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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

プログラムの著作物

平成29(ワ)32433  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月21日  東京地方裁判所(46部)

 プログラムの著作物について、複製又は翻案が争われました。全体のプログラムを新サーバへ移行しましたが、問題となっている本件共通環境設定プログラムは複製・翻案していないと判断しました。
 争点 (2)−2(本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラムの保守管理 業務に伴う複製権又は翻案権侵害)について
ア 原告は,被告マルイチ産商と被告テクニカルパートナーは,被告マルイチ 産商のコンピュータ保守管理のための人材派遣契約を締結し,被告テクニカ ルパートナーらは,上記派遣契約に基づき,被告マルイチ産商のコンピュー タの保守管理業務を行っており,本件基本契約が終了した平成26年9月1 7日以降も,保守管理業務の一環として,本件共通環境設定プログラムの複 製又は翻案を行ったと主張する。 しかし,保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムの複製又 は翻案が行われた事実を認めるに足りる証拠はなく,原告の主張を採用する ことはできない。
イ また,仮に,被告らが本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラム の保守管理業務に伴い,本件共通環境設定プログラムの複製又は翻案を行っ たとしても,本件基本契約26条は,「著作権・知的財産権および諸権利の帰 属」に関する定めが本件基本契約の終了後も有効であると定めており,被告 マルイチ産商は,本件基本契約終了後も「著作権・知的財産権および諸権利 の帰属」に関する定めである本件基本契約21条3項 に基づき,本件共通 環境設定プログラムを複製等することができると解するのが相当であるか ら,複製権又は翻案権侵害は成立しないと解するのが相当である。 これに対し,原告は,本件基本契約は更新しない旨の意思表示による解約\n(28条1項但書)により終了したのであり,本件基本契約26条の「本契 約が合意の解約により終了した場合および解除により終了した場合」に直接 該当しないし,本件基本契約26条が規定するのは「著作権・知的財産権お よび諸権利の帰属」であり,本件基本契約21条3項が定める権利の帰属主 体が契約終了によっても変わらないことを定めているとしても,同項(2)の利 用に関する定めは射程外であると主張する。 しかし,本件基本契約26条は,「契約終了後の権利義務」との見出しの下 で「本契約が合意の解約により終了した場合および解除により終了した場合 でも」と定めており,他の原因による終了の場合にも適用されることを前提 にしていると解され,本件基本契約中に他の原因による契約終了時の権利義 務等を定める条項がないことからしても,本件基本契約26条は,更新しな い旨の意思表示による解約による契約終了の場合の権利義務の帰趨も定め\nていると解釈すべきである。
また,本件基本契約26条における「著作権・知的財産権および諸権利の 帰属」との文言は,本件基本契約21条の見出しと同一であること,また, 同条3項は,成果物の著作権・知的財産権および諸権利の帰属を定めるとと もに,著作権が共有となる場合(同項 )には双方が利用することができる ことを定め,原告のみに帰属する場合(同項 )には被告マルイチ産商に対 して利用することができる範囲を定めており,著作権の帰属の違いに対応し て利用することができる範囲をそれぞれ定めているものであり,そのような 定めにおいて,契約終了後,著作権の帰属の定めのみ有効に存続すると解す るのは不自然であること,契約中に契約終了後の利用やその禁止についての 定めはないことからすると,本件基本契約26条において契約終了後も有効 とされる「著作権・知的財産権および諸権利の帰属」の定めとは,同21条 の定め全体を指し,同条が定める利用に関する定めも含んでいると解釈する のが相当である。原告が主張する本件基本契約の解釈によれば,本件新冷蔵 庫等システムの使用のために必要となる本件共通環境設定プログラムは本 件基本契約終了により一切複製等できなくなり,本件共通環境設定プログラ ムのサーバ移行等を行うことができず,本件新冷蔵庫等システム自体の使用 を継続することも不可能ないし困難となるが,そのような解釈は不合理であ\nる。

◆判決本文

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平成29(ネ)10103等  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ラダー図による表記したプログラムについて創作性無しと判断されました。
 ア 著作権法2条1項1号所定の「創作的に表現したもの」というためには,\n作成者の何らかの個性が表れている必要があり,表\現方法がありふれている場合な ど,作成者の個性が何ら表れていない場合は,「創作的に表\現したもの」というこ とはできないと解するのが相当である。
ラダー図は,電機の配線図を模式化したシーケンス図をさらに模式化したもので あるから,ラダー図は配線図に対応し,配線図が決まれば,ラダー図の内容も決ま ることとなり(乙ロ1),したがって,その表現方法の制約は大きい。ラダー図に\nおいては,接点等の順番やリレー回路の使用の仕方を変更することにより,理論的 には,同一の内容のものを無数の方法により表現できるが,作成者自身にとってそ\nの内容を把握しやすいものとし,また,作成者以外の者もその内容を容易に把握で きるようにするには,ラダー図全体を簡潔なものとし,また,接点等の順番やリレ ー回路の使用方法について一定の規則性を持たせる必要があり,実際のラダー図の 作成においては,ラダー図がいたずらに冗長なものとならないようにし,また,接 点等の順番やリレー回路の使用方法も規則性を持たせているのが通常である(乙ロ 1,3)。
イ 控訴人プログラム1)は,控訴人19年車両の車両制御を行うためのラダ ー図であるが,共通ブロックの各ブロックは,いずれも,各接点や回路等の記号を 規則に従って使用して,当該命令に係る条件と出力とを簡潔に記載しているもので あり,また,接点の順番やリレー回路の使用方法も一般的なものであると考えられ る。
すなわち,例えば,ブロックY09は,リモコンモード,タッチパネルモード及 びメンテナンスモードという三つのモードのモジュールを開始する条件を規定した ブロックであるところ,同ブロックでは,一つのスイッチに上記三つのモードが対 応し,モードごとの動作を実行するため,上記各モードに応じて二つの接点からな るAND回路を設け,スイッチに係るa接点と各AND回路をAND回路で接続し ているが,このような回路の描き方は一般的であると考えられる。また,同ブロッ クでは,上段にリモコンモード,中段にタッチパネルモード,下段にメンテナンス モードを記載しているが,控訴人プログラム1)の他のブロック(Y11,Y23, Y24,Y25,Y26)の記載から明らかなように,控訴人プログラム1)では, リモコンモード(RM),タッチパネルモード(TP),メンテナンスモード(M M)の順番で記載されている(なお,これらにリモコンオンリーモード(RO)が 加わる場合は,同モードが一番先に記載される。)から,ブロックY09において も,それらの順番と同じ順番にしたものであり,また,メンテナンスモードを最後 に配置した点も,同モードがメンテナンス時に使用される特殊なモードであること を考慮すると,一般的なものであると評価できる。さらに,「これだけ!シーケン ス制御」との題名の書籍に,「動作条件は一番左側」と記載されている(乙ロ3) ように,ラダー図においては,通常,動作条件となる接点は左側に記載されるもの と認められるところ,ブロックY09の上記各段の左側の接点は,各モードを開始 するための接点であり,同接点がONとなることを動作条件とするものであるから, 通常,上記左側の各接点は左側に記載され,これと右側の接点とを入れ替えるとい うことはしないというべきであり,したがって,上記各段における接点の順番も一 般的なものである。したがって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れてい るということはできない。
また,ブロックY17は,拡幅待機中であることを規定するブロックであるとこ ろ,拡幅待機中をONにする条件として,10個のb接点をすべてAND回路で接 続しているが,上記条件を表現する回路として,関係する接点を全てAND回路で\n接続することは一般的なものであると考えられる。また,上記各接点の順番も,リ モコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネルモード及びメンテナンスモ ードの順番にし,各モードごとに開の動作条件と閉の動作条件の順番としたもので あるところ,前記のとおり,上記各モードの順番は,他のブロックの順番と同じに したものであり,開の動作条件と閉の動作条件の順番も一般的なものである。した がって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。 さらに,ブロックY25は,ポップアップフロアを上昇させる動作を実行するた めのブロックであるが,拡幅フロアの上昇又は下降に関しては,拡幅フロア上昇に 関する接点及び拡幅フロア下降に関する接点がそれぞれ四つずつ存在するという状 況下において,同ブロックでは,拡幅フロア上昇に関する接点をa接点,拡幅フロ ア下降に関する接点をb接点とした上で,四つのa接点及び四つのb接点をそれぞ れOR回路とし,これら二つのOR回路をAND回路で接続している。拡幅フロア の上昇と下降という相反する動作に関する接点が存在する場合において,目的とす る動作のスイッチが入り,目的に反する動作のスイッチが入っていないときに,目 的とする動作が実行されるために,目的とする動作の接点をa接点,これと反する 動作の接点をb接点としてAND回路で接続し,命令をONとする回路で表現する\nことは,a接点及びb接点の役割に照らすと,ありふれたものといえる。また,同 一の動作に関する接点が複数あり,目的とする動作の接点であるa接点のいずれか がONとなったときに目的とする動作が実行されるようにするため,それらの接点 をOR回路で表現することもありふれたものといえる。さらに,OR回路で接続さ\nれた四つの段においては,リモコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネ ルモード及びメンテナンスモードの順番としているが,前記のとおり,この順番は, 他のブロックの順番と同じにしたものである。ブロックY26は,ポップアップフ ロアを下降させる動作を実行するためのブロックであり,上記のブロックY25で 述べたのと同様のことをいうことができる。加えて,ブロックY25及びブロック Y26のAND回路で接続された各二つの列においては,上昇又は下降のa接点, 下降又は上昇のb接点の順番としているが,前記のとおり,ラダー図においては動 作条件となる接点は左側に記載されるところ,ブロックY25及びブロックY26 の各1列目は,「拡幅フロア上昇」又は「拡幅フロア下降」の動作条件となる接点 であると認められるから,通常,同ブロックのとおりの順番で接続され,1列目と 2列目を入れ替えるということはしないものということができる。したがって,こ れらのブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成28(ワ)19080

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