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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

文言侵害

平成29(ワ)393  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月30日  東京地方裁判所(46部)

 構成要件Aを充足しないとして非侵害と判断しました。被告は桐灰で、被告商品はサイト上では、生産中止扱いとなっています。
 被告製品の不織布が構成要件Aの「不織布シート」に当たることは当事者\n間に争いがないところ,原告は,その表面にシリカ(SiO2)が付着して\nいるから,構成要件Aの「表\面に吸着・乾燥剤を付着させた」を充足すると 主張する。
(2)本件発明の特許請求の範囲にはいかなる物が「吸着・乾燥剤」に当たるか は記載されていないが,本件明細書(甲2)には,「吸着・乾燥剤としては, 二酸化珪素(SiO2)等の吸水性,吸着性を有する無機粉体を採用するの が好ましい。」と記載されている(段落【0020】)から,吸水性,吸着性 を有するシリカ(SiO2。証拠(乙11)及び弁論の全趣旨によれば, 「シリカ」は二酸化ケイ素の通称であると認められる。)の無機粉体は「吸 着・乾燥剤」に当たり得ると解される。
・・・
イ 上記ア の認定事実によれば,剥離紙を除く被告製品に一定量のシリカ が含まれているということができる。 しかし,前記前提事実(3)のとおり,剥離紙を除く被告製品には不織布以 外の層があるところ,上記ア の計量においては,剥離紙を除く被告製品 全体を試料としているから,不織布の表面以外の部分に含まれるシリカが\n検出された可能性を否定することができない。加えて,同 の試験におい ては,被告製品から剥離紙,粘着剤及び粘着剤のついたフィルムを除いた 試料からシリカが検出されることはなかったこと,同 のとおり被告製品 の不織布層の表面において乾燥剤に該当し得ない物体以外のものが検出さ\nれなかったことにも鑑みると,被告製品の不織布の表面にシリカが付着し\nていると認めることはできない。また,被告製品に一定量のシリカ(Si O2)が含まれているとしても,それが吸収性,吸着性を有するものとし て被告製品に存在することを認めるに足りる証拠もない。

◆判決本文

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平成28(ワ)7649  特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成29年11月21日  大阪地方裁判所

 発明特定事項「裾絞り部」について、明細書の記載および出願経過から、限定解釈されました。
 「裾絞り部」の形状については,構成要件Gで特定されているとおり「底部に近\nづくに連れて先細りとなる」ものであり,本件明細書において,「裾絞り部」につ き,「垂直に延在するのではなく,裾絞り状に傾斜している」(【0015】)と 説明されている上,構成要件G及びHを含まない出願当初の特許請求の範囲の請求\n項 1 を削除した上記(2)認定の本件特許の出願経過に照らしても,裾絞り部は,それ が直線であっても,曲線であっても,少なくとも,垂直の部分を含むことなく,蛇 腹部から底部にかけて,徐々に先細りになっていくものに限定されていると解され る。
(5) まとめ
したがって,構成要件Gにいう「裾絞り部」とは,胴部において「蛇腹部」と「底\n部」の間にあって,それぞれに接続部で連続して存在するものであり,また「蛇腹 部」との接続部において「垂直に延在」する部分があっても許容されるが,それは 極く限られた幅のものにすぎないのであり,またその形状は,「蛇腹部」方向から 「底部」方向に向けて,徐々に先細りになっているものということになる。
(6) 以上の「裾絞り部」の解釈を踏まえ,被告容器が裾絞り部を備え,構成要件\nGを充足しているかを検討する。
ア 原告は,別紙「被告容器の構成(原告の主張)」記載の図面で「湾曲部」と\n指示した部分が「裾絞り部」に相当し,同部分の存在により構成要件Gを充足する\nと主張し,併せて,その上部にある垂直部分は,本件明細書の【0015】にいう 「接続部」にすぎないとしている。 しかしながら,上記検討したとおり,「裾絞り部」は,「蛇腹部」から接続部で 連続しているものであるが,この接続部は,極く限られた幅の範囲であるべきであ って,上記図面に明らかなように,被告容器における原告主張に係る「裾絞り部」 に相当する湾曲部と蛇腹部の間に存する,湾曲部と高さ方向の幅がほぼ一緒である 垂直に延在する部分をもって「接続部」にすぎないということはできない。 したがって,被告容器は,上記定義した「裾絞り部」で構成されるべき「蛇腹部」\nから「底部」にかけて胴部の大半が,「裾絞り部」に該当しない部分で構成されて\nいるということになるから,被告容器は,「裾絞り部」を備えているものというこ とはできない。

◆判決本文

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平成28(ワ)35182 特許権 平成29年10月30日  東京地方裁判所(29部)

 サイバーエージェントに対するCS関連特許侵害事件です。裁判所は文言・均等侵害を否定しました。均等の第1、第5要件を満たさないと判断されています。
 これを本件について見ると,前記2で詳述したとおり,本件発明は,「その決定 したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段を備え」(構成\n要件C)ており,また,「表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせてなる\n基本キャラクターとを表示させ」(構\成要件F),「基本キャラクターが,前記仮 想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」(構成要件G)構\成を有し ているのに対し(なお,「仮想モール」は,内部に複数の仮想店舗と遊歩のための 空間とが表示されるものをいい,「基本キャラクター」と同時に表\示される必要が あると解すべきこと,「仮想モール中に設けられた店」で「パーツ」を購入する際 にも「基本キャラクター」が表示される必要があると解すべきことも,前記2のと\nおりである。),被告システムは,少なくとも,「キャラクターに応じた情報提供 料」を「通信料」に「加算」する構成を備えていない点,「仮想モール」に対応す\nる構成を有していない点において,それぞれ本件発明と相違するところ,以下のと\nおり,これらの相違部分は,本件発明の本質的部分に当たるというべきであるから, 被告システムは,均等の第1要件(非本質的部分)を満たさない。
イ 本件明細書の前記1(2)アないしエの各記載によれば,本件発明は,携帯端末 の表示部に気に入ったキャラクターを表\示させることができる携帯端末サービスシ ステムに関するものであって(【0001】),あらかじめ携帯端末自体のメモリ ーに保存してある複数のキャラクター画像情報から,気に入ったものを選択して, その携帯端末の表示部に表\示するなどの従来技術では,携帯端末自体のメモリーに 保存できる情報量には限りがあるため,キャラクター選択にあまり選択の幅がなく, ユーザーに十分な満足感を与え得るものではなく,サービス提供者にとっても,キ\nャラクター画像情報により効率良く利益を得るのは困難であったことから(【00 02】,【0003】),同問題点を解決し,「ユーザーが十分な満足感を得るこ\nとができ,且つ,サービス提供者は利益を得ることができる携帯端末サービスシス テムを提供する」ため(【0004】),本件特許請求の範囲の請求項1記載の構\n成(構成要件Aないし同Hの構\成)を備えることにより,ユーザーにとっては,キ ャラクター選択をより楽しむことができ,また,サービス提供者にとっては,キャ ラクター画像情報の提供により効率良く利益を得ることができ(【0005】), さらに,ユーザーは,種々のパーツを組み合わせてキャラクターを創作するという ゲーム感覚の遊びをすることができ,十分な満足感を得ることができ,また,「仮\n想モールと,基本キャラクターとが表示された表\示部を見ながら,基本キャラクタ ーを自分に見立て,さながら自分が仮想モール内を歩いているようなゲーム感覚で, その仮想モール内に出店された店に入り,パーツという商品を購入することで,基 本キャラクターを気に入ったキャラクターに着せ替えて,楽しむことができ,新た な楽しみ方ができて十分な満足感を得ることができる」(【0006】)というも\nのとされていることが理解できる。 そうすると,本件明細書では,本件発明は,サービス提供者がキャラクター画像 情報により効率良く利益を得るのは困難であったという従来技術の問題点を解決し て,サービス提供者が画像情報の提供により効率良く利益を得ることができる携帯 端末サービスシステムを提供することを目的の一つとするものであって,構成要件\nCの「その決定したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段 を備え」るとの構成は,まさに,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決\n(サービス提供者がキャラクター画像情報により効率良く利益を得ることができる 携帯端末サービスシステムを提供すること)を実現するための,従来技術に見られ ない特有の技術的思想に基づく解決手段(課金手段)としての具体的な構成として\n開示されているものいうべきである。また,本件発明は,ユーザーに十分な満足感\nを与え得るものではなかったという従来技術の問題点を解決して,ユーザーが十分\nな満足感を得ることができる携帯端末サービスシステムを提供することを他の目的 とするものであって,「表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせてなる基\n本キャラクターとを表示させ」るとの構\成を含む構成要件F及び「基本キャラクタ\nーが,前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」との構成を含\nむ構成要件Gは,さながら自分が仮想モール内を歩いているようなゲーム感覚で商\n品を購入するなどして十分な満足感を得ることができるという本件発明に特有な作\n用効果に係るものであって,構成要件A,同B,同D及び同Eとともに,まさに,\n従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決(ユーザーが十分な満足感を得る\nことができる携帯端末サービスシステムを提供すること)を実現するための,従来 技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段(ゲーム感覚の実現)として の具体的な構成として開示されているものというべきである。\n他方で,後述する引用例1(乙6)の開示(iモード上に用意された複数のキャ ラクタ画像を受信し,これを待受画面として利用することができる携帯電話機)及 び引用例2(乙7)の開示(画像情報の提供に係る対価の課金を通話料金に含ませ るもの)に照らすと,本件明細書において従来技術が解決できなかった課題として 記載されているところは,客観的に見て不十分であるといい得るが,本件明細書の\n従来技術の記載に加えて,引用例1及び同2の開示を参酌したとしても,本件発明 は,ユーザーが十分な満足感を得ることができ,かつ,サービス提供者が利益を得\nることができる携帯端末サービスシステムを提供するものであり,従来技術では達 成し得なかった技術的課題の解決を実現するための具体的な構成として,構\成要件 AないしHを全て備えた構成を開示するものであるから,これら全てが従来技術に\n見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分に当たるというほかない。\n以上によれば,本件発明と被告システムとの相違部分は,いずれも本件発明の本 質的部分に係るものと認めるのが相当である(なお,上記認定判断は,後述する本 件特許の出願経過とも整合するところである。)。
・・・・
上記アの出願経過に照らせば,原告は,構成要件A,同B,同C及び同Hからな\nる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)及び構成要件A,同B,\n同C,同D,同E及び同Hからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項2に 係る発明)については,特許を受けることを諦め,これらに代えて,構成要件A,\n同B,同C,同D,同E,同F,同G及び同Hからなる発明(出願当初の特許請求 の範囲の請求項1に同2及び同5を統合した発明,すなわち本件発明)に限定して, 特許を受けたものといえる。 そうすると,原告は,構成要件F(「表\示部に仮想モールと,基本パーツを組み 合わせてなる基本キャラクターとを表示させ」)及び同G(「基本キャラクターが,\n前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」)の全部又は一部を 備えない発明については,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したか,少 なくともそのように解されるような外形的行動をとったものといえる。 したがって,「仮想モール」に対応する構成を有していない被告システムについ\nては,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,同システムは,均 等の第5要件(特段の事情)を充足しない。

◆判決本文

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平成28(ネ)10074等  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年10月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 一審では本件特許2についても特許権侵害と認定されましたが、知財高裁はこれについては、被告製品は技術的範囲に属しないと判断しました。
 一審被告製品は,本件発明2の構成要件2Fを充足しないので,その技術的範囲\nに属するとは認められない。その理由は,以下のとおり原判決を補正するほかは, 原判決の第3の3記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決51頁6行目〜52頁6行目を,以下のとおり改める。
「ア 一審原告は,乙1のSIMS分析結果によると,一審被告製品において, 活性層のp型窒化物半導体層側の障壁層B11〜障壁層BLの領域に含まれる複数の 障壁層のSi濃度は,5×1016/cm3未満であると合理的に推認される旨主張する。 そこで,検討すると,乙1のSIMSチャート図では,Si濃度は,n型窒化物 半導体層側からp型窒化物半導体層側に向かって下降し,いったん5×1016/cm3 付近まで落ちた後,p型窒化物半導体層側に向かって上昇していることが観察され る。 この点について,一審原告は,Si濃度の上昇は試料の表面汚染の影響を受けた\nものであり,この表面汚染の影響を除外して考えれば,Siをアンドープにした後,\np側に向けて再びSiをそれよりも高い濃度でドープすることは考えられないから, Si濃度は,5×1016/cm3未満であると考えられると主張する。しかし,一審被告 製品における表面汚染の有無及び程度は明らかでなく,一審被告製品における表\面 汚染について定量的な主張立証がされているわけでもない。また,証拠(甲37, 39,乙44,45)と弁論の全趣旨によると,井戸層にはSiがドープされてい ないから,そのためにSIMSチャートでは障壁層のSi濃度が低く現れることが あること,Si濃度のプロファイルには,ノイズによる「ゆれ」があることが認め られるから,Si濃度がいったん5×1016/cm3付近まで落ちていることから,直ち に,一審被告製品において障壁層のSi濃度が5×1016/cm3を下回っていたと認 めることは困難である。 そうすると,乙1のSIMSチャート図から,p型窒化物半導体層側の障壁層B Lを含む複数の障壁層のSi濃度は,5×1016/cm3未満であると合理的に推認され ると認めることはできない。・・・」

◆判決本文

◆原審はこちら。平成26(ワ)8905

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平成28(ワ)21346  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月20日  東京地方裁判所(46部)

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
 原告は,上記2)の売りの指値注文が約定した時点が構成要件Eの「検出\nされた前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となった」\nに該当すると主張し,それによって,高値側の「新たな一の価格」及び 「新たな他の価格」の注文情報群が生成されているとする(原告第3準備 書面17,18頁等)。 そこで,このことを前提として検討すると,被告サービスにおいては, 上記のとおり,上記2)の時点の直後に高値側に買いの成行注文及び売りの 指値注文(上記4)の各注文)の注文情報が生成,発注された。 もっとも,上記4)の各注文のうち,売り注文は指値注文であるが買い注 文は成行注文であるところ,前記(2)のとおり構成要件Eの「注文情報」は\n指値注文に係る注文情報をいい,成行注文に係る注文情報を含まないと解 される。そうすると,4)の買い注文に係る注文情報は,構成要件Eの新た\nな「第一注文情報」に該当しないというべきである。 他方,上記6)の注文はいずれも指値注文であり,これらの注文に係る注 文情報は構成要件Eの「第一注文情報」及び「第二注文情報」に該当し得\nるものといえる。しかし,6)の各注文は,2)の時点の直後に3)の各注文が された後,3)の成行の買い注文の約定価格よりも高値側に価格が変動し, 3)の売りの指値注文が約定した5)の時点の後にされるものである。そうす ると,6)の各注文に係る注文情報は,「検出された前記相場価格の高値側 への変動幅が予め設定された値以上となった」時点である2)の時点におい て,成就の有無が判断できる他の条件の付加なく,また,直ちに生成され たものということはできない。別表1の取引においても,6)の注文は,2) の時点から約35時間50分後にされ,また,その間に5)の売りの指値注 文の約定等がされた後にされている。 そうすると,「検出された前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定\nされた値以上となった場合」に,上記6)の注文に係る「第一注文情報」及 び「第二注文情報」が「設定」されたということはできない。 ウ 以上によれば,被告サービスは構成要件Eの「検出された前記相場価格\nの高値側への変動幅が予め設定された値以上となった場合,・・・高値側\nに・・・新たな前記第一注文情報と・・・新たな前記第二注文情報とを設 定」を充足しない。
(6) これに対し,原告は,1)「注文情報」につき,ア)本件発明の特許請求の範 囲上,指値注文か成行注文を区別していない,イ)本件発明の効果に照らすと 注文が指値注文か成行注文かを区別する必要がない,ウ)発明の実施に形態に おける注文に成行注文が含まれる旨の記載がある,以上のことから成行注文 が含まれると解すべきであると,2)「場合」につき上記条件以外の条件を付 加することを排除する趣旨でないと,3)「設定」につき実際に注文情報を生 成するものでなく,情報を生成し得るものとして記録しておけば足りると, 4)被告サービスは指値注文のイフダンオーダーの中に本件発明を構成しない\n買いの成行注文を付加したものにすぎないと各主張する。 しかし,上記1)につき,ア)は,本件明細書において,「注文情報」の語そ れ自体は指値注文と成行注文の区別を明示していない一方で,前記(2)アのと おり,特許請求の範囲の記載全体をみれば,構成要件Eを含む特許請求の範\n囲の記載における「注文情報」は指値注文をいうと解されるのであり,イ)は 背景技術,発明が解決しようとする課題の各記載(前記1(1)ア,イ)の趣旨 を併せて考慮するとむしろ指値注文のイフダンオーダーに関する発明である ことが示唆される。ウ)は,本件明細書の発明の実施の形態の記載(前記1(2)) によれば,当該形態においては成行注文も生成され得る(段落【0031】) 一方で通常の成行注文につきイフダンオーダーの手順(ステップS21〜2 8)を行わないとされている(段落【0101】,【図3】,【図4】)から, 生成された成行注文はイフダンオーダーに関する注文を構成しないことが明\nらかである。そうすると,原告が指摘する上記ア)〜ウ)はいずれも構成要件E\nの「注文情報」に成行注文が含まれると解すべき根拠とならない。 上記2)及び3)については,前記(3)及び(4)において説示したところ 上記4)につき,前記?に説示したとおり,被告サービスにおける買いの成 行注文(注文番号97)は売りの指値注文(同96)と同時に注文されてい るから,当該成行注文がイフダンオーダーの一部を構成していると認められ\nるところ,前記の「注文情報」,「場合」,「設定」の各解釈に加え,本件発明 の意義が指値注文のイフダンオーダーを相場価格の変動にかかわらず自動的 に繰り返し行うことにあることを前提とすれば,イフダンオーダーにおいて 成行注文を介在させる構成は,本件発明において解決すべき課題と異なるこ\nと,成行注文によって直ちに金融商品のポジションを得る効果が得られるこ とにおいて本件発明の構成と異なるものであるから,これを本件発明外の付\n加的構成とみることはできない。\n

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平成28(ワ)14868  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟  平成29年7月12日  東京地方裁判所(40部)

 CS関連発明についての特許権侵害事件です。文言「送信したとき」が論点となりました。「送信したことを条件として」という意義として、非侵害と判断しました。
イ ところで,広辞苑第六版(甲9)によれば,「とき」とは,「(連体修飾 語をうけ,接続助詞的に)次に述べることの条件を示すのに使う。…の場 合。」を意味するものであり,また,大辞林第三版(甲10)においても 「(連体修飾句を受けて)仮定的・一般的にある状況を表す。(...する) 場合。」とされており,用字用語新表記辞典(乙22)では「『とき』は条\n件・原因・理由・その他,『場合』よりも小さい条件のときに用いること がある。」,最新法令用語の基礎知識改訂版(乙23)では「『時』は時点 や時刻が特に強調される場合に使われるのに対して,『とき』は一般的な 仮定的条件を表す場合に使われる。」と記載されている。これらからすれ\nば,構成要件1D及び1Fにおける「送信したとき」の「とき」は,条件\nを示すものであると解するのが相当である。
ウ この点に関して原告は,「送信したとき」の「とき」は「同じころ」と いう意義を有するものであり,「ある程度の幅をもった時間」を意味する と主張する。 たしかに,広辞苑第六版及び大辞林第三版には,上記イで指摘した意義 の他に,原告が主張するような意義も掲載されている(甲9,10)。し かし,広辞苑第六版(甲9)には「おり。ころ。」を意味する「とき」の用 例として「ときが解決してくれる」「しあわせなときを過ごす」といった ものが掲載されており,「送信したとき」のような具体的な行為を示す連 体修飾語を受けた用例は記載されていない。また,大辞林第三版(甲10) をみると「ある幅をもって考えられた時間」を意味する「とき」の用例と して,「将軍綱吉のとき」「ときの首相」「ときは春」などというものが 掲載されており,やはり「送信したとき」のような具体的な行為を示す連 体修飾語を受けた用例は記載されていない。 そして,抽象的で,空間的及び時間的に広い概念を表現した上記各用例\nと比べると,「送信したとき」という表現は,その指し示す行為が相当程\n度に具体的かつ直接的であることから,およそ用いられる場面が異なると いうべきである。 また,原告が指摘する審決(甲11)には,「とき」という用語につい て「ある程度の幅を持った時間の概念を意味する」旨の判断がされている が,当該審決は,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始されるときに, 前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用\n数値情報を読み出して判定する」という記載における「前記9個の可変表\n示部の可変表示が開始されるときに」という文言について,「前記9個の\n可変表示部の可変表\示が開始されると『同時』又は『間をおかずに』」と いう意味ではなく,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され」た後, 「前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する」までの間に他\nの処理がされるとしても,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され るときに」に当たると判断したものであって,「前記転送手段によって前 記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判\n定」した後に「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され」たとしても, 上記文言を充足するなどと判断したものではないから,本件における「送 信したとき」の解釈において参酌することは相当ではない。 そうすると,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」における「とき」\nが「ある程度の幅をもった時間」を意味するものということはできない。 また,本件明細書等1をみても,「送信したとき」の「とき」について, 「条件」ではなく「時間」を意味することをうかがわせる記載はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
エ 以上から,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」とは,「送信した\nことを条件として」という意義であると認めることが相当である。
・・・・
以上からすると,被告サーバは,第二のメッセージを受信したことを条件 として「マイミク」であることを記憶し,「マイミク」である旨の記憶をし たことを条件として「第二のメッセージ」を送信するという構成を有してい\nるものであって,第二のメッセージを送信したことを条件として「マイミク」 であることを記憶するという構成を有するものではないと認められる。\nしたがって,被告サーバは,「第二のメッセージを送信したとき」に「上 記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記 憶手段に記憶する手段」を有しているということはできないから,その余の 点について判断するまでもなく,構成要件1D及び1Fを充足しない。\n

◆判決本文

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平成29(ネ)10014  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 本件発明の「緩衝剤」は,添加したものに限られると判断して、技術的範囲に属しないと判断されました。  
 確かに,本件明細書の段落【0050】には「実施例18」との記載はあ るが,他方で,本件明細書における実施例18(b)に関する記載をみると,「比較 のために,例えば豪州国特許出願第29896/95号(1996年3月7日公開) に記載されているような水性オキサリプラチン組成物を,以下のように調製した」 (段落【0050】前段)と記載され,また,実施例18の安定性試験の結果を 示すに当たっては,「比較例18の安定性」との表題が付された上で,実施例1\n8(b)については「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」と表現されている\n(段落【0073】)。そして,豪州国特許出願第29896/95号(1996 年3月7日公開)は,乙4発明に対応する豪州国特許であり,同特許は水性オキサ リプラチン組成物に係る発明であって,本件明細書で従来技術として挙げられる もの(段落【0010】)にほかならない。 上記各記載を総合すると,実施例18(b)は,「実施例」という用語が用いら れているものの,その実質は本件発明の実施例ではなく,本件発明と比較するため に,「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」,すなわち,緩衝剤が用いられていな い従来既知の水性オキサリプラチン組成物を調製したものであると認めるのが相当

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成27(ワ)28467

以下は類似案件です。

◆平成27(ワ)12412号

◆被告の異なる事件です。

◆これの原審はこちらです。平成27(ワ)28698

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29001

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29158

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)28467

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)28698

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29159

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)12412

◆被告の異なる控訴審事件です。平成28(ネ)10046

こちらは、結論は非侵害で同じですが、1審では技術的範囲に属すると判断されましたので、それが取り消されています。また、控訴審における追加主張は時期に後れた抗弁として、却下されてます。

◆平成28(ネ)10031

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平成29(ネ)10009等  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月12日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(3部)は、1審の判断(「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まない)を維持し、控訴棄却しました。
 本件発明1の構成要件1C(オキサリプラティヌムの水溶液からなり)\nが,オキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であることを意味するの か,オキサリプラティヌムと水からなる水溶液であれば足り,他の添加剤等 の成分が含まれる場合をも包含するのかについては,特許請求の範囲の記載 自体からは,いずれの解釈も可能である。そこで,この点については,本件\n明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を参酌して判断することとする。
・・・
前記アの本件明細書1の記載によれば,オキサリプラティヌムは,種々 の型の癌の治療に使用し得る公知の細胞増殖抑制性抗新生物薬であり,本 件発明1は,オキサリプラティヌムの凍結乾燥物と同等な化学的純度及び 治療活性を示すオキサリプラティヌム水溶液を得ることを目的とする発明 である。そして,本件明細書1には,オキサリプラティヌム水溶液におい て,有効成分の濃度とpHを限定された範囲内に特定することと併せて, 「酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加剤を含まない オキサリプラティヌム水溶液」を用いることにより,本件発明1の目的を 達成できることが記載され,「この製剤は他の成分を含まず,原則とし て,約2%を超える不純物を含んではならない」との記載も認められる。 他方で,本件明細書1には,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤, 緩衝剤もしくはその他の添加剤」を含有する場合に生じる不都合について の記載はなく,実施例においても,添加剤の有無についての具体的条件は 示されておらず,これらの添加剤を入れた比較例についての記載もない。
しかしながら,前記イの出願経過において控訴人が提出した本件意見書 には,本件発明1の目的が,「オキサリプラティヌム水溶液を安定な製剤 で得ること」及び「該製剤のpHが4.5〜6であること」に加えて, 「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加 剤を含まないこと」にあること,さらに,水溶液のpHが該溶液に固有の ものであって,オキサリプラティヌムの水溶液の濃度にのみ依存するこ と,オキサリプラティヌムの性質上,本件発明1の構成においてのみ,\n「安定な水溶液」を得られることがわざわざ明記され,これらの記載を受 けて,審査官が拒絶理由通知の根拠とする引用文献1ないし3では,その ような「安定な水溶液」は得られないこと,すなわち,緩衝剤を含む凍結 乾燥物やクエン酸を含む水溶液では,「オキサリプラティヌムの安定な水 溶液」を得ることは困難である旨が具体的に説明されている。 その上で,本件意見書は,本件発明1が特許法29条2項に該当しない との結論を導いて審査官に再考を求めているのであり,その結果として控 訴人は,本件特許1の特許査定を受けているのである。 以上のような本件明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を総合的に みれば,本件発明1は,公知の有効成分である「オキサリプラティヌム」 について,直ぐ使用でき,承認された基準に従って許容可能な期間医薬的\nに安定であり,凍結乾燥物を再構成して得られる物と同等の化学的純度及\nび治療活性を示す,オキサリプラティヌム注射液を得ることを課題とし, その解決手段として,オキサリプラティヌムを1〜5mg/mlの範囲の 濃度と4.5〜6の範囲のpHで水に溶解することを示すものであるが, 更に加えて,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくは その他の添加剤を含まない」ことをも同等の解決手段として示すものであ ると認めることができる。 してみると,本件発明1の特許請求の範囲における「オキサリプラティ ヌムの水溶液からなり」(構成要件1C)とは,本件発明1がオキサリプ\nラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含ま ないものであることを意味すると解するのが相当である。

◆判決本文

◆1審はこちらです。

関連事件(同一特許、異被告)です。

◆平成27(ワ)28699等

◆平成27(ワ)29001

◆平成27(ワ)29158

同一特許の別訴事件で、1審(平成27(ワ)12416号)では技術的範囲内と判断されましたが、知財高裁はこれを取り消しました。

◆平成28(ネ)10031

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平成29(ネ)10005  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年6月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 被告製品が構成要件「加熱前のメラミン系樹脂発泡体よりも柔軟な」を充足するかが争われました。知財高裁(4部)は、1審同様、充足しないと判断しました。
本件各発明は,メラミン系樹脂発泡体からなる清掃具における「折り畳み可能な\n清掃具の変形能や,清掃対象面の形態に応じて変形可能\な清掃具の柔軟性等」が乏 しいという課題(【0006】)を解決することを目的とするものであり,その効 果は,「捩じり又は絞ったり,或いは,手指の動きに応じて多様な清掃対象物の汚 れを拭き取るといった布雑巾的な用法で使用可能な」ものを提供する(【0011】)\nというものであることからも,本件各発明における圧縮・加熱の工程を経たメラミ ン系樹脂発泡体が,加熱前のメラミン系樹脂発泡体「よりも柔軟な」ものになった ということは,圧縮・加熱前よりも,容易に折り畳みが可能で,清掃対象面の形態\nに応じて変形することができるようになったことを意味するということができる。 よって,本件各発明における「柔軟な」とは,容易に折り畳んだり,変形させた りできることを意味するものと認めることが相当である。
・・・
圧縮前後のメラミン系樹脂発泡体のサンプル平均を比較すると,甲45試験では, 圧縮前後の荷重の差は2.3Nであり,圧縮後のメラミン系樹脂発泡体の方が圧縮 前のものよりも,約5分の1の力で10mmたわんだとの結果になっている。しか しながら,乙11試験では,メラミン系樹脂発泡体の10mmたわみ時の荷重の圧 縮前後の差は0.06Nで,圧縮後の方がより弱い力でたわんだとの結果になって いるものの,約15%弱い力にすぎず,乙34試験では,その差は0.03Nとさ らに小さく,圧縮後の方が約5%弱い力でたわんだとの結果にとどまる。甲45試 験と,乙11試験,乙34試験の試験結果は,同一の試験機関によるものであると ころ,各試験で用いられた試料の圧縮の程度に差があることを考慮したとしても, 大きく異なるといわざるを得ないが,甲45,乙11,乙34の各報告書中には, これら試験結果に大きな差が生じ得たと考えられるような条件の記載はない。 圧縮後のメラミン系樹脂発泡体における10mmたわみ時荷重の平均値は,甲4 5試験において0.60N,乙11試験において0.41N,乙34試験において 0.62Nで,特に,甲45試験と乙34試験の数値は極めて近い。ところが,圧 縮前のものについての同数値は,乙11試験では0.47N,乙34試験では0. 65Nなのに対し,甲45試験では,2.90Nとされており,乙11,乙34の 各試験結果とは2.0N以上,約4倍の差となっているのであって,圧縮の条件等 による差が考えられない圧縮前の数値についてのみ,このような顕著な差があるこ とについて,合理的に理解することは困難といわざるを得ない。乙34報告書によ れば,厚さ40mmのメラミン系樹脂発泡体を10mmに圧縮したものについての 10mmたわみ時荷重は平均2.8N(サンプル数5)で,甲45試験と極めて近 接した数値となっていることも勘案すると,甲45試験の結果をもって,圧縮後の 方が「柔軟」になったと認定することはできない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成27年(ワ)第9891号

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平成26(ワ)34678  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年4月21日  東京地方裁判所(40部)

 特許権に基づく差し止め請求が認められました。出願経過参酌による意識的除外については認められませんでした。損害賠償は請求されてません。
 上記各記載によれば,本件発明の意義は,次のとおりであると認められる。 従前,シリンダボア内に冷媒を導入するためにロータリバルブが採用され たピストン式圧縮機においては,吐出行程にあるシリンダボア内の冷媒がこ のシリンダボアに連通する吸入通路からロータリバルブの外周面に沿ってシ リンダボア外に漏れやすいという課題があり,このような課題はバルブ収容 室の内周面とロータリバルブの外周面との間のクリアランスを極力小さくす ることにより解決されるものの,他方で,このクリアランス管理は非常に難 しいという課題があった。 そこで,本件発明は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の 入口に向けてロータリバルブを「付勢」し,ロータリバルブの外周面を吸入 通路の入口に近づけるという構成を採用することによって,圧縮室内の冷媒\nを吸入通路から漏れ難くし,よって体積効率を向上させるという作用効果を 有するものである。
・・・・
まず,被告は,本件特許の出願過程における乙26意見書に「引用文 献1〔判決注:乙21公報〕に記載された発明とは,従来からのニード ルベアリングのような転がり軸受ではなく,ジャーナル軸受を採用する ことによって,回転軸側のジャーナル部とシリンダブロック側の滑り軸 受との間のクリアランスを極めて小さくし,その結果,ロータリバルブ からの冷媒漏れを抑制するというものです。あくまでも,ジャーナル部 と滑り軸受との間のクリアランス管理に基づいて冷媒漏れの抑制を実現 しているのであって,本願発明のように,ピストンに対する圧縮反力を ロータリバルブへの付勢力に変換し,ロータリバルブの外周面を直接, 吸入通路の入口に付勢することによって冷媒漏れを抑制する技術とは明 確に異なるのです。」と記載されていることを根拠に,原告が本件発明 の技術的範囲から「クリアランスが小さい場合」を意識的に除外してい ると主張する。 しかし,乙26意見書の上記部分は,その記載内容からも明らかなと おり,乙21発明の「ジャーナル軸受を採用することによって,回転軸 側のジャーナル部とシリンダブロック側の滑り軸受との間のクリアラン スを極めて小さし,その結果」冷媒漏れを抑制する技術と,本件発明の 「ピストンに対する圧縮反力をロータリバルブへの付勢力に変換し,ロ ータリバルブの外周面を直接,吸入通路の入口に付勢することによって」 冷媒漏れを抑制する技術とが相違することを述べたものにすぎず,「ク リアランスが小さい場合」を本件発明の技術的範囲から除外したものと 解することはできない。このことは,乙26意見書の上記部分の直前に 「引用文献1〔判決注:乙21公報〕に記載された発明は・・・ジャー ナル軸受をもってロータリバルブを支持する点に特徴があります。」と 記載され,さらに,乙21公報の「回転軸を支持する軸受がジャーナル 軸受であり,それが単にシリンダブロック内に設けられた滑り軸受と, 回転軸の一部であるジャーナル部によって構成される簡単な構\造である だけでなく,そのジャーナル軸受の構成部材自体に半径方向の吸入通路\nや吸入ポートを形成して,各シリンダに対して圧縮すべき流体を吸入さ せるための吸入弁を構成しているため,軸受構\造と吸入弁の構造が簡単\nになるだけでなく,滑り軸受の円筒内面の仕上げ加工が容易に行われて, ジャーナル部とのクリアランスをきわめて小さくすることが可能になり,\n圧縮された流体が吸入弁から漏洩することがない。」との記載が引用さ れていることからも明らかである。

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平成26(ワ)8134  特許権侵害に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年2月27日  東京地方裁判所

 技術的範囲に属しないと判断されました。下記の用語の解釈についても原告は特段の意味はないと述べましたが、裁判所は、無視はできないと述べてます。
 なお,原告は,本件明細書において,構成要件Aにいう「特定視距離矯正領\n域」は「近景よりも実質的に離れた特定距離に対応する面屈折力を有する」領域 (請求項1,【0016】)と定義されている旨主張するが,正確には,請求項1 や段落【0016】においても,「近景よりも実質的に離れた特定距離に対応する 面屈折力を有する特定視距離矯正領域」と表現されているのであって,「矯正」\n「領域」という語句が存する以上,これらの語句による意味の限定が加わり得るこ とは否定できない(すなわち,請求項1や発明の詳細な説明では,「領域A」とか 「第1領域」などといった記号的な用語を使っておらず,「矯正領域」という用語 を選択しているのであるから,その日本語の持つ意味合いをはなから無視すること はできない。)。そして,「矯正領域」という字義のほか,前記(ア)ないし(ウ)で説 示したところに照らすと,上記の「…対応する面屈折力を有する」という部分も, 眼鏡レンズ内の当該領域を視線が通過する場合に特定距離にある対象物が良く見え るような視力矯正を可能とする程度に当該領域内で一定ないしほぼ一定の面屈折力\nを有するという意味であると解するのが相当である。

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平成28(ネ)10061  損害賠償請求控訴事件  特許権 民事訴訟 平成29年2月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 画像補正データ生成システムについて、技術的範囲に属しないとした一審判断が維持されました。
 本件各発明の構成要件D1及びD2は,「出力画像データに対し中間的な周波数成\n分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像デ ータから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータ」と規定するもので あるから,「バンドパスデータ」には低周波成分は実質的に含まれてはいない。そし て,構成要件Eは,補正データ生成手段が,この「バンドパスデータ」に「対応し\nた画像補正テーブル」を出力するものであるが,この「対応」というものが,いか なる技術的意義を有するものかは,特許請求の範囲の記載のみからでは明らかでは ない。 そこで,検討するに,本件各発明の解決課題・作用効果は,前記1(2)(4)(5)エのと おりであって,補正データに低周波成分に対する補正を加えようとすることによっ て生じる画面中心部の輝度の低下を防止することである。また,本件各発明の実施 形態をみてみると,バンドパスフィルタリングにより低周波成分及び高周波成分を 除いたバンドパスデータを算出し,このバンドパスデータを「反転させた」画像補 正テーブルを生成し(本件明細書1の【0033】,本件明細書2の【0032】), 補正された画像を表示する際は,画像補正テーブルから得た補正データを,入力さ\nれた画像信号に加算している(本件明細書1の【0037】,本件明細書2の【00 36】)。この実施形態は,緩やかな表示むら(出力画像データの低周波成分)や細\nかい表示むら(出力画像データの高周波成分)はそのままとし(本件明細書1の【0\n012】,本件明細書2の【0012】参照),中間的な周波数成分のみを目標とし て,これを消去するとの技術思想に基づくものといえる。そして,本件各明細書に は,これ以外の実施態様の記載はない。そうすると,構成要件Eの「バンドパスデ\nータに対応した画像補正テーブル」は,バンドパスデータを打ち消す作用を持つよ うな画像補正テーブルをいうものと解される。なお,本件各明細書には,「表示むら\nは,各ピクセルの明るさが理想値と異なるために発生するので,あらかじめ各ピク セルの理想値とのズレを測定しておけば,そのズレに従って各ピクセルへの入力画 像値を補正することで,表示むらをキャンセルすることが可能\である。」(本件明細 書1の【0038】,本件明細書2の【0037】)との記載があるが,本件各明細 書には,このための具体的な構成が記載も示唆もされておらず,この記載が目標値\nを定めて補正を行うような画像補正方法を開示するとはいい難く,このような実施 形態が本件各発明に含まれるとは認められない。 以上からすると,本件各発明において,補正前のデータである出力画像データに は,その定義より低周波成分,中間的な周波数成分又は高周波成分が含まれている ところ,バンドパスデータには中間的な周波数成分のみが含まれ,その中間的な周 波数成分は補正後の画像では消去されるから,補正後の画像には,補正前のままの 低周波成分又は高周波成分のみが残ることになる。そうすると,補正前後の画像の 差分をとると,中間的な成分のみが残るはずであって,この差分に低周波成分は実 質的には存在しないことになる。 すなわち,補正前後の画像の差分の中に低周波成分が含まれるシステムは,まず, 低周波成分を分離していないことにより構成要件D1 及びD2を充足しないものと 考えられ,仮に,そのように言い切れないとしても,「バンドパスデータに対応した 画像補正テーブル」を有しないことによって構成要件Eを充足しないものであり,\nいずれにしても,本件各発明の技術的範囲に属しないこととなる。

◆判決本文

◆一審はこちらです。平成27(ワ)14871

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平成26(ワ)8133  特許権侵害損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年2月27日  東京地方裁判所

 無効判断には踏み込まず、技術的範囲に属しないと判断されました。
 ウ 本件明細書の上記イの記載からすると,1)装用時の光学性能を重視して処方面を非球面化した累進屈折力レンズは,測定基準点において面非点隔差が発生する\n結果,レンズメーターで測定される測定度数が処方度数と異なってしまうという課 題があったこと,2)乙4公報記載の累進屈折力レンズでは,処方度数と測定度数が 異なるという上記課題を解決するため,処方面の主注視線に沿った線上部分の一部 に面非点隔差の発生しない領域を設けることとし,当該領域をレンズをフレーム形 状に加工する際に不要部分として廃棄される位置としたこと,3)上記乙4公報記載 のものでは,不要部分として廃棄される領域において測定度数を得ることから,レ ンズの度数測定の本来の目的(装用者の処方どおりにレンズが正しく作成されてい るか否か)との関係で適切とはいえないという問題があったこと,4)本件各発明は, これらを踏まえ,装用状態における光学性能を良好に改善しているにもかかわらず,眼鏡店やユーザーによるレンズの度数測定を容易に行うことのできる累進屈折力レ\nンズを提供することを目的としたものであって,処方面の非球面形状により発生す る面非点隔差成分と処方度数の矯正に必要な球面又はトーリック面により発生する 面非点隔差成分との差の絶対値の平均値が,レンズの度数を測定するための測定基 準点を含む近傍の所定領域に亘って所定の値以下に抑えられているとの構成を有することにより,処方面の非球面化により装用状態における光学性能\を補正する構成\nを採用しているにもかかわらず,例えばレンズメーターを用いて測定基準点を基準 として測定することにより処方度数とほぼ同じ測定度数を得ることができる,とさ れていることが認められる。 また,本件明細書の上記イの記載によれば,本件各発明の実施に際しては,上記 所定領域を広くすると,度数測定には有利となるが,その代償として光学性能が低下するため,この点を考慮して所定領域を定めなければならず,所定領域は,「装\n用状態における光学性能を良好に改善しているにもかかわらず,眼鏡店やユーザーによるレンズの度数測定を容易に行うことのできる累進屈折力レンズを提供するこ\nとを目的とする」という発明の目的を達成するように定められる必要があり,また, 装用者の処方や使用条件,製品の仕様,度数測定方法,測定器の仕様のうち少なく とも一つの条件を考慮して,平均値ΔASavを所定の値以下に抑えるべき測定基 準点を含む近傍の所定領域の大きさや形状を決定することによって,より優れた光 学性能と度数測定の容易さとの両方を得ることが可能\となる,とされていることが 認められる。
・・・・
このように,レンズメーターを用いて測定した球面度数及び乱視度数の値を処方 球面度数及び処方乱視度数と略同じ値にするため,本件各発明は,「測定基準点を 含む近傍の所定領域」とその領域における「所定の値」を設けたものであり,処方 面において改善された光学性能を犠牲にしても,レンズメーターによって測定する「測定基準点を含む近傍の所定領域」において局部的な面補正をし,面非点隔差成\n分を所定の値以下にしようとするものであるから,構成要件Cにいう「測定基準点を含む近傍の所定領域」とは,それ以外の領域とは区別された領域であることを当\n然の前提としているものというべきである。
・・・・
このように,被告製品1,2及び4は,遠用度数測定点を中心とした遠用部領域 全体(被告製品2のうち,上記図中の2)−2については,ほぼ全体),被告製品3 は近用度数測定点を中心とした近用部領域の領域全体において,面非点隔差の平均 値が本件各発明の構成要件Dにおける所定の値(0.15ディオプター)を大きく下回っている。
イ そうすると,被告各製品においては,レンズの測定基準点を含む処方面の非 点隔差は,光学設計上,一定の領域における光学性能を犠牲にしても所定の値以下とするような局部的な面補正,つまり,「所定の値以下」にされた「所定領域」を\n設ける必要がない構造であることが認められる。したがって,被告各製品は,構\成要件Cにいう「所定領域」に相当する構成を有\nしないものというべきである。

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平成26(ワ)20319  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年1月27日  東京地方裁判所(40部)

 盗難防止タグに関する特許侵害事件において、請求項における「暗号コード」という用語について争われました。被告製品は暗号化していないとして請求棄却されました。
 「暗号」とは,一般に,「通信の内容が第三者にもれないように,おたが いに約束して使う記号(のしくみ)」(三省堂国語辞典第7版52頁〔甲 2〕),「秘密を保つために,当事者間にのみ了解されるようにとり決めた 特殊な記号・ことば。あいことば。」(広辞苑第4版99頁〔甲5〕), 「第三者に通信内容を知られないように行う特殊な通信(秘匿通信)方法の うち,通信文を見ても特別な知識なしでは読めないように変換する表記法\n(変換アルゴリズム)のこと」(ウィキペディア〔乙1〕),「秘密にした い情報をかき混ぜて(暗号)特定の者以外にはその内容が解らないようにす ること。」(情報通信用語辞典13頁〔乙3〕),「情報の意味が当事者以 外にはわからないように,情報を変換すること」(エンサイクロペディア電 子情報通信ハンドブック〔乙17〕)との意味を有するとされている。 また,「コード」とは,「文字や記号,数字などをコンピューターが識別 するためにまとめられた符号」(IT用語辞典BINARY〔乙2〕), 「データを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づい\nて表現されたもの」(情報通信用語辞典100頁〔乙3〕)との意味を有す\nるとされている。 以上を前提にすると,本件発明4及び6の構成要件A4,B4及びB6に\nいう「暗号コード」とは,通信の内容が第三者に知られることのないように, 当事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な記号,文字ないし数字を まとめた符号を意味するものと解するのが相当である。
(2) これを被告製品3及び4についてみるに,被告によれば,被告製品3及び 4は「ID情報」を有しているが,この「ID情報」とは単なる数字にすぎ ないものと認められる(原告も明らかに争わず,これに反する証拠も存在し ない。)。そうすると,単なる数字にすぎない以上,その内容が「第三者に 知られることのないよう」にしたものではないのであるから,被告製品3及 び4の「ID情報」は,通信の内容が第三者に知られることのないよう,当 事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な記号,文字ないし数字をま とめた符号ではないのであって,「暗号コード」に該当するものとはいえな い。 そして,本件全証拠を精査しても,被告製品3及び4が「ID情報」以外 に「暗号コード」に該当するような符号を使用していることを認めるに足り る証拠はないから,本件においては,被告製品3及び4は,構成要件A4,\nB4及びB6にいう「暗号コード」を充足しないというべきである。
(3) 原告の主張に対する判断
この点に関して原告は,本件発明4及び6にいう「暗号コード」とは,コ ードの一部を任意の数字(信号)を組み合わせたものとしてリセットコード を設定し,送受信するものにすぎず,辞書等における「暗号」の意味とは異 なるものであって,このことは本件明細書等の記載からも明らかであると主 張する。 しかし,明細書の技術用語は,特に明細書の中で定義して特定の意味に使 用している場合を除き,原則として学術用語を用い,その有する普通の意味 を用い,かつ特許請求の範囲及び明細書全体を通じて統一して使用されなけ ればならないところ(特許法施行規則24条参照),本件明細書等において は,「暗号コード」の意義に関し,段落【0073】において「『暗号』は 4桁の暗号コードである。」と記載されているにすぎず,「暗号コード」な いし「暗号」の意味が原告主張のようなものであることにつき,何らの明確 な定義付けもされておらず,また辞書等における「暗号」の意味と異なるな どといった示唆もされていない。したがって,「暗号コード」とは電気通信 技術に関する技術的知識を有する当業者が理解する通常の意味で解釈すべき であるから,原告の上記主張は採用することができない。

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平成28(ワ)37954  承継参加申立事件  特許権  民事訴訟 平成29年1月31日  東京地方裁判所(第47民)

 録画機構を含まないとして、構\成要件を具備せず非侵害と判断されました。外付けのHDDを準備するのはユーザであるというものです。
 以上の特許請求の範囲や「発明の詳細な説明」の記載を総合すると,本 件発明は,デジタル格納部を含むユーザテレビ機器を備えた双方向テレビ 番組ガイドシステムに係る発明であるというべきである。 なお,明細書の【図1】(本件発明による例示的システムとされている。 段落【0011】ないし【0013】参照)においても,本件発明の「双 方向テレビ番組ガイドシステム」が,主設備(12),番組ガイドデータ ソース(14),テレビ配信設備(16),ユーザテレビ機器(22)を\n全て含むことが示されている。 イ 他方で,証拠(甲10の1及び2,14,16)及び弁論の全趣旨によ れば,被告物件である液晶テレビ製品は,単に放送を受信するだけで,い ずれもそれ自体に録画できるメモリー部分(デジタル格納部)を備えてお らず,録画先としては,外付けのUSBハードディスクやレグザリンク対 応の東芝レコーダーとされており,これらを被告物件に接続することによ って初めて,被告物件で受信した番組を上記ハードディスク等に録画する ことが可能であるものと認められる。
ウ 以上のとおり,本件発明は,デジタル格納部を含むユーザテレビ機器を 備えた双方向テレビ番組ガイドシステムに係る発明であるから,被告物件 (液晶テレビ製品)が本件発明の技術的範囲に属するというためには,被 告物件が「番組をデジタル的に格納可能な部分」を含むことが必要である\nところ,被告物件は,それ自体にテレビ番組をデジタル録画可能なメモリ\nー部分を有していないから,この点において,構成要件Cを充足しないと\nいうべきである。
エ これに対し,原告は,本件発明は「双方向テレビ番組ガイドシステム」 の発明であって,テレビ本体やデジタル格納デバイス自体の発明ではなく, 構成要件Aは「双方向テレビ番組ガイドシステム」が「ユーザテレビ機器\n(22)」自体を備えることを規定するものではないし,構成要件Cも,\nあくまで複数の番組をデジタル的に格納する「手段」を構成要件の内容と\nして規定するものであって,デジタル格納デバイスを規定しているわけで はないから,被告物件自体がUSBハードディスクを備えているか否かは, 本件発明の構成要件充足性には無関係である旨主張する。\nしかしながら,原告の上記主張は,上記で説示した特許請求の範囲や明 細書の各記載(例えば,本件発明の目的が「従来双方向番組ガイドシステ ムにより提供されたものよりも高度な機能を提供するように番組ガイドを\n用いることを可能にするデジタル格納部を備えた双方向番組ガイドシステ\nムを提供すること」であるとの明細書の記載(段落【0006】)等)に 明らかに反するものであるから,採用することができない。
(2) 構成要件Dの充足性について\n ア 証拠(甲7,乙14,15)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が 認められる。
・・・
イ このように,本件特許の出願人であったユナイテッド社は,本件特許の 出願段階で,特許庁に対し,本件発明が「引用文献3」(本件の乙20に 相当する。)記載の発明とは異なり,進歩性を有することを示すことを目 的として,本件発明では,同文献記載の発明とは異なり,「番組データが 格納される前に,番組が格納される」旨主張していたものである。そして, 特許庁では,ユナイテッド社の以上のような主張をも考慮した上で,本件 発明は「引用文献3」記載の発明とは異なり,かつ同発明からは容易想到 ではないとして,特許査定をしたものと解される。そうであれば,本件発 明の構成要件Dにおける番組の格納と番組データの格納の先後関係につい\nては,ユナイテッド社の上記主張のとおり,「番組データが格納される前 に番組が格納される」ものと解すべきであり,上記特許出願人の地位を承 継した原告が上記特許出願人による上記主張内容と異なる主張を本件訴訟 においてすることは,禁反言の原則に反するものとして許されないという べきである。
ウ そうであるところ,被告物件において「番組データが格納される前に番 組が格納(録画)される」という先後関係があるものとは認められないか ら,被告物件は,構成要件Dを充足しない。
エ なお,原告は,回答書(乙14)における引用文献3についての説明は, 単に本件発明と引用文献3記載の発明の内容の違いを説明したにすぎない とも主張するが,原告の同主張を前提としても,上記特許出願人が本件特 許の出願過程において上記のような説明をしたことに何ら変わりはないか ら,原告の上記主張は上記説示を何ら左右するものではない。

◆判決本文

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