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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

賠償額認定

平成22(ワ)10064 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年10月04日 大阪地方裁判所

 102条1項による損害が認められました。
 証拠(甲54〜56)及び弁論の全趣旨によると,原告は,祝園貯蔵庫工事に際し,4回にわたり,原告実施品(内型枠)を販売しているが,その際,いずれも外型枠と合わせて仕入れ,これを合わせて販売したことが認められる。上記販売における,外型枠と内型枠との価格内訳は明らかではなく,仕入れに際しては,資材の重量によって価格が決まることからすれば,上記価格の内訳は,外型枠と内型枠の重量比(内型枠は全体の4分の3)によって推計することが相当であり(甲56,57),内型枠の仕入価格は,仕入価格全体の4分の3であるから,販売価格も同様,販売価格全体の4分の3であると推計することとする。また,上記販売は,バイバック方式といい,後に原告が買い戻すことが予定されているものであり,その買戻価格は,常に当初の販売価格の●●●であり,納入先からは,上記買戻価格を予\め控除した残額の支払を受けていたことが認められる(甲54。以下,便宜上,上記控除後の金額を「販売価格)という。)。以上を踏まえ,証拠(甲54〜56,甲58の1・2,甲59の1〜5)及び弁論の全趣旨によると,内型枠1台当たりの売上額は,●●●●●●●●●円であると認められる。ところで,被告は,わずかな費用の加工費用で再度販売(バイバック方式)される場合であるにもかかわらず,原告の主張する●●●●●円という価格で,再販売品を購入する顧客はいないと主張する。しかし,上述したとおり,原告は,4回に渡り原告実施品を販売しており,その販売価格に多少のばらつきはあるものの,ほぼ一定していることが窺える。また,上記販売価格(平均●●●●●●●●●円)は,被告が被告製品1を賃貸した際の売上額(真柄建設に対する賃料:●●●●●円,奥村組に対する賃料:●●●●●円)とそれほど大きな違いはない。たしかに,仕入価格については,別紙計算表のとおり,祝園貯蔵庫工事における4回の販売の間でも,相当大きな変動が認められるものの,販売価格としてはある程度一定していると考える方が自然である。加工費如何によっては,利益率が大きく変動するものの,そのような販売形態があっても不思議ではなく,上記算定を左右するに足りる事情は見いだせない。
(イ)経費額
既に前記(ア)で述べたとおり,経費についても,売上額と同様の推計をすべきところ,証拠(甲54〜56,甲58の3・4,甲59の6〜9)及び弁論の全趣旨によると,原告実施品を製造するのに要した費用(仕入価格)は,別紙計算表のとおり,原告実施品(内型枠)1台当たり,●●●●●●●●円であると認めることができる。また,証拠(甲54〜56)及び弁論の全趣旨によると,営業経費についても,別紙計算表\のとおり,1台当たり●●●円であると認めることができる。
(ウ)原告実施品1台当たりの利益額
原告実施品の1台当たりの利益額は●●●●●●●●●円であったと認めることができる。
イ 実施能力及び寄与率
(ア)実施能力
被告は,原告が原告実施品と同じ型枠を2台しか保有しておらず,4件の工事に携わっていた当時,被告の顧客に販売する能力はなかった旨主張する。しかし,2台の保有により,4件の工事に提供していることからも,被告が被告製品1を賃貸した当時,上記保有の原告実施品を提供できなかったことを認めるに足りる証拠はなく,また,上記の事情のみにより,原告実施品と同等の製品を製造,販売する能\力がなかったともいえない。 (イ)顧客吸引力 被告はトンネル建設機械の分野において高いシェアを有していることが認められる(弁論の全趣旨)。建設機械の受注に際し,シェアなど,それまでの実績は,重要な要素となり得るが,それのみによって,契約の成否が決まるものではない。
(ウ) 発注の経緯
被告は,真柄建設にしても奥村組にしても,被告の納入する内型枠に原告特許発明1の技術を採用するか否かは,受注時には決まっておらず,真柄建設からは,受注後,上記技術の採用を依頼されたと主張する。しかし,被告自身,真柄建設から原告特許発明1(上記受注時には,原告特許1は登録されている。)の使用を依頼されたと述べており,しかも,それまでは,被告の納入する内型枠に原告特許発明1の技術が用いられることはなかったにもかかわらず,奥村組に対して販売した被告製品1にも同様の構成がとられていたことを併せ考えると,原告特許発明1が,受注に影響していないということは困難である。以上によると,被告の主張する発注の経緯にもかかわらず,原告特許発明1の採用と発注との関係を否定することはできず,むしろ,真柄建設からわざわざ原告特許発明1の実施を依頼されたということは,上記発明の寄与率が小さくないことを表\しているというべきである。
(エ) 従来工法との違い
証拠(甲53)及び弁論の全趣旨によると,従来,内型枠の外側で鉄筋の組立作業を行うにあたり,施工長さの短い工事では,足場を組み,施工長さの長い工事では,門型を利用して鉄筋組立作業を行っていた。これに対し,原告特許発明1を実施した内型枠では,足場を下から組み立てる必要や別途門型を製造する必要は原則としてなく,工期も短縮でき,その結果,コストを削減できることが窺える。もっとも,原告特許発明1を実施したからといって,内型枠の全てをカバーできるわけではなく,足場を下から組む必要が生じる可能性を否定できない。
(オ) まとめ
以上を総合すると,前記ア(ウ)の利益のうち,原告特許発明1の使用と相当因果関係のある利益は●●●であると認めるのが相当である。
ウ 小括
以上によると,被告が被告製品1を少なくとも2台賃貸したことにより,原告に与えた損害は636万9375円と算定するのが相当である。

◆判決本文

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 >> 賠償額認定
 >> 102条1項

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平成23(ネ)10002 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月22日 知的財産高等裁判所 

 切り餅事件について、特102条2項により求めた利益のうち、寄与度を15%として損害8億と認定されました。被告は、2012/4/3に、「上告した」との発表をしています。和解段階で、代理人が変わったりしたようです。
 被告は,被告製品について,i)平成15年9月ころから「サトウの切り餅パリッとスリット」との名称で販売し,切餅の上下面及び側面に切り込みが入り,ふっくら焼けることを積極的に宣伝・広告において強調していること,ii)平成17年ころから,切り込みを入れた包装餅が消費者にも広く知られるようになり,売上増加の一因となるようになったこと,iii)平成22年度からは包装餅のほぼ全部を切り込み入りとしたことが認められ,これらを総合すると,切餅の立直側面である側周表面に切り込み部等を形成し,切り込みによりうまく焼けることが,消費者が被告製品(別紙物件目録1ないし5)を選択することに結びつき,売上げの増加に相当程度寄与していると解される(甲4,21〜26,43,51,56の1〜22,甲60〜63,乙152,153,164〜167)。上記のとおり被告製品(別紙物件目録1ないし5)における侵害部分の価値ないし重要度,顧客吸引力,消費者の選択購入の動機等を考慮すると,被告が被告製品(別紙物件目録1ないし5)の販売によって得た利益において,本件特許が寄与した割合は15%と認めるのが相当である。
・・・・
 当裁判所は,被告代理人らが,控訴審の口頭弁論終結段階になって選任され,限られた時間的制約の中で,精力的に,記録及び事実関係を精査し,新たな観点からの審理,判断を要請した点を理解しないわけではなく,その努力に敬意を表するものである。しかし,特許権侵害訴訟は,ビジネスに関連した経済訴訟であり,迅速な紛争解決が,とりわけ重視されている訴訟類型であること,当裁判所は,原告と被告(解任前の被告訴訟代理人)から,進行についての意見聴取をし,審理方針を伝えた上で進行したことなど,一切の事情を考慮するならば,最終の口頭弁論期日において,新たな審理を開始することは,妥当でないと判断した。\n

◆判決本文

◆中間判決はこちら

◆1審はこちら

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 >> 104条の3

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平成21(ワ)15096 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月22日 大阪地方裁判所

 技術的範囲に属するとして、102条2項に基づき1億を超える損害が認められました。
 原告は,被告物件の構成を上記第3の1【原告の主張】(1)のとおり主張し,他方,被告は,これを同【被告の主張】(1)のとおり主張しているが,被告物件の縦断面図が,別紙被告物件説明書図2のとおりであることは当事者間に争いがない。したがって,被告物件の構成についての当事者の主張の違いは,被告物件の客観的構\成に争いがあることによるものではなく,同じ構成を異なる表\現を用いて記述するものと認められる。そして,後記(2)のとおり,被告物件が本件特許発明の構成要件A,C,Dを充足することは当事者間に争いがないから,結局,構\成要件Bに対応する構成bの特定のみを検討すれば足りるところ,構\成bについての当事者の主張の違いは,炉内に挿入されている炉内ヒータ(発熱体)の上側部分(発熱しない部分)の構成(このような構\成があることは争いがない。)について,被告主張のように「端部(天井の差し込み部及び天井への差し込み部から連続する発熱しない部分)」として記述すべきか否かという点にのみあると認められる(なお,当裁判所は,構成bについての被告の主張を前提としても,被告物件は構\成要件Bを充足すると判断することから,後記(2)イにおいて,被告物件の構成に係る被告の主張を前提に検討する。)。
・・・・
被告は,構成要件Bの「鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し,前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした」については,本件明細書に記載された従来技術である【図6】の炉内ヒータを除外して解釈すべきであるから,「端部(天井への差し込み部及び天井への差し込み部から連続する発熱しない部分)を除いた部分に対し,鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し,前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした」と解釈すべきと主張する。しかしながら,上記(ウ)のとおり,「鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し,前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした」とは,熱処理空間内におけるヒータの配設態様のことと解釈されることからすれば,そもそも,天井への差し込み部の構成は,本件特許発明の技術的範囲を検討する上で考慮する必要がない。
・・・
したがって,ヒータの構成について,天井への差し込み部から連続する発熱しない部分(端部)を除いた部分という限定を付する被告の主張は採用できない。\n

◆判決本文

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