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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

賠償額認定

平成19(ワ)2525 債務不存在確認請求本訴事件,損害賠償請求反訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年09月26日 東京地方裁判所

 アップルと個人発明家との訴訟で、裁判所は約3億円の損害賠償を認めました。本件は、不存在確認訴訟なので、原告がアップルです。
 (1) 証拠(甲95,98,127,128,計算鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年10月1日から平成25年3月30日までの間の原告各製品の日本国内における売上高(消費税抜き)は,●(省略)●円であり,消費税込みの売上高は,●(省略)●円であると認められる。被告は,原告の平成23年5月26日付け準備書面(24)別紙1の記載を根拠に,原告各製品の売上高が5976億円であると主張するが,原告は,上記の記載が誤記であると述べている上,そもそも上記記載が売上高の記載であるかどうかも不明であり,他に原告の上記主張を裏付ける的確な証拠がないことに照らすと,これを採用することはできない。また,被告は,計算鑑定の結果等は,製品別売上台帳等の取引別の詳細データを用いていないから信用することができないと主張するが,原告は製品別売上台帳等の取引別の詳細データを常備していないというのであり,「<以下略>の追加陳述書」(甲98)及び「<以下略>の補充的陳述書」(甲128)の基となるデータは米国のアップル・インクに対する監査報告手続において会計監査人が依拠している会計データベース(SAPデータベース)から析出して得られたものであって,無作為に選択された25件の取引レベルのサンプルデータにより,上記データベースから抽出した販売数量及び売上データが請求システムのデータと一致することが確認されている上(甲127),鑑定対象期間である平成18年10月1日から平成23年9月24日までの売上高については上記データベースから抽出された製品別月次売上データと原告の計算書類上の売上高との整合性に特段の問題はないとされているから(計算鑑定の結果),原告の上記主張は,採用することができない。
 (2) 本件各発明の実施に対し被告が受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を算出するに当たっては,前記消費税込みの売上高に相当な実施料率を乗じる方法によるのが相当である。原告は,クリックホイールの価格をベースとすべきであると主張するが,原告各製品の原価が証拠上不明であることに照らしても,採用することができない。
 (3) そこで,相当な実施料率につき,以下検討する。
ア 実施料率〔第5版〕(乙54)によれば,「19.ラジオ・テレビ・その他の通信音響機器」に含まれる「電気音響機械器具」には,録音装置,再生装置,拡声装置及びそれらの付属品が含まれるところ,この分野の平成4年度ないし平成10年度の実施料率(イニシャルなし)の平均値は,5.7%である。なお,「20.電子計算機・その他の電子応用装置」の同様の平均値は,33.2%であるが,これは主にソフトウエアの実施料率が高率であることによるものとされているから,これを参考にすることは相当でない。なお,弁論の全趣旨によれば,被告が本件特許につき他に許諾した例はないことが認められる。イ 本件各発明は,1) リング状に予め特定された軌跡上にタッチ位置検出センサーを配置して軌跡に沿って移動する接触点を一次元座標上の位置データとして検出すること,及び,2) 前記軌跡に沿ってタッチ位置検出センサーとは別個にプッシュスイッチ手段の接点が設けられており,前記検出とは独立してプッシュスイッチ手段の接点のオン又はオフを行うことができることに特徴があると考えられるところ,1)については,同様の機能を有するタッチホイールを搭載したiPodが原告各製品の販売開始より前の平成14年7月に既に販売されていたものであり(乙3,26,36,37,39,41),2)については,甲5公報及び甲39公報に開示されていたほか,タッチ位置検出センサーの下部にプッシュスイッチ手段を設置し,タッチ位置検出センサーによる検出とは独立してプッシュスイッチ手段の接点のオン又はオフを行う構成については甲6公報,甲7公報及び甲31公報等に開示があり,このような構\成は,原出願当時,広く知られた技術であったと認められる。そうであるから,本件各発明の技術内容,程度は高度なものであるとは認め難いというべきである。ウ 代替手段については,平成19年9月から発売が開始されたiPodtouchではクリックホイールが採用されず,タッチパネルが採用されているが(乙26),これによる入力方法等の詳細は証拠上判然としないから,これをもって代替手段となるとは認め難い。原告各製品の販売開始前に販売されていたiPodは,前記のタッチホイール及びタッチホイールの上部(軌跡から外れた位置)等に配置しているものがあり(乙3,26),そのような構成で代替することは可能\であったということができるものの,それを採用したのでは操作性に劣り先進性を欠くことになると考えられるし(乙30ないし38),実際に原告各製品の販売開始後にそのような構成を採用したモデルがあることは窺えないから,この点を重視することはできない。エ 本件各発明の技術が原告各製品に対して寄与する程度について見る。(ア) 証拠(甲1の1)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,発明の効果として,次の記載があることが認められる。「本発明は,以上のように構成されており,特に指先からの軌跡上のアナログ的な変移情報または接点の移動情報が電子機器へ確実に入力することができ,1次元上または2次元上もしくは3次元上の所定の軌跡上を倣って移動,変移する接触点の位置,変移値,及び押圧力を検知することができる。そして,操作性良く薄型でしかも少ない部品点数で電子機器を構\成することができるように1つの部品で複数の操作ができるプッシュスイッチ付きの接触操作型電子部品を提供することができる。」(段落【0014】)「また,この操作部品により非常に多くの機能の選択を行ったり,例えばボリュームスイッチ等のスイッチ入力を繊細に行うことができる。さらにはセンサータッチのイベント数により入力を行うための接触検知スイッチとして使用された場合には,イベント入力数を人間の指の感覚でもって自在に調節させ,指を当てる場所に応じてイベント数を変更させることにより操作性と多機能\性を向上することができる。しかも,このような操作性を発揮する電子機器の構成部品として該機器の操作部の構\造を単純化でき且つメンテナンス性を向上することもできる。そして,単一の操作部品でもって接触操作型電子部品およびプッシュスイッチ夫々の機能を同時に操作することができる。さらに,従来のプッシュスイッチ付き回転操作型部品とは異なり,装置自体をスイッチ押下方向に薄くして形成でき,装置の中央に配することが可能\となり,片手で持って操作するような装置に組み込んだ場合でも,両手いずれでも操作を簡単に行なうことができる。また,以上の接触検出センサー付プッシュキーにより,単純なキーの押下以外に接触もしくは十分に弱い押圧によりイベント入力が行なえる。」(同【0015】)(イ) 移動する接触点の位置等を検知し,機能の選択等を行う点は,既にタッチホイールにより行われていた。1つの部品で複数の操作ができるプッシュスイッチ付きの接触操作型電子部品を提供する点は,原告各製品は本件図面中の【図21】のようにプッシュスイッチの上部にタッチ位置検出センサーが配置されて1つの部品で複数の操作ができるようになっているものではなく,これらは別の部品で構\成されているのであり(別紙原告製品説明書,乙16),装置の薄型化は,バッテリや液晶ディスプレイとハードディスクとの配置の工夫やフラッシュメモリの採用等により果たされていることが窺える(乙16,26)。操作性の向上の点は,タッチホイールを採用していた従前のモデルの後に,クリックホイールを採用した原告各製品等が販売されたことや原告自身がクリックホイールによる操作性の向上を宣伝していること(乙30ないし38)からすると,一定の寄与があるとは考えられるが,クリックホイールの機能の割当てや本件各発明とは無関係のセンターボタンの存在の果たす役割も大きいと考えられるから,この点に関する本件各発明の寄与の程度が大きいとは認め難い。そうすると,本件各発明の技術が原告各製品に対して寄与する程度は大きくないというべきである。オ 本件各発明が原告各製品の売上げに寄与する程度について見るに,証拠(乙4,21,30,31,34,37,38,40,41,43)によれば,原告自身,クリックホイールを原告各製品の操作性の要と位置付け,新機能,セールスポイントとしてこれを積極的に宣伝し,好評を博してきたことが認められる。また,証拠(甲97,乙4,16,23,27,28,29,31,34,38,39,40,53,62)によれば,「アップル」のブランドの価値は非常に高く,原告各製品のデザイン,カラーバリエーション,iTunes,ビデオ再生,ゲーム,大型液晶,記憶容量,バッテリ容量,小型軽量といった点の訴求力がかなり強いものであり,平成18年11月16日時点におけるデジタルミュージックプレーヤー市場におけるiPodの国内シェアは約60%に達しているが,それには原告の販売努力が相当程度貢献していることが認められる。カ このような諸般の事情を総合考慮すると,相当な実施料率は,●(省略)●%と認めるのが相当である。(4) そうすると,被告が受けた損害の額は,次の算式のとおり,3億3664万1920円(円未満切捨て)となる。

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平成23(ワ)14336 意匠権侵害行為差止等請求事件 意匠権 民事訴訟 平成25年09月26日 大阪地方裁判所

 販売不可事情があるとして、意匠法39条1項(特102条1項に対応)の損害額が85%控除されました。
 意匠法39条1項を適用して損害額を算定するに当たっては,侵害品の譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を意匠権者が販売することができないとする事情があるときは,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとされる(意匠法39条1項但し書)上,意匠権者の実施品の利益に対する登録意匠の寄与した度合によっては,損害額の全部又は一部を減額すべきものと解される。ア そこで検討するに,前記3において,本件意匠部分2の要部に関して論じたとおり,原告製品は,「正面視が略横長長方形状で,平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜」(構成態様A2)し,その「傾斜する角度が前後方向の直線に対して約75°」(構\成態様C2)であることにより,正面からだけでなく,左側面からもその表示を視認しやすい点に特徴があり,その広告宣伝においても,「横から見てもこんなに見やすい!!」「横顔に自信アリ。」などと強調されている(甲141,乙24)。しかし,前記2及び3で論じたとおり,構\成態様A2及びC2は,乙7意匠によって公然知られた形態をありふれた手法で若干変更したにとどまるもので,この部分が原告製品の売上げや利益に寄与していたとしても,これをもって本件意匠部分2の寄与と見ることはできない。本件意匠部分2の創作性が肯定されるのは,あくまで上記態様に,「7個のセグメントが略8の字状に2個横並びで突出して配置」(構成態様E2)(構\成態様E2)との形状を組み合わせているからであり,本件意匠部分2の寄与度としても,このような組み合わせの形態であることによる寄与度を考えるべきである。この点,構成態様A2及びC2に,略8の字状のセグメントが突出する形状を組み合わせることで,数値等の情報表\示部の視認性がより高められており(甲141,乙24),一定の需要喚起効があるものといえるが(甲111),上記のとおり,構成態様A2及びC2は公然知られた形態をありふれた手法で若干変更したにとどまること,本件意匠部分2は正面視で左側部分のみの部分意匠であること,原告製品の広告宣伝(甲141,乙24)において,本件意匠部分2に係る部分とは異なるスイッチ部や液晶のデータ表\示部の機能なども強調されており,意匠のみを差別化要因とする製品ではないことからすれば,本件意匠部分2の寄与度は,相当限定的に見ざるを得ない。イ また,被告製品は,遊技機に関する数値情報等を表示し,遊技者などに伝達するとの用途及び機能\を備える点において,原告製品と共通するとはいえ,被告の販売する呼出ランプ「エレクスランプ」が遊技機に接続されていることを前提として設置される付属品である(乙3,25〜27,37)。この点において,他の機器を前提とすることなく遊技機と接続可能な呼出ランプである原告製品(甲141,乙24)との違いがあり,被告製品3996台の販売がなかったとしても,その前提となる「エレクスランプ」の販売台数も同台数だけ連動して減少し,同じく呼出ランプである原告製品の販売が同台数増加することまではなかったといえる。ウ 以上の事情に照らし,意匠法39条1項による原告の損害額算定としては,同項本文に従って求められた1924万0740円から,その85%に当たる1635万4629円を控除するのが相当であり,288万6111円と算定される。

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平成22(ワ)17810 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年09月25日 東京地方裁判所

 特許権侵害について102条1項および3項による損害賠償が認められました。
 以上によれば,原告プレックスの損害は,以下のとおりである。被告は,平成20年12月から平成24年2月までの間に,被告製品1及び2を合計61台販売していたところ,侵害行為がなければ,原告プレックスは原告製品1ないし4を同一数量販売して,1台当たり321万7327円,合計1億9625万6947円の利益を得ることができた。また,被告は,平成20年12月から平成24年2月までの間に,被告製品3を合計10台販売していたところ,侵害行為がなければ,原告プレックスは原告製品5及び6を同一数量販売して,1台当たり436万8056円,合計4368万0560円の利益を得ることができた。この合計である2億3993万7507円が原告プレックスの損害と推定され,この推定を覆すに足りる事情はない。
(8) 原告イエンセンの損害について
ア 原告らは,原告イエンセンにつき,特許法102条3項により,1台当たり130万円,合計9230万円の実施料相当損害金を請求している。しかし,原告イエンセンは,被告による侵害期間中,原告プレックスに専用実施権を設定しており(甲1),被告との間でライセンス契約を締結して実施料を得られる可能性は全く存在しなかったのであるから(特許法68条ただし書き,77条2項),原告イエンセンは,特許法102条3項により実施料相当額を損害額と推定する基礎を欠いているものというべきである。イ 原告イエンセンが特許法102条3項に基づく請求ができないとしても,原告イエンセンに損害が生じていれば,民法709条の原則に従った損害賠償は可能である。被告が平成20年12月から平成24年2月までの間に被告製品71台(うち13台は海外向け)を販売したことは争いがないところ,原告製品1ないし4は被告製品1及び2の,原告製品5及び6は被告製品3の,それぞれ競合品であり,少なくとも国内においては他に競合品を製造販売する業者があったとは認められないことからすると,少なくとも国内において販売された被告製品58台分については,侵害の行為がなかったならば,原告プレックスが原告製品を同一数量販売していたであろうと認められ,原告プレックスが原告製品58台を追加販売していれば,原告イエンセンは1台当たり65万円,合計3770万円の実施料を取得することができたと認められる(甲16,計算鑑定の結果,弁論の全趣旨)。他方,海外向けに販売された被告製品13台分については,被告に立証責任のある特許法102条1項ただし書の適用に関する限り,原告プレックスに「販売することができないとする事情」の立証があったとはいえないことは前記のとおりであるが,原告らに立証責任のある民法709条の相当因果関係の問題として考えると,被告製品の販売先に対応する海外向け販売にはどのような条件が必要で,原告プレックスはこれを備えているのか否か,当該各販売先においても原告製品や被告製品の競合品は他に存在しないのか否か等は必ずしも明らかでなく,被告製品の販売がなかったならば,原告プレックスが原告製品を同一数量販売することができ,原告イエンセンが対応する特許料を取得することができたという相当因果関係の立証があったとまでは認め難い。そうすると,原告イエンセンは,被告の侵害行為により,原告プレックスから3770万円の実施料を取得する機会を失ったのであるから,同額を民法709条に基づく被告の侵害行為と相当因果関係ある損害として請求することができるというべきである。これは,原告イエンセンが原告プレックスの追加販売から得られたであろう実施料相当額であるから,原告ら間の契約で定められた1台当たり65万円(甲16)という額よりも高く,あるいは低く修正する余地はない。\nウ 被告は,原告プレックスが特許法102条1項の請求を行い,原告イエンセンが同条3項の請求を行えば二重請求となり,また本件発明を原告プレックスが有していたときに比べ損害賠償の総額が大きくなって不当である,などと主張するので,民法709条に基づく損害賠償請求との関係でも上記の点を検討する。原告プレックスの特許法102条1項の損害算定において,原告プレックスが原告イエンセンに支払っているロイヤリティーとして1台当たり65万円を変動経費として控除しているのであるから(計算鑑定書4,10頁),原告イエンセンに1台当たり65万円を民法709条に基づく損害として認めたとしても,二重請求となるものではないし,原告プレックスが自ら特許を有していたときよりも損害総額が大きくなることもない。

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平成23(ワ)8085等 各損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年09月12日 東京地方裁判所

 特許権侵害について損害賠償が認められました。幇助者に対して、先行技術を調査 するべきだったとして幇助についての過失が認定されました。
 被告三菱電機が被告製品4及び5を譲渡し,又は譲渡等の申出をしたことを認めるに足りる証拠はない。ところで,被告三菱電機を除く被告らは,被告日本建鐵が製造して,被告ライフネットワーク及び同住環境システムズに販売し,同被告両名が転売するという関係にあったから,被告ライフネットワークが販売した被告製品4及び5に係る被告日本建鐵と同ライフネットワークの各譲渡,被告住環境システムズが販売した被告製品4及び5に係る被告日本建鐵と同住環境システムズの各譲渡は,それぞれ客観的に関連したものということができる。そして,証拠(甲33ないし35,40ないし56,58ないし60,73,74,81)及び弁論の全趣旨によれば,被告ライフネットワーク,同住環境システムズ及び同日本建鐵は,被告三菱電機の完全子会社であるところ,被告三菱電機は,被告ライフネットワーク,同住環境システムズ及び同日本建鐵と共に洗濯機の製造販売に係る事業を行い,被告日本建鐵と共に被告製品4及び5を開発したり,被告製品4及び5を発売する旨のプレスリリースや新聞広告を出したり,被告製品4及び5のカタログや取扱説明書の最終頁に自らの名称を表\示したり,製造物責任を負担する趣旨で被告製品4及び5に自らの商号を表示したりしたことが認められる。これらの事実によれば,被告三菱電機は,被告製品4及び5に係る被告日本建鐵,同ライフネットワーク及び同住環境システムズのそれぞれの譲渡を幇助したものということができる。そして,被告三菱電機は,被告日本建鐵と共に,被告製品4及び5を開発したのであるから,先行技術を調査するなどして上記各譲渡を幇助すべきでなかったのに,漫然と幇助した過失も認められる。したがって,被告らは,民法719条の共同不法行為として,連帯して損害賠償責任を負う。\n

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平成23(ワ)6878 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月27日 大阪地方裁判所

 単純方法の発明の侵害について、侵害者利益の40%が損害への寄与度と認定されました。
 特許法102条2項により,特許権(あるいは独占的通常実施権)を侵害した者がその侵害行為により利益を受けているときは,その利益の額が損害額と推定されるが,特許発明の実施が当該利益に寄与した度合によっては,上記損害額の推定の一部が覆滅されるものと解される。この点,前記イでも論じたとおり,本件特許発明1は,着色漆喰組成物の着色を均一かつ安定的にし,当該漆喰組成物の使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むらを防止するという作用効果を有する。これは,塗壁材としての用途を有する着色漆喰組成物にとって,その有用性を高め,商品価値に直結するものであり,被告製品1の販売による利益に寄与していることは確かである。しかし,本件特許発明1は,物の発明でも,物を生産する発明の方法でもなく,単純方法の発明であるから,物の販売による利益への寄与度については,低く評価せざるを得ない。また,被告製品1を紹介するウェブサイト(甲25)及びカタログ(甲26)は,本件特許発明1で特定されている含有成分やそれに伴う着色の均一性や安定性,製品使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むら防止といった作用効果を,被告製品1の特徴として挙げていなかった。むしろ,それらウェブサイトやカタログは,被告製品1につき,漆喰が有する調湿機能などを基本としつつ,酸化チタンを配合することによる防臭機能\\や,銀イオンを含有することによる抗菌機能などを特徴として強調しており,この点が現に一定の需要を喚起したこともうかがわれる(乙50〜52)。以上の事情に加え,競業他者の存在(甲33,乙12,13)も考慮し,60%の範囲で,特許法102条2項の推定が覆滅されると認めるのが相当である。なお,被告は,被告製品1の販売による利益には,被告の信用や顧客との信頼関係の寄与が大きい旨主張するが,前記ウ記載のカタログ等の製作や広告掲載のほか,被告において,その信用を高めるためにいかなる活動を行ったのか具体的かつ客観的に裏付ける証拠はない。被告の営業活動については,既に広告宣伝に要する費用として粗利の1割を超す額を利益から控除しているのであり,寄与度としてさらに考慮すべき事情を認めることはできない。また,被告は,平成24年8月に被告製品1の製造を中止し,石灰を含有しない製品へと設計変更した後,着色安定化作用はむしろ高まり,設計変更前と比べて売上げの減少も見られない(乙53,54,79〜87)とも主張するが,着色安定化作用の有無及び違いの程度を裏付けるに足りる証拠はない上,設計変更後の売上げがどのようにして維持されたかの具体的経過も明らかでなく,本件特許発明1の寄与度が低いことを示す事情とはいえない。したがって,特許法102条2項により,本件特許権1等の侵害によって原告が被った損害額(逸失利益)は,2278万8170円(=5697万0427円×(1−0.6),1円未満切捨て)と算定される。\n

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平成23(ワ)13054 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年05月23日 大阪地方裁判所

 特102条2項に損害推定についての覆滅事由は否定されました。
 被告は,本件特許発明の切断刃は,交換装置と共に利用されて初めて技術的な貢献をするものであり,切断刃自体は,公知の切断刃の一部分に極めてありふれた単純な構造の付加を行っただけの物品であるから,本件特許発明は,被告製品全体のうち,せいぜい公知の切断刃の物品に付加された構\成による利用価値を高めるだけであり,被告製品の購買動機に影響を与えるものではないと主張する。確かに,被告製品は,剪断式破砕機用切断刃であり,対象物を切断することを目的とするが,本件特許発明は,切断刃の取外し作業の効率性を高めるものであり,切断の機能自体に関わるものではない。しかし,被告製品のような分割式の切断刃自体は公知のものであり(乙B1,本件明細書段落【0004】),本件特許発明の実施品たる構\成を備え,切断刃の取外し作業の効率性を高めている点を除き,格別の特徴を有するわけではないのであるから,本件特許発明の実施品であることこそが被告製品にとって最も重要な差別化要因であったといえる。現に証拠(甲5〜11,乙A29)及び弁論の全趣旨によれば,被告から被告製品を購入した顧客らは,被告製品の「輪形凹部3で形成した係合部」と係合する切断刃交換装置を保有しており,被告製品が本件特許発明の実施品であるからこそ発注,購入したものと認められる。したがって,本件特許発明の実施が被告製品の売上げに寄与した度合は,むしろ大きいというべきであって,損害額の推定の全部又は一部が覆滅されるべき事情があったとは認められない。なお,被告製品を購入した大栄環境株式会社の担当者は,切断刃交換装置を保有しておらず,ハンマーでたたいて切断刃の取り外しを行っていると述べる(乙A30)。しかし,前記1(2)のとおり,被告製品の構成を有する以上,本件特許発明の技術的範囲に属すると認められるところ,被告は,いずれも顧客から指示された仕様に従って被告製品を製造,販売したことが認められる。また,このような事情及び証拠(甲10,11)によれば,大栄環境株式会社は,原告の関連会社から切断刃交換装置を購入していたことも認められ,他にこの認定を妨げるに足りる証拠はない。そのため,ハンマーでたたいて切断刃の取り外しを行っているという上記担当者の陳述内容が真実であったとしても,損害額の推定の全部又は一部が覆滅されるべき事情とすることはできない。\n

◆判決本文

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平成24(ネ)10015 特許権侵害差止等本訴,損害賠償反訴請求控訴事件 特許権 民事訴訟平成25年02月01日 知的財産高等裁判所

 原告は外国企業で、日本国内では独占的実施権者が実施している場合に、102条2項が適用されるかについて争われました。1審は、同3項で損害額を認定しましたが、知財高裁は同2項の適用を認めました。
 上記認定事実によれば,原告は,コンビ社との間で本件販売店契約を締結し,これに基づき,コンビ社を日本国内における原告製品の販売店とし,コンビ社に対し,英国で製造した本件発明1に係る原告製カセットを販売(輸出)していること,コンビ社は,上記原告製カセットを,日本国内において,一般消費者に対し,販売していること,もって,原告は,コンビ社を通じて原告製カセットを日本国内において販売しているといえること,被告は,イ号物件を日本国内に輸入し,販売することにより,コンビ社のみならず原告ともごみ貯蔵カセットに係る日本国内の市場において競業関係にあること,被告の侵害行為(イ号物件の販売)により,原告製カセットの日本国内での売上げが減少していることが認められる。以上の事実経緯に照らすならば,原告には,被告の侵害行為がなかったならば,利益が得られたであろうという事情が認められるから,原告の損害額の算定につき,特許法102条2項の適用が排除される理由はないというべきである。これに対し,被告は,特許法102条2項が損害の発生自体を推定する規定ではないことや属地主義の原則の見地から,同項が適用されるためには,特許権者が当該特許発明について,日本国内において,同法2条3項所定の「実施」を行っていることを要する,原告は,日本国内では,本件発明1に係る原告製カセットの販売等を行っておらず,原告の損害額の算定につき,同法102条2項の適用は否定されるべきである,と主張する。しかし,被告の上記主張は,採用することができない。すなわち,特許法102条2項には,特許権者が当該特許発明の実施をしていることを要する旨の文言は存在しないこと,上記(ア)で述べたとおり,同項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられたものであり,また,推定規定であることに照らすならば,同項を適用するに当たって,殊更厳格な要件を課すことは妥当を欠くというべきであることなどを総合すれば,特許権者が当該特許発明を実施していることは,同項を適用するための要件とはいえない。上記(ア)のとおり,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきである。したがって,本件においては,原告の上記行為が特許法2条3項所定の「実施」に当たるか否かにかかわらず,同法102条2項を適用することができる。また,このように解したとしても,本件特許権の効力を日本国外に及ぼすものではなく,いわゆる属地主義の原則に反するとはいえない。以上のとおり,被告の上記主張は採用することができず,原告の損害額の算定については,特許法102条2項を適用することができ,同項による推定が及ぶ。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成21年(ワ)第44391号

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