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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

発明該当性

平成26(行ケ)10014  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成26年9月24日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、29条柱書違反とした審決が維持されました。コンピュータ関連発明について自然法則の利用性が争われたのは、久しぶりですね。
そうすると,請求項に記載された特許を受けようとする発明が,特許法2条1項に規定する「発明」といえるか否かは,前提とする技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構\成から導かれる効果等の技術的意義に照らし,全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するか否かによって判断すべきものである。 そして,上記のとおり「発明」が「自然法則を利用した」技術的思想の創作であることからすれば,単なる抽象的な概念や人為的な取決めそれ自体は,自然界の現象や秩序について成立している科学的法則とはいえず,また,科学的法則を何ら利用するものではないから,「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当しないことは明らかである。また,現代社会においては,コンピュータやこれに関連する記録媒体等が広く普及しているが,仮に,これらの抽象的な概念や人為的な取決めについて,単に一般的なコンピュータ等の機能を利用してデータを記録し,表\示するなどの内容を付加するだけにすぎない場合も,「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しないというべきである。 そこで,まず,本件補正発明が前提としている課題についてみると,前記1ウの本願明細書の「従来技術では,文字を組み合わせて意味を持つ単語を生成する。単語は言語の中にあり,言語の中だけでその単語の意味を直接持つ。意味を直接持つ単語で物や,性質,特徴,意味,概念などの属性という情報を表わす。物を表\わす単語と属性を表わす単語とから成る単語の並びを作り,単語の並びで物の性質や物と物との関係を表\わす。複数の単語の並びを蓄積し,蓄積された単語の並びを知識としていた。この方法では,単語そのものの意味を持つ単語だけを使って知識を構築している。」(段落【0025】),「本発明は,上記の課題に鑑みてなされたものであり,物や属性の意味内容を言語に依存せずに表\現することのできる知識ベースシステムを提供することが目的とする。」(段落【0026】)との記載によれば,従来技術では言語(単語)に依存して知識のデータベ ース等を構築し,情報処理をしていたところ,本件補正発明では言語に依存せずに知識のデータベース等を構\築し,情報処理をするという目的を有していることは,一応理解することができる。
しかしながら,上記記載からは,従来技術において,知識のデータベース等が言語に依存していることによって生じている技術的課題は明らかではない。本願明細書の【背景技術】(段落【0002】ないし【段落0024】)の記載をみても,ニューラルネットワーク,人工知能,プログラミング言語,コンピュータ,インターネットなど極めて多様な内容が記載されているものの,知識に関するデータベースが言語に依存していることでどのような課題が生じているかについては,「情報を知識として蓄積する方法や,知識として記録された情報をうまく使う方法が開発できていない。」(段落【0005】)などの抽象的な記載があるにすぎず,「情報を知識として蓄積する方法」が具体的にどのような意味を有しているのか(上記段落【0025】の記載等によれば,従来技術においても情報を知識として蓄積していると考えられる。),「知識として記録された情報をうまく使う方法」において,うまく使うとはどのような意味であるのかについては明らかではない。また,PLOROGというプログラミング言語について,「子→父→祖父のような3階層以上の関係を直接的に表\わすことはできない。」(段落【0018】),「この技術で物と属性と関係とをデータベースとして保持できるが,物や属性や関係を表わす単語の並びを保持しているにすぎない。単語の並びで物の性質である属性を表\現し,単語の並びで関連を表現している。属性も関係も,単語の並びという同じ方法で表\現されている。情報を体系化したものを知識とすると,情報を現す単語を幾つか並べたものを複数個保持し,保持された単語の並びを知識としている。この方法では,3階層以上の物同士の関連を直接表わす情報は保持されていない。」(段落【0020】)などの\n記載もあるが,これらの記載をみても,言語に依存したデータベース全般において,3階層以上の物同士の関連を直接表す方法が存在するか否かについては必ずしも明らかではないし,本件補正発明において,このような関係を直接表\すことができるか否かについても不明である。
・・・・
以上を総合して検討すれば,本件補正発明については,そもそも前提としている課題の位置付けが必ずしも明らかではなく,技術的手段の構成としても,専ら概念の整理,データベース等の構\造の定義という抽象的な概念ないしそれに基づく人為的な取決めに止まるものであり,導かれる効果についてみても,自ら定義した構造でデータを保持するという本件補正発明の技術的手段の構\成以上の意味は示されていない。また,その構成のうち,コンピュータ等を利用する部分についてみても,単に一般的なコンピュータ等の機能\を利用するという程度の内容に止まっている。 そうすると,本件補正発明の技術的意義としては,専ら概念の整理,データベース等の構造の定義という抽象的な概念ないし人為的な取決めの域を出ないものであって,全体としてみて,「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するとは認められない。

◆判決本文
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