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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商品形態

平成22(ワ)9684 不正競争行為差止等 平成23年10月03日 大阪地方裁判所

 シリコン製のざるについて、不競法の商品形態に該当するとして、3年間の販売数に対して、損害賠償が認められました。原告の単位数利益*被告の販売数に基づき、販売不可事情を考慮して損害額が決定されました。
 法2条4項によれば,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう被告は,原告商品の使用時形態は需要者が通常の用法に従った使用に際して認識することができる形状には当たらないとして,その他のざるとしての形態的特徴は,いずれも乙2ないし8に記載された原告商品に先行するざる又は水切りざるが備えている構成であるか又は周知の形態若しくはざる一般にみられるありふれた形態であると主張する。しかしながら,原告商品の使用時形態それ自体が,法2条4項により保護される商品の形態(形状)であるかはおいても,使用時形態のように変形自在であるという原告商品の特性は,少なくとも需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる質感等に反映されることは明らかであり,法2条1項3号により保護されるべき商品の形態として十\分に考慮されるべきものである。被告らが主張する上記各書証に記載されたざる等のうち,乙2に記載されたシラスティック製水切りボールはシリコンゴム材料を素材とするものであるが,取っ手部分があり,ざるの部分にもリムがないなど,原告商品の形態と大きく異なるものである。乙3に記載された合成樹脂製ざるについても,二個のざる体をセットにしたものであり,原告商品のように変形自在にしたものでもなく,質感についても大きく異なる。また,乙4,5,7及び8に記載されたざるについても,原告商品のように変形自在のものはない。被告らは,原告商品の形態は,パヴォーニ商品(乙45ないし48,53)と実質的に同一の形態であるとも主張する。確かに,パヴォーニ商品は,多少の柔軟性があることが認められるものの,原告商品と比べるとかなり肉厚で柔軟性に乏しく,原告商品と異なり,折りたたんだり,絞り込んだりすることはおよそできないものであって,形態の大きく異なるものであるというほかない。他に,原告商品と同様に変形自在であって,しかも原告商品と同一の形態の先行商品が存在することを認めるに足りる証拠はない。なお,乙6には,網袋に野菜などを入れ,容器自体を絞り込む使用形態が開示されているが(乙6の図3),この網袋状の容器は,ざるに似た形状をしているものの,布製の袋であり,原告商品の材質とは全く異なる。また,乙6の容器は,単体のままではその形状を維持することはできず,上記袋に野菜を入れる場合は,袋の上周縁に固定具を備え,硬質ボールの縁に固定具を掛け,ボールの内側に上記袋を入れて使用することが予定されており,原告商品の形態とは異なる。(2) 技術的構成に由来する必然的な形態被告らは,原告商品の形態は,シリコン素材を使用したという技術的構\成から必然的に由来するものであり,商品の機能を発揮するために不可欠な形態であるとも主張する。しかしながら,ざるの素材を変形自在なものにしたとしても,ざるとしての基本的形態だけを取っても,材質の選択,肉厚幅,底面突起の数,底面突起の有無及び数,表\面上の穴の大きさ及び数など,その形態選択には無数の選択肢があることからすれば,原告商品の形態を全体として評価したときに,それが商品の機能を発揮するために不可欠な形態のものであるということはできない。
・・・・
 平成20年8月から平成21年8月までの13か月間における原告商品の譲渡数量は合計5万2477個であるのに対し,これと時期を接した期間における被告ら商品の譲渡数量が合計39万7348個と約8倍であることは当事者間で争いがない。また,原告商品の小売単価が2835円である(税込み,甲15の5・7〜10)のに対し,被告ら商品の小売単価は853円(税込み,甲50)ないし980円(税込み,甲49)であることが認められる。このように近接した期間における譲渡数量において約8倍もの差があることや,小売単価をみても約3倍の価格差があることなどからすると,譲渡数量のうち少なくとも2分の1に相当する数量を被侵害者である原告が販売することができないとする事情があったと認めるのが相当である。

◆判決本文

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 >> 102条3項
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平成22(ワ)2723 損害賠償請求事件 平成23年08月25日 大阪地方裁判所 

 商品形態模倣(不競法2条1項3号)が認められました。損害額も原告の1台あたりの利益*被告の実施数および販売不可事情から決定されました。
 研ぎ器には,多種多様な形態の刃部及び柄部並びにその組合せが考えられ,実際にも,多種多様な形態の商品が市場に流通している(甲43,44,46,甲47の2・3,乙6の1・2,乙16の1・2の別紙,乙21)。そして,各研ぎ器は,いずれも,研ぎ器としての機能が確保されているからこそ市場に流通していると考えられるのであって,被告商品の形態のみが,商品の機能\を確保するために不可欠な形態であるということはできない。なお,被告は,原告商品の形態は,ありふれたものであると主張するが,証拠上,原告商品の販売開始時において,原告商品の形態がありふれたものであった事実は窺われない。・・・・
 被告は,原告商品と被告商品とは大きな価格差があるところ,包丁研ぎ器は生活必需品ではなく,価格差が需要量に決定的影響を与えるから,原告は被告商品の譲渡数量分の原告商品を販売することができなかったと主張するので,この点について検討する。被告商品の小売価格は,税込み940円から2079円であるところ(甲24の1〜11,甲28の1〜3,甲29,30),原告商品の小売価格は,税込み2394円から3990円である(甲23の1〜4)。したがって,被告商品の販売価格帯は,原告商品の販売価格帯の4割ないし5割程度といえる。また,原告商品の競合品(被告商品以外で,原告商品の形態を模倣したと思われる商品は除く。)も相当数販売されていたことが窺われる(前記2)。一方,原告商品は,研ぎ器において,多種多様な形態の商品が存在し(前記2),原告商品とは異なる形態の売れ筋商品も存在した中で(前記1(1)ア(ア)),前記アのとおり3年間で約20万個を販売している。特に,被告商品の販売先の1つである株式会社セシールについては,原告商品の販売先でもあったところ,安価な被告商品に乗り換えられたことが認められる(甲44)。このような市場の状態を前提とすれば,上記程度の価格差や競合品の存在をもって,「販売することができないとする事情」を認めることができるが,これを過大に評価することはできず,多くともその3割程度を越えることはないというべきである。
(3) 損害額
 以上のとおりであるから,原告の損害は,被告商品の譲渡数量9万7808個(前記(1))に,販売することができないとする事情を考慮して,7割を乗じた数量に,原告商品の単位数量当たりの利益742.5円(前記(2))を乗じた5083万5708円と認められる。

◆判決本文

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平成22(ワ)15903 損害賠償請求事件 平成23年06月17日 東京地方裁判所 

 歩数計について、不競法2条1項3号の商品形態模倣で損害賠償が認められました。
 原告商品(検甲1)の形態と被告商品(検甲2)の形態とを対比すると,両者は,「全体を四隅が丸い薄厚長方板状ケースにしたデザインである」点(A,A’),「ケースの周全体にR(丸み)を持たせている」点(B,B’),「外装の上側(上ケース)は,製品内側面を黒色印刷した透明のプラスチック素材を用い,外装の下側(下ケース)は,黒色のプラスチック素材を用いている」点(C,C’),「厚みとなる四周側面全周をシルバーのベルトが回り,四隅の一つにストラップ挿入孔が形成されている」点(D,D’),「正面左方に液晶表示部が設けられ,該液晶表\\示部は3画面に分割表示している」点(E,E’),「正面右方には,中央大きめのシルバーのボタンと,同中央ボタンから三方に放射状に並べた三つの楕円形のシルバーのボタンが配され,該三つの楕円形ボタンの周囲には,隅丸矩形の稜線が表\\れる凹陥部が設けられている」点(F,F’)といった基本的な構成において共通し,全体サイズ(幅×高さ×厚さ)及び液晶表\\示部のサイズ(幅*高さ)も,被告商品が「0〜2mmの範囲内」で大きいだけで(A,A’,E,E’),ほとんど同一であることによれば,被告商品と原告商品は,商品全体の形態が酷似し,その形態が実質的に同一であるものと認められる。

◆判決本文

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平成21(ワ)26662 不正競争行為差止等請求事件 平成23年04月26日 東京地方裁判所

 不競法2条1項3号の商品形態模倣は認められませんでした。
 このように,被告商品は,総柄のデニムパンツの図柄に米国の交通標識様のものを用い,この図柄を不規則に隙間なく重なり合わせて配するという,商品の形態の特徴の一部について,原告商品と共通する点があるものの,スマイリーマークの図柄の有無,パンツのシルエット,オーバーダイ加工の採否という特徴については,共通するものではなく,交通標識様の図柄の大きさや,ボタンやリベットの色彩等についても,原告商品と相違する。そして,これらの相違点が存在することにより,被告商品の形態は,全体として,需要者に対して原告商品とかなり異なる印象を与えるものと認められる。また,証拠(乙3,4,5の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,総柄のデニムパンツは,原告商品以外にも,ヒステリックグラマーやオゾンコミュニティというブランドによって,原告商品の発売される以前である平成12年ころに販売されていたこと, パンツの表面に,円形,三角形,四角形及び六角形の交通標識様の図柄を不規則に隙間なく重なり合わせて配するというデザインも,原告商品の製造,販売に先立ち,ジェレミースコットというブランドによって,世界的に著名なコレクションの一つである2008年春夏のパリコレクションにおいて発表\され(ただし,同ブランドの交通標識様の図柄は,原告商品よりもカラフルなものである。),日本にも紹介されていたこと,が認められるものであり,原告商品の特徴とされる総柄のデニムパンツであるという点や,米国の交通標識を想起させる図柄をパンツの表面に不規則に隙間なく重なり合って配するというデザイン自体は,いずれも,先行商品にもみられるものであって,原告商品独自のものではないと認められる。上記の事情等を総合的に考慮すると,原告商品の形態と被告商品の形態とは,これらが実質的に同一といえるほどに酷似していると認めることはできないというべきである。したがって,被告商品の形態が原告商品の形態と実質的に同一であるということはできない。\n

◆判決本文

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平成21(ワ)17435 売買代金請求事件 平成23年03月31日 東京地方裁判所

 OEM供給業者の製造した商品が、「他人の商品」(不競法2条1項3号)に該当するかが争われました。裁判所は該当すると判断しました。
 また,原告は,被告商品1の開発において,OEM製造供給業として,「生地リスク」(取引先業者から発注があった場合に速やかに商品化を実現できるように,あらかじめ,取引先業者が欲するであろう生地を予測して,当該生地を大量に購入し,提案した生地による商品開発において,最終的に商品化に至らなかった場合に負担する生地代金相当額のリスク)を負い,被告はかかる原告の生地リスクの下で商品開発を行うことができるというメリットを享受していること,原告は,生地の事前購入,生地提案,サンプルの製造,受注後の協力工場への製造依頼,納品,その他被告商品1の商品化において必要不可欠な役割を果たしており,被告の独力により被告商品1を製造しているとはいえないことからすると,原告は,被告商品1の開発において,被告の共同開発者として,費用と労力を負担しているといえるから,被告商品1は,原告にとって「他人の商品」(不正競争防止法2条1項3号)に該当しない旨主張する。しかし,被告商品1の生地の代金は製造代金に含まれており,原告が事前に当該生地を購入し,原告主張の「生地リスク」を負っているからといって原告が被告商品1の開発費用を負担したことにはならない。また,被告商品1のデザインは被告が独自に行い,原告は被告の指示に従って被告商品1を製造したにすぎず,そのデザインの創作に関与したものとはいえない。この点について証人A1の供述中には,2種類の生地の組合せが売れるということで,シフォンとサテンの2種類の生地を1枚の台紙に貼\ったものを被告に送付して生地の提案をした旨の供述部分があり,これと同旨の陳述書(甲24)の記載部分がある。しかし,証人C1及び証人B1は,原告から送付のあったのは1枚の台紙に生地のサンプルが1枚付いたもの(生地スワッチ)であり,1枚の台紙に2種類の生地を貼ったものが送付されたことはない旨供述していること,原告が被告に対し2種類の生地を1枚の台紙に貼\った生地サンプルを作成し,これを送付したことを客観的に裏付ける証拠は提出されていないことに照らし,証人A1の上記供述部分及び上記陳述書の記載部分は措信することはできない。さらに,原告による被告商品1の製造及び被告への納品は,被告との間の本件製造物供給契約に基づくものであり,原告は,その製造及び納品の対価として,被告商品1の製造代金を被告に請求できることに照らすと,原告が被告商品1の製造及び納品を行ったからといって,被告商品1の開発について被告と共同して費用と労力を負担しているとはいえない。したがって,被告商品1が原告にとって「他人の商品」に該当しないとの原告の上記主張は,理由がない。
(4) 小括
以上によれば,第1商品は被告商品1に依拠して作成された実質的に同一の形態の商品であると認められるから,第1商品は,被告商品1の形態を模倣した商品に該当するというべきである。したがって,原告のアルファベット社に対する第1商品の販売は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当する。

◆判決本文

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平成20(ワ)26698 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成23年02月25日 東京地方裁判所

 不競法2条1項3号の商品形態の模倣かが争われました。裁判所は、販売日から3年経過しているとして請求を棄却しました。
 原告装置2の形態は,原告装置1の形態と実質的に同一であるというべきであるから,原告装置1が最初に販売された平成18年11月をもって,原告装置2が「日本国内において最初に販売された」日であると解すべきである。そうすると,原告装置2についても,本件口頭弁論が終結された日(平成22年12月21日)の時点で,3年の保護期間が既に経過していたことになるから,原告は,原告装置2の形態を模倣した商品の譲渡等の行為について,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求権を行使することはできない。オ 仮に,原告装置2が原告装置1の単なる後継機種ではなく,両者の形態が相違するものであるとみるのであれば,原告が,原告装置2の商品形態として,その模倣について不正競争防止法2条1項3号による保護を求め得るのは,原告装置2の形態のうち,原告装置1の形態と実質的に異なる部分に基礎を置くものでなければならないというべきである。前記認定のとおり,原告装置2の形態と原告装置1の形態とが相違するのは,操作パネルの位置・形状,カップ・ホースユニットのホース接続口の位置,洗浄水タンクと汚物タンクの収納位置といった本体の部分的な形態にすぎず,これらの点は,他社の同種商品においても適宜用いられるありふれた形態にすぎないというべきであるか(甲10,乙20ないし22),あるいは,そうでなくても,被告装置においては,操作パネルの位置・形状,カップ・ホースユニットのホース接続口の位置,洗浄水タンクと汚物タンクの収納位置は,いずれも原告装置2とは異なるから,両者が実質的に同一の形態であるということはできない(検証1,2)。(4)したがって,いずれにせよ,被告が不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為を行ったことを理由として,同法3条1項に基づき,被告装置の譲渡等の差止めを求め,同条2項に基づき,被告装置の廃棄を求める原告の請求は理由がない。

◆判決本文

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