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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

発信者情報開示

平成27(ワ)17928  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年9月15日  東京地方裁判所

 発信者情報開示請求です。争点は、リツイートする行為が著作権侵害かです。裁判所はリツィートの仕組みから判断して、公衆送信には該当しないと判断しました。
 前記前提事実(3)ウ及び(4)記載のとおり,本件写真の画像が本件アカウント 3〜5のタイムラインに表示されるのは,本件リツイート行為により同タイ\nムラインのURLにリンク先である流通情報2(2)のURLへのインラインリ ンクが自動的に設定され,同URLからユーザーのパソコン等の端末に直接\n画像ファイルのデータが送信されるためである。すなわち,流通情報3〜5 の各URLに流通情報2(2)のデータは一切送信されず,同URLからユーザ ーの端末への同データの送信も行われないから,本件リツイート行為は,そ れ自体として上記データを送信し,又はこれを送信可能化するものでなく,\n公衆送信(著作権法2条1項7号の2,9号の4及び9号の5,23条1 項)に当たることはないと解すべきである。 また,このようなリツイートの仕組み上,本件リツイート行為により本件 写真の画像ファイルの複製は行われないから複製権侵害は成立せず,画像フ ァイルの改変も行われないから同一性保持権侵害は成立しないし,本件リツ イート者らから公衆への本件写真の提供又は提示があるとはいえないから氏 名表示権侵害も成立しない。さらに,流通情報2(2)のURLからユーザーの 端末に送信された本件写真の画像ファイルについて,本件リツイート者らが これを更に公に伝達したことはうかがわれないから,公衆伝達権の侵害は認 められないし,その他の公衆送信に該当することをいう原告の主張も根拠を 欠くというほかない。そして,以上に説示したところによれば,本件リツイ ート者らが本件写真の画像ファイルを著作物として利用したとは認められな いから,著作権法113条6項所定のみなし侵害についても成立の前提を欠 くことになる。 したがって,原告の主張する各権利ともその侵害が明らかであるというこ とはできない。 これに対し,原告は,本件リツイート行為による流通情報2(2)のURLか らクライアントコンピューターへの本件写真の画像ファイルの送信が自動公 衆送信に当たり,本件リツイート者らをその主体とみるべきであるから,本 件リツイート行為が公衆送信権侵害となる旨主張する。 そこで判断するに,本件写真の画像ファイルをツイッターのサーバーに入 力し,これを公衆送信し得る状態を作出したのは本件アカウント2の使用者 であるから,上記送信の主体は同人であるとみるべきものである(最三小判 平成23年1月18日判決・民集65巻1号121頁参照)。一方,本件リ ツイート者らが送信主体であると解すべき根拠として原告が挙げるものにつ いてみるに,証拠(甲3,4)及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターユー ザーにとってリツイートは一般的な利用方法であること,本件リツイート行 為により本件ツイート2は形式も内容もそのまま本件アカウント3〜5の各 タイムラインに表示されており,リツイートであると明示されていることが\n認められる。そうすると,本件リツイート行為が本件アカウント2の使用者 にとって想定外の利用方法であるとは評価できないし,本件リツイート者ら が本件写真を表示させることによって利益を得たとも考え難いから,これら\nの点から本件リツイート者らが自動公衆送信の主体であるとみることはでき ない。

◆判決本文

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平成27(ワ)7540  発信者情報開示請求  著作権  民事訴訟 平成28年3月15日  大阪地方裁判所

「アクシスフォーマー.com」のPunycode(ピュニコード)のドメイン名を使用する行為が不競法2条1項12号の不正競争に該当するかが争われました。裁判所は、原告の特定商品等表示と類似のドメイン名であるとして、プロバイダーに発信者情報の開示を命じました。
 本件日本語ドメイン名の「アクシスフォーマー.com」のうち,「.com」の 部分はいわゆるトップレベルドメインであって識別力が弱いから,本件日本 語ドメイン名の要部は,「アクシスフォーマー」の部分であるところ,これ は,不正競争防止法2条1項12号の特定商品等表示に該当する原告製品の\n名称と同一であるから,本件日本語ドメイン名は,認められる。
・・・
ところで原告製品の購入を検討しようとする需要者がインターネットを利 用する場合,原告製品名である「アクシスフォーマー」を検索ワードとして, グーグル等の検索エンジンを利用して検索するのが一般的と考えられるが, 本件サイトは,本件日本語ドメイン名に「アクシスフォーマー」を含むもの であるから,本件サイトは検索結果として上位になり,またそのドメイン名 から目的とする検索サイトであると理解されるので,上述のアクシスフォー マーという原告製品名を手掛かりにしてインターネット検索をした一般的な 需要者は,必然的に本件サイトに誘導されたものと認められる。 そして,一旦,本件サイトにアクセスした場合,本件サイトは,確かに原 告製品を販売商品として取り扱うサイトであるので,その内容に注目して閲 覧することになるが,本件サイトのウェブページの記載内容は,一般的な商 品取扱いサイトのように取扱商品の優秀性を謳うものではなく,上記(2)にみ られるように,原告製品が問題のある商品というだけでなく,それを製造販 売する原告さえも問題があるようにいうものである。すなわち,被告は,本 件発信者が大量の原告製品を抱えてこれを販売するために本件サイトを開設 したように主張するが,その本件サイトでは,原告製品に興味を持ち,その 購入を検討しようとしてインターネットを利用してアクセスしてきた需要者 に対し,ウェブページの随所において,需要者の購入意欲を損なうことを意 図しているとしか考えられない内容の記載をしているのであり,また,その 記載は,併せて製造者としての原告の信用を損なうことをも意図していると 解さざるを得ないものである。結局,これらのことからすると,本件サイト は,被告が主張するような原告製品の販売促進を意図したものではなく,む しろ原告が主張するように,原告に「損害を加える目的」で開設されたサイ トであると断ぜざるを得ないというべきである。
(4) したがって,本件サイトの契約者である本件発信者は,他人に損害を加え る目的で,原告の特定商品等表示である原告製品の名称と類似の本件日本語\nドメイン名を使用したものであり,これは不正競争防止法2条1項12号の 不正競争に当たる。

◆判決本文

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平成27(ワ)21233  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年1月29日  東京地方裁判所

 著作権侵害を根拠に発信者情報開示が認められました。
 このように,翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物とを対比した場合に同一性を有する部分が,著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であるところ,「創作的」に表\現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,筆者の個性が何らかの形で表れていれば足りるというべきである。そして,個性の表\れが認められるか否かについては,表現の選択の幅がある中で選択された表\現であるか否かを前提として,当該著作物における用語の選択,全体の構成の工夫,特徴的な言い回しの有無等の当該著作物の表\現形式,当該著作物が表現しようとする内容・目的に照らし,それに伴う表\現上の制約の有無や程度,当該表現方法が,同様の内容・目的を記述するため一般的に又は日常的に用いられる表\現であるか否か等の諸事情を総合して判断するのが相当である。
・・・
(3) また,本件記事2は,これまで台湾における「五術」に関わり,その際に不快な思いもしたものの,新たな試験ができたことで時代が変わり始めたなどと表現した文章であって,一つの文(文字数にして143文字)からなるものである。その表\現においては,用語の選択,全体の構成の工夫,特徴的な言い回しなどにおいて,一見して作者の個性が表\れていることは明らかである。これに対し,本件情報14ないし17は三つの文からなる文章であるが,このうち第1文は,やはり,台湾における「五術」に関わり,その際にあきれたこともあったものの,新たな制度ができたことで時代が変わったなどと表現した文章であって,文字数にして123文字からなるものであり,具体的表\現についてみても,本件情報14ないし17の第1文の表現は本件記事2の表\現と相当程度一致しており,その違いは,本件情報14及び15では31文字,本件情報16及び17では32文字でしかなく(別紙対比表2参照),「台湾における五術」,「江湖派理論」,「宗教による術数を利用した」「金儲けを目撃する度に」など,用語の選択,全体の構\成,文字の 配列,特徴的な言い回しにおいて酷似している。そして,その相違部分の内容をみても,本件記事2のうち「五術」の「学術発表にかかわって」という点を,本件情報14ないし17においては「五術」の「詐欺\発表にかかわって」に,「とても不愉快な文化の冒涜・歪曲」という点を「とても愉快な文化の笑い話・小話」に,「胸くそが悪かったのですが」という点を「呆れたのですが」に,「国家規模での認定試験」という点を「国家機関での検閲制度」に置き換えているにすぎない。\nしたがって,本件情報14ないし17は,本件記事2に依拠したうえで,同記事の内容を批判するか揶揄することを意図して上記異なる表現を用いたものといえるのであって,仮に上記相違部分について作成者の何らかの個性が表\れていて創作性が認められるとしても,他に異なる表現があり得るにもかかわらず,本件記事2と同一性を有する表\現が一定以上の分量にわたるものであって,本件記事2の表現の本質的な特徴を直接感得することができるものであるから,翻案権侵害に当たることが明らかであるというべきである。
(4) 以上のとおり,本件情報1ないし17は原告の翻案権を侵害することが明らかである。 また,そうである以上,本件情報1ないし17を本件ウェブサイトに発信する行為は,原告の公衆送信権を侵害するものであることも明らかというべきである。

◆判決本文

◆こちらが対象の表現です。

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