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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商品形態

平成28(ワ)298等  特許権侵害差止等請求事件,債務不存在確認等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年4月20日  大阪地方裁判所(21民)

 特許権侵害事件で、新規性喪失の例外主張における証明書では提出されていなかった証拠がある(関連したものでない)として、無効(特104-3)と判断されました。商品形態模倣(不競法2条1項3号)も否定されました。よって、取引先への告知は、営業誹謗行為(不競法2条1項15号)が成立すると判断されました。
 1 争点2(本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか)について
(1) 証拠(乙2の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,本件発明の実施品で ある原告製品は,本件発明の原出願である実用新案の出願日(平成26年11月2 6日)より前である同年9月22日以前に,Q2コープ連合に対して納品され,ま たQ2コープ連合においてそのチラシに掲載されて販売され,さらに同年10月1 0日には,被告において市場で取得された事実が認められるから,本件発明は,出 願前に日本国内において公然実施された (特許法29条1項2号)というべきこと になる。
(2) 上記(1)の事由は,本件特許を特許無効審判により無効とすべき事由となるが, 原告は,本件発明の原出願において原告が行った手続により,特許法30条2項に 定める新規性喪失の例外が認められる旨主張する。 そこで検討するに,特許法30条2項による新規性喪失の例外が認められるため には,同条3項により定める,同法29条1項各号のいずれかに該当するに至った 発明が,同法30条2項の規定を受けることができる発明であることを証明する書 面(以下「証明書」という。)を提出する必要があるところ,証拠(甲3)によれば, 原告は,本件発明の原出願(実願2014−6265,出願日:同年11月26日) の手続において,同年12月2日,実用新案法11条,特許法30条2項に定める 新規性喪失の例外の適用を受けるための証明書を提出した事実が認められる(特許 法46条の2,44条4項の規定により,特許出願と同時に提出されたものとみな される。)。 しかし,同証明書は,公開の事実として,平成26年6月2日,原告を公開者, Q1生活協同組合を販売した場所とし,原告が一般消費者にQ1生活協同組合のチ ラシ記載の「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:「ドラム式洗濯機の毛ゴ ミフィルター」)を販売した事実を記載しているだけであって,上記Q2コープ連合 における販売の事実については記載されていないものである。 この点,原告は,上記Q2コープ連合における販売につき,実質的に同一の原告 製品についての,日本生活協同組合連合会の傘下の生活協同組合を通しての一連の 販売行為であるから,新規性喪失の例外規定の適用を受けるために手続を行った販 売行為と実質的に同一の範疇にある密接に関連するものであり,原告が提出した上 記証明書により要件を満たし,特許法30条2項の適用を受ける旨主張する。 しかし,同項が,新規性喪失の例外を認める手続として特に定められたものであ ることからすると,権利者の行為に起因して公開された発明が複数存在するような 場合には,本来,それぞれにつき同項の適用を受ける手続を行う必要があるが,手 続を行った発明の公開行為と実質的に同一とみることができるような密接に関連す る公開行為によって公開された場合については,別個の手続を要することなく同項 の適用を受けることができるものと解するのが相当であるところ,これにより本件 についてみると,証拠(乙16の1,2)によれば,Q2コープ連合及びQ1生活 協同組合は,いずれも日本生活協同組合連合会の傘下にあるが,それぞれ別個の法 人格を有し,販売地域が異なっているばかりでなく,それぞれが異なる商品を取り 扱っていることが認められる。すなわち,上記証明書に記載された原告のQ1生活 協同組合における販売行為とQ2コープ連合における販売行為とは,実質的に同一 の販売行為とみることができるような密接に関連するものであるということはでき ず,そうであれば,同項により上記Q1生活協同組合における販売行為についての 証明書に記載されたものとみることはできないことになる。
・・・・
上記検討した両製品において同一といえる形態的特徴のうち,本体部の形態 が長方形であるという点は,ドラム式洗濯機のリントフィルタに装着して用いる商 品である原告製品及び被告製品にとっては,リントフィルタの内面に沿って装着す るために必然的にもたらされる形態であるといえ,したがってこれは,その機能を\n確保するために不可欠なことであると認められる。また,もう一つの同一といえる 形態的特徴である本体部にスリットが存在するという点も,本件発明の効果をもた らすことに直接関係した形態であることからすると(上記第2の2(2)(10)),これも 両製品に共通する機能を確保するために不可欠な形態であるといえる。\nしたがって,これらの基本的形態で両製品の形態の同一性が認められたとしても, これによって両製品の形態が実質的に同一ということはできないというべきである (なお被告は,これらの形態の特徴をとらえて原告製品はありふた形態であって保 護されないと主張するが,原告製品が市販される以前に,同種の製品が市場に存し た事実は認められないから,商品の形態がありふれていることで保護されないわけ ではなく,機能確保に不可欠な形態として保護の限界が検討されるべきである。)。\n他方,上記検討したとおり,原告製品と被告製品は,機能確保のため必要とされ\nる形態的特徴以外の部分の細部における特徴的な形態というべき部分において形態 の差異が多数あるというのであるから,両製品の形態が酷似しているとはおよそい えず,結局,原告製品と被告製品は形態が実質的に同一であるとはいえないという べきである。
(5) これに対して原告は,両製品は主として通信販売されており,需要者が商品 を手に取って詳細に観察することがなければ両者の違いを認識し得ないから,両製 品の形態の差異は微細な差異で形態が実質的に同一であるということを妨げないよ うに主張するが,不正競争防止法2条4項に「商品の形態」は「需要者が通常の用 法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の 形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう。」と定義されてい ることに明らかなように,本件で問題とすべき原告製品及び被告製品の形態とは, 上記検討したような包装袋から取り出された商品そのものの形態であって,これと 異なる前提に立つ原告の主張は失当である。 さらに,原告は,両製品の包装におけるチラシが共通することも指摘するが,原 告製品及び被告製品は,包装と一体となって切り離し得ないものではないから,原 告が指摘する包装のチラシは「商品の形態」とはいえず,原告の指摘は当たらない。
(6) 以上からすると,原告製品と被告製品とは,その形態が実質的に同一とはい えないから,被告製品は原告製品を模倣した商品とはいえず,被告が不正競争防止 法2条1項3号の不正競争をしたことを前提とする原告の請求はその余の判断に及 ぶまでもなく理由がない。
・・・・
(1) 原告は,平成27年6月11日頃,被告の取引先であるP1に対し,被告製 品は原告製品の形態を模倣した商品であり被告製品を販売する行為は不正競争防止 法2条1項3号に該当するとして,被告製品の販売の停止及び廃棄を求める内容を 記載した「申入書」と題する書面を内容証明郵便で送付している(本件告知行為)。\n上記2のとおり,被告製品は原告製品の模倣商品でないから,上記「申入書」の\n記載内容は虚偽の事実であるとともに,被告の営業上の信用を害する事実であると いうべきである。そして,原告と被告は競争関係にあるから,本件告知行為は,「競 争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知」する行為といえ,不 正競争防止法2条1項15号所定の不正競争に該当する。
(2) そのほか被告は,原告がした不正競争防止法2条1項15号該当の不正競争 行為として,原告が生活協同組合に対して被告の権利侵害の事実を理由として被告 製品の取扱いをすべきでない旨申し入れた旨主張する。\n確かに証拠(乙14の1ないし3,乙15,乙30)によれば,被告は,P2か ら被告製品の販売を中止された事実,及び,P2が被告に対し,被告製品の販売を 中止する理由として,原告の営業担当者から被告製品の販売企画を中止した方がよ いとの要望を受けたという生活協同組合のバイヤーから,そのことを理由に被告製 品の差替えの要望を受けたことを挙げていたことが認められる。 したがって,これらの事実によれば,P2における被告製品の販売中止が,原告 の営業担当の従業員がもたらした行為に起因することが認められそうであるが,前 掲証拠によれば,原告の営業担当者が生活協同組合のバイヤーに伝えた内容という のは「企画を中止した方が良い的な要望」というにとどまるというのであって,そ れだけでは原告が被告の権利を侵害したといった虚偽の事実が告知されたと認める に足りないものである。また,そもそも原告の営業担当の従業員が何らかの接触を したという生活協同組合のバイヤーは,どの生活協同組合であるかを含めて特定さ れておらず,その生活協同組合のバイヤーが実際に原告の営業担当の従業員から直 接働きかけを受けたのかを確かめようがないものである。これらのことからすれば, 原告の営業担当者の行為に起因してP2が被告製品の販売を中止したとしても,そ れをもって原告の不正競争行為を認定することは困難であるといわなければならな い。
(3) したがって,被告主張に係る原告がした不正競争防止法2条1項15号該当 の不正競争については,原告が,平成27年6月11日頃,被告の取引先であるP 1に対し,被告製品は原告製品の形態を模倣した商品であり被告製品を販売する行 為は不正競争防止法2条1項3号に該当する旨記載した「申入書」と題する書面を\n内容証明郵便で送付した事実の限度で認めるのが相当であって,それ以外の生活協 同組合に対する関係では同号の不正競争のみならず不法行為を構成する事実は認め\nられない。

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平成27(ワ)21853  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年2月24日  東京地方裁判所

 3号の商品形態模倣における3年の開始日について、第1世代の商品を販売した日とすると判断されました。
このことからすれば,不競法19条1項5号イの「最初に販売された日」 に係る「商品」とは,保護を求める商品の形態を具備した最初の商品を意味 するのであって,このような商品の形態を具備しつつ若干の変更を加えた後 続商品を意味するものではないと解すべきである。
(2) これを本件についてみるに,原告は,原告テントの第2世代を第1世代と 比較すると,1)高さ調節を変更した点,2)シルバーコーティングによるUV カット加工を施した点,3)支柱を覆う細長い天幕のデザインを変更した点, 4)収納バッグの色を変更した点,5)耐水圧及びシームシーリングを施した点 で異なるから,上記「商品」とは第2世代の原告テントを指し,その販売開 始日である平成25年10月15日を「最初に販売された日」とすべき旨主 張する。 しかし,本件全証拠を精査しても,そもそも原告テントに第1世代と第2 世代があり,第2世代は第1世代と上記1)ないし5)の全ての点で異なってい ることを示すに足りる的確な証拠は見当たらない。 この点に関して原告は,「タープテント史」と題する書面(甲13の1) にその旨記載されているかのように主張するが,原告作成の証拠説明書3に よれば,同書面は本訴係属中の平成27年12月に原告自身によって作成さ れたものというのであって,その形式に照らし,証明力は極めて低いといわ ざるを得ない上,その内容をみても,「第1世代」や「第2世代」という用 語は直接的には記載されていない。しかも,同書面には,原告テントについ て,高さ調節の変更(上記1))を平成25年10月15日生産開始分から施 した旨の記載があり,この点は原告の主張とも符合しているものの,他方で, シルバーコーティングによるUVカット加工(上記2)),支柱を覆う細長い 天幕のデザインの変更(上記3))及び耐水圧(上記5))を施したのは同年4 月18日生産開始分からという記載もあって,これらは原告の主張する時期 とは必ずしも整合するものではないし,収納バッグの色の変更(上記4))に ついては記載すらされていない。 また,原告は,「ワンタッチタープテント取扱説明書」と題する2通の書 面(甲22,23)の記載に関し,原告作成の証拠説明書4において,この うち前者が第1世代の,後者が第2世代のものであると説明する。しかし, これらの書面にも「第1世代」や「第2世代」との用語はなく,各書面の作 成時期も必ずしも判然としない(甲23には「2013.0731」との記 載があり,これは2013年〔平成25年〕7月31日を意味するものと解 されるが,原告の主張する第2世代の販売開始日〔平成25年10月15 日〕と整合しない。)。しかも,上記各書面からは,原告テントにおいて3 段階調節から2段階調節への変更(上記1))及び支柱を覆う細長い天幕のデ ザインの変更(上記3))がされたことはうかがえるものの,その余の変更点 (上記2),4)及び5))は書面上直ちに確認することができない。 以上からすれば,原告の上記主張は,そもそもその前提を欠くものといわ ざるを得ない。
(3) 仮に原告の主張するとおり,原告テントに第1世代と第2世代があり,第 2世代は第1世代と上記1)ないし5)の全て点で異なっているとしても,以下 のとおり,原告が保護を求める商品の形態は第1世代から具備されていたも のというべきである。
ア 原告は,第2世代の原告テントの構成態様が次の(ア)及び(イ)のとおり であるとし,この形態が不競法2条1項3号により保護される「商品の 形態」である旨主張している。
・・・
イ 他方,原告が第1世代と第2世代の相違点として指摘するのは,上記 (2)のとおり,1)高さ調節を変更した点,2)シルバーコーティングによる UVカット加工を施した点,3)支柱を覆う細長い天幕のデザインを変更 した点,4)収納バッグの色を変更した点,5)耐水圧及びシームシーリン グを施した点という5点でしかない。そして,このうち1)は原告のいう 基本的構成態様F(具体的構\成態様のF−1及びF−2)に,2)ないし 5)は原告のいう具体的構成態様のA−7(2)),A−8(5)),B−4 (4))及びE−3(3))に相当するものと解されるとしても,その余の 構成態様,すなわち基本的構\成態様のA,B,C,D及びEと,具体的 構成態様のA−1,A−2,A−3,A−4,A−5,A−6,B−1,\nB−2,B−3,C−1,D−1,E−1及びE−2は,いずれも第1 世代と第2世代とで共通する構成態様ということになる。\nそうすると,原告が不競法2条1項3号により保護されるべき商品の 形態として主張する構成態様の大部分は,第1世代の当時から存在して\nいたものというべきである。
ウ 次に,原告の主張する上記1)ないし5)の各相違点について,以下検討 を加える。
(ア) 高さ調節
原告は,第1世代では高さ調節が3段階であったところ,第2世代で はこれを2段階に変更したと主張する。 しかし,「商品の形態」とは,「需要者が通常の用法に従った使用に 際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並 びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう」(不競法2 条4項)ものであって,商品の機能及び性能\それ自体は不競法2条1項 3号で保護される「商品の形態」には当たらないと解されるところ,高 さ調節を「3段階」で行うのか,それとも「2段階」で行うのかという 点は,まさに原告テントの機能ないし性能\それ自体の違いをいうものに すぎず,「商品の形態」には当たらないといわざるを得ない。 また,原告は,支柱の長さを変更し,テントを展開したときの高さが 8.5cm小さくなったと主張する。 しかし,証拠(甲13の1)によれば,この変更は,従前の支柱の長 さが198.6cmであったものを190.1cmに縮めたというものにす ぎず,その割合からすれば,わずかな相違点であるといわざるを得ない。 なお,原告は,原告テントを発送する場合には梱包サイズ(3辺の合 計)が160cmを超えるか否かで送料が変わるところ,上記各変更によ り梱包サイズが166cmから158cmになったため,送料が安くなり, その結果,売れ行きが伸びたなどとも主張するが,そのこと自体は形態 を変更した理由若しくは目的や効果にすぎず,結局,その外観上は大き さに関するわずかな変更がされたというにとどまるから,この点をもっ て,不競法2条1項3号で保護される「商品の形態」において顕著な変 更がされたとはいえない。
(イ) シルバーコーティングによるUVカット加工
原告は,第2世代ではテントの生地にシルバーコーティングを施して UVカットを実現した旨主張する。 しかし,この点は,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚に よって認識することができるものとはいい難く,商品の機能及び性能\そ れ自体の変更をいうものにすぎないから,不競法2条1項3号の「商品 の形態」には当たらない。 この点に関して原告は,従前はテントの中にいても太陽が透けて見え ていたのが,シルバーコーティングを施したことによりまぶしくなくな り,もって見た目や色が変化したなどとも主張するが,これを裏付ける 証拠は存在しないし,仮にそのような変化が生じたとしても,基本的に は商品の機能及び性能\の変化の範囲を超えるものではないか,外観にお いてわずかな差異を生じさせるものにすぎないから,原告の上記主張は 採用することができない。
(ウ) 支柱を覆う細長い天幕のデザイン
原告は,第1世代では支柱を覆う細長い天幕にストライプ状の柄が入 っていたのを,第2世代ではテント本体の天幕と同じ無地の色に変更し たと主張する(別紙「天幕デザイン変更図」参照)。 しかし,上記変更は,原告も自認するとおり,支柱を覆う細長い天幕 の部分にプリントされた色彩及び図柄の変更にすぎず,支柱を覆う細長 い天幕の外形的な形状自体には何ら変更がないのであるから,仮に上記 デザインが不競法2条1項3号の「商品の形態」に該当するとしても, テント全体からみればわずかな変更にすぎないといわざるを得ない。
(エ) 収納バッグ
原告は,収納バッグの色を黒色に統一したと主張するが,これを裏付 ける証拠はない上,そもそもこの主張自体はテント本体の形態の変更を いうものでもないし,その変更点も,色を変更したというものにすぎな い。 なお,原告は,収納バッグの色を統一したことにより在庫リスクが減 ったとも主張するが,具体的に在庫リスクが減ったことを裏付ける証拠 は存在しないし,そもそも在庫リスクが減ったかどうかは「商品の形態」 の問題ではない。
(オ) 耐水圧及びシームシーリング
原告は,第2世代では防水処理を施した上,シームシーリングという 方法で天幕の裏側から縫い目を保護し,より防水機能を高めたと主張す\nる。 しかし,これらはいずれも需要者が通常の用法に従った使用に際して 知覚によって認識することができるものとはいい難く,商品の機能及び\n性能それ自体の変更をいうものにすぎないから,不競法2条1項3号の\n「商品の形態」には当たらないし,仮に天幕の裏側から縫い目を保護し たことにより外観に変更が生じているとしても,テント全体からみれば わずかな差異にすぎない。
(カ) 小括
以上からすれば,原告の主張する原告テントの第2世代における変更 点は,そもそも不競法2条1項3号の「商品の形態」を変更するもので はないか,仮に「商品の形態」を変更するものであるとしても,原告テ ントの第1世代の商品形態を具備しつつ若干の変更を加えたものにすぎ ないというべきであるから,第1世代と第2世代は実質的に同一の形態 であるものといわざるを得ない。
(4) 以上によれば,原告の主張を前提としても,原告が保護を求める商品の形 態を具備した最初の商品は,第2世代の原告テントではなく,第1世代の原 告テントであるというべきである。そして,第1世代の原告テントが日本国 内で最初に販売されたのは平成22年10月頃というのであるから(前記第 2,2(2)),被告テントの販売開始時点である平成27年5月2日時点で は,既に3年が経過していることになる。 したがって,被告による被告テントの販売には,不競法19条1項5号イ の適用除外事由があり,そもそも同法3条及び4条の適用がない。

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平成28(ネ)10084  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成28年12月22日  知的財産高等裁判所(第1部)  東京地方裁判所(47民)

 フェイスマスクの包装が似ているとして不競法の商品等表示と類似または商品形態模倣であると主張しましたが、1審と同様に該当しないと判断されました。
「そして,不正競争防止法にいう「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従 った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並 びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいうところ(不正競争防止法 2条4項),前記1の認定事実によれば,控訴人商品の外面包装は,光沢のあるロー ズピンクであって,伏し目のまつ毛のデザイン及び「LuLuLun」という大き な文字等が付されていることが認められることからすると,外面包装全体が立方体 であるなどという控訴人主張に係る形態よりも,かえって,外装包装に結合した模 様,色彩,光沢及び質感が,需要者に対し強い印象を与えるものとして出所識別機 能を有するというべきであって(ただし,控訴人は,「LuLuLun」等の記載を\n控訴人商品の形態の特徴として主張するものではない(原審第1回口頭弁論調書参 照)),もとよりこれらが不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当\nするとしても,被控訴人商品が控訴人商品と類似するものではないことは明らかで ある。
・・・
控訴人は,控訴人商品の外面包装の上面及び下面,フラップラベル,その下の切 込み部分は概ね正方形であって,控訴人商品のような外面包装全体が立方体である というシンプルなデザインを採用した商品は他に存在しなかったのであり,控訴人 商品の形態は,他の商品とは異なる顕著な特徴を有するものであり,不正競争防止 法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当し,これと実質的に同一の形態の被控\n訴人商品は同項3号にいう控訴人商品の「模倣」に該当する旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,商品の形態は,顕著な特徴を有しない限り,そも そも本来商品の出所を表示するものではなく,控訴人商品の外面包装全体が立方体\nであるなどという形態は,極めてシンプルなものであって,上記にいう顕著な特徴 であると認めることはできない。かえって,前記認定事実によれば,控訴人商品と 被控訴人商品は,外面包装に結合した模様,色彩,光沢及び質感が需要者に対し明 らかに異なる印象を与えているのであるから,上記立方体等の形態が商品等表示で\nあると認めることはできず,控訴人商品と被控訴人商品が類似するということもで きない。そのほかに控訴人の当審における主張を改めて十分検討しても,その実質\nは,同種の主張を縷々繰り返すものであって,結局のところ,不正競争防止法2条 1項1号又は3号の規定の意義を正解しないものに帰するというほかない。 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成27(ワ)33398

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