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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権その他

平成22(ネ)10046 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年11月10日 知的財産高等裁判所 

 いわゆる100均で廉価販売されたDVDについての著作権侵害について、原審の判断が一部変更されました。原審は著作権料相当額を8%とし、返品数を除いた販売数、さらに過失相殺がなされましたが、知財高裁は、5%、複製数から判断しました。
  本件映像は,先に指摘したとおり,知人である控訴人の父親から控訴人の今後について相談を受けたBが,控訴人に対し,動画撮影を勧め,控訴人が海外に出掛ける際に,厚意で,オスカ企画所有の機材とDVテープを無償で貸し出したことを契機として,撮影されたものである。その上,BやAは,控訴人が動画撮影技術を習得するために,控訴人が撮影した映像について,アドバイスをしたり,控訴人が渡航する際,渡航費用を援助するなど(丙3),厚意で便宜を提供していたものである(なお,控訴人は,原審における本人尋問において,渡航費用に関しては,機材を借りる際など,いつも控訴人が補助参加人を訪問していたが,補助参加人から交通費をもらっておらず,それが積み重なっていたことを考慮して,小遣い程度としてBが支払ったものだと思うと供述するが,機材を無償で貸与する際の交通費についてまで,補助参加人が負担する格別の必要性は存しないものであり,控訴人のかかる供述は不自然である。)。また,本件映像は,控訴人の趣味の一環として撮影されたものであり,控訴人,補助参加人及びオスカ企画において,当初は商品として利用することは想定されておらず,控訴人も,機材を返却する際に映像を見たことがあったほかは,本件映像の説明書を作成するため,本件VHSテープの送付を依頼するまでは,本件映像を閲覧しておらず,かつ,本件DVD販売に係る紛争が発生するまで,本件DVテープの引渡しなどを一切請求していなかったものである。さらに,本件DVDに収録された映像のうち,ハワイの映像については,控訴人が撮影したものではない。以上からすると,補助参加人及びオスカ企画が関与して制作された本件DVDについて,販売枚数1枚当たりの控訴人が受けるべき著作権料相当額は,販売価格の5パーセントと認めるのが相当である。(エ) 被控訴人における本件DVDの販売枚数は6581枚であり,原判決は,かかる枚数について控訴人の損害を算定しているが,本件映像の複製権侵害は,納品された9984枚において生じているものであって,控訴人が受けるべき著作権料相当額は,9984枚について算定すべきである。(オ) したがって,本件映像の著作権の行使につき控訴人が受けるべき金銭の額に相当する額は,199万6800円であると認められる。(計算式)4000円×5パーセント×9984枚=199万6800円・・・以上のとおり,被控訴人による本件DVDの販売と相当因果関係がある控訴人の損害額は,合計329万6800円となる。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成20(ワ)36380平成22年04月21日東京地裁

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平成21(ワ)4331 損害賠償請求事件 その他 民事訴訟 平成22年10月21日 東京地方裁判所

 パブリシティ権侵害の損害額として、著作権法114条の推定規定の類推は認められませんでした。
 原告は,パブリシティ権侵害による損害額の立証については,著作権法114条2項及び同条3項を類推適用すべきであると主張する。しかしながら,前記1(1)のとおり,パブリシティ権とは,人格権に由来するものであって,同項の適用される著作財産権とは性質を異にするものである。したがって,本件における原告の損害を算定するに当たって,著作権法114条2項及び3項を類推適用することはできないというべきであり,原告の主張を採用することはできない。被告らが原告に無断で本件雑誌を出版,販売したことにより原告が被った損害額は,原告が本件雑誌の出版に当たり,原告の氏名及び原告写真の使用を許諾した場合に,原告が通常受領すべき金員に相当する額と解するのが相当である。
(2) 原告の損害
証拠(乙15の1〜3,乙16の1〜3,乙17の1〜3,乙18の1・2,乙19の1・2,乙20の1・2,乙21)及び弁論の全趣旨によれば,本件雑誌の単価は580円(消費税込み。なお,消費税分を除いた本体価格は552円。)であり,その販売部数は4万1275冊であることが認められる。これに対し,原告は,本件雑誌の販売部数は少なくとも5万9000冊であると主張するものの,本件雑誌が被告らの主張する販売部数(4万1275冊)以上に販売されたことを認めるに足りる証拠はない。また,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,原告の韓国におけるマネジメント会社である韓国法人キーイーストは,平成20年7月30日,日本法人であるアイピーフォー株式会社との間で,原告の名称及び肖像写真等を使用したカレンダー商品(壁掛けカレンダー,卓上カレンダー)を日本において生産,販売及び販売促進活動を行うことを非独占的に許諾すること,その許諾料を壁掛けカレンダー1点につき●(省略)●,卓上カレンダー1点につき●(省略)●とする旨を合意したことが認められる。上記認定の本件雑誌の単価,販売部数,原告が原告の名称及び肖像写真等を使用したカレンダーを日本において生産,販売等することを許諾した際の許諾料のほか,前記1で認定した原告の氏名,肖像の有する顧客吸引力の強さ,本件雑誌における原告の氏名,肖像の使用態様,本件雑誌中でパブリシティ権を侵害する部分の割合等を総合的に考慮すると,本件雑誌の出版,販売による原告の損害額を400万円と認めるのが相当である。

◆判決本文

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平成22(ネ)10052 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年10月13日 知的財産高等裁判所

 鑑定書に添付した絵画のコピーについて1審は侵害と判断しましたが、知財高裁は引用であり、非侵害と判断しました。
 「そこで,前記見地から,本件各鑑定証書に本件各絵画を複製した本件各コピーを添付したことが著作権法32条にいう引用としての利用として許されるか否かについて検討すると,本件各鑑定証書は,そこに本件各コピーが添付されている本件各絵画が真作であることを証する鑑定書であって,本件各鑑定証書に本件各コピーを添付したのは,その鑑定対象である絵画を特定し,かつ,当該鑑定証書の偽造を防ぐためであるところ,そのためには,一般的にみても,鑑定対象である絵画のカラーコピーを添付することが確実であって,添付の必要性・有用性も認められることに加え,著作物の鑑定業務が適正に行われることは,贋作の存在を排除し,著作物の価値を高め,著作権者等の権利の保護を図ることにもつながるものであることなどを併せ考慮すると,著作物の鑑定のために当該著作物の複製を利用することは,著作権法の規定する引用の目的に含まれるといわなければならない。そして,本件各コピーは,いずれもホログラムシールを貼付した表\面の鑑定証書の裏面に添付され,表裏一体のものとしてパウチラミネート加工されており,本件各コピー部分のみが分離して利用に供されることは考え難いこと,本件各鑑定証書は,本件各絵画の所有者の直接又は間接の依頼に基づき1部ずつ作製されたものであり,本件絵画と所在を共にすることが想定されており,本件各絵画と別に流通することも考え難いことに照らすと,本件各鑑定証書の作製に際して,本件各絵画を複製した本件各コピーを添付することは,その方法ないし態様としてみても,社会通念上,合理的な範囲内にとどまるものということができる。しかも,以上の方法ないし態様であれば,本件各絵画の著作権を相続している被控訴人等の許諾なく本件各絵画を複製したカラーコピーが美術書等に添付されて頒布された場合などとは異なり,被控訴人等が本件各絵画の複製権を利用して経済的利益を得る機会が失われるなどということも考え難いのであって,以上を総合考慮すれば,控訴人が,本件各鑑定証書を作製するに際して,その裏面に本件各コピーを添付したことは,著作物を引用して鑑定する方法ないし態様において,その鑑定に求められる公正な慣行に合致したものということができ,かつ,その引用の目的上でも,正当な範囲内のものであるということができるというべきである。
イ この点につき,被控訴人は,著作権法32条1項における引用として適法とされるためには,利用する側が著作物であることが必要であると主張するが,「自己ノ著作物中ニ正当ノ範囲内ニ於テ節録引用スルコト」を要件としていた旧著作権法(明治32年法律第39号)30条1項2号とは異なり,現著作権法(昭和45年法律第48号)32条1項は,引用者が自己の著作物中で他人の著作物を引用した場合を要件として規定していないだけでなく,報道,批評,研究等の目的で他人の著作物を引用する場合において,正当な範囲内で利用されるものである限り,社会的に意義のあるものとして保護するのが現著作権法の趣旨でもあると解されることに照らすと,同法32条1項における引用として適法とされるためには,利用者が自己の著作物中で他人の著作物を利用した場合であることは要件でないと解されるべきものであって,本件各鑑定証書それ自体が著作物でないとしても,そのことから本件各鑑定証書に本件各コピーを添付してこれを利用したことが引用に当たるとした前記判断が妨げられるものではなく,被控訴人の主張を採用することはできない。
ウ なお,控訴人が本件各絵画の鑑定業務を行うこと自体は,何ら被控訴人の複製権を侵害するものではないから,本件各絵画の鑑定業務を行っている被控訴人がこれを独占できないことをもって,著作権者の正当な利益が害されたということができるものでないことはいうまでもない。
(3) 小括したがって,控訴人が本件各鑑定証書を作製するに際してこれに添付するため本件各コピーを作製したことは,これが本件各絵画の複製に当たるとしても,著作権法32条1項の規定する引用として許されるものであったといわなければならない。

◆判決本文

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平成21(ワ)6194 譲受債権請求承継参加申立事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月30日 東京地方裁判所

 ウルトラマン映画に関する争いです。タイ最高裁の判決との関係についても触れています。
 被告は,タイ最高裁判決により,タイ王国において脱退原告が本件契約に基づくウルトラマン映画及びウルトラマンキャラクターの利用権を有しないことが確認され,本件契約に基づく脱退原告のいかなる権利主張も禁じられたものであるから,脱退原告は,タイ王国において過去及び将来のいかなる時点においても,ウルトラマン映画等について第三者にライセンスを付与して利益を得る機会はなかったと主張する(なお,前記(1)アのとおり,本件ライセンス契約i)の対象地域にはタイ王国が含まれている。)。しかしながら,上記タイ最高裁判決は,本件契約書が偽造されたものであり,本件契約の成立は認められないとの判断を前提とするものであり,かかる判断は,我が国における確定判決である東京高裁判決及び本件訴訟における当裁判所の前記認定と全く相反するものである。そして,本件契約の成否及び本件契約の内容に関する当裁判所の前記認定に従えば,本件独占的利用権を有する脱退原告が,タイ王国において本件著作物ないし旧ウルトラマンキャラクターのライセンス事業を行うことは,何ら違法なものではなく,そうである以上,被告による本件ライセンス契約i)の締結等により,脱退原告は上記ライセンス機会を失ったものと認めるのが相当であり,被告の上記主張は理由がない。

◆判決本文

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平成21(ワ)35164 著作権移転登録請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月03日 東京地方裁判所

 プログラム著作権の帰属が争われました。権利の特定はSOFTICの登録番号でなされていました。権利の特定が容易となるというプログラム登録制度の意義が活用されています。

◆判決本文

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平成22(ネ)10033 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年08月04日 知的財産高等裁判所

 図書館の蔵書について貸与権侵害が争われた控訴審にて、侵害しないとした1審判断が維持されました。また、情を知ってについても理由が追加されました。
 しかしながら,著作物の複製物を公衆に貸与する「貸与権」については,映画の著作物の複製物の「頒布権」に含まれる「貸与」を除くと,昭和59年改正法により新設された権利であって,それまでは,著作物の複製物を公衆に貸与することは自由とされていたものである。そして,昭和59年改正法によって,新しい権利として「貸与権」が設けられた際に付加された平成16年改正法により削除される前の著作権法附則4条の2において,経過措置が設けられ,書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)については,当分の間,貸与権の規定は適用されないこととされ,貸本業者が所持する書籍又は雑誌に限らず,書籍又は雑誌の貸与一般について貸与権の規定が適用されないとされたものである。その後の平成16年改正法により,上記附則4条の2は削除されて経過措置が廃止され,書籍又は雑誌の公衆への貸与についても貸与権の規定が適用されることになったが,平成16年改正法附則4条において,同年8月1日において現に公衆への貸与の目的をもって所持されている書籍又は雑誌(主として楽譜により構\成されているものを除く。)の貸与については,同改正前の著作権法附則4条の2の規定は,その施行後もなおその効力を有するとされたものである。以上によると,平成16年改正法によって削除された附則4条の2の経過措置の制定は,貸本業をいきなり規制することには理解が得られにくいことをも理由とするものであったとしても,昭和59年改正法による規制までは,書籍又は雑誌を貸与することは自由であったもので,同改正法によっても,同経過措置により,主として楽譜により構成されているものを除き,書籍又は雑誌を貸与することは自由のままとされ続けたものであるから,平成16年8月1日において現に公衆への貸与の目的をもって所持されている書籍又は雑誌(主として楽譜により構\成されているものを除く。)の貸与については,この経過措置の規定がなおその効力を有するとされる場合の貸与権が及ばない書籍又は雑誌の範囲は,貸本業者が所持する書籍又は雑誌に限定されると解すべき理由はなく,控訴人の主張は採用することができない。
・・・・
著作権法113条1項2号の「情を知って」とは,取引の安全を確保する必要から主観的要件が設けられた趣旨や同号違反には刑事罰が科せられること(最高裁平成6年(あ)第582号同7年4月4日第三小法廷決定・刑集49巻4号563頁参照)を考慮すると,単に侵害の警告を受けているとか侵害を理由とする訴えが提起されたとの事情を知るだけでは,これを肯定するに足らず,少なくとも,仮処分,判決等の公権的判断において,著作権を侵害する行為によって作成された物であることが示されたことを認識する必要があると解されるべきところ,本件において,本判決以前に,そのような公権的判断が示された事情はうかがわれず」

◆判決本文

 

◆原審はこちらです。平成20(ワ)32593平成22年02月26日

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平成21(ワ)27691 損害賠償 著作権 民事訴訟 平成22年06月17日 東京地方裁判所 

 出版物の図表の著作物性が争われました。裁判所は、ありふれた選択手法であり、編集著作物としての創作性がないと判断しました。

◆判決本文

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平成21(ネ)10050 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年06月17日 知的財産高等裁判所

 旧著作権法下における映画の著作権の存続期間について、本事案については創作に関与した者であると判断しました。
 旧著作権法6条は,著作物の存続期間を定めた規定であるものと解されるが,同条につき,さらに,法人等の団体が著作者となり得ることを前提とした規定であると解することも可能である。そして,新著作権法における職務著作の規定の実質的な根拠とされた,法人等における著作物の創作実態及び利用上の便宜の必要性等の事情(甲5の80ないし81頁参照)は,旧著作権法の下においても,程度の差こそあれ存在していたものと推認できることからすれば,同法6条によって,直ちに,著作者として表\示された映画製作会社がその映画の著作者となると帰結されるものでないとしても,旧著作権法の下において,実際に創作活動をした自然人ではなく,団体が著作者となる場合も一応あり得たものというべきである。特に,映画制作においては,非常に多くの者が関与し,その外延が不明なことが通常であり,それら多数の者の複雑な共同作業によって映画が完成するものであるが,その関与者の関与の時期,程度,態様等も,映画によって千差万別であって,このような性質を有する映画については,映画会社がその著作者となり,原始的にその著作権を取得したものと観念するのが,各関与者の意図に合致する場合もあったものと想像され,新著作権法15条1項所定の要件と同様の要件を備え,映画会社が原始的に著作者となるべきものと認める映画も相当数あったのではないかと思われる。(5) この見地から,本件各映画についてみるに,新著作権法15条1項所定の要件が充たされているかは,具体的には,・・・前記(2)アないしウのとおり,本件映画1,3の各オープニングの冒頭部分において,新東宝の標章や「新東宝映画」との表示がされ,各ポスターにも,新東宝の標章とともに,「新東宝興業株式会社配給」ないし「新東宝の良心特作」との記載があり,・・も大きく表\示されていることを考慮すると,原告や新東宝が,自社の制作名義の下に本件各映画を公表したとはいい得るが,自社を著作者とした映画として公表\したとまでいい得るか,必ずしも断じ難いものがある。そのほかの要件については,本件では,必要な証拠が十分に提出されていないため,確たることは不明であるといわざるを得ない。そうすると,旧著作権法下において,本件各映画が著作物として保護を受けることは明らかであるところ,その著作者としては,原告ないし新東宝と本件各監督を含む多数の自然人とのいずれと認めるのが合理的であるかについては,新著作権法15条1項の要件が証拠不十\分のため,認められないとすれば,本件各映画の著作権は,本件各監督を含む多数の自然人に発生したものといわざるを得ない。そして,本件各監督を含む多数の自然人が著作者であると認めた場合には,いったん本件各監督等が各映画の著作権を取得しながら,その後,映画公開までの間に,原告又は新東宝に同著作権を黙示的に譲渡したと認められるかが問題となるところ,前記(2)セのとおり,新東宝・原告間では,著作権譲渡につき正式な契約書が存在するにもかかわらず,本件各監督と原告ないし新東宝との間の著作権の移転については,何ら証拠が提出されていない。しかしながら,監督については,前記(2)シで認定したように,原告は,テレビ放送への利用許諾等で対価を得た場合,原告もその会員である社団法人日本映画製作者連盟と,本件各監督もその組合員であった協同組合日本映画監督協会との間の申合せに従い,監督等に対し追加報酬を支払い,また,原告が放送への利用許諾等をした際には,協同組合日本映画監督協会に対しその旨を通知し,同協会は,監督等の組合員に対しその旨を連絡していることを考えると,映画製作会社は映画監督につき著作者の一人として処遇していることが窺われる。以上のように考えると,映画監督に限っては,映画公開までの間に原告又は新東宝に対し監督を務めることとなった法律関係に基づいて,自己に生じた著作権を譲渡したものと認定することができる。\n

◆判決本文

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平成22(行コ)10001 情報非開示処分取消等請求控訴事件 その他 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 委託者には著作権は譲渡されていないと判断されました。
 一般的に,著作権は,不動産の所有者や預金の権利者が権利発生等についての出捐等によって客観的に判断されるのと異なり,著作物を創作した者に原始的に帰属するものであるから(著作権法2条1項2号,同法17条),ソフトウェアの著作権の帰属は,原則として,それを創作した著作者に帰属するものであって,開発費の負担によって決せられるものではなく,システム開発委託契約に基づき受託会社によって開発されたプログラムの著作権は,原始的には受託会社に帰属するものと解される。また,旧岡三証券とOISとの間の本件委託業務基本契約(甲22)に基づくデータ処理業務は,上記認定の内容からすれば,情報処理委託契約であると解されるところ,情報処理委託契約は,委託者が情報の処理を委託し,受託者がこれを受託し,計算センターが行う様々な情報処理に対し,顧客が対価を支払う約定によって成立する契約であって,著作権の利用許諾契約的要素は含まれないと解される。本件においては,前記認定のとおり,旧岡三証券とOIS間において,昭和55年7月1日に締結された本件委託業務基本契約にも,著作権の利用許諾要素は全く含まれていないが,それは上記の理由によりいわば当然であり,また,証拠(甲61,62,70ないし73)によれば,そのような場合でも,委託者が,受託者に対し,システム開発料として多額の支出をすることは,一般的にあり得ることと認められるから,単に開発したソ\\フトウェアが主に委託者の業務に使用されるものであるとの理由で,委託者がその開発料を支払っていれば,直ちにその開発料に対応して改変された著作物の著作権が委託者に移転されるということにはならないことは明らかである。著作権はあくまで著作物を創作した者に原始的に帰属するものであるから,例えば,日本ユニシスとOISとの間の平成15年10月1日付「アウトソーシング・サービス委託契約書」(乙61)において,その第9条2項に,日本ユニシスが保有するプログラムをOISが改良した場合の改良後のプログラムの著作権法27条及び28条の権利を含む著作権が日本ユニシスに帰属する旨が合意されているように,その譲渡にはその旨の意思表\\示を要することは,他の財産権と異なるものではない。したがって,本件においても,上記のような明示の特約があるか,又はそれと等価値といえるような黙示の合意があるなどの特段の事情がない限り,旧岡三証券が本件ソフトウェアの開発費を負担したという事実があったとしても,そのことをもって,直ちに,その開発費を負担した部分のソ\\フトウェアの著作権が,その都度,委託者である旧岡三証券に移転することはないというべきである。そして,本件全証拠を精査しても,一度原始的にOISに帰属した本件ソフトウェアの著作権が,旧岡三証券がその開発費用を支出した都度,本件譲渡契約前にOISから旧岡三証券に対して黙示的に譲渡されていたことなどの特段の事情を認めるに足りる証拠はない。\n

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平成20(ワ)32593 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年02月26日 東京地方裁判所 

 図書館の蔵書について貸与権侵害が争われました。裁判所は、貸与権が法定される以前から蔵書していたので、貸与権の規定が適用されないと判断しました。
   「当裁判所は,仮に本件韓国語著作物が原告の原告著作物に係る複製権及び翻訳権・翻案権を侵害するものであったとしても,被告らがそれぞれ設置する図書館等において,本件韓国語著作物を利用者に閲覧・謄写させたり,貸し出したりすることが,原告の著作権(二次的著作物に係る貸与権)の侵害には該当しないと判断する。その理由は,以下のとおりである。(1) 貸与権の規定貸与権の規定(著作権法26条の3)は,昭和59年改正法により設けられた規定であるが(当時の条文は26条の2。),同改正法により付加された著作権法附則4条の2により,書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与による場合には,当分の間,適用しないこととされた。その後,平成16年改正法(平成17年1月1日施行。)により,上記附則4条の2は削除され,平成17年1月1日から書籍及び雑誌の貸与にも貸与権の規定が適用されることになったが,同改正法附則4条により,同法の公布の日(平成16年6月9日)の属する月の翌々月の初日において現に公衆への貸与の目的をもって所持されている書籍又は雑誌(主として楽譜により構\成されているものを除く。)の貸与については,上記附則4条の2の規定は平成16年改正法の施行後もなおその効力を有するとされ,平成16年8月1日において現に公衆への貸与の目的で所持されていた書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与については,引き続き貸与権の規定は適用されないこととされた。(2) 上記経過規定を本件に当てはめると,被告東京大学は平成11年5月19日(東洋文化研究所図書館),平成13年3月9日(文学部図書館)に,被告東京学芸大学は平成12年2月4日に,被告大阪大学は平成15年12月18日に,被告筑波大学は平成10年11月25日に,被告九州大学は平成12年7月24日に,被告青山学院は平成12年9月18日に,被告専修大学は平成16年4月8日に,被告日韓文化交流基金は平成11年4月6日に,それぞれ本件韓国語著作物を購入し,そのころ,それぞれが設置する図書館等に本件韓国語著作物を所蔵し,現在に至っているが,被告らが設置する図書館等における本件韓国語著作物の貸出し等の状況は上記第2の2(3),(4)のとおりである(乙イ1の1,2,乙イ2〜7,乙ロ3,4,弁論の全趣旨)。そうすると,被告らが設置する図書館等で所蔵する本件韓国語著作物は,いずれも平成16年8月1日の時点において現に公衆への貸与の目的をもって所持されていた書籍であり,かつ,本件韓国語著作物は主として楽譜により構成されているものでないことは明らかであるから,平成16年改正法附則4条,同改正法により削除される前の著作権法附則4条の2により,その貸与につき貸与権の規定は適用されないこととなる。したがって,被告らが所蔵する本件韓国語著作物については貸与権の規定が適用されず,本件韓国語著作物に係る著作者の貸与権が及ばない以上,仮に原告が本件韓国語著作物の原著作物の著作者であったとしても,二次的著作物である本件韓国語著作物に係る原告の貸与権が及ぶことはなく(著作権法28条),原告の二次的著作物に係る貸与権の侵害に該当することはないため,原告の著作権侵害に基づく各請求は失当である。\n

◆判決本文

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平成21(ワ)6604 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年03月30日 東京地方裁判所

 写真の著作物について、許諾権の範囲を超えた貸与があったとして、貸与権侵害が認められました。「逆版」のデュープフィルムの作成についての同一性保持権侵害は否定されました。
 著作者は,その著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利を専有する(著作権法26条の3)。ここに「公衆」とは,同法2条5項が「公衆」には,「特定かつ多数の者を含むものとする。」と定めていることから,複製物の貸与を受ける者が,不特定又は特定多数の者であれば,公衆への貸与に該当するものと解される。上記事実によれば,アマナイメージズは被告の受託者として,第三者(三晃堂)に写真の使用を許諾したものであり,三晃堂は,広く一般に写真の貸出業を行う写真エージェンシーであるアマナイメージズにとって,不特定の者に該当すると認められる(アマナイメージズが,本件写真の使用許諾先を三晃堂(特定の者)に限定していたとの事実は認められない。)。そして,アマナイメージズにとって,三晃堂は不特定の者に該当するのであるから,アマナイメージズに対して,本件写真の使用許諾行為を委託した被告にとっても,三晃堂は不特定の者に該当すると認めるのが相当である。したがって,被告が,アマナイメージズに委託して,本件写真を第三者に貸し出した行為は,本件写真に係る原告の著作権(貸与権)の侵害に当たる。・・・(1)原告は,被告が本件写真について「逆版」のデュープフィルムを作成したとして,被告の上記行為が本件写真に係る原告の著作者人格権(同一性保持権)の侵害に当たる旨主張する。・・・本件委託契約(乙1)においては,写真のデュープ方法を特に指定したり,制限したりする約定はなかったことが認められる。以上の事実によれば,原被告間において,本件委託契約上,デュープフィルムの作成方法として,オリジナルフィルムとデュープフィルムの乳剤面同士を密着させてデュープする方法を採ることが制限されていたと解することはできず,被告が本件写真のデュープフィルムを上記の方法により作成したことは,本件委託契約に基づき原告から許諾された範囲内の行為であったと認めるのが相当である。また,そもそも,被告の作成したデュープフィルムによっても,像が左右正向きとなるようにプリントすること(本件写真で言えば,甲4の状態)も,左右逆向きとなるようにプリントすること(本件写真で言えば,甲5の状態)も問題なくできるのであるから,オリジナルフィルムとはベース面と乳剤面とが逆となり,ノッチコードの位置が逆となるデュープフィルムを作成しただけでは,本件写真に改変を加えた(像を左右逆とする改変を加えた)ということはできない。

◆判決本文

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平成18(ワ)5689等 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年03月31日 東京地方裁判所

 プログラムの著作権・商標権侵害が認められました。あと、国際裁判管轄が争われてます。
 原告コンセプトは,第2事件について,ソースコードライセンス契約(乙5の1,2)5.4条の定めを根拠として,我が国に国際裁判管轄が認められないと主張し,訴えの却下を求めている。原告アシュラは,この主張に対し,時機に後れた防御方法であり,民事訴訟法157条1項により却下されるべきである旨の申立てをするが,国際裁判管轄の有無は裁判所が職権で調査すべき事項であるから,その主張が時機に後れたことを理由として,これを却下することはできない。そこで,第2事件について我が国の国際裁判管轄を検討する。第2事件は,前記第2の1(2)のとおり,原告アシュラが,原告コンセプトに対し,プログラム著作権及び商標権に基づき,原告コンセプトが販売する製品,マニュアルの販売等の差止め,廃棄等を求めるとともに,不法行為(著作権侵害,商標権侵害)による損害賠償又は不当利得返還を求める事案である。原告アシュラとファモティクとの間に締結されたソースコードライセンス契約(乙5の1,2)5.4条には「この契約に基づくいかなる訴訟も,カリフォルニア州の連邦又は州裁判所に起こされるものとし,ライセンシーは,この契約により対人裁判管轄権に服する。」旨の規定があるが,同契約の当事者は原告アシュラとファモティクであるから,上記規定は,原告アシュラがファモティクに対し,又はファモティクが原告アシュラに対し,同契約上の紛争に基づく訴訟を提起する場合の裁判管轄について合意したものであって,契約当事者以外の第三者との間に係属すべき訴訟の管轄について定めたものであるとは解されない。そして,同契約5.8条によれば,ファモティクは,原告アシュラの書面による事前同意なしに同契約上の地位を譲渡することができないものとされているから,原告コンセプトが同契約上のライセンシーとしての地位をファモティクから適法に譲り受けたものということはできず,原告コンセプトとファモティクを同視することはできない以上,上記5.4条の規定を理由として,第2事件について我が国の国際裁判管轄が否定されるということはできない。ところで,国際裁判管轄については,これを直接規定する法規もなく,また,よるべき条約も,一般に承認された明確な国際法上の原則も,いまだ確立していないのが現状であるから,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念により,条理に従って決定するのが相当である(最高裁昭和56年10月16日第二小法廷判決・民集35巻7号1224頁参照)。そして,我が国の民事訴訟法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときは,原則として,我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき,被告を我が国の裁判権に服させるのが相当であるが,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には,我が国の国際裁判管轄を否定すべきである(最高裁平成9年11月11日第三小法廷判決・民集51巻10号4055頁参照)。これを第2事件についてみると,同事件は,外国法人である原告アシュラが進んで我が国の裁判権に服するとして我が国の裁判所に提起した訴訟であるところ,他方,被告である原告コンセプトは東京都千代田区を本店の所在地とする日本法人であるから,我が国に普通裁判籍(民事訴訟法4条4項)があるが,我が国の国際裁判管轄を否定すべき上記特段の事情があるとは認められない。したがって,第2事件に係る訴えについては,我が国に国際裁判管轄を認めるのが相当であり,原告コンセプトの上記本案前の主張は理由がない。

◆判決本文

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平成22(ネ)10047 著作権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年03月25日 知的財産高等裁判所 

 仏像の首をすげ替えた行為について、著作権侵害であると認めたものの、原状回復までは認められませんでした。
 当裁判所は,i)被告光源寺による本件観音像の仏頭部のすげ替え行為は,著作者であるRが生存しているとしたならばその著作者人格権(同一性保持権,法20条)の侵害となるべき行為であり,ii)法113条6項所定の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当し,侵害とみなされるべき行為であり,iii)法60条のただし書等により許される行為には当たらないと判断する。したがって,原告はRの遺族として,法116条1項に基づいて,法115条に規定するRの名誉声望を回復するための適当な措置等を求めることができると解される。そして,当裁判所は,すべての事情を総合考慮すると,法115条所定のRの名誉声望を回復するためには,被告らが,本件観音像の仏頭のすげ替えを行った事実経緯を説明するための広告措置を採ることをもって十分であり,法112条所定の予\防等に必要な措置を命ずることは相当でないと判断するものである。その理由は,以下のとおりである。

◆判決本文

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平成20(ワ)32148 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年01月27日 東京地方裁判所 

 編集著作物であることが否定されました。
 原告は,原告各図表が,原告が長年の実績と経験を基に相当の労力を費やして初めて取得することができるデータを,原告が独自の創意工夫を凝らして編集して作成したものであるから,編集著作物に該当すると主張する。しかしながら,原告は,原告が編集著作物と主張する原告各図表\に凝らしたとする「素材の選択又は配列」についての「独自の創意工夫」の具体的な内容について,主張立証するものでなく,前記(1)ないし(9)において認定したとおり,原告各図表と同様の素材を選択し,原告各図表\と同様の配列をした図表は,従前から数多く存在していることが認められる。そうすると,当該データの収集に相当の労力を要したり困難性が認められるか否かはさておくとしても,原告各図表\自体は,いずれもありふれた一般的な素材を選択し,一般的な配列をしたものにすぎないといわざるを得ず,これらが編集著作物であると認めることはできない。したがって,原告の前記主張は,採用することができない。なお,原告は,原告各図表で使用したデータが,収集に相当な労力を伴うものであり,たやすく収集できるものではない旨るる主張するところ,仮に,編集著作物における素材それ自体に価値が認められたり,素材の収集に労力を要するものであったとしても,素材それ自体が著作物として保護されるような場合を除き,それらの素材や労力が著作権法により保護されるものではない。したがって,仮に,原告がデータの収集に相当の労力を費やし,その保有するデータに一定の価値を認め得るものであるとしても,当該データ自体に著作物性が認められるものでない以上,それらの労力やデータが,原告各図表\の編集著作物としての著作物性を根拠付けるものとはなり得ず,原告の前記主張は,失当である。

◆判決本文

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