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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

裁判管轄

平成28(ラ)10013  移送決定に対する抗告事件 平成28年8月10日  知的財産高等裁判所

 特許権が絡む詐欺事件が、「特許権に関する訴え」に該当するかが争われました。知財高裁は、該当しないと判断し、1審判断を取り消しました。
 同法6条1項が,知的財産権関係訴訟の中でも特に専門技術的要素が強い事件類型 については専門的処理体制の整った東京地方裁判所又は大阪地方裁判所で審理判断 することが相当として,その専属管轄に属するとした趣旨からすれば,「特許権に 関する訴え」は,特許権侵害を理由とする差止請求訴訟や損害賠償請求訴訟,職務 発明の対価の支払を求める訴訟等に限られず,特許権の専用実施権や通常実施権の 設定契約に関する訴訟,特許を受ける権利や特許権の帰属の確認訴訟,特許権の移 転登録請求訴訟,特許権を侵害する旨の虚偽の事実を告知したことを理由とする不 正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟等を含むと解するのが相当である。 他方,基本事件は,抗告人らの共同不法行為(詐欺)又は会社法429条に基づ\nく損害賠償請求訴訟であるから,抽象的な事件類型が特許権に関するものであると いうことはできない。そして,相手方の欺罔行為に関する主張は変遷しているもの\nの,相手方は,抗告人X1による消火器販売事業への勧誘に際し,抗告人X1の開 発した消火剤が,同人は技術やノウハウを有していないのに,同人が特許を持って おり,これまでの消火剤より性能がよいと述べたことや,他社メーカーの特許を侵\n害しないと述べたことが,詐欺に当たるなどと主張するものと解される。しかし,\n事業の対象製品が第三者の特許権を侵害するというだけで,当該事業への勧誘が詐 欺に当たるとか,取締役の任務を懈怠したということはできないから,欺\罔行為の 内容として「特許」という用語が使用されているだけで,このことをもって,基本 事件が専属管轄たる「特許権に関する訴え」(民事訴訟法6条1項)に当たるとい うことはできない。また,知的財産高等裁判所設置法2条3号は,「前2号に掲げ るもののほか,主要な争点の審理に知的財産に関する専門的な知見を要する事件」 を知的財産高等裁判所の取り扱う事件の1つとしており,第三者の特許権の侵害の 有無が争点の1つとなる場合には,専門的処理体制の整った東京地方裁判所又は大 阪地方裁判所で審理判断することが望ましいとしても,それが全て専属管轄たる「特 許権に関する訴え」に当たるということもできない。基本事件のように,審理の途 中で間接事実の1つとして「特許」が登場したものが専属管轄に当たるとすると, これを看過した場合に絶対的上告理由となること(民事訴訟法312条2項3号) からしても,訴訟手続が著しく不安定になって相当でないというべきである。
3 したがって,基本事件は,「特許権に関する訴え」(民事訴訟法6条1項) に当たらないというべきであり,東京地方裁判所の専属管轄とは認められない。

◆判決本文

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平成27(ワ)10913  債務不履行損害賠償請求  特許権  民事訴訟 平成28年5月23日  大阪地方裁判所

 米国での手続きを適切に行わなかったとして、債務不履行に基づく損害賠償請求がなされました。一度神戸地裁で判決がなされていますが、控訴された、控訴審では、管轄違いとして大阪地裁に差し戻されました。判断としては請求棄却です。
2 被告らが,審査官からのクレーム補正の電話連絡に対し,補正の書面を提出すべき義務を負うか否か
(1) 前記認定事実等(1)ア(ア)のとおり,米国特許出願手続における補正は,書類 を提出することによって行われるが,審査官補正の場合には,米国特許商標庁(審 査官)が審査官補正書を発行して行われると認められる。そして,前記認定事実等 (1)ア(イ)c及びdのとおり,審査官補正は,出願人が電話又は個人面接にて権限を授 与した場合に許されることから,審査官補正の場合には,出願人が補正の書面を提 出する必要はないと認められ,前記認定事実等(4)のとおり,578出願での審査官 補正でも電話面接による権限授与が行われているにとどまる。そこで,本件で,被 告らが審査官からの連絡に対して補正の書面を提出すべき義務を負うといえるため には,審査官からの連絡が審査官補正の提案でなく,出願人による補正の促しであ ったことが必要となるので,まずこの点を検討する。
ア 前記認定事実等(2)アのとおり,被告P2は,P4に対する電子メールに おいて,審査官からの補正提案を許容する旨を審査官に伝えれば,審査官は審査官 による補正を用意すると連絡しており,これによれば,被告P2は,審査官からの 連絡を審査官補正の提案であると理解したと認められる。そして,同電子メールに 記載された審査官の提案は,クレームを提案のように補正すれば,特許可能である\nという内容を電話で伝えてきたものであるところ,これは,審査官補正が,「出願を 特許として通す場合」(又は「特許申請登録の段階に於いて」),「電話又は個人面接\nにてかかる変更について権限を授与した場合に」許されるものである(前記認定事 実等(1)ア(イ)c)との定めにも適合している。そうすると,本件での審査官の提案は, 審査官補正の提案であったと認めるのが相当である。

◆判決本文

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