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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

職務発明

平成24(ワ)2689 職務発明対価請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年12月13日 東京地方裁判所

 職務発明の対価として900万円が認められました。
 ここで超過売上高とは,仮に第三者に実施許諾された事態を想定した場合に使用者が得たであろう仮想の売上高と現実に使用者が得た売上高とを比較して算出された差額に相当するものというべきであるが,具体的には,職務発明対象特許の価値,使用者等が採用しているライセンスポリシー,ライセンス契約の有無,市場占有率,市場における代替技術の存在等の諸般の事情を考慮して定められる独占的地位に起因する一定の割合(超過売上げの割合)を乗じて算出すべきである。そして,超過利益は,上記方法により算出された超過売上高に,仮想実施料率を乗じて算出するのが相当である。以上を前提として,以下,「独占の利益」の有無及びその額を検討する。
・・・
以上のような本件発明1の技術的意義,代替技術の有無とその技術内容,被告のライセンスポリシー及び市場占有率その他の事情を総合考慮すれば,被告が,本件発明1を自社実施して得ることができた売上げのうち,本件特許1に係る通常実施権の行使を超えて,その禁止権の行使によって被告が得ることができた超過売上高の割合は,30%と認めるのが相当である。
・・・・
第3期の外販において,被告が分譲住宅ビルダーから注文を受けて,MS基礎のうち安定材の部分のみを施工し,その上に,分譲住宅ビルダーがベタ基礎部分を施工していたことは当事者間に争いがないところ,原告は,このような安定材付きベタ基礎の施工の態様について,被告が分譲住宅ビルダーと共同してMS基礎を施工していたといえるから,被告の分譲住宅ビルダーに対する安定材の売上げを自社実施による被告の利益とし,被告が分譲住宅ビルダーから受領した実施料を他社実施による被告の利益として,被告の独占の利益を計算すべきであると主張する。イ 前記1(1)説示のとおり,法35条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,使用者等が被用者から特許を受ける権利を承継し,当該特許発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位を得,その結果,実施許諾を得ていない競業他社に対する禁止権を行使し得ることによって得られる利益(独占の利益)の額をいうから,使用者が,自己の経済的な利益を最大化するために,自ら当該特許発明の全体を実施することなく,その一部のみを実施して,これを第三者に販売して利益を得,さらに,その余の部分の実施を第三者に許諾することによって第三者からその対価となる利益を得ることを選択したような場合についても,使用者が自己の実施分の販売により得た利益及び第三者に実施を許諾したことによって第三者から得た利益は,いずれも当該特許発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位に基づいて使用者が受けた利益ということができるから,それらは使用者の独占の利益に含まれると解するのが相当である。
・・・
そうすると,分譲住宅ビルダーが被告から安定材の引渡しを受け,その上にベタ基礎を施工して,本件発明1の構成を有する安定材付きベタ基礎を完成させる行為は,本件発明1の実施行為に当たると認めるのが相当であるから,被告がこれを承知した上で,分譲住宅ビルダーからMS基礎の発注を受け,その代金を受領していたことは,被告が分譲住宅ビルダーに対して,ベタ基礎部分を施工して本件発明1を実施することについての許諾を与えていたものと評価することができる。エ よって,被告が外販において,分譲住宅ビルダーからMS基礎の受注を受け,その安定材部分を施工して分譲住宅ビルダーに販売することによって得た売上げについては,被告の自社実施に係る独占の利益の算定において考慮されるべきであり,また,被告がMS基礎のうちベタ基礎部分を分譲住宅ビルダーに施工させることを許諾したことの対価として受領した額については,第三者に対する実施許諾に係る実施料に相当する収入として被告の独占の利益に算入されるべきである。

◆判決本文

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平成25(ネ)10054 特許を受ける権利帰属確認請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年11月21日 知的財産高等裁判所

知財高裁は、職務発明認定における「使用者等の業務範囲」認定は、定款ではなく現実の業務であると判断しました。
 また,控訴人は,本件各発明に基づいて計量器を製造するに際して,テクノリサーチ社が計量法40条1項に基づく届出をしていないことや,履歴事項全部証明書上の『目的』欄に測定器の開発・発明が記載されていないことを理由として,本件各発明はテクノリサーチ社の業務範囲に属しない旨主張する。しかし,職務発明に該当するか否かの基準となる「使用者等の業務範囲」とは,定款及びこれを反映した商業登記簿上の記載や計量法等の行政法規に基づく届出の有無によって判定されるものではなく,使用者が現に行っている,あるいは,将来行うことが具体的に予定されている業務がこれに該当するものと解される。そして,上記1(2)で認定したとおり,傾斜測定器の開発製造は,被控訴人から委託を受けたドラフトサーベイの改善業務と直接関連するものとして,テクノリサーチ社の現に行う業務に属するものであるから,控訴人の上記主張は採用できない。

◆判決本文

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平成23(ワ)21757 職務発明対価請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年10月30日 東京地方裁判所

 職務発明に基づく報奨金について時効が成立していると判断されました。
 民法166条1項は,「消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する。」と規定し,消滅時効の起算点を定めるが,ここにいう「権利を行使することができる」とは,単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく,さらに権利の性質上,その権利行使が現実に期待のできるものであることをも必要と解するのが相当である(最高裁昭和40年(行ツ)第100号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号771頁参照)。これを本件についてみるに,原告は,遅くとも昭和63年2月頃までに,日本IBMに対し,本件発明に係る特許を受ける権利を譲渡したが(前提事実(3)),その頃の日本IBMの発明報奨制度において,職務発明の相当対価につき具体的な支払時期を定めた規定は見当たらないから(前記1(1)の平成元年2月1日時点における発明報奨制度参照),本件発明に係る相当対価の支払債務は期限の定めのない債務であったと認めるのが相当である。そうすると,原告は,本件発明に係る特許を受ける権利の譲渡時において,日本IBMに対し,本件発明に係る相当対価の支払を請求することにつき法律上の障害があったとは認められない。また,改正前特許法35条4項は,「前項の対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。」と規定するが,ここにいう「受けるべき利益」とは,特許を受ける権利の譲渡時における客観的な利益であり,使用者等が後に受けた利益ではないと解されるから,職務発明の相当対価は,その譲渡時における客観的な価格である(外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求についても同条3項及び4項が類推適用される。最高裁平成16年(受)第781号同18年10月17日第三小法廷判決・民集60巻8号2853頁参照)。同様に,本件発明に係る相当対価も,特許を受ける権利の譲渡時における客観的な価格であり,その算定は譲渡時に可能であったから,本件発明に係る相当対価の支払請求は,その権利の性質上,その権利行使が現実に期待のできたものである。したがって,本件発明に係る相当対価の支払請求権は,その特許を受ける権利の譲渡時から消滅時効が進行すると解するのが相当である。・・・以上に照らすと,本件発明に係る相当対価の支払請求権は,上記1)の支払の時点から10年が経過した平成10年8月頃に消滅時効が完成し,被告が平成24年4月20日の弁論準備手続期日において消滅時効を援用する旨の意思表示をしたことは当裁判所に顕著であるから,消滅時効の抗弁は理由がある(なお,上記2)の支払の時点における時効中断があるとしてみても,平成12年3月頃に消滅時効が完成したものと認められる。)。

◆判決本文

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平成24(ネ)10028等 職務発明の対価請求控訴,同附帯控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年04月18日 知的財産高等裁判所

 金額は1審と同じですが、遅延損害金の起算日が変更されました。
本件で原告が請求する職務発明の相当対価は,発明等取扱規則(乙1の1)9条の褒賞金に関するものであるところ,同条は,「会社が,特許権等に係る発明等を実施し,その効果が顕著であると認められた場合その他これに準ずる場合は,会社は,その職務発明をした従業員に対し,褒賞金を支給する。」としており,同規定は,会社が発明を実施しその効果を判定できるような一定期間の経過をもって,職務発明者が同褒賞金にかかる相当対価の支払を求めることができるようになる旨を定めたものと解するのが相当である。そして,被告の特許報奨取扱い規則(甲9)の6条には職務発明者に「営業利益基準」に基づき一定の報奨金が支払われることが,1条には上記「営業利益基準」が報奨申請時の前会計年度から起算して連続する過去5会計年度における対象事業の営業利益を基準とするものであることが規定されている。しかし,被告の発明等取扱規則又は特許報奨取扱い規則には,褒賞金の支払期限に関する定めはなく,上記の規定が,職務発明者の請求がなくとも被告が上記期間(当裁判所が拘束される第1次控訴審判決の判断における期間は5年である。)の経過をもって直ちに褒賞金の支払の履行がされるべき旨を定めたものと解することはできない。そして他に,褒賞金の支払期限が確定期限であるとの約束がされたことを認めるに足りる証拠もない。したがって,本件各発明に係る相当対価の支払請求債権は期限の定めのないものと認めざるを得ず,原告が主張するように,本件各発明が実施された平成5年10月7日から5年を経過した平成10年10月7日の翌日である同月8日からの遅延損害金の発生は認めることができない。期限の定めのない債権の債務者は,履行の請求を受けた時から遅滞の責めを負うところ,被告が原告から本件各発明に係る相当対価の支払請求債権の履行の催告を受けたのは平成19年2月1日であるから(甲7の1,甲39),被告は同日をもって遅滞に陥る。したがって,本件各発明に係る相当対価の支払請求債権の遅延損害金は,その翌日である平成19年2月2日から発生する。\n

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成21(ワ)17204

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平成24(ネ)10052 職務発明対価支払請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年01月31日 知的財産高等裁判所

 職務発明の報奨金訴訟です。1審は1億を超える支払いを認めましたが、知財高裁はこれを減額しました。発明者の貢献度は1%、発明者割合40%は1審と同じなんですが、総額ではかなり減額されています。
 前記のとおり,欧州物質特許に基づいて算出される第1審被告の欧州子会社による自社販売分に係る平成17年4月1日以降の超過利益の額は,●●●●●●であるから,これに発明者貢献度(1%)及び発明者割合(40%)を乗じて得られる相当対価の額は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●また,前記のとおり,BI社からの本件物質発明について想定される米国(米国物質特許)における平成17年4月1日以降のライセンス収入の額は,同日から平成20年3月31日までの部分が●●●●●●●●●,同年4月1日以降の部分が●●●●●●●●●であり,欧州(欧州物質特許)における平成17年4月1日以降のライセンス収入の額は,●●●●●●●●●であるから,これに発明者貢献度(1%)及び発明者割合(40%)を乗じて得られる相当対価の額は,米国における平成17年4月1日から平成20年3月31日までの部分が●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●,同日以降の部分が●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であり,欧州において●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●である。以上を合計すると,4788万円となるが,このうち,平成17年4月1日から平成20年3月31日までの第1審被告の欧州子会社による自社販売分に基づく相当対価の額●●●●●,米国●●●●●●●●及び欧州●●●●●●におけるライセンス収入に基づく相当対価の額を合計すると,2876万円となる。そして,第1審被告は,第1審原告に対し,本件支払によって,上記期間の実績に基づく相当対価請求権に対するものとして335万9900円を支払済みであり,このうち上記相当対価に対応する部分は,309万8400円であるから,これを控除して第1審原告に対する上記相当対価の未払分を算定すると,2566万1600円となる。したがって,第1審原告に対する相当対価の未払分の合計は,4478万1600円となる(2566万1600円+1912万円)。

◆判決本文

◆第1審はこちらです。平成21(ワ)34203平成24年04月27日東京地裁

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平成24(ネ)10081 職務発明対価請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年02月14日 知的財産高等裁判所

 職務発明に基づく補償金請求について、知財高裁は第1審の判断を維持しました。
 当裁判所も,1)被告が平成20年6月1日から平成21年5月31日までの間に本件発明の実施によって受けた実施許諾の対価は,188万6400円であり,2)本件特許権の譲渡より前の期間における,被告が本件特許を自ら実施したことにより受けるべき超過利益に関して,超過売上げの割合は30%,仮想実施料率は5%であり,3)被告が本件特許権を譲渡したことにより受けるべき利益の額は800万円であり,4)被告の貢献度は95%である,と認めるのが相当であって,結論として,原告らが相続により承継した職務発明対価請求権の額は,原告 X1 につき28万4944円,原告 X2 及び原告 X3 につき各14万2472円であると判断する。その理由は,次のとおり付加するほかは,原判決20頁16行目以下の「4 当裁判所の判断」のとおりである。以下,当事者双方の当審主張を踏まえて付加判断する。・・・

◆判決本文

◆原審はこちらです。東京地裁平成23年(ワ)第6904号

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