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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

職務発明

平成31(ネ)10027  職務発明対価支払い請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年5月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 職務発明の報奨金について、1審は約800万円でしたが、知財高裁は約3200万円と認定しました。判決文は128ページもあります。

 ところで、旧法35条4項は、職務発明に係る相当対価の額は、その 発明により「使用者等が受けるべき利益の額」及びその発明がされるに ついて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない旨規定 するところ、同項が「使用者等が受けるべき利益の額」と規定したのは、 使用者等に対する権利承継時の客観的に見込まれる利益の額をいうもの であり、発明の実施によって現実に受けた利益に必ずしも限るのではな く、自己実施等の場合を含め、使用者等が本来得ることのできた独占的 利益を指すものと解される。
これを前提として検討するに、SCEは、一審被告とSMEが共同出 資して設立された会社であり(前記1 カ )、一審被告がプレイステ ーションシリーズの製造及び販売に関し、フィリップス社との間で、そ れぞれの保有する特許のクロスライセンスを締結していれば、SCEは 本件ジョイントライセンスプログラムにおいて改めてライセンス料を支 払う必要のない一審被告の関連会社となり、こうしたクロスライセンス 契約における一審被告の得た利益が「使用者等が受けるべき利益の額」 となるといえるが、本件全証拠を検討してみても、一審被告がプレイス テーションシリーズの製造及び販売に関してフィリップス社との間でク ロスライセンスを締結したと認めるに足りず、むしろ、一審被告は、S CEに対し、プレイステーションシリーズの製造、販売又は開発等のた めに有用な一審被告保有の特許権(本件特許権1−5及び同2−1を含 む。)等の実施許諾に関するライセンス契約(SCEライセンス契約) を締結して、SCEを他社ライセンシーより優遇して同社から対価を得 ていることが認められる。
このように、一審被告が、フィリップス社と共に運用する本件ジョイ ントライセンスプログラムのライセンス対象製品であるプレイステーシ ョンシリーズの製造販売に関して、SCEを同プログラムの関連会社と してではなく1ライセンシーとして扱っている以上、同プログラムが開 放的かつ非差別的な条件でライセンスする、いわゆるオープンポリシー を採用している(前記1 エ )ことからすれば、PS1のゲーム機本 体及びゲームディスク、PS2のゲーム機本体の製造及び販売に当たっ て一審被告が本来得ることのできた独占的利益は、SCEがフィリップ ス社との間でプレイステーションシリーズの製造及び販売に関してライ センスを受けたものと仮定した上で、同ライセンスプログラムで定めら れたロイヤルティにより計算された額に一審被告の配分率を乗じたライ センス料額により算定した額(仮想積上げ方式)であるというべきであ り、一審被告がSCEライセンス契約により現実に得た利益に限る必要 はない。
なお、一審被告は、仮想積上げ方式を採用したとしても、資本関係の 全く存在しない第三者(競合他社を含む。)との関係と比較して資本関 係を有するグループ会社に特許ライセンスを行う場合には、ライセンス 料をはじめ条件面をある程度優遇することは当然であり、本件ジョイン トライセンスプログラムにおけるライセンス料がSCEライセンス契約 にそのまま適用されるわけではない旨主張するが、一審原告は、この主 張を受けて、ライセンス料に80%を乗じる範囲までは争わないものと する旨主張しており、当裁判所も、SCEが一審被告と資本関係にある ことに鑑みて、この限度での条件面の優遇の程度は不合理なものではな いものとして、以下試算する。
・・・
また、一審被告は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●CDオーディオ及びCD-ROM ドライブの特許に対するロイヤルティは、独立して請求することがで きない旨主張する。しかし、この契約条項の趣旨については措くにし ても、この契約書は、平成16年(2004年)頃のDVDビデオプ レイヤーに関するライセンス契約に関するひな型であることがうかが われるところ、PS2が発売された平成12年10月26日から本件 特許1−5が満了となる平成17年3月22日までの間、このひな型 のとおりに実際にライセンス契約が締結され、また、DVDプレイヤ ーのロイヤルティにCD-ROMプレイヤーのロイヤルティが含まれ ることを明確に示す証拠は提出されていないから、一審被告の上記主 張を採用することは困難である(なお、前述のとおり、職務発明に係 る相当対価を算定するに当たって考慮すべき「使用者等が受けるべき 利益の額」は、使用者等に対する権利承継時の客観的に見込まれる利 益の額をいうものであり、発明の実施によって現実に受けた利益に必 ずしも限るのではないことに照らせば、仮に、上記条項に基づく形で ロイヤルティの支払がされていたとしても、そのことをもって当然に、 CD-ROMの再生機能に係る一審原告の相当対価請求権が制限され\nるとは認め難い。)。
c PS1のゲームディスクについて、PS1の発売開始日から本件特 許1−5の満了日までの各対象期間における北米販売数は、平成7年 (1995年)9月9日から平成16年(2004年)12月31日 までは3億7100万本であり(甲300)、平成17年(2005 年)1月1日から同年3月22日までは、平成17年1月1日から同 年3月31日までの北米販売数100万本(甲300)を基に日割り 計算すると、90万本であるところ、メキシコ、カナダ分を除いた米 国分を89%と見積もることは当事者間に争いがないから、米国販売 分は、別紙3の表2−1の左欄のとおりであるところ、●●●●●●\n●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●当該期間における平均為替レート (甲296)を乗じると、同表の「一審被告が支払いを受けるべきラ\nイセンス料」欄の記載のとおりとなるが、前記 のとおり、この8割 に相当する金額が各対象期間における一審被告が受けるべきライセン ス料の額となる(別紙4−2の「PS1ゲームディスク(CD-ROM ディスク)(本件発明1−5関係)」の「1)一審被告が受けるべき利 益」欄参照)。
そして、本件ジョイントライセンス契約におけるCD-ROMディス クの対象特許のうち本件特許1−5の貢献割合は、前記ア の「CD -ROM Disc」欄のとおり、平成14年度までは1/9であり、 平成15年度以降は1/3であるので(なお、厳密には、別紙4−2 の「PS1ゲームディスク(CD-ROMディスク)(本件発明1−5 関係)」の「1995.9.9〜2004.12.31」欄のうち、 平成15年度及び平成16年度に当たる期間(2003年4月1日か ら2004年12月31日)は1/3として計算すべきであるが、一 審原告は、「1995.9.9〜2004.12.31」のライセン ス料につき、一括して平成14年度までと同様にその貢献割合を3/ 6.6として計算しているところ(一審原告控訴第12準備書面61 頁参照)、この期間の販売本数を2003年4月1日を境にして区分 けして特定することは困難であり、また、一審被告に不利になる算定 ではないため、一審原告の計算手法を採用して算定する。)、これを 乗じると、一審被告が受けるべき独占の利益は、別紙4−2の「PS 1ゲームディスク(CD-ROMディスク)(本件発明1−5関係)」 の「2)本件特許1−5の一審被告の受けるべき利益」欄のとおりとな る。
・・・
本件発明1−5について一審被告が貢献した程度(争点1−2)
ア 本件ジョイントライセンスプログラム
本件発明1−5は、音楽用CDをコンピュータ分野に応用することを 可能とするためのエラー訂正技術であり、従来の音楽CDの誤り訂正率\nが訂正後10-9〜10-10であったのに対し、10-12まで改善すること ができ、データの信頼性が高まり、コンピュータのデータストレージと しての使用を可能としたものである(前記1 ウ )。本件特許1−5 は、CD-ROM等の規格必須特許に採用される(同1 ウ )など、技 術的価値は高いといえる。
他方で、本件発明1−5は、第1及び第2のクロスインターリーブ・ リード・ソロモン符号による誤り訂正(CIRC)に加えて、第3のリ\nード・ソロモン符号による誤り訂正を行うことを可能\とする発明特定事 項を含むものである(前記1 ウ )ところ、CIRCは、一審被告と フィリップス社が共同で音楽用CDの研究、開発の過程で発明されたも のであり(同1 )、本件発明1−5は、こうした一審被告に蓄積され た先行技術の一部が活用された面があることは否定することができな い。また、本件発明1−5が権利化されるまでの手続において、その優 先権の基礎となる本件特許1−1及び同1−2に係る手続を含め、一審 原告の貢献はなく、米国の事務所に依頼し、米国特許商標庁の拒絶理由 に対して適宜の対応をした点を含め、一審被告の知的財産部が相当の貢 献をしたものである(同1 イ)。
さらに、一審被告とフィリップス社は、非差別的かつ開放的なオープ ンライセンスポリシーを採用して広くライセンスの機会を与える(前記 1 エ )とともに、一審被告とフィリップス社が中心となって、CD -ROMの物理的フォーマットを作成しただけではなく、論理フォーマッ トを統一して互換性を持たせた(同1 オ )ほか、パソコンの周辺機\n器を接続するための伝送データ規格の統一を実現した(同1 オ )こ とにより、パソコンやゲームソ\フトとしてCD-ROMが広く利用される ようになったといえる。
加えて、一審被告は、CD-ROMディスクを受託生産するための製造 工場を設立し、CD-ROM駆動装置の生産能力の増産態勢を整え、また、\nCD-ROMを利用した様々な商品の企画・開発や、他業種との連携等を 行ったほか(前記1 オ )、マーケティングプロモーションとして、 ライセンシー会議の開催、コンテンツ業界への積極的なアプローチ、標 準規格を普及させるための装置の技術開発、ライセンシーに対するテク ニカルサポートを行い(同1 オ )、CD-ROMだけではなくCDR等のCDファミリー規格の改善のための研究開発やプロモーションを 行った(同1 オ )ことが認められる。
以上の諸事情に鑑みれば、本件ジョイントライセンスプログラムにお いて一審被告が得た独占の利益に関し、一審被告の貢献度は、95%と するのが相当である。
これに対して、一審原告は、本件発明1−5に関し、着想から具体的 なフォーマットの完成に至るまで一審原告が1人で検討し、シミュレー ションを行い、一審被告の会社設備を利用することなく就業時間外で発 明を完成させた旨主張し、その旨供述及び陳述(甲165)する。しか し、一審原告本人が供述等するところの発明を完成させるまでの経緯に ついては、これを裏付ける客観的証拠に乏しく、他方、これを否定する 〈B〉の陳述書(乙132)等の関係証拠もあるのであるから、前記1 アで認定した一審原告の関与の限度を超えて、一審原告本人の供述等 のみに沿った認定をすることは相当でない。

◆判決本文
原審はこちら。

◆平成27(ワ)11651

添付文書1


添付文書2

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令和2(ワ)29897  相当の対価請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年5月27日  東京地方裁判所

 職務発明事件です。一つの争点が、社内の発明規程により報奨金の請求権が消滅するという規定でした。原告は公序良俗に反すると争いましたが、裁判所はこの規定には特35条の報奨金は含まれていないとして、原告の主張を認めませんでした。

原告は、使用者である被告は、従業者であった原告に対し、退職により相 当の対価請求権が消滅したとの誤解を生じさせて相当の対価請求権の行使を 妨害してはならない信義則上の義務を負うところ、原告は、本件退職条項の 存在により、被告を退職したことでもはや何らの請求権も行使することがで きないと誤解していたのであるから、被告は上記の義務に違反したものであ ること、被告は、被告発明規程について、カネカと同様に、実績補償金を支 払う旨の規定を置くべきであったし、これが容易であったことから、被告が 相当の対価請求権及び被告発明規程に基づく登録報奨金請求権について消滅 時効を援用することは、信義則違反又は権利濫用に当たるなどと主張する。
しかし、被告発明規程の本件退職条項においては、発明者である従業員が 退職した場合に「報奨金を受ける権利」が消滅する旨が定められており、こ の「報奨金」が「譲渡報奨金」及び「登録報奨金」(被告発明規程10−1) を指すことは明らかである一方、特許法35条3項に基づく相当の対価請求 権の消長に関する定めは存在しない。したがって、被告発明規程に本件退職 条項が置かれていたからといって、そのことによって直ちに、被告の従業者 に対し、被告を退職した場合に、被告発明規程に基づき支給されるべき報奨 金請求権に加え、特許法35条3項に基づく相当の対価請求権までも行使す ることができなくなるとの誤解を生じさせるものではない。加えて、原告の 陳述書(甲18)の記載からは、被告が、原告に対し、本件退職条項が被告 を退職した後は相当の対価請求権の行使ができないことを定めたものである 旨を積極的に説明したといった事実が存したとはうかがわれず、他の証拠に よっても、当該事実を認めることはできない。したがって、本件において、 被告が原告主張に係る信義則上の義務に違反したとは認められない。
また、使用者が契約や勤務規則において定めを置くか否かにかかわらず、 従業者は、特許法35条3項に基づく相当の対価請求権を行使することがで きるから、被告発明規程に実績に対応する相当の対価支払に関する定めが置 かれていなかったからといって、直ちに、被告の消滅時効の援用が信義に反 するということはできず、権利の濫用になるということもできない。
(2) なお、原告は、被告の親会社であるカネカが、本件各発明の実施品である EDコイルを有望な商品であると考えて、被告の研究者である原告をカネカ における製品開発に専従させたこと、被告から本件各発明に係る特許を受け る権利を譲り受けていること、本件について交渉段階から積極的に関与して いることに照らすと、カネカは、その子会社である被告を現実的統一的に管 理支配しているといえ、そのようなカネカが実績補償に関する規定を置いて いる以上、被告が、相当の対価請求権についての消滅時効を援用し、原告に 実績補償をしないことは、信義則上許されない旨を主張する。 しかし、カネカと被告との間に親会社と子会社の関係が存在するとしても、 それぞれは独立した法人であることに変わりはなく、両者の業種や雇用体系、 業務の実情などは異なり得るから、そうした実情に合わせて、被告が実績補 償に関する規定を設けるか否かを独自に判断したとしても、直ちに、問題視 されるべき事態であるとまではいえない。したがって、原告が主張する上記 の事情は、いずれも、被告による消滅時効の援用が信義則違反であることを 基礎付けるに足りるものではない。
(3) 以上によれば、原告の前記主張はいずれも採用することができず、被告が 原告の被告に対する特許法35条3項に基づく相当の対価請求について消滅 時効を援用することが信義則違反又は権利濫用に当たるということはできな い。

社内規定の該当部分です。
10−1 会社は発明の内、特許、実用新案及び意匠につき、発明者に対し以下に定める報奨金を支払うものとする。ただし、実用新案は自動登録なので登録報償金を支払わないものとする。
(1) 譲渡報奨金
会社が出願した発明1件(発明者が複数の場合でも1件とする)に対して金●(省略)●を支払う。社外発明者には支払わない。
(2) 登録報奨金(実用新案を除く)
登録になった発明1件(発明者が複数の場合でも1件とする)に対して金●(省略)●を支払う。社外発明者には支払わない。
・・・
10−3 発明者である従業員が定年以外の理由で会社を退職した場合、報奨金を受ける権利は、退職と同時に消滅する。

◆判決本文

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平成29(ワ)7391等  職務発明の対価請求  特許権  民事訴訟 令和4年3月24日  大阪地方裁判所

 職務発明の報奨金として、約200万円が認められました。なお、使用者と従業者等と間で、十分な意見聴取や説明がなされなかったという原告の主張は、「協議の状況に不合理な点は認められない。」と判断されました。\n

 被告は、本件発明2−1を国内において自ら実施している。 前記(1(2)ア)のとおり、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」 (同条4項)とは、使用者等が当該発明を実施することによって得られる利益の全 体ではなく、その全体の額から通常実施権の実施によって得られる利益の額を控除 した残額(独占の利益)をいうと解されるところ、特許権者が自ら特許発明を実施 している場合の独占の利益は、使用者等が自ら発明を独占的に実施し、他社に当該 特許発明の実施を禁止したことに基づいて得られた利益に相当する売上額(超過売 上)と解される。この場合、相当の対価は、「対象商品(実施品)の売上合計額× 超過売上の割合×仮想実施料率×対象特許発明の貢献の程度×(1−被告の貢献割 合)×共同発明者間における原告の貢献割合」によって算定するのが相当である。 また、特許の登録前であっても、特許出願人は、出願公開後発明を実施した第三 者に対して一定の要件の下に補償金を請求することができること等を踏まえると、 出願公開以降の売上額には一定の独占的利益があると見るのが相当である。もっと も、出願公開から登録までの期間においては、登録されて排他的な独占権を有する か否かが未確定であることに鑑み、売上の2分の1を独占の利益の検討の基礎とす るのが相当である。
・・・
エ 超過売上の割合
(ア) 対象製品群2の販売による市場占有率の変化等
対象製品群2は、平成16年10月から被告の 200シーズン年度モデルとして 販売され、●(省略)● また、被告のルームエアコンの国内の出荷台数は、2003 冷凍年度から 200冷凍 年度にかけて増加し、国内4位から3位に上昇するだけでなく、1位及び2位との 出荷台数の差が縮小したことを踏まえれば、200冷凍年度においては、その市場 占有率が上昇したものと認められる(前記(2)キ(ウ))。このような被告の市場占有 率の上昇には、当該時期に被告の製造販売する●(省略)●対象製品群2の販売が 直接貢献していることがうかがわれる。 なお、原告は 2004 シーズン年度モデルによる被告の市場占有率の上昇等につい ても指摘するが、本件発明2−1は当該モデルでは実施されていないことから(弁 論の全趣旨)、当該モデルの市場占有率の変動と本件発明2−1との間に関連性は 認められない。
(イ) 本件発明2−1の技術的意義及び代替技術等
a 本件発明2−1は、ルームエアコン室内機に搭載される熱交換器の配置につ いて、前面熱交換器の設置角度 α を特定すると共に、クロスフローファンの翼の出 口角 β2 を特定することで、所定風量を得るのに必要なファンモータ入力や回転数 を低減することができ、省エネを図ることができる点にその技術的意義がある。ま た、設置角度 α を 65°以上とすることで、熱交換器からの水滴がファンへ流入して 室内ユニットの外部へ吹き出されること等を防止し、また、ユニットの奥行きをコ ンパクトにできるという効果もある(前記(1)ア(オ)【0024】)。
b もっとも、省エネ、ドレン水の確実な処理及び室内機ユニットのコンパクト 化という課題自体は本件発明2−1の出願以前から存在するものである。また、当 該課題に対して、熱交換器を逆 V 字状にすること、前面熱交換器と背面熱交換器と の連結部を送風ファンの中心軸よりも前面側に位置させ、かつ前面熱交換器の傾斜 を急な配置にすること、熱交換器を通過した空気がファンの翼に当たる際の空気の 流れを滑らかにし、空気流の剥離等を防ぐために、翼形状を変更することといった 着想やその技術自体も、従来から存在した(前記(2)ウ)。 したがって、本件発明2−1は、熱交換器の配置とクロスフローファンの翼形状 (出口角)の双方を、同時に、具体的な数値をもって特定したところに技術的な意 義があるといえる。
c また、ルームエアコンの省エネ性能の向上を図る技術には、室内機及び室外\n機それぞれを見ても、熱交換器、圧縮機、モータ、送風機等に係る種々の技術が存 在する。しかも、被告のほか、国内の競合他社であるパナソニック、ダイキン、東\n芝、日立等は、それぞれ、省エネのための独自の基本的な技術を有しており、● (省略)●被告以上又は同等の市場占有率を保持していたと認められる(上記(2) イ、キ(ウ)、ク(イ)及び(ウ))。 加えて、本件発明2−1は熱交換器の配置とクロスフローファンの翼形状を特定 するものであるから、それぞれ独自のユニット、熱交換器、ファン等の形状や配置 を工夫して製品化している競合他社において、本件発明2−1をそのまま実施する ことにより直ちに性能が向上するといった性質の技術であるとは思われない。\n
d 以上の事情を総合的に考慮すると、本件発明2−1に係る超過売上の割合は 50%と見るのが相当である。
オ 仮想実施料率
本件発明2−1に係る仮想実施料率を検討するにあたっても、上記エの事情は同 様に考慮されるべきである。 また、経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」 (平成22年8月31日発行。乙 A4)によれば、技術分類を「機関またはポンプ」 とする対象例(16件)では、平均ロイヤリティ料率 3.1%、標準偏差 1.4%、最大 値 5.5%、最小値 0.5%である。また、技術分類を「照明;加熱」とする対象例(1 6件)では、平均ロイヤリティ料率 3.9%、標準偏差 2.2%、最大値 9.5%、最小値 1.5%である。 ●(省略)●
以上の事情のほか、本件発明2−1がルームエアコン室内機における熱交換器の 配置とクロスフローファンの翼の出口角の数値を限定したものであり、このような 最適な数値を検討する行為自体は当業者が自ずと行うものであること等を踏まえる と、本件発明2−1の仮想実施料率は、3.5%とするのが相当である。
カ 対象特許発明の貢献の程度
(ア) 対象製品群2には、本件発明2−1のほか、●(省略)●特許が実施されて おり(乙 A10、乙 B27)、また、被告カタログ2)で訴求されている代表的な技術に\n関連する特許は、●(省略)●(乙 A35、乙 B59)。 このうち、被告のポキポキモータに係る技術は、従来のモータ以上にコイルを密 に巻き、それによりモータ効率を向上させるという基本的・汎用的な技術である点 で、室外機の圧縮機モータ及び●(省略)●それぞれ重要な技術といえる。
(イ) また、被告は、対象製品群2の販売に当たり、被告カタログ2)においてムー ブアイを大々的に取り上げると共に、そのほかにも脱臭機能、換気機能\、サプリメ ントエアー機能といった付加価値的な部分をも顧客に対し強く訴求している。当時、\n既にルームエアコンは家庭に広く普及し、省エネ等に係る技術も各社製品において 採用されていたと考えられることを踏まえると、付加価値的なものとはいえ、この ような他社製品と差別化を図る技術は消費者に対する訴求力を高め、対象製品群2 の売上に大きく貢献したものと見るのが相当である。もとより、本件発明2−1も、 熱交換器の配置を工夫することで室内機のコンパクト化といった訴求力のある効果 を実現し、また、同時にシロッコファンの翼形状の角度を数値限定することで省エ ネ効果等を実現していることから、対象製品群2の売上に貢献したと見られるもの の、その貢献の程度が他の技術と比較して特に顕著であったことまではうかがわれ ない。
(ウ) 以上の事情のほか、対象製品群2の売上高には、室内機のみならず室外機の 売上高も含まれること等を踏まえると、対象製品群2における本件発明2−1の貢 献の程度としては、1%と見るのが相当である。
キ 使用者の貢献割合
●(省略)●
さらに、対象製品群2の開発にあっては、熱交換器やクロスフローファンの翼形 状のみならず、被告カタログ2)で訴求されたものをはじめとする種々の開発項目や 試験項目があり、これをクリアして製品化に至ることは、被告の有する多くの蓄積 された技術や物的・人的な体制があってこそ可能になるといえる。\nこのほか、量産化及び販売も含めて被告が●(省略)●多額の費用を投入してい ること、長年にわたりルームエアコンを販売してきた被告及び被告ブランドの知名 度が対象製品群2の販売実績に大きく貢献していると見られることなどを踏まえる と、被告の貢献割合は 95%とみるのが相当である。
ク 共同発明者間における原告の貢献割合
本件発明2−1は、熱交換器の配置及びクロスフローファンの出口角の数値を限 定した点に意義があるところ、原告は、流体解析の技術を用いて、その数値解析に 中心的に寄与したことが認められる(前記(2)ア(イ))。 もっとも、発明当時、被告においても既に流体解析の技術及びこれを支援する装 置等が存在し(乙 A16、乙 B44)、●(省略)●これらの事情に加え、●(省略)●(弁論の全趣旨)、●(省略)●などを踏まえると、共同発明者間における原告の貢献割合は 60%とみるのが相当である。
ケ 小括
以上のとおり、対象製品群2の国内実施分に係る●(省略)●、超過売上の割合 50%、仮想実施料率 3.5%、対象特許発明の貢献割合 1%、被告の貢献割合 95%、共 同発明者間における原告の貢献割合 60%と認められる。これに反する原告及び被告 の各主張はいずれも採用できない。 その結果、本件発明2−1に係る相当の対価の額は、●(省略)●となる。 ●(省略)●*50%*3.5%*1%*(100-95%)*60%=●(省略)● もっとも、被告は、本件各発明2について、既に特許を受ける権利の承継を受け た対価として原告に対し●(省略)●を支払済みであることから(前記2の2(7) ウ)、これを差し引くと●(省略)●となる。 したがって、原告は、被告に対し、昭和34年法35条3項に基づき、●(省略) ●の相当対価請求権を有する。
・・・
(ア) 協議の状況
前記(2)のとおり、被告は、●(省略)●従業員側の意見を聴取する機会も十分\nに設け、これに対応した行動を取ったものといってよい。 したがって、●(省略)●原告を含む従業者と被告との間で行われた協議の状況 に不合理な点は認められない。 これに対し、原告は、被告規程が知財部門により一方的に定められ、少なくとも 原告が協議に関与していないなどと主張する。しかし、上記のとおり、●(省略) ●の過程において、被告の従業員に対する説明及び従業員からの意見聴取は十分に\n行われたものと見られることに鑑みると、被告規程●(省略)●が知財部門により 一方的に定められたとの評価は当たらない。また、原告も●(省略)●質問等の機 会を現に与えられていたことから、原告が協議に関与していないということもでき ない。そもそも、使用者等と従業員等との協議として、個々の従業員が規程内容の 作成に個別的ないし直接的に関与する手続を担保することまでが求められていると は解されない。その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告 の主張は採用できない。
(イ) 開示の状況
前記(2)及び(3)のとおり、被告は、●(省略)● 以上のような状況を踏まえれば、●(省略)●被告規程の基準の開示の状況に不 合理な点は認められない。 これに対し、原告は、開示された基準では従業員が自ら実績補償金を算定できず、 また、●(省略)●労力を要するため、開示の状況は不合理であるなどと主張する。 しかし、被告において被告規程に係る基準が開示されていることに争いはない。 その上、被告では、●(省略)●が開示されていたのであるから、従業員は、これ と被告規程を照合すれば、実際の実績補償金の算定過程についても一定程度理解可 能であったとうかがわれる。それ以上に、●(省略)●についてまで、基準として\n開示しないことをもって不合理とはいえない。 また、●(省略)●基準の開示として不合理とすべきほどに特段の労力を要する と見るべき具体的な事情も見当たらない。 したがって、この点に関する原告の主張は採用できない。
(ウ) 意見聴取の状況
●(省略)●最終的に、原告と被告との間で意見等の相違は解消されなかったと 見られるものの、原告からの意見聴取の状況という観点からは、被告による原告か らの意見聴取は実質的に尽くされたといってよい状況にあり、被告の一連の対応に つき不合理ないし不誠実と評価すべきものはないというべきである。 これに対し、原告は、十分な意見聴取や説明がなされなかったとして縷々主張す\nる。しかし、その内容は、被告細則の解釈や発明に対する評価の程度に対する不満 を述べるものであって、被告における原告からの意見聴取の手続自体が不合理であ ることを基礎付けるものではない。 したがって、この点に関する原告の主張は採用できない。
・・・
(ウ) 以上のとおりの●(省略)●基準の策定に際して使用者等と従業員等との間 で行われた協議の状況、策定された当該基準の開示状況のほか、●(省略)●の定 めたところにより相当の利益を与えることが不合理であると評価することはできな い。
これに対し、原告は、被告が●(省略)●対して真摯に回答しなかった旨などを 主張する。しかし、被告は、●(省略)●協議が不合理であるとはいえない。その 他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できな い。 なお、原告は、●(省略)●被告規程における実績報奨金の算定基準の内容面及 びその適用の不合理性をも主張する。しかし、●(省略)●これをもって不合理と は必ずしも認められない。この点に関する原告の主張は採用できない。
ウ 小括
以上の事情を総合的に考慮すると、被告の原告に対する●(省略)●支払は、い ずれも不合理であるとは認められない。これに反する原告の主張は採用できない。 したがって、本件各発明3に係る相当の対価支払につき、平成16年法35条5 項は適用されないから、本件発明3−2−2に係る不法行為に基づく損害賠償請求 も含め、その余の争点について判断するまでもなく、同項に基づく原告の請求はい ずれも認められない。

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平成30(ワ)866 職務発明の対価 特許権 民事訴訟 令和3年12月27日 大阪地方裁判所

 職務発明であるとして1億円を越える請求を求めましたが、裁判所は独占的利益を得ていないとして請求を棄却しました。なお、原告は45万円の報奨金を受け取っていました。

ウ コスト面について
(ア) 本件工場の建設に係る設備投資について,実行予算●(省略)●に対し,実\n際には●(省略)●の建設費用を要し,本件増設工事に更に●(省略)●の費用を 要したことで,合計●(省略)●を要したこと(前記(3)ウ(イ)a)に加え,被告に とって,本件工場は本件乾式分別法による設備を導入した初めての事例であるのに 対し,溶剤分別法による設備を設置した事例は既に FOJ 等において存在し,FVO 建設当初における溶剤分別設備に係る投資額の見積もりは本件設備の見積もりに比 して比較的正確になされたと考えられること等を踏まえると,本件工場建設に係る 設備投資額が溶剤分別法による設備を導入する場合と比して安価であったとは考え 難く,少なくともその点は不明と見るほかない。
(イ) 比例費については,平成27年〜平成29年の FVO 等の各 SOS パーツの加 工費に係る試算結果を比較した場合,FVO は FOJ 等に比して大幅に低額である。 また,分別設備に係る最終製品の比例費を見ても,FVO は,●(省略)●FOJ 等 に比して幾分低額である(以上につき,前記(3)ウ(イ)b)。もっとも,具体的な金 額は不明ながら,本件工場の稼働開始から平成26年までは FVO において●(省 略)●ことも考慮に入れる必要がある。
(ウ) 歩留まりについては,当初より乾式分別法による歩留まりが溶剤分別法より も低いことが前提とはされていたものの,本件増設工事を経て更に設計上の分別収 率は●(省略)●に引き下げられ,実際の歩留まりも●(省略)●という状況にあ る(前記(3)ウ(イ)c)。
(エ) これらの事情を総合的に考慮すると,本件乾式分別法は,必ずしも溶剤分別 法に比してコスト面で明確に有利とはいえない。
エ 採算性について
FVO パーツ品の採算性については,販売限利率を見る限り,FVO パーツ品は, CBE として販売されたもの及び SOS パーツ単体で販売されたもののいずれも,総 じて FOJ パーツ品よりも低い(前記(3)ウ(イ)d)。すなわち,FVO 品は,SOS パ ーツ製造の比例費を溶剤分別法により製造された FOJ 品に比して抑えられている にもかかわらず,FOJ 品よりも利益への貢献の程度は低いといえる。 なお,販売限利率は,分別方法による利益率の相違等をそれ自体として表すもの\nでは必ずしもないが,販売限利は,その算出に当たってその時々の相場と過去の実 績等が考慮され,変動費に相当する見込額として位置付けられるものであることな どに鑑みると,販売限利率に基づき収支採算性を評価することには一定程度の合理 性があると考えられる。
オ CBE 販売市場の状況について
CBE の国際的な需要は,平成12年〜平成20年にかけて急激に拡大し,それ 以降も,平成28年まで,緩やかな拡大傾向を示しているところ(前記(3)エ(ア)), 被告グループのシェアが本件工場の稼働によって増大したことを裏付けるに足りる 客観的な資料はない。むしろ,平成19年〜平成28年における被告グループのシ ェアは●(省略)●で増減していると見られると共に,この変動はココアバターと の価格変動との関連性がうかがわれる(前記(3)エ(イ))。これを見る限り,本件各 発明の実施は,被告による競合他社からのシェア奪取にはつながっていないと考え られる。 また,被告との合計で CBE 市場の約8割のシェアを占める AKK 及び LC は, CBE 製造にあたり,いずれもシア脂から SOS パーツを製造・精製する工程におい て,溶剤分別法によっている。本件各発明はシア脂を原料とする分別にも利用でき るとされているものの,実際には,各設備の規模等のほか,本件工場の稼働による 被告のシェア増大といった事情もないことをも踏まえれば,競合他社にとって,多 額の設備投資を行って本件乾式分別法による設備を導入するメリットは乏しいと思 われ,本件各特許権の存在いかんにかかわりなく本件乾式分別法による設備の導入 は容易ではないと考えられるのであって,本件各特許権の存在が競合他社による本 件各発明の実施を回避させているとまではいえない。 このことは,原告との係争が表面化した後とはいえ,被告が特許料不納付により\n本件各特許権を消滅させ,又はその方向で対応する旨の判断を示していることとも 平仄が合うといえる。
なお,油脂分別技術の開発の方向性としては,安全性及びコスト面での問題を抱 える溶剤分別法から,最も持続可能性の高い方法とされる乾式分別法に向かうとし\nても,現状においては乾式分別法もなお問題点を抱えており,溶剤分別法も依然と して選ばれる場面があるとされていることなどに鑑みると,少なくとも本件各特許 権の存続期間においては,油脂分別法として溶剤分別法と乾式分別法はなお選択的 な関係にあるものと見るべきであって,その意味で,溶剤分別法は本件各発明の代 替技術として位置付けられる。
カ 小括
以上の事情を総合的に考慮すると,本件において,本件各特許権に係る通常実施 権の実施によって得られる利益の額を超えて被告が利益を得たと認めるに足りる証 拠はないというべきである。すなわち,被告は,本件各特許権により独占の利益を 得たとはいえない。
キ 原告の主張について
原告は,被告が本件各特許権により独占の利益を得ているとして,縷々主張する。 しかし,FVO パーツ品及び FVO 品の品質については,原告は主にパイロットレ ベルでの乾式分別法による SOS パーツの数値を根拠とするにとどまり,また,実 際に本件設備を用いて製造した FVO パーツ品を用いた分析結果等の信用性につき 疑義を抱くべき事情は見当たらない。また,コスト及び採算性については,前記の とおりである。
さらに,溶剤分別法に係る各種規制の存在も,溶剤分別法による設備の導入の障 害になり得るものではあっても,その新設が不可能ないし著しく困難であるとまで\n見るべき事情はない。このため,前記のとおり,油脂分別法として溶剤分別法はな お乾式分別法の代替技術といえる。 本件発明賞や本件経営賞の受賞等も,FVO における本件乾式分別法による設備 の導入に対する肯定的な評価を裏付けるものではあるものの,必ずしも被告に独占 の利益が生じたことを前提とするものではない。 被告の有価証券報告書に FVO から被告への特許料支払が記載されていること (甲74)についても,その支払が本件各特許権の実施に係るものであるかが明ら かではない上,本件各特許権の特許権者が被告であること,グループ会社とはいえ 被告と FVO とは法人格を異にすることなどに鑑みると,これをもって,被告に本 件各特許権による独占の利益が生じていることを示すものとは必ずしも見られない。 その他原告が縷々指摘する事情を踏まえても,この点に関する原告の主張は採用 できない。

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令和3(ネ)10057  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年11月17日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 原告が、共同発明者か否かかが争われました。1審、控訴審とも発明者ではないと判断しました。

控訴人は,1)平成22年6月24日,3本スリットフィンの風上側 のスリットをなくすことにより座屈強度の向上を図ることができること を着想し,同日,Eに対し,フラットフィンの強度計算をFにしてもら うように指示し,その後,2本スリットフィンの座屈強度計算もFにし てもらうように指示したこと,2)その結果,2本スリットフィンの座屈 強度は当初フィンの2.5倍で,フラットフィンとほぼ同一であったが, Eは,2本スリットでは伝熱性能が低下するとして,3本のスリットを\n風下側に押し込めることを提案し,控訴人はこれを承諾したこと,3)そ の後,控訴人及びEによる試験を経て,同年7月下旬頃,本件発明が完 成したことを主張する(本判決による補正後の原判決4頁21行目から 5頁20行目まで)。
(イ) そこで,前記(ア)の控訴人の主張について検討する。
控訴人は,控訴人メール1において,Eに対し,フラットフィンの座 屈強度の解析を指示し,Eは,Eメールにより,●(省略)●を報告し た。しかし,それらの●(省略)●に記載されていたものであり(前記 (3)ケ(イ)),このうち●(省略)●に提出されたものであり(前記キ),E らが住環研において●(省略)●を示すものであった。
また,控訴人は,Eメールに対して返信した控訴人メール2において, ●(省略)●と記述したが,これは,Eメールに示された●●を見て, 控訴人がその時に,●(省略)●と認識したというにとどまるものと認 められ,それをもって,控訴人が,Eらに先んじて,当初フィンを2本 スリットフィンに変えることを着想したとはいえない。 さらに,控訴人がEに対して2本スリットフィンの座屈強度計算を指 示したことを認めるに足りる証拠はなく,Eが3本のスリットを風下側 に押し込めることを提案し,控訴人がこれを承諾したこと,その後,控 訴人及びEによる試験を経て,平成22年7月下旬頃,本件発明が完成 したことなどの控訴人の主張に係る事実を認めるに足りる証拠もない。 そうすると,仮に,伝熱性能を確保しつつ座屈強度を向上させるため\nに2本スリットフィンとすることが本件発明の特徴的部分に係る着想で あるとしても,控訴人がそれを着想したとは認められず,控訴人は,本 件発明の発明者とは認められない。

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1審はこちら。

◆令和1(ワ)5059

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