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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権(ネットワーク関連)

平成26(ワ)3570  著作権 民事訴訟 平成26年06月25日 東京地方裁判所

 PtoPソフト(Gnutella互換ソ\フト)による著作権侵害についてレコード会社が、プロバイダに対して、発信者情報の開示を求めました。裁判所はこれを認めました。
 被告は,無関係の第三者が契約者のIPアドレスや端末を不正に利用した可能性や,契約者の端末が暴\露ウィルスに感染した場合など,契約者の意思によらず送信可能になった可能\性もあるから,上記IPアドレスの割当てを受けた契約者がプロバイダ責任制限法2条4号にいう「発信者」に該当するとは限らない旨主張するが,被告が主張するような事情は飽くまで一般的抽象的な可能性を述べるものにすぎず,本件全証拠によっても,これら不正利用や暴\露ウイルスへの感染等を疑わせる具体的な事情は認められない。そして,前記1(4)エのとおり,被告から「219.108.203.208」のIPアドレスの割当てを受けた者により,それぞれインターネットに接続され,Gnutella互換ソフトウェアによって,インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にされ,本件システムにより本件ファイル1及び2がダウンロードされたものであるから,上記IPアドレスを使用してインターネットに接続する権限を有していた契約者を「侵害情報の発信者」であると推認するのが合理的であり,契約者のIPアドレス等の不正利用や暴\露ウィルスへの可能性などの一般的抽象的可能\性の存在が,上記認定の妨げになるものとは認められないというべきである。(4) 以上の検討によれば,本件利用者1及び2は,原告レコード1及び2の複製物である本件ファイル1及び2をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し,Gnutella互換ソフトウェアにより,本件ファイル1及び2をインターネットに接続している不特定の他の同ソ\フトウェア利用者(公衆)からの求めに応じて,インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にしたことが認められるから,本件利用者1及び2の上記行為は,原告らが原告レコード1及び2について有する送信可能化権を侵害したことが明らかであると認められる。そして,原告らは,原告ら各自が原告レコード1及び2について有する送信可能\化権に基づき,本件利用者1及び2に対して損害賠償請求及び差止請求を行う必要があるところ,本件利用者1及び2の氏名・住所等は原告らに不明であるため,上記請求を行うことが実際上できない状態にあることが認められる。〔甲1の1,2,甲4,5〕したがって,原告らには,被告から本件利用者1及び2に係る発信者情報(氏名,住所及び電子メールアドレス)の開示を受けるべき正当な理由がある。

◆判決本文

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 >> 著作権(ネットワーク関連)
 >> 発信者情報開示

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平成21(ワ)16019 著作権 民事訴訟 平成26年03月14日 東京地方裁判所

 データベースの著作物について、創作性が認められ、公衆送信権侵害、複製権侵害が認められました。判決文が260頁をこえてます。損害額も1億円を超えてます。

 このように,データベースとは,情報の集合物を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいうところ,前記第2,1の前提事実及び前記1で認定した事実によれば,原告CDDBは,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能\を持ついわゆるリレーショナル・データベースである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるデータベースであるから,情報の選択又は体系的な構\成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。上記のような観点も踏まえ,原告CDDBのようなリレーショナル・データベースについて情報の選択に創作性があるというためには,データベースの主題,用途やデータベースの提供対象等を考慮して決定された一定の収集方針に基づき収集された情報の中から,更に一定の選定基準に基づき情報を選定することが必要であり,また体系的構\成に創作性があるというためには,収集,選定した情報を整理統合するために,情報の項目,構造,形式等を決定して様式を作成し,分類の体系を決定するなどのデータベースの体系の設定が行われることが必要であると解される。ただし,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構\成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,制作者の個性が表\れていることをもって足りるものと解される。
(2) 次に,著作物の複製ないし翻案については,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうとされているところ(著作権法2条1項15号),著作物の複製は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的な表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解される。また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して作成又は創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないというべきである。データベースについては,情報の選択又は体系的な構\成によって創作性を有するものは,著作物として保護されるものであるところ(著作権法12条の2),上記のとおり,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表\れ,制作者の個性が表れていることをもって足りるものあるが,データベースの著作物として保護されるのはあくまでも,具体的なデータベースに表\現として表れた情報の選択や体系的構\成であって,具体的な表現としての情報の選択や体系的構\成と離れた情報の選択の方針や体系的構成の方針それ自体は保護の対象とはならないというべきである。\n
・・・
 前記認定のとおり,原告CDDBは,それまで存しなかった団体旅行の行程検索・行程表作成のため,顧客である旅行業者等からのヒアリングや寄せられた要望等に基づき,出発地,到着地,交通手段,経由地である観光施設,宿泊施設をデータベース化してこれをコンピュータで効率よく検索できるようにするためのデータベースであるところ,上記被告CDDB(当初版・2006年版)と共通するテーブルに関してみると,原告CDDBの「01市区町村テーブル」,「32駅テーブル」,「20ホテル・施設テーブル」,「21観光施設テーブル」,「09地点名テーブル」,「11接続テーブル」及び「10道路テーブル」により,出発地,経由地,目的地に面した道路に関するデータの検索を可能\にし,次に「09地点名テーブル」,「10道路テーブル」,「11接続テーブル」,「12禁止乗換テーブル」,「14区間料金テーブル」及び「15首都高速料金テーブル」により,道路を利用した移動に関する経路探索・料金の算出に必要なデータの検索を可能にしていること,また,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」,「22観光設備備考テーブル」,「05緯度経度テーブル」,「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」及び「08URL分類テーブル」により,ホテル・旅館,観光施設に関する情報を検索することを可能\にしていること,そして,「01市区町村テーブル」及び「02地区・県名テーブル」は,道路と地図を関連付ける情報として,地図から検索をするときに用いられていること,「01市区町村テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」及び「32駅テーブル」には施設等の近辺の道路地点の情報が代表道路地区コードや代表\道路地点番号として格納されており,当該市区町村内にあるこれらの施設や駅などを選ぶことを通じて,「09地点名テーブル」の必要な道路地点を選ぶことができること,観光施設も「21観光施設テーブル」から選択し,絞り込みは,「02地区・県名テーブル」,「01市区町村テーブル」から行うことができること,観光施設の名称は「21観光施設テーブル」に,検索結果の観光施設について,当該観光施設に関する様々の情報は,「22観光施設備考テーブル」に格納されており,観光施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」から参照可能であり,最終的に行程に入れるかどうかを判断することができること,が認められる。また,宿泊施設については,「20ホテル・旅館テーブル」から選択し,地区は「02地区・県名テーブル」,都道府県も同じく「02地区・県名テーブル」,市区町村は「01市区町村テーブル」,地図上の範囲設定は,地図ソ\フトと「05緯度経度テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」により,宿泊種別は「20ホテル・旅館テーブル」,名称は「20ホテル・旅館テーブル」,検索結果の宿泊施設については当該宿泊施設に関する様々な情報,すなわち,和室,洋室の客室数,収容人員,料金,付帯施設,駐車場などが「20ホテル・旅館テーブル」に格納されていて,当該宿泊施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」が対応し,これらを参照して,ユーザーである旅行会社ないしその顧客の判断で行程等を決めることができることが認められる。以上のとおり,これら共通するテーブルについては,いずれも各テーブルを構成するフィールドにつき,原告CDDBと,被告CDDB(当初版・2006年版)とでほとんどが共通し,リレーションのとり方もほぼ共通するものである。そして,両者で共通するこれらの体系的構\成は,原告CDDBの制作者において,それまでのデータベースにはなかった設計思想に基づき構成した原告CDDBの創作活動の成果であり,その共通する部分のみでデータベースとして機能\し得る膨大な規模の情報分類体系であると認められ,データベースとして制作者の個性が表現されているものということができる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの体系的構\成としての創作性を有するものと認めるのが相当である。
・・・・
(ア) 前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とでは,情報項目としてのテーブル,フィールドの設定について,被告CDDB(当初版・2006年版)のテーブル数31個のうちの,28個においてテーブルが一致している。そして,フィールド項目についても,318個のフィールドのうち,252個のフィールドが一致している。(イ) そして,前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とで一致する,地点名テーブルの道路情報,緯度経度情報,接続テーブル及び禁止乗換テーブルの情報,県範囲定義テーブルの各情報は,いずれも原告CDDBの制作者において,前記認定のとおり,それぞれ選択の幅のある中から一定の選択方針に基づき選定し,あるいは全く任意に番号等設定したものであり,それぞれ創作性を有するものと認められる。(ウ) さらに,原告CDDBにおいては,前記のとおり,旅行会社に対する実情調査等の結果を踏まえ,主たる目的として,大型観光バスによる団体旅行を主眼とした行程表作成のための便宜から,通常使用されるロードマップとは異なる観点である,貸切観光バスが通行するのに適した道路として,都道府県道については約10%,市区町村道では約0.004%程度を選択して「10道路テーブル」に格納し,道路地点として選択した地点における情報も緯度及び経度のデータとして格納することとし,これを大型観光バスが通過するのに適切と考えられる道路のうちの,行程表\を作成する上で必要と考えられる適切な地点である,交差点,インターチェンジ,サービスエリア,パーキングエリア,観光施設,宿泊施設,駅,役所等の代表道路地点とするのに適切な地点を選別し,パソ\コンのマウスを地図上でクリックする方法で選択して,実際に入力したものである。また,施設と関係する代表道路地点の選択においても,施設が存する場所の緯度経度による地点ではなく,大型観光バスでの出入りの観点から,当該施設の近辺の道路地点を選び,当該施設の代表\道路地点として適宜設定している。このように,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)との共通部分である,道路,道路位置,代表道路地点等の選別・選択についても,原告CDDBの制作者による創作活動の成果が表\れており,創作者の個性が表現されているものといえる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの情報の選択としての創作性を有するものと認めるのが相当である。(エ) そして,これら被告CDDB(当初版・2006年版)が原告CDDBと同一性を有する情報の選択に関する部分も,原告CDDBの創作的表現の本質的特徴を直接感得することのできる同一性が維持されているものというべきである。\n

◆判決本文

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