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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

用語解釈

平成23(ワ)3572 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月30日 東京地方裁判所

 コンピュータ関連発明の侵害事件について、「調査者側」の「サーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を兼ねる形態まで、特許の効力が及ぶか、公知技術から無効かが争われました。裁判所は、明細書を参酌して、「調査者側」の「サーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を兼ねる形態までは及ばないと判断しました。
 本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)の文言と本件明細書1の「発明な詳細の説明」の前記(ア)の記載事項(図面を含む。)を総合すれば,本件明細書1には,1)従来,インターネットなどの通信回線網を介して提供される複数の番組を表形式に配列した番組表\には,各番組の詳細な内容を確認したり,希望する番組を録画予約したりできるものがあるが,このような番組表\の提供を受けた利用者が,番組表中からどのような番組を選んで視聴又は録画を行ったのかを知ることができなかったため,この種の番組表\を利用した視聴や録画がどの程度行われているのかを知りたいという要望があったこと(前記(ア)b,c),2)本件発明1−1は,この要望に応えることを課題とし,番組表を利用して視聴率及び録画率を調査することができる技術を提供することを目的とするものであり,この課題を解決するための手段として,「利用者側」から「調査者側」に送信されるデータに基づいて,「調査者側」で現在放送中の番組に対応する視聴指標及び録画予\約指標を算出し,上記視聴指標及び録画予約指標を「利用者側」に送信し,「利用者側」に表\示される番組表上の番組に対応づけられて上記視聴指標及び録画予\約指標が表示されるようにするために,「調査者側」の「サーバ」において,上記データ(視聴状況情報及び録画予\約状況情報)の受信手段,上記視聴指標及び録画予約指標の算出手段及び送信手段の各手段を備える構\成を採用し(前記(ア)c,d),これにより「調査者側」においては番組の正確な視聴率及び録画率を調査することができ,「利用者側」においては利用者が番組表上で番組の視聴率及び録画率を簡単にチェックすることができるという作用効果を奏するようにしたこと(前記(ア)j,k,n,p)が開示されているものと認められる。上記認定の本件発明1 − 1 の目的及び作用効果に照らすならば,「調査者側」が行う視聴指標及び録画予約指標の調査についてはその中立性ないし客観性を確保することは当然の要請であって,かかる観点からみると,「調査者側」が自ら行う調査の調査対象となることは不合理であるから,本件発明1−1においては,「調査者側」の「サーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を兼ねること,あるいは「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」の「サーバ」を兼ねることは,想定されていないものと認められる。また,本件明細書1記載の実施例は,前記(ア)lないしpのとおり,「調査者側装置10」と「利用者側端末」とは,別個独立の装置構成として記載されている。もっとも,本件明細書1には,「調査者側装置10」が「複数のコンピュータシステムで構\成されていてもよい。」(段落【0070】。前記(ア)q)との記載があるが,上記記載を段落【0070】の他の記載箇所と併せて読むと,上記記載は,「本実施形態」では「調査者側装置10が1のコンピュータシステムによって構成されたもの」を例示したことを指摘した上で,「調査者側装置10」が,「1のコンピュータシステム」ではなく,「複数のコンピュータシステム」によって構\成し得ることを説明したものであり,それ以上に,「調査者側装置」が「利用者側端末」をも含めて構成し得ることまで述べたものと解することはできない。さらに,本件明細書1を全体としてみても,「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」の「サーバ」の機能\の全部又は一部を兼ねることができることの記載や示唆はない。
ウ 本件発明1−1の「サーバ」の意義
(ア) 本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載(前記ア)を基礎に,本件明細書1の記載事項(前記イ)を考慮すると,本件発明1−1の「サーバ」(構成要件1−1F)は,「利用者装置」(構\成要件1−1A)とは別個独立の装置であって,「利用者装置」が「サーバ」の機能の全部又は一部を兼ねるものとして「サーバ」に含まれることはないものと解するのが相当である。(イ) これに対し原告は,1)「サーバ」とは,一般的に「ネットワーク上で他のコンピューターやソフト,すなわちクライアントにサービスを提供するコンピューター。」を意味するものであり,本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)は,本件発明1−1の「サーバ」の装置構\成について限定を付していないこと(以下「根拠1)」という。),2)本件明細書1の【0028】,【0029】,【0070】及び図1によれば,「調査者側装置10」及び「利用者側端末20」は,いずれも「インターネットに接続される周知のコンピュータシステム」であって,特に構成を異にするものではなく,「調査者側装置10」を複数のコンピュータシステムで構\成する場合,その一つのコンピュータシステムが,「利用者側端末20」と同様の周知のコンピュータシステムで構成されてもよいことが読み取れるから,本件発明1−1の「サーバ」は,「利用者装置」とは別異の構\成要素としての「調査者側」の構成要素である必要はないこと(以下「根拠2)」という。),3)本件原出願の出願時において,同一の機能又は異なる機能\を有する複数のコンピュータが協働してサービスを提供することは周知であり,「サーバ」の文言は,利用者側の端末を含み,複数のコンピュータからなる場合を含むものとして理解され,使われていたこと(甲34ないし43)(以下「根拠3)」という。)を総合すれば,本件発明1−1の「サーバ」は,「利用者装置」とは別異の構成要素でなければならないと限定解釈すべき理由はなく,この「サーバ」の機能\の一部を「利用者装置」が担ってもよいと解すべきである旨主張する。しかしながら,原告の上記主張は,以下のとおり理由がない。
a 根拠1)及び2)について
 前記アで述べたとおり,本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)の文言上,「サーバ」と「利用者装置」とは,本件発明1−1の構成要素として別個のものであることは明らかであり,一方で,請求項1には,「利用者装置」が「サーバ」の機能\の全部又は一部を兼ねることができることを規定した記載やこれをうかがわせる記載はない。次に,前記イ(イ)で述べたとおり,本件発明1−1の目的及び作用効果に照らすならば,視聴指標及び録画予約指標の調査の中立性ないし客観性の確保の観点からみて,「調査者側」が自ら行う調査の調査対象となることは不合理であり,本件発明1−1においては,「調査者側」の「サーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を兼ねること,あるいは「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」の「サーバ」を兼ねることは,想定されていないものと認められる。また,原告が指摘する本件明細書1の段落【0070】における「調査者側装置10」が「複数のコンピュータシステムで構\成されていてもよい。」との記載は,「調査者側装置」が「利用者側端末」をも含めて構成し得ることを記載したものではなく,本件明細書1を全体としてみても,「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」の「サーバ」の機能\の全部又は一部を兼ねることができることの記載や示唆はない。以上によれば,原告が主張する根拠1)及び2)の点は,本件発明1−1の「サーバ」の機能の一部を「利用者装置」が担ってもよいと解すべきことの根拠となるものではない。b 根拠3)について原告は,根拠3)に係る具体的な裏付けとして,1)特開平10−207945号公報(甲34)の【図2】,特開平10−247177号公報(甲35)の【図1】には,「サーバ」の文言は,ネットワーク上の複数のコンピュータから構成されるものも含むことが開示されていること,2)「情報システムテクニカルガイド 分散システムのための」(1995年6月30日発行)(甲36)の「(それに対して,ピア・ツー・ピア・モデルではどのプロセスでも相互作用を開始することができる)サーバは,他のサーバに要求を発行することでクライアントになることもありえる。…クライアントとサーバは,…同一のマシンで走ることもあれば,別々のマシンで走ることもある。」(282頁)との記載,特開平10−161777号公報(甲37)の段落【0001】,特開平10−154030号公報(甲38)の段落【0010】,【0014】,特開平9−138810号公報(甲39)の段落【0231】,特開平9−51398号公報(甲40)の段落【0028】,特開平9−73410号公報(甲41)の段落【0003】には,「サーバ」の文言は,利用者側端末と機能を兼ねるコンピュータにも使われることが開示されていること,3)特開平9−91220号公報(甲42)の段落【0004】ないし【0006】,特開平10−149270号公報(甲43)の段落【0012】,【0017】には,サーバ機能とクライアント機能\を兼ねる利用者側コンピュータを「サーバ」と呼ぶことが開示されていることを指摘する。しかしながら,原告主張の上記1)ないし3)に係る開示事項(甲34ないし43)は,「サーバ」の文言が,サーバ機能とクライアント機能\を兼ねるコンピュータ(端末)に使用されていることを示すものにすぎず,サービスを提供する側が管理するサーバコンピュータの機能の一部をサービスの提供を受けるユーザー側が管理する端末に持たせることで,ユーザー側に対するサービスの提供を可能\とする構成を開示したものではない。したがって,原告主張の上記1)ないし3)に係る開示事項(甲34ないし43)は,根拠3)の裏付けとなるものではなく,結局,根拠3)は,本件発明1−1の「サーバ」の機能の一部を「利用者装置」が担ってもよいと解すべきことの根拠となるものではない。\n

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平成23(ワ)2283 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年12月06日 大阪地方裁判所

 争点は、特許権侵害、著作権侵害、営業秘密等あります。裁判所は、いずれも認めませんでした。
 本件明細書の記載(前記(1))によれば,本件特許発明は,「攪拌羽根の先端部を基端部に対して回転方向に先行させた」構成とすることで,攪拌羽根先端部の前端縁(上記アと同様,回転方向を前,逆方向を後とした場合の前端縁)の延長線と処理容器内側面の接線(攪拌羽根先端部の前端縁の延長線と処理容器内側面との交点における接線)との間の角度を90度よりも大きくし,その結果として,攪拌羽根先端部の外周面が処理容器内側面に生成された固着物を削り落とすとともに,遠心力を受けて円周方向に移動した粒子を,処理容器内側面に衝突しない方向へと案内するという作用効果を得るものである。このような作用効果からも,「攪拌羽根の先端部を基端部に対して回転方向に先行させた」とは,「基端部」の前端縁の延長線よりも,「先端部」が前(回転方向)に出ており,「先端部」の前端縁の延長線と処理容器内側面の接線との間の角度が90度よりも大きい構\成を求めているものと解される。
ウ 小括
 以上からすると,「攪拌羽根の先端部を基端部に対して回転方向に先行させた」とは,「攪拌羽根」の回転軸から遠い部位である「先端部」が,回転軸に近い部位である「基端部」の前端縁よりも前(回転方向)に出ており,「先端部」の前端縁の延長線と処理容器内側面の接線との間の角度が90度よりも大きい構成を意味すると解するのが相当である。
(3)被告製品の充足性
 被告製品の攪拌羽根の形状は,別紙参考図面2記載のとおりであるところ,その前端縁(回転方向の縁)は,回転軸付近から処理容器内側面にかけてほぼ真っ直ぐで,「先端部」が「基端部」の前端縁の延長線よりも前(回転方向)に出てはいない。そのため,上記のとおり解される「攪拌羽根の先端部を基端部に対して回転方向に先行させた」(構成要件D)を充足しているとはいえない。\n

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平成22(ワ)12777 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月30日 東京地方裁判所

 文言侵害ではないと判断されました。
 構成要件Nには,「複数の太さが620dtex以下,伸張応力が150%伸長時において4〜17gの腰下伸縮部材が,前記ウエスト伸縮部材の間隔より短い7mm以下の間隔を持って周方向に平行に,且つ,前記吸収コアの中央部では不連続に設けられ」との構成があり,このうちの「150%伸長時」について,まず検討する。
 a 構成要件Nの「150%伸長時」の文言は,腰下伸縮部材の「伸張応力」に係る文言であり,甲4(本件第2特許公報)によれば,本件第2特許明細書の発明の詳細な説明には,構\成要件Dの構成と同一内容の記述(段落【0009】,【0010】参照)のほか,腰下伸縮部材の材質やその「伸張応力」に係る記述として,「また,これら腰下部伸縮部材21F,21Bとして使用する糸ゴムは,前述のウエスト伸縮部材20F,20Bとして使用する細い糸ゴムよりも伸張応力および断面外径が小さいか,あるいは実質的に同一のものとすることができる。ここにおいて使用する細い糸ゴムとしては,具体的には,伸張応力が,150%伸長時において4〜17gの範囲,特に5〜10gの範囲のものが好適に使用される。」(段落【0041】),「<伸縮部材について> 本発明の各伸縮部材としては,天然ゴムや合成ゴムなどの材質のほか,ウレタンなどの弾性伸縮性のものを用いることができる。また,細帯状の弾性伸縮性帯や,面積的に大きいシート状のものも使用できる。これらの例として,ウレタンなどの帯,フィルムまたはシートなどがある。フィルムとしては無孔フィルムや孔開きフィルム,さらにシートとしては前述のような網目状のシートなどを適宜選択できる。」(段落【0077】)との記載があることが認められる。しかしながら,本件第2特許明細書の発明の詳細な説明に,「%伸長時」の意味を定義する記載はない。
 b ところで,「伸長」は,「長さや勢力などがのびること。また,のばすこと。」(広辞苑。乙2の2)を意味する言葉であり,「伸長時」は,伸びた時や伸ばした時を意味し,伸びに関する用語であるから,以下,繊維やゴムの伸びに係る用語についてみることとする。(a) 繊維やゴムに係る用語についてのJIS規格前記a認定の事実によれば,本件第2発明の各伸縮部材としては,天然ゴムや合成ゴムなどの材質のほか,ウレタンなどの弾性伸縮性のものが用いられるところ,繊維やゴムに係る用語についてのJIS規格は次のとおりである。繊維製品の試験に関する主な用語について規定する「繊維用語−試験部門」のJIS規格(JIS L 0208。乙44)は,「伸び率」を,「引き伸ばしたときの長さと元の長さとの差の,元の長さに対する百分率。伸度又は伸長率ともいう。」と定義している。ゴム工業において一般的に使用する用語について規定する「ゴム用語」のJIS規格(JIS K 6200。乙45)は,「伸び率」を,「試験片又は一様な断面をもつ部分の伸びで,元の長さに対する百分率。」と定義している。
・・・
 (c) 前記(a)及び(b)認定の事実によれば,繊維やゴムについての伸びの度合いを表す用語としては,伸び率,伸度又は伸長率との語が一般的に用いられ,これらは,伸びの長さ(伸びたときの全体の長さと元の長さとの差)の元の長さに対する百分率を意味する,すなわち,自然長の時は0%と表\すものと認められる。c 次いで,おむつ等の吸収性物品に関する発明に係る特許公報における,弾性伸縮部材について用いられる「%伸長時」,「伸長率」の用法についてみる(なお,乙2の2によれば,「伸長時」と「伸張時」,「伸長率」と「伸張率」はそれぞれ同義であると認められるから,以下の(a),(b)では,それぞれ「伸長時」,「伸長率」と統一して表記する。)\n
(a) 「%伸長時」の用法について
 甲26,乙18,25,28,29,43の特許公報では,「%伸長時」の語が用いられ,これらの公報で用いられている「%伸長時」の「%」は,伸びの長さの自然長に対する百分率であり,自然長の時には0%と表すものである。この用法は,上記b(c)に述べた伸び率,伸度又は伸長率の用法と同じである。
 (b) 「伸長率」の用法について
 i 乙16,18,27,28,29の特許公報では,「伸長率」の語が用いられ,これらの公報で用いられている「伸長率」は,伸びの長さの自然長に対する百分率であり,自然長の時には伸長率は0%と表すものである。この用法は,上記b(c)で述べた伸び率,伸度又は伸長率の用法と同じである。ii これらに対し,甲14,26,27,乙30,31,32,33,43の特許公報で用いられている「伸長率」は,伸ばしたときの全体の長さの自然長に対する百分率であり,自然長の時には伸長率は100%と表すものである。この用法は,上記b(c)に述べた伸び率,伸度又は伸長率の用法とは異なるが,上記の各特許公報において,伸長率の意味を定義する記載がある。
d 本件第2特許明細書の発明の詳細な説明には,構成要件Nの「150%伸長時」の「%伸長時」の意味を定義するような記載がなく,これを特定の意味で用いていることはうかがえないから,「%伸長時」との文言は,その有する通常の意味で用いているものと考えられる。そして,前記bで述べたところによれば,繊維やゴムの伸びの度合いについて,「伸び率」,「伸長率」又は「伸度」は,一般的に用いられ,伸びの長さの元の長さに対する百分率を意味するから,同じように伸びの度合いを表\す構成要件Nの「%伸長時」も,前記cの他の特許公報における通常の用法と同様に,伸びの長さの自然長に対する百分率を意味するものとして用いていると解するのが相当である。そうであれば,構\成要件Nの「150%伸長時」は,伸びの長さが自然長の150%になっている時,すなわち,自然長の2.5倍伸長時を意味するものである。
・・・
したがって,原告らの主張する事情があるとしても,当業者が「150%伸長時」を「自然長の1.5倍伸長時」を意味するものと理解するとは認められないから,原告らの上記主張は,採用することができない。

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平成23(ワ)10341 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月08日 大阪地方裁判所

 技術的範囲に属しないと判断されました。
判決文が42ページで止まっていますので、そこまでで抽出しました。
前提事実(3)のとおり,本件特許発明1の構成要件Bは,「主プレートと補助プレートとを,スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能\に係合し且つ両プレートは分離不能に保持され,」というものである。「挿入」とは,一般に,「さし入れること,さしこむこと」を意味し,「沿う」とは,一般に,「線状的なもの,または線状的に移動するものに,近い距離を保って離れずにいること」を意味する。そうすると,上記各構\成要件のうち「スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能」とは,「スリットへさし入れる方向に,互いにスライドすることが可能\」であることをいうものと解される。また,「挿入方向」,すなわち「さし入れる方向」ないし「方向」という単語の意義からすれば,移動(スライド)の態様は,パソコン等の本体ケーシングに開設されたスリットに挿入される差込片(主プレートを構\成するベース板の先端に突設されたもの:構成要件C)の形状に沿った方向(差込片の形状が直線であれば,その直線に沿った方向となり,差込片の形状が曲線であれば,その曲線に沿った方向となる。)を指すと解される。
・・・
(2) 原告の主張について
原告は,本件各特許発明の構成要件のうち,主プレートと補助プレートをスライドさせる構\成について,公知技術等,当業者が適宜採用しうるあらゆる構成が含まれるとした上,被告各製品の構\成(主プレートと補助部材とを,ピンによって一端を枢結し,回動自在に結合する構成)もこれに含まれる旨主張する。確かに,主プレートの差込片と補助部材の突起部が重なり合う状態で,差込片,突起部及びその周辺のプレートだけを見ると,主プレートと補助部材は,差込片が差し込まれる方向(差込片の形状に沿った方向)に相対的にスライドしているということも可能\である。そこで,本件明細書の【発明の詳細な説明】の記載に加え,本件特許発明1に係る特許請求の範囲の記載が,機能的構\成をもって記載されていることを踏まえながら,検討する。

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平成23(ワ)6980 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月01日 大阪地方裁判所 

 技術的範囲に属する、間接侵害品に該当すると認定されましたが、104条の3により権利行使不能と判断されました。
 構成要件A3は,「当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物又は工具ないし工具取付軸との接触を電気的に検出する位置検出器において」というものであるが,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付具」との「接触」を「検出」する方法につき,「電気」や「電流」によって検出するとはせず,「電気的に」検出するとしている。一般に「的に」との用語を名詞の語尾に付けた場合,それそのものではないが,それと似た性質を持つものを含めた語感を持つことになるところ,「電気的に検出する」との表現は,「接触検出回路」が接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出する場合のみを指すのではなく,電気と似た性質を持つ媒体を介在させて検出した場合も含んだものと解するのが文言上自然である。イ 本件明細書の記載及び技術常識本件明細書においても,「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付具」との「接触」を「検出」する方法につき,接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出するものに限定する記載はない。むしろ,本件特許発明は,接触体に通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う誤差発生防止を課題として掲げるものであることに照らせば,位置検出の過程で接触体への通電を利用する構成であれば足り,「接触検出回路」がその電流を直接検出しているか否かで技術的範囲の属否を左右させる合理的理由は見出しがたいというべきである。
ウ 被告の主張について
被告は,「電気的に検出する」の意味につき,接触体と被加工物との間に流れる電気を直接に検出する構成に限定されると主張するが,あえて「的に」という幅を持たせる文言が使用されていることと整合しない解釈といわざるを得ず,採用できない。
エ 小括
以上によると,構成要件A3の「電気的に検出する」とは,「接触検出回路」が接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出する場合のみを指すのではなく,電気と似た性質を持つ媒体を介在させて検出した場合も含んでおり,電磁気学の技術常識に照らし,少なくとも磁気を介在させて検出した場合を含むと解するのが相当である。そして,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器の構\成ロa3は,「前記励起コイルをもって励起されている本体及び接触体と被加工物であるワークとの接触を,前記接触体,前記ワーク,及び機械主軸により閉ループ回路が形成されることにより,前記検出コイルに誘電電流が流れ,電気的に検出する位置検出器」であるが,接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流の電磁誘導によって検出コイルに誘導電流を流し,接触検出回路がこれを検出するというものである。そうすると,被加工物等との接触によって接触体などを流れた電流と接触検出回路が直接検出する電流との間には,磁気が介在することになるが,上記のとおり解釈したところの「電気的に検出する」構成といえる。したがって,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,「接触検出回路」が,接触体と被加工物等との接触を「電気的に検出する」ものであり,構\成要件A3を充足する。
(4) 構成要件A2の充足性
原告は,構成要件A2の「接続」につき,物理的に有線で接触している場合だけでなく,相互に情報を交信できるような状態をも含むと主張するのに対し,被告は,接触検出回路が接触体と直接電気的に接続されていることが必要とされている旨主張するので,この点を検討し,充足性を判断する。
ア 特許請求の範囲の記載
構成要件A2は,「当該接触体に接続された接触検出回路(3,4)とを備え,」というものであるが,「接続」の意味を明示的に表現する記載はない。しかし,特許請求の範囲の記載全体に照らして考えれば,「接触体」と「接触検出回路」の「接続」は,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付軸」との「接触」を「電気的に検出する」ことを可能\とするために必要とされる構成であることが読み取れる。そうすると,「接触体」と「接触検出回路」との「接続」は,上記「接触」を「電気的に検出する」ことが可能\な構成であることを求めているとはいえるものの,接触検出回路が接触体と直接電気的に接続されている,つまり,接触体に流れた電流が接触検出回路に直接流れるような構\成であることまでは求めていないと解される。
イ 本件明細書の記載
本件明細書において,「接続」の意味や射程を説明する記載は特にない。しかし,本件特許発明は,接触体に通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う誤差発生防止を課題として掲げるものであることに照らせば,「位置検出回路」が「接触体」と「被加工物」等との「接触」という情報を,「接触体」への通電を利用して「検出」できるものであることが必須であるところ,「接触体」と「接触検出回路」との「接続」も,かかる情報伝達が可能な構\成を求める趣旨であると解して矛盾はない一方,接触体に流れた電流が接触検出回路に直接流れるような構成に限定する合理的理由は見出しがたい。
ウ 被告の主張について
被告は,「接続」につき,接触検出回路が接触体と直接,電気的に接続されていることが必要とされている旨主張するが,その主な根拠としては,この「接続」が,構成要件A3の「電気的に検出する」の前提となる構\成であることを挙げる。この点,「接続」が「電気的に検出する」の前提として必要とされる構成であることは被告の指摘のとおりである。しかし,「電気的に検出する」の解釈につき,被告の主張が採用できないことは,前記(3)において論じたとおりであり,「電気的に検出する」を前記(3)のとおり解釈する以上,その前提となる「接続」についても,前記ア,イのとおり理解するのが一貫性のある解釈といえる。したがって,被告の主張は採用できない。
エ 小括
以上によると,「当該接触体に接続された接触検出回路」の「接続」は,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物」等との「接触」という情報を,前記(3)で示した意味で「電気的に検出する」ことを可能とする情報伝達の構\成をとっていることを求めているものの,接触体に流れた電流が接触検出回路に直接流れるなど,物理的なつながりは求めていないと解するのが相当である。
・・・
(1) 特許法101条1号
証拠(甲2〜4)によれば,ハ号スタイラスは,これを備え付けても本件特許発明の技術的範囲に属することにはならない内部接点方式の位置検出器とも適合性を有することが認められるから,本件特許発明の技術的範囲に属する製品の生産に「のみ」用いる物(特許法101条1号)であるとはいえない。この点,原告は,ハ号スタイラスを内部接点方式の位置検出器に用いることは,社会通念上経済的,商業的ないしは実用的であると認められる用途に当たらないため,「その物の生産にのみ用いる」との要件を否定する理由にはならない旨主張する。確かに,内部接点方式の位置検出器では接触体は通電されないため,その接触部の磁化による測定誤差発生という課題はなく,接触部を非磁性体とした接触体を使う必要性に欠ける。しかし,ハ号スタイラスは,超硬合金であることに由来し,被加工物等との接触を繰り返すことで摩耗や変形による測定誤差が生じることを防止するという作用効果も有するのであるから,内部接点方式の位置検出器であっても,ハ号スタイラスを装着させる実用性は肯定されるというべきである。したがって,原告の主張は採用できない。
(2) 特許法101条2号
ア ハ号スタイラスは,本件特許発明の技術的範囲に属するハ号スタイラスを装着したイ号検出器及びハ号スタイラスを装着したロ号検出器の生産に用いるものである。加えて,本件特許発明は,その課題として,通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁性化して誤差が発生することを防止するとともに,接触体が被加工物等との当接離隔を繰り返すことで摩耗や変形による測定誤差が発生することを防止することを掲げ,その解決方法として,「接触体(5)の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成されている」(構成要件B)との構\成を採るものである。そうすると,「接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる弱磁性として非磁性材であるHAN6で形成されている」(構成イb,ロb)ハ号スタイラスは,まさに本件特許発明の掲げる課題を解決する構\成を成しているといえる。したがって,ハ号スタイラスは,「物の発明」である本件特許につき,「その物の生産に用いる物」であり,かつ「その発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)といえる。イ そして,原告は,被告に対し,平成22年12月3日付の「催告書」と題する書面を送付し,被告はこれを遅くとも同月6日には受領したが,同書面には,本件特許の特許番号,登録日,本件特許発明の構成要件に加え,イ号検出器が本件特許権を侵害することなどが記載されていた(乙1,弁論の全趣旨)ところ,被告は同日以降,本件特許発明が「特許発明であること」及びハ号スタイラスが「その発明の実施に用いられること」を知っていた(特許法101条2号)といえる。ただし,同日より前の時点で,被告がそれら事実関係を知っていたと認めるに足りる証拠はない。
ウ 一方,被告は,ハ号スタイラスにつき,間接侵害(特許法101条2号)の除外要件である「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たる旨主張する。確かに,ハ号スタイラスの用途は,これを備え付けた場合に本件特許発明の技術的範囲に属することになるイ号検出器及びロ号検出器に限定されているわけではなく,本件特許発明の技術的範囲に属さない内部接点方式の位置検出器とも適合性を有するものではある(甲2〜4)。しかし,結局のところその用途は,位置検出器にその接触体として装着することに限定されており,この点,ねじや釘などの幅広い用途を持つ製品とは大きく異なる。また,そのような用途の限定があるため,実際にハ号スタイラスを購入するのは,位置検出器を使用している者に限られると考えられる。このような事情を踏まえると,ハ号スタイラスは,市場で一般に入手可能な製品であるという意味では,「一般に流通している」物とはいえようが,「広く」流通しているとは言い難い。また,そもそもこのような除外要件が設けられている趣旨は,「広く一般に流通しているもの」の生産,譲渡等を間接侵害に当たるとすることが一般における取引の安全を害するためと解されるが,上記のように用途及び需要者が限定されるハ号スタイラスにつき,取引の安全を理由間接侵害の対象から除外する必要性にも欠けるといえる。したがって,ハ号スタイラスは「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たらず,この点に関する被告の主張は採用できない。
(3) 小括
以上によると,被告によるハ号スタイラスの製造,販売は,本件特許発明との関係において,平成22年12月6日以降,特許法101条2号の規定する間接侵害の要件を満たすものといえる。
・・・
そこで次に,乙12発明の接触体の接触部について,「非磁性部材」の具体的材質の選択に当たり,乙14文献及び乙24文献の開示する技術的事項を適用して本件特許発明を想到することが容易であったかを検討する。まず本件特許発明の掲げる課題は,通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う測定誤差発生の防止と,接触体と被加工物等との繰り返しの接触による接触体の摩耗や変形に伴う測定誤差発生の防止とであるが,前者は接触体の接触部を非磁性部材とすることで解決される課題であるから,乙12発明で未解決なのは後者の課題のみである。そして,乙12文献内に明示こそされていないものの,通電方式の位置検出器の接触体の接触部は,金属製の被加工物等と繰り返し接触することが当然に想定されていること,被告において,平成元年の時点で既に接触部を超硬合金とする接触体を製造,販売し,現在まで継続していること(甲2〜4,乙19〜23)からすると,接触体の摩耗や変形に伴う測定誤差という課題は,本件特許出願(平成11年4月7日)の時点で,当業者にとって周知の課題であったといえるし,また,その解決手法として,接触体の接触部を超硬合金とすることも周知技術であったといえる。一方,タングステンカーバイトにニッケルを結合材として焼結することで非磁性体の超硬合金が得られるとの技術的事項は,昭和45年には既に文献公知となり(乙24),平成2年頒布の「改訂5版金属便覧」と題する文献にも記載され(乙14),本件特許出願(平成11年4月7日)前に技術常識であったと認められることに加え,本件特許発明と用途や課題が異なるとはいえ,同一の技術分野において本件特許出願前に頒布された文献(乙17,18)中でも,同部材が利用されていた。そうすると,乙12発明の開示する「非磁性部材」の具体的材質を選択するに際し,上記周知課題及び周知技術の下で,「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として焼結した非磁性の超硬合金」を選択することは,単に公知材料からの最適材料の選択に過ぎず,当業者の通常の創作能力の発揮であり,当業者が容易に想到することができたものといえる。したがって,乙12発明に,乙14文献及び乙24文献の開示する技術的事項を組み合わせて本件特許発明に想到することは容易であったといえる。
(5) 原告の主張について
この点,原告は,通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う測定誤差発生の防止という本件特許発明の掲げる課題が,乙12文献ほか,本件特許出願前のどの文献にも開示されておらず,本件特許発明に至る動機付けに欠ける旨主張する。しかし,この課題は,乙12文献の開示する乙12発明の構成,つまり,「接触体の接触部を非磁性部材とする」ことで既に解決されているのであるから,当該課題にかかる動機付けがなければ本件特許発明の構\成に至ることができないなどというものではない。言い換えれば,通電方式の位置検出器において,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成は,主引例である乙12文献に開示されているのであるから,かかる構\成へ至るための課題の開示,動機付けの有無を問題とする必要はないといえる。また,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成の具体的な材料選択をする前提として,そのような上位概念で表\現された構成を維持することへの動機付けが求められると解したとしても,あくまで既に公知となっている構\成を維持するだけの動機付けがあるか否かの問題であり,新規の構成へ至る動機付けがあったかが問われるわけではない。通電方式の位置検出器において,「接触体の接触部を非磁性部材とする」ことでその磁性化を防止できることは,乙12文献でその構\成に触れた当業者にとって明らかであるが,通電方式の位置検出器における測定対象は通電性のある物質であること,乙12文献中の上記構成は強磁性の環境下における位置検出器で採用されたものであることからして,接触体の接触部の磁性化を避けることができれば,切削加工等で生じた切粉の付着など磁性化に伴う不都合を回避する効果が得られることも,乙12文献に触れた当業者が予\測し得る範囲内にある。そのため,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成を採る技術的意義は,その構\成自体が示唆するものといえ,これを維持するだけの動機付けがあるといえる。なお,同様の理由により,当業者の予測し得ない顕著な作用効果や用途を見出したともいえず,かかる観点から本件特許発明の進歩性を肯定することも困難である。したがって,課題の示唆がないことを理由として本件特許発明の容易想到性を否定する原告の主張は採用できない。
(6) 小括
以上によると,本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,被告に対し,本件特許権に基づく権利を行使することはできない(特許法104条の3)。

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平成23(ワ)3850 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年10月11日 大阪地方裁判所

 本件特許の技術的範囲に属する、無効理由無しとして、差止、損害賠償が認められました。
  前記(ア)によれば,構成要件Bは,個々の容器をケース(段ボール箱等)に収容して内容物を充填して搬送したりする時に,ケース内壁と擦れたり,取扱いに際して他物と衝突したりしたときに,その箇所に孔(ピンホール)が開いてしまうことを解決するための構\成であることが認められる。その具体的な解決原理は,ケース内壁と接触する状態が発生したときに,補強リブがケース内壁と先に接触し,突条の頂部とケース内壁とが直接接触するのを避けることにある。そうすると,構成要件Bの「被覆する」とは,充填拡張時において,i) 補強リブが突条の側に傾斜する構成のものであること並びにii) 補強リブの長さ及び高さは,ケース内壁と接触する状態が発生したときに,補強リブがケース内壁と先に接触するものであり,突条の頂部とケース内壁とが直接接触するのを避けることをいうものと解される。(ウ) 被告は,本件明細書に記載された実施例では補強リブの先端が突条の頂部を超えてその反対側に到達しているから,構成要件Bは,「補強リブがケース内壁等からの外力が加えられていない状態で,先端が突条の頂部を超えてその反対側に到達していること」をいう旨主張する。しかしながら,本件の【特許請求の範囲】について,実施例に記載された構\成に限定する理由は見当たらず,上記被告の主張はそもそも失当である。また,前記(イ)で検討したところから明らかなとおり,構成要件Bは,充填拡張時において,ケース内壁と接触する状態が発生したとき,すなわち補強リブがケース内壁等からの外力を加えられた状態において,技術的意義を有する構\成である。したがって,ケース内壁等からの外力が加えられていない状態における構成を特定する意味はなく,上記被告の主張は,構\成要件Bの技術的意義を無視するものであることからしても,採用することはできない。

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平成23(ワ)7887 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年09月27日 大阪地方裁判所

 技術的範囲に属しないと判断されました。
 構成要件Dは,「少なくとも前記側壁部に柔軟性を持たせて,側壁部を折り畳み可能\とし」というものである。本件明細書の発明を実施するための最良の形態の欄には,側壁部について,「底部2,側壁部3および飲料の出し入れ口となる筒口部4の設けられた頂部5が,熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂で一体に形成され」(【0011】),「前記底部2と側壁部3は柔軟性を持たせるために薄肉に形成され」(【0012】),「上述した実施形態では,カートリッジ容器の側壁部と底部を薄肉に形成したが,側壁部のみを薄肉に形成してもよい」(【0019】)といった記載はあるものの,特許請求の範囲の欄に,柔軟性の程度や柔軟性を実現する方法についての記載は存しない。そこで検討するに,本件明細書の記載及び前記1(4)で認定した補正の経緯によれば,全体に剛性のある従来の飲料ディスペンサ用カートリッジ容器は,使用後に再使用や廃棄のために運送するのに嵩張り,運送効率が悪いとされていたところ,原告は,まず,先行出願(特願2004−293288)により,少なくとも容器の側壁部に柔軟性を持たせ,側壁部を折り畳み可能とすることで前記課題を解決し得る旨を提案していたが,その後,容器の側壁部に柔軟性を持たせたために,飲料を充填する際に側壁部が直立せず,筒口部の位置も不安定になり,飲料の充填に非常に手間がかかるとの新たな課題,あるいはカートリッジ容器を下向きにして飲料ディスペンサに接続した際に,側壁部が下方に崩れるとの新たな課題が生じたため,筒口部を上向の状態で吊り下げ係止する係止部を設ける構\成要件E,筒口部を含む頂部を厚肉に形成する構成要件F,支持枠によって,筒口部の周りの頂部を支持する共に,側壁部が下方へ崩れないよう囲われるようにする構\成要件Gを加え,本件特許を取得したものと解される。そうすると,構成要件Dにおける側壁部の柔軟性は,運送効率が悪いとの剛性のある容器の課題を解決するものではあるものの,この点は前記先行出願と同じであり,むしろ,構\成要件E,F,Gで解決すべき課題の前提となる点に意義があると解されるから,ここにいう柔軟性は,飲料を充填する際に側壁部が直立せず,筒口部の位置が不安定となるような側壁部の柔軟性,あるいは,飲料ディスペンサに接続した際に,側壁部が下方に崩れるような柔軟性を意味するものと解さざるを得ないが,そのような柔軟性を実現する方法について格別の限定はなく,素材の強度,素材の厚み,形状,加工等のいずれの方法によってもよいと解される。
(2) 構成d及びその構\成要件充足性
イ号物件については,前記1(2)及び(3)で認定したとおり,側壁部に設けられた蛇腹を利用して,補助参加人がイ号物件を折り畳んで運搬すること,飲料充填の際に伸長すること,使用後は利用者がつぶして廃棄することが認められ,その意味における側壁の柔軟性はあり,折り畳むことも可能である。反面,前記1(3)のとおり,PETボトルの特徴は,缶やガラスに比べて軽量で,衝撃強度及び剛性に優れることであるとされ,証拠(乙3,4の1及び2)によれば,イ号物件の側壁部は,飲料を充填しない状態において直立していることが認められる。イ号物件に飲料を充填する際,折り畳まれた側壁は伸長されることになるが,これは,前記認定のとおり,運搬の便宜のために意図的に折り畳んだ結果であり,イ号物件の側壁に上記程度の剛性が認められることからすると,飲料を充填する際に,自然に圧縮されるなどして側壁部が直立せず,筒口部が不安定となるほど柔軟であるとは認められない。以上によると,イ号物件の構成dは,本件発明の構\成要件Dを充足しない。

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平成23(ワ)27941 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年08月31日 東京地方裁判所

 アップルVSサムソンの特許侵害訴訟です。裁判所は、「ファイルサイズ」は,本件発明における「メディア情報」には該当しないとして、技術的範囲に属しない、すなわち、特許権侵害なしと判断しました。損害賠償のみで、差止請求はついてなかったんですね。
 上記記載によれば,本件発明は,従前のデータファイル等の一般的なファイルについて用いられていたファイル名や更新日などの情報の比較によるシンクロ方法には,シンクロが必要か否かの判定についての信頼性に課題があり,また,その処理が遅く非効率であったことから,特にメディアファイルについて,そのような課題を克服し,効率的でインテリジェントなシンクロを実現するために,上記のような一般的なファイルに備わるファイル情報ではなく,タイトル名,アーチスト名などの属性,あるいは,ビットレート,サンプルレート,総時間などの品質上の特徴という「メディア情報」に着目し,そのような「メディア情報」の比較に基づいて,メディアアイテムをシンクロする方法を採用した発明である,と認めることができる。
・・・・
 原告は,本件発明の「メディア情報」には,当然に「ファイルサイズ」が含まれるから,被告方法は構成要件G1及びG2を充足すると主張する。しかし,前記(1)ウのとおり,本件発明における「メディア情報」は,音楽,映像,画像等のメディアアイテムに特有の情報を意味すると解すべきところ,証拠〈略〉によれば,楽曲ファイル,ワードファイル及びエクセルファイルにおいて,「ファイルサイズ」は,ファイル名や更新日時といった項目と同列に扱われている一方,楽曲ファイルにおいては,「ファイルサイズ」はアーチスト,アルバムのタイトル,トラック番号,ジャンル,タイトル,長さ,ビットレート,オーディオサンプルレートといった楽曲に特有の情報項目とは区別された項目として分類されていることが認められるから,「ファイルサイズ」は,ファイル名やファイル更新日と同様に,ワードファイルやエクセルファイルなどの通常のファイルに一般的に備わるものであって,音楽ファイル等のメディアアイテムに特有の情報とはいえないというべきである。したがって,「ファイルサイズ」は,本件発明における「メディア情報」に該当しないと認めるのが相当である。

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平成23(ワ)8405 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年05月17日 大阪地方裁判所

 文言を満たしていないとして、技術的範囲外と判断しました。
 上記各記載について検討すると,まず,上記(ア)の第1の実施形態に係るスライド側壁は,目地部側の側壁の端部を覆うことができるように断面コ字状に形成されたスライド側壁本体17と,このスライド側壁本体の両端部寄りの内壁面に取付けられた,側壁16の上面を移動するローラー18とで構成されているものである。これは,スライド側壁を目地部側の側壁と間隔を空けずに構\成したものであって,上記アのとおり,本件特許発明1の構成要件Dについて,通常の意味のとおり解釈した場合における,本件特許発明の技術的範囲に属する実施例を開示したものである。これに対し,上記(イ)の第6の実施形態に係るスライド側壁は,目地部側の側壁の内壁面に「位置させて前後方向にスライド移動可能に取付けた」ものとされている。しかしながら,上記図22ないし図24によっても,イ号製品のスライド側壁(手摺10a 及び10b)及び通路の目地部側の側壁(側壁9a 及び9b)とは異なり,スライド側壁と目地部側の側壁とが接触しているか否かが判然としない。目地プレート12と一体となったスライド側壁15が,渡り通路5の側壁16で囲まれた空間に嵌合しているものとみることが可能であり,その場合は,スライド側壁を側壁に取付けたということもできる。しかし,仮に,上記実施例についてスライド側壁と目地部側の側壁とが接触しない構\成を説明したものであると解釈する場合,何をもってスライド側壁15が側壁16に取付けられているといえるのか,本件明細書には具体的な説明はなく,この構成について本件特許発明1の技術的範囲に属する構\成として開示したと解することはできない。

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平成21(ワ)15096 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月22日 大阪地方裁判所

 技術的範囲に属するとして、102条2項に基づき1億を超える損害が認められました。
 原告は,被告物件の構成を上記第3の1【原告の主張】(1)のとおり主張し,他方,被告は,これを同【被告の主張】(1)のとおり主張しているが,被告物件の縦断面図が,別紙被告物件説明書図2のとおりであることは当事者間に争いがない。したがって,被告物件の構成についての当事者の主張の違いは,被告物件の客観的構\成に争いがあることによるものではなく,同じ構成を異なる表\現を用いて記述するものと認められる。そして,後記(2)のとおり,被告物件が本件特許発明の構成要件A,C,Dを充足することは当事者間に争いがないから,結局,構\成要件Bに対応する構成bの特定のみを検討すれば足りるところ,構\成bについての当事者の主張の違いは,炉内に挿入されている炉内ヒータ(発熱体)の上側部分(発熱しない部分)の構成(このような構\成があることは争いがない。)について,被告主張のように「端部(天井の差し込み部及び天井への差し込み部から連続する発熱しない部分)」として記述すべきか否かという点にのみあると認められる(なお,当裁判所は,構成bについての被告の主張を前提としても,被告物件は構\成要件Bを充足すると判断することから,後記(2)イにおいて,被告物件の構成に係る被告の主張を前提に検討する。)。
・・・・
被告は,構成要件Bの「鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し,前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした」については,本件明細書に記載された従来技術である【図6】の炉内ヒータを除外して解釈すべきであるから,「端部(天井への差し込み部及び天井への差し込み部から連続する発熱しない部分)を除いた部分に対し,鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し,前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした」と解釈すべきと主張する。しかしながら,上記(ウ)のとおり,「鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し,前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした」とは,熱処理空間内におけるヒータの配設態様のことと解釈されることからすれば,そもそも,天井への差し込み部の構成は,本件特許発明の技術的範囲を検討する上で考慮する必要がない。
・・・
したがって,ヒータの構成について,天井への差し込み部から連続する発熱しない部分(端部)を除いた部分という限定を付する被告の主張は採用できない。\n

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平成20(ワ)27920 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年01月31日 東京地方裁判所 

 同時並行の無効審判にて、訂正は認められましたが、侵害訴訟では、構成要件該当性無し、均等侵害も否定されました。
そして,本件発明1の目的ないし作用効果のうち,人形を「所望箇所で屈曲動作ができる」とともに,「様々な姿態を一定時間維持できる」ものとするという点は,従来技術の問題点,すなわち,前記ビスクドールにおける「連結部位を屈曲させた状態のまま保持させておくことができないため,様々な動きのある姿態や人間的な動きを求める傾向のある需要者ニーズに十分対応し得なかった」との問題点や,前記マネキン人形における「頻繁に各箇所で屈曲作動を繰り返すと,その部分の針金が折損してしまう」との問題点の解決と直接結びつくものであって,本件発明1の目的ないし作用効果の重要部分に関わるものであることが認められる。してみると,本件発明1の構\成のうち,被告各製品との相違部分である「腰部骨格連結部」の「第一嵌入杆」と「胴部下端骨格連結部」の「嵌合穴」とを回動可能に連結する構\成は,本件発明1の目的ないし作用効果の重要部分を実現するために複合的に機能する構\成中の不可欠な部分をなすものということができるから,本件発明1の本質的部分に当たるものというべきである。
 c これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は,人形全体を骨格構造(一連の骨格群)で支えることとしたという点にあり,人形の連結箇所の数箇所において揺動や回動をする構\成は付加的な作用効果にすぎない旨を主張する。しかしながら,平成11年2月1日発行の雑誌「月刊ホビージャパン1999年2月号」(乙105)に株式会社ツクダホビーが販売する商品として掲載されている女性型関節可動人形「フルアクションドール」の構成(乙105の113ページ記載の写真4参照)をみると,人形全体が硬質樹脂製の骨格構\造にソフトビニル製の外皮を被せて成るものであることが認められ,また,後記(イ)a及びbのとおり,平成9年11月ころから日本国内において販売されている第1商品においても,やはり硬質樹脂製の骨格構造にソ\フトビニル製の外皮を被せて全体が形成される人形の構成が採用されていることが認められる。してみると,原告の上記主張に係る「人形全体を骨格構\造(一連の骨格群)で支える」という構成は,人形玩具の技術分野において,本件出願1の出願前に周知技術となっていたものと認めるのが相当であり,そうである以上,このような構\成を採用したことをもって,本件発明1の本質的部分であるとすることはできない。他方,本件明細書1の「発明の詳細な説明」の記載を総合すれば,本件発明1における4箇所の揺動可能又は回動可能\な連結構造が本件発明1の目的ないし効果の重要部分を実現するための構\成とされているものと理解することができることは,前記bのとおりである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

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 >> 均等
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平成20(ワ)27920 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年01月31日 東京地方裁判所 

 同時並行の無効審判にて、訂正は認められましたが、侵害訴訟では、構成要件該当性無し、均等侵害も否定されました。
そして,本件発明1の目的ないし作用効果のうち,人形を「所望箇所で屈曲動作ができる」とともに,「様々な姿態を一定時間維持できる」ものとするという点は,従来技術の問題点,すなわち,前記ビスクドールにおける「連結部位を屈曲させた状態のまま保持させておくことができないため,様々な動きのある姿態や人間的な動きを求める傾向のある需要者ニーズに十分対応し得なかった」との問題点や,前記マネキン人形における「頻繁に各箇所で屈曲作動を繰り返すと,その部分の針金が折損してしまう」との問題点の解決と直接結びつくものであって,本件発明1の目的ないし作用効果の重要部分に関わるものであることが認められる。してみると,本件発明1の構\成のうち,被告各製品との相違部分である「腰部骨格連結部」の「第一嵌入杆」と「胴部下端骨格連結部」の「嵌合穴」とを回動可能に連結する構\成は,本件発明1の目的ないし作用効果の重要部分を実現するために複合的に機能する構\成中の不可欠な部分をなすものということができるから,本件発明1の本質的部分に当たるものというべきである。
 c これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は,人形全体を骨格構造(一連の骨格群)で支えることとしたという点にあり,人形の連結箇所の数箇所において揺動や回動をする構\成は付加的な作用効果にすぎない旨を主張する。しかしながら,平成11年2月1日発行の雑誌「月刊ホビージャパン1999年2月号」(乙105)に株式会社ツクダホビーが販売する商品として掲載されている女性型関節可動人形「フルアクションドール」の構成(乙105の113ページ記載の写真4参照)をみると,人形全体が硬質樹脂製の骨格構\造にソフトビニル製の外皮を被せて成るものであることが認められ,また,後記(イ)a及びbのとおり,平成9年11月ころから日本国内において販売されている第1商品においても,やはり硬質樹脂製の骨格構造にソ\フトビニル製の外皮を被せて全体が形成される人形の構成が採用されていることが認められる。してみると,原告の上記主張に係る「人形全体を骨格構\造(一連の骨格群)で支える」という構成は,人形玩具の技術分野において,本件出願1の出願前に周知技術となっていたものと認めるのが相当であり,そうである以上,このような構\成を採用したことをもって,本件発明1の本質的部分であるとすることはできない。他方,本件明細書1の「発明の詳細な説明」の記載を総合すれば,本件発明1における4箇所の揺動可能又は回動可能\な連結構造が本件発明1の目的ないし効果の重要部分を実現するための構\成とされているものと理解することができることは,前記bのとおりである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。

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平成20(ワ)12409 製造販売禁止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成23年12月27日 東京地方裁判所

 経緯が複雑です。同時係属の無効審判にて、進歩性なしとの審決がなされ、審決取消訴訟+訂正請求により決定による差し戻しがなされました。特許庁は、訂正を認めた上で,進歩性なしとする審決をしました。この審決が平成22(行ケ)10282にて、取り消されました。かかる特許についての侵害訴訟で、裁判所は「せき止め空間のないように導かれ」との技術的意義を詳細な説明を参酌して、技術的範囲外と判断しました。
   上記i)ないしiv)を総合すると,本件明細書において,「せき止め空間」(液体せき止め空間)の用語は,「液体を静止状態に維持」し,あるいは「その中にある水が,擬似的に静止状態」となり,これにより「ノズル通路入口の上のフォーカス円錐先端の範囲に,熱レンズが生じ」あるいは「熱レンズの形成を助長」し,これによって「水ビーム内に結合されたレーザービーム」の一部が「ノズル通路入口の周範囲におけるノズルの壁に管理できない損傷を引起こす」作用を有するものとして用いられていることを理解できる。加えて,請求項1中には,「液体供給空間(35)へ供給される液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ」,「それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし」,「したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧されること」(構\成要件エないしカ)との記載があるところ,上記記載が,「それにより」及び「したがって」といった接続詞を用いながら,「せき止め空間のない」ようにすること,液体の流速を「十分に高く」すること及び「ノズル壁の損傷」を生じさせない程度の「熱レンズの形成の抑圧」がされることを一体的なものとして,作用的,機能\的に捉えていることに鑑みれば,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,液体供給空間内のレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(の領域)において,ノズル壁の損傷に至る原因となる熱レンズの形成を抑圧する程度に液体の流速を十\分に高くし,当該液体が「静止状態」あるいは「擬似的に静止状態」にないことをいうものと解される。また,このような解釈によれば,構成要件オの「液体の流速が,十\分に高く」とは,「フォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」程度に流速が高いことを意味するものと解される。そして,この「液体の流速が,十分に高く」するとの構\成は,構成要件エの「液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ」る構\成によってもたらされることによれば,被告製品を使用する加工方法における構成要件エないしカの充足性を判断するに当たっては,各構\成要件を個別に検討するのではなく,これらを一体的なものとして判断するのが妥当である。このような判断手法は,前記アで認定した本件明細書に開示されている本件発明1の技術的意義からみても合理性があるというべきである。

◆判決本文

◆関連事件です。平成22(行ケ)10282

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平成22(ワ)32858 損害賠償 特許権 民事訴訟 平成23年12月28日 東京地方裁判所

 請求の範囲の文言「摘みを垂設」について争われ、技術的範囲外と認定されました。意匠権侵害についても非類似と判断されました。
 構成要件Fは,「外側の一部にはその切取りのための摘みを垂設し,」というものであり,身(環状突片)の外側の一部にその切取りのための「摘みを垂設」することを定めている。この「摘みを垂設」について,本件明細書には,「【0014】開蓋装置5については,環状突片11の基端に,下面開放形の切取溝13を設け,その切取溝13に沿って環状突片11を切り取り得るように,一端において環状突片11に摘み15を突設し,摘み15が下向きの舌片状に形成される。」と記載され,【図1】,【図2】及び【図5】には,摘み15が下向きの舌片状に形成された形状で図示されている。また,「垂設」という用語は一般的用語ではないが,「垂」については,「たれること。ぶら下がること。」という意味があり,「垂れる」については,「重みで下にだらりとさがる。先端がさがった状態になる。」という意味があるものと認められる(いずれも広辞苑第4版)。そうすると,構\成要件Fにおける「摘みを垂設」とは,垂れ下がるように,下向きに摘み15が形成されていることを意味するものと解するのが相当である。これを被告製品についてみるに,被告製品における摘みはいずれも水平方向(容器面に対して平行)に設けられており,垂れ下がるように下向きに形成されたものはない(弁論の全趣旨)。したがって,被告製品は,いずれも構成要件Fを充足すると認めることはできない。
イ 原告は,「摘みを垂設」とは,摘みが容器側面に対して略垂直方向(水平方向)に設けられていることを意味し,そのような構成を備える被告製品はいずれも本件発明の構\成要件Fを充足すると主張する。しかしながら,かかる用語の使い方は前記した「垂」の字の一般的な意味,用法に明らかに反しており,本件明細書に「垂」ないし「垂設」をそのような特別な意味,用法で使用することについての記載がない以上,上記解釈は採り得ない。したがって,原告の主張は採用できない。  

◆判決本文

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