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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

賠償額認定

平成24(ワ)6435  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月28日  大阪地方裁判所

 特102条1項による損害として、特許権者の利益額350万/台(限界利益)*被告の販売台数5台=1750万円が認められました。
 被告は,本件特許が登録された後,5台の被告製品(被告製品1を4台,被 告製品2を1台。)を販売したことを自認している(前記第2の6【被告の主 張】(1))。
イ 原告は,契約後,未納となっている被告製品の譲渡が少なくとも3台あるこ とを主張する。 一般論として,侵害品の譲渡契約がされた場合には,それが未納であったと しても,特許法102条1項にいう「譲渡数量」に加算できる場合はあるもの というべきであるが,本件においては,上記譲渡契約に基づいて,被告製品と して特定された本件特許発明の技術的範囲に属する製品が納入されることに ついて,的確に認定し得る証拠は提出されていないから,上記3台が特許法1 02条1項にいう「譲渡数量」に含まれるものと認めることはできない。 したがって,被告製品の譲渡数量は,5台と認めるのが相当である。
(2) 被告の侵害行為がなければ原告が販売することができた物について 証拠(甲12,13)によると,原告が販売する型番HTP−3,6,10, 15,20ないしHT−3,6,10,15,20の製品は,本件特許発明の実 施品と認められるし,仮にそうでなかったとしても,自治体の廃棄物処理場等に 納入される破袋機であって,被告製品と競合する関係にあることは明らかである。 したがって,原告は,販売可能な製品を有していたものといえる。\n
(3) 単位数量当たりの利益の額
証拠(甲19)及び弁論の全趣旨によると,原告は,次のとおり,上記(2)の原 告実施品を製造,販売したこと,原告製品の実際の製造は外注によって行われ, 下記の粗利において直接労務費は既に控除されているものと認められる。 そうすると,原告製品の販売台数は14台,売上合計は9039万円,粗利合 計は4917万8369円,1台当たりの粗利は,351万2740円(1円未 満切り捨て)となる。
・・・
なお,前記のとおり,原告が現実の製造を外注して行っているのであれば,い わゆる限界利益を考慮するとしても,製造人件費,変動経費は外注費として控除 されていると考えられるから,本件において,上記からさらに控除すべき経費は 想定されない。 被告は,そのような利益率は常識はずれであって合理性がないと主張するが, 何ら具体的根拠,証拠を提示しないし,控除すべき費目を具体的に特定するもの でもないから,上記判断を左右しない。 したがって,単位数量当たりの利益の額は,351万2740円と認められる。 (4) 原告の実施能力
上記認定にかかる原告の販売実績及び被告の譲渡数量を比較すると,原告の実 施の能力から,被告の販売台数5台全てを原告が販売できたものと認められる。\n(5) 販売することができないとする事情(特許法102条1項ただし書)
ア 競合品の存在,破袋機の流通形態について
被告は,破袋機を製造する第三者が多数存在することを指摘し,その旨の証 拠(乙55から71まで)を提出するが,単に破袋機を製造販売するメーカー が存在することを挙げるにすぎず,本件特許発明を回避しつつ,同様の作用効 果を発揮する競合品の存在や具体的なシェアが明らかとなっているものでは ないから,上記証拠によって本項ただし書の事情を認めることはできない。 また,破袋機が,常時市場に存在するものでないことは,そもそも本項ただ し書に該当する事情に当たらない。
イ 原告製品と被告製品の価格差について
上記のとおり,原告製品の販売価格は,418万円から950万円であるの に対し,被告製品の販売価格(定価)は,証拠(乙41ないし45)及び弁論 の全趣旨によると,350万円であることが認められる。もっとも,原告製品 のうち高価格のものは,容量ないし処理量の大きいものと認められるから,こ の点も考慮に入れると,原告製品の価格帯と,被告製品の価格帯の差はさほど 大きなものとは評価できず,本項ただし書にいう事情に当たるとはいえない。 ウ 寄与度について
本件特許発明は,破袋機の構造の中心的部分に関するものである上,原告は,\n一定のブランド力も有するものであるから,上記のとおり,多様な破袋機を製 造販売するメーカーが,原告,被告のほか多数あること等の被告の主張を考慮 に入れたとしても,本件特許発明が被告製品や原告製品に寄与する割合を減ず ることはできない。 また,被告が日本唯一の雪上車メーカーであることは,本件と何ら関係のな い事情である。
(6) まとめ(特許法102条1項による金額)
以上によると,特許法102条1項により,原告の損害は,単位数量当たりの 利益額351万2740円に,被告の譲渡数量5台を乗じた,1756万370 0円と推定され,この推定を覆す事情は認められない。 なお,特許法102条2項により推定される金額は,被告の売上額の合計が上 記金額に満たないものと認められる(乙41ないし44)から,本件においては これを採用しない。
(7) 保守費用について
ア 特許権者は,物の発明にあっては,特許発明を使用した製品(以下「特許製 品」という。)の「使用」についてもその権利を専有するものであるから(特 許法68条,2条3項1号),侵害品の譲受人が侵害品を使用することもまた, 特許権侵害となり,不法行為を構成することになる。\nそうすると,侵害品を保守,修理することで,譲受人の侵害品の使用を継続 させたり,容易させたりなどした場合は,上記使用による不法行為を幇助する ものとして,共同不法行為(民法709条,719条2項)を構成する余地が\nあるが,侵害品の保守,修理それ自体は,間接侵害(特許法101条)の規定 に抵触しない限り,独立の不法行為となるものではない。 イ 原告は,被告の使用者に対する保守行為を不法行為の幇助と構成し,前記検\n討した被告製品の譲渡による損害とは別に,保守行為によって被告が得た利益 相当額を原告の単価等により計算した上,これを原告の逸失利益として,被告 に対する損害賠償として請求するものであるが,本件においては,被告の保守 行為それ自体が独立の不法行為に当たることを認めるに足りる証拠はないし, 原告もそのような主張はしていない。 ウ また,本件においては,既に検討したとおり,侵害品の製造,譲渡を理由と する損害賠償請求が認容され,これによって,原告の販売機会喪失等による損 害は全て填補されるところ,これとは別に,譲受人が侵害品を使用することに よって,原告にどのような損害が生じるかは明らかにされておらず,これに対 する幇助として,被告がさらに損害賠償義務を負担すると認めるべき理由はな い。
エ そうすると,原告の,保守費用相当額の損害賠償請求は,理由がないものと いうべきである。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 賠償額認定
 >> 102条1項
 >> 104条の3

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 平成25(ワ)6414  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月26日  大阪地方裁判所

 特許権侵害として7%の実施料相当額が認められました。
 イ 上記認定事実を前提にすると,被告が受注した同種システムの中で,被告装置を備えるものは多くなく,常に一体として販売されているとは いえないこと,被告装置自体の売上額も,被告装置を備えるシステム総売上額27億4337万5000円の中の2億4834万9000円と,約9%であることからすれば,被告が受注したパワートレイン開発,計測等のシステム全体をもって,本件特許発明の実施に該当すると解するのは相当ではない。 また,被告システムにおける排ガス分析計であるAMAi60は,被告装置と組み合わせて使うことが予定されているものであるが,独立した装置であり,被告装置とは別に,システムの一部要素として構\成されていることが認められるから(別紙受注一覧取引番号3ないし6,甲6,乙6の2),本件特許発明の技術的範囲に属する被告装置の一部と評価できるものではない。 よって,本件特許発明の実施料の対象として捉えるべきものは(特許法102条3項),被告装置自体の受注額であると解される。
ウ 前記認定事実を前提に,本件特許発明の実施に対し原告が受けるべき額について検討するに,被告装置の受注額を基礎に,本件特許発明の実施料を算定すべきであることは前述のとおりであるが,被告装置と排ガス分析計AMAi60とが組み合わせて販売されており,一定限度,被告装置の販売は,AMAi60の販売に寄与していると評価することができるから,この点を使用料率の算定にあたって考慮することはできるものと解する。 また,被告装置を含むものとして受注したパワートレイン開発,計測等のシステムは,1件あたりの受注額の平均が4億円以上となる大規模なものであること,システム全体のうち,排ガス測定機器の関係について,原告と被告は競合していること,被告において,原告のCVS装置をシステムに組み込むこともある中で,温調機能を有する被告装置を含む発注を受けているのであるから,被告装置の存在は,システム全体の\n受注に一定限度寄与しているというべきであり,前述のとおり,被告装置の受注額を基礎に本件特許発明の実施料を算定するとしても,その料率の関係では,この点を考慮するのが相当である。 さらに,本件特許発明は,サンプリング流路全体とともにサンプルバッグを加熱するという比較的単純な構成からなるものであるから,競合関係にある被告にとって,被告装置が本件特許の侵害となるか否かの検討は容易であると考えられ,前述のとおり,原告のCVS装置も選択可能\な中で,あえて温調機能を有する被告装置を含むシステムを受注したのであるから,この点は,実施料率を算定するに当たって考慮すべき事情と解される。\n以上を総合すると,本件特許発明の実施に対し原告が受けるべき実施料としては,被告装置の受注額の7%とするのが相当である。
エ そうすると,原告が特許法102条3項により受けるべき金銭の額は,被告装置の受注額の7%,別紙損害算定表の実施料相当額欄記載のとおりとなり,合計1738万4430円と認めるのが相当である。\n

◆判決本文

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平成24(ワ)35757  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月10日  東京地方裁判所

 登録日から特許公報発行前の期間について、特103条の過失の推定規定の適用があるかが争われました。裁判所は、登録時からの過失を認定しました。
 前記1及び2のとおり,被告は,原告らの本件特許権を侵害しており,特許権侵害につき過失があるものと推定される(特許法103条)から,原告らに対し,平成21年12月18日(本件特許の登録日)から平成23年10月23日までの被告製品の製造販売により原告らに生じた損害につき,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 イ これに対し,被告は,本件特許の特許公報の公開までの間は,同条に基づく過失の推定は覆滅されると主張する。 そこで判断するに,特許法は,特許権は設定の登録により発生する(66条1項),登録があったときは特許権者の氏名等を特許公報に掲載する(同条3項),特許公報は特許庁が発行する(193条1項)と規定するところ,登録から特許公報の発行までは,事柄の性質上,ある程度の期間を要すると考えられるから,特許権発生後,特許公報が発行されていない期間が生じることは,同法の規定上,予定されていると解される。一方,同法103条は,単に「特許権」を侵害した者はその侵害の行為について過失があったものと推定される旨規定し,特許権の発生時(登録時)から過失による不法行為責任を負うことを原則としてお\n り,特許公報の発行を過失の推定の要件と定めてはいない。また,同条が過失の推定を定めたのは,発明を奨励しもって産業の発達に寄与するという法目的(同法1条)に鑑み,特許権者の権利行使を容易にしてその保護を図るためであることは明らかである。以上の特許法の諸規定に照らせば,特許公報の発行前であることのみから過失の推定が覆されると解することは相当ではない。

◆判決本文

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