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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権その他

平成24(ワ)32339 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成26年06月26日 東京地方裁判所

キャバクラでの生演奏について、3店で1500万円超の損害賠償が認められました。トータルの金額は大きいですが、計算の基礎となった一日あたりの著作権使用料は2000円程度/店でした。
 前記1認定の事実によれば,被告ら3社は,本件各店舗において,その営業のために不特定多数の客に直接聞かせる目的で,業者から派遣されたピアニストに演奏楽曲リストに記載の原告管理楽曲などをピアノで演奏させたのであるから,これにより原告の著作権を侵害したものである。そして,ピアニストの演奏する曲目に演奏楽曲リストに記載の原告管理楽曲が多数含まれていることに加え,社交場実態調査の結果に照らすと,本件店舗1)及び2)については本件仮処分決定まで,本件店舗3)については閉店まで演奏楽曲リストに記載の原告管理楽曲(又はその二次的著作物)が少なくとも1日に10曲は演奏されていたと認めるのが相当である。被告らは,ピアニストの多くは本件各店舗においてジャズを自己流にアレンジして即興演奏をし,演奏されるのは原告管理楽曲の二次的著作物ではなく,全く別の新たな著作物であったと主張するが,原告担当者の社交場実態調査において演奏された曲目が判明していることや陳述書等の証拠(甲21の1及び2,乙6,7,証人D)において,Bら演奏者が原曲をそのまま,あるいはアレンジを加えて演奏した後にアドリブを加えていくとの趣旨を述べていることからすると,ピアニストが演奏した原告管理楽曲については,部分的に原曲そのまま,あるいは編曲したその二次的著作物が演奏されたものと認められる。被告らの上記主張は,採用することができない。被告らは,本件各店舗において,音楽の演奏等と収益とは関係がなく,設置されたピアノはインテリアとしての要素が圧倒的に強いなどと主張するが,本件各店舗がキャバクラであり,ピアノを設置して演奏している以上,これにより店の雰囲気作りをして,これを好む客の来集を図って営業上の利益を増大させることを意図していたことは明らかというべきである。被告らの上記主張は,採用することができない。また,被告らは,派遣されたピアニストが演奏していた原告管理楽曲はせいぜい1日4曲程度であったと主張するが,社交場実態調査の結果に照らして,たやすく採用し難い。

◆判決本文

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平成26(ワ)845 損害賠償請求事件 その他 民事訴訟 平成26年06月12日 大阪地方裁判所

 ヘルプファイル中に原告の著作権表示がなされていましたが、このことをもって著作権が譲渡されたとはいえないとして、プログラムのソ\ースコードの引き渡し義務なしと判断しました。
 原告の主張は,本件委託契約に基づき,本件ソフトウェア及び本件ソ\ースコードの著作権の譲渡が合意され,これに伴い,ソースコードの引渡義務も発生するというものである。前記1(2)によると,被告が,本件ソースコードを制作したものであり,本件ソ\ースコードの著作権は原始的に被告に帰属していると認めることができる。その一方で,前記1(2)(3)の見積書等,原告と被告との間で取り交わされた書面において,本件ソフトウェアや本件ソ\ースコードの著作権の移転について定めたものは何等存在しない。前記1のとおり,被告は,原告に対し,本件ソースコードの開示や引渡しをしたことはなく,原告から本件ソ\ースコードの引渡しを求められたが,これに応じていない。また,原告にしても,平成23年11月に至るまで,被告に対し,本件ソースコードの提供を求めたことがなかっただけでなく,前記1(7)のとおり,原告担当者は,被告に,本件ソースコードの提供ができるかどうか問い合わせているのであり,原告担当者も,上記提供が契約上の義務でなかったと認識していたといえる。以上によると,被告が,原告に対し,本件ソ\ースコードの著作権を譲渡したり,その引渡しをしたりすることを合意したと認めることはできず,むしろ,そのような合意はなかったと認めるのが相当である。なお,この点について,原告は,継続的契約であったから本件ソースコードの引渡しを求める必要がなかったと反論するが,後記(3)のとおり,継続的契約であることを前提とする主張には理由がない。
(2)ヘルプファイルにおける著作権表示と甲第15号証\n
原告は,前記1(5)の事情から,本件ソースコードについても原告が権利を取得した旨を主張するが,本件パッケージソ\フトウェアのヘルプファイルに示された著作権表示をもって,本件ソ\ースコードの著作者を推定するものとはいえない。また,本件ソースコードの著作権が原始的に被告に帰属し,かつ,これが原告に移転していないことは上記(1)のとおりであり,上記ヘルプファイルに示された著作権表示をもって,原告が本件ソ\ースコードに対する権利者であることの根拠とすることはできない。また,甲第15号証の電子メールにおいて,被告は,上記ヘルプファイルの表示を了承した旨記載しているが,このことをもって,被告が原告に対し本件ソ\ースコードや本件ソフトウェアの著作権を原告に譲渡・処分する旨の意思表\示をしたとみることはできない。せいぜい,被告が,原告に対し,本件ソフトウェアを複製することを許諾していることを表\示するのみというべきである(乙2)。
(3)継続的契約関係の下における損害発生防止(減少)義務
原告は,ソフトウェア開発の当初から,被告において,本件ソ\フトウェアを継続的にアップデートすることが予定されており,このような継続的契約関係においては,損害発生防止ないし減少義務の履行として,本件ソ\ースコードの引渡義務を負うと主張する。しかし,前記1(3)における一連の取引は,発注の都度,原被告間に個別の業務委託契約が成立し,被告の納品した成果物に対し,検収を経て原告が報酬を支払うことによって本旨履行が終了したものというべきであり,それ以上のものとは認められないというべきである(継続的契約におけるような,基本契約の締結があったことを認めるに足りる証拠は何らない。)。また,前記1(3)キのとおり,被告は,本件ソフトウェアが最新のオペレーションシステムに対応していないことを言明しており,永続的なアップデートの約束がされたことと相容れない状況となっている。すなわち,本件委託契約は,事実上継続して取引があったにすぎず,継続的契約関係とも認められない(保守契約が結ばれたことさえ,これを認めるに足りない。)から,被告が,原告のいうような損害発生防止,軽減義務を負うこともない。原告の上記主張には理由がない。\n

◆判決本文

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平成25(ワ)13369 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成26年05月27日 東京地方裁判所

猫の写真の著作物について著作権侵害と認定されました。興味深いのは目をくりぬく行為について、著作財産権侵害が66万程度に対して、人格権侵害の損害が200万円という認定です。
 原告は,(1) 原告写真の現物又はコピーに猫の目の部分をくり抜く加工を施す行為,(2) これらを並べて本件各パネルを作成し,さらに本件各パネルを組み合わせて本件看板を作成する行為が原告の翻案権を侵害する旨主張するので,以下,検討する。(1) 証拠(甲1〜5,7〜11)及び弁論の全趣旨によれば,原告写真は,いずれも猫そのもの(別表のNo.1〜43等)又は猫を含む風景(同44〜73等)を被写体とした写真であること,被告アンダーカバーは,写真集に掲載された原告写真又はそのコピーに,猫の顔の部分を中心に切り取るか(別紙「訴状別表\の見方」のシール番号1,2,5,7,8,9等),又は猫のほぼ全身部分を切り取った(同3,4,6,10等)上,更にその目の部分をくり抜く加工を施したことが認められる。これらの加工はいずれも定型的で単純な行為であり,これによって新たな思想又は感情が創作的に表現されたということはできない。したがって,この点について原告写真の翻案権侵害をいう原告の主張は失当というべきである。(2) 証拠(甲6〜11)及び弁論の全趣旨によれば,本件看板は,目の部分をくり抜いた猫の写真ないしその複製物を色彩あるいは大きさのグラデーションが生じるように多数(正確な数についての主張はないが,全部で数百枚に及ぶことは明らかである。別紙「訴状別表の見方」の添付写真1)参照)並べてコラージュとしたものであり,全体として一個の創作的な表現となっていると認められる一方,これに使用された原告写真又はそのコピーのそれぞれは本件看板の全体からすればごく一部であるにとどまり,本件看板を構\成する素材の一つとなっているということができる。そうすると,本件看板に接する者が,原告写真の表現上の本質的な特徴(原告が,それぞれの原告写真を撮影するに当たり,被写体の選択,シャッターチャンス,アングル,レンズ・フィルムの選択等を工夫することにより,原告の思想又は感情が写真上に創作的に表\現されたと認められる部分。ただし,原告写真の表現上の本質的な特徴がどこに存在するかについて原告による具体的な主張はない。)を直接感得することができるといえないと解すべきである。したがって,本件各パネル又は本件看板の作成行為が原告の翻案権を侵害すると認めることはできない。\n
2 争点(2)(被告三越伊勢丹の責任の有無)について
(1) 原告は,まず,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権及び著作者人格権の侵害行為を幇助したと主張する。そこで判断するに,原告は本件看板の作成行為及び本件売場への設置行為について著作権及び著作者人格権の侵害があると主張するところ,まず,本件看板の作成は被告アンダーカバーにより行われたものであって,作成行為自体に被告三越伊勢丹が関与したことをうかがわせる証拠はない。また,本件看板を本件売場に設置し,これを訪れた買物客らに見える状態に置くことは,それ自体として原告写真についての原告の著作権又は著作者人格権の侵害となるものではない(著作権法25条参照)。なお,原告は,本件各パネルを本件売場において組み立てて本件看板とする行為が著作権又は著作者人格権を侵害するものであって,被告三越伊勢丹はこれを幇助したとも主張するが,上記行為は複数のパネルを順番に並べるという単純な行為であって(甲6〜11参照),これを独立の侵害行為とみることは相当でない。したがって,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権等の侵害行為を幇助したと認めることはできない。 (2) 原告は,次に,被告三越伊勢丹には百貨店としてテナントに対して適切な管理監督をする条理上の義務があり,また,本件の状況下において被告アンダーカバーが著作権について明確な処理をしたか否かを精査する義務等があるところ,これらを怠ったことに不法行為責任を負う旨主張する。そこで判断するに,百貨店を経営する会社がテナントに対して著作権法に反する行為をしないよう適切な管理監督をする義務を負い,これに反したときは第三者に対して損害賠償責任を負うと解すべき根拠は見いだし難い。また,本件の関係各証拠上,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権及び著作者人格権侵害の事実を知り,又はこれを容易に知り得たとは認められないから,原告の主張するような精査等の義務を負うと解することもできない。(3) したがって,原告の主張はいずれも採用することができず,被告三越伊勢丹に対する原告の請求は理由がない。
3 争点(3)(原告の損害額)について
以上によれば,被告アンダーカバーは,コピー使用分の66枚につき原告の複製権を侵害し,現物使用分及びコピー使用分により本件看板を作成した行為につき原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害したものであり,これらの行為につき被告アンダーカバーには少なくとも過失があると認められる。そこで,これにより原告が被った損害額について,以下,検討する。
(1) 著作権侵害について
ア 原告は,著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)につき,1)ポジフィルムの買取り(紛失)料金相当額として,又は,2)原告写真を看板等に使用する場合の使用料10万円の5倍に当たる額として,1枚当たり50万円が相当であると主張する。イ そこでまず原告の上記1)の主張についてみるに,原告は,同主張の根拠として,原告の意に反するような使用態様はポジフィルムを買い取った場合にのみ許されるからである旨主張している。しかし,原告の意に反する使用態様であることについては後記のとおり著作者人格権の侵害に係る慰謝料額の認定に当たり考慮すべき事柄である上,ポジフィルムを買い取ったとしても意に反した使用が許されることになるわけでない。したがって,原告の上記1)の主張は失当というべきである。ウ 次に原告の上記2)の主張についてみるに,原告は原告写真を看板に使用する場合の使用料は1枚当たり1回につき10万円となるべきであると主張するところ,後掲の証拠(ただし,書証の枝番の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,写真の使用を第三者に許諾している業者又は写真家のインターネットサイトには,ディスプレイや看板に本件と同様の大きさの写真を用いる場合の使用料を,1枚当たり5万円(3か月まで。甲12),4万8000円(3か月まで。甲13),3万5000円(1年間。犬猫の写真を専門とする写真家のもの。乙2),5万円(乙5),3万円(乙6)と設定しているものがあることが認められる。しかし,これらの使用料は,証拠(甲12,13,乙2,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,いずれも使用を許諾された写真を一個の作品として,すなわち写真に現れた創作的な表現を直接感得し得る態様で看板等に用いることにより,写真それ自体が有する顧客吸引力を利用することを予\定して定められたものと認められる。これに対し,本件看板においては,多数の猫の顔写真を用いたコラージュ看板を作成するための素材として使用されたものであって,個々の原告写真が一個の作品として使用されるものではない。したがって,上記認定の使用料は,本件における損害額算定の参考になるにとどまり,これを直接の基準とすることは相当でないと解される。そして,上記のような原告写真の使用の態様と,本件看板は,我が国有数の百貨店において多数の買物客らの目を引くように設置されたものであるが,その設置期間が約2か月にとどまったことなど本件に現れた諸事情を総合考慮すると,本件における原告写真の使用料は1枚当たり1回につき1万円と認めるのが相当である。エ 原告は,さらに,本件においては使用料の5倍に相当する額を請求できると主張する。しかし,著作権法114条3項は,著作権の行使につき受けるべき金銭の額を損害額とする旨規定しているのであり,違約金ないし懲罰的損害賠償請求を認めたものではない。したがって,原告の主張を採用することはできない。オ 以上に対し,被告アンダーカバーは,1枚当たりの使用料は5833円とすべきであり,2回使用された原告写真については使用料が逓減されるべきと主張するが,使用料を1万円と解すべきことは上記で判断したとおりである。また,証拠(甲12,13,乙2,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,第三者に写真の使用を許諾している業者又は写真家の中には2回目以降の使用料を減額する者がいると認められるものの,減額することが一般的であると認めるに足りる証拠はない。したがって,被告アンダーカバーの上記主張を採用することはできない。カ 以上によれば,被告アンダーカバーが原告の複製権を侵害したことによる原告の損害額は,66万円(1万円×66枚)と認めるのが相当である。
(2) 著作者人格権侵害について
被告アンダーカバーは,原告写真の現物又はコピーを使用して本件看板を作成して原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害したものであるところ,同一性を侵害された原告写真が多数に及ぶ上,その改変行為は猫の目の部分をくり抜くという嗜虐的とも解し得るものであって,その性質上,原告の意に大きく反するということができる。また,証拠(甲1〜5,14,15)及び弁論の全趣旨によれば,原告は専ら猫や犬を被写体として撮影する写真家であり,原告写真が収録された写真集は,原告が長い年月を掛けて,世界各地を旅して作成したものであり,さらに,改変された写真の中には原告自身の飼い猫のものもあることが認められる。これらのことからすれば,被告アンダーカバーの著作者人格権侵害により原告が被った精神的損害は甚大なものであって,本件看板の設置期間が約2か月であること,被告アンダーカバーが原告に対し謝罪の意を表\していることといった事情を考慮しても,本件における慰謝料の額は200万円をもって相当というべきである。

◆判決本文

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平成22(ワ)27449  著作権 民事訴訟 平成26年05月30日 東京地方裁判所

 鑑定対象となった原画のコピーを添付することは32条の引用であると判断されました。
 上記観点から,本件行為につき,著作権法32条1項所定の「引用」としての利用として許されるか否かについて検討する。前記1(5)認定のとおり,Dの作品に関する鑑定証書を作成するに当たり,鑑定証書に対象となった原画のカラーコピーを添付することについて,被告は,鑑定証書はそこに添付されたカラーコピーの原画が真作であることを証するために作成されるものであることから,鑑定証書の鑑定対象となった原画を,多数の同種画題が存する可能性のある中で特定し,かつ,当該鑑定証書自体が偽造されるのを防止する目的で行っていると認められること,そして,その目的達成のためには,鑑定の対象である原画のカラーコピーを添付することが最も確実であることから,これを添付する必要性,有用性が認められること,著作物の鑑定の結果が適正に保存され,著作物の鑑定業務の適正を担保することは,贋作の存在を排除し,著作物の価値を高め,著作権者等の権利の保護を図ることにもつながるものであることなどを併せ考慮すると,著作物の鑑定のために当該著作物の複製を利用することは,著作権法の規定する引用の目的に含まれるというべきである。そして,本件行為について,原画を複製したカラーコピーは,ホログラムシールを貼\\付した表面の鑑定証書の裏面に添付され,表\\裏一体のものとしてパウチラミネート加工されており,原画をカラーコピーした部分のみが分離して利用に供されることは考え難く,鑑定証書自体も,絵画の所有者の直接又は間接の依頼に基づき1部ずつ作製されたものであり,絵画と所在を共にすることが想定されているということができ,これら鑑定証書が原画とは別に流通している実態があることについての的確な証拠もないことに照らせば,鑑定証書の作製に際して,原画を複製したカラーコピーを添付することは,その方法ないし態様としてみても,社会通念上,合理的な範囲内にとどまるものというべきである。しかも,以上の方法ないし態様であれば,原画の著作権を相続した原告らの許諾なく原画を複製したカラーコピーが美術書等に添付されて頒布された場合などとは異なり,原告らが絵画の複製権を利用して経済的利益を得る機会が失われるなどということも考え難い。以上を総合考慮すれば,被告が,鑑定証書を作製するに際して,その裏面に本件コピーを添付したことは,著作物を引用して鑑定する方法ないし態様において,その鑑定に求められる公正な慣行に合致したものということができ,かつ,その引用の目的上でも,正当な範囲内のものであると認めるのが相当である。そうすると,本件行為は著作権法32条1項所定の「引用」として適法なものであるということができる。
(3)ア この点に関して原告らは,被告が著作権者である遺族の許諾なく行う本件行為は公正な慣行に合致するものではないから,適法引用の要件を充たさない旨主張する。しかし,前記1(6)で認定したとおり,被告の作成する鑑定証書と同程度の大きさの鑑定証書を発行し,絵画のコピーを添付するとの取扱いについては,著作権者の許諾を得ているとするところとそうでないとするところもみられるほか,許諾を得ているとするところでも,結局許諾のないままに行っているとするものもあることなどからすると,原画のカラーコピーを鑑定証書に添付するにつき,著作権者である遺族の許諾を得て鑑定証書に本件コピーを添付するという公正な慣行が存在すると認めることはできないというべきである。

◆判決本文

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平成24(ワ)268 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年12月20日 東京地方裁判所

カタログに美術作品を複製したことは、著作権法の引用には当たらないと判断されました。
 被告は,本件カタログにおいて美術作品を複製したことが適法引用(著作権法32条1項)に当たる旨主張するが,その主張の趣旨は,本件カタログにおける美術作品の作者,題号等の取引に必要な情報の記載が引用表現であり,美術作品の写真(複製物)が被引用著作物であると主張するものと解される。 そこで検討するに,著作権法32条1項は,「公表された著作物は,引用して利用することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定するから,他人の著作物を引用して利用することが許されるためには,引用して利用する方法や態様が,報道,批評,研究等の引用するための各目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要である。 本件カタログにおいて美術作品を複製する目的は,本件オークションにおける売買であることは明らかである。他方,本件カタログには,美術作品の写真に合わせて,ロット番号,作家名,作品名,予想落札価格,作品の情報等が掲載されるが(乙17),実際の本件カタログ(枝番号を含めて甲148〜279,乙19)をみても,写真の大きさの方が上記情報等の記載の大きさを上回るものが多く,上記の情報等に眼目が置かれているとは解し難い。また,本件カタログの配布とは別に,出品された美術作品を確認できる下見会が行われていることなどに照らすと,上記の情報等と合わせて,美術作品の写真を掲載する必然性は見出せない。 そうすると,本件カタログにおいて美術作品を複製するという利用の方法や態様が,本件オークションにおける売買という目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるとは認められない。また,公正な慣行に合致することを肯定できる事情も認められない。 したがって,被告の主張は理由がない。

◆判決本文
 

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