知財みちしるべロゴマーク
知財みちしるべトップページへ

更新メール
購読申し込み
購読中止

知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

発明該当性

令和4(行ケ)10072  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和5年1月12日  知的財産高等裁判所

 審決は、発明該当性違反、実施可能要件違反として拒絶しました。知財高裁も同じ判断です。

本願発明は、前記第2の2のとおりの構成を有するものであって、前記1(1)の【図 1】のような液体を入れた容器中に浮体を浮かべ、同浮体を鉛直方向に大きなもの とすることにより(同【図2】の3参照)、駆動動力が一定であっても、同浮体が上 下運動することによる発生動力を拡大させることで、「発生動力>駆動動力の関係」 が成立するというものである。 そして、本願明細書の段落【0036】によると、本願発明における駆動動力と は、液位を増減させて、浮体を上下運動に導く駆動方法を実行する装置を駆動する 動力のことをいい、電力が主体であるが、流水、圧縮空気、人力等も利用可能であり、具体的な駆動方法としては、浮体(例えば【図3】の6)を浮かべる容器中に\n物体(例えば【図3】の9)を挿入することが想定されているものと認められる。 次に発生動力についてみると、本願明細書の段落【0035】には、「浮体の上下 運動を「発生動力」とする」との記載があり、同段落【0018】〜【0020】 では、容器中への水の注入量が同一である場合の仕事(W)を、(浮体上の錘の重さ) ×(持ち上げられた距離)により計算しているところ、ここでいう仕事(W)は、 浮体の上下運動をいうものと推認されるから、本願発明における発生動力は、錘を 載せた浮体が移動する運動を指していると理解される。 ところで、本願明細書の段落【0018】〜【0020】に3つの例が記載され ているところ、同段落【0021】の記載と併せると、上記3つの例は、「発生動力 >駆動動力の関係」が成立することを説明するために記載されているものと認めら れる。そこで検討するに、上記3つの例においては、注入した水の量は一定である ものの、どのように水を注入するのか、また、その際に、水を注入するために要し た動力、すなわち本願発明における「駆動動力」に相当する液位を増減させる動力 の大きさや、それが、上記3つの例において一定であるかについては本願明細書に 記載がなく、示唆もない。さらには、【図2】の場合に浮体が浮かぶことが可能な程度に、十\分な浮力が生じているかも明らかではない。そしてその他の本願明細書の記載を総合しても、当業者が、どのようにして、本願発明の「発生動力>駆動動力 の関係」が成立する動力発生装置を製造することができるか理解できるとはいえな い。 そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施するこ とができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。\n

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 発明該当性
 >> 記載要件
 >> 実施可能要件
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP

令和3(行ケ)10156  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年9月29日  知的財産高等裁判所

発電方法の発明について、実施可能要件を満たしていないとした審決が維持されました。個人発明です。拒絶理由通知の段階では発明該当性も指摘されていました。\n公開公報は下記です。

◆特願2015-176188

ア 「下方導水路250内の液体がその管内を落下し、その落下により揚水 路200の頂上部が真空域に保たれ、その結果、大気圧によって貯液部1 00の液体が揚水路200に揚水される」との点について
(ア) 本願発明の特許請求の範囲(請求項1)には、「少なくとも下部が液 体で満たされた貯液部(100)と、下部が前記貯液部(100)の前 記液体の液面下部に沈み、上部が該液面上部に出る様に設置され、上端 部近傍の前記液面より所定の高さ位置に液取り出し口が設けられた揚 水路(200)と」、「発電開始前に前記圧縮気体貯蔵タンク(600) に圧縮した気体を貯蔵するとともに、前記ゲート(300)を閉めて前 記揚水路(200)および前記下方導水路(250)内に前記液体を充 填しておき、発電時に前記ゲート(300)を開けて」との記載がある。 また、本願明細書には、「本システムの起動前に不図示の揚水ポンプで水 槽の水を揚水棟200の中全てを満たす様に揚水して揚水棟内を真空 域にしている」との記載(【0040】)がある。 これらの記載によれば、本願発明において、発電の開始前には、揚水 路200等に存在する液体(以下では、「液体」は「水」であるとする。) は、「一端」が貯液部100の水面下にあり、そこから、揚水路200、 (実施例【0038】では上部導水路210を介し)下方導水路250 を経て、「他端」はゲート300まで存在しており、揚水路200等は水 で満たされていることが理解できる。また、本願明細書の「大気圧室4 00の水面は下部導水路260の下部より低く保つ」との記載(【004 1】)から、上記水の「一端」を上流側、「他端」を下流側とすると、ゲ ート300よりも下流側の管内には水が存在しないことが理解できる。
(イ) 前記(ア)を踏まえ、ゲート300を開けたときの前記(ア)の水(「一 端」が貯液部100の水面下にあり、そこから、揚水路200、(上部導 水路210を介し)下方導水路250を経て、「他端」がゲート300ま で存在する水)の挙動を検討する。 揚水路200内にある水と下方導水路250内にある水は、その上部 が(実施例(【0038】)では、上部導水路210内の水を介して)つ ながっている。
そして、乙2に示されている考え方(被告はこれを「サイフォンの原 理」として説明し、原告もその説明を争っていない。)によれば、揚水路 200の下部が存する貯液部100の水面(図1の水槽100の水面) には、大気圧(その圧力を「A」とする。)と貯液部100の水面から揚 水路200の頂部まで存在する水の圧力(水の重さによる圧力。その圧 力を「B」とする。)がかかる。他方、下方導水路250の下端には、水 平導水路260内の平均気圧(その圧力を「C」とする。)と下方導水路 250の下端から頂部までに存在する水の圧力(水の重さによる圧力。 その圧力を「D」とする。)が働く。
ここで、本願発明では、「発電時に前記ゲート(300)を開け」た際 に、「前記圧縮気体貯蔵タンク(600)に貯蔵されている圧縮気体」が 「前記水平導水路(260)から前記集液部(400)に射出される」 ため、水平導水路260内の平均気圧(C)は大気圧(A)より大きく なる(C>A)。また、水による圧力については、貯液部100の水面か ら揚水路200の頂部までの長さの方が下方導水路250の下端から頂 部までの長さよりも長いから、貯液部100の水面から揚水路200の 頂部まで存在する水の圧力の方が大きくなる(B>D)。
そうすると、水を持ち上げる向きを正の向きとして、揚水路200の 下部が存する貯液部100の水面に働く圧力(A−B)と、下方導水路 250の下端に働く圧力(C−D)とを比較すると、後者の方が大きい から、ゲート300を開けると、下方導水路250内の水は、一旦上方 に持ち上がった後、揚水路200に流れ落ちていくものと考えられる。 なお、ゲート300を開けた際に、水平導水路260及び大気室40 0から空気が下方導水路250内に入り込むと、下方導水路250内の ゲート300付近にあった水が水平導水路260側へ落下することがあ り得るが、これは、入り込んだ上記空気と上記水が入れ替わることによ って生じる現象であって、このことによって、下方導水路250や揚水 路200に真空域が生じることはなく、貯液部100から揚水路200 に向かって水が引き揚げられるといった現象も生じないものと理解され る。したがって、本願明細書の記載から、原告が主張する「発電時に、重 力落下エネルギーの作用によって下方導水路250内の液体がその管内 を落下し、その落下により揚水路200の頂上部が真空域に保たれ、そ の結果、大気圧によって貯液部100の液体が揚水路200に揚水され る」ことが起こることを理解することはできない。
イ 「大気圧室400内において大気圧より低い低圧力空間が生成される」 との点について
原告は、本願発明では発電時、圧縮気体供給路670の出口より集液部 (大気圧室)400へ圧縮気体を射出することで、大気圧室400内にお いて、その圧縮気体の体積分の大気圧の気体が押しのけられて、大気圧よ り低い低圧力空間が生成されると主張し、更にその説明として、圧縮空気 の保有エネルギーが、大気圧の気体を押しのけるためのエネルギーよりも 大きいため、圧縮空気を大気圧室400へ連続的に供給することによって、 大気圧室400内の空気を常時押しのけることが可能となる旨主張する。しかしながら、本願明細書には、大気圧より高い圧力を有する圧縮気体\nを大気圧に維持された空間に放出することによって、当該空間に大気圧よ り低い低圧力空間が形成されることについての記載はなく、また、これを 裏付ける技術常識についての立証もない。 さらに、前記アのとおり、ゲート300を開けた場合、下方導水路25 0内の液体は、水平導水路260の方向に流れないものと考えられるとこ ろ、原告が主張する大気圧室400内の低圧力空間が、下方導水路250 内の液体を、水平導水路260を通って大気室400の方向に引き出すほ どの力を生じさせることを認めるに足りる証拠もない。 そうすると、本願明細書の記載から、原告が主張する「大気圧室400 内において大気圧より低い低圧力空間が生成される」ことを理解すること はできず、さらに、その低圧力空間の作用によって下方導水路250内の 液体がその管内を落下することが生じるものと理解することもできない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 発明該当性
 >> 記載要件
 >> サポート要件
 >> 実施可能要件
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP