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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業誹謗

令和3(ワ)11472  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年5月11日  大阪地方裁判所

被告がAmazonに対して、著作権侵害申告をした行為が不競法2条1項21号の不正競争行為に該当すると判断されました。裁判所は、正面から商品を撮影した画像について、そもそも著作物ではないと判断しました。\n

前記(1)アのとおり、被告各画像のうち、写真集又は卓上カレンダーに 係る画像である被告画像1、2及び4ないし10は、販売する商品がどの ようなものかを紹介するために、平面的な商品を、できるだけ忠実に再現 することを目的として正面から撮影された商品全体の画像である。被告は、 商品の状態が視覚的に伝わるようほぼ真上から撮影し、商品の状態を的確 に伝え、需要者の購買意欲を促進するという観点から被告が独自に工夫を 凝らしているなどと主張するが、具体的なその工夫の痕跡は看取できない 上、撮影の結果として当該各画像に表現されているものは、写真集等とい\nう本件各商品の性質や、正確に商品の態様を購入希望者に伝達するという 役割に照らして、商品の写真自体(ないしそれ自体は別途著作物である写 真集のコンテンツとしての写真)をより忠実に反映・再現したものにすぎ ない。
(イ) 単語帳に係る画像である被告画像3は、前記同様に商品をできるだけ 忠実に再現することを目的として正面から撮影された商品全体を撮影し た平面的な画像2点と、扇型に広げた商品の画像1点を配置したものであ り、当該配置・構図・カメラアングル等は同種の商品を紹介する画像とし\nてありふれたものであるといえ、被告独自のものとはいえない。
(ウ) 以上より、被告各画像は、被告自身の思想又は感情を創作的に表現し\nたものとはいえず、著作物とは認められない。 (エ) また、商品名については、前記(1)イのとおり、いずれも商品自体に付 された商品名をそのまま使用するか、欧文字をカタカナ表記に変更したり、\n大文字表記を小文字表\記にしたり、単に商品の内容を一般的に説明したに とどまるありふれたものであって、著作物とは認められない。 そのほか、被告は、本件各申告には被告サイト上の商品の説明文に関す\nる著作権侵害も含まれるかのように主張するが、具体性を欠く上、その説 明が創作性を有するとは想定できず、失当である。

◆判決本文

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令和4(ネ)10111 不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年4月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

特殊形状の靴紐について、1審は「通知人らが保有する本件特許権を侵害していると考えております」と取引先に流布した行為が、不競法2条1項21号の不正競争行為にあたると判断しました。知財高裁も同様です。

控訴人らは、本件通知書に記載されたキャタピラン+等が本件特許権を侵 害していると考えている旨の見解に関し、仮にこれが不正競争防止法2条1項21 号にいう「虚偽の事実」に該当するのであれば、特許権者としては、特許権の被疑 侵害者を発見した場合であっても、後日裁判所により特許権の侵害はない旨の判断 がされ、損害賠償を命じられるとのリスクを回避するため、被疑侵害者に対し訴訟 提起前に警告書を送付することがおよそできなくなるから、上記の見解が同号にい う「虚偽の事実」に該当するとの判断は誤りであると主張する。
しかしながら、特許権者が特許権の被疑侵害者を発見し、訴訟提起に先立って当 該被疑侵害者に対し警告書を送付したが、後日裁判所により特許権の侵害がない旨 の判断がされた場合であっても、当該警告書の送付が特許権者の正当な権利行使の 範囲内の行為であると評価されるときは、同送付は違法性を欠き、当該特許権者が 同送付を理由として損害賠償責任を負うことはないのであるから、特許権者が被疑 侵害者に対し訴訟提起前に警告書を送付することがおよそできなくなることを前提 とする控訴人らの上記主張は、前提を誤るものとして採用することができない。
(5) 控訴人らは、本件告知行為の違法性の有無に関し、1)控訴人らと被控訴人 との間の紛争の発端は、被控訴人が控訴人Xらとの間で締結した共同出願契約(乙 30の1及び2)における約定(事前の協議・承諾なく本件特許権に関わる製品を 販売した場合には、本件特許権を剥奪できるとするもの)に違反し、単独でキャタ ピラン等の製造・販売を開始したことであること、2)控訴人Xは、本件通知書にお いて、キャタピラン等とキャタピラン+等が別の商品であり、これらが異なる状況 にあることを分かりやすく明記していること、3)本件通知書の記載は、キャタピラ ン+等がキャタピラン等と同様に本件特許権を侵害するおそれがあるとの強い印象 を与えるものではないことを根拠に、本件告知行為の目的は被控訴人の取引先が過 去に販売したキャタピラン等について損害賠償請求をすることであり、同目的が 「裁判所によって本件特許権を侵害する旨の判断が確定したキャタピラン等の存在 を奇貨として、本件特許権を侵害しないように改良されたキャタピラン+等につい ても、裁判所による判断がされる前に、本件特許権を侵害する趣旨を告知し、被控 訴人の取引先に対する信用を毀損することによってキャタピラン+等を早期に「結 ばない靴紐」の市場から排斥し、競業する事業者間の競争において控訴人会社が優 位に立つこと」であるとの認定は誤りであると主張する。
しかしながら、控訴人Xは、本件告知行為をした時点において、被控訴人がその 製造・販売する商品をキャタピラン等からキャタピラン+等に入れ替え、「結ばな い靴紐」の市場においてキャタピラン等の販売が縮小していることを十分に認識し\nていたこと(補正して引用する原判決第4の4(2)イ)、被控訴人は、令和2年1 2月22日、前訴の控訴審判決において命じられたキャタピラン等に係る損害賠償 金(平成28年4月1日から平成30年8月31日までに生じたもの)を支払った ものと認められること(乙7の3、弁論の全趣旨)、キャタピラン等に係る損害賠 償金(平成30年9月1日から令和3年4月30日までに生じたもの)についても、 遅くとも本件告知行為の前までには、その額の確定等の手続が終了し、被控訴人か らその支払がされるのを待つ状況となっていたものと認められること(甲60、7 7、弁論の全趣旨)、控訴人Xは、本件包括協議において、直接又は間接に、被控 訴人が「結ばない靴紐」の市場から撤退することを一貫して求めていたと認められ ること(甲59ないし67、70ないし74)、本件通知書の送付を受けた被控訴 人の取引先は、キャタピラン等と同様にキャタピラン+等についても本件特許権を 侵害するおそれがあるとの強い印象を受けたこと(補正して引用する原判決第4の 4(2)イ及びウ)、その他、補正して引用する原判決第4の4(1)において認定した 各事実に照らすと、控訴人らが主張する上記1)の事情や本件通知書の記載内容を考 慮してもなお、本件通知書においてされたキャタピラン等に係る本件特許権の行使 等についての言及は、あくまで名目的なものであったといわざるを得ず、本件告知 行為の真の目的は、補正して引用する原判決第4の4(2)イのとおり、キャタピラ ン等と同様にキャタピラン+等も本件特許権を侵害する趣旨を告知し、被控訴人の 取引先に対する信用を毀損することによってキャタピラン+等を早期に「結ばない 靴紐」の市場から排斥し、競業する事業者間の競争において控訴人会社が優位に立 つことであったと認めるのが相当である。
この点に関し、控訴人らは、キャタピラン+等の取扱いを停止した4社のうち2 社(株式会社シューマート及び株式会社チヨダ)は当初本件通知書に対して反論を したのであるから、両社は本件告知行為によりキャタピラン+等が本件特許権を侵 害するおそれがあるとの強い印象を受けたものではないと主張する。確かに、本件 通知書の送付を受けた株式会社シューマートは、「キャタピラン+等が本件発明の 技術的範囲に属するというのであれば、その説明をしていただきたい」旨の回答 (乙A2)をし、本件通知書の送付を受けた株式会社チヨダも、「株式会社チヨダ は、入手済みの弁理士の見解書を踏まえ、キャタピラン+等については本件発明の 技術的範囲に属しないと判断している」旨の回答(乙A6)をしたものと認められ るが、結局、両社は、本件告知行為の約4か月後に、それぞれ本件通知書において 求められたとおりにキャタピラン+等の取扱いを停止したものと認められるのであ り(弁論の全趣旨)、加えて、本件通知書の記載内容も併せ考慮すると、両社が本 件通知書の送付を受けた際に上記のような回答をしたことは、両社において本件告 知行為によりキャタピラン+等が本件特許権を侵害するおそれがあるとの強い印象 を受けたとの認定を左右するものではない。
また、控訴人らは、キャタピラン+等の取扱いを停止した4社のうちその余の2 社(朝日ゴルフ株式会社及び株式会社Olympicグループ)は控訴人らと被控 訴人との間に紛争が生じていることを理由に、紛争が解決するまでキャタピラン+ 等の取扱いを一時的に停止したにすぎず、キャタピラン+等が本件特許権を侵害す ると認識してその取扱いを中止したものではないと主張するが、本件通知書の記載 内容及び両社が本件通知書の送付を受けた後速やかにキャタピラン+等の取扱いを 停止したものと認められること(弁論の全趣旨)に照らすと、株式会社Olymp icグループの回答書(乙A12)に「キャタピラン等及びキャタピラン+等に関 する控訴人Xと被控訴人との間の紛争が解決するまで、これらの商品の販売をしな い方針である」旨の記載があることを考慮しても、両社は、本件告知行為によりキ ャタピラン+等が本件特許権を侵害するおそれがあるとの強い印象を受けたものと 認めるのが相当である。 以上のとおりであるから、控訴人らの主張を採用することはできない。
(6) 控訴人らは、本件告知行為に係る過失の有無に関し、被控訴人の第1主張 書面(本件仮処分の手続において提出されたもの)に記載された本件発明の構成要\n件B1)の「非伸縮性素材からなり」に係るクレーム解釈は特許請求の範囲及び本件 明細書等の記載から大きく外れた荒唐無稽なものであり、同主張書面を見てもキャ タピラン+等が本件特許権を侵害していないと判断することはできなかったから、 本件告知行為について控訴人らに過失はない旨の主張をする。
しかしながら、補正して引用する原判決第4の2及び前記(1)ないし(3)において 説示したところに照らすと、被控訴人が上記第1主張書面においてした主張(本件 発明の「非伸縮性素材からな(る)中心ひも」は「伸縮性素材からなるひも本体と 比較して伸縮性が乏しいもの」をいうところ、キャタピラン+等のひも本体(外層) と中心ひも(芯材)の伸縮性を比較した試験結果によると、キャタピラン+等は本 件特許権を侵害しない旨の主張(補正して引用する原判決第4の4(2)イ))は、 十分な説得性を有する相当なものであるといえ、加えて、補正して引用する原判決\n第4の4(2)イにおいて指摘した各事情も併せ考慮すると、控訴人らは、遅くとも 同主張書面を受領した時点で、キャタピラン+等の製造・販売が本件特許権を侵害 しない可能性が相当程度にあることを容易に認識し得たと認められるから、そのよ\nうな認識可能性があったにもかかわらず本件告知行為に及んだ控訴人らには、過失\nがあると認めるのが相当である。

◆判決本文

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◆令和3(ワ)22940

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令和2(ワ)1129 債務不存在確認等請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年8月31日  東京地方裁判所

特許権侵害をしているとの告知メールが不競法2条1項21号の不正競争行為に該当するとして、約35万円の損害賠償が認められました。

原告シプソルが、原告機械の製造、販売や、原告製品の製造等について\n被告の特許権ないし本件特許権を侵害しているとの内容は、原告シプソル\nの営業上の信用を害するものであることは明らかであるから、被告が送付 ないし送信した甲3通知及び甲21メールは、原告シプソルの営業上の信\n用を害する虚偽の事実の告知に当たる。 そして、原告シプソルと被告とは改正前不競法2条1項15号所定の\n「競争関係」にある(前提事実(1)ウ)。 したがって、被告による甲3通知及び甲21メールの送付ないし送信は、 いずれも同号所定の不正競争行為に当たる。
イ 原告シプソルの被告に対する差止請求について\n
前記アによれば、原告機械又は原告機械の製造する梱包体が本件特許権 を侵害する又は侵害するおそれがあるとの事実の告知又は流布の差止めを 求める原告シプソルの請求は理由がある。\n
ウ 原告シプソルの被告に対する損害賠償請求について\n
被告は、包装機器の設計、開発、製造及び販売等を目的とする株式会社 であるから(前提事実(1)イ)、この目的からうかがわれる業務内容に照ら せば、原告機械ないし原告シプソルの販売する自動梱包ラインが被告の保\n有する特許権を侵害するか否かを調査することは必ずしも困難とはいえな いから、被告には、甲3通知及び甲21メールを送付ないし送信したこと について、少なくとも過失があったというべきである。
争点5(原告シプソルに生じた損害の有無及びその額)について\n
無形損害について
前記4(1)及び(2)のとおり、甲3通知及び甲21メールの内容は、原告シ プソルが本件特許権を侵害している旨及びMYTHが原告シプソ\ルから購入 することを予定している自動梱包ラインが被告の保有する特許権を侵害する\n旨を告知するものである。そして、原告シプソルは、自動梱包ラインの専門\n会社であると認められるから(甲20、23)、主力商品ともいえる自動梱包 ラインが他社の保有する特許権を侵害するとの事実が告知されたことにより、 原告シプソルの信用が毀損されたことは明らかであり、その程度も必ずしも\n小さいとはいえない。
しかし、被告から原告シプソルの取引先に対して虚偽事実の告知がされた\n回数は、本件全証拠によっても、甲3通知及び甲21メールの送付ないし送 信の合計2回を超えて認められない。また、これらの通知等がされたことに より、原告M・Kロジ及びMYTHが原告シプソルとの取引を取り止めたと\n認めるに足りる的確な証拠はない(原告らは、原告M・Kロジが、甲3通知 を受領した後、自動梱包ラインを他社に発注したと主張し、この点に関連し て福岡パッケージ株式会社が発行した自動制函機、シュリンク包装装置等に 係る見積書を証拠(甲26)として提出するが、原告M・Kロジが、これに 相当する機械を原告シプソルに発注する予\定であったことを認めるに足りる 証拠はないから、原告シプソルが甲3通知を契機として原告M・Kロジから\nの受注を失ったとまで認めることはできない。)。 これらの事情を含む本件に現れた諸事情を総合考慮すると、原告シプソル\nに生じた無形損害の額は30万円と認めるのが相当である。
弁護士費用について
被告の不正競争行為と相当因果関係にある弁護士費用の額は5万円と認められる。

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