず,控訴人の上記主張は理由\nがない。
オ 控訴人は,控訴人と被控訴人との間で混同が生じていると主張し,その 具体例として,1)控訴人の顧客会社に被控訴人から電話勧誘があり,同顧客会社は, 被控訴人を控訴人と勘違いしたこと,2)控訴人の同業の事業協同組合から,その組 合員に控訴人から執拗な電話勧誘があったとの苦情が申し立てられたが,上記の電\n話勧誘は被控訴人によるものであるのに控訴人によるものと勘違いをしていたこと, 3)被控訴人に対する苦情を控訴人に申し立ててきた事業者がいたこと,4)控訴人を 被控訴人であると間違えて,控訴人に電話がかかってきたこと(以上につき,甲 8),5)被控訴人にすべき振込みを間違えて控訴人にしてきたこと(甲32),6)被 控訴人の組合員から,控訴人を被控訴人と間違えて,問合せの電話がかかってきた こと,7)控訴人が依頼している業者が,被控訴人のホームページを控訴人のものと 混同したこと(甲33)などを指摘する。 しかし,5),6)については,被控訴人の取引先や組合員が相手を間違えたという にすぎず,また,1),7)については,控訴人の取引先が相手を間違えたというにす ぎず,いずれも,控訴人表示が周知であることの根拠になるものということはでき\nない。 また,2)〜4)については,これらの事実があるとしても,そのことから,直ちに 控訴人表示の周知性を推認させるということはできない。\nしたがって,控訴人の上記主張は理由がない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆令和1(ワ)14303
1審は下記のように前置きをして、判断しています。 「法人の名称は,法人の事業又は営業全体を表す点で,個別の商品\nや役務を表す商標と区別されるものであって,当該事業又は営業との関係で\nみて一般的名称といえる性質を有するものもあり得るところ,そのような法 人の名称は,自他識別力を欠くか,自他識別力が極めて弱いものというべき 20 であるから,当該名称の使用の時期が相当程度に長くその浸透度も極めて大 きいことなどから商品等表示該当性を獲得したといえるなどの事情がない限\nり,それが法人の営業等を表示するものとして需要者の間に広く認識される\nに至っているものと認めて周知性を肯定することは,極めて困難といわなけ ればならない。

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令和1(ワ)19889  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和2年3月18日  東京地方裁判所

 fashionブランドのセレクトショップ「SHIPS」と同じマッチングサイトの名称を使用していた被告に対して、差止と20万円の損害賠償が認められました。

原告ブランドに係る商品の需要者は,衣料品を中心とするファッション全 般に関心を有する一般消費者であると解されるところ,前記認定のとおり, 1)原告の店舗数及びその展開地域,2)オンラインショップも運営しているこ となど,その販売態様,3)原告の商品の売上高及び来店者数,4)セレクトシ ョップ分野における原告の地位(三大ブランドの一つ),5)雑誌,カタログ, フリーペーパー等における宣伝・広告の状況,6)フェイスブック,ツイッタ ー,インスタグラムにおけるフォロワー数などの事情を総合すると,原告表\n示は,被告表示の使用が開始された平成31年4月時点において,需要者等\nの間において,原告の商品等表示に当たるものとして,周知であったと認め\nられる。
(2) これに対し,被告は,原告商品の売上高や店舗数,UNITED ARR OWS,BEAMS,ユニクロ,しまむらなどの同業他社に比して少ないこ とを指摘する。 しかし,原告商品の売上高や店舗数が,原告より更に規模が大きい同業他 社と比較して小さいとしても,そのことは原告ブランドが需要者等の間で周 知であるとの認定を妨げるものではない。前記認定のとおり,原告は,アパ レルの一つの分野として確立しているセレクトショップ分野において,BE AMS及びUNITED ARROWSとともに,三大セレクトショップの 一つと評価されており,その店舗は,著名百貨店,主要ターミナル駅の駅ビ ル,大型路面店などを中心に,全国に展開され,売上高(平成31年2月期) も245億7502万円に上ることなどを考慮すると,原告表示が周知であ\nると認められることは前記判示のとおりである。
(3) 被告は,「知恵蔵」の出版が10年以上前であることなどを指摘し,原告 が挙げる書籍は周知性を基礎付けるものではないと主張するが,前記1(2) のとおり,アパレル業界に関する書籍及び「知恵蔵」などの一般書籍は,出 版時期を問わず,いずれも,原告がセレクトショップの大手であるとの認識 を示している上,上記1で認定した原告ブランドの宣伝・広告状況などにも 照らすと,原告がセレクトショップとして需要者等によく知られているとい う「知恵蔵」に記載された状況は,平成31年4月時点においても変わりが ないというべきである。
(4) 被告は,原告による広告宣伝について,他社の広告費との比較や実際の広 告効果の定量的な主張・立証がないと主張するが,前記1(3)(4)記載のとお り,原告ブランドの雑誌等における紹介の状況,SNSにおけるフォロワー の数,創業40周年の際の宣伝・広告状況(全国主要駅におけるポスター広 告,新聞における全面広告等),プロサッカーにおけるスポンサー企業とし ての宣伝・広告状況など,原告による広告・宣伝の内容,量等に照らすと, 他企業の広告費との比較を要することなく,原告表示は需要者等の間で周知\nであると認めることができる。
(5) 被告は,被告サイトの利用者向けに実施したアンケート調査の結果によれ ば,回答者341名のうち,原告表示を知らなかった者は297名に及ぶこ\nとを理由として,原告表示が周知ということはできないと主張する。\n しかし,被告の行ったアンケート調査調査は,その対象者が被告サイトの 利用者であり,被告サイトにより提供されるサービスの性質,内容等に照ら すと,その利用者層は一定の限定された範囲にとどまるものと考えられ,そ の調査結果が必ずしも原告ブランドに係る商品の需要者の認識を反映してい るとはいい難い。そうすると,上記調査結果は,原告表示が需要者等の間で\n周知であるとの結論を左右しないというべきである。
(6) 以上のとおり,原告表示は,少なくとも周知性を有するものであって,不\n正競争防止法2条1項1号の「需要者の間に広く認識されているもの」に当 たるというべきである。
3 争点2(混同のおそれの有無)について
(1) 不正競争防止法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」には,他人の周 知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と当該他人とを同一\n営業主体として誤信させる行為のみならず,両者間にいわゆる親会社,子会 社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業\nを営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為をも包含すると解さ れる(最高裁平成7年(オ)第637号同10年9月10日第一小法廷判 決・集民189号857頁,最高裁昭和56年(オ)第1166号同59年 5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,前記認定(5)及び(6)のとおり,1)原告は,原 告表示を含むブランド名を用いて,アパレル分野に限らず,自動車のメンテ\nナンスやカスタム,生活雑貨の販売などの事業も手掛けていること,2)原告 は,原告表示を用いて,異業種の他企業との間で,多数のコラボレーション\n企画を実施しており,そのことは需要者等に相応に認識されていたものと推 認されること,3)原告は,原告表示を用いて,福祉分野を始めとする社会的\nな活動にも参加しており,公式サイトにおいて,「コンプライアンス,LG BT,ダイバーシティなどについての啓蒙」に取り組んでいる旨を表明して\nいることが認められる。 これによれば,被告サイトに原告表示と類似する被告表\示を使用すること は,原告と被告との間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列関係などの緊 密な営業上の関係があり,又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属\nする関係が存すると需要者等に誤信させる行為であって,原告の商品又は営 業と「混同を生じさせる行為」というべきである。
(3) これに対し,被告は,原告の属するアパレル分野と被告の属するマッチン グサイトの分野とは,全くの異業種であり,業種の隔たりが大きいと主張す るが,原告自身が,障害者を始めとするマイノリティや福祉に対する支援活 動を積極的に行っていることは前記判示のとおりであり,また,アパレルメ ーカーがマッチングアプリとの協業プロジェクトを実施した事例や,セクシ ャルマイノリティの間で人気の出会い系アプリがアパレルラインを発表した\n事例があると認められること(甲65)に照らすと,アパレル分野とマッチ ングサイトの分野とが全くの異業種であるということはできない。
(4) また,被告は,原告は他の企業の知名度を借りたコラボレーションをして いるにすぎないと主張するが,原告が他の分野で事業自体を展開していない としても,他業種の企業とコラボレーションをし,原告表示の付された商品\n等を提供することとなれば,需要者等は,原告と被告との間に子会社等の関 係があるなどの誤信をするおそれがあることに変わりはないというべきであ る。
(5) 被告は,被告の実施したアンケート調査結果も根拠として,被告サイトが 原告によって運営されていると誤信することはないと主張するが,前記判示 のとおり,被告の行ったアンケート調査結果が原告ブランドの需要者等の認 識を反映しているとは必ずしもいうことはできないので,同アンケート調査 結果を根拠にして混同のおそれがないということはできないが,同調査結果 によっても,セレクトショップ「SHIPS」を知っている者の2割以上に 混同が生じていることによれば,被告表示に接した需要者等が上記の混同を\nする可能性は高いというべきである。\n
(6) したがって,被告の行為は,原告の商品又は営業と「混同を生じさせる行 為」に当たる。
4 争点3(営業上の利益の侵害の有無)について
原告は,昭和52年に「SHIPS 銀座店」を開設して以来,その店舗を 拡大し,平成31年3月頃までに,全国19都道府県に約70店舗を展開する に至っており,原告ブランドには長年にわたる使用により信用力が形成されて いると解されるところ,被告による被告表示の使用は,原告ブランドの信用力\nに依拠し,その意に反してこれと類似の被告表示を使用するものであり,原告\nブランドの信用力を希釈化若しくは毀損するものであるということができる。 したがって,被告の行為は,原告の営業上の利益を侵害し,これを侵害する おそれのある行為であると認められる。
5 争点4(故意・過失の有無及び損害額)について
(1) 被告は,被告以外にも「シップス」又は「SHIPS」の名称を用いる事 業者が存在することなどを理由として,被告には過失がなかったと主張する が,「SHIP」等の名称を用いる業者が他に存在するとしても,そのこと をもって過失の存在が否定されるものではない。被告は,原告表示の存在を\n知りつつ,被告サイトに被告表示を使用したものであり,原告表\示の周知性 や原告表示との類似性を容易に認識し得たものと認められるので,被告には\n少なくとも過失が存在したものというべきである。
(2) そして,本件訴訟の難易度,審理の経過,認容する請求の内容その他本件 において認められる諸般の事情を考慮すると,被告による不正競争行為と相 当因果関係にある弁護士費用相当額は20万円とするのが相当である。

◆判決本文

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平成31(ワ)9997  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和2年6月3日  東京地方裁判所

 バーキンタイプのバッグについて、バーキンバックの立体商標に基づく商標権侵害、不競法違反として、約300万の損害賠償が認められました。信用毀損として100万円と残りは侵害者利益です。

原告は,被告において,対象期間中に,被告商品等を少なくとも100個販売し たと主張するところ,前記第2の2(5)のとおり,被告は平成22年8月11日には バーキンタイプのバッグを販売し,平成30年2月14日には被告商品を販売した ことのほか,被告において,バーキンタイプのバッグは一度に100個単位で仕入 れ,最後の仕入れは平成22年夏ないし秋頃に100個仕入れたものであった,最 後に仕入れた商品は全て販売した旨主張していることからすれば,原告の主張する とおり,被告は,対象期間中に,少なくとも100個の被告商品等を販売したもの と認めるのが相当である。
イ 被告商品等の販売価格
前記第2の2(5)のとおり,被告商品は,平成30年2月に2万8080円(税抜 価格2万6000円)で販売されたものであることに加え,バーキンタイプのバッ グの販売価格に関する当事者双方の主張,被告が保管期間の経過により廃棄済みと してバーキンタイプのバッグの販売に関する資料を提出していないことなどの本件 の審理に現れた事情を総合すれば,被告商品等の1個当たりの販売価格は,平均す ると,被告商品の販売価格と同じく税抜価格2万6000円程度であったものと認 めるのが相当である。
ウ 被告商品等の総販売額
被告は前記イの税抜価格に消費税を付して被告商品等を販売していたところ(甲 1,弁論の全趣旨),被告の総販売額を算定するに当たって適用すべき消費税率につ いては,被告がバーキンタイプのバッグの販売を平成26年2月頃までに終了した と主張していることや平成30年2月14日に販売された被告商品のほかに平成2 6年3月以降に被告商品等が販売されたことを示す証拠がないことを踏まえ,販売 に係る100個のうち99個については平成26年2月までの5%とし,1個につ いては8%とすることが相当である。 そして,前記ア及びイによれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告 は,以下のとおり,合計273万0780円の売上を上げたものと認めるのが相当 である。
2万7300円(税抜価格2万6000円+5%の消費税分)×99個+2万8 080円(税抜価格2万6000円+8%の消費税分)×1個=273万0780 円
エ 被告商品等の販売に係る限界利益率
(ア) 仕入費用
被告は,被告商品はサンプル品であって仕入処理が行われておらず,購入した際 の領収証等の資料もないと主張し,また,バーキンタイプのバッグの仕入れに関す る資料は保管期間経過によって全て廃棄処分済みであるとして,これを提出してい ない。 被告は,バーキンタイプのバッグの仕入価格について,同程度の価格のハンドバ ッグの仕入価格が販売価格の55%程度であったから,バーキンタイプのバッグの 仕入価格も同様であったと主張し,販売価格の55%の価格で仕入れを行った平成 29年1月の取引の納品書(乙31)を提出するが,被告が平成22年に中国のハ ンドバッグ製造業者から100個単位で仕入れたと主張するバーキンタイプのバッ グとは,仕入の時期,取引先,仕入数が異なり,どのような商品の仕入れであった かも明らかではないから,上記の納品書に係る取引は,バーキンタイプのバッグの 仕入価格が販売価格の55%であったことを裏付けるものとはいえず,その他,被 告が主張する仕入価格を裏付ける的確な証拠はない。
(イ) その他の経費 被告が,その他の経費として主張するバザーへの寄付金,梱包費用,送料につい ては,具体的な支出の有無や額を裏付ける的確な資料はない。
(ウ) 限界利益率
このような被告の主張立証の状況を含めた弁論の全趣旨によれば,被告商品等の 販売による被告の限界利益は,原告の主張するように,平均して販売価格の60% 程度であったものと認めるのが相当である。
オ 被告が賠償すべき利益の額
以上によれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告には,以下のとお り,少なくとも163万8468円の限界利益が発生したものと認めるのが相当で あり,同額が,不競法5条2項により被告が賠償すべき損害額となる。 273万0780円×60%=163万8468円
(2) 信用毀損による無形損害について
前記2及び前記(1)で検討したところからすれば,原告商品は,高級ブランドであ る原告を代表する高級バッグとして著名なものであり,そのほとんどが1個100万円を超える価格で販売される高級品であったところ,被告は,原告商品と類似す\nる形態を持ちながら,原告商品には使用されない合成皮革等の安価な素材が使用さ れた被告商品等を,原告商品と比べて著しい廉価の1個2万7300円程度で,平 成22年8月から平成30年2月までの期間に少なくとも100個販売したもので ある。
したがって,被告商品等の販売という不正競争によって,原告は原告商品に係る 信用を毀損されたものというべきであり,原告商品の形態と類似する外見のハンド バッグが被告以外の業者によっても販売されていること(乙1〜17)といった被 告の主張する事情を考慮しても,被告商品等の販売に係る,信用毀損による無形損 害の額は100万円を下らないというべきである。

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令和1(ワ)7786  不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 令和2年8月27日  大阪地方裁判所

 京都市立芸術大学が、「1 京都市立芸術大学、2京都芸術大学、3 京都芸大、4 京芸、5 Kyoto City University of Arts」が周知・著名であるとして、「京都造形芸術大学」から「京都芸術大学」への変更使用の中止を求めた事件で、大阪地裁は、1京都市立芸術大学については周知であるとは認めたものの、京都芸術大学とは混同しないと判断し、原告の請求を棄却しました。

ア 原告表示1について\n
前記(第2の2(1),第3の1)認定の各事実に加え,証拠(甲3,5,9の2 及び9の3,21,22,29,36)及び弁論の全趣旨によれば,原告大学は, その母体の設立からは140年,現在の名称となってからでも50年以上という長 期にわたり,京都市に所在して芸術教育を実施し,文化勲章受章者を含む多数の芸 術家を輩出している。また,原告大学は,京都市内にギャラリー(@KCUA)を設 置し,同所にて展覧会等の催事を繰り返し実施するとともに,京都市内において, 案内チラシ等に原告表示1を付すなどして展覧会や演奏会を主催し,また,地下鉄\n駅構内その他京都市内の人目に付きやすい場所に,原告表\示1を付して作品を展示 し,さらに,京都市内において児童その他市民向けの芸術教育活動等を行ってきた ことが認められる。 これらの事情のほか,京都府及びその近隣府県の範囲における交通や新聞等によ る報道の実情等に鑑みると,京都府及びその近隣府県に居住する一般の者が,原告 大学を表示するものとして原告表\示1を目にする機会は,相当に多いものと合理的 に推認される。 そうすると,原告表示1は,原告大学を表\示するものとして需要者に広く認識さ れており,周知のものといってよい。これに反する被告の主張は採用できない。
イ 原告表示2〜4について\n
(ア) 前記1認定の各事実によれば,原告表示2〜4については,例えば原告大\n学の卒業生や受験指導組織といった特定の属性を有する層で原告表示3又は4が比\n較的多数使用されているといった例もあるものの,程度の差こそあれ,原告表示1\nと比較してその使用頻度はいずれも少ないといえる。 しかも,原告大学を示す略称又は通称として,原告表示2〜4のほか,「京都市\n立芸大」,「市立芸大」,「市芸」その他様々なものが使用されている。原告大学 の正式名称(原告表示1と同一のもの)のうち,「京都」(又は「京」),「芸\n術」(又は「芸」)及び「大学」(又は「大」)は,大学の名称としては,所在 地,中核となる研究教育内容及び高等教育機関としての種類を示すものとして,い ずれもありふれたものである。加えて,原告大学の中心的な活動場所等が京都市で あること,このため,原告大学の略称等が使用される地域的範囲としても,京都市 又は京都府であることが必然的に多くなり,「京都」(又は「京」)は敢えて明示 せずとも文脈上暗黙の了解事項となりやすいと推察されることなどに鑑みると,略 称等に「市立」(又は「市」)が含まれ,「京都」(又は「京」)が省略されるこ とも,当然起こり得ることといってよい。原告の設置主体である京都市及び京都市 長や原告大学関係者が,原告大学を示すものとして,自ら「市立」(又は「市」) を含む略称等を使用する例が少なからず見られること,インターネット上又は書籍 としての地図においても,原告大学については「市立」が含まれる表示が使用され\nていることも,この文脈において合理的に理解し得る。 そもそも,このように多種多様な略称等を生じ,それぞれが一定程度使用されて いること自体,原告大学の略称等として各表示それ自体が有する通用力がいずれも\nさほど高くないことをうかがわせる。同一の文書等の中で,原告表示1と共に使用\nされる例が多いことも,同様に,原告表示2〜4の略称等としての通用力の低さを\nうかがわせる。 しかも,原告表示2〜4と同一の表\示が,原告大学ではなく被告大学を示す表示\nとして使用される例も,相応に見受けられる。 他方,原告表示2〜4が,それぞれ,原告表\示1を想起させることを介して,又 はこれを介さずに,原告大学を想起させるものとして広く知られていることをうか がわせるに足る具体的な証拠はない。
(イ) これに対し,原告は,原告表示2〜4についても原告大学の表\示として周 知であり,また,これらと同一の表示が被告大学を指すものとして使用される例は\n誤記であるなどと主張する。 しかし,上記(ア)の事情のほか,仮に原告表示2〜4が原告大学の略称等として\n周知であるとすれば,そのような誤記が多数生ずるはずはないし,そもそも,作成 主体を異にする者の間で同様の誤記が頻発すると考えることは合理性に乏しい。そ の他原告が縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用でき ない。
(ウ) 以上より,原告表示2〜4については,原告の商品等表\示として需要者の 間に広く知られたもの,すなわち周知のものということはできない。
・・・
イ 前記(3)イ(ア)のとおり,原告表示1のうち,「京都」,「芸術」及び「大\n学」の各部分は,大学の名称としては,所在地,中核となる研究教育内容及び高等 教育機関としての種類を示すものとして,いずれもありふれたものである。このた め,これらの部分の自他識別機能又は出所表\示機能はいずれも乏しい。他方,\n「(京都)市立」の部分は,大学の設置主体を示すものであるところ,日本国内の 大学のうちその名称に「市立」を冠するものは原告大学を含め11大学,「市立」 ではなく「市」が含まれるものを含めても13大学にすぎず,しかも,京都市を設 置主体とする大学は原告大学のみである(乙2)。このような実情に鑑みると,原 告表示1のうち「(京都)市立」の部分の自他識別機能\又は出所表示機能\は高いと いうべきである。 また,その名称に所在地名を冠する大学は多数あり,かつ,正式名称を構成する\n所在地名,設置主体,中核となる研究教育内容及び高等教育機関としての種類等の うち一部のみが相違する大学も多い(乙1)。このため,需要者は,複数の大学の 名称が一部でも異なる場合,これらを異なる大学として識別するために,当該相違 部分を特徴的な部分と捉えてこれを軽視しないのが取引の実情と見られる。 そうすると,原告表示1の要部は,その全体である「京都市立芸術大学」と把握\nするのが相当であり,殊更に「京都」と「芸術」の間にある「市立」の文言を無視 して「京都芸術大学」部分を要部とすることは相当ではない。この点に関する原告 の主張は採用できない。 また,本件表示の要部については,上記のとおり「京都」,「芸術」及び「大\n学」のいずれの部分も自他識別機能又は出所表\示機能が乏しいことから,これらを\n組み合わせた全体をもって要部と把握するのが適当である。
ウ 原告表示1と本件表\示とは,その要部を中心に離隔的に観察すると,「市 立」の有無によりその外観及び称呼を異にすることは明らかである。観念について も,「市立」の部分により設置主体が京都市であることを想起させるか否かという 点で,原告表示1と本件表\示とは異なる。取引の実情としても,前記イのとおり, 需要者は,複数の大学の名称が一部でも異なる場合,これらを異なる大学として識 別するために,当該相違部分を特徴的な部分と捉えてこれを軽視しない。 そうすると,原告表示1と本件表\示とは,取引の実情のもとにおいて,取引者又 は需要者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から全体的に 類似のものとして受け取るおそれがあるとはいえない。そうである以上,原告表示\n1と本件表示とは,類似するものということはできない。\n

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平成30(ワ)2715 名称使用差止請求事件  不正競争  民事訴訟 令和2年3月25日  東京地方裁判所

「望月」の使用が不正競争行為(周知の営業表示)に該当するかが争われました。東京地裁(29部)は、該当すると判断しました。\n

原告の事業活動が営業に該当するか
前記・・・アの認定事実によれば,原告を含む太左衛門が 行う事業活動は,長唄囃子の演奏や指導等の文化芸術活動としての性格を有するもの ではあるが,他方において,これらの活動から出演料,名取料等の一定の対価を収受 するなどしていることからすれば,経済上の収支計算の上に立って経済秩序の一環と して行われる事業活動としての性格をも有するものといえる。したがって,原告を含 む太左衛門が行う事業活動は,法2条1項1号の「営業」に該当すると認められる。
(2)「望月」の表示が被告らにとって他人の周知な営業表\示に該当するか
ア 太左衛門は,代々,望月流の家元を称し,古くは芝居囃子において活躍し,その後は自ら演奏会等に出演して長唄囃子を演奏する活動,その門弟等に技芸を伝授し,指導する活動,門弟に対して「望月」の姓を冠した名取名を認許して免状を発行する活動,長唄囃子の保存,普及活動等を行い,出演料,授業料, 名取料といったこれらに対する対価を得てきたものである。 そして, エのとおり,昭和41年9月25日発行の本件名鑑においては, 長唄の流派の一つとして望月家の項目が設けられ,十世家元として太左衛門の名が冒\n頭に挙げられ,望月流の説明内容として,初世左吉や初世太左吉が太左衛門の門弟な いしは門弟筋の人物であることや,「浪花町派」,「森下派」及び「田圃派」が望月流内の3大支流であることなどが記載されていることからすれば,本件名鑑においては, 太左衛門が望月流一門全体を代表する家元として紹介されているということができ\nる。実際に, 十代目太左衛門は,昭和48年及びそれ以降,左武\n郎,左太郎,左喜三郎,左之助及び左喜蔵ら,本件名鑑において「森下派」に属する とされたものか又は現在「森下派」に属すると主張している者らについても名取名の 認許をするなど,望月流一門全体を代表することを示す行動をとっている。\n
さらに,前記・・・は,平成5年6月27日,尾上梅幸 や市村羽左衛門らの歌舞伎役者,芳村五郎治ら他流派の長唄演奏者らの出演の下,十\n一代目家元として九代目望月太左衛門追善囃子演奏会を2回にわたり歌舞伎座で開 催したが,その際の松竹株式会社の会長の挨拶に,十一代目太左衛門につき「流祖こ\nのかた二百数十年の歴史と伝統をうけつぐ望月流の家元太左衛門」と,九代目太左衛\n門につき「九世家元」との記載があり,・・・襲名を紹介する平成5年7月9日付けの東京新聞夕刊の記事には,「望月流は・・・,初代太左衛門以来,太左衛門の名で家元が引き継がれてきた。」との記載があり,同年8月の歌舞伎座での歌舞伎公演の筋書における松竹株式会社会長の挨拶には「太左衛門 の名跡は望月流の家元として二百数十年にわたり囃子方の世界で重きをなしてまい\nりました」などとの記載が,七代目尾上梅幸の挨拶には「望月流の家元太左衛門の名 跡を,この度長左久さんが継承し,十二代目望月太左衛門を名乗ることとなりました。」との記載がそれぞれあり,原告が,平成6年6月に,宗家家元十\二代目望月太左衛門 として,尾上梅幸や市村羽左衛門らの歌舞伎役者,杵屋喜三郎ら他流派の長唄演奏者 らの出演の下,十代目望月太左衛門追善襲名披露演奏会を歌舞伎座で開催した際には,\nそのプログラムに掲載された松竹株式会社会長,日本芸術文化振興会理事長及び仙台 市長のお祝いには,太左衛門について望月流の家元である旨言及する記載がそれぞれ ある。北國新聞も,同月8日,原告につき望月流の家元と記載した記事を掲載してい る。
・・・のとおり,平成9年1月には伝統芸能紙及び関西芸能\紙が,平成15年4月には北國新聞が2回,それぞれ,原告につき望月流の家元と記載した記事を掲載したり,歌舞 伎音楽専従者協議会のウェブサイトにおいて,原告につき「望月流十二代目家元」と\n紹介しているほか,前記1 ア及びイのとおり,平成16年には,四世左吉の襲名の 際に,「十二代目家元望月太左衛門」名義での原告の挨拶を含む挨拶状が送付された\nほか,原告が四世左吉や左之助の門弟らに対し,名取名を認許し,前記1 エのとお り,長唄協会が,平成28年頃に,原告を望月流の代表者として取り扱っている。\n
以上によれば,太左衛門は,代々,望月流の家元を称し,演奏会等に出演して長唄 囃子を演奏する活動等を行い,昭和41年頃には,本件名鑑において,望月流一門全 体を代表する家元として紹介されるに至り,かつ,実際に昭和48年及びそれ以降に\n太左衛門が望月流一門全体を代表する家元であることを示す行動をとってきたほか,\n平成5年6月ないし8月及び平成6年6月には,太左衛門が望月流の家元である旨が 新聞記事において紹介され,上記の各演奏会において,太左衛門が望月流の家元であ る旨を含む上記の各挨拶がプログラム等に掲載される状況にあったということがで きる。さらに,それ以降も,原告は,自らが望月流一門全体を代表する家元であるこ\nとを示す行動をとり,新聞記事等においても同様の紹介がされたほか,長唄協会も同 様の認識を有しているということができる。
以上に加え 流派の運営を統括する地位にある者を指すことに照らすと,遅くとも原告が十二代目太左衛門を襲名した後である平成6年6月までには,太左衛門が,望月流一門全体の家元として本件需要者の間で広く認識されるに至り,それ以降も現在に至るまで,本件需要者の間で広く同様に認識されていたと認めるのが相当である。\n
イ ・・・おいては,家元が門弟に対して名取名を認許するところ,名取名は「望月」の姓を冠したものであ り,名取に取り立てられた者は,以後自らの活動を行うにつきこの「望月」の姓を冠 した名取名を表示し使用することが許されることに照らすと,望月流の名取名におけ\nる「望月」姓は,名取に取り立てられた個人の芸名としての性格を有するだけではな く,同時に,家元による望月流の営業活動を示すものであるということができるから, 「望月」の表示は,望月流の家元としての原告の営業表\示に該当するというべきであ る。

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平成29(ワ)3428  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和元年12月24日  東京地方裁判所

 旧2CHの元管理人による新2CH(5チャンネル)に対する商標権侵害・不競法防止法事件です。裁判所は一部の商標について商標権侵害を認めました。

 前記認定事実によれば,本件電子掲示板は,(1)平成11年に開設され,平 成12年に西鉄バスジャック事件の犯人とされる少年が同掲示板に犯行予告\nを書き込むなどの出来事もあって社会的に注目を集めるようになり,平成1 4年頃には利用者が急激に増加し(前記2(2)ア,ウ,エ),(2)平成16年及 び平成17年には本件電子掲示板に掲載された投稿をほぼそのまま出版した 「電車男」が話題となり,インターネットに係る複数の賞を受賞し,これが ネットニュースで報道され(前記2(2)カ),(3)平成18年頃には,本件電子 掲示板の名称である「2ちゃんねる」という言葉がマスコミにおいて頻繁に 登場したり,本件電子掲示板内において使用される用語が一般の雑誌におい ても使われたり,電子掲示板を利用しない一般人の間でも本件電子掲示板が 話題に上ったりするようになった(前記2(2)キ)。 これらによれば,本件電子掲示板のトップページ等に表示されていた被告\n標章1及び2は,遅くとも,平成18年には,本件電子掲示板に係る役務を 表示するものとして,全国の需要者の間に広く認識されるに至ったと認める\nことができる。そして,平成25年3月当時,本件電子掲示板の月間の閲覧 数が29億にのぼるとして「日本語圏最大級のネットコミュニティ」などと 宣伝されていたことに照らせば(前記2(2)ス),原告商標1及び2が出願さ れた平成25年1月25日及び平成26年3月27日においても,上記周知 性が維持,継続していたものと認められる。
(4)ア
本件電子掲示板に係る役務を誰が提供していたかについてみると,原告 は,本件電子掲示板を開設した者であり,管理人と呼ばれたこともあり, 平成26年3月まで,本件電子掲示板の広告収入を間接又は直接に受領し ていた(前記2(2)ア,カ,キ,セ)。また,そのように受領した広告収入 の一部をNTテクノロジー社に渡していた(前記2(2)エ)。他方,原告は, 平成21年以降,ブログや「僕が2ちゃんねるを捨てた理由」と題する書 籍等において,自ら積極的に,本件電子掲示板を第三者に譲渡したとか, 本件電子掲示板の管理人を退き,アドバイザーか1ユーザーであるなどと 公言していた(前記2(2)ク,コ,シ)。また,平成21年1月2日以降, 本件ドメイン名に係るWhois 情報において,本件証拠上,原告に特に関係 が深いと考えられる会社(東京プラス社やブラジル社)や原告は,登録者 や運営名に関する連絡先,登録サービス提供者等のいずれにも登録されて いない(前記2(3))。 NTテクノロジー社は,平成11年頃から本件電子掲示板のサーバの提 供や関係する掲示板の開設を新たに行うなどしており,その後も,利用者 が増大した本件電子掲示板のサーバの管理や関係するソフトウェアのプロ\nグラミング等を単独で又は被告と共にしていた(前記2(2)イ,エ,オ)。 また,NTテクノロジー社は,平成14年頃には本件電子掲示板の閲覧の 利便性を向上させるソフトウェアを開発してこれを本件電子掲示板の利用\n者に販売し,その多額の売上げを原告を介さずに自ら取得していた(前記 2(2)イ,エ)。NTテクノロジー社は東京プラス社を介して原告から本件 電子掲示板の広告料の一部の送金を受けていて,その送金額は平成14年 頃は少なくとも当面は月額2万ドルとされていたところ,それに関する契 約書はなく,送金額は変動し,実際に送金された総額は相当の多額であり, また,NTテクノロジー社が求めた増額に任意に応じてその送金がされた こともうかがわれる(前記2(2)エ,テ)。そして,少なくとも平成17年 5月以降,本件ドメイン名に係るWhois 情報において,NTテクノロジー 社(NTテクノロジー社の設立者のジムを含む。)は,単に技術面に関す る連絡先としてだけでなく,継続して,運営面に関する連絡先や登録サー ビス提供者として登録されていた(前記2(3))。被告は,平成16年頃よ り,本件電子掲示板の管理に直接携わるソフトウェアのプログラミング等\nの業務を担うようになり(前記2(2)オ),平成24年5月3日に本件ドメ イン名を取得して本件ドメイン名の登録者となり,遅くとも平成26年2 月19日から本件電子掲示板のトップページ等に被告標章1及び2を表示\nして使用し,その使用は平成29年9月30日まで継続し(前提事実(5), 前記2(3)カ),本件証拠上,平成26年3月5日には,本件電子掲示板の トップページの下に会社名,所在地等が表示され,平成30年4月当時の\n「5ちゃんねる」と題する電子掲示板のトップページには,本件電子掲示 板を被告から譲り受けたと解される記載が表示されていた(前記2(2)タ, ツ)。
本件電子掲示板は,多種の掲示板から構成された巨大掲示板サイトであ\nり,その性質上,サーバの管理,新たな掲示板や機能の導入,それらの維\n持,改善等の運営は極めて重要である。また,平成14年頃には利用者が 急激に増加していたのであり,遅くともその頃以降,それらの管理,運営 等が占める役割には非常に大きいものがあった。そして,それらの管理, 運営等は,平成11年以降,NTテクノロジー社が単独で又は被告と共に 担っていた。この点について,原告が前記2(2)テ記載の別件訴訟において 提出した陳述書中には,NTテクノロジー社は東京プラス社からサーバの 管理業務を受託したにすぎない旨の記載があるが(甲21),上記の事実 関係に照らせば,NTテクノロジー社が単に原告等の委託を受けてその指 示等に基づいて管理業務を行っていたのみであるというのは不合理という ほかない。原告が平成26年2月19日まで本件電子掲示板の役務の提供 を行っていたといえるかは措くとして,少なくとも,NTテクノロジー社 は,遅くとも平成14年以降は,自ら主体的に本件電子掲示板に係る役務 の提供を行っており,本件電子掲示板に係る役務を自己の役務として提供 していたと認めるのが相当である。そして,被告も,平成16年以降,N Tテクノロジー社とともに本件電子掲示板の役務の提供をしており,少な くとも平成26年2月19日から平成29年9月30日までの間,本件電 子掲示板に係る役務を自己の役務として提供しており,遅くとも被告が本 件ドメイン名を取得した平成24年5月3日頃に,NTテクノロジー社か ら,本件電子掲示板の運営に係る事業の譲渡等を受けるなどして,その地 位を承継したと認めるのが相当である。
イ 商標法32条の先使用権は,識別性を備えるに至った商標の先使用者に よる使用状態を保護し,もって,先使用者が当該商標に蓄積した信用を同 人において享受することを可能にするものである。前記先使用権の趣旨に\n照らせば,当該商標を主体的に自己の業務として提供する役務を表示する\nものとして使用してその商標の持つ出所,品質等について信用を蓄積した 者やその者から当該事業の承継を受けた者は,先使用権の他の要件を満た せば先使用権を有するといえる。 被告標章1及び2は,遅くとも平成14年頃以降は,少なくとも,NT テクノロジー社において主体的に自己の業務として提供していたといえる 本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして使用され,遅くとも平成\n18年頃には周知性を獲得し,その後も,NTテクノロジー社は被告標章 1及び2を表示して同役務の提供を継続したため,上記周知性が維持・継\n続されたといえる。被告は,遅くとも平成24年5月3日頃に,NTテク ノロジー社から本件電子掲示板の運営に係る事業の承継を受けるなどして その地位を承継し,本件商標1及び2の登録出願当時(本件商標1につき 平成25年1月25日,本件商標2につき平成26年3月27日),継続 して被告標章1及び2を使用して本件電子掲示板に係る役務を自己の業務 として提供していたから,被告標章1及び2は,上記時点において,被告 の業務である本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして周知であっ\nたと認められる。また,被告は,平成29年9月30日まで,自己の業務 を行う意図で被告標章1及び2を表示した本件電子掲示板に係る役務を提\n供したと認めることが相当である。
ウ 不正競争の目的なくある特定の標章を表示する役務を複数の者が共同し\nて提供していた場合,その複数の者の間で紛争が生じた後であっても,少 なくとも,主体的に自己の役務として自ら役務を提供して当該表示の持つ\n出所,品質等について信用を蓄積するために果たした役割が主要といえる 者が,紛争後も提供した当該役務が従前と同様のものであった場合,その 者による当該標章の使用は,前記の先使用権の制度趣旨に照らし,不正競 争の目的なくされているとするのが相当である。そして,前記に照らせば, NTテクノロジー社は,不正競争の目的なく本件電子掲示板に係る役務を 主体的に自らの役務として提供して,当該表示の持つ出所,品質等につい\nて信用を蓄積するために主要な役割を果たしたといえる。平成26年2月 19日にはそれまで本件電子掲示板に関与していた東京プラス社及び原告 が本件電子版のサーバにアクセスできなくなったところ,東京プラス社及 び原告の同時点までの本件電子掲示板への関与の内容には不明な部分もあ るが,NTテクノロジー社と共に上記提供を行ったか,NTテクノロジー 社から本件電子掲示板に係る事業の承継を受けるなどしてその地位を承継 した被告は,平成26年2月19日以降も本件電子掲示板に係る役務をそ れまでと同様に提供していたことがうかがえ,NTテクノロジー社の果た した上記の役割に照らせば,同日以降平成29年9月30日までの間,被 告標章1及び2を本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして,不正\n競争の目的なく使用したと認めることが相当である。
エ 以上によれば,平成26年2月19日から平成29年9月30日までの 間,被告は,本件商標1及び2を本件電子掲示板に係る役務を表示するも\nのとして使用することについて,先使用権を主張することができる。

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平成30(ワ)8414  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 令和元年12月18日  東京地方裁判所

 高輝度LEDペンライト「キンブレ」について、被告製品の販売は不競法2条1項1号の不正競争行為に該当すると判断されました。

 事案に鑑み,争点(2)から検討するに,原告製品形態が,不競法2条1項1 号に該当するには,(1)商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特 徴を有しており(特別顕著性),かつ,(2)その形態が特定の事業者によって長 期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等によ り,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するも\nのとして周知になっていること(周知性)を要すると解されるが,以下の理由 から,原告製品形態は上記要件を満たすものというべきである。
(1) 特別顕著性
ア 原告製品が以下の形態を備えていることは,当事者間に争いがない。
(1) 「持ち手部分」と,光を発する「ライト部分」と,その間の「リング 部分」とで構成され,「リング部分」はメッキが施されている。\n
(2) ライト部分の先端にメッキの外カバーを付けており,リング部分のメ ッキと合わせて同一色,統一感のあるデザインとしている。
(3) 全体のフォルムは円柱状のシンプルな形態とし,ライト部分及び持ち 手部分の側面は,どの角度から見ても,平らな直線又はなだらかな曲線 によりそれぞれ外縁が形成され、突起物や階段状又は鋭角な部分が存在 しない。ただし,メッキ仕様のリング部分だけは,ライト部分,持ち手 部分を外側から覆う外観となり,一回り径が太くなっている。
(4) 持ち手部分は,真ん中でなだらかに凹型となる曲線を描き,底面部の 角は丸みを帯びており,正面視,背面視において瓢箪型である。\n
(5) ライト部分先端の外カバーも,凸状に丸みを帯びており,正面視,背 面視において円弧を描く球状である。
(6) 全体の長さが約25センチメートルで,そのうちライト部分は約15 センチメートル,持ち手部分とリング部分を合わせて約10センチメー トル,ライト部分の太さは直径約3センチメートルである。
(7) 持ち手部分の底面部に,発光・消灯及び発光色の切替えを行うスイッ チボタンが設置され,側面部にはスイッチを設置していないか,あるい は,スイッチを設置する場合でも,外観上その存在がわからないような スイッチとする。
イ 原告製品1が発売された平成24年4月当時に存在した同種製品は,上 記1(6)ア記載のとおりであるが,甲18の写真撮影報告書,甲17等に よれば,このうち,「大電光改」及び「CHEER LIGHT」は,原 告製品に比べて細くて小さいペンライトであり,いずれもリング部分が太 くなっている形態をしている点などにおいて,原告製品の形態と異なる。 また,「大電光煌」は持ち手部分が太くて,製品全体の長さにおけるラ イト部分の割合が原告製品より小さく,ライト部分の先端は半円球状であ る点などにおいて,原告製品の形態と異なる。 さらに,「ネオンスティック」は製品全体の長さにおける持ち手部分の 割合が原告製品より小さく,持ち手部分に設けられたボタンが特徴的であ る点で,「カラフルビーム」はライト部分が先端に向けて細くなっており, 持ち手部分に円形のダイヤルが取り付けられている点において,原告製品 の形態と異なる。 加えて,これらの同種製品は,いずれも,リング部分及びライト部分の 先端に同一色のメッキが施されておらず,持ち手部分にスイッチ等が設け られているなど,全体的に凹凸があって統一感のない印象を与えるもので ある。
ウ これに対して,原告製品は,全体的に丸みの帯びた円柱状のシンプルな 形態であり,ライト部分からリング部分、持ち手部分を通じて、全体とし て凸凹感のない直線又は曲線により外縁が形成されている点(形態(3))に 特徴がある。 また,原告製品のリング部分にはメッキが施されるとともに,ライト部 分の先端にも同一色のメッキの外カバーが付けられており,リング部分の メッキとライト部分先端のメッキの金属的な光沢は,原告製品に他社の製 品にはないデザイン上のアクセントを与えているということができる(形 態(1),(2))。さらに,原告製品の持ち手部分は,その真ん中がなだらかな曲線から形 成される凹型となっており,底面部の角は丸みを帯びている上,ライト 部分先端の外カバーも,凸状に丸みを帯びて円弧を描く球状であり,更 に側面部にスイッチボタンもないことが,全体として,柔らかくシンプ ルな印象を与えているということができる(形態(4),(7))。加えて,原告製品の全体の長さは約25センチメートルと他社の多くの製品より長く,ライト部分と持ち手部分の長さのバランスも良く,全体の長さとライト部分の太さの割合も均衡がとれているとの印象を与えるものである(形態(6))。
以上のとおり,原告製品形態(1)〜(7)は,平成24年4月当時の同種製品 にはない形態上の特徴であるということができ,更に,これらの特徴があ いまって,製品全体として,同種製品とは異なる顕著な特徴を備えている ということができる。
エ これに対し,被告は,形態(1)〜(7)は,いずれもありふれたものであると 主張する。
(ア) しかし,形態(1),(2)については,上記のとおり,平成24年4月当時 のペンライトのリング部分及びライト部分の先端に同一色のメッキを 施しているものはなく,また,ペンライトを使用する上で,その構成\n部分に金属的な装飾を加える必然性はないのであるから,同各形態は 原告製品に特徴的なものというべきである。
(イ) 被告は,形態(3)に関し,ペンライトのライト部分が円柱状であるのは 特別なことではなく,平成24年4月当時の同種製品も,丸みを帯び た円柱状のシンプルな形態であったと主張する。 しかし,原告製品は,単にライト部分が円柱状であるのみならず,全 体的に丸みの帯びた円柱状のシンプルな形状をしており,ライト部分 からリング部分、持ち手部分を通じて、全体として凸凹感のない直線 又は曲線により外縁が形成されている点に特徴があり,かかる特徴は 同種製品には見られないものである。
(ウ) 被告は,形態(4)に関し,持ち手部分の中央付近をなだらかにへこませ るデザインは公知であったこと,形態(5)に関し,ペンライトの先端に 外カバーを設けたり,その先端を球状にすることは,特別なことでは ないこと,形態(6)に関し,原告製品の長さはコンサート等のイベント における規制に従ったものにすぎず,その太さも特別なものではない こと,形態(7)に関し,底面部のスイッチは,底から見ない限り視認で きないので,識別力を生じさせないことなどを指摘する。しかし,原告製品は,持ち手部分の中央部分をなだらかにへこませるとともに,ペンライトの先端の外カバーを球状にし,更に持ち手部分の側面にスイッチを側面に設けないことにより,全体として,なだら かな曲線と直線から形成されるすっきりとして統一感のある輪郭が形 成され,全体として柔らかくシンプルな印象を与えるのであり,こう した特徴は同種製品には見られないものである。そうすると,上記の 個々の形態が公知であることなどを理由として,原告製品形態があり ふれたものであるということはできない。
(エ) 被告は,平成24年10月に発売されたルミエースや同年12月に発 売されたカラフルサンダー110などに原告製品形態と共通する特徴 が見られると主張するが,これらの製品は,原告製品1及び2の後に 発売されたものであるから,同各製品の発売時点では原告製品の形態 は同業者の間では知られていたのであり,原告製品形態も参考にしな がらデザインされた可能性が高い。これらの製品が原告製品形態と同\n様の特徴を有するとしても,そのことをもって原告製品形態の特別顕 著性は否定されるものではないというべきである。
(オ) 被告は,ペンライトという製品は,その性質上,外見を重視するので はなく,輝度や色などの機能を重視して選択される製品であるから,\nこの観点からしても,原告製品形態には特別顕著性はないと主張する。 しかし,ペンライトは,その用途・性状に一定の制限があるとしても, 種々のデザインを工夫し得ることは同種製品のデザインとの対比から も明らかであり,また,ペンライトの需要者が,趣味・嗜好に強い興 味・関心を示すいわゆる「オタク」を中心とする者であることに鑑み ても,これらの需要者は,機能のみならずデザインにもこだわりを持\nって購入するペンライトの選択をすると考えるのが自然である。
オ 以上によれば,原告製品形態は特別顕著性を有するということができる。
(2) 周知性
ア 前記1(2)のとおり,原告製品1(キングブレードMAX)及び同2 (キングブレードX10)は,平成24年4月に原告製品1の販売が開始 されて以降,同年10月までに,両製品で累計●(省略)●本,●(省略) ●円を売り上げたとの事実を認めることができる。 平成25年ころにおいて,国民的アイドルとされるアイドルグループの CDの売上が,複数枚購入を含め合計56万枚程度であり(甲38),平 成26年8月に開催された日本最大級とされるアニメソングのライブの3\n日間の延べ来場者数が8万人程度であったと認められること(甲37)を 考慮すると,わずか6か月という短期間のうちに●(省略)●本の売上げ があったことは,趣味嗜好に強い関心を有するいわゆる「オタク」を需要 者とするこの種の製品としては「爆発的」と評価し得る売れ行きであった ということができる。
イ また,前記1(3)のとおり,原告製品は,平成24年10月,テレビ番 組に使用され,それを見た視聴者が,同番組において使用されたペンライ トの商品名については紹介がされていなかったにもかかわらず,原告製品 であると認識し,ツイッター上で,「みんなキンブレ振ってる」などとツ イートしたとの事実によれば,そのころには,需要者において,原告製品 形態を有する商品は原告製品であって,原告を出所とすることを表示する\nものとして,広く知られていたと認めるのが相当である。
ウ さらに,前記1(4)のとおり,原告製品2(キングブレードX10)は, 平成25年2月,アマゾンのおもちゃのベストセラーの3位にランクイン したとの事実が認められるが,このランキングは,ペンライト又はそれに 類する商品間のランキングではなく,おもちゃ全体におけるランキングで あることに照らすと,原告製品は同時点において既に需要者に広く知られ していたものと認められる(甲21の4)。 以上によれば,原告製品形態は,平成24年10月時点において,また, 遅くとも平成25年1月までに,原告の出所を表示するものとして,周知\n性を獲得していたというべきである。
エ これに対し,被告は,原告製品が,平成24年10月以後も売れ行きを 伸ばしている事実を指摘し,そのことから逆に,平成24年時点の市場占 有率はそれほど高くなかったと主張するが,平成24年4月から10月ま での売上本数や売上高等に照らし,同月時点において原告製品形態が需要 者に広く知られていたと認められることは前記判示のとおりであり,平成 25年以降に更に売上げが増加したことは,上記認定を左右するものでは ない。また,被告は,原告製品が多く売れたのは,原告製品形態のデザイン性 が着目されたからではなく,高輝度という機能に需要があったためである\nと主張するが,原告製品の需要者が機能のみならず,デザインも重視して\nペンライトを購入したと考えるのが自然であることは前記判示のとおりで ある。さらに,被告は,原告の製品の中には原告製品目録に掲げられていない ものもあり,また,原告製品の中にも原告製品形態の一部を満たさない種 類のものがあると主張するが,原告製品の主力は原告製品目録記載の製品 であり,その他の製品が原告製品形態の一部を満たしていなかったとして も,原告製品形態の周知性が否定されるものではない。加えて,被告は,需要者は,原告製品をその形態によって識別しているのではなく,キングブレードという名称とともに,そのロゴ及びマークによって原告製品と識別していたものであると主張するが,テレビ番組の視聴者が,同番組において使用されたペンライトの形態を見て原告製品であ ると認識したことは前記判示のとおりであり,需要者はその形態により原 告製品と識別し得たというべきである。
オ 以上によれば,原告製品形態は,平成24年10月時点において,また, 遅くとも平成25年1月までに,周知性を獲得したものと認められる。
3 争点(3)(原告製品と被告製品との混同のおそれの有無)
(1) 被告製品は,原告製品形態の全てを備えるのみならず,原告製品のX10 シリーズのバージョン2以降のものと基本的に同一の形状及び大きさを有す るのであるから,需要者が被告製品を原告製品と混同するおそれがあるもの と認められる。
(2) これに対し,被告は,原告製品と被告製品の名称が異なることなどを理由 に,混同のおそれを否定するが,需要者は,インターネットに掲載された商 品の形態を見てその出所を識別することも少なくないと考えられ,また,商 品名は新商品が発売されるたびに異なった名称が付されることもあるのであ るから,製品の名称が異なることから直ちに混同のおそれがないということ はできない。
(3) また,被告は,需要者は,知識が豊富な「オタク」であるから,ロゴやマ ーク,機能や価格帯などから製品を原告製品から被告製品を識別すると主張\nするが,一口に「オタク」といっても,その知識や経験は様々であり,需要 者にはコンサートなどの各種イベントへの参加者なども含まれるのであるか ら,需要者の性質から,当然に,製品の機能や価格帯により出所を識別する\nことができるということはできない。
(4) 以上のとおり,需要者が被告製品を原告製品と混同するおそれはあるとい うべきである。 したがって,被告製品は,需要者の間に広く認識された原告の商品等表示\n(原告製品形態)と類似するものであり,原告製品と混同を生じさせるもの であるということができるので,被告製品を販売する行為は,不競法2条1 項1号の不正競争行為に該当する。

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令和1(ネ)1635 不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和2年2月14日  大阪高等裁判所

 ガラス瓶の形状が周知商品形態であると主張しましたが、顕著性および周知性ともに否定されました。形状の写真などは判決文および別紙にはありませんので不明です。

 前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第4の2(2)におい て説示するとおり,控訴人は,食調瓶として,SSシリーズの細口瓶を 開発し,そのうち5種類のシリーズからなる原告商品は,縦長ですっき りしているが,安定感に乏しい印象を与えるものということができる (更に原告商品1から13までについては,その首部と胴部の接続部分 の形状から,肩が張った印象を与えるという点でも共通する。)。 これに対し,他のメーカーの食調瓶にも,縦長ですっきりしているが, 安定感に乏しい印象を呈する細口瓶(甲15の「調味料M200角」, 「ST150」,「ST150PP」,甲16の「SLD150A−H C」,甲18の「ゴージャス」シリーズ,甲19の「サエ」シリーズ, 「スイト」シリーズ)があると認められるところ,控訴人は,前記第2 の5(1)アのとおり,これらの食調瓶の形態が,原告商品の形態に類似し ないと主張し,原告商品の特徴を有する他業者の同種商品と,原告商品 との形状の違いを詳細に指摘する。 しかし,原告商品の形態による商品表示性は,上記5種類のシリーズ\nからなる原告商品に共通する特徴をもって特定されるところ,控訴人の 指摘する形状の違いがあるからといって,異なる印象を与えるとは認め られない。 なお,控訴人は,原告商品と,前述した特徴を有する他業者の同種商 品との間で,首部から肩部に係る傾斜角度(肩の張り方)が大きく異な ると主張するが,肩の張り方が異なることによって受ける印象の違いは, 縦長で安定感に乏しいという特徴の有無によって受ける印象の違いに比 べ,大きいとはいえない。 以上によると,控訴人が指摘する形状の違いがあるからといって,原 告商品の形態の特別顕著性が基礎づけられるものでもない。
イ 原告商品の形態の周知性について
控訴人は,原告商品の形態の周知性に関して,前記第2の5(1)イのと おり主張する。 しかし,控訴人が主張する直近の累計販売本数に係るデータに依った としても,一般瓶市場における原告商品の販売実績等が圧倒的であった 等の状況は認めるに足りないし,高級品市場に限れば,原告商品は相当 のシェアを有しているとの主張についても,これを裏付ける資料等はな い。また,過去に原告商品が出展された展示会における展示・陳列の様 子(甲41)に照らしても,控訴人がSSシリーズの複数の下位シリー ズの一部にまたがる原告商品を,改めて一つのシリーズとして構成し直\nすなどして宣伝していたというような事情を認めることはできない。 そうすると,控訴人のシェアや宣伝活動の状況からみて,原告商品の 形態が,特定の事業者の出所を表示するものとして周知となっていると\nいうこともできない。
(2) 混同のおそれの有無
控訴人は,前記第2の5(2)のとおり,被控訴人の営業活動や商社のカタ ログやウェブサイトにおける掲載内容から,被告商品を控訴人の商品と混同 するおそれがあると主張する。 しかし,前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第4の2(4) において説示するとおり,原告商品の形態をもって,商品等表示と認めるこ\nとができない以上,被告商品の形態が原告商品の形態と類似しているからと いって,被控訴人が被告商品を製造,販売する行為が,不正競争防止法2条 1項1号に該当するとはいえない。 なお,被控訴人が,不特定多数の需要者に対しても営業活動をしていると しても,その取引態様からすると,その相手方にとって,被告商品の製造・ 販売者が被控訴人であることは明らかであるから,控訴人の商品と混同する おそれがあるということはできない。 また,食品メーカー等がカタログやウェブサイトを閲覧してガラス瓶の購 入を検討することがあるとしても,それらの需要者が,当該ガラス瓶が自社 で製造する調味料等の内容物の充填工程や商品梱包等の工程に容器として適 合するか否かを確認等することなく,その購入を決定することは考えにくい。 そうすると,上記カタログ等の掲載態様をもって,混同のおそれがあると いう控訴人の主張も採用できない。
(3) アンケート調査結果について
ア 本件アンケートに関する事実関係(甲42〜44)
(ア) 本件アンケートの対象者,質問内容等
控訴人は,前記第2の5(3)アのとおり,原告商品及び被告商品を含 むガラス瓶の写真5点を示して,その製造者及びそのように製造者を 特定した理由を質問するという本件アンケートを,東京・大阪・名古 屋のガラス製品協同組合の加入者のうちの58社を対象として実施し た。このうち何らかの回答を返したものは16社である。
(イ) 上記16社の回答内容は,前記第2の5(3)イのとおりである。
イ 検討
(ア) アンケート対象者の選定について,母集団となった上記各地域のガ ラス製品共同組合の加入者は,原告商品及び被告商品の取引者に当た ると解される。 しかし,上記組合の加入者の中から,対象者58社をどのようにし て選定したのかは明らかではない。また,本件アンケートの各質問の 形式がいわゆるオープンクエスチョンとなっていることを踏まえても, 上記のような対象者に対して,原告商品2点及び被告商品2点を含む ガラス瓶の写真5点を示して製造者を回答させるというアンケートを 実施することが,原告商品や被告商品の形態のみから,その出所を特 定し得るかを判定するものとして有用といえるのか疑問がある。
(イ) 回答者は,上記アンケート対象者58社のうち16社にすぎない。 そして,被告商品5(質問1),原告商品2(質問2),被告商品9(質 問4)及び原告商品12(質問5)について,それぞれ,その製造者を いずれも控訴人であると回答したのは,順に8社,9社,5社及び7 社に過ぎず,このような少数の取引者が,上記各商品の製造者を控訴 人と回答したからといって,これらの商品に係る形態がその出所を示 すものとして周知となっていると評価することはできない。
(ウ) また,他社製品に関する質問3(調味料M200角の製造者)につ いての回答内容は,2社が控訴人,2社が日本山村硝子,12社が不 明(白紙を含む。)というものである。控訴人は,原告商品と日本山 村硝子の製品を区別できなかったのが2社のみというが,12社が回 答できなかったことに照らすと,これをもって,原告商品の形態に特 別顕著性を認めることはできない。
(エ) 上記回答内容によれば,被告商品5及び被告商品9について,製造 者を特定して回答した全員(順に8社,5社)が,その製造者を控訴 人と誤ったことが認められる。 しかし,食調瓶である原告商品及び被告商品の取引態様(認定事実 (2),前記(2))に照らせば,少数の取引者が上記のように誤った回答 をしたからといって,被告商品の形態が原告商品に類似することによ り混同が生じるおそれがあるということもできない。

◆判決本文

1審はこちら

◆平成29(ワ)12720

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平成29(ネ)10068等  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成30年2月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 少し前の事件ですが、漏れていたのでアップします。1審では、実用新案権による独占状態に由来する周知性かが争われました。1審はそれ以降も、独占状態が継続しているとして周知性を認めました。知財高裁は、「知的財産権の存在による独占状態は,知的財産権の存続期間が経過することにより解消し,知的財産権の存続期間中の独占状態に基づき生じた周知性も,存続期間満了後の期間の経過に伴って漸減し,存続期間満了後相当期間が経過した後は,知的財産権を有していたことに基づく独占状態の影響は払拭されたものと評価することができる。」と判断しました。

 控訴人は,仮に第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会があ ったとしても,現実に参入者との間で競争が生じない限り,知的財産権による独占 状態の影響が払拭されたと評価することはできないと主張する。 しかし,知的財産権の存在による独占状態は,知的財産権の存続期間が経過する ことにより解消し,知的財産権の存続期間中の独占状態に基づき生じた周知性も, 存続期間満了後の期間の経過に伴って漸減し,存続期間満了後相当期間が経過した 後は,知的財産権を有していたことに基づく独占状態の影響は払拭されたものと評 価することができる。 そして,被告商品の販売を開始した平成24年12月までの間に,原告商品のう ちS−O型については,実用新案権1の存続期間が満了した昭和54年6月23日 から約30年間,原告商品のうちL型,M型,S型については,実用新案権2の存 続期間が満了した昭和57年12月4日から約30年間,原告商品のうちS−II 型,LL型,L−II型については,実用新案権3の存続期間が満了した平成9年2 月26日から約15年間が経過しており,第三者が同種競合製品をもって市場に参 入する機会が十分にあったと評価し得ることは,前記1のとおり補正して引用する\n原判決の判示するとおりである。 また,控訴人は,被控訴人による原告商品の宣伝広告が実用新案権の存続期間満 了の前後を通じて基本的に変化がない旨を指摘するが,商品の形態の商品等表示性\nの要件である周知性を基礎付ける宣伝広告が,知的財産権の存続期間満了の前後を 通じて同様のものであったからといって,そのことが周知性を否定する根拠となる ものではないことは明らかである。 そして,原告商品について,実用新案権の存続期間満了後における広告・宣伝 や,継続的・独占的な大量の製造・販売により,遅くとも平成24年までには原告 商品の形状が出所を表示するものとして周知又は著名であるとの事情が認められる\nことは,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおりである。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成27(ワ)24688
「特許権や実用新案権等の知的財産権の存在により独占状態が生じ,これ に伴って周知性ないし著名性が生じるのはある意味では当然のことであり, これに基づき生じた周知性だけを根拠に不競法の適用を認めることは,結 局,知的財産権の存続期間経過後も,第三者によるその利用を妨げてしま うことに等しく,そのような事態が,価値ある情報の提供に対する対価と して,その利用の一定期間の独占を認め,期間経過後は万人にその利用を 認めることにより,産業の発達に寄与するという,特許法等の目的に反す ることは明らかである。もっとも,このように,周知性ないし著名性が知 的財産権に基づく独占により生じた場合でも,知的財産権の存続期間が経 過した後相当期間が経過して,第三者が同種競合製品をもって市場に参入 する機会があったと評価し得る場合など,知的財産権を有していたことに 基づく独占状態の影響が払拭された後で,なお原告製品の形状が出所を表\n示するものとして周知ないし著名であるとの事情が認められる場合であれ ば,何ら上記特許法等の目的に反することにはならないから,不競法2条 1項1号の適用があるものと解するのが相当である。」

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