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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業誹謗

平成24(ワ)11119  不正競争 民事訴訟 平成24年12月06日 東京地方裁判所

 原告が弁護士で、被告が行政書士です。双方とも代理人ついてません。裁判所は、信用毀損として50万円の損害を認めました。
 不正競争防止法2条1項14号の「競争関係」とは,事業者間の公正な競争を確保するという同法の目的に照らすと(同法1条),現実の市場における競合が存在しなくとも,市場における競合が生じるおそれがあれば足りると解するのが相当である。弁護士法3条1項が弁護士の職務として定める「その他一般の法律事務」とは,法律に関する事務全般をいい,行政書士法1条の2第1項が行政書士の業務として定める「権利義務…に関する書類…を作成すること」を含むものであり,前記の前提事実に証拠(甲1,2,11の1・2)を総合すれば,現実に,原告と被告のいずれもが東京都において示談書等の権利義務に関する書類を作成する役務を提供していることが認められる。そうであれば,原告と被告とは,権利義務に関する書類を作成する業務において,市場における競合が生じるおそれがあるということができる。被告は,不正競争防止法2条1項14号が同項1ないし9号や13号に該当するような他人への信用毀損行為を前提としている旨主張するが,そのように解すべき根拠はない。したがって,原告と被告とは,競争関係にあるというべきである。
・・・・
 本件各記事のうち原告が削除を求める部分は,直接的に特定の事実を摘示するものの外,意見ないし論評を表明するものがある。しかしながら,意見ないし論評の表\明に当たるかのような語を用いている場合であっても,一般の閲覧者の普通の注意と読み方とを基準に,前後の文脈や記事の公開当時に閲覧者が有していた知識ないし経験等を考慮すると,証拠等をもってその存否を決することが可能な原告に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは,上記事項についての事実の摘示を含むというべきである。そして,その特定の事実若しくは事項が虚偽であって,原告の営業上の社会的評価を低下させるものであれば,信用毀損が成立するものである。
(2) そこで,本件各記事について検討する。
ア 本件第1記事について
本件第1記事のうち原告が削除を求める部分は,推論の結果として,南洋が初めから法的手段を望んでいたにもかかわらず,原告が,被告の利益に配慮したり内容証明郵便の作成料を余計に稼ごうとした結果,南洋の意思を無視して内容証明郵便を送付したとの事実や,南洋が初めからは法的手段を望んでいなかったにもかかわらず,原告が,弁護士の肩書きと「法的手段」とさえ記載すれば被告は恐れて本件各先行記事を削除するだろうと考えたりわざと交渉を決裂させて報酬を余計に稼ごうとした結果,内容証明郵便でも電話でも具体的な理由を示さなかったとの事実を摘示して,前者の場合であれば弁護過誤であり,後者の場合であればごう慢,手抜きであるなどと被告の意見を表明するものである。前記前提事実(2)イに証拠(甲11の1・2)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告は,平成23年10月1日ころ,南洋から本件各先行記事の削除を依頼され,南洋と協議して,被告に必要以上の情報を与えるべきでないと判断し,南洋との間で,まずは任意の削除に期待して,具体的な理由を示さない内容証明郵便を被告に送付し,任意に削除されないときには,直ちに本件各先行記事の削除を求める仮処分命令の申立てをすることを合意したことが認められる。そうとすれば,本件第1記事のうち原告が削除を求める部分は,直接的に特定の事実を摘示するものであって,かつ,前記認定の事実に照らすと,その特定の事実は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実であると認められる。
・・・
 前記前提事実に証拠(甲3の1ないし10各A・B,8,9の1ないし4)を総合すれば,原告は,テレビコマーシャルやインターネット上の動画,イベントブースへの出展等で広告・宣伝を行い,これらと連動したインターネット上のホームページを検索して閲覧させることにより,顧客の獲得に努めていたが,平成23年10月以降,原告のホームページを検索すると,検索結果として,原告の営業上の信用を害する前記9件の記事の一部が10位以内に表示されるようになり,閲覧者も相当数に及ぶことが認められ,これによれば,原告は,被告の信用毀損行為により,弁護士としての信用を毀損されたものと認められる。しかしながら,原告の売上高が減少するなどの実害が生じた形跡は格別窺えないし,被告は,南洋から投資の勧誘を受けた者からの相談に応じていて,原告が「手抜き」や「詐欺\的取引の助長」,「スラップ」,「批判者の口封じ」をしているように見える面もあったものであり,原告自身も,原告ブログ等に本件かなめくじ記事等を投稿して,被告の感情を害していたのである。これらの事情に本件に顕れた諸般の事情を併せ考慮すれば,原告の信用毀損による損害額は50万円とするのが相当である。

◆判決本文

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平成23(ワ)12270 損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年11月08日 大阪地方裁判所

 本件顧客情報は、営業秘密ではないと判断されました。
 原告は,本件顧客情報,つまり,本件顧客に関する1)社名,2)住所,3)代表者・担当者の名前,4) 販売価格,5) 売上額といった情報が,原告の「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)に当たる旨主張する。しかし,原告自身が認めるとおり,本件顧客情報は,原告の事務所内にあるサーバーで管理されていたが,パスワードは設定されておらず,原告の従業員であれば,その職務内容及び地位にかかわらず,誰でもアクセス可能であったものである。また,原告の主張を前提としても,原告においては,従業員に対し,本件顧客情報の社外持ち出しやUSB保存を禁じる旨口頭で注意喚起していたというにとどまり,それを超えて本件顧客情報が営業秘密であることを認識できるような措置が採られていたわけではない。このような事情からすれば,弁論の全趣旨からうかがわれる原告の事業規模を考慮しても,本件顧客情報が秘密として管理されていたとは到底いえない。\n

◆判決本文

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平成22(ワ)5719 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年05月29日 東京地方裁判所

 訂正審判で特許に無効理由が治癒された場合に、営業誹謗に該当するかが争われました。裁判所は、被告に過失はないと判断されました。
 特許権侵害の警告等の告知行為を行った告知者は,仮に告知行為時点の特許請求の範囲記載の発明に無効理由があるとしても,告知行為後の訂正審判請求又は特許無効審判における訂正請求によって特許請求の範囲を訂正し,その無効理由を解消できるものと考えるのが通常であるから,告知行為後に訂正審判請求がされた場合において,当該訂正審判請求が同法126条1項,3項,4項の訂正要件を満たし,かつ,告知の対象となった製品が訂正後の特許請求の範囲記載の発明の技術的範囲に属するときは,その発明が独立特許要件(同法126条5項)を欠くとする理由(無効理由に相当)について告知行為を行った時点における過失の有無を判断するのが相当である。しかるところ,本件においては,i)別件判決1が別件無効審決がした本件特許に進歩性欠如の無効理由があるとの判断に誤りがないとして別件無効審決を維持する判断をし,別件判決1の確定に伴って別件無効審決が確定したことにより,本件特許が無効となったこと,ii)その間,被告は,別件無効審決の取消しを求める審決取消訴訟(別件審決取消訴訟1)を提起する一方で,上記無効理由を解消することを目的として訂正審判請求(第2次訂正)をしたが,別件訂正不成立審決は,第2次訂正について上記訂正要件を満たすものと判断し,その上で,第2次訂正後の発明は進歩性の欠如により独立特許要件欠くと判断し,第2次訂正を認めなかったこと,iii)別件判決2が別件訂正不成立審決の判断に誤りがないとしてこれを維持する判断をし,これに伴って別件訂正不成立審決が確定したことは,前記(1)認定のとおりである。そして,●(省略)●SDI社製の燐光発光有機EL素子は,本件発明1及び5の技術的範囲に属すること(前記(3)ア),第2次訂正における本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)についての訂正は,「一般式(I)で表されるアミン誘導体」を「化合物3」に限定するとともに,化合物3が含有される層を正孔輸送層に限定し,また,重金属を含有する有機金属錯体からなる燐光性の発光材料を有機Ir錯体からなる燐光性の発光材料に限定するとともに,有機Ir錯体が構\造式「(A)」で表される2−フェニルピリジン又はその置換誘導体を配位子として有するものに限定することなどを訂正事項とするものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとであること(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,SDI社製の上記燐光発光有機EL素子は,第2次訂正発明1(第2次訂正後の請求項1)の技術的範囲に属するものと認められる。以上を総合すると,被告の本件告知行為i),iii)及びVi)による不正競争行為についての過失の有無は,各告知行為の時点で,別件判決2が判断した第2次訂正後の発明の進歩性欠如の理由(無効理由に相当)を前提に判断すべきである。これに反する原告の上記主張は,採用することができない。
・・・
 以上を前提とすると,被告の過失の有無は,被告が,本件告知行為i),iii)を行った時点において,別件判決2が認定判断する第2次訂正発明1の進歩性欠如の理由,すなわち,「第2次訂正発明1の構成の容易想到性」及び「第2次訂正発明1の作用効果が顕著でないこと」の両方について調査確認すべき注意義務に違反したかどうかによって判断すべきである。そこで,まず,第2次訂正発明1の作用効果が顕著でない点に関する注意義務違反の有無について判断することとする。
・・・
 本件告知行為i),iii)の時点では,別件無効審判事件に係る無効審判請求がされておらず,被告は,原告が行った実験結果である甲15の1,5を見ておらず,その内容を認識していないこと,一般に,自己の採用する方法が当業者の技術水準であると考えるのは自然であることからすれば,被告が,本件告知行為i),iii)の時点で,甲15の1,5のような実験条件での発明の効果についても検討し,あるいは調査確認することにより,第2次訂正発明1に顕著な作用効果を奏さない部分があることを認識し,又はこれを予測することは困難であったというべきである\n

◆判決本文

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平成21(ワ)25324等 損害賠償 不正競争 民事訴訟 平成24年04月18日 東京地方裁判所

 不競法2条1項14号の営業誹謗行為には該当しないと判断されました。
 被告Y1は,このとき,本件告知5−1に係る「スタッフも,自分に同調して原告を退職する。」旨の発言したことは否定しているところ,被告Y1が上記発言を行ったことを認めるに足りる的確な証拠はない(N作成の陳述書〔甲18〕には,G課長から聴取した内容として,被告Y1がそのような発言をした旨の記載があるが,同陳述書が信用できないことは前記のとおりである。)。また,被告Y1は,同月27日付けで退職する旨の退職届(甲68)を原告に提出し,実際に原告を退職しているから,原告を退職する旨告げたこと自体は,虚偽の事実の告知には当たらない。したがって,同月19日に被告Y1が本件告知5−1に係る虚偽の事実の告知を行ったと認めることはできない。
 c 本件告知5−2について,被告Y6は,平成21年6月22日にNTTアドを訪問し,G課長に対し,「7月1日からのヨドバシ運営について,現状の主要メンバーが6月末日で退社するに当たり,代要員が今現在いない状態である。」,「代要員を手配しても今までどおりのクオリティを担保することは難しく,ファーストプロモーションで今までどおりの運営を行うことは難しい。」と説明したことは認めている。しかし,上記告知内容が虚偽であったこと,すなわち,同年6月の時点で,被告Y1及び同月の時点で18人いたフレッツブース運営業務に従事するスタッフの大半が同月末に原告を退社しても,原告において,直ちに代替要員を手配し,同年7月以降も滞りなく同業務を履行できる態勢にあったとは認められない。原告は,スタッフの管理,指導,掌握は,人材派遣業者にとって,さしたる経験,専門的知識,スキルを要する業務ではなく,同業務に携わる従業員を全国で100人以上有していたから,代替要員に欠けることはなかったと主張する。しかし,i)ヨドバシカメラ梅田店は全国有数の大型家電量販店であり,フレッツブース運営業務は,対象商品(フレッツ光,フレッツADSL)の商品説明から,各種イベント企画運営等,各種ツールのデザイン,製作,各種プレミアムの製作等に至るまで広範な業務を行うことが要求されていたこと(甲5の1,弁論の全趣旨),ii)被告Y1は,上記時点で約4年間,1人でフレッツブース運営業務に関するスタッフの管理及び各種イベントの企画運営等を行ってきたこと(甲71,72,被告Y6,弁論の全趣旨),iii)同人は,同年6月初め頃には被告Y6を通じて原告及びファーストプロモーションに退職の意向を示していたにもかかわらず,原告及びファーストプロモーションは被告Y6に対し引き留めるよう説得を指示したのみで,上記業務を滞りなく履行するための具体的な対応を何ら講じていなかったこと(乙14,15,被告Y6,弁論の全趣旨)からすると,原告が,約1週間の期間で,代替要員として上記業務を滞りなく履行するに足りる能力と経験を有する従業員及び従前のスタッフと同様の能\力,経験を有する16名前後のスタッフを現実に他の現場から融通し,かつ,前任者からの十分な引継ぎがないまま,従前同様にフレッツブースを運営して上記各種業務を行うことができたとは認められない。現に,NTTアドからは,「クライアントからは店舗における現在の運営態勢の変更は困ると言われており,ノウハウがあるといってもスタッフの総入替えでは今までどおりの運営は事実上,無理ではないかと危惧している」旨の懸念が表\明され,「そこまで言うなら,7月以降の運営態勢案を提示して欲しい」と迫られ,同月28日,原告及びファーストプロモーションは,NTTアドに対し,現運営態勢を維持することは困難でありNTTアドの要求する業務の質を確保できないことから,契約を継続できない旨を伝えたことは,前記認定のとおりである。また,被告Y6は,その後も原告にとどまり懲戒解雇処分を受けており,当時,人事上の不満を抱えていたとはいえ,原告大阪支店長代理という職にありながら,あえて職を失うリスクを冒してまで,取引先に対し虚偽の事実を告知する動機があったとも認め難い。以上によれば,本件告知5−2の内容が虚偽の事実であったと認めることはできない。

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平成22(ワ)145等 損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年03月21日 東京地方裁判所

 虚偽の事実の流布として、営業誹謗行為と認定されました。
 証拠(甲11,40の1〜4,乙74,75,83,検証の結果)によれば,被告製品の車種別専用ハーネスのうち,1Aタイプ,1Bタイプ,1Cタイプ,1Dタイプ,2Aタイプ,THR−BM用,THR−VW用の車種別専用ハーネスのオスコネクターは,端子の数,形状,設置位置,端子保護部材の形状,寸法,材質,色及び質感において,自動車メーカーの純正品として自動車のアクセル部に設置されているオスコネクターとほぼ同一であると認められる。両者は,寸法において数mm程度の若干の相違は認められるものの,形状の同一性を否定するほどのものではない。したがって,被告製品の車種別専用ハーネス(1Aタイプ,1Bタイプ,1Cタイプ,1Dタイプ,2Aタイプ,THR−BM用,THR−VW用)のオスコネクターの上記各点は,自動車のアクセル部に接続して使用するという商品の機能及び効用を確保するために選択された不可欠な形態というべきであり,不競法2条1項3号の「商品の形態」には当たらない。また,被告製品の6Aタイプの車種別専用ハーネスのオスコネクターについては,端子の数,形状及び設置位置は,自動車メーカーの純正品として自動車のアクセル部に設置されているオスコネクターとほぼ同一であると認められる(乙75,83)。したがって,同形態は,自動車のアクセル部に接続して使用するという商品の機能\を確保するために不可欠な形態と認められ,不競法2条1項3号の「商品の形態」には当たらない。端子保護部材の形状,材質,色及び質感は,純正品のオスコネクターとは異なるものの,同業他社の同種製品のオスコネクターの端子保護部材とほぼ同一であり(甲11,乙84,91),同種製品における標準的な形態の一つであると認められる。したがって,同形態は,同種製品の一般的な形態の一つにすぎず,被告独自の形態と認めることはできないから,不競法2条1項3号の「商品の形態」には当たらない。さらに,被告製品のTHR−VW用の車種別専用ハーネスのメスコネクターについては,端子の数や形状,設置位置については,市販品の端子を使用しているため(争いのない事実),また,端子保護部材の形状,寸法,材質,色,質感については,同業他社の同種製品のメスコネクターの端子保護部材と類似していると認められるため(甲14,乙30,93),いずれも同種製品における標準的な形態の一つであると認められる。したがって,上記各形態は,同種製品の一般的な形態の一つにすぎず,被告独自の形態と認めることはできないから,不競法2条1項3号の「商品の形態」には当たらない。・・・・
上記1,2で説示したとおり,原告製品は被告製品の形態を模倣したものと認めることはできず,原告製品の販売は不競法2条1項3号,1号の不正競争には該当しないのであるから,本件文書1,2記載の上記事実は,虚偽の事実である。そして,前記第2の2(1),(3)の事実によれば,原告は,被告にとって,「競争関係にある他人」に当たると認めることができ,被告が,原告製品は被告製品の形態を模倣した違法なものである旨記載した本件文書1を,ホームページに掲載した本件掲載行為は,競争関係にある他人である原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する行為(不競法2条1項14号)に,原告製品は被告製品の形態を模倣した違法なものである旨記載した本件文書2を原告の取引先である多数の販売店等にファクシミリ送信するなどした本件送信行為は,競争関係にある他人である原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為(不競法2条1項14号)に,それぞれ該当する。したがって,本件掲載行為及び本件送信行為は,いずれも不競法2条1項14号に該当する。

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