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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

裁判管轄

平成30(ワ)5041  損害賠償等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年1月21日  大阪地方裁判所

 損害賠償不存在確認訴訟です。 国際裁判管轄の有無、訴えの準拠法、確認の利益の有無、など争点はたくさんです。民訴法3条の9の特別の事情があると認めるとして,訴えは却下されました。

   被告の主たる事務所は日本国内にあることから,本件各請求に係る訴えのい ずれについても,日本の裁判所が管轄権を有する(民訴法3条の2第3項)。 もっとも,その場合でも,事案の性質,応訴による被告の負担の程度,証拠の所 在地その他の事情を考慮して,日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間 の衡平を害し,又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があ ると認めるときは,裁判所は,その訴えの全部又は一部を却下することができる (同法3条の9)。そこで,本件各請求に係る訴えにおいて,それぞれ,上記「特 別の事情」があると認められるかについて,以下検討する。
(ア) 前記イ(ア)のとおり,請求1−1は,別件米国訴訟と同一の訴訟物に関するも のである。 また,本件において,本件各装置が本件米国特許に係る発明の実施品であること, 本件各装置が参加人から SKC 等に販売されたこと及び原告が本件各装置を使用し て本件各製品を製造したことについては,当事者間に争いはない。本件での主要な 争点は,本件許諾契約により参加人が許諾された本件実施権の範囲,すなわち,参 加人の販売先に関する制限の存否といった本件許諾契約の解釈である。他方,別件 米国訴訟においても,その経過(前記イ(イ))から,消尽及び黙示のライセンスの抗 弁は主要な争点として位置付けられ,本件許諾契約の解釈につき,日本法の専門家 の各意見書及び関係者の供述書並びにそれを踏まえた主張の提出,陪審公判での証 人尋問といった形で,原告等と被告とが主張立証を重ね,陪審及び加州裁判所の判 断の対象となっている。その意味で,本件と別件米国訴訟とは,争点を共通にする ものといえる。 しかも,別件米国訴訟の提起は平成22年7月であり,本件の訴え提起までの約 8年間,こうした主張立証が行われ,その結果として,別件評決及び加州裁判所の 別件米国判決に至ったものである。なお,この間,原告が日本において請求1−1 に係る訴えのような訴訟を提起することを妨げる具体的事情があったことはうかが われない。
これらの事情を総合的に考慮すると,別件米国訴訟につき加州裁判所の別件米国 判決がされるまでは,原告は,日本において請求1−1に係る訴えのような訴訟を 提起する考えはなく,別件米国判決を受けたことを契機に,その結論を覆すべく請 求1−1に係る訴えを提起したものと理解される(別件米国判決の基礎となった証 拠方法の重大な瑕疵等を度々指摘する原告の主張からも,原告のこのような意図が うかがわれる。)。他方,請求1−1に係る本件の訴えに応訴すべきものとした場 合,被告は,時期を異にして別件米国訴訟と共通する主張立証活動を重ねて強いら れることとなるのみならず,別件米国判決の結論を本件において覆そうとする以上, 原告は別件米国訴訟では行わなかった主張立証を追加的に行う蓋然性が高いと見ら れるところ,これに対する対応を強いられることで,被告にとっては,更なる応訴 の負担を新たに生じる蓋然性も高いといえる。 そうすると,本件許諾契約はいずれも日本法人である被告と参加人との間で締結 されたものであり,関連する証拠も,多くは日本語で作成されていること又は日本 語を解する者である蓋然性が高く,その所在も多くは日本国内にあると見られるこ とを考慮しても,請求1−1に係る訴えについては,日本の裁判所が審理及び裁判 をすることが当事者間の衡平を害する特別の事情(民訴法3条の9)があると認め られる。
(イ) これに対し,原告は,日本の裁判所で審理をすることが必要かつ適切である こと,別件米国訴訟の重複・蒸し返しに当たらないこと,別件米国判決は日本にお いて承認されないことなどを指摘して,特別の事情があるとはいえない旨主張する。 しかし,請求1−1に係る訴えに関する限り,日本の裁判所で審理をすることが 必要かつ適切であるとは必ずしもいえないこと,別件米国訴訟の蒸し返しに当たる と見られることは,上記のとおりである。別件関連訴訟が係属しているといっても, 請求1−1に係る訴えとは当事者及び訴訟物を異にする別の事件である以上,その 主張立証の負担をもって本件における主張立証の負担を無視ないし軽視し得ること にはならない。
また,別件米国判決が日本において承認されないとする根拠として,原告は,別 件米国判決が重大な瑕疵のある証拠に依拠するものであることを指摘する。しかし, そのような誤りは本来的には米国の訴訟手続を通じて是正されるべきものであると ころ,かえって,別件米国判決は,CAFC においても承認され,確定している。こ のことと,再審事由(民訴法338条)に該当するような具体的な事情もないこと に鑑みると,日本法に照らしても,原告の上記指摘は別件評決及び別件米国判決の 依拠する証拠評価に対する不満をいうにすぎず,これをもって外国の確定判決の効 力が認められる要件である「判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は 善良の風俗に反しないこと」(民訴法118条3号)を欠くとはいえない。 さらに,原告は,別件米国判決が承認された場合に,別件関連訴訟につき参加人 の被告に対する損害賠償請求等の判決が確定すると両者に矛盾が生じることなどを 指摘して,その点からも別件米国判決は承認されるべきものではないとする。しか し,別件関連訴訟が原告の主張するとおりに帰結するか否かは,請求1−1に係る 訴えの提起の時点では不明というほかない。この点を措くとしても,別件関連訴訟 は,本件とも別件米国訴訟とも当事者及び訴訟物を異にするものであるから,その 判決の効力は原告と被告との関係に及ぶものではない。 その他原告が縷々指摘する点を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用で きない。
(ウ) 以上のとおり,請求1−1に係る訴えについては,日本の裁判所が審理及び 裁判をすることが当事者間の衡平を害する特別の事情があると認められるから,こ れに係る訴えを却下することとする。

◆判決本文

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