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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

用語解釈

平成27(ワ)12415  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年12月2日  東京地方裁判所(40部)

 医薬品特許における「解離シュウ酸」は「緩衝剤」には当たらないとして、イ号は、技術的範囲外と判断されました。
 (1) 本件発明2における「緩衝剤」は,添加されたシュウ酸またはそのアルカ リ金属塩をいい,オキサリプラチンが分解して生じた解離シュウ酸は「緩衝 剤」には当たらないと解することが相当である。理由は以下のとおりである。 (2)ア 化学大事典2(乙13)によれば,「緩衝剤」とは,「緩衝液をつくる ために用いられる試薬の総称」をいうものとされている。そして,広辞苑 第六版によれば,「試薬」とは「実験室などで使用する純度の高い化学物 質」であるところ,解離シュウ酸が「純度の高い化学物質」である「試薬」 に当たるとは考えがたいから,解離シュウ酸は一般的な意味で「緩衝剤」 とはいえないというべきである。
イ 次に,本件明細書2の段落【0022】には,「緩衝剤という用語は, 本明細書中で用いる場合,オキサリプラチン溶液を安定化し,それにより 望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオD ACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあらゆる酸 性または塩基性剤を意味する。」と記載されている。 上記記載において,「緩衝剤」は,「酸性または塩基性剤」であると定 義されているが,広辞苑第六版によれば,「剤」とは「各種の薬を調合す ること。また,その薬。」を意味するから,「酸性または塩基性剤」は, 酸性または塩基性の各種の薬を調合した薬を意味すると考えることが自然 であるところ,解離シュウ酸は,「各種の薬を調合した薬」に当たるとは いえない。 ウ そして,本件明細書2の段落【0013】後段ないし【0016】には, オキサリプラチンが水性溶液中で分解してジアクオDACHプラチンを不 純物として生成することが記載されているが,オキサリプラチンが分解す ると,次の式のとおり,シュウ酸イオンとジアクオDACHプラチンが生 じる。また,証拠(乙39)によれば,分解により生じたシュウ酸イオン は,一部がプロトン化されてシュウ酸又はシュウ酸水素イオンになること が認められる。 したがって,オキサリプラチンの分解によりシュウ酸イオン等が生じた ということは,すなわちオキサリプラチン水溶液において不純物が生じた ことを意味するから,仮にオキサリプラチンの分解により生じた解離シュ ウ酸が「緩衝剤」に当たるとすると,緩衝剤が防止すべき分解により生じ たものが緩衝剤に当たるということになってしまい,上記イの「望ましく ない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプ ラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得る」という緩衝剤の定 義と整合しない。 エ 前記3(2)のとおり,本件発明2は,乙14発明よりも不純物が有意に少 ない,より安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することを目的とす るものである。 ところが,本件明細書2をみると,実施例18において生成される不純 物の量と比較して,シュウ酸を添加した実施例(ただし,実施例1及び8 を除く。なお,実施例1及び8は,後記(3)エのとおり,本件発明2の技術 的範囲に含まれる実施例ではない。)において生成される不純物の量は有 意に少ないことが示されている。ここで,実施例18は,豪州国特許出願 第29896/95号(1996年3月7日公開)に記載されている水性 オキサリプラチン組成物であるが,上記出願は,乙14発明に対応するも のであるから,実施例18は乙14発明と実質的に同一であると推認され る。 したがって,本件発明2は,乙14発明とは異なり,オキサリプラチン 溶液組成物に緩衝剤を添加したことによって,不純物が少なく,より安定 な溶液組成物を提供することができたことを特徴とする発明と考えるのが 自然である。
オ 本件明細書2には,実施例1ないし17については,シュウ酸が付加さ れていることが明記されている。また,本件明細書2(段落【0039】, 【0041】〜【0045】,【0047】,【0064】)では,実施 例1ないし17について,添加されたシュウ酸のモル濃度が記載されてい るが,解離シュウ酸を含むシュウ酸のモル濃度は記載されていない。 さらに,本件明細書2は,「緩衝剤」である「シュウ酸」に,オキサリ プラチンが分解して生じた解離シュウ酸が含まれることを示唆する記載は ない。 この点に関して原告は,構成要件2Gの数値範囲の下限(5×10−5M)\nが,本件明細書2記載の実施例1及び8で示された下限(1×10−5M) よりも大きいことをもって,請求項1は解離シュウ酸を考慮したものであ ると主張するが,本件明細書2には,1×10−5Mのシュウ酸を添加した オキサリプラチン溶液中のシュウ酸イオン等のモル濃度がどの程度になる かに係る記載は何ら存在しておらず,原告の上記主張は裏付けを欠く独自 の見解というほかない。 以上からすると,本件明細書2の記載においては,解離シュウ酸につい ては全く考慮されておらず,緩衝剤としての「シュウ酸」は添加されるも のであることを前提としているというべきである。 カ また,本件明細書2における実施例18(b)に関する記載をみると,「比 較のために,例えば豪州国特許出願第29896/95号(1996年3 月7日公開)に記載されているような水性オキサリプラチン組成物を,以 下のように調製した」(段落【0050】前段),「比較例18の安定性」 「実施例18(b)の非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物を,40℃で 1ヶ月間保存した。」(段落【0073】)といった記載がある。そして, 前記エのとおり,豪州国特許出願第29896/95号(1996年3月 7日公開)は乙14発明と実質的に同一であるから,上記各記載を総合す ると,実施例18(b)は,「実施例」という用語が用いられている部分 が多いものの,その実質は本件発明2の実施例ではなく,本件発明2と比 較するために,「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」,すなわち,緩 衝剤が用いられていない従来既知の水性オキサリプラチン組成物を調製し たものであると認めるのが相当である。 そうすると,本件明細書2において,緩衝剤を添加しない水性オキサリ プラチン組成物に関する実施例18は,本件発明2の実施例ではなく,比 較例として記載されているというべきである。 キ さらに,証拠(乙64,65)によれば,本件特許2の出願人が,本件 特許2に対応する米国特許出願(乙64)について,米国特許庁に提出し た意見書(乙65)において,「甲等の水溶液組成物(本願21頁に記載 されている甲等の組成物(比較例18)についての安定性データを参照) において見出されるよりも有意に少ない量でこのような不純物を生成する オキサリプラチンのより安定な溶液組成物が,オキサリプラチンの溶液組 成物に有効安定化量の緩衝剤を加えることにより得られることを,出願人 は予想外にも見出したのである。」などと記載し,緩衝剤が添加されるも\nのであること及び実施例18が比較例であることを前提とした主張をして いたことが認められる。 また,証拠(甲36)によれば,本件特許に対応するブラジル特許出願 に関し,出願人が,ブラジル特許庁に提出した拒絶処分に対する不服申立\nてにおいて,「本願発明にあるシュウ酸を緩衝剤として加えれば,不純物 が発生しないということである。」と,緩衝剤を添加する旨の主張をして いたことが認められる。 これらのことは,本件発明2においても,緩衝剤とは添加されたものに 限られると解されることの裏付けとなる事実であるというべきである。

◆判決本文

関連事件(同一特許、異被告)です。

◆平成27(ワ)28699等

◆平成27(ワ)29001

◆平成27(ワ)29158

同一特許の別訴事件で、1審(平成27(ワ)12416号)では技術的範囲内と判断されましたが、知財高裁はこれを取り消しました。

◆平成28(ネ)10031

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平成28(ワ)15355  特許権侵害に基づく損害賠償請求事件  民事訴訟 平成28年10月31日  東京地方裁判所

 「緩衝剤」の文言について、技術的見地、明細書の記載、先行技術などから判断し、技術的範囲に属しないと判断されました。
a 以上のとおり,本件明細書が,「オキサリプラチンの従来既知の水性組成物」 を従来技術として開示し,これよりも,本件発明1の組成物は「生成される不純物, 例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体が少ない ことを意味する。」と記載していること,解離シュウ酸は,オキサリプラチンが溶 液中で分解することにより,ジアクオDACHプラチンと対になって生成されるも のであること,本件発明1の発明特定事項として構成要件1Gが限定する緩衝剤の\nモル濃度の範囲に関する具体的な技術的裏付けを伴う数値の例として,本件明細書 は,添加されたシュウ酸又はシュウ酸ナトリウムの数値のみを記載し,解離シュウ 酸のモル濃度を何ら記載していないこと,本件明細書には,専ら,「緩衝剤」を外 部から添加する実施例のみが開示されていると解されること,請求項1は,「シュ ウ酸」と「そのアルカリ金属塩」とを区別して記載し,さらには「緩衝『剤』」と いう用語を用いていることなどをすべて整合的に説明しようとすれば,本件発明1 における「緩衝剤」は,外部から添加されるものに限られるものと解釈せざるを得 ない。
すなわち,本件発明1は,専ら,オキサリプラチン水溶液に,緩衝剤として,シ ュウ酸又はそのアルカリ金属塩を添加(外部から付加)することにより,オキサリ プラチン溶液中のシュウ酸濃度を人為的に増加させ,平衡に関係している物質の濃 度が増加すると,当該物質の濃度が減少する方向に平衡が移動するという原理(ル シャトリエの原理)に従い,結果として,オキサリプラチン溶液中におけるジアク オDACHプラチン及びジアクオDACHプラチン二量体などの望ましくない不純 物の量を,シュウ酸又はそのアルカリ金属塩を添加(外部から付加)しない場合よ りも,減少させることを目した発明と把握するべきであり,そのように把握するこ とにより,初めて,本件明細書の段落【0031】が「本発明の組成物は,オキサ リプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定であることが判明して おり,このことは,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物の場合よりも本発明 の組成物中に生成される不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオ DACHプラチン二量体が少ないことを意味する。」と記載していることや,本件 明細書には,シュウ酸又はシュウ酸ナトリウムを,構成要件1Gが規定する数値の\nモル濃度だけ,オキサリプラチン溶液に「添加」する実施例のみが開示されている こと,さらには,本件明細書に開示された実施例において,解離シュウ酸の量を明 記していないことや,他の不純物の量から解離シュウ酸の量を推計することを示唆 する記載すらないことなどを整合的に説明できるのである。 また,オキサリプラチン溶液に,緩衝剤として,シュウ酸又はそのアルカリ金属 塩を添加(外部から付加)して得られたオキサリプラチン溶液組成物は,これを添 加しないオキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも,ジアクオDACHプラ チン及びジアクオDACHプラチン二量体などの望ましくない不純物の量が減少す るから,客観的構成において異なる(すなわち,「物」として異なる。)ことにな\nるということもできる。
b 他方で,仮に,本件発明1を上記のように解することなく,原告らが主張す るように,解離シュウ酸であってもジアクオDACHプラチン及びジアクオDAC Hプラチン二量体の生成を防止し又は遅延させているとみなすというのであれば, 本件発明1は,本件優先日時点において公知のオキサリプラチン溶液が生来的に有 している性質(すなわち,オキサリプラチン溶液が可逆反応しており,シュウ酸イ オンが平衡に関係している物質であるという,当業者には自明ともいうべき事象) を単に記述するとともに,当該溶液中の解離シュウ酸濃度として,ごく通常の値を 含む範囲を特定したものにすぎず,新規性及び進歩性を見いだし難い発明というべ きである。すなわち,本件優先日時点において,例えば,濃度が5mg/mLのオ キサリプラチン水溶液が公知であった(乙1の1)。そして,当該水溶液中のオキ サリプラチンが分解して解離シュウ酸が生成されることは,その生来的な性質であ り(本件明細書の段落【0013】ないし同【0016】参照),シュウ酸が平衡 に関係している物質であることも同様であるところ,種々の条件下である程度の期 間保存された濃度5mg/mLのオキサリプラチン水溶液中には,解離シュウ酸が 存在し,その量が,5x10−5M以上となることが多いことが,乙13の3試験,甲2 0試験(「5x10−5M」として,有効数字を1桁とする以上,「4.86x10−5M」又は 「4.94x10−5M」も,「5x10−5M」とみて差し支えない〔乙12参照〕。),乙3 2試験及び乙37試験の各結果から,さらには,本件特許権に係る原告デビオファ ームの延長登録出願の願書(乙33)の記載から認められる(なお,上記認定は, 上記各試験が乙1の1実施例の追試として妥当であるか否かはともかく,少なくと も,公知の組成物である濃度5mg/mLのオキサリプラチン水溶液において,解 離シュウ酸のモル濃度が5x10−5M以上となることは,ごく通常のことであると認め るのが相当であることを指摘したものである。)。そうすると,公知の組成物であ るオキサリプラチン水溶液中に存在し,同水溶液の平衡に関係している物質である シュウ酸イオン(解離シュウ酸)に,「平衡に関係している」という理由で「緩衝 剤」という名を付け,上記のとおり通常存在しうる程度のモル濃度を数値範囲とし て規定したにとどまる発明は,公知の組成物と実質的に同一の物にすぎない新規性 を欠く発明か,少なくとも当業者にとって自明の事項を発明特定事項として加えた にすぎない進歩性を欠く発明というほかはない。
c したがって,本件発明にいう「緩衝剤」には,オキサリプラチンが溶媒中で 分解して生じたシュウ酸イオン(解離シュウ酸)は含まれないと解するのが相当で ある。

◆判決本文

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平成27(ワ)8704    特許権  民事訴訟 平成28年5月12日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
「電子ショッピングシステム」の意義についても,本件明細書中に明確な定 義はないが,「ショッピング」が一般的な意味において売買を指すことは明らかで あるし,加えて構成要件Fからすると,この電子ショッピングには,少なくとも「注\n文」と「受注」が起きることが必要であるし,また本件明細書の【0001】には, 【発明の属する技術分野】として「本発明は,例えばレコードショップ等が加盟す るフランチャイズ制の電子ショッピングシステムに関し,インターネットを利用し た電子商取引の技術分野に関する。」とあり,さらに【発明の効果】を記載した【0 042】に「受注データにしたがって当該会員に商品を引き渡すと共に代金を受領 することにより,自らホームページを所持しなくても,インターネットを利用した 商取引が可能となる。」とあることから,ここにいう「電子ショッピングシステム」\nとは,インターネットを利用してされる有償の商品の取引を指すものと解するのが 相当であり,その取引においては,「注文」と「受注」,すなわち売買契約締結に 向けて顧客からの具体的法律行為がなされ得ることが必要であると解される。 これに対し,原告は,電子ショッピングシステムの定義について,商品の広告, 受発注,設計,開発,決済などのあらゆる経済活動と捉えるもので,商品の宣伝で あってもこれに含まれる旨主張するところ,確かに,本件明細書には,「電子ショ ッピングシステム」でなす経済活動について,「電子商取引」(【0001】,【0 005】,【0038】,【0043】),「商取引」(【0013】,【004 2】)などとする記載があり,さらに証拠(甲19ないし21)によれば,「電子 商取引」の定義については上記原告主張に一部沿うものが認められる。 しかし,「宣伝」に触れる記載(甲19)は,取引ではなく,インターネット上 の商行為について触れるものであるし,「広告」を含む通商産業省の定義(甲20) は,その当時の郵政省の定義とは異なることからすると,これは省庁の規制目的で 対象範囲の定義をしていると理解でき,直ちに一般的に通用する定義に結びつくも のとはいえない。 そして,そもそも,ここでは本件発明の構成要件にいう「電子ショッピングシス\nテム」の定義を問題にしているのであるから,上記説示のとおり本件明細書の記載 を考慮して解すべきであって,したがって,「電子ショッピンング」に,少なくと も原告の主張するような宣伝,広告までを含んで解することはできないというべき である。 (イ) これを前提に被告システムにつき検討するに,被告システムは,前記認定の とおり,顧客は各提携企業のホームページにおいて,講演会の講師を選択し,当該 講師の「講演を依頼する」タグを選択することにより現れる問合せ画面に名称,住 所,電話番号等の自らを特定する情報を記載し,さらに講演の希望内容を入力する などして送信すると本部のサーバーがこれを受信し,それに伴って各提携企業サー バーにeメールが送信されることで各提携企業が得る上記情報を基に,顧客を訪問 する,電話ないしメール等で連絡を取り合うなど営業活動をして,顧客の希望に沿 った講演会の内容・レベル・対象・講師・構成などを聴取し,顧客と契約できるよ\nう交渉を行うという方式である。 すなわち,被告システムの役割は,講演開催運営を取り扱う各提携企業に対し, 講演開催希望者がインターネットを使ってアクセスするホームページを設けて,そ の潜在的需要を顕在化させ,もって各提携企業が営業活動をすべき講演開催希望者 の情報を得ることができるというところまでであり,その後の講演開催実現に至る までの営業活動は,インターネット外,すなわち被告システム外の接触交渉が予定\nされているというものである。また,その機会における顧客が被告システムを利用 して「お問い合わせ(講演依頼)」をする行為は,漠然とした講演開催希望に基づ くものであってもよく,したがって,これにより提携企業との間で講演開催に向け ての交渉が開始されたとしても,それだけでは当事者間に法的な関係が直ちに生じ たとはいえないから,被告システムは,それは最終的に締結されるだろう講演開催 委託契約に向けての各提携企業の営業活動の契機を与えるものにすぎないものとい える。そして,このように見ると,被告システムでされている内容は,潜在的需要 者をインターネットでアクセスさせ,その潜在的な需要を顕在化させ,その情報を もとに実際の営業活動に結びつけるという,一般的な広告宣伝の手法と何ら変わら ないものといい得る。 なお,被告システム利用者の中には,希望講師のみならず講演会開催の日時,場 所とも確定して利用する者が含まれることはあり得るところ,その場合,そのよう な「お問い合わせ(講演依頼)」によるアクセス行為は,商品購入の注文に極めて 似ているといえるが,その場合であっても,被告システムを介して,そのアクセス を受けた各提携企業は,自らが講演する主体ではなく,また掲載講師のスケジュー ルを管理している主体とも認められないから,直ちに承諾,すなわち「受注」する ことができるわけではなく,その後,講師との関係を調整して,具体的講演開催に 向けて交渉を重ねる必要があるはずであって,したがって,利用者の 「お問い合わ せ(講演依頼)」をいかに具体化しても,これを売買契約における「注文」に準じ るものということができるわけではない。 したがって,被告システムは,構成要件Aにいう「電子ショッピングシステム」\nには相当しないというべきである。

◆判決本文

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平成26(ワ)26079  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年4月27日  東京地方裁判所

 特許権侵害ではないと判断されました。原告は日本および中国の大手通信会社を被告として、数件訴訟しています。特許も複数あるようです。
  この点,原告は,情報処理技術分野における用語法などからすれば,「選択」 には全てを選択することが含まれると主張し,ユーザ端末が全部のサブバンドを選 択することもこれに該当する旨主張する。 しかし,仮に,本件各発明に関連する技術分野において「選択」との文言が上記 のように用いられることがあるとしても,加入者が全部のサブバンドの差分CQI を報告する以外の選択肢がなく,常に全部のサブバンドの差分CQIを報告しなけ ればならない状態についてまで,「選択」の語義に含まれると解するのは妥当でな い。前記前提事実に記載のとおり,被告通信システム方法及び被告製品においては, 基地局により本件モードを選択している以上,加入者は,基地局からのパイロット 信号に対し,全てのサブバンドの差分CQIを報告する以外に選択の余地はないの であるから,原告の上記解釈は採用することができない。 また,原告は,本件明細書の段落【0028】,【0040】,【0069】に は,全部のクラスタが選択されることを包含する内容の記載があること,実質的に も,全部のサブバンドを選択してフィードバックした方がかえってフィードバック 情報量を削減できるといえることなども主張するが,原告が掲げた本件明細書の上 記各段落の記載によっても,常に全部のクラスタについての情報を「選択」すると いう実施形態は明示されていない。なお,本件明細書の段落【0028】には, 「フィードバック内の情報の順序を基地局が知っている限り,フィードバック内の どのSINR値がどのクラスタに対応しているかを示すためにクラスタインデクス が必要になることはない。」としか記載されていないから,仮に,この実施形態が 全部のクラスタについての情報をフィードバックする実施形態を含むとしても,こ のようなフィードバックの形態と加入者による「選択」との関係が不明であり,少 なくとも,常に全部のクラスタについての情報を報告する態様を「加入者による選 択」の一形態として含むことについて,本件明細書に明確な記載はないものという べきである。かえって,原告の主張する解釈1を採用すると,本件発明4の課題解 決のための一つの構成として規定された構\成要件4F,あるいは本件発明9の課題 解決のための一つの構成として規定された構\成要件9Eにおける「前記加入者が選 択した・・・クラスタのグループの中の・・・クラスタを・・・割り当てる」との 意義が失われるというべきで,上記の解釈1は妥当でないと言わざるを得ない。

◆判決本文

◆同じ特許での被告が異なる事件でも同様に判断されています。平成26(ワ)24183

◆同じ特許での被告が異なる事件でも同様に判断されています。平成26(ワ)34227

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平成25(ワ)29520  不当利得返還請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月30日  東京地方裁判所

 クレームの用語「ICSネットワークアドレス」を技術的に分析して、該当しないと判断されました。
 ウ 以上の本件明細書1の記載によれば,「ICSネットワークアドレス」とは, コンピュータ情報/通信アドレスとして独自に定めたアドレスの付与規則を持つI CS(統合情報通信システム)において,これを構成するアクセス制御装置,アク\nセス制御装置とユーザ物理通信回線との接続点であるICS論理端子,中継装置, VAN間ゲートウェイ及びICS網サーバ等に付与される,それぞれICS内部で 唯一の識別符号を指すものであり,かつ,このうち,ICS論理端子に付されるア ドレスは,ICSネットワークフレームを構成するネットワーク制御部に格納され,\n同アドレスが直接参照されることにより,ICSネットワークフレームがICS網 内を転送されるものを意味すると認められる。
エ しかるところ,被告システムにおける「ラベル」,すなわち網内転送ラベル (outerラベル)及びVPN識別ラベル(innerラベル)の各値は,各事業所に設置 されているCEルータが,自身が接続しているVPNサイト内部のルート情報を接 続しているPEルータに配信し,これを受信したPEルータにおいて,当該VPN に属する他の事業所を接続するPEルータやPルータに配信することを繰り返すこ とにより,特定のホストアドレスを有するVPN内部のユーザへ情報を配信する場 合に通過する経路を各々のPEルータ及びPルータが蓄積した結果決定された情報 であって,被告システムにおいて「ICS論理端子」に該当しうる「PE−CEイ ンターフェイス」に網内で唯一付された識別子であるとは認められない。 加えて,網内転送ラベル(outerラベル)の値は,あくまでPEルータ又はPル ータがMPLSフレームを転送すべき次のPルータ又はPEルータを特定するため に設定された値である上,Pルータを経由するごとに貼り替えられていくのである\nから,仮に,被告システムの「PE−CEインターフェイス」に網内で唯一付され た識別子が存在しているとしても,同識別子が網内転送ラベル(outerラベル)の 値と一致するものとは認め難い。また,VPN識別ラベル(innerラベル)は,M PLSフレームが各Pルータを転送されて受信側PEルータに到着した際に同受信 側PEルータによって参照され,これによりパケットを出力すべきPE−CEイン ターフェイスが特定されるものではあるが,あくまで受信側PEルータ内部によっ てPE−CEインターフェイスを特定するものであるから,VPN識別ラベル (innerラベル)の値が,特定のPE−CEインターフェイスに網内で唯一付され た識別子と同一の値であるとは直ちには認められず,両値の同一性を認めるに足り る的確な証拠もない。
オ なお,原告は,網内転送ラベル(outerラベル)及びVPN識別ラベル (innerラベル)の「2つのラベルに含まれる情報」や「ラベルの組合せ」をもっ て,「ICSネットワークアドレス」に該当すると主張しているようにも思われる ところ,確かに,被告システムにおいて,網内転送ラベル(outerラベル)及びV PN識別ラベル(innerラベル)が付されたパケットは,最終的に所望のPE−C Eインターフェイスを経由して特定のユーザに送信されることとなるが,上記のと おり,「ICSネットワークアドレス」とは,コンピュータ情報/通信アドレスと して独自に定めたアドレスの付与規則を持つICS(統合情報通信システム)にお いて,これを構成するアクセス制御装置,アクセス制御装置とユーザ物理通信回線\nとの接続点であるICS論理端子,中継装置,VAN間ゲートウェイ及びICS網 サーバ等に付与される,それぞれICS内部で唯一の識別符号を指すものであり, かつ,このうち,ICS論理端子に付されたアドレスは,ICSネットワークフレ ームを構成するネットワーク制御部に格納され,同アドレスが直接参照されること\nにより,ICSネットワークフレームがICS網内を転送されるものを意味するの であって,単に「所望のICS論理端子にICSユーザフレームを到達させるため に同ICSユーザフレームに付される情報」一般を包括的に含む広範な概念を指す ものとは認められないから,原告の主張は採用できない。 カ したがって,被告システムは,「ICSネットワークアドレス」を有しない から,構成要件1−1A,同1−1B及び同1−2Aをいずれも充足しない。\n

◆判決本文

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平成27(ネ)10126  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年4月14日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁も、物の発明ではないと判断し、控訴棄却しました。
 これに対し,控訴人は,「手順・プロセス」が含まれていても,「構造\n・構成」に発明性を備えるものは「物の発明」であるところ,本件特許発明\nは,「テーブル」と「緩衝材」によって構成される「構\造」によって,本件 明細書に記載された発明の作用効果を得ることを目的とする「物の発明」で あって,テーブルを「設置し」と建築物等を「配置する」の前後関係は,技 術的には何ら価値がなく,本件特許発明の構成要件ではないなどと主張する。\n しかしながら,これらの控訴人の主張は,あくまでも,本件特許発明にお ける「地盤強化工法」が構造ないし構\成を意味することを前提とするもので あり,前記アのとおり,かかる「地盤強化工法」が工事の方法を指すと解さ れる以上,控訴人の上記主張は,その前提において採用することができな い。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成27(ワ)14339

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平成26(ワ)20422  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月17日  東京地方裁判所

 Appleと島野製作所の特許侵害訴訟です。島野の請求は棄却されました。理由は、イ号の「コマ」は本件発明にいう「押付部材」には該当しないというものです。裁判所は、明細書の記載および本件が分割出願であることも考慮しました。
 本件発明の「押付部材」に対応する被告製品中の「コマ」は,別紙被告ポゴ ピン断面図のとおり,球形ではなく,一部に球状の面を有するにとどまる。被 告が押付部材は球に限られるので被告製品は構成要件D2を充足しない旨主張\nするのに対し,原告は押付部材の一部(プランジャーピンの傾斜凹部に押圧さ れる部分)が球状の面であれば足りる旨主張するので,以下,検討する。 (1) まず,特許請求の範囲の記載をみるに,本件発明は,コイルバネで付勢し てプランジャーピンを突出させる接触端子に関するものであり(構成要件A\n〜C),コイルバネがプランジャーピンを直接押圧するのではなく,コイル バネとプランジャーピンの間に「押付部材」が介在し,これがコイルバネか ら付勢を受けて,その「球状面からなる球状部」がプランジャーピンの傾斜 凹部を押圧することに特徴がある(構成要件D1〜3)。\nこの「押付部材」という語は当該部材が果たす機能をそのまま記述したも\nのであるところ,その形状に関しては,プランジャーピンの傾斜凹部に押圧 される部分が「球状面からなる球状部」であるとされるのみであり,それ以 外の部分(コイルバネから付勢される部分,コイルバネ側とプランジャーピ ン側の中間部分)の形状については特許請求の範囲に何ら記載がない。そう すると,上記押圧される部分が球状に丸くなっていればそれ以外の部分はい かなる形状でもよいと解する余地がある。他方,押付部材の形状は,上記機 能を果たし得るものに限定されると考えられる上,同機能\\を果たすものであ ればいかなる形状の部材でも本件発明の技術的範囲に含まれるとすることは, 現に発明をして明細書に開示した範囲で保護を与えるという特許制度の趣旨 に反しかねない。そこで,特許請求の範囲に記載された「押付部材」の語の 意義を解釈するため,本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明の記載及び図 面を考慮することとする。
(2) 本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみると,「押付部材」との語は一 切用いられていない。本件発明の接触端子においてプランジャーピンとコイ ルバネの間に介在する部材として開示されているのは「絶縁球」のみであり, 図面に示されたのも球のみである。 すなわち,本件発明は,背景技術として,コイルバネが直接プランジャー ピンに触れるとコイルバネに電流が流れて焼き切れてしまうので,プランジ ャーピンとコイルバネの間に絶縁球を介在させた接触端子が存在したことを 前提に(段落【0002】〜【0004】),比較的大きな電流を流し得る接 触端子を提供することを目的として(同【0008】),プランジャーピンの 大径部(コイルバネ側)の端部を切削して袋孔を形成し,その底部を円錐面 とするとともに,円錐の中心軸とプランジャーピンの中心軸をオフセットさ せることによって,プランジャーピンの大径部の外側面を本体ケースの内周 面に強く押し付け,確実に電流を流すことができるようにしたものである (同【0009】,【0013】〜【0015】)。そして,実施例及び参考例 をみても,押付部材に相当する部材としては「絶縁球」のみが記載されてい る(同【0024】〜【0030】,【0032】,【0036】,【0039】 〜【0042】,【図2】,【図4】,【図6】)。 以上のとおり,押付部材として本件明細書に開示されているのは球のみで あり,これと異なる形状の押付部材があり得ることを示唆する記載は見当た らない。そうすると,本件明細書の記載を考慮すると,本件発明における押 付部材の形状は球に限られると解するのが相当である。
(3)さらに,本件特許の出願経過についてみるに,後掲の証拠及び弁論の全趣 旨によれば,1)本件特許は,特願2011−192407号を優先権の基礎 とする特願2011−271985号(原出願)から分割出願されたもので あること(甲2),2)上記優先権の基礎とされた出願及び原出願は,いずれ も名称を「接触端子」とする発明に関するものであり,特許請求の範囲,発 明の詳細な説明及び図面を通じ,プランジャーピンとコイルバネの間に介在 する部材として記載されているのは「絶縁球」のみであること(乙13,1 4),3)本件特許は平成25年4月19日に分割出願されたものであり,そ の特許請求の範囲に,プランジャーピンとコイルバネの間に「押付部材」を 介在させる旨記載されたこと(乙15),4)原告は,同年10月11日,押 付部材に係る特許請求の範囲の記載を「少なくとも一部に球状面を有する押 付部材の球状部」と補正したこと(乙17),5)これに対し,同月25日, 特許法36条6項1号違反を理由1(発明の詳細な説明には押圧部材に絶縁 球を用いることが記載される一方,請求項1には絶縁性を有しない押圧部材 が記載されていること),同法29条1項3号及び2項の違反を理由2及び 3(原出願に「押付部材」として記載されていたのは「絶縁球」のみであり, これを「少なくとも一部に球状面を有する押付部材」とすることは適法な分 割出願でないので,請求項1記載の発明は原出願の公開特許公報により新規 性又は進歩性を欠くこと)とする拒絶理由通知が発せられたこと(乙4), 6)原告は,同年11月8日,上記4)の補正後の特許請求の範囲の記載を「押 付部材の球状面からなる球状部」と補正する旨の手続補正書と,絶縁性を有 しない押付部材でも本件発明の効果を奏するので,発明の詳細な説明に記載 されたものといえる旨の意見書を提出したこと(乙5,6),7)同月27日 に特許査定がされたこと(乙19),以上の事実が認められる。 上記事実関係によれば,本件発明の「押付部材」は,少なくとも一部に球 状面を有するものでは足りず,その全体が球であるものに限られるというこ とができる(仮に,一部にのみ球状面を有するものが含まれるとすれば,本 件特許は違法な分割出願によるものとして新規性欠如の無効理由を有するこ とが明らかである。)。

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平成27(ワ)12748  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年2月23日  東京地方裁判所

 特許権侵害ではないと判断されました。争点は「滑らかに当接して徐々に停止する」という文言でした。
 構成要件1Iにつき,本件発明の特許請求の範囲には,「レッグレストフレーム……の当接部材」が「座席フレームの湾曲部」に「滑らかに当接」して「徐々に停止する」ものであると記載されている。この「滑らか」は,本件明細書(甲1)において定義づけられていないので,「すらすらと通るさま。つかえないさま。よどみないさま」(広辞苑〔第六版〕2103頁),「物事がよどみなく運ぶさま。すらすらと進むさま」(大辞林〔新装第二版〕1924頁)といった意味を有すると解される。また,「徐々に停止する」とは,「徐々に」が「停止」を修飾していることに照らすと,引き出されてきたレッグレストフレームの当接部材が座席フレームの湾曲部に当接すると直ちに停止するのではなく,当接した後も移動を続けつつも次第に減速して停止に至ることを意味すると解される。さらに,「座席フレームの湾曲部」が座席フレームの「開放する側の両端部」にあって「下方に鈍角状に折り曲げられた」構\造を有していること(構成要件1E。なお,構\成要件1B,1E及び1Fにいう「座部フレーム」は構成要件1Iにいう「座席フレーム」と同一の部材を指すと認める。)からすれば,レッグレストフレームの当接部材に対しては,引き出す方向に対する抵抗力が次第に大きくなる一方,下方に向かう力がかかっていくと考えられる。\n以上を総合考慮すると,「滑らかに当接して徐々に停止する」とは,引き出されてきたレッグレストフレームの当接部材が座席フレームの湾曲部に当接しても直ちに停止することなく更に引き出され続けるが,湾曲部との当接後は湾曲部から受ける力により次第に減速して,当接から多少なりとも間を置いて停止することを意味すると解される。
(2)この点につき,念のため本件明細書の記載及び本件特許の出願経過を見るに,本件明細書(甲1)においては,「発明を実施するための形態」欄において,円形当接部材が座部フレームの湾曲部の基端部に滑らかに当接すること,及び,鈍角状の上記湾曲部により徐々に停止していくので強く引き出しても衝撃がないことが記載されている(段落【0032】)。また,本件の特許出願について,引用文献(登録実用新案第3046819号公報。乙3)に基づき容易想到であるとする拒絶理由通知(乙2)に対し,原告は,特許請求の範囲(構成要件1I)に「滑らかに」を加える補正をした上,平成25年3月28日付け意見書(乙4)において,本件発明が本件明細書の上記記載のとおりの作用効果を奏するものであり,上記引用文献記載の考案は当接部が屈曲部の下側の曲線部にいきなり当接するもので,滑らかに当接し徐々に停止していくものでは全くないと述べている。\nそうすると,構成要件1Iは,レッグレストフレームを引き出した際に衝撃を感じることがないという効果を奏するために,当接部材が座席フレームの湾曲部に当接しても突然停止するのでなく,その後に次第に速度を落として停止することをいうものと解するのが相当であるから,前記(1)の解釈と合致するということができる。
(3) 以上を前提に被告製品が構成要件1Iを充足するかどうかについて検討するに,証拠(甲9,乙7の1)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,レッグレストフレームを前方に引き出していくと,同フレームに取り付けられた側面視略L字型のストッパー部材の上端ないし引き出し方向先端の角の部分が座席フレームの湾曲部に当接し,その直後にレッグレストフレームが,次第に減速するのではなく,ほぼ一瞬にして停止するものと認められる。\nしたがって,被告製品は,「滑らかに当接して徐々に停止する」ものでないから,構成要件1Iを充足しない。\n

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平成26(ワ)17390  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年2月16日  東京地方裁判所  棄却  東京地方裁判所

 並行して無効審判で訂正請求がなされていますが、訂正とは異なる構成について、技術的範囲に属しいないと判断されました。\n
 そこで,上記ウの解釈を前提に,被告製品1及び2が構成要件1Bの「ヘリコバクター・ピロリのネイティブなカタラーゼに対するモノクローナル抗体」を充足するかについてみる。・・ ローナル抗体はヘリコバクター・ピロリのネイティブなカタラーゼと結合する。また,証拠(乙26,34)及び弁論の全趣旨によれば,このモノクローナル抗体(被告製品1につきIgG主抗体及びIgG副抗体,被告製品2につきIgM抗体)はSDS及び2ME(メルカプトエタノール)による変性処理並びに煮沸処理を経たカタラーゼを検出することが認められる。そして,これらの変性及び煮沸処理によってカタラーゼは完全に変性し,単量体となったものと考えられるから(本件明細書の段落【0116】参照),被告製品1及び2のモノクローナル抗体は変性剤で変性されたカタラーゼと結合するものであるということができる。 そうすると,被告製品1及び2のモノクローナル抗体は,ヘリコバクター・ピロリのネイティブなカタラーゼだけでなく,変性剤で変性されたカタラーゼとも結合するモノクローナル抗体であるから,構成要件1Bの「ヘリコバクター・ピロリのネイティブなカタラーゼに対するモノクローナル抗体」に当たらない。したがって,被告製品1及び2が構\成要件1Bを充足すると認めることはできない。

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平成26(ワ)25013  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年1月28日  東京地方裁判所

 使用量を限定した治療薬について、用法用量がそのような投与量のものに限られると判断して、本件特許を侵害しないと認定しました。請求項1は以下の通りです。
成人1日あたり0.15〜0.75g/kg体重のイソソ\ルビトールを経口投与されるように用いられる(ただし,イソソ\ルビトールに対し1〜30質量%の多糖類を,併せて経口投与する場合を除く)ことを特徴とする,イソソ\ルビトールを含有するメニエール病治療薬。
 まず,特許請求の範囲の記載を見ると,本件発明は,所定量のイソソ\ルビトールを経口投与されるように用いられること(構成要件A)を「特徴とする,イソ\ソルビトールを含有するメニエール病治療薬」の発明であり,メニエール病治療薬を用法用量により特定したものであるが,イソ\ソルビトールの投与量が構\成要件A所定の範囲に含まれるような用法があれば足りるのか(その範囲未満又は超過の投与量での用法があってもよいのか),用法用量がそのような投与量のものに限られるのか(それ以外の用法用量をも有する治療薬は本件発明の技術的範囲から除外されるのか)については,特許請求 の範囲に明示的に記載されていない。 上記アの本件明細書の記載によれば,本件発明は,従来のイソソ\ルビトール製剤(これが被告製品1を指すことは明らかであり,その標準用量は1日当たりイソソ\ルビトール1.05〜1.4g/kg体重に相当する。甲3)の投与量が過大であり,そのために種々の問題が生じるところ,その投与量を構成要件Aに記載の0.15〜0.75g/kg体重という範囲にまで削減することによって上記の問題を解消したというものである。そうすると,本件発明の治療薬は,構\成要件A記載の範囲を超える量のイソソ\ルビトールを投与する用法を排除し,従来より少ない量を投与するように用いられる治療薬に限定されるということができる。換言すると,上記範囲を超える量のイソソ\ルビトールを投与するように用いられる治療薬は,「医師のさじ加減」個々の患者の特徴や病態の変化に応じて医師の判断により投与量が削減された場合には構成要件Aに記載された量で用いられ得るものであっても,本件発明の技術的範囲に属しないと解すべきである。このことは,上記?イのとおり,実施例又は参考例において,イソソ\ルビトールの投与量を時間的推移に着目して変動させたものが見当たらないことからも裏付けられると解される。 したがって,構成要件Aの「成人1日あたり0.15〜0.75g/kg体重のイソ\ソルビトールを経口投与されるように用いられる」とは,上記の用量を,患者の病態変化その他の個別の事情に着目した医師の判断による変動をしない段階,すなわち治療開始当初から,患者の個人差や病状の重篤度に関わりなく用いられることをいうものと解するのが相当である。\n

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平成26(ワ)12198  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年12月24日  東京地方裁判所

 こちらも、iPhone、iPadが侵害対象物の侵害訴訟です。Apple Japanが被告です。裁判所は、構成要件Cを充足しないと判断しました。興味深いのは、いずれも本社はアメリカ法人ですが、日本の子会社同士の訴訟です。米国にも対応特許があるようなですが、なぜ日本特許での侵害訴訟なのでしょうか?
 このように,本件特許発明1において,加入者装置は,構成要件1Cで「候補サブキャリアのセット」の「選択」を行い,構\\成要件1Dで,上記「選択」した「候補サブキャリアのセット」に関して情報提供を基地局に行うものである。 一方,LTE規格の非周期的CQIレポートの高次階層設定サブバンドフィードバックモードにおいては,加入者装置(ユーザ端末)は,N個のサブバンドで構成されている全帯域の「N個のサブバンド全部」について,サブバンド差分CQI値を報告することとされている(当事者間に争いがない。また,前記(2)のとおり,LTE規格の仕様書には,高次階層設定サブバンドフィードバックの欄に,ユーザ端末が,各サブバンドセットについて1つのサブバンドCQI値を報告しなければならない旨の記載がある。)。 イ 原告は,本件通信システム方法において全部のサブバンドが選択されている旨主張するが(見解1),このように,LTE規格の上記モードにおいて,全てのサブバンドについて情報提供が義務付けられているとすれば,これは本件特許発明1の特徴である「選択したものについて情報提供を行う」との処理とは異なるものであって,構成要件1Cでいう「選択」や,それに引き続く構\\成要件1Dの「情報提供」があるとはいえない。 広辞苑第6版(乙3)によれば,「選択」とは,「えらぶこと。適当なものをえらびだすこと。良いものをとり,悪いものをすてること。」を意味するとされており,「選択」とは,何らかの基準を充たすものを選び出すことを意味すると解すべきである。 なお,前記(1)オ(ア)のとおり,本件明細書には,「各加入者は(中略)性能の良い(中略)複数のサブキャリアを選択して,それら候補サブキャリアに関する情報を基地局にフィードバックする。」と記載されており(甲4),これは実施例に関する記載ではあるが,各加入者が性能\\の良いものを選び出し,その選択したサブキャリアに関する情報を提供するという過程が記載されており,上記解釈を裏付けるものである。 また,選択を行う者が,何らかの基準に従って対象物につき選択を行った結果,全てが選ばれる場合も想定し得るが,上記のとおり,非周期的CQIレポートの高次階層設定サブバンドフィードバックモードにおいては,加入者装置(ユーザ端末)は,常に全てのサブバンドについてのサブバンド差分CQI値を報告することとされており,このような場合には「選択」の余地はないというべきである。 なお,前記(1)オ(ア)のとおり,本件明細書には「このフィードバックには,全てのサブキャリアについて又は一部のサブキャリアだけについてのチャネルと干渉の情報(中略)が含まれる」(段落【0010】)との記載があるが(甲4),これはあくまで,結果的に「全てのサブキャリア」が選択されることもあり得ることを前提とした記載というべきであって,常に「全てのサブキャリア」が選択されることを前提とした記載ではない。 原告は,情報処理技術分野においては,「全部の選択」等の用語の用い方はごく一般的であり,本件特許発明の「選択」の技術的意義については,単なる日本語の語義に基づくことは誤りであるとも主張する。しかし,本件特許の関連技術分野全てにおいて「選択」との文言が上記のように用いられることが通常であることを認めるに足りる証拠はないし,本件明細書においても,「選択」との文言の意義につき特段の説明はないから(甲4),原告の上記主張は採用できない。このほか,原告は,全サブバンドについてサブバンド差分CQIのフィードバックを行うことによって,情報量の低減効果があるとも主張するが,情報量の低減効果の有無と,サブバンドの「選択」の有無とは,直接関係がないことである。
ウ 以上のとおり,本件通信システム方法において全部のサブバンドが選択されているとの原告の主張(見解1)を前提にすると,本件通信システム方法では,加入者装置(ユーザ端末)において本件特許発明1の規定する「選択」をしていないから,構成要件1Cを充足せず,更に,選択したものについて「情報提供」をしているともいえないから,構\\成要件1Dも充足しない。

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平成26(ワ)371  債務不存在確認請求事件  特許権 平成27年12月25日  東京地方裁判所

 iPhone、iPadのタッチパネル方式が侵害か争われました。損害賠償請求の不存在確認訴訟なので、Apple Japanが原告です。裁判所は、構成要件Cを充足しないと判断しました。
 (1) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1並びにこれを引用する同請求項2,同請求項4及び同請求項6においては,本件各発明が,「位置検出手段により検出される複数の指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段」(構成要件C)を具備することを特徴とするタッチパネルシステムであることが規定されている。上記「複数の指示部位」には,当然,指示部位が2個である場合と指示部位が3個以上である場合の双方が含まれるところ,上記特許請求の範囲の記載の文理や,本件明細書において,入力検出面に3つの位置指示具が存在する場合に,当該3個所の位置(光量が0の領域)の中から最外端にある2個所の位置(光量が0の領域)を特定する実施例について説明がされていること(甲3の【0035】,【図7】)からすれば,当該タッチパネルシステムが具備するところの「距離算出手段」は,「位置検出手段により検出される指示部位が2個であれ3個以上であれ,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段」であると解される(換言すれば,「位置検出手段により検出される指示部位が2個である場合には,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出するが,位置検出手段により検出される指示部位が3個以上である場合には,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出するわけではない距離算出手段」はこれに当たらないと解される。)。なお,上記「最外端」という文言それ自体の意義については一義的でないようにも思われるが,本件明細書の【0035】,【0040】,【図7】,【図10】の記載及び弁論の全趣旨に照らせば,「最外端にある2個所」とは,「互いに最も離れた位置にある2個所」を指すものと解するのが相当である。\nそうすると,位置検出手段により検出される指示部位が3個以上である場合に,それら指示部位のうち最外端にある2個所(互いに最も離れた位置にある2個所)の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段を具備していなければ,当該タッチパネルシステムは,構成要件Cを充足しないというほかはない。
(2) これに対し,被告は,通常の用法である「2本指のピンチジェスチャ」(指示部位が2個である場合)においては,2つのタッチ位置が「複数の指示部位のうち最外端の2個所」にそのまま該当し,侵害となる以上,実用上特殊な場合である「3本指以上のピンチジェスチャ」(指示部位が3個以上である場合)を殊更取り上げることに意味はないなどと主張する。 しかしながら,前記(1)で説示したとおり,本件各発明の構成要件の充足性を判断するに当たっては,当該タッチパネルシステムが具備する距離算出手段がどのような距離算出手段であるのかが問われるのであって,被告の上記主張のように特定の使用態様(2本指のピンチジェスチャ)のみに着目することによって,「複数の指示部位」という文言が指すもののうちから「2個の指示部位」の場合のみを切り出し,その場合のみを基に侵害判断をすることは相当でない。そして,2本指のピンチジェスチャが通常の用法であるとしても,1)「複数の指示部位」という文言が「3個以上の指示部位」の場合をも含むことは当然である上,2)実際,頻度は少ないにせよ「3個以上の指示部位」が検出される場合があり得ること,3)被告自身,本件明細書(【0035】【図7】)において,3つの位置指示具が存在する場合について説明をしていることに照らすと,指示部位が3個以上である場合を取り上げることに意味がないなどということはできない。さらに,「最外端」の特定は,発明における動作原理にも関係することを考慮すると,被告の上記主張は到底採用することができない。
(3) 以上を前提として原告製品について検討すると,位置検出手段により検出される指示部位が3個以上である場合に,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段を原告製品が具備していることを示す証拠はない。 かえって,証拠(甲9,18,19)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品のタッチパネルに3本ないし5本の指で1本ずつタッチしてピンチ操作を行った場合,表示イメージの拡大縮小は,最外端にある2個所(互いに最も離れた位置にある2個所)の指の間の距離に基づいて実行されるものではなく,最初及び2番目にタッチされた2本の指に基づいて実行されることが認められる。
(4) そうすると,原告製品は,構成要件Cを充足しないというほかはない。\n

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平成26(ワ)34145  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年1月14日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、「注文情報」に該当しないので非侵害と判断されました。被告がアスクルです。
 本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明の欄には,本件発明の実施形態が記載されているところ(段落【0027】〜【0134】,【図1】〜【図21】),この実施形態においては,「Web−POSクライアント装置」の表示画面に「明細フォーム」(カテゴリ,メーカコード,商品番号,商品名,単価,数量,金額といった注文商品明細が表\示されているもの。【図10】〜【図12】,【図17】〜【図21】。)が表示され,「オーダ・ボタン」のクリックに応答して,「Web−POSサーバ・システム」へ明細フォーム中のカテゴリ,メーカコード等の全フィールドを送信し,「Web−POSサーバ・システム」においてこの明細フォームを受信することとなっているところ(段落【0056】,【0111】〜【0125】,【0127】,【図12】),「オーダ・ボタン」のクリックにより「Web−POSサーバ・システム」が受信するのが「注文情報」であることから(構\成要件F4),上記明細フォームは「注文情報」に相当するので,「注文情報」には商品名,価格等の商品基礎情報が含まれている。また,本件明細書には本件発明の他の実施形態の説明も記載されているが(段落【0134】〜【0139】),いずれも「明細フォーム」を利用するものであり,「注文情報」に商品基礎情報を含まない構成についての記載は見当たらない。\nこれら本件明細書の記載を考慮して「注文情報」の意義を解釈すると,本件発明は,「Web−POSクライアント装置」の表示画面に明細フォームその他商品基礎情報を含む情報を表\示した上で,「オーダ・ボタン」のクリックに応答して,これらの情報を「Web−POSサーバ・システム」に送信するという構成を採用したものと認められる。したがって,「Web−POSクライアント装置」が送信して「Web−POSサーバ・システム」が受信する商品の注文に関する情報にカテゴリ,メーカコード,商品名,価格等の商品基礎情報が含まれていない場合には,構\成要件F4,G及びHの「注文情報」に当たらないと解するのが相当である。 ウ 「注文情報」を上記のように解釈することは,本件特許の出願経過における原告の説明とも一致する。すなわち,原告は,平成23年10月9日付け意見書(乙20)において,引用文献1(乙11)との相違点につき,1)引用文献1における注文情報は購入者ごとに生成される情報であって,この購入者ごとの注文情報は,商品識別情報等を含んだ商品ごとの情報である本件発明の「注文情報」とは異なる(乙20の11〜12頁),2)用文献1には,商品注文明細情報の生成及び表示過程に関する詳細な記載がなく,ユーザが注文した情報に売上管理等に必須となる商品識別情報及びこれに対応する商品基礎情報が含まれていないのに対し,本件発明では「注文情報」に商品識別情報とこれに対応する商品基礎情報が含まれている(同12〜13頁)と説明しており,これら1)及び2)の説明は上記の解釈と整合するということができる。

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