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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

職務発明

平成26(ネ)10040  職務発明補償金請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成26年10月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 職務発明の対価として50万円が認められました。
 以上の点を総合すると,一審被告及び関連会社が製造した半導体装置は,他の歩留り向上のための技術や,他のボイド等の抑制技術と併用された本件発明の効果により,コスト削減に有意な影響を与え,これにより他社を排除するという若干の独占的効果を有していたといえ,一審被告が本件発明を自己実施することによって得た半導体装置の売上高に占める超過売上高の割合は,10%であると認めるのが相当である。
・・・
上記(イ)の事情のほか,本件に現れた諸事情を総合的に考慮すると,本件発明の想定実施料率は,2%であると認めるのが相当である。
・・・
そうすると,一審原告は,一審被告から発明の課題を直接には提供されていないものの,着想の契機を提供され,担当業務の延長として,一審被告の研究施設や資機材を用いて本件発明に至ったものということができる。 以上の事情を総合的に考慮すると,本件発明がされるについて一審被告が貢献した程度は,75%であると認めるのが相当である。

◆判決本文

◆1審は下記のような判断です。平成22(ワ)39625
以上の事情を総合的に考慮すると,被告が本件発明を自ら実施することによって向上した歩留り分の半導体装置を含む半導体製品の売上高に占める超過売上高の割合は,20%であると認めるのが相当である。
・・・
以上の事情に,前記(イ)の事情のほか本件に現れた諸事情を総合的に考慮すると,本件発明の想定実施料の率は,2%であると認めるのが相当である。
・・・
以上の事情を総合的に考慮すると,本件発明がされるについて被告が貢献した程度は,75%であると認めるのが相当である。

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平成25(ワ)9255  職務発明対価請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月25日  大阪地方裁判所

 職務発明に基づく報奨金として1億円請求しましたが、当該発明を実施していないとして、請求が棄却されました。
 原告は,実績報奨金として対価を求める職務発明について,別紙1記載の発明(甲1出願)であって,国内外において特許されたものに加え,イオンアシスト法によりハイブリッド層を形成する技術をノウハウとして含む旨を主張する。 前記前提となる事実によれば,被告の新特許規程において実績報奨金の対象となるのは,実体審査を経て登録された特許権が顕著に実施され るか,これに基づいて収入等があった場合とされるから,それ自体特許としては登録されなかった甲1出願や,権利化されずノウハウに止まったにすぎないものは,実績報奨金の根拠にはならない。 原告は,国内で販売されるSFT製品を購入,分析の上,SFT製品が本件職務発明の実施にあたると主張していることから,SFT製品が,国内の特許である本件特許を実施したものと認められるかにつき,まず検討することとする。
・・・
オ 以上,本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書の記載からすると,本件職務発明は,反射防止膜を,本件特許の請求項1で定められた条件下でイオンアシスト法を用いた真空蒸着で形成し,その際,無機物質及び本件特許に所定の有機物質が存在する状態でハイブリッド層を形成することを内容とするものと認められる。
・・・
以上によれば,SFT製品が本件発明を実施したものと認めることはできず,この点についての原告の主張は理由がない。また,外国で販売されているSFT製品が,原告を発明者とする,被告の外国における特許を実施したものと認めるべき証拠もない。

◆判決本文

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平成24(ワ)998等 賃金等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年04月22日 大阪地方裁判所 

 職務発明に基づく報償金の不足分として700万円強の請求が認められました。
 この点,本件譲渡契約では,甲11発明及び甲14発明だけでなく,甲8発明及び甲9発明に係る特許を受ける権利も譲渡対象とされている。甲8発明及び甲9発明に係る特許出願に際しては,被告代表者を発明者とし,被告代表\者個人が出願しているが,仮に,両発明の実質的な発明者が原告であったとしても,両発明に係る特許出願は,既に審査請求をされないままみなし取下げとなっていた上,他に本件譲渡契約の対象となる発明の具体的な主張立証はないから,特許を受ける権利に関する限り,実質的に譲渡の対象となっていたのは,甲11発明及び甲14発明に係る権利であったといえる。一方,本件譲渡契約は,これら特許を受ける権利のみを譲渡の対象とするものではなく,被告が有する取引関係,ノウハウ,備品なども含め,LRPの事業全てを譲渡するものであり(詳細は前提事実記載のとおり),被告はそれらへの対価として5000万円を受領したものである。しかも,本件譲渡契約では,LRP開発の技術面を専ら担い,その技術,ノウハウ等を有する原告が被告から A社 へ移籍することが前提とされていた。このような事情に照らせば,本件譲渡契約において,甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利が重要な位置付けにあったことを考慮しても,5000万円の全額をこれらの特許を受ける権利の譲渡への対価と見ることはできない。さらに,甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利への対価部分に着目しても,そこには独占への対価のみでなく,実施権取得への対価が含まれているため,独占の利益といえる部分はさらに限定される。これらの事情を考慮すれば,本件譲渡契約に基づく対価として被告が受領した5000万円のうち,甲11発明及び甲14発明の相当対価算定の前提となる使用者利益といえるのは,せいぜい2000万円と認めるのが相当である。
イ 使用者の負担,貢献
甲11発明及び甲14発明に関連して使用者である被告の行う負担,貢献を考える。原告は,被告に就職する前から,LRPの研究開発を長年行っており,甲11発明及び甲14発明も従来の研究開発の延長上に位置付けられること(甲4,6,11,14),被告には被告代表者のほか,原告以外の従業員は存在せず,LRPの研究開発は専ら原告が担っていたことが認められる。しかし,原告が自認するとおり,LRPの研究開発には多額の資金を必要とし,原告の自社事業が資金繰りに窮したのも,その研究開発継続のために被告への就職を要したのも,そのためである(甲25,原告)。原告は,自社事業として研究開発を行っていたときに比べれば,被告で使用した研究開発費用は低額であったとも供述するが,被告の資金負担なくしては研究開発を継続できない状況にあったことは否定できない。被告がLRP事業の譲渡を余儀なくされたのも,研究開発に伴う何千万円単位の経済的負担(乙45,原告,弁論の全趣旨)に耐えられなくなったためとうかがわれる。このような事情に照らせば,その研究開発過程において発明された甲11発明及び甲14発明に関連する被告の負担,貢献は決して小さいものであったとはいえず,原告の貢献度に係る上記事情を考慮してもなお,被告の使用者貢献度は90%と認めるのが相当である。
・・・・
原告は,被告との雇用契約締結に当たり,被告代表者との間で,将来的に被告のLRP事業が成功した場合,その利益を2人で分配しようと約束をした旨主張するが,自身の供述,陳述書(甲25)を除いてこれを裏付ける証拠はない。そもそも,原告は,被告との間で雇用関係があったにとどまり,だからこそ,賃金や職務発明対価などの支払を受けていたものである。これらの支払とは別に,原告が,被告の利益に対して直接その分配を請求できる法的地位にあったとは到底いえない。仮に,原告の供述,陳述書(甲25)を前提にしても,原告が被告代表\者と交わした会話というのは,LRP事業が軌道に乗り,事業全体として利益を上げるに至った場合を想定してのことであるが,実際には被告のLRP事業は行き詰まり,本件譲渡契約及びこれに基づく対価の受領も,その救済策として行われたのであるから,利益が分配されるべきとして想定していた状況と異なることは明らかである。
・・・
原告は被告の一従業員ではあるが,被告には他に従業員はおらず,原告の担う開発と発明が被告のLRP事業の中核を成すという特別な立場から,その処遇について,固定的な賃金を月15万円にとどめる一方,LRP事業の業績との連動性が強い職務発明対価としての支払部分を大きくしたと理解することが可能であり(原告が自身を実質的な共同経営者であったと主張するのは,この限りにおいて理解可能\である。),そのような本件における「従業者等の処遇」(特許法35条5項)の特殊性を考慮すれば,1450万円という職務発明対価の既払額が不相当に高額なものとはいえない。

◆判決本文

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平成22(ワ)39625 職務発明補償金請求事件 その他 民事訴訟 平成26年02月27日 東京地方裁判所

 職務発明の報奨金について、既に支払済の分を減額して約29万円の請求が認められました。
職務発明により使用者等が受けるべき利益とは,職務発明の実施や職務発明についての特許を受ける権利等の行使又は処分等により使用者等が得られると客観的に見込まれる利益であって,職務発明と当該利益との間に相当因果関係があるものをいうと解される。具体的には,使用者等において,職務発明を自ら実施することによって得られる利益や,職務発明を他人に実施させることによって得られる実施料,職務発明についての特許を受ける権利等を譲渡することによって得られる譲渡利益等が挙げられる。もっとも,使用者等は,職務発明について従業者等から特許を受ける権利等を承継しなくても,特許法35条1項の趣旨に照らせば,職務発明がされた時から職務発明について通常実施権を有するものと解されるから,使用者等が職務発明を自ら実施することによって得られる利益は,使用者等が通常実施権を行使することによって得られる利益を控除したいわゆる超過利益に限られるというべきである。そして,超過利益は,使用者等が職務発明の実施を法律上又は事実上独占することによって生じるから,補償金支払請求権が生じ得る出願公開の時から特許権の消滅又は処分の時までに生じた利益に限られるものと解される。 そうすると,本件発明は,技術的な優位性に乏しい上,従来技術の問題を完全に解決するものでなく,代替技術も存在したものであるが,半導体製品やその製造方法の改良を受けて,代替技術と共に併用されるようになったから,実施の必要性は相応にあったものということができる。 以上の事情を総合的に考慮すると,被告が本件発明を自ら実施することによって向上した歩留り分の半導体装置を含む半導体製品の売上高に占める超過売上高の割合は,20%であると認めるのが相当である。
(ウ) 想定実施料の額について
証拠(甲1の2,6,15,49の3,乙16,22の2)によれば,本件発明は,表面粗さを調節すれば,離型性や捺印付着性が向上するという副次的効果も有すること,しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明が専らシングルポット方式の樹脂封止金型における問題点を解決するものとして記載され,マルチポット方式の樹脂封止金型における問題点を解決するものとしては明記されていないため,本件発明は,一見するとマルチポット方式の樹脂封止金型には適用されないものと誤解されやすく,実施許諾の申\入れを受けにくいものであったことが認められる。 以上の事情に,前記(イ)の事情のほか本件に現れた諸事情を総合的に考慮すると,本件発明の想定実施料の率は,2%であると認めるのが相当である。そうすると,その額は,次の計算式のとおり,183万7359円となる。
(計算式)4億5933万9961円×0.2×0.02=183万7359円(1円未満切捨て)
イ 実施貢献度から算出した想定実施料について 原告は,被告の評価基準によれば,1等級の実施貢献度を得るには,被告が自ら本件発明を実施することによって得られた3年間の売上高が5億円以上であることが必要であるとして,被告が自ら本件発明を実施することによって得られた売上高は31億5400万円を下らず,想定実施料の額も31億5400万円を下らないと主張する。しかしながら,被告が本件発明を自ら実施することによって得られた売上高は,前記ア(ア)bのとおり,4億5933万9961円であって,これに限られる。原告の上記主張は,採用することができない。
(4) したがって,本件発明により被告が受けるべき利益の額は,183万7359円である。
2 争点2(本件発明がされるについて被告が貢献した程度)について
証拠(甲6,22,37)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告は,昭和58年ころ,EPROM装置の樹脂封止工程において金属細線の変形や断線が多発したことから,その問題を解決するため,樹脂の注入経過を観察していたところ,樹脂の先端に気泡が発生していることを発見し,本件発明を着想したことが認められる。 そうすると,原告は,被告から発明の課題を直接は提供されていないものの,着想の契機を提供され,被告の研究施設や資機材を用いて本件発明に至ったものということができる。以上の事情を総合的に考慮すると,本件発明がされるについて被告が貢献した程度は,75%であると認めるのが相当である。4 以上によれば,相当の対価の額は,次の計算式のとおり,45万9399円となり,支払済みの報奨金16万3000円を控除すれば,未払の相当の対価の額は,29万6399円となる。 (計算式)183万7359円×(1−0.75)=45万9399円

◆判決本文

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平成23(ワ)34450 相応の対価請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年02月14日 東京地方裁判所

元社員がした発明について、実施料が削減コストの1%と判断されました。
 そうすると,これらの事情を踏まえれば,上記コスト削減見込額のうち,実際に実現されたものとみることができる部分(被告が実際に得た利益とみることができる部分)は,その半分程度にとどまるものとみるのが相当である。また,被告の発明規定において,導入による効果に対し5年間一定の対価を支払う旨の実績報奨制度が存在するとされること(弁論の全趣旨)を考慮すれば,本件においても,被告が5年間において得た利益(5年分のコスト削減額)を,「相応の対価」の算定の基礎とするのが相当である。(イ) 前記共販店におけるコスト削減見込額の合計額(前記ウ(ウ)aないしgの合計額)は10億8100万円であるところ,これに2分の1を乗じ,5年分のコスト削減額を算出すると,その額は27億0250万円となり,同額が,「相応の対価」の算定の基礎とすべき金額(原告の提供した知的財産の使用料率を乗じるべき金額)となる。(ウ) この点に関し,原告は,本件システムは被告の共販店全店において導入可能なものであったから,原告の得るべき対価額を計算するに当たっては,実際に本件システムを利用した7店舗におけるコスト削減額ではなく,全共販店において見込まれるコスト削減額を基礎とするべきである旨主張する。しかし,上記7共販店以外の共販店らは,本件システムを実際に利用したものではない上,本件システムは,既にその維持契約を解消されているものであって(前記ウ(オ)),今後,上記7共販店以外の共販店が本件システムを利用してコスト削減を達成する可能性も存在しない。そうすると,全共販店において本件システムによってコスト削減が達成されると仮定した上で,上記コスト削減見込額を対価額算定の基礎とすることは相当ではないというべきであって,この点に関する原告の主張は採用できない。\n
カ 原告の提供した知的財産の使用料率について
本件システムは,サービスL/T基準を指定してシミュレーションを繰り返し行い,コスト比較を行うことができるというものであり(前記(1)ウ(ア)),その内容に照らし,前記1(2)ア(エ)でみたとおり,原告の提供した知見のうち,従来の文献(乙7ないし9)にみられない点が反映されているとみることのできるものである。しかし,前記1(2)イ(ウ)でみたとおり,本件システムは,原告の提供した知見(X理論)をその出発点の一つとし,上記理論をその骨格において反映しているものではあるものの,上記知見を具体化するに当たり,上記知見に相当の変容を加えたものであって,本件システムの基礎となる理論面において,原告が寄与した割合が,被告アフマ部において71%と評価されているものである(甲21の2)ことを考慮しても,本件システムを全体としてみた場合において,原告の貢献した割合を,それほど大きなものとみることはできない。加えて,上記コスト削減は,本件システムを用いたシミュレーションのみによって達成されたものではなく,上記シミュレーション結果を踏まえた上で,適切な方策を検討することによって達成されたものであると認められる。これは,本件システムによるシミュレーションの結果,廃止が適切であるとの結果が出た物流施設についても,営業上の必要性があるとの判断から廃止を見送るとの結論となり,方策としてその廃止を提案するに至らなかったものがあること(前記ウ(ウ)g)からも明らかである。また,本件システムは,原告の提供した知見を,コンピュータ上で動作させることができるよう,コンピュータにもたせるべき機能を検討・構\築し,プログラミングしたものであって,その検討・構築及びプログラミングのために,原告のほか,被告,東京共販及び富士通の従業員が関与し(前記前提事実(3)イ),その要件書の完成まで約2年8か月,ソフトウェアの完成まで約3年8か月を要したものである(前記前提事実(3)ウ)。したがって,本件システムの全体の運用及びそれによる利益の増加という実際面も含めて検討すると,原告の提供した知見が寄与した割合を,大きいものとみることはできないというべきである。他方,原告が合計7件の特許権を取得していること(前記前提事実(4)),原告は平成23年7月31日まで被告の名古屋オフィスにおいて勤務していたものであるが(前記前提事実(1)ア(ア)),原告が,本件システム開発に関与したことにより,被告において特段に有利な処遇を受けた等の事実も見当たらないことも総合的に考慮すれば,原告の提供した知的財産の使用料率としては,1パーセントが相当である。キ したがって,本件システムを用いたシミュレーションにより,被告が5年間において得た利益(前記5年分のコスト削減効果である27億0250万円)に,原告が提供した知的財産の使用料率である1パーセントを乗じた額である2702万5000円が,原告の提供した知的財産の使用許諾料の額(「相応の対価」の額)として相当であると認められる。ク したがって,原告は,被告に対し,原告と被告との間の合意に基づき,2702万5000円の支払を求めることができる。

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