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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権(ネットワーク関連)

令和1(ワ)19689  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年2月25日  東京地方裁判所

 著作権侵害について発信者情報開示請求が認められませんでした。

(1) 争点2−1(本件発信者情報1は法4条1項1号の「当該権利の侵害に係 る発信者情報」に該当するか)について
原告は,本件投稿動画が投稿されたことにより原告動画に係る原告の公衆 送信権又は送信可能化権が侵害されたと主張しているところ,本件発信者情\n報1は,本件投稿行為から約1年8か月が経過した,平成31年4月28日 午後0時00分34秒(協定世界時)に本件サイトにログインした者の情報 であり,このログイン時に本件投稿行為が行われたものではないから,法4 条1項1号の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当しないことは明ら かである。 この点について,原告は,最終ログイン者が本件投稿動画の投稿者である 可能性が高いと主張するが,同人が,本件投稿動画が投稿された本件サイト\nに,ユーザ名とパスワードを用いてログインした者であるとしても,本件投 稿動画を投稿した者であると直ちに認定することはできず,本件投稿行為か ら同人のログインまで約1年8か月もの期間が経過していることも考慮すれ ば,同人と本件投稿動画を投稿した者が同一人物ではない可能性が相当程度\n残っており,その他,本件全証拠を精査しても,最終ログイン者が本件投稿 動画の投稿者であるとは認め難いというほかない。 また,原告は,仮に最終ログイン者が本件投稿動画を投稿した者ではない としても,投稿した者と密接に関連する者であり,省令が「発信者その他侵 害情報の送信に係る者」の情報も発信者情報に該当することを規定している ことからすれば,本件発信者情報1は開示の対象になると主張する。しかし, 本件において,最終ログイン者と本件投稿動画の投稿者がどのような関係に あるのかを的確に認めるに足る証拠はなく,また,法4条1項1号の「当該 権利の侵害に係る発信者情報」との文言,及び省令の「発信者その他侵害情 報の送信に係る者」という文言からは,その文言内容や規定振りに照らして, 本件投稿行為を行った者以外の者である最終ログイン者の情報が,原告が指 摘するような理由によって直ちに,開示の対象となる発信者情報に当たると いうことはできないというべきである。 以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができず,本件発信者 情報1は,法4条1項1号の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当し ない。
(2) 争点2−2(本件発信者情報2又は同3は法4条1項1号の「当該権利の 侵害に係る発信者情報」に該当するか)について
前記第2の1の前提事実によれば,本件発信者情報2及び同3は,平成3 1年4月28日午後00時00分34秒(協定世界時・最終ログイン時)に 本件サイトにログインがされた際の割当てに係るIPアドレスを,約1年8 か月前である本件投稿行為が行われた日時頃に割り当てられていた者に関す る情報である。 そして,原告は,このような本件発信者情報2又は同3に関し,本件投稿 行為が行われた日時頃に上記IPアドレスを割り当てられていた者は,本件 投稿行為をした者である可能性が高いものであるから,同人の情報に係る本\n件発信者情報2又は同3は,法4条1項1号の発信者情報に該当する旨主張 する。 しかし,前記(1)で説示したとおり,本件投稿行為から最終ログイン時まで は約1年8か月の期間があることなどを考慮すれば,最終ログイン者が本件 投稿動画の投稿者であると認め難いというほかなく,ひいては,最終ログイ ン時から約1年8か月も前である本件投稿行為が行われた日時頃に,本件サ イトへの最終ログインの際の割当てに係るIPアドレスを割り当てられてい た者が,本件投稿行為を行った者であるとも認め難いというほかない。 以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができず,本件発信者 情報2及び同3は,いずれも法4条1項1号の「当該権利の侵害に係る発信 者情報」に該当しない。

◆判決本文

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令和1(ワ)60 損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年11月18日  大阪地方裁判所

 漫画を違法アップロードしていた個人に対して、連帯して約1.6億円の損害賠償が認められました。裁判所は「電子書籍の価格構造における出版社の利益率は,配信プラットフォームの違いに応じた代表\的な複数の事例の中で,最も低いもので45%である」と認定しました。編集著作者としての講談社が原告です。一部の被告は欠席裁判でした。

 証拠(甲2,13)及び弁論の全趣旨によれば,原告が原告各雑誌を販売してい ること,その本体価格は別紙著作物目録の「本体価格(円)」欄にそれぞれ記載の とおりであることが認められる。 また,証拠(甲25の1〜25の4)によれば,平成27年〜平成30年にそれ ぞれ発行された調査報告書には,電子書籍の価格構造における出版社の利益率は,\n配信プラットフォームの違いに応じた代表的な複数の事例の中で,最も低いもので\n45%であることが認められる。本件各違法アップロード行為の対象となった原告 各雑誌に係る販売利益率がこの割合を下回ることをうかがわせる事情はないから, これが45%であるものとして算定することには十分な合理性がある。\n
(ウ) 逸失利益額
各雑誌に係るファイルごとのダウンロード数並びに雑誌ごとの本体価格及び販売 利益率を乗じると,1億5032万8192円となる。他方,被告P3は,「販売 することができないとする事情」(著作権法114条1項ただし書)について,何 ら主張立証していない。したがって,本件各違法アップロード行為による原告の逸 失利益額は,同額であると認められる。
イ 弁護士費用相当損害額
原告の逸失利益額(上記ア)その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告 らの本件各違法アップロード行為と相当因果関係に立つ弁護士費用相当損害額は, 1503万2819円と認めるのが相当である。

◆判決本文

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