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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権その他

平成24(ワ)33533 著作権侵害差止等請求事件 著作権 平成25年10月30日 東京地方裁判所

 いわゆる自炊業者(スキャン代行業者)に対する差止および損害賠償が認められました。著30条の適用は否定されました。
 複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であり,その複製の実現に当たり枢要な行為をしている者が複製の主体であるということができる(最高裁平成23年1月20日第一小法廷判決・最高裁平成21年(受)第788号・民集65巻1号399頁参照。)。これを本件についてみると,本件における複製の対象は,利用者が提供する書籍であり,問題とされる複製行為は,書籍をスキャナーで読み取って電子化されたファイルを作成することにあるところ,本件事業における一連の作業は,前記第2,1(8)記載のとおり,利用者においてインターネットのウェブサイトから書籍の電子化を申し込み,直接被告会社らの指定する場所にこれを郵送等するか,あるいは,書籍の販売業者等から直接被告会社らの指定する場所に郵送等し,これを受領した被告会社らにおいて,書籍を裁断するなどしてスキャナーで読み取り,書籍の電子ファイルを作成して,完成した電子ファイルを利用者がインターネットを通じてダウンロードするか,電子ファイルを格納したDVDないしUSB等の送付を受ける,というものである。これら一連の作業をみると,書籍を受領した後に始まる書籍のスキャナーでの読込み及び電子ファイルの作成という複製に関連する行為は,被告会社の支配下において全ての作業が行われ,その過程に利用者らが物理的に関与することは全くない。上記によれば,本件事業において,書籍をスキャナーで読み取って電子化されたファイルを作成するという複製の実現に当たり枢要な行為を行っているのは被告会社らであるということができる。そうすると,本件事業における複製行為の主体は被告会社らであり,利用者ではないというべきである。
 (2) 次に本件事案に著作権法30条1項が適用されるか否かにつき検討する。著作権法30条1項は,著作権の目的となっている著作物は,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは,同項1号ないし3号に定める場合を除き,その使用する者が複製することができる旨規定している。そうすると,同条項にいう「その使用する者が複製する」というためには,使用者自身により複製行為がされるか,あるいは使用者の手足とみなしうる者によりこれがされる必要があるというべきところ,既に検討したとおり,被告タイムズ及び被告ビー・トゥ・システムズは,本件事業における複製の主体であって,使用者自身でも,使用者の手足とみなしうる者でもないのであるから,本件においては,著作権法30条1項にいう「その使用する者が複製する」の要件を満たすとはいえず,したがって,同条が適用されるものではないと認めるのが相当である。

◆判決本文

◆スキャン代行業者に対する他の事件はこちらです。平成24(ワ)33525 平成25年9月30日 東京地裁 文

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平成25(ネ)10040 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年09月30日 知的財産高等裁判所

 著作権侵害および著作者人格権侵害が認定されました。被告は人権擁護団体のようです。原告はプライバシー侵害(受刑者として公表された)が気にさわったでしょうか?\n
 事件の経緯は下記です。
刑務所に収容されている受刑者が自己作成の絵画を被告に預けたところ、被告はこれを展示すると共に、展示会のパンフレットに同絵画の複製を掲載して頒布。また、パンフレットに本件絵画とともに受刑者があることとその氏名を掲載。
 前記第2の2(3)において認定したとおり,第1審被告は,本件パンフレットに本件絵画を掲載するに当たり,著作者として第1審原告の氏名を表示しているところ,これは,本件絵画の公衆への提供に際し著作者名を表\示しないこととすることを内容とする第1審原告の氏名表示権を侵害するものである。なお,第1審原告は,前記第2,2(3),同(4)及び前記1(1)のとおり,「アンデパンダン展」が「救援」誌上の絵画の展示会であると認識して,本件絵画を含む複数の絵画を第1審被告に送付した際に,それらの絵画を「匿名」又は変名で掲載することを第1審被告に求めたことはなかったこと,その後本件展示会の開催直前に,第1審被告からの手紙により,展示会が「救援」誌上ではなく,公開のギャラリーで行われることを知ったことから,急遽,自己の氏を表示せず,「(第1審原告の名)」のみの表\示とすることを申し入れたことに照らせば,第1審原告は,「救援」誌上の展示会を前提として,第1審被告に送付した本件絵画を含む各絵画について,その著作者名として自己の氏名を表\示する意思を有していたものにすぎず,公開のギャラリーにおいて本件絵画を展示する際や,一般に頒布される予定の本件パンフレットに本件絵画等を掲載するに際し,著作者としてその氏名を表\示することを承諾していたものと認めることはできない(本件パンフレットについては,本件絵画のカラーコピーを掲載することが複製権侵害となることは,前記2のとおりである。)。そして,他に第1審原告が,第1審被告において本件パンフレットに本件絵画を掲載するに当たり,著作者として第1審原告の氏名を表示することを承諾していたことを認めるに足りる証拠もない。さらに,上記に認定判断したところに加え,本件証拠上,第1審被告が,第1審原告に対し,本件パンフレットに本件絵画を掲載するに当たり,著作者として第1審原告の氏名を表\示することの承諾を得ようとした形跡もうかがえないことも併せ考えると,第1審被告には,本件パンフレットに本件絵画の著作者として第1審原告の氏名を表示することによる氏名表\示権の侵害について,少なくとも過失があるものと認められる。 なお,氏名表示権は著作者人格権の一つであるところ,著作者人格権は,著作者の精神的活動の所産として創作された著作物と著作者との人格的なつながりに基づいて,当該著作物の上に存する著作者の人格的利益を保護するものであり,特に氏名表\示権は,著作者が著作物の創作者であることを表示し,あるいは,表\示しない利益を保護するためのものであるから,かかる著作者の利益は,一般人が,著作物とは無関係に有する,自己が受刑者であることを公表されないことについての利益(プライバシー)とは異なる性質のものである。本件においては,この受刑者であることを公表\されないことについての第1審原告の利益は,法19条の氏名表示権で保護されるべき著作者の利益とは別個のプライバシー侵害の問題として,別途,後記4において判断することとする。\n

◆判決本文

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平成25(ヨ)20003 工作物設置続行禁止仮処分申立事件 著作権 民事仮処分 平成25年09月06日 大阪地方裁判所 

 庭園内に工作物を設置することについて、裁判所は、やむを得ないと認められる改変(著20条2項同4号)に該当するとして、設置続行禁止(仮処分)を認めませんでした。
 既に述べたとおり,本件庭園は,自然の再現,あるいは水の循環といったコンセプトを取り入れることで,美的要素を有していると認められる。しかしながら,本件庭園は,来客がその中に立ち入って散策や休憩に利用することが予定されており,その設置の本来の目的は,都心にそのような一角を設けることで,複合商業施設である新梅田シティの美観,魅力度あるいは好感度を高め,最終的には集客につなげる点にあると解されるから,美術としての-24-鑑賞のみを目的とするものではなく,むしろ,実際に利用するものとしての側面が強いということができる。また,本件庭園は,債務者ほかが所有する本件土地上に存在するものであるが,本件庭園が著作物であることを理由に,その所有者が,将来にわたって,本件土地を本件庭園以外の用途に使用することができないとすれば,土地所有権は重大な制約を受けることになるし,本件庭園は,複合商業施設である新梅田シティの一部をなすものとして,梅田スカイビル等の建物と一体的に運用されているが,老朽化,市場の動向,経済情勢等の変化に応じ,その改修等を行うことは当然予定されているというべきであり,この場合に本件庭園を改変することができないとすれば,本件土地所有権の行使,あるいは新梅田シティの事業の遂行に対する重大な制約となる。以上のとおり,本件庭園を著作物と認める場合には,本件土地所有者の権利行使の自由との調整が必要となるが,土地の定着物であるという面,また著作物性が認められる場合があると同時に実用目的での利用が予\定される面があるという点で,問題の所在は,建築物における著作者の権利と建築物所有者の利用権を調整する場合に類似するということができるから,その点を定める著作権法20条2項2号の規定を,本件の場合に類推適用することは,合理的と解される。
イ 模様替え
本件工作物の設置は,本件庭園の既存施設であるカナルや花渦を物理的に改変せずに行うものであることから,著作権法20条2項2号が定める中では,「模様替え」に相当すると解される。債権者は,建築基準法の解釈として,本件工作物の設置は「模様替え」に当たらない旨を主張するが,本件庭園は建築物そのものではなく,著作権法の定めを建築基準法と同一に考える必要もないから,債権者の主張は採用できない。
ウ 著作権法20条2項2号のあてはめ
本件への適用を考えるに,著作権法20条は,1項において,著作者が,その著作物について,意に反して変更,切除その他の改変を受けず,同一性を保持することができる旨を定めた上で,2項2号において,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えによる改変については,前項の規定を適用しない旨を定めている。著作権法は,建築物について同一性保持権が成立する場合であっても,その所有者の経済的利用権との調整の見地から,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えによる改変について,特段の条件を付することなく,同一性保持権の侵害とはならない旨を定めているのであり,これが本件庭園の著作者と本件土地所有者の関係に類推されると解する以上,本件工作物の設置によって,本件庭園を改変する行為は,債権者の同一性保持権を侵害するものではないといわざるをえない。
エ 債権者の主張について
(ア) 債権者は,著作権法20条2項2号が適用されるためには,1)経済的,実用的な観点から必要な範囲の増改築であること,2)個人的な嗜好に基づく恣意的な改変ではないことが必要であり,本件工作物の設置は,そのいずれの要件も欠くから,同号は適用されない旨を主張する。しかしながら,同号の文言上,そのような要件を課していないことに加え,著作物性のある建築物の所有者が,同一性保持権の侵害とならないよう増改築等ができるのは,経済的,実用的な観点から必要な範囲の増改築であり,かつ,個人的な嗜好に基づく恣意的な改変ではない場合に限られるとすることは,建築物所有者の権利に不合理な制約を加えるものであり,相当ではない。 以上によれば,同号の文言に特段の制約がない以上,建築物の所有者は,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えをすることができると解されるのであり,その理は,債権者と債務者の関係にも類推されるというべきである。債務者の主張はこの理をいうものとして理由があり,これに反する債権者の主張は採用できない。 (イ) もっとも,建築物の所有者は建築物の増改築等をすることができるとしても,一切の改変が無留保に許容されていると解するのは相当でなく,その改変が著作者との関係で信義に反すると認められる特段の事情がある場合はこの限りではないと解する余地がある。債権者が,本件工作物の設置はP2個人のプロジェクトのモニュメントであり,実用性,経済性,必要性を欠くと主張する点も,その趣旨を述べたものとして理解することもできるが,前記1で述べたところに照らすと,なお採用できないというべきである。すなわち,本件庭園は,複合商業施設である新梅田シティと一体をなすものであり,市場動向や流行に従って,その設備を適宜に更新していく必要があることは,債権者も理解していたはずであること,債権者は,本件庭園の設計当初から,旧花野について,将来新たな建築がされることを予見していたこと,平成18年改修の際も,一定の改変は受忍するともとれる趣旨を述べていること,債務者は,本件工作物を設置する場所の検討に当たって,一応,債権者の意見を聴取し,一定程度反映させていること,以上の点を指摘することができるのであって,これらを総合すると,本件工作物の設置について,本件庭園の著作者である債権者との関係で,信義に反すると認められる特段の事情があるとまではいえない。\n
オ まとめ
以上によれば,本件工作物の設置は,著作者である債権者の意に反した本件庭園の改変にはあたるものの,著作権法20条2項2号が類推適用される結果,同一性保持権の侵害は成立しないことになる。

◆判決本文

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平成24(ワ)36678 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年09月12日 東京地方裁判所

 著作権侵害は認められたものの、損害額は10万円と認定されました。
 前記1(1)認定の事実に弁論の全趣旨を総合すれば,被告は,平成24年6月から平成25年1月中旬まで,約20社に対し,被告資料を用いて「EFO CUBE」の営業を行い,そのうちの2社と「EFO CUBE」の提供に関する契約を締結して,平成24年11月及び12月に各月15万6500円,平成25年1月から3月までに各月14万3500円の合計74万3500円の売上げを計上したが認められる。この事実によれば,被告は,上記2社との契約が終了するまでの間,毎月14万3500円の売上げを計上することができ,仮に上記2社との契約が2年間継続するとすれば,この間に合計347万円の売上げを計上することができることになると認められるが,被告資料は,「EFO CUBE」の営業において補助的な役割を有するにとどまる上,被告各記載は7頁で,全18頁の被告資料の約38.8%に相当するにすぎないから,これらの事情を併せ考えると,原告が受けた損害の額は10万円と認めるのが相当である。原告は,被告の売上げ1億6800万円に10%を乗じた額が原告が受けた損害の額であると主張するが,上記被告の売上げは,「EFO CUBE」を2年間提供することによる売上げであって,被告資料を用いたことによるものではなく,また,原告の原告各記載の著作権の行使について売上げの10%を下らない額を受けることができることを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は,採用することができない。

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平成24(ワ)32409等 損害賠償本訴,著作権確認等反訴請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年08月29日 東京地方裁判所 

 契約解除に基づき、著作権侵害が認められました。本人訴訟です。ただし、著作権者は150万円の既払い料について、発注者へ返還せよと判断されています。
 原告は,著作権法112条2項に基づき,侵害の停止又は予防に必要な措置として,本件作品からの本件風景映像動画の削除を請求する。ところで,同項によれば,この請求は,独立してすることはできず,侵害の停止又は予\防の請求に附帯してしなければならないが,原告は,複製,頒布の停止又は予防を請求していない。そうであるから,独立してした上記請求に係る訴えは,不適法である。\n
・・・
上記イの事情に鑑みれば,被告の上記主張に沿う甲8及び乙1はたやすく採用することができず,他に原告が各々の季節の「扉」に使用するものを除き風景の映像動画を収録することを承諾して本件契約を締結したことを認めるに足りる証拠はない。なお,甲8には,「サンプルとして送付いただいたDVD−Rに含まれる映像素材も,『Virtual Trip 山野草』に使用したい旨をA1様にご相談したところ,A1様からは『どうぞ,お任せします』と快諾をいただきました」との記載があるが,乙1にはこれに沿う記載がなく,また,上記イのとおり,原告は,各々の季節の「扉」に4点の風景の映像動画を収録することを承諾していたにとどまるから,原告がこれを超えて風景の映像動画を使用することを承諾するとは考え難いのであって,甲8の上記部分をもって,原告が「扉」に使用するものを除き風景の映像動画を収録することを承諾したと認めることもできない。
エ そうすると,被告は,本件作品に本件風景映像動画を収録することによって,原告の本件風景映像動画に対する著作権(複製権及び頒布権)を侵害するものと認められる。
・・・
原告は,本件風景映像動画の著作権行使の適正使用料金を受けることができたとして,主な映像ライブラリーにおける著作権フリーのHD動画の一般市場相場にその4倍の違約料金を加算した,1点当たり4万5000円の損害を受けたと主張する。本件契約は,原告が,被告に対し製作した録音録画物の著作権等を譲渡してその自由な利用を許諾し,被告から対価として150万円の支払を受けるというものである。本件作品には,原告が製作した山野草の映像動画が448点収録されているから,原告は,山野草の映像動画1点に対し3348円(円未満切捨て)の支払を受けたものということができる。そして,原告が本件作品に本件風景映像動画を収録することを許諾する場合もこれと同様の条件によるものと考えられる。そうであれば,原告が本件作品に本件風景映像動画を収録することを許諾する場合に,主な映像ライブラリーにおける著作権フリーのHD動画の一般市場相場の使用料金を受けることができたということはできず,さらにその4倍の違約料金を加算した額の使用料金を受けることができたということもできない。イ 前記アに判示したように,原告は,本件作品に本件風景映像動画を収録することを許諾する場合に,本件契約と同様の条件ですると考えられる。そして,これを点数でみるとすれば,原告は,1点当たり3348円として52点の合計17万4096円の支払を受けることになるが,それぞれの映像動画には長短があることに鑑みると,尺数によって算定するのが相当であり,これによれば,原告は,9分8秒分に相当する23万5935円(円未満切捨て)の支払を受けることができたと認められる。ウ そうすると,原告は,本件風景映像動画の著作権の行使について23万5935円を受けることができたのであり,これを自己が受けた損害の額として,その賠償を請求することができる。

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平成22(ワ)12214 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月18日 大阪地方裁判所

 テロップ製作業者が使用許諾契約無しに使用したフォントを用いて作成されたテロップについて、放送局およびDVD作成業者を訴えましたが、裁判所は請求を退けました。
 原告は,本件タイプフェイスをデータ形式にした本件フォントが,一揃いのタイプフェイスとしてはもちろんのこと,一文字単位でも法的な保護に値する利益を有する旨主張する。本件タイプフェイスの具体的形態は,前記第2の1(4) のとおりであって,著作権法2条1項1号の著作物に該当するものとは認められず(最高裁平成12年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁参照),原告も,著作権法に基づく保護を求めているものではないが,本件フォントをテレビ放送等に使用することは,上記法律上保護された利益を侵害するものとして,不法行為に当たると主張する。しかしながら,著作権法による保護の対象とはならないものの利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解されるが(最高裁平成23年12月8日第一小法廷判決・民集65巻9号3275頁参照),本件フォントを使用すれば,原告の法律上保護される利益を侵害するものとして直ちに不法行為が成立するとした場合,本件タイプフェイスについて排他的権利を認めるに等しいこととなり,このような主張は採用できない。イ 原告は,前記アの主張とは別に,本件フォントに係るライセンスビジネスという営業上の利益が侵害された旨の主張もするところ,本件フォントをテロップに使用したテレビ番組が放送されたのは,被告らが,本件フォントソフトを使用してテロップを製作し,あるいは本件フォント成果物をテロップに使用したことにより,故意又は過失による不法行為が成立し,これによって,原告の営業上の利益が侵害された,あるいは,本件フォントに係る使用許諾契約上の地位が侵害された旨を主張すると趣旨と解される。そこで,次項以下では,前記認定事実に照らし,原告のかかる利益を侵害する不法行為が成立するか否かにつき,検討することとする(なお原告は,本件訴訟において,本件フォントを本件編集室のパソ\コンに複製されたことで,本件フォントソフトの販売利益を失った旨の主張はしないことを明確にしている。平成25年5月1日付け原告最終準備書面9頁)。\n
・・・
タイプフェイスあるいはフォントが,一定の財産的価値があるものとして有償取引の対象となっていることは原告主張のとおりであるものの,これらは歴史的,文化的に形成されてきた文字との同一性の範囲内にあるものとして流通しているのであるから,フォント成果物の流通過程において,前者の使用権限の有無を確認すべき義務があるとすれば,その流通に制約が課されることとなり,文字を使用した情報伝達やコミュニケーション自体を阻害するおそれが生じる。(エ) 本件番組は,別法人である放送事業者,編集担当者,番組制作業者及びテロップ製作業者などが,業務を分担する形で制作されているが,このような場合,一般には,各人が受注した範囲で権利の処理を行い,必要な許諾を得るものとされており,特段の理由のない限り,それを前提として各人の業務を遂行することが許されると解される。イ また,原告は,原告の主張する利益の要保護性と被告らによる本件フォントの使用態様とを対比して,被告らの行為は,社会的に相当な範囲を逸脱し,悪質であるとして,不法行為の成立を主張するが,被告らの故意が認められないことは前述のとおりであり,以下の事情を総合すると,被告らが,本件フォントが使用された本件番組等に関与した事実を前提としてもなお,これを違法と評価することはできず,この点からも不法行為に関する原告の主張は採用できないというべきである。

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平成24(ワ)24571 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月16日 東京地方裁判所

 政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって,原告の著作者人格権を侵害すると判断されました。
 本件似顔絵は,原告が昭和天皇及び今上天皇の似顔絵を創作的に描いたものであって,美術の範囲に属するものであるから,原告は,これにつき著作権及び著作者人格権を有するものと認められる。(2) 前記前提事実(6)のとおり,被告が本件似顔絵の写真を投稿した画像投稿サイトの投稿内容は,被告により特にブロックされた者以外の者において自由に閲覧することができる設定とされていたところ,被告は,これに上記写真をアップロードしたのであるから(本件行為1),これにより,原告が本件似顔絵について有する著作権(公衆送信権)を侵害したものというべきである。(3) また,前記前提事実(4)によれば,被告は,自作自演の投稿であったにもかかわらず,被告が本件似顔絵を入手した経緯については触れることなく,あたかも,被告が本件サイト上に「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。」「陛下プロジェクト」なる企画を立ち上げ,プロのクリエーターに天皇の似顔絵を描いて投稿するよう募ったところ,原告がその趣旨に賛同して本件似顔絵を2回にわたり投稿してきたかのような外形を整えて,本件似顔絵の写真を画像投稿サイトにアップロードしたものである(本件行為1)。本件似顔絵には,「C様へ」及び「A」という原告の自筆のサインがされていたところ,「C様」は,被告が本件サイトにおいて使用していたハンドルネームであった(乙2の1・2,弁論の全趣旨)。上記の企画は,一般人からみた場合,被告の意図にかかわりなく,一定の政治的傾向ないし思想的立場に基づくものとの評価を受ける可能性が大きいものであり,このような企画に,プロの漫画家が,自己の筆名を明らかにして2回にわたり天皇の似顔絵を投稿することは,一般人からみて,当該漫画家が上記の政治的傾向ないし思想的立場に強く共鳴,賛同しているとの評価を受け得る行為である。しかも,被告は,本件サイトに,原告の筆名のみならず,第二次世界大戦時の日本を舞台とする『特攻の島』という作品名も摘示して,上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示したものである。そうすると,本件行為1は,原告やその作品がこのような政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって,原告の名誉又は声望を害する方法により本件似顔絵を利用したものとして,原告の著作者人格権を侵害するものとみなされるということができる。\n

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平成24(ワ)24571 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月16日 東京地方裁判所

 漫画家が書いた似顔絵を無断で画像投稿サイトに投稿したことは,原告の著作権を侵害し,かつ,その名誉又は声望を害する方法で著作物を利用する行為として原告の著作者人格権を侵害すると判断されました。
 前記前提事実(4)によれば,被告は,自作自演の投稿であったにもかかわらず,被告が本件似顔絵を入手した経緯については触れることなく,あたかも,被告が本件サイト上に「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。」「陛下プロジェクト」なる企画を立ち上げ,プロのクリエーターに天皇の似顔絵を描いて投稿するよう募ったところ,原告がその趣旨に賛同して本件似顔絵を2回にわたり投稿してきたかのような外形を整えて,本件似顔絵の写真を画像投稿サイトにアップロードしたものである(本件行為1)。本件似顔絵には,「C様へ」及び「A」という原告の自筆のサインがされていたところ,「C様」は,被告が本件サイトにおいて使用していたハンドルネームであった(乙2の1・2,弁論の全趣旨)。 上記の企画は,一般人からみた場合,被告の意図にかかわりなく,一定の政治的傾向ないし思想的立場に基づくものとの評価を受ける可能性が大きいものであり,このような企画に,プロの漫画家が,自己の筆名を明らかにして2回にわたり天皇の似顔絵を投稿することは,一般人からみて,当該漫画家が上記の政治的傾向ないし思想的立場に強く共鳴,賛同しているとの評価を受け得る行為である。しかも,被告は,本件サイトに,原告の筆名のみならず,第二次世界大戦時の日本を舞台とする『特攻の島』という作品名も摘示して,上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示したものである。 そうすると,本件行為1は,原告やその作品がこのような政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって,原告の名誉又は声望を害する方法により本件似顔絵を利用したものとして,原告の著作者人格権を侵害するものとみなされるということができる。
(4) 以上のとおり,本件行為1は,原告の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権を違法に侵害するものであり,被告にはそのことについての故意があったと認められる。

◆判決本文

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平成24(ワ)10890 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月16日 大阪地方裁判所

 パンフレットをウェブページに表示することが引用と認められました。\n
 著作権法32条1項によると,公表された著作物は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができると規定されている。引用の目的上正当な範囲内とは,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり,具体的には,他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか,その方法や態様,利用される著作物の種類や性質,当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない。
(2) 本件掲載行為が引用に当たること
別紙ウェブページ記載のとおり,本件パンフレットの表紙(本件イラストを含む。)は,被告岡山県の事業である「新おかやま国際化推進プラン」を紹介する目的で掲載されたものであることが明らかである。その態様も,前記2(2)イ(イ)のとおり,被告岡山県の事業を広報するという目的に適うものであり,本件パンフレットの表紙に何らの改変も加えるものでもない。しかも,このような本件掲載行為の目的,態様等からすると,著作権者である原告P1の利益を不当に害するようなものでもない。以上に述べたところからすれば,本件掲載行為は,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということができ,「公正な慣行」に合致するということもできるから(原告もこのことについては明示的に争わない。),適法な引用に当たると解するのが相当である。
(3) 原告らの主張について
原告らは,1)本件掲載行為に係る別紙ウェブページの記載(被引用物)が著作物ではないこと,2) 原告らの著作権が表示されていないこと,3)主従関係にはないこと,4)本件掲載行為が同一性保持権を侵害することからすれば,引用は成立しない旨主張して争っている。このうち上記1)の主張について検討すると,旧著作権法30条1項第2では「自己ノ著作物中」に引用することが必要とされていたものの,同改正後の著作権法32条1項では明文上の根拠を有しない主張である。その点はさておくとしても,別紙ウェブページの記載は相当な分量のものであり,内容・構成に創作性が認められる(選択の幅がある)ことからすれば,その著作物性を否定することは困難である。上記2)の主張について検討すると,本件パンフレットの表紙には原告P1の氏名の表\示がないものの,後記4のとおり,このことは原告P1の氏名表示権を侵害するものではない。そうすると,本件パンフレットの表\紙は無名の著作物であり,著作権法48条2項により出所の表示の必要がないから,上記2)の主張にも理由がない。上記3)の主張については,前記2(2)イ(ウ)のとおり,別紙ウェブページにおける本件パンフレットの表紙の記載はウェブページ全体の中ではごく一部であり,主従関係にあるものと認められるから,上記3)の主張も採用できない。上記4)の主張に理由がないことは,後記4で述べるとおりである。よって,原告らの主張はいずれも採用できない。なお,別紙ウェブページ記載の態様からすれば,本件パンフレットの表紙の部分は,他のウェブページの記載と明瞭に区別することができる。\n

◆判決本文

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平成24(ワ)13494 著作者人格権等侵害行為差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年06月28日 東京地方裁判所

 警告書、苦情申告書、答弁書をブログに掲載されたことが、公衆送信権侵害となるのかが争われました。苦情申\告書、答弁書については著作物性が認められました。ただし、差止のみで、損害賠償請求については認められませんでした。
 (ア) 前記前提事実(2)アのとおり,原告文書1は,原告が,南洋株式会社(通知人)の代理人として,平成23年10月4日,被告Y1に宛てて送付した通知書であり,表題,日付等の記載の後に,通知人の代理人として通知を行う旨及び被告Y1の作成するブログ内に通知人に関し事実に反する内容の記事が掲載されている旨を記載し,上記記事のURLを表\示し,さらに,上記記事の内容が事実に反し通知人の名誉・信用を著しく害し多大な損害が発生しているものである旨,上記記事の削除を求め,削除に応じない場合には仮処分申立てや損害賠償請求等の必要な法的措置をとらざるを得ない旨,以後問合せは通知人本人ではなく通知人代理人にされたい旨を記載したものである。上記原告文書1の本文部分は,上記URLの表\示部分を含めても17行,URLの表示部分を除けば13行からなるものである。
(イ) 原告文書1は,上記のとおり,前提となる事実関係を簡潔に摘示した上で,これに対する法的評価及び請求の内容等を短い表現で記載したものにすぎない。原告文書1の体裁,記載内容,記載順序,文章表\現は,いずれも内容証明郵便による通知書として一般的にみられるものであり,ありふれたものというべきであるから,原告文書1において何らかの思想又は感情が表現されているとしても,上記思想又は感情が創作的に表\現されているものとは認められない。この点,原告は,原告文書1は,用語や言い回しを厳選し,最も適切な表現を慎重に吟味して作成されたものであり,作成者の個性が表\れていると主張するが,原告の主張するような点を原告文書1から表現として感得することはできず,上記主張を採用することはできない。
(ウ) したがって,原告文書1に著作物性は認められない。
イ 原告文書2について
(ア) 前記前提事実(2)イのとおり,原告文書2は,原告が東京行政書士会会長宛てに提出した平成23年10月17日付けの苦情申告書であり,A4版5ページからなる文書である。原告文書2は,表\題,日付等の記載の後に,苦情の趣旨及び苦情の理由を記載し,さらに「第3 最後に」として,「申告者は,…多くの行政書士の方々が本当に真摯に依頼者のために業務に取り組まれていることをよく存じあげております。そのような中で,本件の苦情対象行政書士のごとく,行政書士法違反の非違行為を行う行政書士がごく少数でも存在することは,行政書士全体の社会的信用を貶めるものであり,適正に業務をされておられる大多数の行政書士の方々にも多大な悪影響を及ぼすものであると思います。」などと記載し,東京行政書士会に調査,対応を求める旨と,状況の改善がない場合には対象行政書士の東京都知事に対する懲戒を申\し立てる所存である旨などを記載したものである。
(イ) 原告文書2は,上記のとおり,行政書士会に対する苦情申告書であり,その文書の性質上,当然に記載すべき項目(日付,申\告者等の形式的記載事項や,申告すべき苦情の内容,事実関係の記載,上記事実関係の法的評価,非違行為に該当する考える理由等)を含むものであるということができる。しかし,苦情の内容,事実関係,その法的評価等に関する点については,記載すべき内容が形式的かつ一律に定まるものではなく,これらをどのような順序で,どのような表\現により,どの程度記載するかについては,様々な可能性があるものというべきである。そうすると,原告文書2は,上記のとおり表\現について様々な可能性がある中で,記載の順序や内容,文章表\現を工夫したものということができるのであって,このような点に,作成者の個性の表出がみられるものというべきであり,思想又は感情を創作的に表\現したものに当たるということができる。
(ウ) したがって,原告文書2には著作物性が認められる。 ウ 原告文書3
(ア) 前記前提事実(2)ウのとおり,原告文書3は,被告Y1が東京弁護士会に対し請求した原告の懲戒請求につき,原告が,平成23年11月16日,東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出した答弁書であり,事件番号,表題,日付等の形式的記載事項の表\示の後に,請求の趣旨に対する答弁,懲戒請求に至る経緯及び理由に対する認否,被調査人(原告)の主張を記載したものである。被調査人(原告)の主張においては,同人が作成した「かなめくじ」に関するブログ記事が,請求者(被告Y1)の事務所(「かなめ行政書士事務所」)を指したものではないことなどを示す事情として,「かなめくじ」というキャラクターを制作した経緯(「かなめくじ」とは有機物的な気色悪いキャラクターであり,これを「くそキモキャラ」と呼ぶこと,「かなめくじ」とは,「蚊」と「なめくじ」を合体させたものであること,人に嫌悪感をもよおす生き物のうちから,制作が容易でシンプルなデザインであり,かつ,グッズ化に向きやすい形状・性質のものであって,動作や動きの再現が容易であるなどの条件を満たすものとして,軟体動物をモチーフに選んだ上で,これに蚊の羽を合体させることにしたこと,「蚊」と種々の軟体動物の名称を組み合わせてみた結果,語感の響き等から「かなめくじ」を選ぶに至ったことなど)が詳細に記載されている。
(イ) 原告文書3は,上記のとおり,懲戒請求手続において東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出された答弁書であり,その文書の性質上,当然に記載すべき項目(表題,日付等の形式的記載事項や,懲戒請求理由に対する認否等)を含むものであるということができる。しかし,これらのうち,懲戒請求に至る経緯及び理由に対する認否,被調査人(原告)の主張については,記載すべき内容が形式的かつ一律に定まるものではなく,どのような順序で,どのような表\現により,どの程度記載するかにつき様々な可能性があり得ることは原告文書2と同様であるところ,原告文書3は,これらの点について工夫がみられ,特に被調査人(原告)の主張の内容及び表\現はこの種文書において一般的なものとはいい難いものというべきである。そうすると,原告文書3には,作成者の個性が 表現として表\れているものとみることができる。
(ウ) したがって,原告文書3は思想又は感情を創作的に表現したものに当たり,著作物性が認められる。
(3) 小括
以上のとおり,原告文書1には著作物性が認められないから,原告文書1に係る原告の請求(被告各ブログにおける原告文書1を掲載して使用することの差止請求及び損害賠償請求)については,その余の点について検討するまでもなく理由がない。したがって,原告文書2及び3についてのみ,以下の争点につき検討する。

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平成25(ワ)1918 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年05月17日 東京地方裁判所

 米国法人の原告の著作権侵害について、準拠法はわが国著作権法と認定されました。
 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下「ベルヌ条約」という。)5条(2)によれば,著作物の保護の範囲は,専ら,保護が要求される同盟国の法令の定めるところによるとされるから,我が国における著作権の有無等については,我が国の著作権法を準拠法として判断すべきである。我が国とアメリカ合衆国(以下「米国」という。)は,ベルヌ条約の同盟国であるところ,本件各作品の著作者は,米国法人である原告であると認められるから(甲1の1ないし37),我が国において著作権法による保護を受ける(著作権法6条3号,ベルヌ条約5条(1),2条(1))。なお,著作権侵害を理由とする損害賠償請求の法的性質は不法行為であり,法の適用に関する通則法17条により準拠法を決定するべきであるところ,本件において,同条にいう「加害行為の結果が発生した地」は日本国内であると認められるから,我が国の法律がその準拠法となる。

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平成22(ワ)38003 出版差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年03月01日 東京地方裁判所

 本件著作物の一部については、著作者であるとして、氏名表示権侵害を認めました。\n
 原告は,本件著作物が亡Wと原告X4の共同著作物であり,仮にそうでなくとも,亡Wの原稿を原著作物とする原告X4の二次的著作物であるから,本件著作物を分冊化した分冊Iの著作者名として原告X4の名が表示されていないことは,原告X4の氏名表\示権を侵害すると主張する。この点,前記第2,2(3)のとおり,本件著作物については,亡Wがその執筆を始め,本件著作物のうち第I部「古典物理学」の部分(第5章「相対性理論」を除く。)の大半の原稿を完成間近とし,第II部「量子物理学入門」の原稿構成等のメモを途中まで制作したところで死亡したことから,その後,原告X4が,上記「相対性理論」の章を新たに執筆し,上記「量子物理学入門」の部分は,亡Wの上記原稿構\成等のメモを基に執筆し,その他の部分は,適宜内容の加除訂正を行って,本件著作物を完成させたことが認められるところ,前記第2,2(2)アの事実に,証拠(略)及び弁論の全趣旨を併せ考慮すると,本冊の第I部「古典物理学」(832頁分)のうち,原告X4が新たに執筆した第5章「相対性理論」の部分が24頁分(809頁ないし832頁)であること,第1章から第4章まで(3頁から808頁まで)は,亡Wがその原稿をほぼ仕上げていたものの,その部分に対して,原告X4が用紙24枚分の加除訂正を行ったこと,原告X4による上記加除訂正の中には,新たに図や数式を用いながら微分法とそれに関する関数の性質について解説した「微分法について」と題する記述(第I部・第1章「力学」の「1.2.1 直線運動における速度と加速度」の項の中にあり,本冊の13頁から約3頁分に相当する部分。)を挿入したり,従前の式に微分法の式を付加したり,図の座標軸を加筆して,本文中にその図の説明を書き加えたり,不適切な図を正しい図に修正したり,元の原稿になかった新たな見解や新たな説明を付加したり,いくつかの文章について,その一部を削除し,あるいは加筆して,文章の表現を正確又は分かりやすくしたり,十\数箇所の「長円」との表現を全て「楕円」との表\現に改めるなど,単なる誤字脱字の修正にとどまらず,文章や図などの具体的な表現について加除訂正がなされた部分が多数あること,第II部「量子物理学入門」について,そのうち亡Wの原稿構成等のメモが遺されていたのは,前半部分(第1章「量子力学入門」の始めから第2章「変換理論」の途中までであり,おおむね本冊の833頁から918頁に相当する部分。)だけであり,しかも,そのメモは手書きで,そこに記された文章はなお推敲の途上にあって,原稿として未完成であったこと,そのため,原告X4はそのメモにかなりの加筆修正を加えながら,前半部分の原稿を仕上げたこと,亡Wのメモが存在しなかった後半部分(第2章「変換理論」の途中から第3章「場の量子論から」の終わりまでであり,おおむね本冊の919頁から986頁に相当する部分。)については,全ての原稿を原告X4が新たに執筆したこと,以上の各事実が認められる。これらの事実によれば,本件著作物の創作における原告X4の寄与は,亡Wの創作した著作物を単に監修したという程度にとどまるものではなく,むしろ,原告X4は,亡Wの遺稿に基づきつつ,本件著作物の全体にわたって具体的な表\現の創作に寄与したものと解するのが相当である。したがって,原告X4は,本件著作物について,少なくとも当該創作部分の著作者としての権利を有するものと認めるのが相当である。
 (2) この点に関し原告らは,原告X4の権利が,主位的に,共同著作物に係る著作権であると主張し,予備的に,二次的著作物に係る著作権であると主張する。この点,前記のとおり,原告X4が上記創作を行ったのは,亡Wの死後であるから,上記各部分は,原告X4が単独で創作したものであって,亡Wがその創作に関与したことはない。しかも,原告X4は,亡Wの死後に,本件著作物の執筆を依頼されたものであるから,亡Wの生前に,亡Wと原告X4とが,互いに共同で本件著作物を創作することを合意していたこともない。そして,仮に亡Wが,自己の死後に,その遺稿をもとにして第三者が本件著作物を完成させることを望んでいたとしても,亡Wが,その第三者が原告X4となることを知っていたわけではない以上,亡Wにおいて,原告X4と共同して本件著作物を創作する意思を有していたと認めることはできないというべきである。そうすると,本件著作物が,亡Wと原告X4とが共同して創作した共同著作物であると認めることはできない。しかし,上記のとおり,原告X4は,本件著作物について,少なくとも上記創作部分を新たに執筆しているから,その部分については本件著作物を翻案することにより創作した二次的著作物と認められるものである。したがって,原告X4は,少なくとも本件著作物について二次的著作物の著作者としての権利を有するものと認めるのが相当である。\n

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平成23(ワ)40129 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年01月31日 東京地方裁判所

 著作権登録してあるにもかかわらず、著作物性無しと裁判所に認定されたと、文化庁長官を訴えました。当然、請求棄却です。
 原告は,原告が本件各登録申請を行った際,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない等の説明をさせるべき職務上の法的義務を負っていたのに,これを怠った違法があると主張する。しかしながら,文化庁長官がかかる義務を負うことにつき定めた法令はないし,仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても,これにより文化庁長官が上記のような義務を負うこととなるわけではなく,その他文化庁長官がかかる義務を負うことを認め得る根拠もない。したがって,原告の主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。
(2) 原告は,文化庁長官の行為が違法であるとして,文化庁長官が著作物ではない本件図柄について著作権登録原簿に登録をした,文化庁長官が原告に告知,弁解,防御の機会を与えることなく原告の著作権を没収した,などと主張するが,原告の主張は,独自の見解に立つものであって,失当というほかない。

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平成23(ワ)32584 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年12月21日 東京地方裁判所

 著作権侵害について、準拠法は日本と判断し、約7万円の損害賠償を認めました。弁護士費用は一般的には10%ですが、今回は5万円です。
1 準拠法について
(1) 本件では,本件写真の著作物性,著作者及び著作権者について争いがあるが,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下「ベルヌ条約」という。)5条(2)によれば,著作物の保護の範囲は,専ら,保護が要求される同盟国の法令の定めるところによるから,我が国における著作権の帰属や有無等については,我が国の著作権法を準拠法として判断すべきである。我が国とアメリカ合衆国は,ベルヌ条約の同盟国であるところ,本件写真は,アメリカ合衆国において最初に発行されたものと認められ(前提事実(2)),後記2のとおり,その著作物性と同国の国民である原告Aが著作者であることが認められるから,同国を本国とし,同国の法令の定めるところにより保護されるとともに(ベルヌ条約2条(1),3条(1),5条(3)(4)),我が国においても著作権法による保護を受ける(著作権法6条3号,ベルヌ条約5条(1))。(2) また,本件では,原告Aは,原告会社に対し,本件独占的利用許諾権を付与した(前提事実(3))のであるから,このような利用許諾契約の成立及び効力については,当事者が契約当時に選択した地の法を準拠法とし(法の適用に関する通則法7条),他方,選択がないときは,契約当時において契約に最も密接な関係がある地の法が準拠法である(法の適用に関する通則法8条1項)。そして,本件独占的利用許諾権の付与が譲渡と同じ法的性質であると解したとしても,譲渡の原因関係である債権行為については同様に解するのが相当である。そこで検討するに,本件独占的利用許諾権の付与は,原告Aがハワイ州公証人の面前において自ら署名した宣誓供述書をもって行ったものであり(前提事実(3)),その相手方である原告会社が同州に所在する会社であることも併せると,アメリカ合衆国ないしハワイ州の法を選択したものと解するのが相当である。そして,アメリカ合衆国著作権法101条は,「『著作権の移転』とは,著作権または著作権に含まれるいずれかの排他的権利の譲渡,モゲージ設定,独占的使用許諾その他の移転,譲与または担保契約をいい,その効力が時間的または地域的に制限されるか否かを問わないが,非独占的使用許諾は含まない。」と規定するから,本件独占的利用許諾権の付与は同条にいう「著作権の移転」に含まれる。また,同法204条(a)は,「著作権の移転は,法の作用によるものを除き,譲渡証書または移転の記録もしくは覚書が書面にて作成され,かつ,移転される権利の保有者またはその適法に授権された代理人が署名しなければ効力を有しない。」と規定するが,原告Aは,自ら署名した宣誓供述書をもって,本件独占的利用許諾権を付与したのであるから(前提事実(3)),本件独占的利用許諾権の付与は効力を有すると解される。加えて,原告Aは,本件独占的利用許諾権の付与以前に,原告会社との間で非独占的代理店契約を締結しており(前提事実(3)),前同様にアメリカ合衆国ないしハワイ州の法を選択したものと解されるが,これらの法に照らし,非独占的代理店契約の成立及び効力を否定する根拠は見当たらないから,本件独占的利用許諾権によって変更された非独占的利用許諾権以外の条項については,なお効力を有するものと解される。(3) そして,著作権侵害を理由とする損害賠償請求の法律関係の性質は,不法行為であるから,その準拠法は法の適用に関する通則法17条によるべきであり,「加害行為の結果が発生した地」は,我が国における著作権侵害による損害が問題とされているのであるから,我が国と解するのが相当である。
・・・
被告は,本人尋問において,本件写真をダウンロードした経緯について,概ね次のとおり供述する。まず,インターネットの検索サイトであるYahoo!から「ハワイ」を入力して画像を検索し,その検索結果(乙25)から本件写真を選択した。本件写真(1)を選択すると,新しい画面(乙28)が表示されたので,その画面下部に記載された壁紙LinkのURLをクリックした。そうすると,壁紙Linkのサイトの画面(乙29)が表\\示され,その下部のURLをクリックすると,別の画面(乙30)が表示された。そして,その画面に表\\示された本件写真(1)をクリックすると,更に別の画面(乙31)が表示され,そこには「デザイナーズ壁紙は海外のショップでフリーの素材として販売していたものを収集したもの,及び,海外のネット上で流通しているものを収集したものです。無料ダウンロードした写真壁紙は個人のデスクトップピクチャーとしてお楽しみください。また,掲載の作品をホームページ素材として,お使いいただく場合にはリンクをお願い致します。」と記載されていたので,フリー素材,無料であると誤信した。本件写真(2)も同様の手順であり,上記の記載と同様の記載があった。(2) しかしながら,被告は,本件提起前の永田弁護士との交渉において,永田弁護士に送付した文書には,「この写真の提供先は,ヤフーの画像からハワイと入力して,頂きました。写真には,名前のサインも入力されていないことを確認して『一期一会』のポエムにのせました」(甲13の1),「ヤフーを検索し,画像から趣味のブログ更新の為,ハワイのキーワードを入力しました。画像も持ち主が写真家様と知らず,(サインの記入もなかった為)写真家様の画像との認識もないまま 軽率にも 趣味のブログにて写真家様の画像を掲載してしまった事を心から謝罪させて頂きます。」(甲19の1),「私も2度とYahoo!画像から趣味のブログへの写真を掲載致しません。」(甲21)と記載しているのみであって,永田弁護士に対し,本件写真が壁紙Linkの記載からフリー素材であると誤信した旨を述べていない(被告本人)。そうすると,被告が上記(1)の手順で本件写真をダウンロードしたとは容易に認めることができないし,上記の各記載に照らすと,被告は,壁紙Linkの記載を閲覧することなく,Yahoo!の画像検索結果から本件写真をダウンロードした蓋然性が高いというべきである。(3) もっとも,被告が上記(1)の手順で本件写真をダウンロードしたとしても,上記(1)の「海外のショップでフリーの素材として販売していたもの」あるいは「海外のネット上で流通しているもの」との記載は,一定程度の注意をもって読めば,壁紙Linkが本件写真の利用許諾を受けていないことについて理解ができるものである。(4) そうすると,被告は,本件写真の利用について,その利用権原の有無についての確認を怠ったものであって,本件写真をダウンロードして複製したこと及びアップロードしてブログに掲載し公衆送信したこと(複製権及び公衆送信権の侵害)について,過失があると認められる。

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