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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

動機付け

平成31(行ケ)10022  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年12月18日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(1部)は、技術分野と課題が共通するので動機付けありとした無効審決を、維持しました。

 甲12,甲13及び甲15の上記各記載によれば,本件特許の出願当時, 複数の受光素子が2次元的に配列されるとともに,当該受光素子ごとに集光レンズ (マイクロレンズ)が設けられた光学的センサを用いたカメラ装置にあっては,そ の中心部と周辺部とにおける光の入射角の相違による周辺部の光量不足が,集光レ ンズを採用しないものより大きくなるという課題が存在し,その課題を解決するた めに,複数のレンズで構成される結合レンズに対し,絞りを被写体側に配置して中\n心部と周辺部との入射角の差を小さくすることにより,周辺部の光量不足を緩和す ることは,当業者の周知技術であったと認められる。
(イ) 原告は,ビデオカメラ装置とコードリーダとでは技術分野が異なり,ビデ オカメラ装置の技術はコードリーダにも適用することができるような幅広い周知技 術でないと主張する。 しかしながら,コードリーダであるIT4400は,A「複数のレンズで構成さ\nれ,読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に結像させる結像レンズ」と,B 「前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光し た光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されると 共に,当該受光素子毎に集光レンズが設けられた,CCDエリアセンサである,光 学的センサ」と,C「該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞り」とを備 えており,上記周知技術に係るビデオカメラ装置と共通する光学系及び撮像方式を 採用していることからみても,ビデオカメラ装置と全く異なる技術分野に属すると いうことはできない。
(ウ) そして,上記周知技術が解決しようとした課題である周辺部の光量不足とは, 撮像素子の受光素子ごとに,素子開口部より大きい口径のマイクロレンズを配設し, 同レンズで集光する構成を採用したことにより生じる事象であり,用途がカメラ装\n置である場合に特有のものではなく,同様の光学系及び撮像方式を採用したコード リーダであるIT4400においても生じ得る事象であることは,当業者が普通に 認識することができたものというべきである。
ウ 容易想到性
このように技術分野と課題が共通することからすると,公然実施されたIT44 00に上記周知技術を組み合わせて,周辺部の光量不足を緩和するために,「読み取 り対象からの反射光が絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう,絞りを配置 することによって,光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し, 前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子に対して入射する前記読み取り対象 からの反射光が斜めになる度合いを小さくして,適切な読取りを実現」することは, 当業者が容易に想到することができたというべきである。
エ 原告の主張について
原告は,訂正によって生じた相違点4に係る本件発明の構成に関連して,IT4\n400は,いわゆるガンタイプのコードリーダで,ある程度の大きさが許容され, 周辺部の光量不足の課題が顕在化しにくいことや,ビデオカメラ装置と2次元コー ドリーダでは求められる機能の優先順位が異なり,発光手段の有無やコンパクト化\nのニーズを含めてレンズや絞りの設計思想自体,根本的に相違していることを挙げ, IT4400に対して,上記周知技術を組み合わせる動機付けを欠く旨主張する。 しかし,周辺部の光量不足は,マイクロレンズ付き撮像素子を採用することに起 因して生じる課題であって,ガンタイプのコードリーダであれば,マイクロレンズ 付き撮像素子を採用しても,当該課題が生じないということはできないから,その 解決手段として,上記周知技術を採用することについて動機付けを欠くということ はできない。また,原告の主張する,装置に求められる機能の優先順位の相違が,上\n記周知技術の採用を阻害する事情に当たるともいえない。 よって,原告の主張は採用できない。
オ 以上によれば,本件審決の相違点1に係る容易想到性の判断に誤りはない。
(5)相違点2に係る容易想到性について
相違点2に係る本件発明の構成は,「前記光学的センサの中心部に位置する受光素\n子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の 比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で, 中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにした」というものであ\nり,光学的センサの「中心部」と「周辺部」との境界や,出力の比に関する「所定値」 については,具体的に特定されていない。 そして,本件明細書【0042】には,「適切な読み取りを実現するためには,セ ンサ周辺部にある受光素子41aからの出力レベルが所定レベル以上になる必要が ある。そのため,例えば,センサ中心部に位置する受光素子41aからの出力に対 するセンサ周辺部に位置する受光素子41aからの出力の比が所定値以上となるよ う射出瞳位置を設定することが考えられる。つまり,このような射出瞳位置となる ように絞り34aの位置を設定するのである。このようにしておけば,中央部と周 辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整すること が容易となり,中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる。」との\n記載がある。
本件明細書の上記記載に照らすと,相違点2に係る本件発明の構成は,その実質\nにおいて,露光時間の調整など所与の調整を行うことを前提とした上で,光学的セ ンサの中心部においても周辺部においても適切に読み取ることが可能となるように\n射出瞳位置を設定することをもって本件発明の構成を特定しているということがで\nきる。 そうすると,公然実施されたIT4400において,相違点1に係る構成を採用\nし,絞りを被写体側に配置するに当たりその位置を具体的に決定する際に,射出瞳 位置を「前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光 学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように」 設定し,「露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能\nとなるように」することは,当業者において周辺部でも適切に読み取ることを可能\nとする2次元バーコードリーダを構成する上で,適宜に採用する事項にすぎない。\nそうすると,相違点2に係る本件発明の構成も,当業者において容易に想到する\nことができたものというべきである。

◆判決本文

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平成30(行ケ)101 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年11月28日  知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決が維持されました。争点は、進歩性で、詳しくは、いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)により,別の活性成分を加える動機付けがあるといえるかです。審決・知財高裁とも動機付け無しと判断しました。

前記(1)の甲1の内容,上記アで認定した本件優先日当時の公知文献の内 容や技術常識に鑑みて,相違点2が容易想到といえるかどうかについて検討する。
(ア) 前記(1)で認定したとおり,甲1には,GAR-トランスホルミラーゼ阻 害剤の治療効果を維持しつつ,その毒性を減少させることを課題とする旨が記載さ れているところ,甲1では葉酸をGAR-トランスホルミラーゼ阻害剤と組み合わせ て投与することによって同課題を解決できるとしており,同課題に関して,更に別 の活性成分,例えば,ビタミンB12を積極的に適用する動機や示唆は甲1には何ら 記載されていない。 これに加えて,上記ア(ア)(イ)の甲2〜4,44からすると,本件優先日前にMT Aの抗腫瘍活性を維持しつつ毒性を低減させるという目的のために,MTAと葉酸 を併用投与することに言及する公知文献は複数存在し,上記目的のためにMTAと 葉酸を併用投与することは技術常識になっていたものと認められるが,いずれの公 知文献にも,上記目的のためには葉酸補充だけでは不十分であるとする指摘はない\nし,葉酸補充に加えて他の活性成分を投与する必要性についても何ら指摘されてい ない。
(イ) 上記ア(イ)(ウ)のとおり,本件優先日当時,(1)ベースライン時のホモシス テイン値が10μM以上であると,MTAの毒性発現が高度に予測されること,(2) ホモシステイン値は,葉酸又は/及びビタミンB12が不足すると上昇すること,(3) 葉酸とビタミンB12を併せて投与すると,葉酸単独投与の場合に比して,より確実 にホモシステイン値を低下させることができることが,本件優先日当時に知られて いたことが認められるものの,以下のa,bからすると,それにより,甲1発明に ビタミンB12を投与することを組み合わせることは動機付けられないというべきで ある。
a 上記ア(イ)の各公知文献が指摘しているのは,本件優先日当時,ベー スライン時のホモシステイン値がMTAの毒性発現を予測させる指標であったとい\nうことだけであり,原告が主張するような「ベースライン時のホモシステイン値を 低下させておくとMTAの毒性発現が抑制される」ということまでが読み取れると はいえない。この点について,原告は,「ベースライン時のホモシステイン値」と「M TA投与後の毒性」との間に因果関係があると主張する。ベースライン時のホモシ ステイン値とMTAの毒性発現との間に単純な比例関係があれば,原告が主張する ようにいうことも可能であるが,本件証拠上,本件優先日当時,単純な比例関係に\nあることが知られていたとは認められない(かえって,甲115[212頁左欄5 行〜6行]には,葉酸の機能している状態と血漿ホモシステイン濃度とは,非線形\n的な逆相関を示す旨記載されている。)から,「ベースライン時のホモシステイン値 が高い場合にMTAの毒性発現を予測させる指標であること」から直ちに「ベース\nライン時のホモシステイン値を低下させておくとMTAの毒性発現が抑制されるこ と」ということができないことは明らかであり,原告の上記主張は理由がない。 また,「ベースライン時のホモシステイン値を低下させておくことで抗腫瘍活性が 維持される。」ということについても,甲44に葉酸補充により抗腫瘍活性が維持さ れて毒性が低減される旨の記載があるほかは,上記各公知文献は何も述べていない から,この点が技術常識であったとまでは認められない。 そうすると,原告が主張するような,「ベースライン時のホモシステイン値を低下 させておくと,毒性の発現が抑制され,かつ抗腫瘍活性が維持される。」ということ が,本件優先日当時に技術常識として存在していたとまで認めることはできないか ら,その点から動機付けがあるということはできない。
b 葉酸又はビタミンB12の欠乏により上昇するホモシステイン値とは 異なり,メチルマロン酸値はビタミンB12の欠乏により上昇するところ(上記ア(ウ) b),上記ア(イ)のとおり,本件優先日当時,ニイキザ文献は,ベースライン時のホ モシステイン値と毒性発現の間には相関関係があるものの,メチルマロン酸値と毒 性発現の間には相関関係がない旨を指摘していたのであるから,当業者は,ここか ら患者のビタミンB12の状態と毒性発現との間には相関関係がなく,むしろ,葉酸 の欠乏がベースライン時のホモシステイン値の上昇や毒性発現に関係していると考 え,葉酸を補充する方向へと進むものと推認される。現に,上記ア(イ)d のとおり, その注52でニイキザ文献を引用している甲44は,ベースライン時のホモシステ イン値10μMが毒性発現の閾値であると指摘しておきながら,葉酸補充にしか言 及していないし,ホモシステイン値を葉酸状態の指標であるととらえている。 また,葉酸とビタミンB12が併用されると,上記ア(ウ)aの図の左側にあるメチオ ニンを生成するためのメチル化反応が促進され,テトラヒドロ葉酸が再生されやす くなるから,ビタミンB12の投与は葉酸単独投与に比して葉酸の機能的状態の改善\nにより資するものといえるが,そのようなテトラヒドロ葉酸の再生の亢進が具体的 にどの程度葉酸の機能的状態に影響を与えるものなのかは本件証拠上不明であり,\nがん患者における葉酸の機能的状態を正常化するためには,葉酸を外部から補充す\nるだけでは不十分であり,ビタミンB12を補充することまでもが必要であったと本\n件優先日当時に当業者に認識されていたとは認められない。 そうすると,仮に当業者がMTAの毒性リスクを低減させるためにベースライン 時のホモシステイン値を10μMより低下させる必要があると考えたとしても,そ こからビタミンB12を追加することを動機付けられるとは認められない。
(ウ) 原告は,いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ (アンメット・メディカル・ニーズ)により,更なる高い効果を求めて別の活性成 分を加えることが動機付けられると主張する。 しかし,上記(ア)(イ)で検討したところからすると,葉酸代謝拮抗薬の抗腫瘍活性 の維持と毒性の低減という目的のためには葉酸の予備的処置だけでは十\分ではない ということが当業者に認識されていたとは認められないのであり,原告が主張する ようなアンメット・メディカル・ニーズが存在するからといって,そこから直ちに 上記目的のために甲1発明を更に改良する必要があると当業者が認識するとは認め られない。 また,仮にアンメット・メディカル・ニーズにより上記目的のために甲1発明を 改良することが動機付られるとしても,上記イ(イ)で検討したところに照らすと,そ こから更にビタミンB12を併用することが動機付られるということはできないので あり,原告の主張はその点からしても採用することができない。

◆判決本文

以下は、関連事件です。

◆平成30(行ケ)10116

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平成31(行ケ)10005  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年9月19日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が取り消されました。出願人は銀行です。取り消し理由は、「引用発明に周知技術を適用することの動機付けがない」というものです。 なお、対象となったクレームは以下です。  携帯通信端末に固有のネイティブ機能を実行させるためのパラメータに応じて,前記携帯通信端末において実行されるアプリケーションの,前記携帯通信端末の動きに伴う動作を規定する設定ファイルを設定する設定部と,\n前記設定ファイルに基づいてアプリケーションパッケージを生成する生成部と, を有するアプリケーション生成支援システム。

 本件審決は,引用発明に引用文献2〜5及び参考文献1記載の技術(同技術に乙 3文献記載の技術を併せて,以下「被告主張周知技術」という。)を適用することに より,本件補正発明に想到し得ると判断していることから,引用発明に被告主張周 知技術を適用する動機付けの有無について検討する。
ア 引用発明
前記2(1)のとおり,引用文献1には,「近年,コンテンツマネジメントシステム (以下,CMS(Content Management System)という) によりウェブアプリケーションとして公開するコンテンツを構築し,管理すること\nが行われている(例えば,特許文献1参照)。ところで,近年,ネイティブアプリケ ーションをダウンロードしてインストールすることができるスマートフォンが普及 している。スマートフォンのユーザは,ネイティブアプリケーションをインストー ルする場合,アプリケーションを提供する所定のアプリケーションサーバにアクセ スし,所望のネイティブアプリケーションを検索する。しかしながら,CMSによ って構築されるウェブアプリケーションは,ウェブサイトとして構\築されるため, 検索サイトの検索結果として表示されることがあるものの,アプリケーションサー\nバから検索することができない。したがって,アプリケーションサーバにおいてネ イティブアプリケーションを検索したユーザに,CMSにより開発したウェブアプ リケーションを利用してもらうことができないという問題がある。これに対して, CMSによって構築したウェブアプリケーションと同等の機能\を有するネイティブ アプリケーションを開発し,当該ネイティブアプリケーションをアプリケーション サーバにアップロードすることも考えられる。しかしながら,ネイティブアプリケ ーションを新規に開発するには,多大な開発工数が必要であった。本発明は,ネイ ティブアプリケーションを容易に生成することができるアプリケーション生成装置, アプリケーション生成システム及びアプリケーション生成方法を提供することを目 的とする。」(段落【0002】,【0004】〜【0007】)と記載されており,同記載からすると,引用発明は,CMSによって構築されるウェブアプリケーション\nは,アプリケーションサーバから検索することができないため,アプリケーション サーバにおいてネイティブアプリケーションを検索したユーザに,CMSにより開 発したウェブアプリケーションを利用してもらうことができないこと及びCMSに よって構築したウェブアプリケーションと同等の機能\を有するネイティブアプリケ ーションを新規に開発するには,多大な開発工数が必要となることを課題とし,同 課題を解決するためのネイティブアプリケーションを生成する装置であることが認 められる。
引用発明は,上記課題を解決するために,前記(1)アで認定したとおり,既存のウ ェブアプリケーションのロケーションを示すアドレスや所望の背景画像を示すアド レス等の情報を入力するだけで,当該ウェブアプリケーションの表示態様を変更し\nて,同ウェブアプリケーションが表示する情報を表\示するネイティブアプリケーシ ョンを生成できるようにしたものと認められる。
イ 被告は,携帯通信端末の動きに伴う動作を行うネイティブアプリケーシ ョンを生成すること,特に,PhoneGapに係る技術が周知であると主張する。
(ア) 前記アのとおり,引用発明は,アプリケーションサーバにおいて検索で きるネイティブアプリケーションを簡単に生成することを課題として,同課題を, 既存のウェブアプリケーションのアドレス等の情報を入力するだけで,同ウェブア プリケーションが表示する情報を表\示できるネイティブアプリケーションを生成す ることができるようにすることによって解決したものであるから,ブログ等の携帯 通信端末の動きに伴う動作を行わないウェブアプリケーションの表示内容を表\示す るネイティブアプリケーションを生成しようとする場合,生成しようとするネイテ ィブアプリケーションを携帯通信端末の動きに伴う動作を行うようにする必要はな く,したがって,設定ファイルを設定するパラメータを「携帯通信端末に固有のネ イティブ機能を実行するためのパラメータ」とする必要はない。もっとも,引用文\n献1の段落【0024】には,ブログ等と並んで「ゲームサイト」が掲げられてお り,ゲームにおいては,加速度センサにより横画面と縦画面が切り替わらないよう に制御する必要がある場合が考えられる(引用文献5参照)が,ウェブアプリケー ションとして提供されるゲームは,1)常に携帯通信端末の表示画面を固定する必要\nがあるとはいえないこと,2)加速度センサにより,携帯通信端末の姿勢に対応した 画面回転表示を制御する機能\は携帯通信端末側に備わっており,端末側の操作によ って,表示画面を固定することができ,そのような操作は一般的に行われているこ\nと,3)引用文献1の段落【0024】の「ゲームサイト」は,携帯通信端末の表示\n画面を固定する必要のないブログ,ファンサイト,ショッピングサイトと並んで記 載されており,また,引用文献1には,加速度センサについて何らの記載もないこ とからすると,当業者は,上記の「ゲームサイト」の記載から,パラメータを「携 帯通信端末に固有のネイティブ機能を実行するためのパラメータ」とすることの必\n要性を認識するとまではいえないというべきである。 また,引用発明によって生成されるネイティブアプリケーションは,HTMLや JavaScriptで記述されるウェブページを表示できるから,引用発明によ\nり,乙4に記載されたHTML5 APIのGeolocationを用いて携帯 通信端末の動きに伴う動作を行うウェブアプリケーションの表示内容を表\示するネ イティブアプリケーションを生成しようとする場合も,生成されるネイティブアプ リケーションは,設定情報に含まれているウェブアプリケーションのアドレスに基 づいて,同ウェブアプリケーションに対応するウェブページを取得し,取得したウ ェブページのHTMLやJavaScriptの記述に基づいて,同ウェブアプリ ケーションの内容を表示でき,したがって,ネイティブアプリケーションの生成に\n際して,設定ファイルを設定するパラメータを「携帯通信端末に固有のネイティブ 機能を実行させるためのパラメータ」とする必要はない。\nさらに,被告主張周知技術に係る各種文献にも,引用発明の上記の構成の技術に\nおいて,「携帯通信端末に固有のネイティブ機能を実行させるためのパラメータ」に\n応じて設定ファイルを設定することの必要性等については何ら記載されていない (甲2〜5,7,8,乙1〜3)。
(イ) 前記アのとおり,引用発明は,簡易にネイティブアプリケーションを生 成することを課題として,既存のウェブアプリケーションのアドレス等の情報を入 力するだけで,当該ウェブアプリケーションが表示する情報を表\示するネイティブ アプリケーションを生成できるようにしたのであり,具体的には,前記(1)アのとお り,入力しようとするウェブアプリケーションのロケーションを示すアドレス及び 表示態様に基づいて,テンプレートアプリケーション111に含まれる設定情報の\n内容を書き換えるだけで目的とするウェブアプリケーションの表示する情報を表\示 できるネイティブアプリケーションを生成でき,テンプレートアプリケーション1 11に含まれるプログラムファイル113については,新たにソースコードを書く\n必要はないところ,証拠(甲3,5,7,乙1〜3)によると,PhoneGap によってネイティブアプリケーションを生成するためには,HTMLやJavaS cript等を用いてソースコード(プログラム)を書くなどする必要があるもの\nと認められるから,引用発明に,上記のように,新たにソースコードを書くなどの\n行為が要求されるPhoneGapに係る技術を適用することには阻害事由がある というべきである。
被告は,1)PhoneGapでは,PhoneGapのプラグインの仕組みを使 って,GPSなど端末のネイティブ部分にアクセス可能であり,端末のGPS機能\ にアクセスすることで,GPSで取得した端末の現在位置が中心となるように地図 を表示することが可能\となるから,引用発明において地図表示アプリケーションを\n生成する際に,PhoneGapのフレームワークを採用することで,ネイティブ 機能であるGPS機能\が利用可能となり,携帯通信端末の動きに伴う動作を設定可\n能となり,また,2)AndroidManifest.xmlに「android: screenOrientation =”landscape”」の1行を追加し たり(Androidの場合),「Landscape Right」又は「Lan dscape Left」のアイコンを選択すること(iOSの場合)で,スマー トフォンの画面を横画面に固定可能となり,縦画面に固定する設定を施す場合,A\nndroidManifest.xmlに「android:screenOri entation =”portrait”」の1行を追加したり(Android の場合),「portrait」のアイコンを選択すること(iOSの場合)で,ス マートフォンの画面を縦画面に固定可能となるから,引用発明において,アプリケ\nーションを生成する際に,PhoneGapのフレームワークを利用することで, 「携帯通信端末に固有のネイティブ機能を実行させるためのパラメータ」に応じて,\n携帯通信端末において実行される「アプリケーションの,携帯通信端末の動きに伴 う動作」を規定する設定ファイルを備えることとなると主張する。 しかし,上記のとおり,引用発明にPhoneGapの技術を適用することの動 機付けはないから,被告の上記主張は,その前提を欠くものであって,理由がない。

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平成30(ワ)2554  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年8月27日  大阪地方裁判所

 大阪地裁21部は、技術的範囲に属する、無効理由なしとして、差止請求を認めました。損害賠償請求については、準備手続き中に口頭弁論が分離されています。

 被告は,「挟み込んで保持する」という文言について経時的に解釈し,これを, 第二保持部がブレースボルトをその軸方向に沿って外周側から挟み込み,これを仮 に保持した状態でブレースボルトの軸方向に移動して位置調整を行った後に,ナッ トで締め付けて保持するという操作方法に限定される旨を主張し,ブレースボルト を第二保持部が挿通する場合はこれに含まれないから,ブレースボルトを第二保持 部に挿通する被告製品は,本件発明の構成要件を充足しないと主張する。\nしかしながら,構成要件1Cの「挟み込んで保持する」は,物の発明の一要素と\nして,ブレースボルトが,これを包囲する包囲部によりベース板部に固定されるこ と,すなわち「狭着保持」(本件各明細書の段落【0044】,【0049】ない し【0052】等)を意味すると解するのが相当である(なお,被告は,「挟着」 と「狭着」の違いについて,前者は「挟み込む」という予備的動作を指すのに対し,\n後者は「狭める」という最終的操作を意味する,と主張する。しかし,本件各明細 書においては,「挟み込んで保持する」及び「挟み込んで狭着保持する」という2 通りの言い回しがみられるものの,これらが被告の主張のように明確に区別して用 いられているということはできず,「挟み込んで」,「挟着」及び「狭着」という 文言は基本的に同義であると解すべきである。)。 本件各明細書の段落【0008】に,「この構成によれば,(中略)固定片の孔\n部に第二棒状体を挿通させる必要がなく」との記載がある点については,従来技術 において,ブレースボルトが長過ぎる場合,これを切断する等して調整せざるを得 ないが,本件発明の場合,固定片のナットをゆるめて,外周側からブレースボルト を挟むことができるということを,特別な場合における利点として述べたにすぎず, ベース板部と固定片の間に形成される孔部にブレースボルトを挿通することのでき る通常の場合にまで,外周側からブレースボルトを挟み込むことを要件とする趣旨 とは解し得ない。 そうすると,被告の主張するような上記操作方法は,本件発明における構成要件\n充足性の判断を左右するものではない。
(3) 被告製品の施工方法について(甲19,乙4,22)
被告が,被告製品1の施工に際し,安全性確保等の見地から,ブレースボルトを 第二保持部に外周側から挟み込むことはせずに,第二保持部にあらかじめブレース ボルトを挿通できる程度の間隙を開けておき,ブレースボルトを第二保持部の当該 間隙に挿通させて使用する(被告製品2については,第二保持部が開口部の狭いル —プ状板部で構成されるため,ブレースボルトを第二保持部に挿通して使用するこ\nとは明らかである。)ことは当事者間に争いはないが,上記⑴及び⑵で検討したと ころによれば,上記施工方法の結果は,本件発明の「挟み込んで保持する」に該当 するというべきであり,これに反する被告の主張は採用できない。
・・・
被告は,乙13を適宜設計変更したものとして副引用発明を設定するところ, 乙13発明は,同一平面上に配置された2本の棒状体の交差する箇所において,乙 13に記載された物品(以下「本物品」という。)を2つ,各棒状体をそれぞれ覆 うようにして対向配置させて装着し,それぞれの本物品の角度調整用の弧形状の孔 (角度調整用長穴)を利用してボルトにより緊結することにより,2本の棒状体を 連結・固定するものである。 これに対し,副引用発明は,本物品と,本物品から包囲部を取り除いた状態の平 面の板状部材(以下「平面部材」という。)から構成されているところ,平面部材\nは棒状体を覆うことができないので,本物品と平面部材を組み合わせても乙13に 記載されたような交差連結具として使用することはできない(本物品1個と平面部 材1個を組み合わせた場合,保持可能な棒状体は1本のみである。)。また,本物\n品及び平面部材は互いの角度を調整する必要がないから,両部材に存する上記弧形 状の孔の存在意義がなくなってしまう。 したがって,当業者が,乙13発明から副引用発明を導くことは困難である。 また,被告は,乙13以外にも乙12,14ないし20を引用し,天井から 吊設機器を吊り下げるボルトが交差する部位を連結する揺れ止め用交差連結具も慣 用技術であると主張し,当業者は,乙1発明の両端の外側狭着体の平面域に,斜め 支持体に代えて副引用発明を適用して連結することで,被告製品1(すなわち本件 発明)を容易に発明することができる,と主張する。 しかし,乙12,14ないし20に記載された発明も,乙13発明と同様に,同 一平面上に配置された2本の棒状体を,その交差する箇所を覆うように装着するこ とで,連結・固定して振れ止めするための交差固定金具に係るものであって,被告 の主張するような副引用発明の構成を示唆するものではない。\nなお,被告は,このほかにも,乙8,10,24ないし28を引用して,1本の 棒状体を狭着して固定するにあたって,狭着する一方が棒状体を包囲する包囲部を 備えた部材,他方が平面上の部材である慣用技術である旨主張し,乙8ないし11 を引用して,2本の棒状体を狭着して固定する連結具も慣用技術である旨主張する が,いずれにおいても,一対の部材のうち,一方の部材にのみ包囲部を設け,もう 一方の部材を平面状とする交差固定金具の技術は開示されておらず(乙8及び乙2 6に開示された発明は,2つの固定具の間に平板の基板を挟み込む形を採るが,そ れぞれの固定部が包囲部を備えている点については上記の他の発明と同様である。), 被告が主張するような副引用発明の構成を示唆するものではない。\n以上より,副引用発明は,乙13を含めて乙8ないし20のいずれにも開示 されているとはいえない。
オ 容易想到性について(相違点1)
被告は,本件発明や乙1発明のようなコーナー固定金具と,乙12ないし20に 開示されるような交差固定金具とは,同一の技術分野に属し,また,施工現場で同 じ吊設機器において併用されることが多いから,当業者には,コーナー固定金具の 第二支持部に交差固定金具を適宜設計変更して適用する動機付けがある旨主張する。 乙12ないし20に記載される発明から,被告が主張するような副引用発明が導 けないことは上記エで述べた通りであるが,仮にこの副引用発明の具体的構成を措\nくとしても,交差固定金具とコーナー固定金具は,固定する棒状体の本数も固定の 態様も全く異なるものであるところ,単に吊設機器上の近い位置で用いられる2種 類の金具であるからといって,適用の動機付けを認めることはできない。 したがって,設計変更される副引用発明の具体的構成がどうあれ,乙1発明に上\n記刊行物記載の発明を適用する動機付けがあるとはいえない。

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 >> 文言侵害
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平成30(行ケ)10164  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年8月28日  知的財産高等裁判所

 審決は、請求項1についての無効理由なしとしましたが、知財高裁はこれを取り消しました。審決は「スクラロースを甘味の閾値以下の量で添加することにより酸味を緩和することができることについてはそのような記載はない」と判断していました。

 前記(3)イのとおり,各文献には,ショ糖の約650倍の甘味を有する非代謝 性のノンカロリー高甘味度甘味料であるスクラロースが,アスパルテーム,ステビ ア,サッカリンナトリウム等の他の高甘味度甘味料と比較して,甘味の質において ショ糖に似ているという特徴があることから,多くの種類の食品において嗜好性の 高い甘味を付与することが見込まれているとの記載があり,加えて,前記(3)アのと おり,本件出願前に,ショ糖や,アスパルテーム,ステビア,サッカリンといった慣 用の高甘味度甘味料が酸味のマスキング剤としての機能を備えることが,当業者に\n周知であったことからすると,引用発明のアスパルテームに代えてスクラロースを 採用してみることは,当業者が容易に想到することができたというべきである。
イ また,前記(3)イのとおり,各文献には,スクラロースをその甘さが感じられ る閾値より低い濃度で用いた場合でも,塩なれ効果,卵風味の向上効果を奏するこ と,製品100重量部に対して0.0001〜0.1重量部(製品に対して0.00 01〜0.1重量%)のスクラロースを用いた実施例によれば,カプサイシン0.0 01%のとき,甘味度が0である0.0001重量部(同0.0001重量%)又は 0.005重量部(同0.005重量%)で辛味増強効果を奏すること,スクラロー スの甘味を感じさせない0.0025重量%のアルコール/スクラロース水溶液で エチルアルコールの苦味の抑制効果を奏することの各記載がある。 以上の記載によれば,スクラロースの添加については,向上させようとする風味 や製品によって使用量は上下するものの,下限値として,製品に対して0.000 1重量%,0.0025重量%,0.005重量%で用いたものなどが知られてお り,スクラロースの甘味を感じさせない量であっても製品の風味の向上が可能であ\nることを当業者は認識していたものと認められる。 他方,引用例には,アスパルテームによる酸味緩和効果を得るための下限値とし て1mg%(0.001重量%),1.5mg%(0.0015重量%),5mg% (0.005重量%)が挙げられ,上記のスクラロースと同様のレベルの使用量で 酸味のマスキングが行えることが記載され,更に,アスパルテームの甘味により, 食品・調味料の呈味バランスが崩れないようアスパルテームの添加量は食品・調味 料の種類に応じ,適宜設定すべきであるとされている。 また,酸味のマスキングは,甘味の付与を目的とするものではなく,所望の酸味 のマスキング効果を奏する場合には,甘味がつきすぎて味のバランスが崩れること がないように,甘味料の使用を減らすことは考えても,増量することは考えないか ら,スクラロースを酸味のマスキング剤に使用する場合であっても,当業者は,酸 味のマスキングが実現可能な低い濃度でスクラロースを使用することを指向する。\nそうすると,スクラロースを,引用発明の食酢を含む食品(ドレッシング,ソー\nス,漬物,及び調味料などの製品)における,酸味のマスキング剤として使用するに あたり,酸味緩和効果が得られるものの,スクラロースの甘味により前記製品の旨 味バランスを崩さない濃度範囲のうち低い濃度を,製品ごとに選択して,スクラロ ースの従来の使用濃度である0.0001〜0.005重量%に重複する0.00 28〜0.0042重量%という濃度範囲に至ることは,当業者に容易であったと いうことができる。
ウ そして,本件明細書の実施例2〜4を参照しても,0.0028〜0.004 2重量%の濃度範囲を境にして,当業者の期待,予測を超える格別顕著な効果を奏\nしているとは評価できない。
エ 以上によれば,アスパルテームを製品濃度1〜200mg%(=0.001 〜0.2重量%)で添加する引用発明から,スクラロースを製品の0.0028〜 0.0042重量%で添加することは,容易に想到することができたものである。
(5) 被告の主張について
ア 被告は,トレハロースや甘味料であるネオヘスペリジンジヒドロカルコンが, 酸味の増強作用を有することを指摘して,相違点2は容易に想到できないと主張す る。 しかし,証拠(甲48)によれば,トレハロースは,食品の低甘味化に使用される ものであるから,アスパルテーム,ステビア,サッカリン等の高甘味度甘味料と同 様に論じることはできない。また,同じ文献(甲48)には,トレハロースを添加し た際に,酸味料の種類や他の呈味物質の存在によって,酸味が強調されたり,マス キングされたりすることを,不可解な現象であると説明されていることからすると, 高甘味度甘味料一般が酸味を緩和させる効果を有すると認定する上での支障となる とまではいえない。 また,ネオヘスペリジンジヒドロカルコンが,レモネードの酸味を増強する作用 を有する旨を理由中で説示した判決(甲15)があるものの,前記のとおり,ショ糖 やアスパルテームを含めた複数の慣用の高甘味度甘味料が酸味のマスキング剤とし ての機能を備えることが,当業者に広く知られていたと認められることからすると,\n特定の酸味飲料(レモネード)のみを対象にし,実験内容及び実験結果の詳細が証 拠上明らかでないネオヘスペリジンジヒドロカルコンの酸味増強作用に基づいて, 高甘味度甘味料一般の酸味緩和効果を否定する判断には至らない。 この点について,本件審決は,トレハロースのように醸造酢の酸味を増強する甘 味料も存在することを根拠の1つに挙げて,引用発明並びに甲2文献,甲3文献, 甲7文献及び甲8文献の記載から,高甘味度甘味料一般が酸味を緩和させる効果を 有することまで導き出すことはできないと判断しているが,上記説示したところに 照らし,誤りというべきである。
イ 被告は,甘味料の酸味マスキング効果とされるもののうちほとんどは,甘み という別の呈味によって酸味を覆い隠すものであり,甘味の閾値以下で酸味のマス キング効果を示す甘味料は,本件発明以前には,アスパルテームのみであったから, 甘味料一般について知られていたのは,甘味という別の呈味によって酸味を覆い隠 すことができるということであり,甘味の閾値以下でも酸味のマスキング効果のあ ることが技術常識になっていたものではないとして,本件発明が容易に想到できな かった旨を主張する。 しかしながら,被告の主張するように甘味料の酸味マスキング効果とされるもの のほとんどが甘味の閾値を超えた条件で甘みという別の呈味によって酸味を覆い隠 すものであることを明示的に示す証拠はない。かえって,既に説示したとおり,ス クラロースが甘味閾値以下でも所望の風味改善効果を奏することは,複数の文献(甲 4,23,80,81)に示されているから,甘味料一般に関して甘味の閾値以下で 酸味のマスキング効果を奏することが技術常識であったか否かにかかわらず,スク ラロースを,アスパルテームと同様に甘味の閾値以下で用いることは,当業者に格 別の創意工夫を要するものではなかったというべきである。
ウ 被告は,アスパルテームとスクラロースは,アミノ酸系甘味料と合成甘味料 という別のカテゴリーに分類されていたものであり,アスパルテームと単に「高甘 味度甘味料」というカテゴリーが同じなだけのスクラロースが酸味をマスキングで きるかもしれないなどとは考えない,そもそもショ糖の600倍も甘く(アスパル テームですら200倍),ごく少量添加しただけで味のバランスを大きく崩すことが 予想され,扱いの難しいスクラロースを,あえて酸味のマスキングに使用する動機\n付けは存在しない,とも主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件出願日当時,ショ糖,アスパルテーム,ステビ ア,サッカリンといった,化学構造において別のカテゴリーに分類され,甘味の大\nきく異なる複数の甘味料が,酸味のマスキング剤に用いられていたことからすれば, アスパルテーム等と比べて各種の風味改善効果に優れているスクラロースを添加す ることによっても酸味のマスキングが可能であると予\測し,スクラロースを,添加 する製品ごとの味のバランスが崩れにくい濃度範囲で使用して,その酸味マスキン グ効果を確認しようとすることは,当業者が容易に想到することができたというべ きである。

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平成30(行ケ)10160  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年7月30日  知的財産高等裁判所

 動機付けなしとした審決が維持されました。

 原告は,「甲1発明は,『芯材13』の存在により,『外装カバー15』が, 『表面から内方に窪んだ凹部』を有しない構\成となっており,この点が,本件特許 発明1と甲1発明の相違点1となっている」ことを前提に,本件特許発明1の甲1 発明との相違点1の容易想到性は,甲1発明から芯材13を取り除くことが容易で あるか否かに帰着すると主張する。 しかし,相違点1は,前記第2,3(6)のとおりであって,芯材13の有無のみが 相違点ではないから,この点において原告の主張は失当である。 本件特許発明は,前記1(2)のとおり,棒状のハンドル本体に表面から内方に窪ん\nだ凹部を形成し,該凹部をハンドルカバーによって覆うことで,ハンドルを上下又 は左右に分割した場合に比べて,ハンドルの成形精度や強度を高く維持することが できるとともに,ハンドルの内部を容易に密閉できるようにして組立て作業性を向 上したものであるところ,このような課題は,甲1にも甲2にも記載されておらず, 技術常識であったとも認められない上,甲1発明においては,上下に分割された一 対の外装カバー14,15の表面がハンドル12の表\面を構成しているのに対し,\n甲2事項においては,透明窓部6が設けられた背面カバー部材5により,凹部のう ちヘッド部3の部分を覆い,ハンドルカバーにより凹部のうち把持部2の部分を覆 い,本体ケース4の把持部2の表面及びハンドルカバーの表\面により,把持部2の 表面を構\成しているのであって,ハンドルの構成が大きく異なる。\nまた,甲1の段落[0018]及び[0019]の記載によると,甲1発明の芯 材13は,1)その外周に外装カバー14,15が被覆されて,複数のネジ16によ り固定されるものであること,2)二叉部12aに対応する部分において,一対のロ ーラ支持軸17が設けられて,ローラ支持軸17の基端部は芯材13の中心部に形 成された空間に嵌入され,同ローラ支持軸17の先端部は,二叉部12aから突出 していること,3)このような構成としたことによって,ハンドル12の外表\面(外 装カバー)の導電金属メッキされた導電部と,ローラ支持軸17とは,電気的に絶 縁されていることが認められ,甲1発明において,芯材13は,外装カバー14, 15が被覆されて,ネジ16により固定されるものであるから,ハンドルの外装カ バーの文字どおりの芯材としての機能を有するとともに,ローラ支持軸を保持し,\n外装カバーの外表面の導電メッキされた導電部と,ローラ支持軸との間の電気的絶\n縁が保たれるように離間させる,絶縁材としての機能を有するものと認められる。\nこのような機能を有する芯材13を甲1発明から取り除くことは容易とはいえず,\n芯材13に代えて,甲2に示された背面カバー5の一部に相当する部材(背面カバ ー相当部材)を用いることはできない。 したがって,甲1発明に甲2事項を適用する動機付けがあると認めることはでき ない。
イ 原告は,仮に,本件特許発明1が,ハンドルが上下に分割されるものを 除外するものであったとしても,甲1発明において,ハンドル本体に相当する外装 カバーの大きさは,設計事項の範囲で任意に選択可能であるため,甲1発明の外装\nカバー15の縁部分を甲1の図3の上側にまで伸長し,外装カバー14を,当該凹 部を覆う大きさに構成した上で,甲2事項の結合方法を採用すれば,相違点1は,\n容易に想到することができると主張する。しかし,甲1発明の外装カバー14,1 5は上下に分割されたものとなっており,そのような外装カバー15の縁部分を甲 1の図3の上半分の側にまで伸長することが容易想到と認めるべき事情はない。し たがって,原告の上記主張を採用することはできない。
ウ よって,甲1発明に甲2事項を適用することによって,相違点1を容易 に想到することができたとは認められないから,相違点2及び3の容易想到性につ いて判断するまでもなく,本件特許発明1は,甲1発明及び甲2事項から容易に想 到できたとは認められない。
なお,以上の判断は,甲1発明において,「芯材13及び一対の外装カバー14, 15がそれぞれ別のパーツ」であることや,甲2に「把持部2の内部には,背面カ バー5の一部が存在し,ネジなどの締結手段で背面カバー5が本体ケース4に固定 されており,把持部2の内部の背面カバー5には,ハンドルカバーが,差し込まれ ることで,本体カバー4とハンドルカバーとによって,把持部2の表面が構\成され ている。」という技術的事項が含まれるかどうかによって左右されるものでないこ とは,既に判示したところから明らかである。 また,甲4〜10に記載されている事項は,いずれも,一対の分岐部をハンドル 本体の長手方向の一端に一体的に形成するという技術を,甲16〜19に記載され ている事項は,いずれも太陽電池パネルとローラシャフトを電気的に接続する技術 を開示するにすぎないから,これらに基づき相違点1に係る構成を容易想到とする\nことはできない。

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平成30(行ケ)10166  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年6月20日  知的財産高等裁判所

 対戦ゲームについて進歩性なしとした拒絶審決が維持されました。

 前記2(1)〜(3)のとおり,周知技術Aは,引用文献1が属する対戦型コ ンピュータゲームの分野における周知技術である。 そして,前記2(2),(3)のとおり,引用文献3には,プレイヤキャラクタと敵キャ ラクタの強さのバランスをとることを目的とし,プレイヤキャラクタの強さに応じ た強さの敵キャラクタを出現させることで,プレイヤキャラクタに対して強すぎた り弱すぎたりすることのないようにして,ゲームの興味を持続させる効果を生じさ せることが記載され,また,引用文献4には,ユーザの競技レベルに相応しい他の ユーザを対戦相手とすることを目的とし,ユーザの競技レベルに応じた競技レベル の対戦相手を選択することで,相手が弱すぎたり強すぎたりすることがなくなり, 各ユーザは実力が伯仲した相手との対戦を楽しむことができるという効果を生じさ せることが記載されていることからすると,周知技術Aは,ゲームに抽出されるキ ャラクタやプレーヤのレベルをキャラクタやプレーヤのレベルに合わせることによ り,ゲームを楽しいものとするという技術思想に基づくものであると認められると ころ,引用発明1も,前記3(1)で認定したとおり,支援すべきプレイヤの支援度合 いに応じた人数の第三者勢力を登場させて,プレイヤ同士の操作経験に基づく優劣 のアンバランスを調整することにより,拮抗かつ緊張感のあるゲームとするという 技術思想に基づくものであると認められるから,周知技術Aと引用発明1とは共通 の技術思想を有しているといえる。 したがって,引用発明1及び周知技術Aは,技術分野及び技術思想が共通するか ら,引用発明1に周知技術Aを適用する動機付けはあるというべきである。
(イ) 原告は,引用文献3,4に記載された技術は,いずれも,第3者登場 型に属する対戦アクションゲームに関する技術ではないし,また,第1のプレーヤ キャラクタの情報及び第2のプレーヤキャラクタの情報の組合せに基づいて第3者 キャラクタが抽出されるというものでもないから,本願発明とは技術分野を異にす ると主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,引用発明1に周知技術Aを適用することの動機付けは 認められるというべきであり,動機付けが認められるためには,第三者登場型対戦 ゲームであるという点の共通性は必要ないというべきである。 したがって,周知技術Aが第三者登場型対戦ゲームではないことを前提とする原 告の上記主張は理由がない。
エ(ア) ところで,相違点1は,第3者キャラクタを抽出してマッチングさせ る設定処理に関して,本願発明は,「複数のキャラクタの中から,第3者キャラクタ を抽出」しているのに対して,引用発明1は,「NPC人数を増減設定」している点 である。すなわち,本願発明と引用発明1とは,第3者キャラクタを抽出してマッ チングさせる設定処理に関して,当該第3者キャラクタが,複数のレベルのキャラ クタの中からレベルの合うキャラクタが抽出されるのか,それとも,同一のレベル のキャラクタが抽出され,その人数を増減させることによりレベルを合わせるのか の点で相違するのであるから,第3者キャラクタを抽出してマッチングさせる設定 処理に関して,引用発明1の「NPC人数を増減設定」するという構成(同一のレ\nベルのキャラクタが抽出され,その人数を増減させることによりレベルを合わせる という構成)に代えて,周知技術Aの「複数の種類のキャラクタ又はプレーヤの中\nから,キャラクタ又はプレーヤのレベルに応じて特定のキャラクタ又はプレーヤを 抽出すること」という構成にすることで,本願発明の構\成となるものと認められる。
(イ) 原告は,本願発明の課題は,「対戦者同士の操作経験に基づくゲーム優 劣のアンバランスを第3者キャラクタを登場させることにより調整する従来技術が, 対戦ゲームとしての面白みに欠ける」ことであり,プレーヤのレベル等に応じた相 手側キャラクタを抽出するというものではないから,引用発明1及び周知技術1と は課題が異なる旨主張するが,本願発明の課題が上記のとおりであるとしても,引 用発明1に周知技術Aを適用することが困難となるということはできず,また,引 用発明1に周知技術Aを適用すると,本願発明の構成となるのであるから,原告の\n上記主張は理由がない。
オ 以上より,引用発明1に周知技術Aを適用して,本願発明を容易に想到 することができるというべきである。
カ なお,原告は,本願発明は,第3者キャラクタの参戦により従来にない 白熱した対戦ゲームを楽しむことができるという各引用文献に記載の発明の作用効 果とは異なる格別の作用効果を奏する旨主張するが,同効果は,引用発明1に周知 技術Aを適用した発明にも認められる作用効果であって,格別のものとはいえない から,原告の上記主張は理由がない。

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平成30(行ケ)101 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年6月13日  知的財産高等裁判所

 動機付けありとして進歩性なしとした審決が維持されました。顕著な効果があるとの主張も否定されました。

 そして,引用発明及び引用文献8に記載された技術は,いずれも,Aβ 結合剤をアルツハイマー病等の患者の血液中のAβに結合させることによって,A βを除去し,アルツハイマー病等の疾患を治療するというものであり,技術分野は 同一であること,引用文献8には,四量体ペプチドA及びポリエチレングリコール 架橋キャリアゲルを含む組成物は,Aβに効果的かつ不可逆的に結合し,Aβと最 大の結合能力を示したとの記載があること,前記2(1)のとおり,引用文献1には, 「アミロイドβ結合化合物」の第2部分として,ポリエチレングリコールのような 高分子を用いてもよいことが記載されている(段落[0056])ことからすると, 引用発明に引用文献8に記載された技術を適用する動機付けがあると認められる。 この点について,原告は,引用文献1の段落[0056]は,「全身投与」に関す る記載であり,透析とは無関係であると主張するが,引用文献1の同部分の記載は, 血液中のAβに結合するAβ結合化合物の第2部分がポリエチレングリコールでも よいというものであるところ,このことが,体内への投与の場合と透析の場合で異 なると認めるに足りる証拠はなく,少なくとも,引用文献1の上記部分に接した当 業者は,透析の場合においても,Aβ結合化合物の第2部分としてポリエチレング リコールを用いることも適しているものと認識するというべきである。
ウ したがって,引用発明に引用文献8に記載された技術を適用して,引用 発明におけるアミロイドβ結合化合物を四量体ペプチドA及びポリエチレングリコ ール架橋キャリアゲルを含む組成物とし,かつ,同組成物を調整する工程を含ませ ることは,当業者にとって,容易に想到できると認められる。
(2) 顕著な効果について
原告は,本願発明は,1)β-アミロイドへの特定の結合作用を提供する,2)β-ア ミロイドの除去の物理的特性に依存せず,代わりに,血液の構成要素からβ-アミロ イドを捕捉する結合剤を用いるだけである,3)組織的に高い結合能力を形成するプ\nロセスを提供する,4)体内に外的物質を導入することを含まず,それにより逆のリ スク事象に移行し得る潜在的免疫システム反応を除去したプロセスを提供するとい う顕著な効果を有する旨主張する。 しかし,上記4)については,血液透析によりAβの除去を行う引用発明が当然備 える効果であり,上記1)〜3)については,引用発明において,「Aβ結合化合物」と して,結合能の高い化合物を採用することよって獲得される効果にすぎないから,\n原告の上記主張は理由がない。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,引用文献1に記載されたAβ結合化合物は,すべて天然由来の ものであるから,合成物である四量体ペプチドAを用いる動機付けはないなどと主 張する。 しかし,前記のとおり,引用文献8には,四量体ペプチドAはAβと効果的に結 合する旨の記載がある以上,引用発明において,Aβ結合化合物として四量体ペプ チドAを用いる動機付けはあるというべきであり,このことは,引用文献1に記載 されたAβ結合化合物が天然由来であるか否かに左右されない。
イ 原告は,引用文献1に膨大な数のアミロイドβ結合化合物が記載されて いる中で,引用文献1に記載のない,四量体ペプチドAをわざわざ適用することに は阻害要因があると主張するが,引用文献1に記載されたAβ結合化合物の数が膨 大であることによって,Aβ結合化合物として,引用文献8に明記されている四量 体ペプチドAを用いることが阻害されるということはできない。
ウ 原告は,引用発明は,一般的な透析法によりアミロイドβを除去する発 明であるのに対して,引用文献8に記載された技術は,アミロイドβ化合物と結合 し得る物質(医薬製剤)を生体内に存置するものであるから,技術分野が異なり, また,阻害要因もあると主張する。 しかし,前記のとおり,引用発明及び引用文献8に記載された技術は,いずれも, Aβ結合剤をアルツハイマー病の患者等の血液中のAβに結合させることによって, Aβを除去するというものであり,技術分野は同一である。そして,生体内での使 用が想定されているAβ結合化合物を血液透析で使用することができない理由があ るとは認められないから,阻害要因も認められない。 この点について,原告は,体内で使用する物質を血液透析で使用することに阻害 要因があることの理由について,透析法は,体内使用における患者の負担の軽減の ために採用するものである旨の主張をするが,体内使用における患者の負担の軽減 のために透析法を採用するということが,体内での使用が想定されているAβ結合 化合物を血液透析で使用することの阻害事由となるとは認められず,むしろ,体内 での使用について安全性が確認されている物質であれば,血液透析でも使用しよう と考えるのが通常であるといえる。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
エ 原告は,引用文献8に記載された発明は,生体内で使用するデポ剤であ るため,その不活性及び安全性のためにRIペプチドを集めるためのプラットホー ムとして,ポリエチレングリコールが採用されているが,引用発明は,透析法によ りアミロイドβを除去する発明であり,生体内における不活性及び安全性という必 要性がないから,生体内での不活性及び安定性のためのものとして開示されている ポリエチレングリコールを,捕捉結合剤と結合したアミロイドβが透析装置の透析 膜から戻ることを防止して透析法においてアミロイドβを効率よく除去するために キャリアゲルとして使用する動機付けはないと主張する。 しかし,引用発明において,Aβ結合化合物として,四量体ペプチドA及びポリ エチレングリコール架橋キャリアゲルを含む組成物を用いる動機付けが認められる ことは既に判示したとおりである。そして,前記2(2)のとおり,引用文献8には, ポリエチレングリコール(PEG担体)は,RIペプチドの複数のコピーを付着さ せ,Aβとの結合能を向上させると記載されているから,当業者は,引用文献8に\n記載された発明を引用発明に適用するに際し,ポリエチレングリコールを共に用い る動機付けがあるというべきである。引用発明においては,生体内で使用するため の安定性や安全性を考慮する必要がないとしても,上記認定が左右されることはな い。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
オ 原告は,引用発明から出発して,アミロイドβ除去能を向上しようとす\nれば,引用文献1に多数列挙されているアミロイドβ結合化合物からアミロイドβ 結合能力の少しでも高いものを選択するのが通常であって,わざわざキャリアゲル\nで修飾することの動機付けはないと主張する。 しかし,引用発明において,Aβ結合化合物として,四量体ペプチドA及びポリ エチレングリコール架橋キャリアゲルを含む組成物を用いる動機付けが認められる ことは,既に判示したとおりであって,キャリアゲルで修飾することの動機付けも あるというべきである。
カ 原告は,透析液は正常な血液に近い成分・濃度の電解質溶液に調製する のが当業者の常識であるから,引用発明にキャリアゲルを添加することには阻害事 由があると主張する。 しかし,透析液にキャリアゲルを添加することによって,正常な血液に近い成分・ 濃度の電解質溶液に調製することが妨げられることを認めるに足りる証拠はないか ら,透析液(透析緩衝液)にキャリアゲルを添加することに阻害事由があるとは認 められない。
キ 原告は,引用文献1の段落[0080]には,「半透膜は10,000ダ ルトンの分子量カットオフを有する」と記載されているところ,二量体を超える高 分子量種(四量体,八量体,それ以上の高分子量種)のAβの分子量は,10,0 00ダルトンを超えるため,引用文献1記載の透析方法では,半透膜を通ることが できず,透析槽側に拡散し得ないから,二量体を超える高分子量種のAβも含めて 除去する本願発明とは,技術思想が全く異なると主張する。 しかし,本願発明の特許請求の範囲には,除去すべきAβの分子量や半透膜を通 過する分子の大きさについては何ら記載されていないから,本願発明も,半透膜の 仕様によっては,二量体を超える高分子量種のAβは半透膜を通ることができず, これを除去することはできないものである。したがって,二量体を超える高分子量 種のAβも含めて除去できるか否かによって,本願発明と引用発明の技術思想が異 なるということはできない。
ク 原告は,引用文献1のapoE3は極めて高価あるから,引用発明に引 用文献8記載の技術を適用することには阻害要因があると主張する。 しかし,製剤の製造コストを可能な限り削減することは当業者にとって重要な課\n題であるから,apoE3が高価であるということは,これに代えて引用文献8に 記載された四量体ペプチドA及びポリエチレングリコール架橋キャリアゲルを含む 組成物を用いることの阻害事由とはならず,むしろ,動機付けとなるというべきで ある。

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平成30(行ケ)10146  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年6月27日  知的財産高等裁判所(4部)

 パチンコ機の発明について進歩性なしとした拒絶審決が、取り消されました。理由は動機付けがないというものです。

 前記(1)の記載事項によれば,本願明細書には,本願発明に関し,次のよ うな開示があることが認められる。
ア 遊技性を向上させるために,貯留部に遊技領域を流下する遊技球そのも のを物理的かつ一時的に保持して,遊技球の流下タイミングを遅延させる ように構成し,遊技者が手元のボタンを押下することで貯留した遊技球が\n落下可能となるようにした従来のパチンコ機は,例えば,大当たり遊技中\nに遊技者がボタンを操作すれば,貯留部内の遊技球が大入賞口に向かって 一気に放出されるため,多くの遊技球を大入賞口に入賞させることができ たが,遊技球を物理的に貯留する手段を設ける必要があるため,部品点数 が多くなり,コストが嵩むといった課題があり,また,遊技球が流下する 領域を狭めることとなり,好ましくなく,その一方で,大当たり遊技中に 単に遊技球を発射して大入賞口内に入賞させるだけでは,遊技の面白みに 欠けるという実情があった(【0004】,【0006】)。
イ 「本発明」は,上記実情に鑑み,推奨する遊技球のルートを遊技者が容 易に打ち分けることができ,遊技性を向上させることのできるパチンコ機 を提供することを目的とし,この目的を達成するための手段として,遊技 領域に打ち出された遊技球が特別電動役物へ向かう,少なくとも2つのル ートが前記遊技領域内に設けられ,前記2つのルートは,共に遊技球が物 理的に貯留されることなく流下可能に構\成されていると共に,一方のルー トに比べて他方のルートの方が,遊技球が遊技領域に打ち出されてから前 記特別電動役物に到達するまでの時間が短くなるように構成され,前記一\n方のルートは前記遊技領域のうち主に左側の領域が用いられ,前記他方の ルートは前記遊技領域のうち主に右側の領域が用いられ,前記一方のルー トを流下する遊技球を検知する第1遊技球検知センサと,前記他方のルー トを流下する遊技球を検知する第2遊技球検知センサと,前記大入賞口に 入賞した遊技球を検出する大入賞口検知センサと,前記2つのルートのう ち推奨するルートを遊技者に報知する推奨ルート報知手段と,をさらに備 え,大当たり遊技制御手段は,前記大入賞口を開放するよう前記特別電動 役物を作動させた後に,前記大入賞口にM個(ただし,Mは自然数)の遊 技球が入賞したことを条件に前記大入賞口を閉鎖するよう前記特別電動役 物を作動させるラウンド遊技を複数回行う内容の前記大当たり遊技を提供 し,前記推奨ルート報知手段は,遊技球が前記他方のルートを流下してい る状態で,前記第2遊技球検知センサが所定個数の遊技球を検知した後に, 前記一方のルートを推奨するルートとして遊技者に報知するようにした構\n成を採用した(【0007】,【0009】)。 これにより「本発明」は,推奨する遊技球のルートを遊技者が容易に打 ち分けることができ,遊技性を向上させることのできるパチンコ機を提供 することができるという効果を奏する(【0011】)。
・・・
 被告は,引用発明と引用例2に記載された事項は,共に遊技球を流下さ せるルートが複数あり,そのうち片方のルートに遊技球を発射させた方が 有利となる状態がある遊技機に関する発明又は技術であり,技術分野が共 通しているといえるから,引用発明に引用例2に記載された事項を適用す る手がかりがあり,引用発明に引用例2に記載された事項を適用すること ができることからすると,当業者は,引用発明のパチンコ遊技機に,引用 例2に記載された事項を適用して,相違点2及び3に係る本願発明の構成\nとすることを容易に想到することができたものであるから,これと同旨の 本件審決の判断に誤りはない旨主張する。 そこで検討するに,引用例1には,引用発明において,「一方のルート」 に相当する「遊技球滞留部32」を流下する遊技球を検知する遊技球検知 センサ及び「他方のルート」に相当する「遊技球流下部31」を流下する 遊技球を検知する遊技球検知センサを設けることについての記載や示唆は ない。また,引用例1には,遊技球が「遊技球流下部31」を流下してい る状態で,当該遊技球を検知する遊技球検知センサが所定個数の遊技球を 検知した後に,「遊技球滞留部32」を推奨するルートとして遊技者に報 知する手段を設けることについての記載や示唆はない。
 次に,前記2(2)イ認定のとおり,引用例1には,「本発明」は,遊技者 が可変入賞装置の入賞口の開放前に,報知装置による入賞口の開放の予告\nに基づいて,まず「遊技球滞留部」を狙って遊技球を発射し,次に「遊技 球流下部」を狙って遊技球を発射する打ち分けを可能とし,これにより「遊\n技球滞留部」からの遊技球と「遊技球流下部」からの遊技球とが合流して, 可変入賞装置に入賞することとなるため,時間の経過に応じて遊技球を打 ち分けることにより,可変入賞装置への大量の入賞を狙うことを可能とし\nた効果を奏すること(【0009】,【0011】)の開示があるところ, その実施形態である引用発明においては,大入賞口が10秒後に開放され ることを予告する報知用ランプ17aと大入賞口を開放する5秒前に点灯\nする報知用ランプ17bとを設け,遊技者は,報知用ランプ17aの点灯 により大入賞口が10秒後に開放されることを知ったとき,「遊技球滞留 部32」を狙って遊技球を発射し,「遊技球滞留部32」に複数の遊技球 を滞留させ,大入賞口を開放する5秒前に報知ランプ17bが点灯するこ とにより,「遊技球流下部31」を狙って遊技球を発射し,合流地点に設 けられた可変入賞装置11の大入賞口に,短時間で大量の遊技球が入賞す るようにした構成(構\成e,g)を備えている。このように引用発明は, 大入賞口が開放されるまでの時間を報知用ランプ17a又は17bの点灯 により報知することにより,時間の経過に応じて遊技球を打ち分けること を可能とした発明であるといえる。\n
 一方,前記(1)イ認定のとおり,引用例2には,第1の方向側の遊技領域 (例えば,左側の遊技領域)及び第2の方向側の遊技領域(例えば,右側 の遊技領域)にそれぞれ通過ゲート,始動口等が設け,右打ちをすべき遊 技状態のときに,左側の遊技領域に設けられた左通過ゲートに遊技球が通 過すると,左打ちが行われていると判定して,液晶表示装置に右打ちを促\nす画像を表示させ,左打ちをすべき遊技状態(通常遊技状態)のときに,\n右側の遊技領域に設けられた右通過ゲートに遊技球が通過すると,液晶表\n示装置に左打ちを促す画像を表示させていた従来の遊技機においては,遊\n技者が遊技状態に合わせて正しい方向側の遊技領域に遊技球を発射させる 発射操作を行っているにもかかわらず,たまたま少量の遊技球が誤った方 向側の遊技領域を流下し,誤った方向側の遊技領域に設けられた通過ゲー トや始動口等を通過してしまったときに,正しい方向側の遊技領域に遊技 球を発射させることを促すことが報知され,正しい方向側の遊技領域に遊 技球を発射させている遊技者に煩わしさや不快感を与えるという問題があ ったため(【0007】),「本発明」は,第2の方向側の第2通過領域 を進入した遊技球を検出する第2通過領域検出手段により検出された検出 回数の計数を行う第2通過領域計数手段によって予め定められた検出回数\nが計数されると,報知手段により第1の方向側の遊技領域に遊技球を発射 することを促す発射操作情報の報知を行わせる構成を採用し,これにより,\n現在の遊技状態と各遊技領域に設けられた通過領域に遊技球が進入した回 数(検出回数)を参照して発射操作情報の報知を行うので,たまたま少量 の遊技球が誤った方向側の遊技領域を流下したとしても誤差として判定で きるため,遊技者の発射操作に対応したより正確な発射操作に関する報知 を行うことができ,快適な遊技を行わせることができるという効果を奏す ること(【0008】,【0018】)の開示がある。このように引用例 2記載の遊技機は,第1の方向側の遊技領域(左側の遊技領域)を流下す る遊技球を検出する検出手段,第2の方向側の遊技領域(右側の遊技領域) を流下する遊技球を検出する検知手段及び第1の方向側又は第2の方向側 の遊技領域に遊技球を発射することを促す発射操作情報の報知手段を備え, 報知手段による報知を現在の遊技状態と各遊技領域に設けられた検出手段 によって検出された遊技球が進入した回数(検出回数)を参照して行うこ とにより,遊技者が正しい方向側の遊技領域に遊技球を発射させる発射操 作を行っているにもかかわらず,たまたま少量の遊技球が誤った方向側の 遊技領域を流下したとしても誤差として判定し,正しい方向側の遊技領域 に遊技球を発射することを促す発射操作情報の報知を行わないようにして, 遊技者に煩わしさや不快感を与えることのないようにしたものといえる。
 そうすると,引用発明と引用例2記載の遊技機は,共に遊技球を流下さ せるルートが複数あり,そのうち片方のルートに遊技球を発射させた方が 有利となる状態がある遊技機において,上記有利となる状態となった場合 にその有利な方向の遊技領域に遊技球を発射することを促す報知を行うこ とに関する発明又は技術である点において,技術分野が共通しているとい えるが,他方で,引用発明では,遊技者が可変入賞装置の入賞口(大入賞 口)の開放前に,大入賞口が開放されるまでの特定の時間を報知装置によ り予告(報知)することにより,有利な方向の遊技領域に遊技球を発射す\nることを促すものであるのに対し,引用例2記載の遊技機は,遊技者が有 利な方向(正しい方向側)の遊技領域に遊技球を発射させる発射操作を行 っているにもかかわらず,たまたま少量の遊技球が誤った方向側の遊技領 域を流下したとしても誤差として判定し,正しい方向側の遊技領域に遊技 球を発射することを促す発射操作情報の報知を行わないようにしたもので あり,報知の目的及びタイミングが異なるものと認められる。
 また,引用発明において引用例2記載の遊技機の構成(本件審決認定の\n引用例2に記載された事項)を適用することを検討したとしても,具体的 にどのように適用すべきかを容易に想い至ることはできないというべきで ある。そうすると,引用例1及び引用例2に接した当業者は,大入賞口が開放 されるまでの特定の時間を報知装置により予告(報知)する引用発明にお\nいて,報知の目的及びタイミングが異なる引用例2記載の遊技機の構成(本\n件審決認定の引用例2に記載された事項)を適用する動機付けがあるもの と認めることはできない。したがって,当業者は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて,相違点2及び3に係る本願発明の構成を容易に想到することができ\nたものと認めることはできないから,被告の上記主張は理由がない。

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平成30(行ケ)10061  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年4月25日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が取り消されました。理由は、『「医療溶液」を「用時混合型急性血液浄化用薬液」にすることを試みる動機付けがあるというものです。』

 甲3には,引用発明2(実施例4記載の用時混合型の医療溶液)が「急性血液浄化用薬液」であることを明示した記載はない。一方で,甲3には,前記(1)イ(イ)認定のとおり,「本発明」の目的の1つは,滅菌されかつ沈殿物を含まず,保存及び使用の間に渡り良好な安定性を保証する「医療溶液」(血液透析,血液透析濾過,血液濾過及び腹膜透析用の透析液,腎疾患集中治療室内での透析用の溶液,通常は緩衝物質を含む置換液又は輸液,並びに栄養目的のための溶液)を提供することにあることの開示がある。この「医療溶液」中の「腎疾患集中治療室内での透析用の溶液」とは,救急・集中治療領域において,急性腎不全の患者に対して行う持続的な血液浄化のための透析用の溶液を含むことは自明である。
また,甲3には,前記(1)イ(ア)及び(イ)認定のとおり,1)急性腎不全に罹患している患者に適応となる治療法は,数週間を通しての持続的腎機能代替療法(CRRT)であり,血液濾過が用いられるが,血清リンレベルが正常な患者からリンを効率的に除去してしまう結果,定期的な週3回の血液透析治療を受けている患者よりも高い頻度で,低リン血症が起こり得るものであること,2)低リン血症は,リンの投与によって予防,治療されるが,医療溶液にリンを導入する場合,沈殿する様々なリン酸カルシウムの形成の問題があり,生理的pHに等しいpH値を有する生理溶液では,リン酸カルシウムの沈殿の危険性が高くなるという問題があること,3)「本発明」の発明者らは,特定のpH範囲等の如き一定の条件下では,カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを重炭酸塩及びリン酸塩重炭酸塩と共に保持し得ることができ,滅菌の安定なリン酸塩含有医療溶液を提供できることを見出したことの開示があることからすると,「本発明」の実施例である引用発明2の「医療溶液」は,急性腎不全に罹患している患者に適応し得るものと理解できる。以上の点に照らすと,甲3に接した当業者においては,甲3記載の実施例4(引用発明2)において,当該「医療溶液」を「用時混合型急性血液浄化用薬液」にすることを試みる動機付けがあるものと認められる。したがって,当業者は,引用発明2において,相違点(甲3−1−4’)に係る本件訂正発明1の構成とすることを容易に想到することができたものと認められる。これと異なる本件審決の判断は,誤りである。
(イ)これに対し,被告らは,引用発明2が具体的に「腎疾患集中治療室内での透析用の溶液」あるいは「急性血液浄化用薬液」である旨示した記載はないこと,引用発明2が,明示的な記載なくして,当然に「急性血液浄化用薬液」であると解すべき技術常識はないことからすると,「医薬溶液」として記載された引用発明2を「急性血液浄化用薬液」にすることは,当業者が容易に想到し得たことではないから,相違点(甲3−1−4’)は当業者が容易に想到し得たものではない旨主張する。しかしながら,前記(ア)のとおり,甲3の記載事項に照らすと,当業者は,引用発明2において,相違点(甲3−1−4’)に係る本件訂正発明1の構成とすることを容易に想到することができたものと認められるから,被告らの上記主張は採用することができない。\n

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平成30(行ケ)10090  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月14日  知的財産高等裁判所

 タイヤの発明について、引用文献1および周知技術から、進歩性ナシとした審決が維持されました。

 (6)周知技術の認定 前記(1)〜(5)によると,本願出願日当時,タイヤの技術分野において,クラウン部 の外周にタイヤ周方向に巻き付ける被覆コード部材の断面形状を略四角形状とする こと,また,上記断面形状は略四角形状,円形状又は台形状等から選択可能である\nことが周知技術であったことを認定することができる。
(7) 甲1発明に周知技術を適用することの可否
ア 前記(6)のとおり,本願出願日当時,クラウン部の外周にタイヤ周方向に 巻き付ける被覆コード部材の断面形状は,略四角形状,円形状又は台形状等から選 択可能であることは周知技術であった。\nまた,前記(2),(3)のとおり,周知文献3の【0007】には,「本発明の請求項1 に記載のタイヤでは,タイヤ周方向に螺旋状に巻かれる補強コード部材のタイヤ軸 方向に隣接する部分同士を接合していることから,例えば,補強コード部材のタイ ヤ軸方向に隣接する部分同士を接合しないものと比べて,タイヤ骨格部材に接合さ れる補強コード部材で構成される層(以下,適宜「補強層」と記載する。)の剛性が\n向上する。これにより,上記補強層が接合されるタイヤ骨格部材の剛性を向上させることができる。」と記載され,また,周知文献3の【0049】には,「補強コー ド部材22のタイヤ軸方向に隣接する部分同士の接合は,一部分でも全部でも構わ\nないが,接合面積が広いほど補強コード部材22で構成される補強層28の剛性が\n向上する。」と記載され,周知文献2の【0063】にも,「補強コード部材22の タイヤ軸方向に隣接する部分同士の接合は,一部分でも全部でも構わないが,接合\n面積が広いほど補強コード部材22(補強層28)によるタイヤケース17の補強 効果が向上する。」と記載されている。そうすると,本願出願日当時,タイヤ軸方向 に隣接する補強コード部材同士を接合しないものに比べて,これを接合したものは 補強コード部材で構成される補強層の剛性を向上させることができ,その接合面積\nが広いほど補強層の剛性が向上し,補強層が接合されるタイヤ骨格部材の剛性を向 上させることができることが知られていた。そして,補強コード部材(被覆コード 部材)の断面形状が円形状のものよりも,略四角形状のものの方が,タイヤ軸方向に隣接する補強コード部材同士の接合面積を広くし得ることは,明らかである。
以上によると,タイヤ軸方向に隣接する被覆コード部材同士を溶融接合している 甲1発明において,前記(6)の周知技術を適用して,断面形状が円形状の被覆コード 部材に代えて,これと適宜選択可能な関係にある断面形状が略四角形状の被覆コー\nド部材を採用することは,当業者が容易に想到し得るものと認められる。 イ 前記(2),(3)のとおり,周知文献3には,断面形状が略四角形状であり, タイヤ軸方向に隣接する部分同士が接合(溶着)された補強コード部材22につい て,クラウン部16に一部が埋め込まれても構わないことが記載され(【0046】,\n【0049】,【0050】,【0053】),また,周知文献2には,断面形状が略四角形状であり,タイヤ軸方向に隣接する部分同士が接合(溶着)された補強コード 部材22について,長手方向の両端部22Aがクラウン部16に埋め込まれて長手 方向の中間部22Bよりもクラウン部16の内周面16B側に配置されるのであれ ば,長手方向の中間部22Bがクラウン部16に埋め込まれても構わないことが記\n載されている(【0057】,【0058】,【0061】,【0063】)。 そうすると,タイヤ軸方向に隣接する被覆コード部材同士を溶融接合している甲 1発明において,前記(6)の周知技術を適用して,断面形状が円形状の被覆コード部 材に代えて,これと適宜選択可能な関係にある断面形状が略四角形状の被覆コード\n部材を採用することに,製造上の阻害要因があるものとは認められない。

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平成30(行ケ)10078  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月20日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、「甲1発明の目的を達成できなくなるので、阻害要因あり」として、進歩性違反無しとした審決を維持しました。

 前記2(1)イ〜エ,カの記載によれば,甲1発明は,「発泡作用によりマッ サージ効果を得る化粧料について,最高度に気泡が発生することを色によっ て判断できるようにすること」を課題とし,当該課題を,「炭酸水素ナトリ ウムを含む第1剤と,前記炭酸水素ナトリウムと水の存在下で混合したとき に気泡を発生するクエン酸,酒石酸,乳酸及びアスコルビン酸のうちの1又 は2以上の成分を含む第2剤と,前記第1剤と第2剤に夫々分散された異色 のものからなり,混合により色調を変え,使用可能な状態になったことを知\nらせるための2色の着色剤A,Bと,前記第1剤又は第2剤の一方又は双方 に含まれた,化粧料としての有効成分とからなる組成」を有する「常態では 粉状」の化粧料とし,これにより,「2色の着色剤A,Bを第1剤,第2剤 に夫々混合し,使用前,個有(原文のまま)の色分けを行なうとともに使用 時第1,第2両剤を混合し,一定の色調になったときに良く混合したことが 判断できかつ,最適の反応が行なわれる」ようにすることで,解決しようと したものである。すなわち,甲1発明は,最高度に気泡が発生することを色 によって判断できるようにするために,炭酸塩を含む第1剤と酸を含む第2 剤に分けてあえて異色の構成とし,これらを混合することによって色調が変\nわるようにしたものであると認められる。 そうすると,たとえ,アルギン酸ナトリウムが水に溶けにくい性質を持つ ことや,一般的な用時調製型の化粧料において,ジェルと固体(顆粒や粉末 等)の2剤型のものが周知であったとしても,甲1発明において,炭酸塩と 酸が2剤に分離されてそれぞれが異色のものとされている構成を,甲2記載事項の「粉末パーツ」のようにあえていずれか一方(1剤)に統合して複合\n粉末剤等とすると,そもそも甲1発明の目的(2剤の色分けと混合による色 調の変化を利用して最高の発泡状態か否かを判断する)を達成できなくなる ことは明らかであるから,そのような変更を当業者が容易に想到し得るとは いい難く,その意味で,甲1発明に甲2に記載された技術(甲2記載事項) 等を組み合わせようとすることについては動機付けがなく,むしろ阻害要因 があるといえる。
(3) これに対し,原告は,甲1発明は,気泡状の二酸化炭素(炭酸ガス)を経 皮吸収させることを機能の一つとする化粧剤であるから,拡散問題(炭酸ガ\nスが大気中に拡散すること)は甲1発明に内在する自明の課題であるとした上で,甲1発明に対しアルギン酸ナトリウム慣用技術(甲2記載事項)を適 用することについては,自明の課題である拡散問題を軽減するために,閉じ 込め効果(アルギン酸ナトリウムを事前に水に添加して万遍なく行き渡らせ ることにより,網目状の高分子化合物が形成され,気泡状の二酸化炭素〔炭 酸ガス〕を水溶液中に閉じ込めることが可能となること)を利用するという\n積極的な動機付けがある,などと主張する。
しかしながら,甲1発明は,前記のとおり,発泡作用(炭酸ガスの発泡, 破裂作用)によりマッサージ効果を得る化粧料について,最高度に気泡が発 生することを色によって判断できるようにすることを目的とするものであっ て,そこに炭酸ガスを体内に取り込もうとする技術的思想はない(二酸化炭 素の泡がはじけることによる物理的な刺激を効果的に得ようとしているにす ぎない)から,「気泡状の二酸化炭素(炭酸ガス)を経皮吸収させることを 機能の一つとする化粧料」であるとはいえず,原告の主張はそもそもその前\n提において誤りがある。そうである以上,原告主張の拡散問題が甲1発明に 内在する自明の課題であるとはいえないし,甲1発明におけるアルギン酸ナ トリウムは飽くまで気泡発生を助成するための起泡助長剤として添加されて いるにすぎないから(甲1【0013 】),アルギン酸ナトリウムが含まれ ているからといって,それだけで直ちに事前に水に添加して利用する技術(アルギン酸ナトリウム慣用技術)を適用することについての積極的な動機付け があるともいえない。この点,原告は,アルギン酸ナトリウムが増粘剤とし ても機能するものであることを根拠に甲1発明におけるアルギン酸ナトリウ\nムが気泡の発生とその安定化の双方に寄与するものであることを当業者は当 然に認識するとも主張するが,甲1発明の目的を離れた主張であって,論理 に飛躍があり,採用できないというべきである。
また,原告は,阻害要因に関して,甲1は,技術分野の同一性を理由とし て本件発明の課題を解決するための主引例として選択されたものであり,容 易想到性の判断に際して,甲1に記載された目的に反する方向での変更か否 かは関係がない,などとも主張するが,特定の公知文献(公知技術)からの 容易想到性の問題である以上,当該公知文献に記載された目的を度外視した 判断はできないというべきであり,上記主張は,やはり採用できないという べきである。

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◆平成30(行ケ)10077

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平成30(行ケ)10118  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月25日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反の無効理由主張について、知財高裁は動機付けなしとして、無効理由なしとした審決を維持しました。
a 引用発明1の課題は,1)背肩近辺の側面側,特に肩ぐうと呼ばれるつぼをマ ッサージすること,2)背面側にマッサージを行う場合に,身体が施療手段により押 されて前方に動くのを防ぐこと,である。 これに対し,引用発明2の課題は,1)下腿の臑の前外側,特に三里,豊隆と呼ば れるつぼをマッサージすること,2)下腿にマッサージを行う場合に,被施療者の下 腿を拘束しないこと,である。
b まず,引用発明1と引用発明2の課題は,1)身体の側面ないし前面に位置す るつぼのマッサージを行うという限度で共通するが,その対象部位及び対象部位に 位置するつぼの種類が異なる。 そして,引用発明1と引用発明2におけるマッサージの対象部位及び対象部位に 位置するつぼの種類を比較するに,背肩と下腿においては,その形状,重量や椅子 型マッサージ機にかかる荷重,可動範囲などが大きく異なるから,それに応じて椅 子型マッサージ機の構成は異なるものとならざるを得ない。また,定型的な動きし\nかできない椅子型マッサージ機においては,背肩近辺の側面側と下腿の臑の前外側 に位置するつぼをどのような強度,角度及び範囲で押圧するかによって,その施療 子部分の構成も異なるものとならざるを得ない。\nそうすると,椅子型マッサージ機である引用発明1と引用発明2において,マッ サージの対象部位及び対象部位に位置するつぼの種類が異なることは,両発明の課 題が有する意義に差異をもたらすものというべきである。
c 加えて,引用発明1と引用発明2の課題は,2)身体の動作を防止してその自 由度を下げようとするか,身体を拘束しないようにしてその動作の自由度を上げよ うとするかという点では正反対のものということができる。
d よって,引用発明1と引用発明2との課題は,マッサージを行おうとする対 象部位及び対象部位に位置するつぼの種類が異なること,身体の動作の自由度を下 げようとするか上げようとするかで異なることから,相違するものというべきであ る。
(ウ) 作用機能\n
引用発明1は,背もたれ部の左右両側に前方に向かって突出した側壁部の内側面 に配設されたエアバッグが膨出し,身体を左右両側から挟圧するという作用機能を\n有する。 これに対し,引用発明2は,後側空気袋の膨張によって,支持部に枢着されてい る左右の受板が前方へ回動し,受板の前側に配された前側空気袋が膨張することに よって,臑の外側部分を押圧するという作用機能を有する。\nしたがって,引用発明1と引用発明2の作用機能は,膨出(膨張)するエアバッ\nグ(前側空気袋)によって身体を押圧するという点で共通するものの,当該エアバ ッグ(前側空気袋)を配設する部材が,側壁部か,支持部に枢着された回動可能な\n受板かという点で相違する。
(エ) 示唆
引用例1又は引用例2の内容中に,引用発明1に引用発明2を適用することにつ いての示唆は見当たらない。
(オ) 動機付け
以上のとおり,引用発明1と引用発明2とは,椅子型マッサージ機という限度で 技術分野が共通するものの,マッサージを行おうとする対象部位及び対象部位に位 置するつぼの種類が異なることなどから課題が相違し,身体を押圧するエアバッグ を配設する部材のそもそもの可動性が異なることから作用機能も相違するほか,引\n用発明1に引用発明2を適用することについて示唆も見当たらない。 したがって,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けがあるということはできない。
(カ) 原告の主張について
a 原告は,当業者が通常の創作能力を発揮すれば,引用発明1において相違点\nに係る構成を採用することができる旨主張する。\nしかし,前記のとおり,椅子型マッサージ機においては,身体が着座姿勢で固定 され,また身体の各部位の形状等が異なることから,その構成は,マッサージの対象部位に応じて異なるものになる。また,椅子型マッサージ機は定型的な動きしか\nできないから,椅子型マッサージ機の施療子部分の構成は,対象となるつぼの種類\nによっても異なるものになる。 したがって,引用発明1において,椅子型マッサージ機及びその施療子部分の構\n成に関連する相違点を採用することが,通常の創作能力の発揮であるということは\nできない。
b 原告は,引用例2には,引用発明2と同じ機構が下腿だけではなく,足の甲\nの部分にも適用できることが記載されているから,当業者は,引用発明2が下腿だ けではなく,身体の他の部分にも適応可能な機構\であることを理解し,また,他の 部分に適用することを示唆される旨主張する。 しかし,前記のとおり,椅子型マッサージ機の構成は,マッサージの対象部位に\n応じて異なるものになり,その施療子部分の構成も,対象部位に位置するつぼの種\n類に応じて異なるものになる。引用発明2と同じ機構が,下腿だけではなく,足の\n甲の部分にも適用できたとしても,当業者は,これを,身体の形状等が大きく異な り,施療子部分の構成も変更する必要がある背肩近辺にも適用可能\な機構であると\nは理解しないし,背肩近辺に適用することについて示唆を受けるものでもない。

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平成30(行ケ)10095  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月19日  知的財産高等裁判所

 審決は進歩性違反無しと判断しました。知財高裁も、動機付けなしとして、これを維持しました。

 前記ア認定のとおり,建築部材等の工業製品において,面と面との交わ りのかどに斜面又は丸みをつける「面取り」は,本件出願当時,周知であ ったことが認められる。 また,前記イ及びウのとおり,甲16には基台2の下面の両縁部の角が 斜面になっている構成が,甲17には,プラスチック等非腐蝕体(4)の\n下面の両縁部の角が斜面になっている構成がそれぞれ開示されている。\nしかしながら,甲1には,「面取り」に関する記載や,甲1発明の台座 の基盤1の下面縁部と側壁との間に下面又は側壁に対して傾斜する斜面の 記載はなく,ましてや,そのような斜面を基盤1の「延在方向に沿って設 け」ることについての記載も示唆もない。 かえって,甲1発明の台座においては,基盤1の側壁に突部tと凹部h を有し,隣り合う台座間で突部tと凹部hとを係合して接続するものであ ること(前記(2)ア及びエ)からすると,突部tや凹部hの一部を削って斜 面を設けることは考え難いというべきである。 加えて,甲1には,甲1発明の台座において,基盤1等の稜線に人が接 触して怪我をしないようにする措置を講じる必要があることをうかがわせ る記載はない。
そうすると,甲1,甲16及び17に接した当業者において,甲1発明 の台座に上記周知技術,甲16又は17記載の構成を適用して,基盤1の\n下面縁部と側壁との間に下面又は側壁に対して傾斜する斜面を設け,当該 斜面が基盤1の延在方向に沿って設けられる構成(相違点3に係る本件発\n明1の構成)とする動機付けがあるものと認めることはできない。\nしたがって,当業者が,甲1発明において,相違点3に係る本件発明1 の構成とすることを容易に想到することができたものといえないから,こ\nれと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

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平成30(行ケ)1007 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月28日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。新規事項追加の拒絶理由については、判断がされませんでした。

 前記(1)のとおり,甲13には,最適化されたナッツ,種子及びナッ ツ油といった複数の供給源による脂肪酸や抗酸化物質,ポリフェノールなど,それ ぞれの栄養素の量を最適化すること(【請求項3】,【0022】)や,異なる供給源 を使用することにより,過剰の場合は有害な特定の植物性化学物質の高濃度での送 達を回避すること(【0031】)が示唆されている。 そうすると,甲13発明において,植物性化学物質を,複数の異なる供給源に由 来するものとすることは,当業者が適宜採用することができる設計事項であると認 められる。
(イ)a 原告は,甲13の「ω−3脂肪酸に対して比較的高率のω−6脂肪 酸」,「抗酸化剤及び植物性化学物質[原告注:ファイトケミカル]全般を含む組成 物」という教示,又は,「ファイトケミカルの高濃度での送達が回避される」という 教示は,特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量のポリフェノールを含む抗酸化剤を まとめて提供する前提で,複数の異なる供給源に由来するファイトケミカルを使用 することを教示するものではない旨主張する。
原告の上記主張は,本願補正後発明1が「特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量 のポリフェノールを含む抗酸化剤をまとめて提供する前提で,複数の異なる供給源 に由来するファイトケミカルを使用する」との技術思想に基づくものであることを 前提とするものであると解されるが,その主張を採用することができないことは, 前記(2)のとおりであるから,原告の上記主張は,理由がない。
b なお,原告は,ω-6 脂肪酸,抗酸化剤及びポリフェノールの含有量 は,食品供給源や,作物,産地によって異なり,複数の異なる供給源に由来する, ω-6脂肪酸及びポリフェノールを含む抗酸化剤の特定の量を維持しながら,異なる 供給源に由来するファイトケミカルを利用することは技術的に困難である旨主張す る。 ファイトケミカルの供給源であって,ω-6 脂肪酸の前駆体であるリノール酸を含 有するピーナッツ油,コーン油,ヒマワリ油等(甲21の【0004】【表1】,【0\n033】【表2−1】,【0034】【表\2−2】)や,ポリフェノールを含有するオリーブ油(甲21の【0084】),アーモンド・クルミ・ペカン・クリ・ピーナッツ 等の抗酸化物質を含有するナッツ類(甲21の【0024】〜【0026】)は,い ずれも当業者によく知られたものである。そして,ポリフェノールは,抗酸化剤の 例である(甲15,弁論の全趣旨)。
また,証拠(甲1,2,13,14,21)によると,供給源そのものや複数の 供給源から製造される組成物に含まれる ω-6 脂肪酸,ポリフェノールの含有量は, それぞれ測定可能であることが認められる。\nそうすると,ω-6 脂肪酸,抗酸化剤及びポリフェノールの含有量が,供給源によ って異なるとしても,目的とするω-6 脂肪酸,抗酸化剤の配合量とするために植物 由来の栄養素の供給源を適切に組み合わせて各成分の合計量を調節することは,技 術的に困難であるとはいえない。 また,ω-6 脂肪酸,抗酸化剤及びポリフェノールの含有量が,作物,産地等によ って異なるとしても,それは単一の供給源でも生じ得る問題であって,異なる供給 源を組み合わせる場合に固有の問題ではなく,上記のとおり,供給源のω-6 脂肪酸, ポリフェノールの含有量が測定可能であることからすると,上記認定を左右するも\nのではない。したがって,原告の上記主張は理由がない。
c 原告の相違点 1 に係るその余の主張は,いずれも,本願補正後発明 1が「特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量のポリフェノールを含む抗酸化剤をま とめて提供する前提で,複数の異なる供給源に由来するファイトケミカルを使用す る」との技術思想に基づくことを前提とするものであると解されるところ,前記(2) のとおりであって,採用することができない。
イ 相違点2について
(ア) 前記(1)のとおり,甲13には,甲13発明に係る組成物に抗酸化物 質(【0022】,【0023】,【0031】,【0035】),ポリフェノール(【0023】)が含まれることが示唆されており,ポリフェノールが抗酸化剤であることは,本願出願時における技術常識であった(甲15,弁論の全趣旨)から,甲13発明 に係る組成物において,少なくとも一種の処方物をポリフェノールを含む抗酸化剤 を含むものとすることは,当業者が適宜採用することができる設計事項であると認 められる。
(イ) 原告は,「ピーナッツ」は,異なる供給源に由来するファイトケミカ ルを使用した「処方物」ではなく,甲13は,「抗酸化剤」自体を教示しているもの であって,特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量のポリフェノールを含む抗酸化剤 をまとめて提供することや,当該提供を維持したまま,複数の異なる供給源に由来 するファイトケミカルを使用することを教示するものではないと主張する。 原告の上記主張は,本願補正後発明1が「特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量 のポリフェノールを含む抗酸化剤をまとめて提供する前提で,複数の異なる供給源 に由来するファイトケミカルを使用する」との技術思想に基づくことを前提とする ものであると解されるところ,前記(2)のとおりであって,採用することができない。

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平成30(行ケ)10054  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月4日  知的財産高等裁判所(3部)

進歩性違反無しとした審決が維持されました。知財高裁は、「甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず,さらに,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動機付けは見当たらない。」と述べました。
 原告は,本件発明1は,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合 わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであると主 張する。
イ そこで検討するに,甲1文献における「比較例4,8〜10は発泡性, ガス保留性試験においては実施例2同様良好であったが,経日安定性に著 しく劣った。」(上記2(1)ケ)との記載から,引用発明1には経日安定性 に問題があることが理解され,当業者は,経日安定性の改善を課題として 見いだすといえる。 そして,1) 甲1文献に「後記特定組成の発泡性化粧料は,2剤型であ る為経日安定性に優れ,」(同エ)との記載があり,経日安定性試験の結 果が◎又は○である実施例1〜11(第1表)は2剤型の構\成であること (同ク),2) 経日安定性が○である比較例3(第2表)は,同様の第1\n剤と炭酸水素ナトリウムのみをPEGで被覆した粉末の2剤型の構成であ\nること(同ケ)から,炭酸塩と酸とを2剤に分ければ経日安定性が向上す ること,及び酸を水溶液とし,炭酸塩をPEG被覆すればアルギン酸ナト リウムが存在せずとも経日安定性は十分となることが理解できる。そうす\nると,これらの甲1文献に開示された事項に基づき,引用発明1の経日安 定性を改善しようとした場合,炭酸塩と酸との反応で経日安定性が低下す ることを避けるため,引用発明1において,「アルギン酸ナトリウム・炭 酸塩含有PEG被覆粉末1+酸含有PEG被覆粉末2の混合物」という構\n成を,「アルギン酸ナトリウム・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」と「酸含有PEG被覆粉末2」との2剤に分けることは,当業者であれば容易に想 到するといえる。
このように,甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明 1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず,\nさらに,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動機付けは見当たらない。 また,引用発明1は二酸化炭素による血行促進作用によって皮膚を賦活 化させるための化粧料で,アルギン酸ナトリウムは安定な泡を生成し,二 酸化炭素の保留性を高めるために配合されているのに対し,甲2文献には 二酸化炭素の発生についての記載はなく,甲2文献記載の技術事項におけ るアルギン酸ナトリウムは二価以上の金属塩類との反応により皮膜を形成 するためのものであって,化粧料の使用目的もアルギン酸ナトリウムの配 合目的も異なるものである。そして,甲1文献及び甲2文献には,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合わせた場合に引用発明1における 発泡性及びガス保留性を維持することができることを示唆する記載もない から,このことからも,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合わ せる動機付けがあることは否定される。
ウ 以上によれば,本件発明1について,当業者が,引用文献1に甲2文献 記載の技術事項等を適用することによって容易に想到することができたと いうことはできない。また,以上に述べたところは,本件発明9における相違点Dについても妥当する。これによれば,本件発明2〜8,10〜13についても,同様 に,容易に想到することができたとはいえない。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,引用発明1にはダマ形成問題及び攪拌問題が存在するから,こ れらの課題を解決するために,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動 機付けがあると主張する。
(ア) ダマ形成問題について
ダマとは粉末の水和が早いことにより起こり,粉末の回りを水分子が 取り囲んで塊となり,粉末の内部まで水が浸透していかず,粉末が均一 に水に分散しない状態をいうと解され,アルギン酸ナトリウムを水に溶 解する際にダマが生じる問題があることが認められる(甲2,59〜6 2)。 しかし,甲1文献にはこのような問題について記載も示唆もない。そ して,引用発明1のように炭酸塩とアルギン酸ナトリウムの混合物がP EGで被覆された粉末においては,アルギン酸ナトリウムは少しずつ水 に溶解することが容易に理解され,このような炭酸塩とアルギン酸ナト リウムとの混合物がPEGで被覆された粉末と,被覆のないアルギン酸 ナトリウム粉末では水和のし易さが異なるから,引用発明1において, アルギン酸ナトリウムを水に溶解する際の一般的な問題が同等に当ては まるということはできず,当業者が,引用発明1につきダマ形成問題の 課題を見出すとは認められない。 また,原告は,甲44文献の記載によれば,PEGの被覆によりダマ 形成問題は解消しないと主張するが,原告の指摘する「主成分(ママコ を生じ易い糊料)の特性が阻害されたり,糊液粘度も変動する等の問題 点を抱えており,ママコの形成方法ないし消失法として効果的でなかっ た」との記載は,PEGの被膜によりママコが消失したとしても,異な る問題が生じ得ることを示したものと解され,引用発明1においてダマ 形成問題があることの根拠とはならないのは明らかであるから,原告の 主張は採用できない。 以上によれば,当業者は,引用発明1においてダマが形成されるとい う問題が生じるとは理解しないというべきである。
(イ) 攪拌問題について
原告は,引用発明1において,アルギン酸ナトリウムがダマを形成し, また,アルギン酸ナトリウムの水溶液濃度の上昇に伴って粘度が飛躍的 に上昇し,これと並行して炭酸塩と酸の反応が進行するから,少しでも 多くの二酸化炭素を取り込むためには難溶解性のアルギン酸ナトリウム の溶解及び均一化をできる限り短時間で行うことが求められ,そのため の徹底的な攪拌が不便かつ煩わしいという問題があると主張する。 しかし,このような問題は甲1文献に記載も示唆もなく,かえって,発泡性及びガス保留性は◎という引用発明の試験結果に照らせば,引用 発明の構成において,少しでも多くの二酸化炭素を取り込むために,素\n早く徹底的な攪拌操作をする必要があり,これが煩わしいという課題が あるとは解し得ない。
イ 以上のとおり,引用発明1において,当業者が原告の主張する課題を見 いだすとは認められないから,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組 み合わせることの動機付けがあるということはできず,原告の主張は採用 できない。

◆判決本文

こちらは分割出願に関する関連事件(審決取消事件)です。

◆平成30(行ケ)10033

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平成30(行ケ)10048  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 動機付けがなく、むしろ阻害要因があるとして、無効理由なしとした審決が維持されました。
(4) 相違点3の容易想到性について
ア 前記認定に係る各文献の記載によれば,まず,甲9の軸受保持部材28は, 鍔部及び係止爪と類似する構成であるフランジ34と突起32とを有するものの,\n当該軸受保持部材28は,回転するカッター軸38を回転自在に支持するものでは なく,オイルシール40と,ころがり軸受であるオイルレスベアリング42とを支 持するものであり,軸受け部材に相当するものではない。 他方,甲5〜8,10〜16及び18は,いずれも,軸受け部材に関する技術が 記載されたものと認められるところ,弾性変形可能な係止爪が外周に突出し,基端\n側に鍔部を有し,また,係止爪は先端側に向かうほど当該軸受け部材における軸の 回転中心との距離が短くなる斜面を有している軸受け部材を,固定された板状体に 対して装着し,当該板状体に設けられた穴に軸を回転自在に支承するものである点 で共通するものの,固定された板状体以外の部材に装着することについての記載や 示唆はない。 また,甲17においては,軸受Aが装着されるボス(6)自体は板状体ではないもの の,ボス(6)は板状のベース(5)に固定されたものであり,軸受Aのフランジ板(1)と爪 片(4)の係合突起(4a)との間にのみボス(6)が配置されるものである。そうすると, 甲17と甲5〜8,10〜16及び18とは,直接に装着する対象そのものが板状 体であるか否かという点で違いはあるものの,いずれも装着される部材は板状体又 は板状のものに固定された部材であり,これをフランジと爪片との間で狭持するよ うにして固定する軸受け部材である点で共通するといえる。 以上を踏まえると,甲5〜8及び10〜18により,「固定された板状体の穴に軸を回転自在に支承する,滑り軸受けである軸受け部材において,弾性変形可能な\n係止爪が外周に突出しており,基端側に鍔部を有しており,同係止爪は先端側に向 かうほど軸受け部材における軸の回転中心との距離が短くなる斜面を有している軸 受け部材。」を周知技術として認定することができる。これは,本件審決認定に係 る周知軸受け部材に相当する。なお,甲5〜18の全ての文献から,軸受け部材に 関する周知技術というべき共通の技術事項を認めることはできない。
イ また,その余の文献の記載を見ても,まず,甲2〜4は,いずれもY字形を なし,二股に分かれた部分の先端付近に一対の回転体を設けて構成される美容器に\nおいて,回転体が非貫通状態で軸に支持されることを開示するものの,当該回転体 の支持構造として,本件発明1のような「係止爪」及び「段差部」を用いるものではない。\n次に,甲19の1のマッサージローラーは,その内装面に周囲を巡る凹部を備え, 「段差部」に類似する構成を有するものといい得るものの,マッサージローラー自\n体が弾性材料より構成されることにより,鞘の外装面の周囲を巡る隆起との間でス\nナップ結合をすることができるようにしたものである点で,本件発明1とは異なる。 他方,甲20の1のプラグ200は,フランジ201及びラッチアーム204に 突起205を有する点で,本件発明1の軸受け部材に類似する構成を有するものと\nいい得るものの,プラグ200は,2つのモジュールを固定するものであって,支 持軸に設けられる軸受け部材として機能するものではない。加えて,プラグ200\nは,モジュール140の貫通した孔からロックピン240を挿入することにより, プラグ200のラッチアーム204がモジュールの開口のラッチ凹部から離脱する のを防止するものであるから,非貫通状態の回転体を支持するために用いることを 前提としないことは明らかである。 そうすると,軸受け部材を用いて軸に対して非貫通状態の回転体を支持する際に, 回転体の内面に段差部を設けるとともに,軸受け部材には当該段差部に係止する係 合爪を用いる構成が開示されていることを認めるに足りる証拠はない。\n
ウ そもそも引用発明1は,ベアリング12及びL型ベアリング13という2つ の軸受け部材を用いることによって,ローラー4を回転自在に支承するものであるところ,これを1つの軸受け部材に置き換えることが可能であることを記載ないし\n示唆する証拠は見当たらない。 また,仮に引用発明1のベアリング12及びL型ベアリング13を1つの軸受け 部材に置き換えることが可能であったとしても,引用発明1のローラー4は,顔面\nに接触させて回転させるものであり,その長手方向と直交する方向に荷重がかかる ことは明らかであるところ,1つの軸受け部材に置き換えてしまうと,ローラーを その根元の部分でのみ支承することとなってしまい,ローラーを安定して回転させ ることが困難となることは容易に推察される。 そうすると,引用発明1のベアリング12及びL型ベアリング13を1つの軸受 け部材に置き換える動機付けはなく,むしろ阻害要因が存するといえる。
エ 以上より,引用発明1に甲2〜20の1記載の事項を適用することによって, 相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは,当業者にとって容易に想到し\n得ることとはいえない。
オ 原告の主張について
(ア) 原告は,甲5〜18記載の事項を引用発明1に適用することが容易である ことを理由として無効理由の主張を行っているのではなく,これらの文献から共通して抽出される構成が周知の軸受け部材であるとし,これを引用発明1に適用する\nことが容易であったと主張しているにもかかわらず,本件審決は,各文献記載の事 項を個別に判断しており,その判断手法に誤りがあるなどと主張する。 しかし,甲5〜18の全ての文献から軸受け部材に関する周知技術というべき共 通の技術事項を見出すことはできないことは,前記のとおりである。本件審決は, その記載を通じて見れば,そのような理解を前提とした上で,個々の証拠における 軸受け部材を引用発明1に適用できるかを検討したものと理解されるのであり,そ の判断手法に違法があるものとはいえない。
(イ) 原告は,本件審決による周知軸受け部材の認定には誤りがある旨主張する けれども,この点に関する本件審決の判断に誤りがないことは前記のとおりである。
(ウ) 原告は,本件審決につき,実施可能要件適合性の判断においては甲5〜1\n8の記載を参酌し,板状体ではない回転体に使用する軸受け部材に係る係止片を弾 性変形させる場合に所定のクリアランスを設けることは技術常識であると認定する 一方で,進歩性の判断においては,甲5〜18の周知技術の認定として,これが技 術常識でないことを前提として判断しており,その認定・判断に矛盾があるなどと 主張する。 この点に関する原告の主張の趣旨は,やや判然としないが,そもそも,本件審決 は,実施可能要件適合性の判断の際,「係止爪を弾性変形させるために所定のクリ\nアランスを設けること」を技術常識として認定するにあたり,甲5〜18を参酌し たものではない。また,上記技術常識が認められるか否かと,甲5〜18の記載か ら原告主張に係る周知軸受け部材を認定し得るか否かとは,直接的な関係はない。 すなわち,「固定された板状体の穴に軸を回転自在に支承する,滑り軸受けである 軸受け部材において,弾性変形可能な係止爪が外周に突出しており,基端側に鍔部\nを有しており,同係止爪は先端側に向かうほど軸受け部材における軸の回転中心と の距離が短くなる斜面を有している軸受け部材」(本件審決認定に係る周知軸受け 部材)において,「固定された板状体の穴に軸を回転自在に支承する」ことは,係 止爪が弾性変形するためのクリアランスを設けることを前提とするか否かとは直接 的な関係がないことから,仮に係止爪が弾性変形するためのクリアランスを有する ことが技術常識であることを前提としても,その認定が異なることはない。
(エ) その他原告がるる指摘する点を考慮しても,この点に関する原告の主張は 採用できない。
(5)小括
以上のとおり,少なくとも,引用発明1に甲2〜20の1記載の事項を適用する ことによって,相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは,当業者にとっ\nて容易に想到し得たものとはいえない。そうである以上,その余の点を論ずるまで もなく,本件発明1を容易に発明することができたとはいえない。

◆判決本文

関連事件です。

◆平成30(行ケ)10049

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