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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

動機付け

平成19(行ケ)10059 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月22日 知的財産高等裁判所

 周知技術との組み合わせについて動機づけ無しとした審決が維持されました。
 引用発明3の前記内容によれば,同発明は,常時は親機からの制御信号を各端末に順次ポーリング動作により送出するが,必要な場合に割込許可信号としての伝送信号を送出することで,特定の端末から割込監視信号を返信させるようにしたものである。そして,引用例3にも,親機と端末との間の通信制御をCPU又はステートマシーンのいずれで行っているかについての明確な記載はないものの,単なるポーリング動作に終始せず,上記のように親機からの割込許可信号の伝送を可能にするという特徴を有している以上,サイクリック交信と個別交信を適宜組み合わせている引用発明1と同様に,CPUによる通信制御を念頭に置いているものと見る余地が十\分にある。したがって,引用例3には,制御手段の制御について,「プログラムによる通信制御に基づかないで,回路の駆動で制御する」(本件構成1)というステートマシーンにより通信制御を行うことについて示唆ないし動機付けがあるとまでは認め難い。・・以上のとおり,ステートマシーンによる通信制御それ自体が,本件特許出願当時,当業者に周知の技術であったとしても,引用例1ないし3には,引用発明1の通信制御手段として本件構\成1を採用することについて,いずれも示唆ないし動機付けがあるとはいえない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10104 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月10日 知的財産高等裁判所

 阻害要因ありとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 引用発明1と引用発明2とその技術分野をみてみると,引用例1には,金属イオン封鎖剤組成物をその金属イオン封鎖組成物が硬表面に付着した汚れ自体に作用して洗浄する旨の記載はないのに対し,引用発明2は,アルカリと錯体形成剤とを硬表\面の洗浄のための有効成分として用いるものであるとの違いがあるが,上記(3)のとおり,金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤組成物を硬表面の洗浄のための有効成分として用いることは周知技術であるということができるものであるから,引用発明1も,洗浄作用という技術分野に係る発明であって,引用発明2と技術分野を同じくするものということができる。
ウ しかしながら,引用発明2は,グリコール酸ナトリウムを組成物とする金属イオン封鎖剤組成物の発明ではなく,また,引用発明1も,その発明に係る金属イオン封鎖剤組成物には,グリコール酸ナトリウムが含まれているとはいえ,前記(1)ウのとおり,当該金属イオン封鎖剤組成物にとって,グリコール酸ナトリウムは必須の組成物ではなく,かえって,その必要がない組成物にすぎないのである。そうすると,一般的に,金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤組成物を硬表面の洗浄のための有効成分として用いることとし,その際に引用発明1に引用発明2を組み合わせて引用発明1の金属イオン封鎖剤に水酸化ナトリウムを加えることまでは当業者にとって容易に想到し得るとしても,引用発明1の金属イオン封鎖剤組成物にとって必須の組成物でないとされるグリコール酸ナトリウムを含んだまま,これに水酸化ナトリウムを加えるのは,引用例1にグリコール酸ナトリウムを生成する反応式(2)の反応が起こらないようにする必要があると記載されているのであるから,阻害要因があるといわざるを得ず,その阻害要因が解消されない限り,そもそも引用発明1に引用発明2を組み合わせる動機付けもないというべきであって,その組合せが当業者にとって容易想到であったということはできない。

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平成22(行ケ)10024 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月28日 知的財産高等裁判所 

 新規事項でないとした審決の判断は維持されましたが、進歩性ありとした判断は取り消されました。
 前記(4),(5)によれば,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,回路基板改造による不正行為の防止を課題とし,上記不正行為を効果的に防止して不正行為を受けにくくする遊技機を提供することを目的としており(前記段落【0006】【0007】),遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を表\示制御基板に設けるとともに,表示制御基板への信号の出力のみを可能\とする信号伝達方向規制手段を遊技制御基板に搭載する構成とし(図16),更に信号伝達方向規制手段をバッファIC回路で構\成していることが認められる(前記段落【0060】)。これにより,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わることなく,確実に信号の不可逆性を達成することができるようにしており,表\示制御基板改造による不正行為を効果的に防止するものである(前記段落【0094】【0095】【0096】)。そうすると,本件基準明細書又は図面のすべての記載を総合すると,本件基準明細書又は図面に記載された遊技機は,当業者において,不正行為を防止するため,遊技制御基板から表示制御基板への信号の伝達のみを可能\とし,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わる余地がないよう,確実に信号の不可逆性を達成することができるように構\成していること,すなわち,信号の不可逆性に例外を設けないとの技術的事項が記載されていると認定するのが合理的である。そうすると同技術的事項との関係において,「遊技制御基板と表示制御基板との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表\示制御基板への一方向に規制する」ことは,新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。これに対し,原告は,甲3記載の発明について,メイン制御部からサブ制御部へのすべての信号を規制の対象としていないと解釈するならば,本件基準明細書についても同様に解釈するべきであり,本件訂正は,新たな技術的事項を導入するものに当たると主張する。しかし,前記のとおり,訂正の適否の判断において,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」であるか否かは,当業者において,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断すべきものであり,他の公知文献等の解釈により判断が左右されるものではないから,上記原告の主張は採用することができない。したがって,遊技制御基板と表示制御基板との間の「信号」を「全ての信号」と限定する本件訂正は,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」においてするものということができるので,審決が本件訂正を認めた点に違法はない。
・・・ 以上によれば,審決が認定する技術事項Cが前記段落【0071】の記載に基づくものであるとしても,同段落の記載は,甲9の他の部分の記載や甲9記載の発明が解決しようとする課題及びその解決手段と整合しないか,又は,技術的に解決不可能な内容を含むものであって,誤った記載と解される。したがって,前記段落【0071】の記載のみから,甲9には技術事項Cが実質的に開示されていると認めることはできない。審決が,技術事項Cを根拠に,甲9において,「遊技制御基板199」から「払出制御回路基板152」へ伝達される信号は賞球個数信号D0〜D3がすべてであるとは認定できないと判断したことは誤りである。
・・・ 前記(2)のとおり,甲3には,サブ制御部6からメイン制御部1へのデータ信号入力を禁止し,サブ制御部6からメイン制御部1への不正信号の入力を防止するため,メイン制御部1とサブ制御部6との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表示制御基板への一方向に規制するための信号伝達方向規制手段を設けることが実質的に記載されているものと認められる。そうすると,本件訂正発明1と甲3記載の発明との相違点は,本件訂正発明1は表\示制御基板内及び遊技制御基板内の各々に信号伝達方向規制手段が実装されているのに対し,甲3記載の発明は,メイン制御部1(「遊技制御基板」に相当)及びサブ制御部6(「表示制御基板」に相当)の各々に信号伝達方向規制手段が実装されていないこととなる。また,前記(3)のとおり,甲9には,遊技機に関し,メイン制御部からサブ制御部への一方向通信とした構\成を採用することにより,サブ制御部からメイン制御部へ入力される情報の入力部を利用した不正なデータの入力による不正改造等を防止することが記載されており,その具体的手段として,信号の伝達方向を遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路209を遊技制御基板199(メイン基板)に設けるとともに,信号の伝達方向を前記遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記サブ基板への信号の出力のみを可能とし,前記サブ基板からの信号の入力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路217を払出制御回路基板152(サブ基板)に設けることが開示されていると認められる。さらに,甲9に記載された技術事項は,甲3記載の発明と同様に遊技機に関する技術分野において,不正信号の入力を防止するという目的を達成するためのものであり,甲3記載の発明においては1つであった一方向データ転送手段を,甲9のように入力側基板と出力側基板のそれぞれに設けることにより,より高い効果が期待できることは当然のことであるから,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することは,当業者において容易であるといえる。なお,前記(3)のとおり,審決が技術事項Cとして認定した事項は,甲9記載の技術的思想に基づく適切な開示事項とは認められず,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用する際の阻害要因とはならない。したがって,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することにより,本件訂正発明1の構成(ε)及び構\成(ζ)を得ることは当業者が容易に想到し得ることといえる。以上によれば,本件訂正発明1は,甲3に記載された発明に甲9記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるものであるから,本件訂正発明1の進歩性を肯定した審決の判断は誤りであり,取消事由2は理由がある

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平成21(行ケ)10330 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月12日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、周知技術を組み合わせる動機づけがないとして取り消されました。
 以上のとおり,周知技術として提示された乙3,4においては,いずれも医療用具が何らかの化学物質でコーティングされており,コーティングの際,所望の厚みないし付着量の均一なコーティングを行うために粘度や溶解性(濃度)が考慮されるとしても,同化学物質が医療用具に付着し続けることが念頭に置かれているものである。以上を前提とした場合,上記周知技術の認識を有する当業者が,コーティングした物質を剥離させるという,周知技術とは異なる技術的思想を開示する引用例2(甲2)において,そこに記載も示唆もない,部材上の複数の角質層−穿刺微細突出物に,物質の水溶液が乾燥後治療に有効な量となり,有効な塗布厚みとなって付着するようにするとの観点に着目することが容易であったとはいえない。・・・
 このほか,被告は,本願補正発明は(水溶液の)粘度の上限のみ限定され,下限は限定されておらず,粘度が例えば水そのものの粘度とほぼ同じように低い水溶液も含まれるものであり,粘性は大きくなければならない旨の原告の主張と矛盾する旨主張する。しかし,特許請求の範囲において発明を特定する際,必ずしも,所望の効果を発揮するために必要な条件をすべて特定しなければならないわけではなく,発明を構成する特徴的な条件のみ特定すれば足りることが通常であって,発明の内容と技術常識に基づき当業者が適宜設定できる条件まで,逐一,発明特定事項とすることが求められるわけではない。そして,本願補正発明においては,薬理学的活性物質の水溶液の粘度が約500センチポアズ(cp)未満であれば所望の効果を発揮できるとされている。他方で,岩波理化学辞典第5版(株式会社岩波書店発行,甲13)によれば,1p(ポアズ)は10 Pa・s(パスカル・秒)であるとこ−1ろ,20℃での水の粘性率は約1.00×10 Pa・sとされており, これはすなわち約0.01p=1cpである。そうすると,本願補正発明においては,約1〜500cpの範囲内で,所望する効果に応じて粘度を適宜設定すれば足りるものであって,「薬理学的活性物質の水溶液の粘度が低い値の場合には,薬理学的活性物質の水溶液はおよそ所望のようには微細突出物上に付着できないものであり,そのような値を含む本願補正発明の数値範囲の限定には格別の意義を見出せない」旨の被告の主張は理由がない。

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平成21(行ケ)10376 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月04日 知的財産高等裁判所

   進歩性なしとの審決が、動機づけがないとして取り消されました。
 先に指摘したとおり,本願発明の出願前において,照射野ランプが点滅することなどにより,X線撮影装置の作動状態を視覚上明らかにする技術は周知であった。しかしながら,本願発明及び引用発明は,X線撮影装置の作動状態ではなく,「撮影準備完了状態」を視覚的に認識することをその課題とするものであるところ,周知例1及び乙1文献により開示された周知技術は,いずれも照射野ランプの点灯状態の変化により,X線撮影装置の作動状態を視覚上明らかにするにとどまるものであって,照射野ランプによって「撮影準備完了状態」を視覚的に認識させることに関する技術は何ら開示されていない。周知例2についても,同様である。
イ 組合せの動機付けの有無について
引用発明は,操作者は,X線撮影時において,X線被曝を防ぐため,できるだけX線装置から離れた位置で撮影しようとすることを前提として,被検者に不安を与えることなく,操作者に撮影準備完了状態を視覚的に容易に認識させるために,操作者が頭を少し上向きにするだけで容易に視野に入る,操作者からよく見える場所である,天井などの装置の「上方」にレーザー光を当てるものである。そのような引用発明において,X線装置の上方で,かつ,装置から離れている操作者からもよく見える場所として例示されている天井(平面)のほかに,撮影準備完了状態を視認させるレーザー光を当てる場所として,天井とは異なって,装置の上方ではなく,また,平面でもない「被検者の撮影部位」を選択することは,人体にレーザー光線を当てることによって,少なくとも「被検者に不安を与えること」が当然予想されることも併せ考慮すると,当業者にとって想到すること自体が困難であるということができる。しかも,当業者にとって「被検者の撮影部位」を選択することが容易想到であり,さらに,レーザー光照射部をX線装置の適宜の位置に設けることについても当業者にとって容易想到であるとしても,照射野ランプとレーザー光照射部とがX線撮影装置に併設されるというにとどまり,それ以上に,X線照射野を照準し確認するための照射野ランプに撮影準備完了状態を知らせる機能\を併せ持たせることによって,撮影準備完了状態を知らせるレーザー光を照射するためのレーザー光照射部を不要とすることについては,引用例は,そもそも照射野ランプの構成自体を有さない以上,何らの示唆を有するものではない。さらに,既に指摘したとおり,照射野ランプについても,これに撮影準備完了状態を知らせる機能\を併せ持たせる構成は,本願発明の出願前においては,周知ではなかったのであるから,引用発明において,撮影準備完了状態を知らせるレーザー光に代えて,照射野ランプに撮影準備完了状態を知らせる光の光源としての機能\を付加する動機付けを見いだすこともできない。

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平成21(行ケ)10329 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月28日 知的財産高等裁判所 

 進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 審決が,引用発明1では,「運転の条件は,被混煉材の種類や温度上昇の制限に合わせて予め設定」されているため,「溶剤等の温度上昇」は運転の条件の設定により制限されて問題とされるものではなく,引用発明1において,他の手法により,「溶剤等の温度上昇」をさらに制御しようとする動機付けは見い出せないと認定した(23頁19行〜36行)ことについて,このような動機付けが存在しないという審決の認定は,当業者による通常の創作能\力を誤解したものであって誤りであると主張する。そこで,検討するに,引用発明1は,前記3(2)認定のとおり,真空状態にある混煉容器を自転・公転させて被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題を明示しており,これを解決するために,容器の自転数,公転数を含む運転条件を予め設定したものと認められる。また,引用発明2も,前記4(2)認定のとおり,同様に,攪拌混合する対象物の温度上昇を押さえるという技術課題を有しており,これを解決するために,ホッパーの上面に設けた温度センサーにより対象物の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると,攪拌する部材の回転数を減少させて温度を低下させ,以後,検知した温度に応じて回転数を制御し,攪拌する部材の回転数の減少,増加を順次繰返すものであると認められる。さらに,本件周知例にも,攪拌により一定以上に温度が上昇するのを防ぐという技術課題と,これを解決するために,検出された温度に応じて攪拌翼の回転数を制御するという技術事項が開示されている。そうすると,引用発明1及び2と本件周知例は,いずれも攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという共通の技術課題を有し,それぞれその課題を解決する手段を提供するものであると認められる。したがって,引用発明1において,上記技術課題を解決するために採用した,混煉のための自転数,公転数を含む運転条件を温度上昇の制限などの条件に合わせて予め設定しておくという構\成に代えて,共通する技術課題を有する引用発明2に開示された,温度センサーにより対象物の温度を検知して温度が一定の温度まで上昇すると,攪拌する部材の回転数を制御するという技術思想を採用し,対象物の温度を検知して検知した温度に応じて容器の自転数,公転数を含む運転条件を制御するという構成(審決認定の[特定事項B]の構成)に至ることは,攪拌により一定以上に温度が上昇するのを防ぐという技術課題自体が本件周知例にも示される周知の技術課題であることも考慮すると,当業者にとって,容易に想到することができたものといわなければならない。審決認定のとおり引用例1に「温度の検知」の記載がないとしても,攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという技術課題が引用例1自体に開示されており,これが周知の技術課題でもある以上,当該課題解決の観点から,温度を検知してそれに応じて運転条件を制御するという構成を採用することに,格別の困難性はないものということができる。
・・・確かに,引用発明1において,混煉容器を自転・公転させて被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題が開示されていることは,前記3(2)認定のとおりである。また,引用例1に「温度の検知」の記載がないとしても,攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという技術課題が引用例1自体に開示されており,周知の技術課題でもある以上,当該課題解決の観点から,他の解決手段を採用することに格別の困難性がないことも,前記(2)認定のとおりである。そうすると,引用発明1において,同発明と同様の技術課題を有する引用発明2に開示された,ホッパーの上面に設けた温度センサーにより対象物の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると攪拌する部材の回転数を制御するという技術思想を採用することは,当業者にとって,容易に想到することができたものといわなければならない。したがって,引用発明1において,引用例2に記載される技術思想を適用する動機付けは,周知技術を加味しても見い出せないとした審決の判断(32頁24行〜25行)は誤りであり,この点に関する原告主張の取消事由3には理由がある。

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平成21(行ケ)10324 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月29日 知的財産高等裁判所

 進歩性について争われましたが、示唆もないし阻害要因ありとして、無効理由無しとした審決が維持されました。
 甲2,甲11ないし甲14は,ポッティング後に放熱板を取り外すことや故障した部品を交換することについては,何ら記載されておらず,後記のとおり,甲18,19を考慮したとしても,ポッティング材に埋設されたプリント基板の部品を交換する技術が周知であるとはいえない。したがって,甲1,甲2,甲11ないし甲14には,部品交換を目的とした放熱器の着脱を行う甲1発明に甲2発明を適用することについての示唆はない。
イ 阻害要因
(ア) また,前記(2)イのとおり,甲1発明における作用効果の一つである,部品交換を目的として半導体素子の放熱器の着脱容易な取付けを満足できるようにすることは,プリント基板1の下側より穴6にネジ回しを差し込んで,半導体素子2と放熱器3を固定するネジ4を回して半導体素子2から放熱器3を外すことが可能な状態にあることを前提とするものであるところ,ポッティングが周知の技術であるとしても,プリント基板をポッティング材により覆う場合は,ネジ回しをプリント基板1の下側より穴6に差し込んでネジ4を外すことも,プリント基板に取付けられた部品を交換することも,ポッティングを施さない場合に比べて困難である。したがって,ポッティングを施すことは,甲1発明の作用効果の前提とは相容れない。仮に,甲1発明に甲2発明を適用するならば,甲1発明のプリント基板をケース内に収納し,プリント基板及び電子部品のリードを覆いかつ放熱器の一部を埋設状態とするようにケース内にポッティング材を充填することとなる。そうすると,放熱器の直下にある部品が故障して交換しなければならないような場合,放熱器を固定しているネジを回そうとしても,ケース及びその中に充填されたポッティング材があるため,そのままでは,プリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をすることはできない。プリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をするのであれば,ケースを破壊するなどし,ポッティング材を除去することが必要不可欠となる。しかし,そのような方法では,プリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をすることができるように放熱器を取り付けたことにならず,放熱器の着脱容易な取付けという甲1発明の課題,作用効果は達成されないこととなる。放熱器の着脱容易な取付けという甲1発明の課題,作用効果を達成するのであれば,単にプリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をすることができるように放熱器を取り付けなければならないから,そのような甲1発明の課題,作用効果は,甲1発明に甲2発明を適用し,甲1発明のプリント基板をケース内に収納してケース内にポッティング材を充填することの阻害要因になるものと認められる。\n

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平成21(行ケ)10287 審決取消請求事件 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反について無効理由無しとした審決が維持されました。
 したがって,甲1記載の第1実施例において,本件発明の最終到達水位,及び水の撹拌を行う際の水位に該当するのは,いずれも高水位であり,給水を停止し撹拌を始める時の水位は,最終到達水位に等しく,そうすると,甲1の第1実施例には,給水を中断し撹拌を始める時の水位が最終到達水位である発明が記載されており,最終到達水位より低い水位において給水を停止して撹拌を始める発明は記載されていない。(ウ) もっとも,甲1の第1実施例の槽洗浄コースにおいては,高水位まで給水(ステップa1)して1巡目の洗浄を行った後,再び高水位までの給水(ステップa1)をするから,1巡目の洗浄において水が撹拌される間に外槽2から水が溢れ出て,1巡目の洗浄の後には,外槽2及び内槽3内の水位が高水位よりも低下していることが推認される。しかし,前記アのとおり,本件発明において,水を撹拌する際の水位は,給水を停止し撹拌を始める時の水位を指すものと認められるから,水の撹拌中及び撹拌後に水位が低下したとしても,そのことから直ちに,本件発明にいう,水を撹拌する際の水位(すなわち,水の撹拌を始める時の水位)も低下するとの帰結が導かれるわけではない。そして,甲1の第1実施例の1巡目及び2巡目の洗浄は,いずれも給水(ステップa1)によって高水位まで給水されて撹拌が開始されるから,本件発明にいう,水を撹拌する際の水位(すなわち,水の撹拌を始める時の水位)はいずれも高水位であり,1巡目の洗浄による撹拌中又は撹拌後の水位が低下していたとしても,そのことによって,本件発明にいう,水を撹拌する際の水位(すなわち,水の撹拌を始める時の水位)が低下するとはいえない。(エ) さらに,本件発明に示された,最終到達水位よりも低い水位で給水を停止して水を撹拌するという技術思想は,撹拌された水の波の機械力による洗浄作用を利用するとの技術的知見に基づくものであるが,甲1には,このような技術的知見について,何らの記載も示唆もない。

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平成21(行ケ)10361 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとの審決について、技術思想が異なるとして取り消されました。
 以上を総合すると,引用刊行物Cからは,耐油汚れの評価に当たって,時間,労力,価格を抑え,手順を簡略化しようとする本願発明の解決課題についての示唆はない。引用刊行物C記載の発明における,「乾燥工程を経由しない滴下」という操作は,本願発明における同様の操作と,その目的や意義を異にするものであっって,引用刊行物C記載の発明は,本願発明と解決課題及び技術思想を異にする発明である。前記のとおり,引用刊行物A記載の発明は,擬似油汚れについて特定量を滴下し,乾燥工程を設けないとする相違点(い)に係る構成を欠くものである。同発明は,本願発明における時間,労力,価格を抑えることを目的として,手順を簡略化しようとする解決課題を有していない点で,異なる技術思想の下で実施された評価試験に係る技術であるということができる。このように,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づく引用刊行物A記載の発明を起点として,同様に,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づき実施された評価試験に係る技術である引用刊行物C記載の発明の構\成を適用することによって,本願発明に到達することはないというべきである。本願発明は,決して複雑なものではなく,むしろ平易な構成からなる。したがって,耐油汚れに対する安価な評価方法を得ようという目的(解決課題)を設定した場合,その解決手段として本願発明の構\成を採用することは,一見すると容易であると考える余地が生じる。本願発明のような平易な構成からなる発明では,判断をする者によって,評価が分かれる可能\性が高いといえる。このような論点について結論を導く場合には,主観や直感に基づいた判断を回避し,予測可能\性を高めることが,特に,要請される。その手法としては,従来実施されているような手法,すなわち,当該発明と出願前公知の文献に記載された発明等とを対比し,公知発明と相違する本願発明の構成が,当該発明の課題解決及び解決方法の技術的観点から,どのような意義を有するかを分析検討し,他の出願前公知文献に記載された技術を補うことによって,相違する本願発明の構\成を得て,本願発明に到達することができるための論理プロセスを的確に行うことが要請されるのであって,そのような判断過程に基づいた説明が尽くせない限り,特許法29条2項の要件を充足したとの結論を導くことは許されない。

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平成21(ネ)10028 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年04月28日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとして104条の3により請求棄却とした原審が取り消されました。
 以上によると,甲11技術は,・・・という点で共通するものということができるが,柱の垂直度の調整方法については,・・・,本件発明と異なり,柱の垂直度の調整は,柱を垂直状態に吊り下げた状態において行われるものと判断される。また,甲11技術においては,建柱作業の終了後も,ボルト体はベースの下面四方部に残されるものであるのに対して,本件発明の建て直し装置は,建入れ直し装置のナットの上方にベースプレートの縁部を配置するものであって,作業終了後には装置を撤去するものである。また,甲12技術には,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御すること,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御するに当たって,歪直し用のワイヤを不要とすることという技術課題が開示されており,この課題の解決手段として,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱の歪みを直すためにジャッキ装置が鉄骨柱の重量を積極的に引き受けようとするものであって,本件発明のように,鉄骨柱の重量の大半をテツダンゴが引き受け,ボルトの軸線方向に移動可能であるナットについては,てこの原理によって,鉄骨柱の重量に対して比較的小さな力を加えることによって,ベースプレートの縁部を持ち上げてベースプレートが水平になるように微調整をすることができるものであって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではないものとは,その機能\\において異なるところがあり,甲12技術と本件発明とでは,それぞれのジャッキ又は建て直し装置に求められる対象物を支えるために適した大きさや強度についての構造等に違いが生ずるものである。そうであるから,上(ア)記 のとおり,本件発明とは技術分野や課題が異なり,本件発明とは異なって対象物の重量を積極的に引き受けるホイスト(ジャッキ装置)についての乙1発明に,鉄骨柱の建入れ直し方法として鉄骨柱の垂直度の調整方法や作業終了後の建入れ直し装置の取扱が本件発明とは異なっている甲11技術や,鉄骨柱の鉛直への姿勢制御において,ボルトの軸線方向に移動可能なナットの機能\\について鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではない本件発明とは異なって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるジャッキによる甲12技術を適用して,相違点1を克服することが容易想到であるということはできないというべきである。

◆判決本文

◆原審・平成21年03月05日東京地裁判H20年(ワ)第19469号事件

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平成21(行ケ)10273 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合が必須の要件であるから,このことは,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由となると主張する。しかし,前記1 イ のとおり,甲1の特許請求の範囲の請求項2と実施例には,嵌合されて接合されたヒートシンクが記載されているものの,甲1の記載により,嵌合された後で接合される前の状態は明確に認めることができる。そして,甲2の【0009】の記載によれば,鑞付け等による接合の有無は,コストと熱抵抗との関係で決められる設計的事項にすぎないものと認められるから,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由とはならないものと認められ,原告の上記主張は,採用することができない。・・・以上によれば,審決が,甲2に,「ヒートパイプを使ったヒートシンクについて,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプを差し込む形態が実用的であることに加え,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするため,鑞接合する」旨が記載されていることから,「引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができた」と判断した点に誤りはないものと認められる。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10301 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持しされました。
 「上記のとおり,引用発明1は,切断部20に断続部22を設けることにより,切断部20を形成した後,粘着テープ2の巻心1への巻き付け完了までの間,テープ2が取り扱い易くなることを企図したことが認められるから,同様に巻き取り時の破断防止を効果とする引用発明2を適用することの動機付けが認められる。そうすると,引用発明1に引用発明2を適用し,当該断続部22を高速巻き取り時に破断しない程度の大きさに設定することは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)にとって格別困難ではなく,容易に想到し得たことというべきである。ところで,次層表面の接着剤による最表\層裏面に作用する付着力や,切り目を入れない部分で上流側の粘着テープと連続していることによる巻き込む力といった,粘着テープの最表層を粘着テープ側が保持しようとする力に対し,最表\層表面の接着剤による清掃面に付着しようとする力が大きい場合には,粘着テープの最表\層が清掃面に付着することは引用発明1の切断部20の構造に照らすと技術的に明らかであり,こうした清掃面への付着に係る機序は当業者であれば容易に理解できるものである。こうした機序を理解した当業者にとって,引用発明1に引用発明2を適用し,当該断続部22を高速巻き取り時に破断しない程度の大きさに設定する場合に,その限度において断続部22が破断しにくくなるため,使用時の巻き込む力がより期待できることも容易に理解できる。そして,引用発明1は,「シート面等の粉塵等を粘着除去する」(甲20,段落【0001】)とあるようにフローリング等への使用を想定しているといえるところ,粘着式ローラーを床面等の清掃に利用する場合に床等に粘着テープが付着してしまうこと,その原因は床等が平滑・平坦であることにより粘着力が大きくなることであることは当該技術分野において周知の技術的事項であることを踏まえれば,さらに進めて,粘着テープの粘着力とフローリング等の平滑度に基づく付着力を勘案して,断続部22を粘着テープの一部がフローリング等へ剥離付着しないように設定した大きさとすることも,上記の機序を理解した当業者にとっては容易に想到できた事項と考えられる。さらに,前記のとおり,引用発明1は,ローラーの軸方向に対し傾斜した切り目を設けた上,切り目を入れない部分をその上流側の端部に有するものであるので,こうした引用発明1に粘着テープの粘着力とフローリング等の平滑度に基づく付着力を勘案して,断続部22を粘着テープの一部がフローリング等へ剥離付着しないように設定した大きさとすることにより,本願発明と同様,フローリング等への付着を防止する効果が期待できることは,当業者が十\分に予測できるものと認められる。よって,本願発明の相違点bに係る構\成は,引用発明1,引用発明2及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものと解するのが相当である。」

◆判決本文

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平成21(行ケ)10111 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月20日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした無効審決が維持されました。争点は、動機づけがあるか否かです。
 原告は,甲2発明は内槽と外槽の二重槽のタンクを効率よく解体する場合の課題,及び解体工事中のタンクの横振れや移動に伴う事故の解消を課題としているのに対し,甲1発明はそのような課題を考慮しておらず,両発明の課題は異なっており,甲2発明に甲1発明を適用する動機付けはないと主張する。しかし,前記1(2)の〔従来の技術〕欄記載のとおり,甲2には「原油タンクなどの鋼板製のタンクの解体工法としては,従来タンクの上部から順に解体する工法と,下部より解体する工法とがある。上部から解体する工法では,高所作業となるため足場の架設や安全確保に対する配慮が必要で,それに伴って解体費用が増加するという難点がある。……これを避けるため下部解体工法が開発され,その代表的工法としてジヤツキダウン工法がある」との記載がある。また,前記1(3)の<従来の技術>及び<発明が解決しようとする課題>欄記載のとおり,甲1には「従来,建造物の解体作業は,低層建造物から高層建造物に至るまで悉く,屋上等の最上部から聞始され,地下基礎部等の最下部にて終了されていた。……本発明は,以上の諸点に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,作業が容易で,工数,工期も短く,しかも周辺への飛散物や,高層階からの落下物のない建造物の新規な解体工法を提案するにある。」との記載がある。そして,前記1(1)イ,ウのとおり,本件特許発明は,ビルを上部からではなく下部から解体する工法に関する発明で,「周囲に与える危害を最小にして,能率よく安全に,さらに経済的に解体できるビルの解体工法を提供する」ことを目的とするものである。上記各記載によれば,甲1発明と甲2発明とは,いずれも,構\造物を,上部ではなく下部から解体するもので,工期や工数(費用)の増加,作業の危険性等といった問題点の解決を課題とするものであり,本件特許発明と共通の解決課題を有しているものである。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10142 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月29日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 エ 原告は,上記<相違点2−1>についての容易想到性を否定した審決の判断に誤りがあると主張するので,この点について判断する。上記アの甲2公報の記載に基づき甲2装置発明が上記相違点2−1の構成(材料混合タンクの底面に、材料供給兼排出管53と材料排出専用管57とを分離させて設ける構\成)を採用した技術的意義についてみると,このような材料排出専用管を有しない従来技術の気流混合装置(具体的には,本件訂正発明2のように,流動ホッパーの出入口が縦方向に連通した縦向き管とのみ連通するような気流混合装置)においては,エアー吸引手段が作動している間は材料供給兼排出管から混合済み粉粒体混合材料を排出することができないという課題があったことから,作動中に混合済み材料の排出を可能とする管,すなわち材料排出専用管を,材料供給管とは分離して設けたものと認められる。このような技術的意義に照らせば,上記認定に係る甲2装置発明における材料排出専用管は同発明の本質的要素を構\成するものというべきであって,甲2装置発明に基づきつつ,これから同管を除外した構成を想到することは容易でないといわなければならない。オ(ア) これに対し原告は,甲2装置発明における材料排出専用管は,装置の停止時には単なる蛇足であり,作動時にも特に必要なものではないから,これを取り去ることに障害はないと主張する。しかし,上記アの段落【0023】〜【0027】の記載によれば,甲2装置発明においては,材料排出専用管を設けることにより,エアー吸引手段の作動中にもかかわらず混合済み材料を次工程に排出することが可能となり,またエアー吸引手段の停止時には,混合済み材料が材料供給兼排出管と材料排出専用管の2本から排出されることで残材として残りにくくなり,色替えや品種替えの際に起こり得る品質の低下を解決できるという作用効果を有するものと認められるから,このような材料排出専用管が単なる蛇足ということはできない。・・・・甲2公報におけるレベル計の技術的意義は,これにより材料混合タンク内の混合済みの粉粒体混合材料の貯留量を検出し,材料供給源から材料混合タンクへの粉粒体材料の供給量を制御してその貯留量を一定とすることを可能\とし,もって材料収容手段側に安定して混合済みの粉粒体混合材料を排出するというものであって(段落【0029】),そこには未混合材料が材料収容手段へ落下することを回避する目的で混合済み材料のレベルを制御するという本件訂正発明2の上記課題ないし技術思想について開示・示唆するところがない。そうすると,甲3公報及び甲2公報のいずれにおいても,本件訂正発明2における上記課題について開示・示唆するところがないから,そのレベル計の部分のみを取り出して両者を組み合わせる必然性はないといわざるを得ず,甲3発明のレベル計を,受部から更に上部に位置する混合ホッパーへと変更することについて動機付けがあるということはできない。オ(ア) これに対し原告は,甲3発明と甲2装置発明の技術分野の同一性,技術内容の密接性,甲3発明と甲2装置発明が後者は前者を従来技術とするものであり,両者の目的も機能も同じであるから,甲3発明のレベル計の位置を甲2装置発明のレベル計の位置に置換することに困難性がないと主張する。しかし,たとえ技術分野や技術内容に同一性や密接な関連性や目的・機能\の類似性があったとしても,そこで組み合せることが可能な技術は無数にあり得るのであって,それらの組合せのすべてが容易想到といえるものでないことはいうまでもない。その意味で,上記のような一定の関連性等がある技術の組合せが当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)において容易想到というためには,これらを結び付ける事情,例えば共通の課題の存在やこれに基づく動機付けが必要なのであって,本件においてこれが存しないことは前記エのとおりである。\n

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平成21(行ケ)10223 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年02月26日 知的財産高等裁判所

   進歩性なしとした拒絶審決が維持されました。1つの争点が周知の認定です。
 以上に述べた甲3公報及び甲5公報は複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置に関するものであり,甲4公報は火災警報装置に関するものであるから,その技術分野は必ずしも一致するものではない。しかし,いずれの検出装置においても,検出部の汚染等により検出値が経時変化するという課題がある場合に,汚染等がない検出装置の初期状態における検出値を記憶し,検出装置を所定期間又は所定回数使用した後で測定する際の測定値0の状態における検出値と記憶された前記検出値を用いて測定された検出値を補正するという,同種の方法が開示されており,しかも,その具体的方法は,複写機等や火災報知器といった技術分野に特有の技術的知見に基づくというよりも,画像や煙の濃度を感知するセンサーが電気的に制御されていることに着目し,その検出値の経時変化を電気的なレベルで把握して汚染等による検出値の誤差を補正しようとするものである。このような上記各公報の内容及び当該補正に係る技術内容に鑑みれば,前記認定に係る汚れの検出及びその補正方法は,検出装置一般における周知の技術であったということができる。そして,本願発明における電子捕獲型検出器はガスクロマトグラフ装置の検出器であり,引用発明の定電流形電子捕獲器は,前記イオン電流の変化を,試料を検出セルに導入する前のパルス電圧の周波数と,検出セルに分析試料を注入した後のパルス電圧の周波数を用いて検出し,分析試料の濃度を測定するものであって,いずれもイオン電流の変化をパルス電圧の周波数の変化として検出する検出装置にほかならない。そうすると,上記補正方法に対応する課題が存在するのであれば,それに上記のような課題解決手段を適用することは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)であれば容易に想到し得るということができる。前記3のとおり,引用発明に係る定電流形電子捕獲器は,長期の使用によって,セル内が汚染されると,汚染物質により電子が吸収され,パルス電圧の周波数が増加するという課題があったことが知られていたことから,引用発明と上記周知技術とは,検出部の汚染等により検出値が経時変化するという課題において共通するものであり,さらに引用例(甲2)には,定電流形電子捕獲器において,イオン化室の汚れが試料濃度の測定結果に影響を与えることが示されているから,引用発明に周知技術を適用する動機も存在するということができる。

◆判決本文

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