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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

動機付け

平成23(行ケ)10080 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年11月30日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,引用例1は,縦方向に構えて使用するカメラの使い勝手が良くなるように,シャッターを本願発明の蓋体部に相当する部分に設けているのに対して,引用例2に開示された複合機器では,ファインダーを備えたカメラを前提にしてカメラの使い勝手が良くなるようにシャッターの位置を決めているもので,両者は設計思想を異にするから,引用例1に対して引用例2を適用することは困難であると主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,採用できない。すなわち,引用例1の携帯電話機は,閉じた状態で撮影する場合に,縦方向に構\える必然性はなく,どのような方向に構えても撮影可能\である。他方,引用例2の段落【0026】には,「当該複合機器をファインダー方式の電子スチルカメラとして使用する場合には,図3に示すように,LCD13aが設けられている蓋部33を閉じて右手で本体右側を把持する。言い換えると,通常のカメラを把持する状態と同じである。」と記載されており,右手で本体右側を把持して撮影することが念頭に置かれているが,横方向のみならず,縦方向に把持して,撮影することもできるといえる。以上のとおりであり,引用例1に引用例2を適用することにより,シャッターボタンを「本体部の右側面であって連結部の反対端に近い位置に配置」することが,困難であるとはいえない。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10022 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決につき、組み合わせる動機づけが存在しないとして取り消しました。第1部です。
 引用発明1には,ウェブのアルミ箔に渦電流を流すことで,誘導加熱による熱を発生させ,この熱でポリエチレンフィルム層を溶融させてウェブを横シールすることは記載されているものの,ウェブのアルミ箔層に代えて,他の材料を使用することに関する記載や示唆を見出すことはできない。一方,審決が指摘する引用例2には,前記(3) のとおり,ポリプロピレン(A)からなるフィルム表面に,金属(B1)または金属酸化物(B2)の蒸着薄膜が形成されている金属蒸着ポリプロピレンフィルムが記載されており,この「金属蒸着ポリプロピレンフィルム」は,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層であって,低温シール性及び耐ブロッキング性に優れている技術的事項が記載されてはいるものの,金属蒸着ポリプロピレンフィルムを高周波誘電加熱に用いることについては何ら記載されていない。この点に関し,審決は,「この『金属蒸着フィルム』は,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層といえ,これは,従来知られていた『導電性等を付与するため』『金属・・を蒸着したプラスチックフィルム』(摘示2b)を,『低温シール性・・に優れ』(摘示2d)るようにしたもの,すなわち低温でのヒートシール性に優れるようにしたものであり,導電材料であるこの『金属蒸着フィルム』(にうず電流を流すこと)によって発生する熱である誘導加熱による熱でシールするもので,低温でのヒートシール性に優れたものといえる。」(審決10頁12行〜19行)と判断している。しかし,引用例2には,「金属蒸着フィルム」に渦電流を流すことや,誘導加熱による熱でシールすることは記載されていない。そして,引用例2に記載されている「低温シール性」とは,段落【0031】及び【0032】の記載からみて,基材フィルムのポリプロピレンをメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調製したことによって,低分子領域の成分含有率が少なくなり,低分子領域成分のブリードアウトが低減されたことに基づく性質である。また,引用例2の【実施例】の記載によれば,メタロセン系オレフィン重合触媒を用いて調製した基材フィルムからの金属蒸着ポリプロピレンフィルム(実施例1,2)が,従来技術であるチーグラー系オレフィン重合用触媒を用いて調製したもの(比較例2)よりも,ヒートシール温度が低い場合の引張り試験結果が優れていることが示されていることから,引用例2に記載される「低温シール性」に優れるとは,ヒートシールする温度が従来よりも「低温」であっても「シール性」に優れることであるというべきであるから,審決の上記判断は誤りである。以上のとおり,高周波誘電加熱に用いるために,引用発明1の「アルミ箔層」に代えて,引用例2に記載された「金属蒸着層」を適用することについては,何ら動機付けが存在しないというべきである。\n

◆判決本文

◆関連出願についても同様の判断がされています。平成23(行ケ)10021

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平成23(行ケ)10056 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月28日 知的財産高等裁判所

 阻害要因ありとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 反転構造を持つ基板を製造するに際し,MgOを添加して光透過率を向上させることや,Mgを添加して,非線形光学定数及び電気光学特性を低下させずに小さな分極反転電圧を得ることは,甲3及び甲4にみられるように周知技術といえる。そして,審決は,引用発明において,本願補正発明の相違点1に係る構\成を備えることは,上記の周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと判断した。しかし,前記(ア)のとおり,引用発明は,Ta過剰で定比組成に近いLT単結晶へのMg又はMgOの添加により生じる前記問題点i)及びii)を解決すべき課題とし,Li過剰で定比組成に近いLT単結晶を用いることで,Mg又はMgOを添加せずに済むようにし,上記問題点を解決したものである。このように,引用発明が,Mg又はMgOの添加によって発生する問題点の解決を課題としていることからすれば,LT単結晶がTa過剰の組成かLi過剰の組成かにかかわらず,定比組成に近いLT単結晶にMg又はMgOを添加することは,上記課題解決の阻害要因になると解するのが自然であって,被告が主張するように,Ta過剰の組成かLi過剰の組成かによって区別して阻害要因を検討するのは不自然である。また,甲3及び甲4には,定比組成に近いLT単結晶からなる周期的分極反転構造を持つ基板を製造するに際し,Mg又はMgOを添加することが記載されているにとどまり,それにより前記問題点i),ii)が生じ得ること及びその解決方法については,記載も示唆もされていない。そうすると,引用発明において,上記の周知技術を適用し,Ta過剰で定比組成に近いLT単結晶又はLi過剰で定比組成に近いLT単結晶にMg又はMgOを添加することには,阻害要因があるといわざるを得ず,引用発明において,相違点1に係る構成とすることが,上記の周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであると認めることはできない。(ウ) なお,被告は,審決の「引用例全体の記載をみても,引用例にはMgを添加してはならない旨の記載はない。」との記載について,「引用例にはMgを添加してはならない旨の記載の事実がないことを指摘するとともに,引用発明として認定したタンタル酸リチウム単結晶全体についてMg添加が除外されているわけではないことを示した」旨主張する。しかし,前記(2)アの記載からすれば,引用例の記載に接した当業者は,Ta過剰で定比組成に近いLT単結晶へのMg又はMgOの添加により生じる問題点i)及びii)を解決するために,Li過剰で定比組成に近いLT単結晶を用いることで,Mg又はMgOを添加せずに済むことに想到するものと解するのが自然かつ合理的であるから,引用例の記載から「引用発明として認定したタンタル酸リチウム単結晶全体についてMg添加が除外されているわけではない」とする被告の主張は合理的でなく,採用することができない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10235 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月04日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 そうすると,本件優先日当時(平成15年8月8日),VA型(垂直配向型)液晶表示装置等に用いる重畳フィルムを作製するために,偏光フィルムの吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが直交(偏光フィルムの透過軸と位相差フィルムの遅相軸が平行)するように両フィルムを貼\り合わせるという条件の下で,ロールtoロールの方法で両フィルムを貼り合わせるためには,引用発明のように,横方向に延伸して遅相軸が横方向に現れる位相差フィルムを作製し,他方でフィルムを縦方向に延伸し,吸収軸が縦方向に現れる偏光フィルムを作製して,両フィルムを貼\り合わせる方法を採用するか,又は縦方向に遅相軸を有する位相差フィルムをロールから切り離して,縦方向に吸収軸を有する偏光フィルムのロールと貼り合わせる方法を採用するのが当業者の一般的な技術常識であったと認められる。だとすると,本件優先日当時,縦方向に延伸して位相差フィルムを作製する方法や横方向に延伸して偏光フィルムを作製する方法が存在したとしても,これらの方法をすべて採用し,引用発明に適用して相違点を解消するには,当業者の上記の技術常識を超越して新たな発想に至る必要があるのであって,当業者にとってかかる創意工夫が容易であったかは極めて疑問である。そうすると,前記のとおり,引用文献2ないし6にはロールtoロールの方法で偏光フィルムと位相差フィルムを貼\り合わせる発明に対して各文献に記載された事項を当業者が適用する可能性及びその効果が教示されていない点を併せ考えてみると,本件優先日当時,当業者が引用発明に引用文献2ないし6に記載された事項を適用して,補正発明と引用発明の相違点1,2に係る構\成に想到することが容易であったと認めることはできない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10348 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月15日 知的財産高等裁判所 

 記載不備および進歩性違反ともに、理由無しとした審決が維持されました。
 前記2(2)エに認定のとおり,引用例4に記載の上記各化合物は,いずれも鎖状のアミンにジチオカルバミン酸が結合した化合物であり,環状アミンにジチオカルバミン酸基が結合した本件化合物1及び2とは化学構造が異なる。したがって,引用例4に上記各化合物の記載があるからといって,これと化学構\造を異にする本件化合物1及び2が飛灰中の重金属を固定化できることを示唆することにはならない。また,前記2(2)アに認定のとおり,引用例1には,ジチオカルバミン酸基を有する低分子量の化合物の中から,飛灰中の重金属固定化剤として本件各化合物を想起させるに足りる記載又は示唆があるとはいえず,前記2(2)イに認定のとおり,引用例2には,そこに記載の化合物又は本件各化合物が廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。さらに,前記2(2)ウに認定のとおり,引用例3に記載のピペラジンジチオカルバメート(I)及びピペラジンビスジチオカルバメート(II)は,それぞれ本件発明における本件化合物1及び2に相当し,引用例3は,本件化合物1及び2のようなジチオカルバミン酸基を有するキレート剤が白金属元素と錯体を形成することを明らかにしているものの,それが廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。したがって,引用例3には,本件化合物1及び2のキレート剤が飛灰中の重金属固定化剤として利用できることについてまで記載や示唆がなく,引用発明4と引用例3の記載を組み合わせて本件発明1の相違点3に係る構成を想起させるに足りる動機付けがないというほかない。\n

◆判決本文

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平成22(行ケ)10344 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月07日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,本願発明と引用発明の対象がホイールローダであって,引用例2の油圧ショベルとは作業の実態が異なるので,引用発明に引用例2記載の油圧シャベルの技術を適用することは,動機付けに欠けると主張する。しかし,引用例1には,掘削作業中か否かに応じて,作業機に伝達する力を調整するため,可変容量型油圧ポンプを制御することが記載されている。そして,引用例2には,掘削作業中か否かに応じて「エンジンの出力トルクを制御する」ことが開示されており,引用例1及び引用例2が,掘削作業中か否かに応じて作業機に伝達する出力を調整するための制御である点で共通することを勘案すれば,引用発明に,引用例2記載の技術的事項を適用する動機付けが存在する。よって,当業者にとって,引用発明に,引用例2記載の技術的事項を適用することに困難性はなく,引用発明に,引用例2記載の技術的事項を適用し,「エンジンの上限出力トルクを制御する」ようにし,かつ「掘削が行われていないと判定された場合のエンジンの上限出力トルクカーブが,掘削が行われていると判定された場合におけるエンジンの上限出力トルクカーブよりも低くなるように,エンジンの上限出力トルク制御する」ようにして,相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

◆判決本文
 

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平成22(行ケ)10312 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟  平成23年04月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
 審決は,甲第1号証の図1,7,8のマッサージ具41,42の構成に図11の突起体91,マッサージ具41,42の構\成を追加して,両構成を兼ね備えた構\成にする動機付けがない旨説示するが,上記の両構成は同一の文献に記載された実施例にすぎないのであり,両構\成をともに採用したときに支障が生じることを窺わせる記載は甲第1号証中にもないし,当業者の技術常識に照らしても,そのような支障があるものとは認められないから,両構成を兼ね備えた構\成にする動機付けに欠けるところはなく,審決の上記判断には誤りがある。そして,上記の両構成を兼ね備えた構\成を採用することによって生じる作用効果は,背中の側部と上腕の側方を同時にマッサージできるといった程度のものにすぎず,当業者が予測し得ない格別のものではないということができる。したがって,「本件発明1は,『前記胴体クッション部に設けられて給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える第1空気式マッサージ器』を有しているが,甲1発明は有していない点。」との甲1発明との相違点2に係る本件発明1の構\成の容易想到性についての審決の判断には誤りがあるというべきである。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10277 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が維持されました。
 そうすると,本件各発明と甲第1号証発明とは解決すべき技術的課題が異なり,甲第1号証にはフットレストに足裏支持ステップを設けることにつき記載も示唆もされていないとした審決の認定判断に誤りがあるとはいえない。ここで,甲第1号証の図1のマッサージ機のU 字型の部分にくるぶしより下の部位を載せ,足裏をマッサージするようにすることが構造的に可能\であるとしても,また上記マッサージ機を足裏のマッサージに用いることが甲第1号証にいうマッサージ機の取扱いの容易化という目的を積極的に阻害するものではないとしても,これらの事由により甲第1号証においてフットレストに足裏支持ステップを設けることにつき示唆があることにはならない。ウ そうすると,甲第1号証発明の椅子型マッサージ機に足裏支持ステップが設けられたフットレストを追加する構成が記載も示唆もされていない以上,本件出願日当時,当業者において相違点1に係る本件発明1の構\成に容易に想到することができなかったというべきであって,この旨をいう審決の判断に誤りがあるとはいえない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10239 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月14日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 以上によれば,情報処理システムにおいて辞書を用いたデータ変換処理を行う際に,検索時間の短縮化という効果を求める引用発明には,データの変換時ではなく,変換に先立って予めデータをメモリ上に展開しておくことで処理を更に高速化することができる周知技術を組み合わせることについて十\分な動機付けがある。なお,データをメモリ上に全て展開しておけば,高速処理が可能である反面,大きなメモリ容量が必要となり,メモリ展開にも時間がかかるようになることは,技術的に自明であって,当業者は,これらの得失を当然に勘案した上で周知技術の組合せを検討するものであるといえるから,この点において,上記の動機付けが妨げられるものではない。したがって,当業者は,前記周知技術に基づき,引用発明に対して相違点2に係る構\成を適宜に組み合わせることができるものというべきであり,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10273 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年03月08日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機づけがないとして取り消されました。
 これに対し,審決は,上記のとおり,「赤外光に対し格別に優れた透過性を有するインクを用いなくても,閾値δ2を適当な値に設定すれば,カバーフィルム4上の異物を印刷部9と区別して判定することができることは明らかである。」と述べるところ,赤外光に対し透過性を有するインクを用いない場合には,印刷部の明度が一定程度低下し,印刷部上に印刷部と同程度の明度を有する異物が存するときには,当該異物が判定できないこととなる(異物の明度が既に判明している場合には,その明度より高く,かつ,印刷部の明度より低く閾値δ2を設定すれば異物が判定できるが,そのような場合が一般的であると解することはできない。)。したがって,審決の上記説示は,引用発明1の技術課題が解決できない従来技術を示したものにすぎず,引用発明1に対して引用発明2の構成を適用することについての動機付け等を明らかにするものではない。・・・そもそも,「塗料」又は「インク」に関する公知技術は,世上数限りなく存在するのであり,その中から特定の技術思想を発明として選択し,他の発明と組み合わせて進歩性を否定するには,その組合せについての示唆ないし動機付けが明らかとされなければならないところ,審決では,当業者が,引用発明1に対してどのような技術的観点から被覆顔料を使用する引用発明2の構\成が適用できるのか,その動機付けが示されていない(当該技術が,当業者にとっての慣用技術等にすぎないような場合は,必ずしも動機付け等が示されることは要しないが,引用発明2の構成を慣用技術と認めることはできないし,被告もその主張をしていない。)。(4) この点について,被告は,引用例2の段落【0006】の記載を根拠に,色相,着色力及び分散性に優れているのが好ましいことは,インキや塗料の顔料について一般的にいえることであり,引用発明1のインクについてもあてはまることであるから,引用発明1のインクとして引用発明2の油性塗料を適用してみようという程度のことは,当業者が容易に考えつくことであると主張する。確かに,インクや塗料において,色相,着色力及び分散性に優れているのが一般的に好ましいと解されるところ,それに応じて,色相,着色力,分散性などのいずれかに優れていることをその特性として開示するインクや塗料も,多数存在すると認められるのであり,その中から,上記の一般論のみを根拠として引用発明2を選択することは,当業者が容易に想到できるものではない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10202 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月17日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,本件補正発明と引用発明1とでは,目的,課題及び作用効果が相違しており,本件補正発明のように,Webページからメール作成画面に切り換えて表示するとともに,表示されていたWebページのURLを当該メールに貼り付け,メール送信完了後に先に表示していたWebページに表示を戻すことまでを含めた一連の制御を行うことは,引用発明1では想定し得ないと主張する。しかしながら,前記ア(イ)のとおりの引用発明2のWWWブラウザと電子メール送受信機能とを備える携帯電話は,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\とを実現する情報処理端末であるということができ,他方,引用発明1は,前記(1)ア(エ)のとおり,閲覧中のWebページのURL情報をメールに貼り付けて送信しようとするものであって,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\とを実現する情報処理端末であるコンピュータにおいて,これらの両機能を連係しようとするものである。そうすると,引用発明1におけるWWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\を実現し,これらを連係しようとするコンピュータに換えて,同じく,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\を実現する情報処理端末である引用発明2の携帯電話のような携帯端末を採用することの動機付けが認められるものである。そして,このような引用発明において,携帯電話のような携帯端末を採用することによって,アンテナを介して信号を送受信する無線部が備わることになる。(ウ) また,前記1(2)の記載によると,本件補正発明は,簡単な操作で閲覧中のWebページのURLをメールに貼り付けて送信することができるようにして利便性を向上しようとするものである。これに対し,前記(1)ア(ア)及び(イ)のとおり,引用発明1は,閲覧中のWebページのURLを伝えるに際し間違いやすいことから,ほとんどのメールソフトに付いているアクティブURLの機能を利用して,閲覧中のWebページのURL情報をメールで送信するに当たって,Outlook ExpressやNetscape Messengerを使えば,ブラウザから直接URL情報をメールで送信でき,これによって,閲覧中のWebページのURL情報を簡単に送信することができるというものである。(エ) そうすると,本件補正発明と引用発明1とのいずれも,閲覧中のWebページのURL情報を簡単な操作でメールに貼り付けて送信しようとするものであって,その更なる動機が,本件補正発明では,ユーザは小さなキーを何度も押し下げる必要があり,煩雑な操作をしなければならず,不便であるとの問題点があったことであり,引用発明1では,WebページのURLを伝える場合の間違いを防ぐためであったこととの点において,仮にこれらが相違するということができるとしても,上記の閲覧中のWebページのURL情報を簡単な操作でメールに貼り付けて送信したいとし,それを実現しようとするものであるという点で,目的,課題及び作用効果が一致しているものということができる。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10056 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月08日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、取り消されました。
 しかし,この審決の判断の流れは,・・・このような一般的抽象的な周知技術を根拠の一つとして,相違点に関する容易想到性判断に至ったのは,本件発明3の技術的課題と動機付け,そして引用発明との間の相違点1ないし3で表される本件発明3の構\成の特徴について触れることなく,甲第3号証等に記載された事項を過度に抽象化した事項を引用発明に適用して具体的な本件発明3の構成に想到しようとするものであって相当でない。その余の自明課題,設計事項及び周知技術にしても,甲第3号証等における抽象的技術事項に基づくものであり,同様の理由で引用発明との相違点における本件発明3の構\成に至ることを理由付ける根拠とするには不足というほかない。(4) 上記のとおり,周知技術等に基づいてする審決の判断は是認できないが,甲第3号証等が開示する技術的事項も踏まえて念のため判断するに,甲第3,21,22号証の液体インク収納容器において,記録装置と液体インク収納容器の間の接続方式につき共通バス接続方式が採用されているかは不明であって,少なくとも甲第3,21,22号証においては,共通バス接続方式を採用した場合における液体インク収納容器の誤装着の検出という本件発明3の技術的課題は開示も示唆もされていないというべきである。そして,上記技術的課題に着目してその解決手段を模索する必要がないのに,記録装置側がする色情報に係る要求に対して,わざわざ本件発明3のような光による応答を行う新たな装置(部位)を設けて対応する必要はなく,このような装置を設ける動機付けに欠けるものというべきである。そうすると,甲第3,21,22号証に記載された事項は,解決すべき技術的課題の点においても既に本件発明3と異なるものであって,共通バス接続方式を採用する引用発明に適用するという見地を考慮しても,本件発明3と引用発明との相違点,とりわけ相違点2,3に係る構成を想到する動機付けに欠けるものというべきである。\n

◆判決本文

◆関連する侵害訴訟控訴審はこちらです。平成22(ネ)10064

◆関連する侵害訴訟控訴審はこちらです。平成22(ネ)10063

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平成22(行ケ)10184 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月03日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした拒絶審決が取り消されました。
 以上のとおり,引用例1及び2には,膨張弁のパワーエレメント部と樹脂製の弁本体の固定に当たり,弁本体の外周部にインサート成形した固着部材に雄ねじを,上端部が屈曲した筒状の連結部材の内側には雌ねじを,それぞれ形成して,両者をねじ結合により螺着させるという本件補正発明の相違点2に係る構成を採用するに足りる動機付け又は示唆がない。むしろ,引用発明は,それに先行する本件先行発明の弁本体が金属製であることによる問題点を解決するためにこれを樹脂製に改め,併せてパワーエレメント部と弁本体とを螺着によって固定していた本件先行発明の有する課題を解決するため,ねじ結合による螺着という方法を積極的に排斥してかしめ固定という方法を採用したものであるから,引用発明には,弁本体を樹脂製としつつも,パワーエレメント部と弁本体の固定に当たりねじ結合による螺着という方法を採用することについて阻害事由がある。しかも,本件補正発明は,上記相違点2に係る構\成を採用することによって,パワーエレメント部の固定に強度不足という問題が発生せず,膨張弁の動作に不具合が生じるおそれもなく,またその強度不足によって生ずる水分の侵入により不都合が生じるというおそれも発生しないという作用効果(作用効果1)を発揮することで,引用発明が有する技術的課題を解決するものである。したがって,当業者は,引用発明,本件オリフィス構成,甲8技術及び周知技術に基づいたとしても,引用発明について相違点2に係る構\成を採用することを容易に想到することができなかったものというべきである。
エ 被告の主張について
以上に対して,被告は,パワーエレメント部の弁本体への固定手段としてどのような手段を用いるかは当業者が適宜選択すべきことにすぎず,螺着という方法が周知技術であり,かしめ固定に様々な問題があることも技術常識であるし,引用例1の本件先行発明に関する記載が,本件先行発明における螺着の不具合を示しているにすぎないから,螺着という方法の採用自体を妨げるものではなく,当業者が,引用発明における固定手段としてかしめ固定に代えて螺着を採用することが容易にできた旨を主張する。しかしながら,ねじ結合による螺着及びかしめ固定にそれぞれ固有の問題があることが周知ないし技術常識であるとしても,引用発明は,そのような技術常識の中で,あえて本件先行発明が採用する螺着の問題点に着目し,これを解決するためにかしめ固定を採用したものである。すなわち,前記認定のとおり,引用例1は,本件先行発明が採用している螺着という方法を積極的に排斥している以上,相違点2に係る構成について引用発明のかしめ固定に代えて同発明が排斥している螺着という方法を採用することについては阻害事由があるのであって,これに反する被告の上記主張をもって,いずれも相違点2についての容易想到性に係る前記判断が妨げられるものではない。\n

◆判決本文

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平成22(行ケ)10075 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月31日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
イ この点について,審決は,前記甲18,19及び32の例から,「換気扇フィルターの使用後に金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを分別して廃棄すること(を容易にすること)」は,周知の技術的課題であることから,当業者は,甲2に接すれば,上記の課題を解決するため,接着剤成分が溶解または膨潤するものを選択することが容易であると判断している。しかし,審決は,上記課題が周知であるとすると,なにゆえ本件発明1の引用発明(発明A)との相違点に係る構成が容易に想到できることになるのかに関する論理について,合理的な理由を示していない点において,妥当を欠く。のみならず,甲18,19及び32の記載を子細に検討してみても,本件発明1が解決課題としている「金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが接着剤で接着されている換気扇フィルターにおいて,通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分別して廃棄することを可能\とすること」と同様の解決課題を示唆するものはない。すなわち,i)甲18,19及び32は,換気扇フィルターの使用後に金属製フィルター枠及びフィルター材の廃棄を容易にするものではあるものの,いずれも,金属製フィルター枠とフィルター材とが「接着剤で接着されている」ことを前提とした発明とは異なる技術を示すものである。また,ii)甲18記載のレンジフード用フィルターは,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材が「強固に接着されている換気扇フィルター」ではなく,「金属箔を成形可能な繊維不織布に代えることにより金網フイルターへの取り付けを簡略化すると共に使用後の廃棄に際し,分別することなく全体を容易に家庭ゴミとして処分せしめることを目的とする」ものであり,本件発明1とは,解決課題及び解決手段において異なる。さらに,iii)甲19も,金属箔製の換気扇カバー枠体と金属繊維を用いたフィルターから構成され,フィルター部分と換気扇カバー枠体とを分離する必要性を解消させて,そのまま一体物として出しても問題が起き難く,ゴミとして出す場合の作業性に優れ,かつ,再資源化が容易な換気扇カバーを提供することを目的としており,本件発明1とは解決手段において異なる。すなわち,本件発明1は,フィルター枠とフィルターとの剥離を容易にしようとすることを目的とするのに対し,甲18,19は,一体物としてゴミ出しをしても問題が生じることがないようにして,作業を高めるものであって,本件発明1における,解決課題の設定及び解決手段は,全く逆であって,本件発明1の異なる構\成に想到することを容易とする技術が示唆されているものとはいえない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10110 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所 

 拒絶審決が取り消されました。
 以上のとおり,本願発明は,異常事態が発生した場合に,巻上ロープをトラクションシーブに食い込ませ,シーブとロープとの間に十分な把持力が得られるようにして,エレベータの機能\及び信頼性を保証させるものであり,異常事態が発生したときにおける,一時的な把持力の確保を図ることを解決課題とするものである。また,引用文献1記載の発明2も,本願発明と同様に,何らかの原因よって高摩擦材が欠落するような異常事態が生じた場合を想定し,その際,ワイヤロープがU字形またはV字形のトラクションシーブ溝の接触部で接触し,この部分で摩擦力を得ることによって,エレベータ積載荷重を確保させることを解決課題とする発明である。これに対して,引用文献2記載の技術は,上記のような異常事態が発生した場合における把持力の確保という解決課題を全く想定していない。そうすると,本願発明における引用文献1記載の発明2との相違点に関する構成に至るために,引用文献2記載の技術を適用することは,困難であると解すべきである。\n

◆判決本文

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平成22(行ケ)10229 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所

 理由不備を理由として、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 当裁判所は,審決には,理由不備の違法があるから,審決は取り消されるべきであると判断する。その理由は,以下のとおりである。審決は,刊行物1(甲1)を主引用例として刊行物1記載の発明を認定し,本願発明と当該刊行物1記載の発明とを対比して両者の一致点並びに相違点1及び2を認定しているのであるから,甲2及び甲3記載の周知技術を用いて(併せて甲4及び甲5記載の周知の課題を参酌して),本願発明の上記相違点1及び2に係る構成に想到することが容易であるとの判断をしようとするのであれば,刊行物1記載の発明に,上記周知技術を適用して(併せて周知の課題を参酌して),本願発明の前記相違点1及び2に係る構\成に想到することが容易であったか否かを検討することによって,結論を導くことが必要である。しかし,審決は,相違点1及び2についての検討において,逆に,刊行物1記載の発明を,甲2及び甲3記載の周知技術に適用し,本願発明の相違点に係る構成に想到することが容易であるとの論理づけを示している(審決書3頁28行〜5頁12行)。すなわち,審決は,「刊行物1記載の発明を上記周知のピンポイントゲート又はトンネルゲートを有する金型に適用し,本願発明の上記相違点1に係る構\成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たものである。」(審決書4頁19行〜21行)としたほか,「上記相違点1において検討したとおり,刊行物1記載の発明をピンポイントゲート又はトンネルゲートを有する金型に適用することが容易に想到し得るものである以上,本願発明の上記相違点2に係る構成は,実質的な相違点ではない。」(審決書4頁26行〜29行),「本願発明は刊行物1記載の発明を従来周知の事項に適用しただけの構\\成であることは,上記で検討したとおりである。」(審決書5頁5行〜7行),「刊行物1記載の発明を従来周知の事項に適用することの動機づけとなる従来周知の技術的課題(ウエルドラインやジェッティング等の外観不良の解消)があり,その適用にあたり阻害要因となる格別の技術的困難性があるとも認められない。」(審決書5頁8行〜11行)などと判断しており,刊行物1記載の発明を,従来周知の事項に適用することによって,本願発明の相違点に係る構成に想到することが容易であるとの説明をしていると理解される。そうすると,審決は,刊行物1記載の発明の内容を確定し,本願発明と刊行物1記載の発明の相違点を認定したところまでは説明をしているものの,同相違点に係る本願発明の構\成が,当業者において容易に想到し得るか否かについては,何らの説明もしていないことになり,審決書において理由を記載すべきことを定めた特許法157条2項4号に反することになり,したがって,この点において,理由不備の違法がある。

◆判決本文

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