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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

動機付け

平成21(行ケ)10081 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、引用発明に記載された発明は前提が異なるというものです。
 「引用発明は,利用者側の複合器がスケーラビリティ機能を持たないことを前提としており,基本ビットストリームと付加ビットストリームを含む記録媒体が更新処理器側に配置されていることは必須の構\成であるから,基本ビットストリーム(基本部分)と付加ビットストリーム(補足部分)とがそれぞれ別の記録媒体に蓄積されていたとしても,利用者側に更新処理器(本願発明の併合手段に相当)を配置することやその一方を利用者側に配置し他方を通信ネットワーク(本願発明の伝送ラインに相当)を通じて利用者側にリンクする構成とすることは排除されているというべきであり,前記構\成要件ii)の構成を採用することが引用文献に記載された課題から容易に想到し得たということはできない。
エ なお,引用文献(甲1,乙1)には,「2.ビットスケーラビリティの問題点」(72頁13行〜73頁3行)の欄に,ビットストリームスケーラビリティには,階層符号化・復号器の低解像度用復号器で何らかの復号処理をしなければ高解像度加増を再生することができず処理が複雑であること,復号器での処理量の負担が多くなること等の問題があったことが記載されており,上記引用発明の課題認識に至る過程で,利用者側の復号器が更新処理器の機能を備えた構\成が示唆されているということもできる。しかし,この場合においても,前記イのとおり,基本ビットストリーム及び付加ビットストリームをそれぞれ別の記録媒体に分けて蓄積する構成とする解決課題ないし動機は存在せず,仮に,基本ビットストリーム及び付加ビットストリームがそれぞれ別の記録媒体に分けて蓄積されていたとしても,その一方を利用者側に配置し他方を通信ネットワークを通じて利用者側にリンクする構\成とする解決課題ないし動機も存在しないのであるから,前記構成要件i),ii)の構成を採用することが容易に想到し得たということはできない。オ以上のとおりであるから,引用発明から本願発明の構\成に至ることが当業者にとって容易に想到し得たことであるということはできない。」

◆平成21(行ケ)10081 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10297 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が、取り消されました。理由は、動機づけ無しというものです。
 「上記イ及びウによると,本件発明1の「REDIRECTコマンド」がクライアントにおいて情報ページを自動的に表示させるためのコマンドであって,ディレクトリサーバーによって行われるものであるのに対して,引用発明の「リダイレクト」は,ローカルエリア・ネットワーク内のサーバーに対する「インターネットの至る所」からのクライアントによるアクセスを確立する方法であって,このようなクライアントに対してローカルエリア・ネットワーク内で唯一のホストとなるフラグシップ・ホストによって行われるものであるということができる。そして,一貫してインターネットにおけるアクセスを念頭に置く本件発明1は,ローカルエリア・ネットワーク内のサーバーとのアクセスを実現するためのフラグシップ・ホストに相当するサーバーの存在及びその機能\としての「リダイレクト」によって,その技術的課題を解決しようとするものではないのであり,本件発明1の存在を知らない当業者がこのような引用例の記載に接したとしても,フラグシップ・ホストを必要としないインターネットのアクセス方法において,このような「リダイレクト」の構成を採用して,本件発明1のディレクトリサーバーによる「REDIRECTコマンド」に係る構\成とするように動機付けられるということはできないし,引用例において,フラグシップ・ホストの機能から離れて「リダイレクト」の機能\を採用しようと動機付ける記載も存在しない。そして,仮に,引用例に開示された事項についての技術的意義を離れて,「リダイレクト」という用語の抽象的な意義のみに基づいて本件発明1の「REDIRECTコマンド」と対比することを前提とするならば,排除されるべき「後知恵」の混入を避けることはできないといわなければならない。」

◆平成20(行ケ)10297 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

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平成21(行ケ)10090 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 「審決は,相違点(相違点1,2)に関し,「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていた」(14頁4行〜6行)とした上で,「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが本願の出願日において周知となっていた現状に照らせば,被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる。そして,奨学金の給付に結びつく重大な保全変更事情として,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報などが考えられることも,当業者が普通に想起することである。」(14頁7行〜15行)とした。上記4で検討したとおり,保険会社が奨学金支給を支援すること,及び保険会社が財団を設立して奨学金を支給することが周知であることに照らせば,被保険者に重大な事情の変更が生じた場合に,就学している子供がいれば,保険会社が奨学金を直接給付することについても,当業者において普通に想起できるものと解される。そして上記重大な事情の変更として本願補正発明の挙げる死亡保険金給付等があるとすることも,当業者が普通に想起するものである。イ また,引用発明の記載された刊行物1(甲1)には,上記2(1)ア(イ)で摘記したとおり,「…子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表\示することもできる。…」(段落【0050】)と記載され,同(ウ)摘記の図3に記載のとおり顧客登録情報として家族の構成・性別・年齢・趣味等が記載されていることからすると,引用発明でも被保険者及び家族の個人情報を検索し,必要と思われる情報を取得して印刷する機能\を備えるものと解される。そうすると,引用発明において,入力する情報を本願補正発明における保険金給付等の情報とし,印刷し提供する情報を奨学金支給の案内状とすることに格別の技術的課題を見出すことはできないから,結局これら構成の相違点についても,当業者が容易になし得る設計的事項の範囲内のものであると認められる。そうすると,審決が相違点に係る構\成について容易想到と判断したことに誤りはない。」

◆平成21(行ケ)10090 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10398 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月22日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとして審決に対して、「動機付ける旨の開示又は示唆がない」として、取り消しました。
 「上記(1)及び(2)のとおり,化粧用パック材にWJ加工を施すとの本件各発明の構成は,化粧用パッティング材から個々の化粧用パック材を剥離する際に生じる毛羽立ちの防止を主たる解決課題として採用されたものであるところ,同課題が本件出願当時の当業者にとっての自明又は周知の課題であったということはできず,また,引用例を含め,化粧用パッティング材(化粧綿)から剥離される各層(各シート部材)にWJ加工を施すことを動機付ける旨の開示又は示唆のある刊行物(本件出願前に頒布されたもの)は存在しないのであるから,仮に,本件審決が判断したとおり,引用発明に周知事項1及び2を適用して各層(化粧用シート部材)の側縁部近傍を圧着手段により剥離可能\に接合するとともに,各層を化粧用パック材として使用することが,本件出願当時の当業者において容易になし得ることであったとしても,また,引用発明の単位コットン(化粧用パッティング材)がWJ加工を施したものであることを考慮しても,これらから当然に,各層を1枚ごとに剥離可能としてパック材として使用する際にその使用形態に合わせて各層にWJ加工を施すことについてまで,本件出願当時の当業者において必要に応じ適宜なし得ることであったということはできず,その他,引用発明の各層にWJ加工を施すことが本件出願当時の当業者において必要に応じ適宜なし得たものと認めるに足りる証拠はないから,相違点1に係る各構\成のうち化粧用パック材にWJ加工を施すとの構成についての本件審決の判断は誤りであるといわざるを得ない。この点に関し,被告は,審査基準が想定する当業者であれば,引用発明の各層を1枚ごとに剥離可能\としてパック材として使用するときは各層にWJ加工を施すものであるなどと主張するが,上記説示したところに照らすと,そのようにいうことはできないし,その他,被告主張に係る事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,化粧用パッティング材(化粧綿)から剥離された各層(各部材)にWJ加工を施すことは引用発明から容易に想到し得るものではないのに,この点を看過した相違点1についての本件審決の判断は誤りであるというほかなく,原告主張の取消事由2は理由があるといわなければならない。」  

◆平成20(行ケ)10398 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月22日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10433 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月16日 知的財産高等裁判所

 拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて判断したので、手続き違背を理由として審決を取り消すとともに、周知技術についても一言述べました。  「このように,拒絶査定と審決とでは,「表面に吸着」する点に関し,同一性のある解釈をしていたとは認められず,むしろ,拒絶査定及び審決における各説示の文言等に照らし,前者はこれを「表\面への吸着」と解釈し,後者は表面のみならず「吸収」を含む現象と解釈していることが認められる。したがって,審決は,拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて判断したといわざるを得ない。そして,前記第3で主張するとおりの原告らの解釈及び前提に立てば,この「表\面に吸着」する点はまさしく本願発明の重要な部分であるところ,原告らの意見書や審判請求書における主張からすれば,「表面に吸着」する点に関し,原告らは,審判合議体とは異なる解釈をし,本願発明や引用発明を異なる前提で捉えていることが認められるのであるから,これに対して,審決が,拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて,「表\面に吸着し」との点について判断をしている以上,原告らに対し,意見を述べる機会を与えることが必要であったというべきである。なお,審決が原告らに対し上記のような意見を述べる機会を付与しなかったとしても,その双方の場合について実質上審理が行われ,原告らが必要な意見を述べているなどの特段の事情があれば,審決のとった措置は実質上違法性がないということもできないではないが(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10538号,同20年2月21日判決の第5の1(4) 参照),本件においては,そのような特段の事情を認めることはできない。ウ さらに,審決は,拒絶理由通知においてなんら摘示されなかった公知技術(周知例1及び2)を用い,単にそれが周知技術であるという理由だけで,拒絶理由を構成していなくとも,特許法29条1,2項にいういわゆる引用発明の一つになり得るものと解しているかのようである。すなわち,審決は,相違点1について,「排ガスがリーンのときに,NOx浄化触媒としてNOxを触媒表\面へ吸着するものは周知(例えば,周知例1及び周知例2参照。以下「周知技術1」という。)であることから,相違点1に係る本願発明の発明特定事項は周知である。」と説示し,また,相違点2についても,「内燃機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスを数秒間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記NOx浄化触媒で吸着したNOxを還元剤と接触反応させてN2に還元して排ガスを浄化することは周知(‥‥‥)であり,相違点2に係る本願発明のように時間及び深さを決定することは,周知例1及び周知例3の周知技術2を勘案すれば,適宜なし得る設計的事項に過ぎないものである。」,そして,「本願発明は,引用発明,周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである」という説示をしているが,誤りである。被告主張のように周知技術1及び2が著名な発明として周知であるとしても,周知技術であるというだけで,拒絶理由に摘示されていなくとも,同法29条1,2項の引用発明として用いることができるといえないことは,同法29条1,2項及び50条の解釈上明らかである。確かに,拒絶理由に摘示されていない周知技術であっても,例外的に同法29条2項の容易想到性の認定判断の中で許容されることがあるが,それは,拒絶理由を構成する引用発明の認定上の微修整や,容易性の判断の過程で補助的に用いる場合,ないし関係する技術分野で周知性が高く技術の理解の上で当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合に限られるのであって,周知技術でありさえすれば,拒絶理由に摘示されていなくても当然に引用できるわけではない。被告の主張する周知技術は,著名であり,多くの関係者に知れ渡っていることが想像されるが,本件の容易想到性の認定判断の手続で重要な役割を果たすものであることにかんがみれば,単なる引用発明の認定上の微修整,容易想到性の判断の過程で補助的に用いる場合ないし当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合にあたるということはできないから,本件において,容易想到性を肯定する判断要素になり得るということはできない。」\n

◆平成20(行ケ)10433 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月16日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10490 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月17日 知的財産高等裁判所

 数値限定発明について、進歩性なしとはいえないとして無効審決(特許維持)がなされましたが、これが取り消されました。  「本件明細書には,本件発明1における数値範囲の臨界的意義についての具体的な記載はされておらず,また,塩素原子含有量は,上限値である10ppm以下だけが記載され,下限値が特定されていないものであって,これらによれば,本件発明1における塩素原子含有量の数値限定の意義は,塩素原子がポリカーボネート樹脂中に少なければ少ないほど,塩素原子の影響による半導体ウエーハの汚染を低減でき,本件発明1の目的達成に適しているというものにすぎないといわざるを得ない。」

◆平成20(行ケ)10490 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月17日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10431 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

 周知技術を適用するための共通の解決課題ないし動機付けが存在していたか否か,仮に存在していたとして,周知技術を適用するための阻害要因がなかったとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 「このように,引用刊行物に記載された技術的事項は,2次コイルとして,環状コイルを用いることを前提としたものであって,引用刊行物には,相互インダクタンス電流トランスジューサーの2次コイルを環状コイル以外のものとする可能性を示唆する記載はない。引用発明は,電流感知トランスジューサーの従来技術を前提としながら,環状コイルにおけるシンメトリー構\造の実現という課題を,環状コイルを多重層構造とすることによって解決しようとしたものである。引用発明と本願発明は,課題解決の前提が異なるから,引用発明の解決課題からは,コイルを多層基板上に形成するための動機付けは生じないものといえる。なお,引用刊行物には,相互インダクタンス電流トランスジューサーを小型化するという課題も記載されているが,環状コイルを前提としたものであって,本願発明における小型化とは,その解決課題において共通するものではない。以上のとおり,引用発明には,環状コイルに代えて,多層基板上に形成されたプリントコイルによりトランスを構\成する前記周知技術を適用する解決課題や動機は存在しないというべきであり,したがって,当業者が本願発明の相違点2に係る構成を想到することが容易であったとはいえない。イ また,引用発明に周知例の技術を適用するに当たっては,以下のとおり,その適用を阻害する要因が存在するともいえる。すなわち,引用発明においては,細長いほぼ直線状の導電体の周囲に同軸的に円筒形のスリーブを配置し,その円筒形スリーブと嵌合するように環状コイルが配置され,環状コイルがほぼ直線状の導電体の周囲を取り囲むという構\成を採用しているのに対し,周知例の技術では1次コイルと2次コイルが平面的に対向するように配置されており,引用発明と周知例の技術は,構造を異にしている。そして,導電体と環状コイルとからなる,引用発明のトランスの構\成に,上記周知例に記載されたトランスの構成を適用する場合,2次コイルである環状コイルは,直線状の導電体に直交する仮想的な平面上に,前記導電体を囲むように配置されることが必要となる。しかし,周知例に記載されたトランスは,平面状コイルを形成した絶縁基板を積層するものであり,平面上の1次コイルと2次コイルは,互いに平行な基板面上に形成され,引用発明の導電体と環状コイルの配置関係と,周知例に記載されたトランスにおける1次コイルと2次コイルの配置は,構\造上の相違が存することから,引用発明に周知例の構成を適用することには,困難性があるというべきである。また,引用発明に周知例に記載された技術を適用することを想定した場合,まず,引用発明においてはほぼ直線状の導電体とすることにより導電体によるインピーダンスの発生が抑制されているのに対し,引用発明の導電体に対応する周知例の1次コイルは渦巻状であって導体長が長く,それ自体がインピーダンスとして働く余地があり,この点でも引用発明に周知例の技術を適用しようとするに当たっての阻害要因となる。さらに,引用発明においては,電力メーター用電流感知トランスジューサーとして,需要家に供給される電力の正確な測定ということが技術的課題とされ,そのために,環状コイルに作用する外因性磁場による悪影響の排除という課題が存在するのに対して,周知例の技術においては,専ら1次コイルと2次コイルの磁気結合の強化ということが技術的課題とされていて,外部磁界による磁気干渉は,格別考慮する必要がない点において,引用発明に周知例の技術を適用しようとするに当たっての阻害要因となり得る。以上のとおり,引用発明に周知例の技術を適用することには,課題の共通性や動機付けがなく,また,その適用には阻害要因があるというべきであるから,当業者が引用発明に周知例の技術を適用して本願発明に至ることが容易であったということはできない。」\n

◆平成20(行ケ)10431 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10121 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月27日 知的財産高等裁判所

 審決の論理付けが十分かつ合理的な説明を欠くとして、取り消されました。
 「引用発明と引用発明2とを対比すると,引用発明では,「該レバーの回動により回動する軸体の回動操作により各分岐流路への水路の切り換えを行う構成を有する切換弁」とされているとおり,その操作力の方向は,レバーを回すこと,すなわち回転(回動)であるのに対し,引用発明2では,「押し部11を押す」とされているとおり,操作力の方向が押し部を押すこと,すなわち直動であるとの点で,操作力の方向において相違する。そして,本願発明は,操作力の方向については,「該切換レバーと連動して回動する回転軸の回動操作により各原水吐出口または原水送水口への水路の切り換えを行う」とされているとおり,切換レバーを回動させるものであって,引用発明と共通する。さらに,本願発明では「取っ手部分を備えた切換レバー」と「該切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構\とを有する」構成の両者を採用することにより,「取っ手部分」を小さい力で押圧しても,ラチェット機構\に大きなトルクを作用させることが可能になる等の効果を奏することが説明されている(もっとも,当裁判所は,そのような効果が格別のものであると解するものではない。)。そうすると,引用発明は,レバーと回転軸との関係においては,「回動−回動変換」方式を採用している点において,本願発明と共通するのに対して,引用発明2は,押し部と回転軸中心との関係において「直動−回動変換」方式を採用しており,押し部11を押す直動の操作力を回転板9の回動に変換するとの技術的特徴を備えている点において,引用発明及び本願発明と相違する。引用発明2の技術的特徴及び相違点を考慮するならば,引用発明と引用発明2とを組み合わせて本願発明の構\成に到達すること,すなわち,引用発明2のラチェット歯94を,引用発明の回動伝達部に適用することにより,本願発明の構成である「該切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構\を有する」構成に至ることが容易であるとはいえない。・・・・特許法157条2項4号が,審決に理由を付することを規定した趣旨は,審決が慎重かつ公正妥当にされることを担保し,不服申\立てをするか否かの判断に資するとの目的に由来するものである。特に,審決が,当該発明の構成に至ることが容易に想到し得たとの判断をする場合においては,そのような判断をするに至った論理過程の中に,無意識的に,事後分析的な判断,証拠や論理に基づかない判断等が入り込む危険性が有り得るため,そのような判断を回避することが必要となる(知財高等裁判所平成20年(行ケ)第10261号審決取消請求事件・平成21年3月25日判決参照)。そのような点を総合考慮すると,被告が,本件訴訟において,引用発明と引用発明2を組み合わせて,本願発明の相違点イに係る構成に達したとの理由を示して本願発明が容易想到であるとの結論を導いた審決の判断が正当である理由について,主張した前記の内容は,審決のした結論に至る論理を差し替えるものであるか,又は,新たに論理構\成を追加するものと評価できるから,採用することはできない。以上のとおりであるから,レバーを回動させる操作力を,被回動部材に伝達する回動伝達部に,ラチェット歯を有するラチェット機構として備える構\成が,本願出願前に公知又は周知であるか否か,引用発明に,ラチェットに係る公知又は周知の技術を適用することにより本願発明の構成に至ることが容易であるか否かの争点については,審判手続において,出願人である原告に対して,本願発明の容易想到性の有無に関する意見を述べる機会等を付与した上で,審決において,改めて判断するのが相当である。」

◆平成20(行ケ)10121 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月12日 知的財産高等裁判所 

  進歩性なしとした拒絶審決を取り消しました。
 「引用文献1(甲1)には,炭素フィブリルの凝集体の大きさを0.10mm(100μm)よりも小さくすることについてまで示唆するような記載はなく,むしろ,凝集体をそのまま用いると分散性等に問題が生じるとしていることや,成形物の外観を損なわないことを目的の一つとしていることからすると,凝集体をそのまま用いずにある程度分解してから用いることを示唆するにとどまるものと認められる。したがって,引用文献1(甲1)には本願発明に至るために必要な教示ないし示唆は存在しないというべきである。
・・・(ウ) そうすると,引用文献3(甲3)には,一般的に充填剤をマトリックス材料に分散させて複合体を製造する方法に関して,高い分散性を得るために凝集物粒径を小さくすることが記載されているとしても,炭素フィブリルを充填剤として導電性を有する複合体を製造する場合について,十分な導電性と機械的強度が得られる炭素フィブリルの凝集体の大きさについて具体的な数値が示されているとはいえないものである。したがって,引用文献3(甲3)にも,引用発明における炭素フィブリルの凝集体の径を100μmよりも小さくすることの教示ないし示唆が存在するとはいえない。
 (4) 以上によれば,本願発明は,引用文献1〜3に記載された発明に基づいては当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,審決は,容易想到性についての判断を誤ったものである。」

◆平成20(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月12日 知的財産高等裁判所 

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