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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

創作容易性

平成27(行ケ)10004  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成27年7月9日  知的財産高等裁判所

 パチンコ、スロットマシンなど画面の意匠(部分意匠)について、創作容易でないとした審決が維持されました。
上記のとおり,差異点(エ)とは,大型数字表示部の下側から右側にかけて倒L\n字状に設けられた2〜3桁の小型数字表示部の配列の差異をいうところ,この小型\n数字表示部は,表\示画面中央上辺寄りに設けられた3桁の大型数字表示部(差異点\n(イ)),表示画面左側上辺寄りに設けられた4桁の中型数字表\示部(差異点(ウ)), 表示画面左側下辺寄りに設けられたドット表\示部と共に,本件部分意匠の美感上の 特徴の一部,すなわち,極めて目立つ大型数字表示部を上辺の中心に置き,その周\n囲に比較的小さな各種データ表示部を配置するという特徴を構\成している要素であ る。 ところが,この差異点(エ)に係る倒L字状の数字表示部群,すなわち,小型数\n字表示部の形態は,引用部分意匠2〜5のいずれにも見られないものであり,また,\n通常の需要者の視覚を通じて生じる美感を基準とする限り,引用部分意匠1の区域 4)〜8)を倒L字状の数字表示部群ととらえることもできない。そして,この倒L字\n状の形態が,ありふれた手法に基づくものであるとか,又は特段の創意を要さない で創作できるとは認め難い(シンプルであるからといって,直ちに,創作が容易で あるとか,美感への影響が微弱であるとはいえない。)。 原告の主張するように,数字表示部の桁数,数字表\示部の大きさ,又は数字表示\n部の配置を多少変更させることは,個別に分断して検討すれば,それほどの創意工 夫とはいえないであろうが,これらを全体的に観察すると,大型数字表示部に隣接\nして配置された多数の数字よりなる小型数字表示部が,倒L字状のものとして,一\n体の美感を形成しているのである。
(2) 差異点(イ)について
前記のとおり,差異点(イ)とは,表示画面中央上辺寄りに設けられた3桁の大\n型数字表示部の有無をいうところ,この形態は,引用部分意匠2〜5のいずれにも\n見られない。また,この形態が,ありふれた手法に基づくものであるとか,又は特 段の創意を要さないで創作できるとは認め難い。 原告は,引用部分意匠2に差異点(イ)に係る構成が顕れている旨を主張する。\nしかしながら,本件部分意匠の大型数字表示部は,表\示画面の最上段に配置され ているところ,引用部分意匠の3桁の大型数字表示部は,表\示画面上方寄りには配 置されているものの,最上段のドット表示部よりは下に配置されているのであり,\n大型数字表示部の配置された位置は,両者で異なるものである(このような数字表\ 示部の配置の入替え〔左右上下前後反転のようなものは含まない。〕と,上記(1)に 説示した数字表示部の単なる配置の変更とは区別されなければならない。)。しかも,\n本件部分意匠では,小型数字表示部及び中型数字表\示部という二段階の対象数字表\n示部との比較において,大型数字表示部の大きさがより強調されているものである。\n数字を大きくすること自体がありふれた手法であるとしても,ありふれた手法に 基づく複数の構成要素を組み合わせることによっても新たな美感は生じ得るのであ\nり,そして,その組合せにこそ創意が発揮されるのである。したがって,意匠の構\n成要素の位置を異にする意匠から,その位置を捨象した構成要素のみを取り出して\nその創意を論じることは,相当ではない。

◆判決本文

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