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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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令和4(ネ)10106 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年6月8日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所

鉄道会社が、新聞記事をスキャンして、社内イントラネットにて閲覧できるようにしていた行為について、複製権侵害・公衆送信権侵害が争われました。1審は約200万円の損害賠償を認めました。知財高裁も同様ですが、損害額が上がっています。

1審被告は平成30年度掲載記事が「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)であり、著作物に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記認定のとおり、平成30年度掲載記事(甲9、10、乙14)は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表\現上の工夫をして記事を作成していることが認められ、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表\現されたものと認められるものであり、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」であるということはできない。
また、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り、報道を目的とする新聞記事であるからといって、そのような意味での創作性を有し得ないということにはならない。
したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。その他1審被告は、平成30年度掲載記事が著作物に該当しない理由を縷々指摘するが、いずれも採用することができない。

◆判決本文

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◆令和2(ワ)3931

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◆令和5(ネ)10008

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◆令和2(ワ)12348

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令和4(ネ)10125 損害賠償金請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和5年4月18日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ウェブページのフライパンの説明画像についての損害賠償請求事件です。1審は著作権侵害を認め、5万円の賠償を認めました。原告は、残りの約15万円の支払いを求めて控訴しましたが、控訴棄却です。関連事件がたくさんあります。

(1) 控訴人は、前記第2の4のとおり、1)本件各画像がウェブページごとに独立して利用されている以上、損害額はウェブページ数を基本に算定すべきである(同(1)及び(2))、2)第三者に許諾することを想定していない著作物にも相場の利用料を参酌して利用料を算出するべきである(同(3))旨主張する。上記主張に対して、引用に係る原判決の第4の3(補正後のもの)において説示するところを改めて敷衍すると、次のとおりである。
(2) 著作権法114条3項によって、著作権者が著作権侵害によって受けた損害の額とすることのできる「受けるべき金銭の額に相当する額」の算定に当たっては、当該著作物の利用回数あるいは当該利用から生じた利益等の、当該著作物の直接の侵害行為の物理的な分量に従うのみならず、当該著作物の利用期間、利用態様、当該著作物から享受できる内容又は価値、侵害者の内心の態様(同条5項参照)、当該著作物を利用する市場の状況、他の者への利用許諾の状況等の諸般の事情を総合考慮して定めるべきものである。
本件についてみると、ウェブサイトの閲覧上、本件各画像は、見かけ上、本件商品の数に相当するウェブページで閲覧されるものではあるが、それらは一定の目的をもって一体化された画像の一部が使い回されているとみることも可能なものであり、一体の利用とみることができるから、本件各画像又はウェブページごとに複製又は送信可能\化について損害額を算定することは妥当とはいい難い。そして、本件各画像の利用期間も短期間であって、たとえ通販サイトであろうとも、閲覧に供された回数は限定的なものと考えるのが自然である。さらに、本件画像2)中のフライパンで調理中の食材を写した写真と本件画像3)中のフライパンを製造している職人の写真は、スキャンパン社から提供を受けたものであることを控訴人は自認しており(スキャンパン社がこれら写真に係る著作権を控訴人に譲渡したことを認めるに足りる証拠はない。)、控訴人が著作権を有するものではないし、本件各画像は商業的実用用途を目的とする著作物であって、むしろ、本件各商品をありのままに表現することを主目的とするものと理解され、その表\現される思想又は感情は限定的なものであるといえる。このことは、本件各画像が文字、写真等の素材を組み合わせたものであったとしても変わるものではない。また、被控訴人に過失があることは免れないとしても、それは重大なものではなく、その利用目的も、控訴人の営業を殊更に妨害するためであったり、本件各画像に表現されたところから享受できる価値を損なうためであったりなどの、専ら害意に基づくものとは認められず、単純なる自己の営業のための商業的利用にすぎない。n
(3) 次に、写真又は画像についての利用許諾状況をみてみると、日本美術著作権協会の利用申請方法は、画像の利用許諾を原則として1用途1目的につき毎回申\請を要するものと定めていること(甲26)、株式会社東京美術倶楽部の使用料規程は、コンピューター・ネットワークにおける美術の著作物の利用料の額を、著作物1点あたり1回につき1か月当たり1万円(美術関係業態以外)、2か月目以降は5000円と定めていること(甲27)、朝日新聞社が運営するデータベースの利用規約は、収録された写真、動画等を提供するサービスにおける法人の利用条件を、1媒体につき1用途1回限りの非独占的使用に限り、重版、再放送その他の用途で再利用する場合には別料金が発生すると定めていること(甲28)、Imagenaviの利用ガイドは、画像素材について、使用になる用途、期間によって料金設定が決まり、複数媒体に使用する場合には1使用ごとに料金が発生すると定めていること(甲29)が認められるが、これらの規定が念頭に置く「目的」、「用途」、「回数」又は「使用」は何を基準とするかは一義的には明らかでなく、ましてや上記各証拠がウェブサイトという1媒体の中における利用料をウェブページを基準にして決めていると理解することも困難であるから、これら利用料の算定方法を直ちに本件における損害額の算定方法の参考とすることはできない(なお、控訴人から音楽又は音源の利用に関する利用許諾に関する証拠も提出されているが、著作物としての性質が大きく異なるものであり、その参酌は相当でない。)。
(4) さらに、写真又は画像についての利用料についてみると、毎日新聞社は、同社が権利を有する報道写真等をインターネット上で商業利用する者に対し、2万2000円から4万4000円の利用料の支払を求めることがあり(甲5)、朝日新聞社は、同社が権利を有する報道写真等をインターネット上で利用する者に対し、使用期間6か月までの場合に2万2000円、使用期間1年までの場合に3万3000円、使用期間3年までの場合に5万5000円の使用料の支払を求めることがあり(甲6)、株式会社アフロは、同社が権利を有する様々な種類の静止画像をインターネット上の広告やホームページなどに利用する者に対し、同一ウェブサイト内においては利用箇所を問わず、利用期間1年までの場合に2万2000円、利用期間3年までの場合に2万8600円、利用期間5年までの場合に3万3000円の利用料の支払を求めることがある(甲7)との事実が認められるものの、利用許諾される写真のサイズ、質等や、媒体の数、掲載場所等の利用許諾の際の利用条件の詳細が不明であり、これら利用料をそのまま本件における損害額の算定について参考とすることはできず、ましてや、上記利用料を参考として算定した額をウェブページ1ページ当たりの損害として損害額を算定すべきとする根拠ともならない。また、ペイレスイメージズは、印刷物又はウェブ用との用途における画像素材単品での購入価格を、解像度、大きさに応じて440円から5500円に設定しているとの事実は認められるものの(乙3)、どのような画像が想定されているのか不明であり、やはり、この購入代金をそのまま本件における損害額の算定について参考とすることができない。
(5) 以上のとおりであり、本件記録に顕れた諸般の事情を考慮すると、本件における損害額は、被告サイト全体における利用について5万円とするのが相当であると認められ、控訴人の前記(1)1)の主張を採用することはできず、同2)に主張するところを参酌しても、上記結論は左右されない。
3 当審における控訴人の追加主張に対する判断
控訴人は、前記第2の5のとおり、原審及び当審において生じた訴訟費用を不法行為に基づく損害として追加する旨を主張する。民事訴訟手続の遂行により要した費用のうち、民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものについては、専ら訴訟裁判所の裁判所書記官の処分を経て取り立てることが予定されているというべきであるから、当該訴訟における不法行為に基づく損害賠償請求において、民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することは許されないと解される(最高裁判所平成31年(受)第606号令和2年4月7日第三小法廷判決参照)。控訴人は、訴え提起及び控訴提起の手数料や書類の送付に要した郵便費用を不法行為に基づく損害として主張するが、これらは民事訴訟費用等に関する法律2条1号、2号に定めるものであるから、これら費目を本件において損害賠償として請求することはできない。n

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◆令和3(ワ)28410


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令和3(ワ)17636  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和5年4月14日  東京地方裁判所

Yahoo!地図が原告地図の複製・翻案に該当するか争われました。東京地裁(29部)は、「記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して判断すべき」との判断基準を示しました。結論は請求棄却です。原告は個人です。

(1) 複製及び翻案の判断方法
ア 著作物の複製(著作権法2条1項15号)とは、印刷、写真、複写、録 音、録画その他の方法により有形的に再製することをいう。また、著作物 の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表\現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして、著作権法は、思想又は感情の 創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照)、既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、\n事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない 部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製 又は翻案には当たらないと解するのが相当である(最高裁平成11年(受) 第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁 参照)。
そうすると、プロアトラスSV及びYahoo!地図が原告地図1を複 製又は翻案したものに当たるというためには、原告地図1とプロアトラス SV及びYahoo!地図が、創作的表現において同一性を有することが必要であるものと解される。したがって、原告地図1とプロアトラスSV\n及びYahoo!地図との間で、アイデアなど表現それ自体でない部分でのみ同一性が認められる場合には、プロアトラスSV及びYahoo!地\n図は原告地図1を複製又は翻案したものに当たらない。また、原告地図1 とプロアトラスSV及びYahoo!地図との間に、表現において同一性が認められる場合であっても、同一性を有する表\現がありふれたものであるなど、その表現に創作性が認められない場合も、プロアトラスSV及びYahoo!地図は原告地図1を複製又は翻案したものに当たらないと解\nすべきである。
ところで、複製又は翻案の成否を判断するに当たっては、著作権を主張 する者が作成したものに着目して創作性を判断し、その上で、被疑侵害者 が作成したものを観察して、著作権の創作的表現と認められる部分が再製されているか否かを判断するとしても、原告地図1における創作的表\現がプロアトラスSV及びYahoo!地図に再製されていると認められるか 否かを検討する必要があるから、原告地図1とプロアトラスSV及びYa hoo!地図の共通部分が創作的表現であるか否かを検討した場合と結論を異にするものではないというべきである。\n
イ この点、地図は、地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号 によって客観的に表現するものであるから、個性的表\現の余地が少なく、 文学、音楽、造形美術上の著作物等に比して、著作権法上の保護を受ける 範囲が狭いのが通例である。しかし、地図において記載すべき情報の取捨 選択及び表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表\れ得るということができる。そこで、地図の著作物性は、記載すべき情報の取捨選択及 びその表示の方法を総合して判断すべきものであり、前記アの創作的表\現 の同一性についても、このような観点から検討すべきである。
(2) プロアトラスSVが原告地図1を複製又は翻案したものであるか
ア 証拠(甲1、4、63)及び弁論の全趣旨によれば、原告地図1は、沖 縄県糸満市周辺の地図であること、原告地図1及びプロアトラスSVにお ける同市潮平及び阿波根周辺の各記載は、別紙原告地図1・A及びプロア トラスSV・Aのとおりであること、同市照屋周辺の各記載は、別紙原告 地図1・B及びプロアトラスSV・Bのとおりであること、同市兼城周辺 の各記載は、別紙原告地図1・C及びプロアトラスSV・Cのとおりであ ることが認められる。そこで、別紙原告地図1・AないしC及びプロアトラスSV・AないしCを対比し、原告が主張する原告地図1とプロアトラスSVの共通部分 (前記第3の1(原告の主張)(1)ア(ア)a(a)1)ないし5)並びに(b)6)及び 7)。以下、この第4の1(2)アの検討においては、当該(原告の主張)で付 した頭書の番号に従って、「共通部分1)」などという。)が創作的表現と認められるかについて検討する。\n
(ア) 共通部分1)について
a 原告は、原告地図1とプロアトラスSVには住宅地図であるという 共通部分1)が存在すると主張するところ、別紙原告地図1・Aないし C及びプロアトラスSV・AないしCを対比すると、建物や住宅、道 路、河川等が記載されている点で一致するとは認められるものの、こ れらの具体的な記載が一致しているとは認められない。
b 前記aの一致点について検討すると、地図に建物や住宅、道路、河 川等を記載すること自体はアイデアにすぎず、共通部分1)は、表現それ自体でない部分で同一性を有するにすぎないというべきである。\n したがって、共通部分1)について、創作的表現において同一性を有するものと認めることはできない。\n
(イ) 共通部分2)について
a 原告は、原告地図1とプロアトラスSVが、いずれも、検索の目安 となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物について、居住 人氏名や建物名称の記載を省略し、住宅及び建物のポリゴン並びに番 地のみを記載し、当該ポリゴンは影なしのポリゴンであり、番地は当 該ポリゴンのほぼ中央に、紙面又は画面の水平方向に沿って横書きで、 折り返すことなく、必ずしも当該ポリゴンの内部に収まらずに、アラ ビア数字で記載されている点を、共通部分2)として主張する。しかし、別紙原告地図1・AないしC及びプロアトラスSV・Aな いしCを対比すると、原告地図1とプロアトラスSVで、同じ建物に ついて名称が記載されているものもあれば、一方の地図では名称が記 載されているが、他方の地図では記載されていないものもあり、公共 施設やビル等のうち検索の目安となるものや著名なものが異なるとい える。また、原告地図1とプロアトラスSVで、住宅及び建物のポリ ゴンの具体的な記載が全て一致するとは認められない。さらに、原告 地図1では、ほぼ全てのポリゴンにつき番地が記載されているのに対 し、プロアトラスSVでは、番地が記載されていないポリゴンが相当 数ある。
したがって、原告地図1とプロアトラスSVは、一部の住宅及び建 物のポリゴンの具体的な記載の点、一部の建物について建物名称が記 載され、住宅の居住人氏名やその他の建物の建物名称の記載は省略さ れている点、住宅及び建物がポリゴンで表現されており、当該ポリゴンには影が記載されていない点、一部の住宅及び建物の番地が、当該\nポリゴンのほぼ中央に、紙面又は画面の水平方向に沿って横書きで、 折り返すことなく、必ずしも当該ポリゴンの内部に収まらずに、アラ ビア数字で記載されている点でのみ一致すると認めるのが相当である。
b 前記aのとおり、原告地図1とプロアトラスSVで、一部の住宅及 び建物のポリゴンの具体的な記載が一致したとしても、それは、同じ 住宅又は建物を真上から見たときの外枠を記載したことによるもので あるから、住宅及び建物の形状という事実において同一性が認められ るにすぎない。また、原告地図1では、ポリゴンが淡い黄色であるの に対し、プロアトラスSVでは、ポリゴンは薄い灰色、濃い灰色又は オレンジ色であること、原告地図1では、番地は、黒色で、各数字が 鉛直方向に記載されているのに対し、プロアトラスSVでは、番地は、 薄茶色で、各数字が斜体で記載されていることを考慮すると、その他 の一致点は、具体的な表現において同一性を有するものとは認められず、地図の記載方法というアイデアにおいて同一性が認められるにす\nぎないといわざるを得ない。
さらに、共通部分2)が表現において同一性を有するものであるとしても、証拠(乙6、7、11、14、15、25、32ないし38)\nによれば、原告地図1の作成当時、建物及び住宅の真上から見た形状 を影なしのポリゴンで記載した地図は複数存在したと認められる。そ うすると、このような記載方法については、ありふれていたといえる 上、原告地図1の表示範囲である沖縄県糸満市周辺の地図において、建物及び住宅の形状をこのようなポリゴンで記載するとしても、ポリ\nゴンは建物及び住宅の形状に従って記載するものであるため、表現の選択の幅は狭いといわざるを得ないから、創作性は認められないとい\nうべきである。
その上、証拠(乙7、14、15、25、32ないし38)によれ ば、原告地図1の作成当時、建物及び住宅の番地が、建物及び住宅の ポリゴンの中央付近に、アラビア数字で折り返すことなく横書きされ た記載を含む地図は複数存在したと認められる。そうすると、このよ うな記載方法についても、ありふれていたといえる上、原告地図1の 表示範囲である沖縄県糸満市周辺の地図において、建物及び住宅の番地をこのように記載するとしても、番地はあらかじめ指定されている\nものであるため、表現の選択の幅は狭いといわざるを得ないから、創作性は認められないというべきである。したがって、共通部分2)は、表現それ自体でない事実又はアイデアにおける同一性を有するにすぎないか、表\現において同一性を有する としても、その表現に創作性は認められないから、共通部分2)につき、 創作的表現において同一性を有するものと認めることはできない。
c これに対して、原告は、乙第6及び32ないし34号証の各地図は 一般住宅の居住人名が記載された箇所があること、乙第7、14、1 5及び36ないし38号証の各地図は極めて特殊な状況の下で、一部 地域についてのみ作成されたものであること、乙第10号証の地図は そもそもポリゴンの記載がないこと、乙第18号証の地図はポリゴン を記載し、一般住宅の居住人名を記載せず、一部の建物の名称を記載 するという特徴を有しないこと、乙第24及び25号証の各地図は主 に自動車での移動等のために広域の道路情報や地理情報を得ることを 目的としたものであり、そもそも居住人名や番地を記載する必要はな いことからすると、原告地図1の記載がありふれていたことの証拠と ならないと主張する。
しかし、上記各地図は、いずれも、建物及び住宅の真上から見た形 状を影なしのポリゴンで記載したり、建物及び住宅の番地が、建物及 び住宅のポリゴンの中央付近に、アラビア数字で折り返すことなく横 書きされたりする部分を含んでいると認められ、他方で、本件全証拠 によっても、上記各地図が特殊な目的のために作成されたものである といった、ありふれていることを否定するような事情を認めることは できない。そうすると、上記の記載方法はありふれていたものといわ ざるを得ない。

◆判決本文

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令和3(ワ)13720 著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和5年1月20日  東京地方裁判所

出版権に基づく著作権侵害を主張しましたが、裁判所は、「相違部分には、被告の思想又は感情を創作的に表現した部分が含まれる」として、原作のまま複製には該当しないと判断しました。\n

1 争点1(被告表紙等が原告表\紙を「原作のまま…複製」(著作権法80条1項 1号)したものであるか)について (1) 前記前提事実(2)イのとおり、原告は、Bとの間で、本件出版契約を締結し、 原告漫画について、紙媒体出版物(オンデマンド出版を含む。)として複製 し、頒布することなどを内容とする「出版権」の設定を受けることを合意し たところ、この合意内容によれば、原告は、原告漫画を目的とする出版権と して、「頒布の目的をもつて、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方 法により文書又は図画として複製する権利」(著作権法80条1項1号)を 取得したものと認められる。 そして、上記出版権は、著作物を「原作のまま…複製する権利」であるこ とからすると、出版権の目的である著作物を有形的に再製する行為には及ぶ が、上記著作物のうち創作的表現とは認められない部分と同一性のあるもの\nを作成する行為には及ばないし、翻案、すなわち、上記著作物の表現上の本\n質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加え\nて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が\n上記著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物\nを創作する行為(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第1 小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)にも及ばないと解される。 (2) 証拠(甲4、5)によれば、被告が作成した被告表紙等は、少なくとも以\n下の部分において、原告表紙と相違すると認められる(以下、これらの相違\n部分を「本件相違部分」という。)。
ア 原告人物1の髪は目及び耳にかかる程度の長さで描かれているのに対し、 被告人物1の後髪は肩にかかり、横髪は耳を隠し、前髪は頬にかかるほど の長さで描かれている部分
イ 原告人物1の右耳は飾りが付いていないように描かれているのに対し、 被告人物1の右耳はピアスのように見える飾りが付いているように描かれ ている部分
ウ 原告人物2の髪は自然に流れるようにウェーブした状態に描かれている のに対し、被告人物2の髪は、複数の束となっており、束ごとに髪先が直 線的に切りそろえられた状態に描かれている部分
エ 原告人物2の瞳は略楕円形で、眉毛は細い線のように描かれているのに 対し、被告人物2の瞳は略円形で、眉毛は太く描かれている部分
オ 原告人物2は口をほとんど開けていないように描かれているのに対し、 被告人物2は、口を開き、歯が覗くように描かれている部分 カ 原告人物1及び2は学生服及びワイシャツを着ているように描かれてい るのに対し、被告人物1及び2は学生服及びワイシャツとは異なる服を着 ているように描かれている部分
(3) 前記前提事実(1)イ及び(3)並びに前記(2)の認定事実によれば、二次創作同 人誌を発行していた被告は、自らの知識や経験に基づき、被告漫画のストー リーや登場人物の設定等を念頭に置きつつ、被告漫画の表紙及び中表\紙とし てふさわしいものとなるように考えながら、原告表紙との本件相違部分を含\nむ被告表紙等を作成したということができる。そして、本件相違部分は、人\n物の髪型、目及び衣服といった当該人物の外見を特徴付ける部分に関する表\n現であり、別紙対比表からも明らかなとおり、被告表\紙等における被告人物 1及び2の外見の描写のうち本件相違部分が占める割合は小さくない。さら に、本件相違部分に係る表現がありふれたものであることを認めるに足りる\n証拠はない。したがって、本件相違部分には、被告の思想又は感情を創作的 に表現した部分が含まれると認めるのが相当である。\n
そうすると、原告表紙と被告表\紙等との共通部分に創作的表現が認められ\nない場合には、被告表紙等は、原告表\紙のうち創作的表現とは認められない\n部分と同一性があるにすぎず、被告は、創作的表現を含む本件相違部分を備\nえた、原告表紙とは別の新たな著作物である被告表\紙等を創作したといえる。 また、上記共通部分に創作的表現が認められる場合には、被告は、新たに創\n作的表現を含む本件相違部分を加えることにより、原告表\紙の表現上の本質\n的な特徴を直接感得することのできる別の著作物である被告表紙等を創作し\nたものであるから、原告表紙を翻案したものといえる。\n
以上によれば、被告表紙等は、いずれにしても、原告表\紙を「原作のまま …複製」(著作権法80条1項1号)したものとは認められないから、被告 が被告表紙等を作成したことにより原告漫画に係る原告の出版権が侵害され\nたとは認められない。

◆判決本文

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令和3(ワ)5086  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年12月12日  大阪地方裁判所

原告の「桜のイラスト」の複製・翻案かが争われました。大阪地裁は、著作物性は認めたものの、創作性ある部分が共通しないとして、請求棄却しました。

3 争点2(被告各イラストが、原告各イラストを複製ないし翻案したものであり、 かつ同一性保持権を侵害するものであるかどうか)について(被告イラスト2に 関する判断)
前記2の認定によると、原告イラスト1は、現実の桜にみられる要素を原告な りの手法により適宜デフォルメして表現し、それらを組み合わせた上、認定に係\nる背景を付した所定の用紙上に配置するなどして1個のデザインとして完成さ せたものであって、認定した表現を含む表\現の総体としては原告の個性が現れた ものであって創作性があるといえ、著作物性を一応肯定できる(争点1)。 よって、進んで争点2について判断する。
この点、原告は、原告特徴1)〜9)が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴で\nあり、そのうち原告特徴1)及び3)〜9)が被告各イラストと共通し、被告各イラス トに接した者が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を直接感得することが\nできると主張するところ、原告は、主に被告イラスト2との対比において複製な いし翻案を主張したので、まず被告イラスト2について検討する。
(1) 原告特徴1)について
原告主張の原告特徴1)は、前記第3の2(1)に主張のとおりであるところ、 ここでいう「背景全体」とは、花の白いスタンピング(かすれ要素A)が原告 特徴2)として特定されてこれが除かれていることから、原告イラスト1から、 正面視花要素A、側面視花要素A、つぼみ要素A、かすれ要素Aを除いた部分 をいうものと解される。
そして、前記認定によると、同部分の具体的態様は、「色調の異なるピンク色 や一部オレンジ色が、不明瞭にぼかし味をもちながら配色された」ものであっ て、これと対応する被告イラスト2の要素としては、「赤みのある紫、青みのあ る紫、オレンジ色などがグラデーション、ぼかしを伴って全体としてはマーブ ル状に彩色され、前記すかしを伴ったスタンピング要素Bがランダムに散りば められている」背景部分が該当する。
この点、原告イラスト1と被告イラスト2の背景部分は、そもそもの枠の大 きさが異なることに伴う広がりの規模や、背景として認識される部分の形状が 大きく異なって特段の共通点を見出し難い上、被告イラスト2における、赤み のある紫、青みのある紫、オレンジ色などがマーブル状に彩色されている点は、 原告イラスト1にはみられない被告イラスト2の特徴というべきであって、こ れらの相違点の与える影響は大きなものがある。したがって、原告特徴1)で指摘する内容は、被告イラスト2との共通点を構成しないというべきである。\n
(2) 原告特徴3)ないし同4)について
原告は、原告特徴3)及び同4)が被告イラスト2にもみられると主張するとこ ろ、前記認定によると、原告イラスト1には、5または6個の正面視花要素A 等で構成されるまとまりが台紙の略左中央上、略右上及び略右下の3か所にあ\nることが認められる。また、原告特徴4)中の「空きスペース」に描かれた「適 宜桜の花」が具体的に何を指すかは必ずしも明らかではないが、右上上端及び 左中下端に見切れた正面視花要素Aが各1個、台紙略左下のおおむね中央に正 面視花要素A1個をいうものと解され、これらが同位置に配されている。
一方、被告イラスト2においては、3個の正面視花要素B等で構成されるま\nとまり(別紙被告イラスト2分析図でいうγ及びεのまとまり)、4個の正面 視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうδのまとまり)、5個の\n正面視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうα及びβのまとまり)\nが、袋体正面では15から20個、前記αからεまでのまとまりが回転を加え たうえでやや不規則に被告イラスト2の枠を埋めるように配されている。また、 これらのまとまりが不整形な形状のためにできたまとまりのない部分に正面 視花要素Bが単独で配されている。 そして、原告イラスト1にみられるまとまりと、被告イラスト2におけるま とまりを、それ自体で相互に比較しても、各構成要素(正面視花要素、側面視\n花要素、つぼみ要素)の構成や形態において同一のものは認められない上、被\n告イラスト2においては、まとまりの数自体や、まとまりの繰り返しによって 与えられる印象が強く、後述の各構成要素の相違点と相まって、「5ないし6\n個の桜の花をまとまって描く」というアイデアのレベルを超えた具体的な表現\n上の共通性を認めることはできない。また、桜の花を数個まとめて描くこと自 体は、自然の桜を描写する際に自然に着想することであって、他の桜のイラス トにもみられるありふれたものといわざるを得ない。また、原告特徴4)につい ても、原告イラスト1においては、被告イラスト2との対比において、まとま りとまとまりの間隔というものは観念しづらく、むしろまとまりの配置のない 略左下部に1個の正面視花要素Aを配したとの印象が強く、具体的表現におけ\nる共通性を感得できない。 以上によると、原告特徴3)及び同4)で指摘される内容は、被告イラスト2に みられる特徴とはいえず、共通点は認められない。
(3) 原告特徴5)、同6)及び同7)について
原告は、正面視花要素Aに関して、原告特徴5)、同6)及び同7)が特徴であり、 同特徴が被告イラスト2にも存すると主張する。 この点、まず、正面視花要素Aと同Bの花弁についてみると、前記認定のと おり、原告イラスト1における花弁は、「白色で基部付近はピンクないし淡い ピンク色が不均一の色調でぼかしたように配されている」のであり、花弁の白 と背景のコントラストが強く意識される一方、被告イラスト2における花弁は 「ごく薄い赤みないし青みのかかった紫色の下地に透明感のある白の小さな おおむね丸いドットが重なるように多数配されて前記薄紫の下地が透けて看 取できる」態様で描かれており、花弁それ自体も淡く着色されている上、背景 とのコントラストは弱く、全体として正面視花要素Bは同Aと相当に異なった 印象を受けるものである。したがって、原告特徴5)が被告デザイン2にも備わ っているとは認められない。また、原告特徴6)及び同7)についてみると、完全 に開花した桜を正面視で「5枚の花弁を放射線状に一体に、花弁ごとに区切ら ずに描き、花弁の中央部に略放射線状にランダムな長さ及び角度で8本又は9 本描く」ことや、同様にやや斜方視で、「5枚の花弁を略扇形に一体に、花弁ご とに区切らずに描いた上で、弧の部分にランダムに山を複数描き、花弁の下寄 りの部分に茶色の細い線でおしべ等を略扇形状にランダムな長さ及び角度で 6本又は7本描き、その先端を茶色の小さい丸で描いている点」は、前記認定 に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストにみ\nられるごく一般的な表現であり、ありふれたものであって、そもそもかかる特\n徴は、原告イラスト1の本質的特徴に当たらない。
(4) 原告特徴8)及び同9)について
原告主張の「先端に白色のつぼみがついた茶色の花柄及びがく片を、花から 適宜飛び出して描いている点」(原告特徴8))及び「つぼみには完全に閉じた状 態のものと、半開き状態のものがあり、前者はふっくらとした雫形状で、先端 がやや尖っていて、がく片は3本であり、後者は略扇形で弧の部分にランダム に山を複数描き、がく片は基本的に4本となっている点」についても、前記認 定に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストに\nみられるごく一般的な表現であり、ありふれたものといわざるをえず、原告イ\nラスト1の本質的特徴に当たらない。
・・・
(6) まとめ
以上のとおり、被告イラスト2は、アイデアなど表現それ自体でない部分又\nは表現上創作性がない部分において原告イラスト1と同一性を有するにとど\nまり、これに接する者が、原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を感得する\nことはできないから、依拠性を判断するまでもなく、原告イラスト1の複製及 び翻案に当たらない。よって、被告イラスト2を用いた被告製品2を被告が販 売した行為は、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するもの とはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということもない。

◆判決本文

◆当事者のイラストです

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