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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

用語解釈

平成23(ワ)22310 特許料請求事件 平成23年10月28日 東京地方裁判所

無審査の実用新案権による侵害事件です。裁判所は、本件発明にいう可変スイッチの技術的意義から、被告製品はその技術的範囲外と認定しました。
 請求の範囲ですが、出願後の補正で「可変スイッチを有する電気炊飯器」として登録されています。
 平成18年3月14日付け手続補正書により補正された【図4】には,「可変スイッチ」に関して,「スイッチ1のタイマースイッチは1分から10分までの可変スイッチとする。これでもって,おこげごはんは自由に作れる。又水分を補給することによって,おかゆごはんも作れる。タイマースイッチは,普通ごはんの出来たあとに作動させるものである。タイマースイッチは,ONを1回おすと1分である。10回おすと10分である。」と説明されており,この記載を考慮すれば,「可変スイッチ」とは,「通常炊飯が完了した後に更に作動させる加熱(追い炊き加熱)を行う時間を可変とすることができるスイッチ」を意味するものと解するのが相当である。すなわち,本件考案は,i)通常炊飯による普通ごはん,ii)通常炊飯完了後に可変スイッチによって決定された任意の時間追い炊き加熱を行うことによるおこげごはん,iii)通常炊飯完了後に水分を補給して追い炊き加熱を行うことによるおかゆごはんの3種類のごはんを作ることを特徴とするものと認められる。
(3) 被告製品の構成について
 被告製品取扱説明書(乙2)によれば,被告製品は,「芳潤炊き」,「エコ炊飯」,「炊込み」,「おかゆ」,「お急ぎ」,「やわらか」,「かため」,「ふつう」という炊飯メニューを有しており,被告製品上部の「操作・表示部」に設けられた「メニュー」ボタン(スイッチ)又は「芳潤炊き」ボタン(スイッチ)を操作することにより,上記各モードを設定するものであることが認められる。しかしながら,被告製品は,炊き上げに要する時間,消費電力等を上記各モードの設定に応じて変更することによって,上記のような様々な炊飯メニューを実現しているのであって(乙2,弁論の全趣旨),本件全証拠を検討しても,被告製品について,通常炊飯が完了した後に追い炊き加熱を行うような動作をしている事実は認められない。すなわち,被告製品における「メニュー」ボタン(スイッチ)や「芳潤炊き」ボタン(スイッチ)は,いずれも炊き始めから炊き上がりまでの条件を設定するもので,通常炊飯が完了した後の追い炊き加熱の時間を設定するものとは認められない。(4) したがって,被告製品に備えられているスイッチは,本件考案における「可変スイッチ」に該当するものではないから,被告製品は本件考案の技術的範囲に属するということはできない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 補正・訂正
 >> 新規事項
 >> 技術的範囲
 >> 文言侵害
 >> 用語解釈

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平成22(ワ)23188 特許権侵害差止等請求事件 平成23年10月19日 東京地方裁判所

 無効理由なし、特許権を侵害すると判断されました。
 以上の明細書の記載及びその課題解決のためのカフとカラー部分との関係について示した構成要件Eの記載に照らして,「直接隣接する」の技術的意義を検討すると,本件発明は,従来技術において,カフ上端部の分泌物を吸引するについて,カラーの延在部よりも上部に吸引孔を設けざるを得ず,その結果,吸引孔とカフ上端部の位置が遠ざけられ,そのためカフ上端部の分泌物を十\分吸引できなかったのを,カラーに被せるようにカフを膨らませ,気管をシールすることによって,カラー部分の存在によるカフ上端部からの吸引孔の離間を回避し,カフ上端部と吸引孔の近接を可能にしたことにあると認めるのが相当である。したがって,「直接隣接する」の意義は,カラー部分の存在による吸引孔とカフ上端部との離間が防止されていること,すなわち,カラー部分の存在によりカラー部分を隔てて吸引孔とカフ上端部が隣接することが回避されていることを意味するものと介される。したがって,カフの近位端と吸引孔の間の空隙の有無が直ちに「直接隣接する」か否かの評価に結び付くのではなく,カラー部分に重なるようにカフが膨らむ構\成によって,カラー部分の距離がそのまま吸引孔を設けることの障害となっていた従来技術と比較して,カフの上端部(近位端)と吸引孔の間の空隙を短縮することができているのであれば,「直接隣接する」と評価することができるものというべきである。

◆判決本文

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 >> 技術的範囲
 >> 文言侵害
 >> 用語解釈
 >> 104条の3

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平成22(ワ)8024 実用新案権侵害差止等請求事件 平成23年04月28日 大阪地方裁判所

 文言侵害および均等侵害ともに否定されました。文言侵害判断において、従属クレームの存在を根拠に独立クレームの解釈を争いましたが否定されました。均等侵害も本質的要件を具備しないとして否定されました。
 原告は,本件実用新案登録に係る請求項2の考案として,「横桟部材に掛合する掛合部が,靴収納用棚板の側面視においてフックもしくは下向きU字形に掛合部を形成されていることを特徴とする請求項1に記載の靴載置用棚板」が掲げられており,これからすると,請求項1における「掛合部」は,請求項2の掛合部以外の態様を広く含むものと理解することができるとも主張する。しかし,本件明細書の考案の詳細な説明欄に記載された掛合部は,前記ウのとおりであり,それ以外の掛合部の構成は記載されていない。請求項1における「掛合部」が,請求項2の「掛合部」以外の態様を含むものであるとしても,請求項2の考案は,掛合部の具体的な構\成として,「フックもしくは下向きU字形に掛合部を形成されていること」との構成を開示したにすぎず,請求項1における「掛合部」の解釈を,前記ウの解釈より広げる根拠とはならない。\n・・・ そこで,これを本件について見るに,前記1(2)ウで判示したとおり,本件考案の作用効果は,横桟部材を靴収納庫に設置したままの状態で,棚板を着脱可能に接合させることにより,既存の様々な靴収納庫や横桟部材に対応することができる点にあると解される。これに対し,被告棚板の円形の穴を横桟部材に取り付けるためには,いったん横桟部材を取り外して,上記穴に横桟部材を挿通させた上,棚板の付いた横桟部材を靴収納庫に取り付けなければならず,横桟部材を本来の取付位置にある状態のままで,被告棚板を接合させることはできない。そうすると,被告棚板の円形の穴では,本件考案の目的を達することができず,同一の作用効果を奏するものとは認められない。(3) また,前記1(2)ウで判示したところによると,上記接合部は,本件考案の本質的部分ということができる。

◆判決本文

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 >> 文言侵害
 >> 用語解釈
 >> 均等
 >> 第1要件(本質的要件)

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平成21(ワ)18507 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成23年01月21日 東京地方裁判所

 特許権侵害認定されました。「載置」は特許用語なんですね。
 前記(ア)のとおり,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明の「載置部」は,座面の周縁部を少しの高さだけ下方に湾曲させて周縁部に形成した部分であり,先端縁,両側縁部及び後縁部から構成されている。そして,i)「載置」とは,「物の上に他の物を置くこと」を意味すること(「特許技術用語集(第3版)」(日刊工業新聞社)67頁),ii)「幼児用補助便座」は,便器付属の便座に載置して使用する構成のものを指すこと(本件明細書の段落【0001】)からすれば,本件発明の「載置部」は,便器付属の便座の上に補助便座を置く部分をいい,換言すれば,補助便座において便器付属の便座の上面に接する部分を意味するものと解される。一方で,本件明細書の記載(前記(イ))によれば,本件発明は,従来の便座の構造は,座面全体を水平かつ平滑に形成し,排泄のための透孔部分のみを座面から透孔内周面に向かって円弧状に湾曲形成しただけのものであったが,近時の便座は,保温機能\や暖房機能を付加し,あるいは洗浄機能\付きのものは後方部分が上方に傾斜した形状となり,また,便座面の湾曲形状が前面位置と,後面位置では湾曲の態様を別異に形成したり,あるいは座面の外側位置から内周位置に向かって徐々に傾斜させるなど複雑な座面形状を採用したものがあり,これらの近時の便座の構造に対応するものであることに照らすと,本件発明は,座面全体を水平かつ平滑に形成した従来構\造の便座だけではなく,様々な座面の形状を有する近時の便座に対応することを前提とするものといえるから,本件発明の「載置部」は,その構成部分(先端縁,両側縁部及び後縁部)の全体が便器付属の便座の上面に接することまで想定したものではなく,少なくともその構\成部分の一部が便座の上面に接する部分として規定されているものと解するのが相当である。

◆判決本文

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平成22(ネ)10031 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成23年01月31日 知的財産高等裁判所

 知財高裁は、侵害不成立とした原審を破棄しました。
 上記記載によれば,構成要件C1の「・・・後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」は,従来技術においては,前後の壁面の上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されている流し台のシンクでは,上側段部と中側段部のそれぞれに,上側あるいは中側専用の調理プレートを各別に用意しなければならないという課題があったのに対して,同課題を解決するため,後方側の壁面について,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とをほぼ同一の長さに形成して,それら上側段部と中側段部とに,選択的に同一のプレートを掛け渡すことができることを図ったものである。ところで,上記記載における「発明の実施形態」では,後方側の壁面は,上側段部から中側段部に至るすべてが,奧方に向かって延びる傾斜面であり,垂直部は存在するわけではない。しかし,本件明細書中には,「本発明は,上述した実施の形態に限定されるわけではなく,その他種々の変更が可能\である。・・・また,シンク8gの後方側の壁面8iは,上側段部8fと中側段部8nとの間が,第2の段部8bを経由して,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる上部傾斜面8pとなっていなくとも,上側段部8fと中側段部8nとに同一のプレートが掛け渡すことができるよう,奥方に延びるように形成されているものであればよく,その形状は任意である。」と記載されていることを考慮するならば,後方側の壁面の形状は,上側段部と中側段部との間において,下方に向かうにつれて奥方に向かってのびる傾斜面を用いることによって,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とを容易に同一にすることができるものであれば足りるというべきである。そうすると,構成要件C1の「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」とは,後方側の壁面の形状について,上側段部と中側段部との間のすべての面が例外なく,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面で構\成されている必要はなく,上側段部と中側段部との間の壁面の一部について,下方に向かうにつれて奥行き方向に傾斜する斜面とすることによって,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とを容易に同一にするものを含むと解するのが相当である。

◆判決本文

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平成21(ワ)34337 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年12月24日 東京地方裁判所

 クレームの機能的表\\現について、イ号が技術的範囲に属すると判断されました。損害額について102条2項が認定されています。
 構成要件Fにおける「操作体が前記元姿勢に位置するときには該可動歯先端が固定歯先端から離間する方向の回動が規制され」とは,「操作体が元姿勢に位置するときに可動歯の先端が固定歯の先端から離間する方向の回動(円運動)が規制(制限)される」ことを,「操作体の復帰弾機に抗する強制移動に伴い回動規制が解除されて可動歯先端が固定歯先端から離間して拡開するよう揺動する」とは,操作体を復帰弾機に抗して強制移動することにより,上記規制(制限)をとりやめ,「可動歯の先端を固定歯の先端から離間して拡開するよう揺動させる」ことを意味するものと認められる。もっとも,本件明細書の特許請求の範囲請求項1には,回動規制を達成するために必要な具体的な構\成は明らかにされていない。このように特許請求の範囲に記載された発明の構成が機能\的,作用的な表現を用いて記載されている場合において,当該記載から直ちに当該機能\ないし作用効果を果たし得る構成であればすべてその技術的範囲に含まれると解することは,明細書に開示されていない技術思想に属する構\\成までもが発明の技術的範囲に含まれることとなりかねず,相当でない。したがって,特許請求の範囲に上記のような機能的,作用的な表\現が用いられている場合には,特許請求の範囲の記載だけではなく,明細書の発明の詳細な説明の記載をも参酌し,そこに開示された具体的な構成に示されている技術思想に基づいて当該発明の技術的範囲を確定すべきものと解するのが相当である。
・・・
上記発明の詳細な説明の記載及び図面によれば,本件発明は,操作者が指掛け部から指を離す,すなわち,操作部を操作しない状態において,魚の口(下顎)をしっかり挟持することができ,魚掴み操作の操作性が向上することを,効果として狙ったものであり(段落【0005】),その効果を奏するために,魚が釣れた場合,魚掴み器の握り部を把持した状態で操作体の引き上げ操作をして可動歯を固定歯から拡開させ,魚の針掛かりしている口の下顎を挟むようにしていずれかの歯を入れ,操作体を離すと,可動歯が揺動して閉じて下顎を両歯で挟持することになり,この状態で針を外せば,魚体を触ることなく針外しができ,魚にダメージを与えることがないという手法(段落【0017】)をとったものと認められる。・・・そうすると,構成要件Fの「回動規制」の技術的意義は,復帰弾機の付勢力によらずに,ピンや長孔を用いて操作体の移動を阻止する構\\成を採用し,操作体が元姿勢に位置していること自体によって,可動歯が動かないようにすることにあると認められる。
(5) 被告製品は,・・・別紙図面1及び別紙図面2のとおり,操作体をコイル弾機に抗して右方向に強制移動させると,上記回動規制の状態を脱し,可動歯先端が固定歯先端から離間して拡開するものであることが認められる。そうすると,被告製品における上記構成は,本件明細書の発明の詳細な説明に具体的に開示されたところの,操作体に左方向(固定歯向きの左方向)の力が掛かった際に,ピンや長孔を用いて操作体の移動を阻止することによって可動歯を動かないようにするという構成と,技術思想を同じくするものであると解され,当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて採用し得る範囲内の構\成であるといえる。

◆判決本文

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 >> 用語解釈
 >> 機能クレーム
 >> 102条2項

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