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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

創作容易性

◆平成19(行ケ)10209等 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟

 創作容易であるとした審決が、取り消されました。裁判所は、下記の付言を呈しました。
  「付言(審判の審理構造及び審理対象に関して)
 意匠登録出願に係る拒絶査定に対する審判の審理の対象は,意匠法17条所定の意匠登録を拒絶すべき事由が存在するか否かである。審判の対象は,審査の過程で審査官が発した「拒絶理由の通知」の当否でもなく,また,拒絶査定に係る拒絶理由の当否でもなく,さらに,請求人の主張の当否でもない。この点は,審判体において,自ら意匠登録をすべき旨の審決ができること(意匠法50条2項),拒絶査定の理由と異なる理由で拒絶すべき旨の審決をすることができること(同条3項)等の法条が設けられていることから明らかである。審判体において,拒絶査定不服審判の請求が成り立たないとの結論を導くためには,意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項,2項など)のいずれかに該当する理由(該当するとの判断に至った論理の過程)を明示することを要する。そして,同条項に該当すると判断するに至った論理の過程を明示するということは,審判体において,?@前提となる法律の解釈に疑義がある場合には,当該法条の解釈を示すこと,?A法条の要件に該当する事実が存在することを明らかにすること,?B事実を法条に適用した結果として,意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項,2項など)に該当するとの論理の過程が成り立つ点を明示することを含む。審判体は,この論理過程を説明する責任を負担し,文書をもって明示することを要する(意匠法52条,特許法157条)。
 ところで,審決書(1)及び(2)を見ると,その「理由」には,「原審の拒絶理由」欄で,拒絶査定に係る拒絶理由の要旨が記載され,「請求人の主張」欄で,拒絶査定を不服とする請求人の主張が記載され,「当審の判断」欄の「請求人の主張の採否について」との項目で,請求人の主張の当否が記載され,同欄の「原審の拒絶理由の妥当性について」との項目で,拒絶理由の当否が記載されてはいるものの,審判体の判断の論理過程を直接的に示した記載部分はなく,結論として,同欄の「本願意匠の創作の容易性について」との項目において,「以上の検討によれば,請求人の主張は採用することができず,原審の拒絶理由は妥当であるから,本願意匠は,出願前に当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作をすることができなものであるといわなければならない」との記載がされているのみである。
 このような審決書(1)及び(2)の理由記載は,その体裁だけで直ちに審決の違法を来すとの結論を導くものであるか否かはさておき,審判体が,本願部分意匠又は本願全体意匠が意匠法3条2項に該当すると判断した論理の過程を的確に示したものということはできない。すなわち,審決書(1)及び(2)の理由は,論理付けの根拠とは無関係かつ不要な事項を含み,審判体の判断の基礎となる論理付けが明りょうでなく,審判の構造に対する誤った認識に基づいた判断であるとの疑念を生じさせるという意味において,妥当を欠くものといえる(特に本件では,少なくとも拒絶理由通知における理由部分は,僅か5行ないし7行からなる,ごく簡単で定型的な記載にすぎないから〔甲13の1,2〕,審判体において,そのような理由が妥当であるとの判断に至ったからといって,当然に,審判体としての結論に至る論理付けとして十\分であるとすることはできない。)。上記の趣旨は,一般の審決書における理由記載においても,同様に留意を要すべき点であるといえる。」

◆平成19(行ケ)10209等 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成19年12月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成19年06月13日 知的財産高等裁判所

   先行意匠から創作容易であるとして拒絶した審決が取り消されました。
  「被告は,?@細長い棒状のピンの中央部の上側に左右対称状に向かい合う一対の小突起をロープ止め突起として形成した態様のものが多数見られること,?A連結紐を2本一対として一体状に形成することも普通に行われること,?B2本の連結紐の間隔を適宜変更して形成することはありふれた手法であることを理由に,連結紐部分を2本一対の連結紐に置き換えることは容易であるから,本願意匠も,当業者にとって容易に創作できたと主張する。しかし,本願意匠のうち個々の構成態様が,ありふれているものであっても,本願意匠は,2本の連結紐をロープ止め突起近くに配設し,その結果それぞれの連結紐とロープ止め突起との間にほぼ三角形に空間を形成すると共に,2本の連結紐の間隔を広くして2本の連結紐と上下のピンの間にロープを配置できる広さを有する横長長方形空間を形成したものであって,その全体の印象として,特有のまとまり感のある,本願意匠の特徴を選択することは,当業者が容易に創作し得たとはいえないから,被告の上記主張は理由がない。もっとも,本願意匠は,例示意匠1,例示意匠2やその他の公知意匠との相違点に照らすと,その登録意匠の範囲(意匠法24条)は,広範なものとはいえないと考えられる。 以上のとおり,本願意匠は,例示意匠1及び例示意匠2によって当業者が容易に創作することができたということはできない。」

◆平成19(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成19年06月13日 知的財産高等裁判所

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