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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

裁判管轄

平成28(ワ)25969  債務不存在確認請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月27日  東京地方裁判所

 日本の裁判所に対する米国特許に基づく損害賠償請求不存在の確認訴訟です。東京地裁(47部)は、訴えの管轄が日本の裁判所にないと請求を却下しました。
 また,別件米国訴訟の訴状の記載を検討しても,被告の上記主張が裏付 けられる。すなわち,上記(1)アのとおり,別件米国訴訟の訴状の「管轄区 域および裁判地」欄には,「オリオン電機は米国内および本地区内で過去 に事業を営んでおり現在も日常的に事業を営んでいる。」とか,「特許侵害 に関する原告の訴因は本地区でのオリオン電機の活動に直接起因してい る。」として,不法行為地を本地区(デラウェア地区)に限定するものと 解される記載がある。また,上記(1)イのとおり,「B.被告の侵害行為」 欄には,「被告は訴訟対象の特許が取り扱う基盤技術を組み込んでいるデ ィスプレイ製品を米国内で製造し,使用し,使用されるようにし,売り出 し,販売しており,米国に輸入している(またはいずれか1つ)。」とか, 「被告は本地区を含めて米国でオリオン電機ならびに第三者の製造業者, 販売店,および輸入業者(またはいずれか1つ)により製造される,使用 される,使用されるようにしている,売り出される,販売される,または 米国に輸入される特許を侵害しているディスプレイ製品を購入している。」 として,「本地区を含めて米国で」の行為を侵害行為として整理している。 そうすると,別件米国訴訟で不法行為として主張されている対象行為は, 米国内における原告の行為であると認められる。
ウ この点につき,原告は,別件米国訴訟の訴状の「管轄区域および裁判地」 欄における「オリオン電機は本地区で特許侵害の不法行為をして本地区で 他の人が特許侵害を行うよう仕向けている(またはいずれか一方)。」との 記載等を指摘するが,上記イ説示の記載など別件米国訴訟の訴状全体の記 載を総合すれば,上記イのように認めるのが相当である。 エ したがって,民訴法3条の3第8号に基づき,本件訴えの管轄が日本の 裁判所にあると認めることはできない。 (なお,念のため付言すると,この点を措いても,被告が「別件米国訴訟に おいて本件米国特許権の侵害行為として日本国内における原告の行為は対象 としていない」旨主張している以上,本件訴えのうち,当該行為に基づく損 害賠償請求権の不存在確認を求める部分は,訴えの利益を欠くことになる。)

◆判決本文

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平成28(ネ)10020等  特許権移転登録手続請求控訴,同附帯控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年1月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁第3部は、特許移転請求の裁判管轄がない国での判決は、無意味と判断しました。
 しかしながら,一審原告が一審被告らに対して本件各特許権の移転登録手 続を求める訴訟が日本国の専属管轄に属し,韓国に国際裁判管轄が認められ ないことは,前記のとおりである。したがって,専属管轄に違背する以上, 本件韓国訴訟(専属管轄に反する部分)は不適法であったといわざるを得な いのであるから,そのような不適法な訴訟において,いかに本件契約の成否 が争われ,この点について確定的な判断がなされたとしても,それは意味の ないものであったというほかはなく(これは,本来審理判断をすることがで きないはずの裁判所が審理判断を行ったという重大な瑕疵に関わる問題なの であるから,これを単なる形式論として軽視しようとする一審原告の主張は 到底採用できない。),信義則により主張を制限する前提を欠く。また,一 審原告の提訴の負担についても,そもそも日本国の裁判所において提訴する 必要があったのであるから,理由にならないというべきである。
(3) 以上によれば,争点1に関する一審原告の主張は,採用することができな い。
3 争点2(本件合意書に関する紛争の準拠法は韓国法か,日本国法か)につい て
(1) 前記認定のとおり,本件合意書9条において,本件合意書に関して紛争が 生じた場合,その準拠法は韓国法と指定されているところ,本件サインペー ジには一審被告Y及びAの署名があること,本件サインページを返送する際 にAが作成した本件カバーレター(乙9)には,「1点を除いて,貴殿の申\nし入れを全て受け入れたい」との文言があり,一審被告らは,準拠法につい ては特に異議を述べる意思はなかったと認められること等の事情からすれば, 本件合意書による契約(本件契約)の成立及び効力については韓国法による というのが,当事者の合理的意思であったと推認するのが相当であり,かか る推認を覆すに足りる証拠はない。 したがって,本件の準拠法は,韓国法であるというべきである(法の適用 に関する通則法附則3条3項,旧法例7条1項)。
(2) これに対し,一審被告らは,準拠法の指定合意が無効であるとか,取り消 されるべきであるなどと主張する。 しかしながら,ここでは,本件契約に関する合意の成否や効力を問題とし ているのではないことはもとより,準拠法に関する合意の成否や効力を問題 にしているのでもなく,飽くまで本件契約の成否について争いが生じたとき に,いずれの国の法律によってこれを判断するのが当事者の合理的意思に合 致するかを探求しているにすぎないのであるから,かかる主張は失当である。 また,一審被告らは,1)本件合意書においては日本国の特許権及び特許出 願が対象となっていること,2)本件合意書が日本語で作成されていること, 3)A及び一審被告Yは日本で本件合意書に署名したことなどからして,本件 合意書に関して紛争が生じた場合の準拠法は,日本国法とされるべきである 旨主張する。 しかしながら,1)については,日本国の特許権等が対象であるとしても, 譲渡契約自体は国外でもできる以上,譲渡契約を締結する当事者の合理的意 思が必ず準拠法は日本国法によるとの意思であると解すべき根拠はないとい うべきであるし,2)についても,本件合意書は日本語(和文)のみならず英 文でも作成されているのであるから,必ずしも決め手となるものではない。 3)についても然りであり,A及び一審被告Yが日本で本件合意書に署名して いるとの点は,合理的意思解釈を行う際の一つの要素にはなり得ても,それ だけで決め手になるものではない。 結局,前記(1)で説示した事情によれば,本件の準拠法に関する当事者の 合理的意思解釈としては韓国法によるものと解するのが相当であり,一審被 告らの主張はかかる認定を覆すに足りないというべきである。
・・・・
以上によれば,一審原告が主張するその余の点,すなわち,Aには,本 件サインページに署名するに当たり,本件米国訴訟を解決する(本件米国 訴訟を取り下げてもらう)という明確な動機があったとする点や,Aは, 本件特許権1及び同3に係る発明を完成させる能力を有しておらず,同人\nはこれらの発明の発明者ではなかったとする点を考慮しても,一審被告ら による本件サインページの返送により,平成16年4月3日の時点で直ち に本件契約が成立したと認定することは困難というべきである。 したがって,主位的主張に関する一審原告の主張は,採用することがで きない。

◆判決本文

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