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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

文言侵害

平成24(ワ)33474 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年11月26日 東京地方裁判所

 チーズ製造方法についての特許権侵害事件です。裁判所は一部の構成要件が不充足だとして、非侵害と認定しました。\n
 以上の記載内容を踏まえ,まず,争点(2)イ(構成要件A2及びD2の充足性)について検討する。ア 構成要件A2及びD2は「結着部分から引っ張ってもはがれない」ことを規定するところ,被告製品及びその製造方法においては,●(省略)●(前記1(1)ア(エ)及びイ(エ)。乙20参照)。原告は,本件各発明の目的がチーズの結着により型くずれや食品の漏れのない白カビチーズ製品を製造することにあることから,「結着部分」とは白カビが生育している部分,すなわち外縁部を意味するので,本件においては構成要件A2及びD2の充足が認められると主張する。イ そこで判断するに,本件各発明の特許請求の範囲の記載をみると,構成要件A2及びD2における「前記チーズカードを結着するように熟成させ」との文言は,その文脈上,構\成要件A1及びD1の「チーズカードの間に香辛料を均一にはさ」むことを受けたものであるから,構成要件A2及びD2にいう「結着する」とは,白カビが生育する外縁部に限られず,香辛料を挟んだ部分の全体を対象とすると解釈するのが特許請求の範囲の文言に沿うと解することができる。また,構\成要件A2及びD2には「上記チーズカードを結着するように熟成させ」との文言があり,本件各発明におけるチーズカードの結着は「熟成」により行われることが示されている。そして,前記前提事実(4)のとおり,カマンベールチーズの一般的な製造工程における「熟成」には,チーズカードの表面上にカビを発生させるもの(以下「チーズカード表\面の熟成」という。)と,これに続いてカビが生成する酵素の作用によってチーズカードを外側から内部に向かって軟化させるもの(以下「内部を軟化させる熟成」という。)とがあるところ,本件明細書において,構成要件A2及びD2の「熟成」がどちらか一方の熟成に限定されることをうかがわせる記載は見当たらない。そうすると,構\成要件A2及びD2における「熟成」とは,チーズカード表面の熟成と内部を軟化させる熟成の双方を含むものと解するのが相当であり,「熟成」により行われる「結着」も,チーズカード表\面の熟成により白カビが上下のチーズカードの表面を覆いそれらの外縁部において一体化すること(このことは当事者間に争いがない。)のみならず,内部を軟化させる熟成により上下のチーズカードがその接合面において一体化することをも含むと解すべきものとなる。かかる解釈は,本件明細書の【実施例1】(段落【0008】)及び【実施例2】(段落【0010】)において,熟成が完了した状態,すなわちチーズカード表\面の熟成のみならず内部を軟化させる熟成が十分に進んだ状態において結着が確認されていることや,【発明を実施するための最良の形態】欄(段落【0007】)において,加熱によって結着がより強固に一体となるとされ,加熱によりチーズが溶融する部分,すなわち上下のチーズカードが接合する面全体が既に(強固ではないとしても)結着していると示されていることからも裏付けられる。以上によれば,構\成要件A2及びD2における「結着部分」とは,外縁部を含む上下のチーズカードの接合面全体をいうものと解するのが相当である。 他方,上記1(1)ア(エ)及びイ(エ)認定のとおり,被告製品及びその製造方法における上下のチーズカードは,●(省略)●したがって,被告製品及びその製造方法が構成要件A2及びD2を充足するということはできない。ウ なお,原告は,上記「結着部分」を外縁部と解釈すべきことの根拠として,本件審決取消訴訟の判決がかかる解釈を採用しているとも主張する。しかし,同判決は,「上側のチーズと下側のチーズの内部の結着面について,二次熟成の過程で内部の組織が軟化して溶融することは,可能性としては考えられるが,熟成後,「分離せずに一体となった状態」となることは,甲1の2,2の記載及び画像から,読み取ることはできない。」とも判示しており(甲19),外縁部のみならず上下のチーズカードの接合面の全体を「結着面」とみていることは明らかである。そうすると,同判決が「結着部分」を外縁部に限定して判断したものとは解されないから,原告の上記主張を採用することはできない。
(3) さらに,争点(2)ウ(構成要件C及びFの充足性)についても検討する。ア 原告は,構成要件C及びFの「内包」とは,香辛料が内部に含まれていればよく,香辛料を内包することにより香辛料が見えない状態になるかどうかは,チーズ製品の外縁部から見て判断されるべきものであって,ポーションカットした部分から香辛料が見えることは構\成要件充足性を妨げないと主張する。イ そこで判断するに,「内包」とは,一般に「内部に含み持つこと」という意味であるが(乙2),特許請求の範囲の文言のみからは,チーズ製品の内部に香辛料が含み持たれていれば足りるのか,外面に露出していないことを要するのかについては明確であるといい難い。そこで,本件明細書の記載を参酌すると,【背景技術】(段落【0002】)及び【発明が解決しようとする課題】(段落【0003】)には,本件各発明は,ナチュラルチーズの一種である白カビチーズで,食品類である香辛料をチーズの内部に包含するが,見た目は通常のチーズと異ならないもの及びそのような白カビチーズの製造方法を提供することを目的とするものであることが,【発明の効果】(段落【0005】)には,本件各発明の完成品が通常のカマンベールチーズ製品(白カビチーズ製品)と外観上見分けがつかないものであることが記載されている。そして,構成要件C及びFにおける「香辛料を内包したカマンベールチーズ製品」とは,本件各発明を実施することにより製造されたチーズ製品の完成品を指すものと解すべきであるから,上記各構\成要件における「内包」とは,完成品であるチーズ製品の外観から香辛料が見えない状態で内部に含み持たれていることを意味するものと解するのが相当である。ウ 上記1(1)ア(カ)及びイ(カ)の認定のとおり,被告製品は,各個片の表面のうち上面,底面及び外縁部を構\成する面は白カビで覆われるものの,6ポーションカット切断面は白カビに覆われずに黒胡椒とチーズが露出しているカマンベールチーズ製品である。そのため,上面,底面及び外縁部から見た場合には香辛料は見えないが,6ポーションカット切断面から見た場合は香辛料が外部に露出している。したがって,被告製品及びその製造方法が構成要件C及びFを充足するということはできない。\n

◆判決本文

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平成24(ワ)3817 特許権侵害行為差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年10月31日 東京地方裁判所

 機能的クレームの特許権侵害が認められました。請求項に参照符号がふられていることについても限定されないと認定されました。
 本件特許の特許請求の範囲には,構成要件Eとして単に「金属粉収集機構\\」と記載されており(なお,符号「(12H,16,19A,19B)」については後述する。),その文言上は,バリ除去用工具がトルシアボルトの破断面に生じたバリを除去する際に発生する金属粉を収集する機能を有する構\\造であれば足り,その構成に格別の限定はないということができる。また,本件明細書の発明の詳細な説明の記載によると,本件発明は,フード部により金属粉が装置の外部に漏れ出して周囲に拡散することがなく,金属粉収集機構\\により装置の外部に金属粉が拡散する以前に金属粉が収集され,金属粉が装置外部に拡散してしまうことが確実に防止されるとの効果を有するものであるから(【0020】,【0022】),このような効果を奏するものであれば,「金属粉収集機構」に当たるとみることが可能\\である。しかし,特許請求の範囲の「金属粉収集機構」という上記文言は,発明の構\\成をそれが果たすべき機能によって特定したものであり,いわゆる機能\\的クレームに当たるから,上記の機能を有するものであればすべて技術的範囲に属するとみるのは必ずしも相当でなく,本件明細書の発明の詳細な説明に開示された具体的構\\成を参酌しながらその技術的範囲を解釈すべきものである。そこで,本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみると,金属粉収集機構としては,1)空気侵入系統及び空気排出系統を設け,空気流を発生させて金属粉を連行するようにした構成(第7及び第8実施形態)や,永久磁石又は電磁石を設け,磁力を発生させて金属粉を収集するようにした構\\成(第9及び第10実施形態)が開示され,これらの構成が好ましいと記載されているものの(【0014】,【0053】〜【0066】,図13〜16),これらに加え,2)フード部の半径外方に膨らむようにフード部の円周方向全周にわたって凹部を設けた構成も記載されている(第1実施形態。【0025】,図1及び2)。そして,上記2)の構成については,例えば垂直に延在するトルシアボルトの破断面1cのバリを除去する際に発生する金属粉の収集には不充分であるとも記載されているが(【0053】),これは上記1)の構成と比較した場合に効果が劣る旨を記載しているにとどまり,2)の構成であっても金属粉を収集してその拡散を防止するという本件発明の効果を奏しないとはいえないから,上記記載をもって本件発明の構\\成要件Eにいう「金属粉収集機構」を上記1の構成に限定したとみることは困難である。以上によれば,構\\成要件Eにいう「金属粉収集機構」は,上記1)及び2)の各構成を含むものと解することができる。一方,前記(1)ウで認定したとおり,被告製品の凹部(12H’)は,円筒状のフード部の半径外方に膨らむようにフード部の円周方向全周にわたって存在するものである。また,この凹部は,フード部のうち,被告製品においてトルシアボルトの破断面のバリを切削加工する際に切削屑が発生し,これが飛散する箇所,すなわち,別紙「被告製品の構成」の第3図,第4図及び第6図に示された専用刃(バリ除去用工具)(10CG’)の第1の刃(101C’)及び第2の刃(102C’)がトルシアボルトの破断面(1c’)に当接し,切削加工により切削屑が生じると,これがアウターソ\\ケット(22)側面の開口部(22a)を通って飛散する箇所に対応する部分に位置していると認められる。そうすると,被告製品の凹部(12H’)は,本件明細書に記載された上記2)の構成と同様に,金属粉を収容することによって金属粉を収集する機構\\であるということができるから,構成要件Eにいう「金属粉収集機構\\」に当たると解するのが相当である。
イ これに対し,被告は,(ア) 本件特許の特許請求の範囲には「金属粉収集機構(12H,16,19A,19B)」と記載されており,その出願経過に照らしても,これらの符号により特定される実施形態に限定されること,(イ) 被告製品を使用する向きによっては凹部(12H’)に切削屑がたまらないし,切削屑はカバー(24)内を移動するから,凹部には金属粉収集の機能はないこと,(ウ) 被告製品の蛇腹状のカバー(24)は,切削屑の外部への拡散を防止して切削屑を保持する機能及び伸縮により母材との密着性を高める機能\\を有するものであること,(エ) 本件明細書の第1実施形態の凹部(【0025】)と蛇腹の谷部である被告製品の凹部(12H’)は大きさが異なること,(オ) 本件明細書には,本件発明の第5実施形態(【0046】〜【0048】,図11)におけるベローズ120が金属粉収集機構であることを示す記載がなく,本件出願人において蛇腹状のカバーの内面の凹部が金属粉収集機構\\に当たるとの認識がなかったことを理由に,被告製品の凹部が構成要件Eにいう「金属粉収集機構\\」に当たらない旨主張するが,以下のとおり,いずれも採用することができない。
(ア) 特許請求の範囲の括弧内に符号を記載することに関しては,特許法施行規則24条の4及び様式29の2の〔備考〕14のロに「請求項の記載の内容を理解するために必要があるときは,当該願書に添付した図面において使用した符号を括弧をして用いる。」と規定されているところであり,これによれば,特許請求の範囲中に括弧をして符号が用いられた場合には,特段の事情のない限り,記載内容を理解するための補助的機能を有するにとどまり,符号によって特許請求の範囲に記載された内容を限定する機能\\は有しないものと解される。この点に関し,被告は,本件出願人は,本件補正書に係る補正によってこれらの符号により特定される実施形態以外の構成を意識的に除外したから,「金属粉収集機構\\(12H,16,19A,19B)」は,これらの実施形態の構成に限られ,蛇腹状のカバーの内面の凹部は構\\成要件Eにいう「金属粉収集機構」に当たらない旨主張する。しかし,これらの符号は本件補正書に係る補正の前から明細書及び図面中で使用されていたものであり(乙1),前記(1)イ記載の本件特許の出願経過に照らし,本件出願人が拒絶理由の回避のために特定の構成を除外する意図でこれらの符号を付したとは認め難い。そうすると,本件において上記特段の事情があると認めることはできないから,符号「(12H,16,19A,19B)」の記載は,特許請求の範囲に記載された内容をこれらの符号により特定される実施形態の構\\成に限定するものではないと解すべきである。

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平成25(ワ)2464 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年10月31日 大阪地方裁判所

 子供用の練習箸の特許について、請求項に規定されている「パッド」という用語について意義を認定し、技術的範囲に属しないと判断されました。
 前記ア及びイの記載によれば,本件特許発明の「パッド」とは,通常の箸先とは異なるものであり,固形物をつかみ取るための部材(当て物)として箸先に取り付けられ,取り外しが可能なものであることが認められる。\n
エ 被告製品の構成及び構\成要件充足性 証拠(乙7)によれば,被告製品の箸先には滑り止め加工が施されていることが認められるものの,固形物をつかみ取るための部材(当て物)として箸先に取り付けられ,取り外しが可能な構\成を有しているとは認められない。したがって,被告製品は「パッド」に相当する構成を有するものとは認められないから,構\成要件B,D,G及びIを充足するとはいえない。

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平成24(ワ)8053 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年10月31日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
,原告は,構成要件Cの「実行されることにより」という文言は,構\成要件Dの1)ないし4)の過程全体に係っているものと読むべきであるから,初期フレームプログラムの実行と,カテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムのダウンロードとの間には,厳密な前後関係は要求されておらず,また,上記の文言は,因果関係を示すものでもなく,構成要件Dの1)ないし4)の過程が初期フレームプログラムの実行なしには行われないという程度の関係を示すものにすぎないと解すべきであると主張する。しかしながら,構\成要件Cにいう「より」は,因果関係等を意味する自動詞「よる」の連用形であって,動詞等に連なる語法において用いられるものであるから,構成要件Cの「ことにより」が,構\成要件Dの1)ないし3)の「送信される」及び4)の「問い合わされる」の各動詞にそれぞれ係っていることは文法上明らかであり,これと異なる読み方をすべき根拠は見当たらない。また,仮に,構成要件Cの「実行されることにより」を原告の主張のように解したとしても,前記ア及びイのとおり,被告システムにおいては,カテゴリーリスト及び個別商品リストの表\示領域を確保するプログラムと,その内容を表示するプログラムとが,それぞれ一つのHTML文書のプログラムの実行過程において同時に実行されており,構\成要件C及びDに記載された手順を順次実行するという形では実行されていないのであるから,いずれにせよ,上記ウの結論を左右するには足りないというべきである。オ よって,原告の主張は理由がなく,被告システムの実施態様1が,構成要件A,C,D及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足すると認めることはできない。\n

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平成24(ワ)11220 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年09月26日 大阪地方裁判所

 特許権侵害事件において、一部の請求項は無効、有効な請求項は技術的範囲に属しないと判断されました。
 前記(2)によれば,乙1発明のA からG までは,本件特許発明1の構成要件1A から1G にそれぞれ相当するものであり,乙1文献には,本件特許発明1の各構成要件をいずれも備えた発明(乙1発明)が記載されているものと認めることができる。原告は,乙1文献には構\成要件1C 及び1E に相当する構成(前記(2)C 及びE の構成)が記載されていない旨主張するので,以下,補足する。ア 本件特許発明1の構成要件1C に相当する構成(前記(2)C の構成)前記(1)のとおり,乙1文献には,「引張り試験の方法は,アムスラー万能試験機等に固定し,片端より管軸方向に加重をかけ,ブレード部分の離脱及び破断時の強度を測定するものとする。」という記載がある。この記載は,引張り試験において,ブレード部分の離脱及び破断が生じた後に,フレキシブルチューブの離脱又は破断が生じるという前後関係を当然の前提としたものである。そもそも,フレキシブルチューブ本体は蛇腹構\造のものであり,その名のとおり伸縮可能なものである(当事者間で争いがない。)のに対し,乙1文献のブレードはステンレス鋼(SUS304)であり,フレキシブルチューブの外面に均一に編まれたものであるから,構造上,フレキシブルチューブの伸長を防止する作用を奏するものであることが明らかである。本件特許1の出願時以前における技術常識についても,以下の点が認められる。昭和41年12月刊行の石井俊二著「螺旋管とベローズ型伸縮管継手のすべて」と題する論文(乙2)によれば,ブレードは,一般に,螺旋管に伸びを生じたり,外部からの衝撃から防護したり,美観を保持したりすることを目的とする部材である。また,平成9年7月1日発行の財団法人日本建築センター編『建築設備耐震設計・施工指針(1997年版)』(乙4)には,地震によるフレキシブル継手の破損状況が紹介されているところ,そこではブレードが破断したフレキシブル継手の写真が掲載されており,当該写真からはフレキシブルチューブがブレードの長さの約2倍の長さにまで伸長していることが読み取れる。以上のとおり,乙1文献には,フレキシブルチューブが破損するよりも先にブレードが離脱又は破断することを前提とした記載があること,乙1発明の構\造からすれば,必然的に当該構成が備わっていること,本件特許1の出願以前においても,当該構\成は公知のものであったことが認められる。そうすると,乙1文献に接した当業者であれば,乙1発明が本件特許発明1の構成要件1H に相当する構成(前記(2)H の構成)を備えていることについては,直ちに理解することができるものというべきである。\n
イ 本件特許発明1の構成要件1 に相当する構成(前記(2) の構成)\n
前記アのとおり,乙1文献には,フレキシブルチューブが破損するよりも先にブレードが離脱又は破断することを前提とした記載があること,フレキシブルチューブは蛇腹構造のものであり,その名のとおり伸縮可能\なものであるのに対し,ブレードはフレキシブルチューブの伸長を防止する構成のものであることが認められる。そうすると,乙1発明においても,ブレードが離脱又は破断した後,フレキシブルチューブは当然に伸長する。しかも,前記アのとおり,ブレードが離脱した後,フレキシブルチューブが約2倍の長さにまで伸長する構\成のフレキシブル継ぎ手が公知のものであったことも認められる。これらのことからすれば,乙1文献に接した当業者であれば,乙1発明が本件特許発明1の構成要件1 に相当する構成(前記(2) の構成)を備えていることについても,直ちに理解することができるものというべきである。\n
・・・
前提事実(3)イのとおり,構成要件2 は,「樹脂スリーブの小径内周の高さと金属スリーブの中間外周の高さおよび小径外周の高さの和を一致させ,」というものである。この文言からすると,樹脂スリーブの小径内周の高さと,金属スリーブの中間外周の高さ及び小径外周の高さの和は,同一であると解される。構成要件2Fにおいて「樹脂スリーブの大径内周径と金属スリーブの中間外周径をほぼ一致させたことを特徴とする」とされており,【特許請求の範囲】の記載において,「ほぼ一致」と「一致」とで書き分けられていることからも,上記のとおり解釈するのが合理的である。
・・・
前記のとおり,被告製品2−1が小径外周の構成を備えるか否かについては当事者間に争いがあるものの,樹脂スリーブの小径内周の高さが約13mmであり,金属スリーブの中間外周の高さ(又はこれと小径外周の高さの和)が約16mmであることについては当事者間で争いがない。そうすると,被告製品2−1において,樹脂スリーブの小径内周の高さは,金属スリーブの中間外周の高さ(又はこれと小径外周の高さの和)よりも短く,同一ではないから,構成要件2 を文言上充足するとは認められない。仮に,完全な同一を求めているとまではいえないとしても,上記3mmの違いは,全体の大きさや前記(1)に述べたことに照らしても,「一致」しているとはいえない。

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平成22(ワ)42609 特許権使用差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月30日 東京地方裁判所

 技術的範囲に属しないと判断されました。
 次に,「上方が拡開する状態で張設された一対のワイヤーのそれぞれを巻き取る一対のウインチ」の意義については,この要件が当初の請求項2の「ワイヤーを巻き取る一対のウインチ」(甲1)から減縮訂正されたものであること(甲6,8)から考えると,上方が拡開する状態で張設された(いわゆる逆ハの字の)ワイヤーを巻き取ることが不可能ではないという程度では足りず,一対のウインチが,「上方が拡開する状態で張設された一対のワイヤーのそれぞれを巻き取る」のに適した構\造を有していることを要求しているものと解するのが相当である(甲8・16頁,乙19・18頁)。イ そこで,イ号物件が逆ハの字のワイヤーを巻き取るのに適した構造を有しているといえるか検討する。イ号物件において構\成要件Hの「ウインチ」に対応する後側ドラム6aは,それ自体としては特に逆ハの字のワイヤーを巻き取るのに適した構造を有しているとは認められない(なお,甲7・8頁の図は,10頁に「施工機にはウィンチ1台に主ワイヤー1本と補助ワイヤー2本があり」とあることなどからして,左右一対のウインチを有するイ号物件に関するものとは認められない。)。
ウ イ号物件は,車体前方にフェアリーダーを設置して使用されていたことが認められる(乙20)が,構成要件Hは,ウインチ自体の構\造として逆ハの字のワイヤーを巻き取るのに適した構造を要求しているのであるから,イ号物件における後側ドラム6aが逆ハの字のワイヤーを巻き取るのに適した構\造を有しておらず,構成要件Hにいう「上方が拡開する状態で張設された一対のワイヤーのそれぞれを巻き取る一対のウインチ」といえない以上,イ号物件が構\成要件Hを充足するとはいえない。

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平成25(ネ)10030 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月22日 知的財産高等裁判所

 電子署名サーバについて技術的範囲外とした1審判断が維持されました。
 控訴人は,本件手続補正書の「3−1)」及び「3−2)」は,伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ,すなわち,原本性を証明するための署名に裏付けされた伝達情報の照合値(ダイジェスト)についての記述であって,原本性を証明してもらうためのデータを,原本性を証明する処理のために受け取ることを否定する陳述ではないから,ダイジェスト照合によって実現しているサービスに,原本性を証明してもらうためのデータを受け取り保管することを加えることをもって,構成要件6及び7の充足性を否定する根拠とはならない旨主張する。しかしながら,前記(1)及び(2)のとおり,控訴人は,本件特許の拒絶査定不服審判において,本件発明は,「伝達情報」等を発信者装置A及び受信者装置Bから内容証明サイト装置Cに送信せず,「伝達情報」を内容証明サイト装置Cが保管しないことによって,引用文献等記載の発明と異なり,通信量(情報量)が多くならず,多くの情報量を保管する構成でもなく,公証人等による伝達情報への不正関与の可能\性を高くしないという効果を奏すると陳述し,本件発明は,控訴人のかかる陳述を踏まえた上で,特許査定がされたものであるから,本件発明の構成要件6及び7の意義は,契約当事者双方が契約書の「原本」を管理し,内容証明サイト装置は原本が改ざんされていないことを伝達情報のダイジェスト又は伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストのみに基づいて検証することで証明するサービスであると解するのが相当である。したがって,原本性を証明するためのデータではなく,原本性を証明してもらうためのデータであれば,「伝達情報」を受け取り保管することもできるとする控訴人の主張は採用することができない。また,本件処理ステップb及びe(甲7の6頁,9頁及び10頁)によれば,CECサーバにおける署名検証(文書が発信者A又は受信者Bから送られたものであるか,当該文書が誰かに改ざんされていないかの検証)は,発信者AからCECサーバに送信されたD及び[(D)a]SKaのうち,Dからダイジェスト(D)cを作成し,[(D)a]SKaを復号化して(D)aを作成して,両者を照合することによって行われ,また,受信者BからCECサーバに送信されたD’及び[(D’)b]SKbのうち,D’からダイジェスト(D’)cを作成し,[(D’)b]SKbを復号化して(D’)bを作成して,両者を照合することによって行われるものである。このように,CECサーバが署名検証を行うには,発信者及び受信者から,それぞれ伝達情報のダイジェストだけではなく,伝達情報をも受信する必要がある。したがって,CECサーバにおいて受け取り保管する伝達情報は,原本性を証明してもらうためのデータというにとどまらず,「伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」,すなわち,原本性を証明するためのデータに当たるものであるから,CECサーバについては,「伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」が,「伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られ」ているとする構\成要件6及び7を充足しないことは明らかである。イ なお,控訴人は,CEC利用規約4条1項及び本件処理ステップeによれば,CECサーバは,電子署名の中の契約当事者の署名で裏付けされた契約書の照合値の真正を確認することによって,原本性を証明してもらうための当該デジタル・データの原本性を証明(検証)しているから,発信者署名データの中の契約書のダイジェスト(照合値)のみが,発信者が送信した電子契約文書の内容の同一性を確認できるデータであり(構成要件6の充足),受信者署名データの中の契約書のダイジェストのみが,受信者が受け取って復号化した電子契約文書の内容の同一性を確認できるデータである(構\成要件7の充足)旨主張するが,前記アで述べたとおりであって,控訴人のかかる主張にも理由がない。

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平成24(ワ)16103 特許権に基づく差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月29日 東京地方裁判所

CS関連発明について、技術的範囲外と認定されました。
 本件各発明の構成要件CないしFにいう「共用アプリケーションソ\フトウェア」がどのようなアプリケーションソフトウェアを意味するかについて検討すると,・・・本件各発明の「共用アプリケーションソ\フトウェア」は,少なくとも,1)情報データの文字数及び行数,2)印刷用紙に印字する前記情報データの個数,並びに,3)印刷用紙に印字する前記情報データの文字サイズ及び文字フォントを,統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有するものでなければならず,そのいずれかの機能\を欠くアプリケーションソフトウェアは,「共用アプリケーションソ\フトウェア」に当たらないものと解される。また,本件各明細書の記載をみても,前記(1)ア(ア)a及び同(イ)aのとおり,本件各発明は,従来の技術では,HTTPの記述言語と情報データを受信した端末装置との間に互換性の相違(端末装置の機種やOS,アプリケーションソフトウェア,フォント環境等の相違)があると,情報データが不規則に散在してディスプレイに表\示されたり,文字が入り乱れた乱雑な状態で印刷用紙に印字されてしまう場合があったところ,これを,情報データを中間データに変換して端末装置に送信し,端末装置にインストールされた共用アプリケーションソフトウェアの機能\により,統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力することによって,統一した所定の書式で表示又は印刷させることができるとの作用効果を有するものとされている。そして,本件各明細書において,共用アプリケーションソ\フトウェアは,「印刷用紙における文字数および行数,印刷用紙に印字する個別情報データのデータ数,文字サイズおよび文字フォント,印刷用紙の上下端縁および両側縁のマージン等を自動的に設定する機能を有し,個別情報データをディスプレイ7または印刷用紙に無駄なく最適なレイアウトで表\示または印字する機能」を有するものとされている。さらに,前記(1)ア(ア)b及び同(イ)bのとおり,本件各明細書には,本件各発明の実施例として,(ア)スポーツ用品の販売に供する紙票を出力する場合,(イ)宿泊施設の提供の取次ぎに供する紙票を出力する場合,(ウ)展示会や即売会等のイベントに参加した出展者がイベント会場に来場したユーザーに後日,紹介状や案内状等の郵便物を発送する際の郵便物に貼付する宛名ラベルを出力する場合が挙げられている。そして,このうちの(ア)を例に採ると,本件明細書1中の図6に掲記されたB5縦の紙票には,テニスラケットのメーカー名,商品名,キャッチフレーズ,性能,販売価格及び販売店名が所定の文字数以内,所定の行数以内,所定の列数以内に印字され,テニスラケットの形態(全体図)が所定の範囲に印刷されている。そして,販売店は,この紙票を,テニスラケットやショウケースに貼\付したり,広告として使用したり,紹介状や案内状と共に顧客に郵送したりすることもできる旨の作用効果が記載されている(【0079】,【0080】)。上記の1)ないし3)の一部でもレイアウトが崩れた場合は,このような作用効果を発揮することができず,各販売店が情報データを製造者から郵送やファクシミリ等で取り寄せなければならなくなり,本件各発明の課題(前記(1)ア(ア)a及び同(イ)a参照)を解決することができないこととなる。以上によれば,本件各発明にいう「共用アプリケーションソフトウェア」は,上記1)ないし3)の全てを統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有するものであることを要し,これらを設定する機能\を一部でも欠き,又は機能自体はあっても手動で設定しなければならないこともあるようなアプリケーションソ\フトウェアは,上記の「共用アプリケーションソフトウェア」には当たらないものと解するのが相当である。イ これを被告サービスについてみると,前記(1)エのとおり,被告サーバにおいては,あらかじめ用意されているテンプレートに従って利用明細に係るPDFファイルが作成され,これが利用者に送信されると,利用者は,元のレイアウトを変更することなく,単に,受信したPDFファイルをリーダーで表示又は印刷するにすぎないことが認められる。すなわち,被告サービスにおいて,共用アプリケーションソ\フトウェアが有するとされている基本的な機能(利用者端末の機種やOS,アプリケーションソ\フトウェア,フォント環境等の相違にかかわらず,情報データを統一された所定の形式で端末装置が出力することができるようなファイルを作成する機能)を有するアプリケーションソ\フトウェアに相当するのは,PDFファイルの作成機能を有するアクロバット等のアプリケーションソ\フトウェアであって(なお,それは,利用者端末ではなく被告サーバにインストールされているものと認められる。),利用者が利用明細に係るPDFファイルを表示又は印刷する際に使用する利用者端末のリーダーは,これには当たらないものと解される。
 ウ これに対し,原告らは,リーダーにも,元の文書に使用されたフォントが端末装置に存在しない場合に代替フォントを用いて出力する機能,元の文書を縮小して印刷する際に文字サイズ,上下端縁及びマージンを変更して出力する機能\があると主張する。しかしながら,前記(1)ウ(イ)のとおり,リーダーのフォントの設定次第では,別の端末で表示・印刷したときに元のレイアウトを保持することができず,エラーや文字化けが発生する場合もあり,これを補正するためには手動で字形を埋め込むなどの作業をしなければならないこともあることが認められる。また,同(ウ)のとおり,リーダーを使用してPDFファイルを印刷する場合,その設定次第では,常に最適のサイズでの印刷がされるとは限らないことが認められる。そうすると,リーダーに原告らの主張するような機能があるとしても,リーダーが,文字サイズ及び文字フォントを常に一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能\(前記アの3))を有するとは断定することができないものというべきである。また,この点をおくとしても,原告らは,共用アプリケーションソフトウェアが有していなければならない前記アの1)ないし3)の機能のうち,1)の情報データの文字数及び行数並びに2)の印刷用紙に印字する前記情報データの個数については,リーダーにこれを統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能があることについて主張すらしていない。なお,この点に関し,原告らは,リーダーはPDFファイルについて印刷命令が出された場合,プリンタの機種に応じたページ記述言語データを作成するところ,これはページ記述言語データにデータ数,文字数,文字サイズ,文字フォント,行数,上下端縁,マージン等を設定するものであると主張するが,それも,元のファイルのレイアウトを最適なものに設定するものではなく,元のファイルのレイアウトを何ら変更することなく,そのとおりに印刷することしかできない機能\として主張されているものと解されるから,リーダーが上記1)及び2)の機能を有していることの根拠とはならないものというべきである。したがって,原告らの主張はいずれも理由がない。 
 エ 加えて,原告らを含む出願人は,本件各特許権の出願経過において,特許庁審査官の本件各拒絶理由通知書(前記(1)イ(ア))に対して本件各意見書を提出し,これには同(イ)のとおりの記載がされていた。これをみると,原告らは,本件各発明が乙5発明とは異なるもので,かつ,当業者が乙5発明から本件各発明を容易に想到することができないものであることを裏付けるために,リーダーを用いて印刷した場合,文字フォントを統一することができず,クライアントがサーバと同一の文字フォント,サーバと同一の文字数(情報データの個数)で帳票を出力することができない場合があるのに対し,本件各発明の共用アプリケーションソフトウェアにはこのような制約がなく,規則正しく最適なレイアウトで出力することができる旨主張しているのであるから,本件各発明の共用アプリケーションソ\フトウェアはリーダーとは異なるアプリケーションソフトウェアを想定している旨の主張をしていることが明らかである。そうすると,本件各特許の出願経過においてこのような主張をし,その登録を受けた原告らが,本件訴訟において,これを翻し,リーダーが本件各発明の共用アプリケーションソ\フトウェアに当たるとの主張をすることは,信義誠実の原則に反し,許されないというべきである。この点からも,原告らの主張は理由がない。

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平成24(ワ)16103 特許権に基づく差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月29日 東京地方裁判所

CS関連発明について、技術的範囲外と認定されました。
 本件各発明の構成要件CないしFにいう「共用アプリケーションソ\フトウェア」がどのようなアプリケーションソフトウェアを意味するかについて検討すると,・・・本件各発明の「共用アプリケーションソ\フトウェア」は,少なくとも,1)情報データの文字数及び行数,2)印刷用紙に印字する前記情報データの個数,並びに,3)印刷用紙に印字する前記情報データの文字サイズ及び文字フォントを,統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有するものでなければならず,そのいずれかの機能\を欠くアプリケーションソフトウェアは,「共用アプリケーションソ\フトウェア」に当たらないものと解される。また,本件各明細書の記載をみても,前記(1)ア(ア)a及び同(イ)aのとおり,本件各発明は,従来の技術では,HTTPの記述言語と情報データを受信した端末装置との間に互換性の相違(端末装置の機種やOS,アプリケーションソフトウェア,フォント環境等の相違)があると,情報データが不規則に散在してディスプレイに表\示されたり,文字が入り乱れた乱雑な状態で印刷用紙に印字されてしまう場合があったところ,これを,情報データを中間データに変換して端末装置に送信し,端末装置にインストールされた共用アプリケーションソフトウェアの機能\により,統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力することによって,統一した所定の書式で表示又は印刷させることができるとの作用効果を有するものとされている。そして,本件各明細書において,共用アプリケーションソ\フトウェアは,「印刷用紙における文字数および行数,印刷用紙に印字する個別情報データのデータ数,文字サイズおよび文字フォント,印刷用紙の上下端縁および両側縁のマージン等を自動的に設定する機能を有し,個別情報データをディスプレイ7または印刷用紙に無駄なく最適なレイアウトで表\示または印字する機能」を有するものとされている。さらに,前記(1)ア(ア)b及び同(イ)bのとおり,本件各明細書には,本件各発明の実施例として,(ア)スポーツ用品の販売に供する紙票を出力する場合,(イ)宿泊施設の提供の取次ぎに供する紙票を出力する場合,(ウ)展示会や即売会等のイベントに参加した出展者がイベント会場に来場したユーザーに後日,紹介状や案内状等の郵便物を発送する際の郵便物に貼付する宛名ラベルを出力する場合が挙げられている。そして,このうちの(ア)を例に採ると,本件明細書1中の図6に掲記されたB5縦の紙票には,テニスラケットのメーカー名,商品名,キャッチフレーズ,性能,販売価格及び販売店名が所定の文字数以内,所定の行数以内,所定の列数以内に印字され,テニスラケットの形態(全体図)が所定の範囲に印刷されている。そして,販売店は,この紙票を,テニスラケットやショウケースに貼\付したり,広告として使用したり,紹介状や案内状と共に顧客に郵送したりすることもできる旨の作用効果が記載されている(【0079】,【0080】)。上記の1)ないし3)の一部でもレイアウトが崩れた場合は,このような作用効果を発揮することができず,各販売店が情報データを製造者から郵送やファクシミリ等で取り寄せなければならなくなり,本件各発明の課題(前記(1)ア(ア)a及び同(イ)a参照)を解決することができないこととなる。以上によれば,本件各発明にいう「共用アプリケーションソフトウェア」は,上記1)ないし3)の全てを統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有するものであることを要し,これらを設定する機能\を一部でも欠き,又は機能自体はあっても手動で設定しなければならないこともあるようなアプリケーションソ\フトウェアは,上記の「共用アプリケーションソフトウェア」には当たらないものと解するのが相当である。イ これを被告サービスについてみると,前記(1)エのとおり,被告サーバにおいては,あらかじめ用意されているテンプレートに従って利用明細に係るPDFファイルが作成され,これが利用者に送信されると,利用者は,元のレイアウトを変更することなく,単に,受信したPDFファイルをリーダーで表示又は印刷するにすぎないことが認められる。すなわち,被告サービスにおいて,共用アプリケーションソ\フトウェアが有するとされている基本的な機能(利用者端末の機種やOS,アプリケーションソ\フトウェア,フォント環境等の相違にかかわらず,情報データを統一された所定の形式で端末装置が出力することができるようなファイルを作成する機能)を有するアプリケーションソ\フトウェアに相当するのは,PDFファイルの作成機能を有するアクロバット等のアプリケーションソ\フトウェアであって(なお,それは,利用者端末ではなく被告サーバにインストールされているものと認められる。),利用者が利用明細に係るPDFファイルを表示又は印刷する際に使用する利用者端末のリーダーは,これには当たらないものと解される。
 ウ これに対し,原告らは,リーダーにも,元の文書に使用されたフォントが端末装置に存在しない場合に代替フォントを用いて出力する機能,元の文書を縮小して印刷する際に文字サイズ,上下端縁及びマージンを変更して出力する機能\があると主張する。しかしながら,前記(1)ウ(イ)のとおり,リーダーのフォントの設定次第では,別の端末で表示・印刷したときに元のレイアウトを保持することができず,エラーや文字化けが発生する場合もあり,これを補正するためには手動で字形を埋め込むなどの作業をしなければならないこともあることが認められる。また,同(ウ)のとおり,リーダーを使用してPDFファイルを印刷する場合,その設定次第では,常に最適のサイズでの印刷がされるとは限らないことが認められる。そうすると,リーダーに原告らの主張するような機能があるとしても,リーダーが,文字サイズ及び文字フォントを常に一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能\(前記アの3))を有するとは断定することができないものというべきである。また,この点をおくとしても,原告らは,共用アプリケーションソフトウェアが有していなければならない前記アの1)ないし3)の機能のうち,1)の情報データの文字数及び行数並びに2)の印刷用紙に印字する前記情報データの個数については,リーダーにこれを統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能があることについて主張すらしていない。なお,この点に関し,原告らは,リーダーはPDFファイルについて印刷命令が出された場合,プリンタの機種に応じたページ記述言語データを作成するところ,これはページ記述言語データにデータ数,文字数,文字サイズ,文字フォント,行数,上下端縁,マージン等を設定するものであると主張するが,それも,元のファイルのレイアウトを最適なものに設定するものではなく,元のファイルのレイアウトを何ら変更することなく,そのとおりに印刷することしかできない機能\として主張されているものと解されるから,リーダーが上記1)及び2)の機能を有していることの根拠とはならないものというべきである。したがって,原告らの主張はいずれも理由がない。 
 エ 加えて,原告らを含む出願人は,本件各特許権の出願経過において,特許庁審査官の本件各拒絶理由通知書(前記(1)イ(ア))に対して本件各意見書を提出し,これには同(イ)のとおりの記載がされていた。これをみると,原告らは,本件各発明が乙5発明とは異なるもので,かつ,当業者が乙5発明から本件各発明を容易に想到することができないものであることを裏付けるために,リーダーを用いて印刷した場合,文字フォントを統一することができず,クライアントがサーバと同一の文字フォント,サーバと同一の文字数(情報データの個数)で帳票を出力することができない場合があるのに対し,本件各発明の共用アプリケーションソフトウェアにはこのような制約がなく,規則正しく最適なレイアウトで出力することができる旨主張しているのであるから,本件各発明の共用アプリケーションソ\フトウェアはリーダーとは異なるアプリケーションソフトウェアを想定している旨の主張をしていることが明らかである。そうすると,本件各特許の出願経過においてこのような主張をし,その登録を受けた原告らが,本件訴訟において,これを翻し,リーダーが本件各発明の共用アプリケーションソ\フトウェアに当たるとの主張をすることは,信義誠実の原則に反し,許されないというべきである。この点からも,原告らの主張は理由がない。

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平成24(ワ)8135 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月29日 東京地方裁判所

 製法特許について構成要件を満たさないとして非侵害と判断されました。\n
 証拠(甲3の2,6の1ないし3,乙3,7)及び弁論の全趣旨によれば,(ア) 被告装置には,成膜材料の蒸発源として,ハースと呼ばれる電子銃により加熱するものとRHソースと呼ばれる抵抗加熱により加熱するものを備えているが,成膜材料は成膜される各層について一つしか選択することができないから,成膜材料がハースとRHソ\ースとの両方から同時に供給されることはなく,いずれか一方からしか供給されない,(イ) 被告装置には,ハースに隣接してハース用仕切り板が設けられ,RHソースに隣接してRHソ\ース用仕切り板が設けられているところ,ハース又はRHソースから蒸発した成膜材料は,ハース用仕切り板又はRHソ\ース用仕切り板により,蒸発の方向(角度)が制限され,その結果,ドームの基体保持面の全域には供給されない,(ウ) 被告補佐人は,被告装置を用いて,ハースから成膜材料SiO2 を蒸発させ,ハース用仕切り板を設置しない状態と設置した状態とに分けて,基板保持面に保持された基板に形成された膜の厚さを測定する実験をしたところ,ハース用仕切り板を設置しない状態では,ドームの左側10か所(A1ないし10)及び右側10か所(B1ないし10)いずれの基板についても膜が形成されたが,ハース用仕切り板を設置した状態では,左側10か所は,そのうちの3か所(A7,8及び10)の基板については全く膜が形成されず,その余の基板についても右側10か所と比較して膜が極めて薄くしか形成されなかったこと,以上の事実が認められる。原告は,被告補佐人がした実験について,1) ハース用仕切り板の形状からすれば,その効果をもたらす範囲は左側10か所のうちの5か所(A6ないし10)になるはずであるが,左側10か所全部に効果がみられる,2) 真空蒸着では,基板近傍に遮蔽板を設置しない限り,急激な膜厚変化は極めて困難であるのに,左側のA1から極端に膜厚が減少しているとして,ハース用仕切り板以外の手段を用いてデータを作為的に作出した可能性があり,信用性に欠けると主張する。しかしながら,1)については,上記実験に係る実験報告書(乙7)の図2(被告装置の図面)によれば,ハース用仕切り板の効果をもたらす範囲が左側10か所のうちの5か所(A6ないし10)になるはずであるというにとどまるし,2)については,真空蒸着において,蒸発源に隣接して仕切り板を設置したのでは,急激な膜厚変化が生じないことを裏付ける的確な証拠はないのである。そうであるから,原告の上記主張をもって,データを作為的に作出したということはできないし,他にデータを作為的に作出したことを窺わせるような事情も認められない。原告の上記主張は,採用することができない。
(2) 被告補佐人がしたハースを使用した実験結果は,RHソースを使用した場合においても当てはまると考えられるから,前記(1)認定の事実によれば,被告装置は,ハース及びRHソースの各蒸発源による成膜材料の供給範囲がそれぞれドームの基体保持面の一部の領域に制限され,かつ,成膜材料が両方の蒸発源から同時に供給されることはないと認められる。そうすると,被告装置は,基体保持手段の基体保持面の全域に向けて成膜材料を供給するというものではない。原告は,原告のした検証の結果(甲7)や「Coatings on Glass」(甲8)198頁の記載によれば,被告装置は,成膜材料が基体保持面の全域に供給されるものであると主張する。しかしながら,上記検証は,被告装置とは異なる装置を用いたものであるから,その結果が,当然に被告装置における成膜材料の到達範囲を示すというわけではないし,また,証拠(甲8)によれば,「Coatings on Glass」(甲8)198頁には,「起こりうる最も単純な現象(原子の減圧雰囲気における飛行において)は,不活性残留ガス原子との衝突である。これらによる通常の結果は,方向と速度の変化である。これらの原子は,もはや直線上にそって到達しない。残留圧力および蒸着源と基板の間の距離に応じて,蒸着原子は,殆どあらゆる方向から,基板表面に到達可能\である。」と記載されていることが認められるから,成膜材料が残留ガスとの衝突により自由な方向に拡散しながら基体に到達する性質を持つということができるとしても,このことは,残留圧力及び蒸着源と基板の間の距離に応じて到達可能な場合があるにすぎず,これをもって,被告補佐人のした実験における,ハース用仕切り板を設置した状態では膜が形成されない基板があったとの結果を否定することはできない。原告の上記主張は,採用することができない。
(3) そうすると,被告装置の稼働により使用する方法は,被告方法の構成aの「基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給する」を充足しない。\n

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平成24(ネ)10084 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年06月25日 知的財産高等裁判所

 apple vs サムスンの特許侵害事件の控訴審です。控訴審でもファイルサイズはメディア情報には該当しないと判断されました。
 控訴人は,本件発明の「メディア情報」は「メディアアイテムに特有の情報」ではなく「メディアアイテムに関する情報」と解すべきであることを前提に,原判決で,ファイルサイズが構成要件G1及びG2における「メディア情報」には該当しないと判断したのは誤りであると主張する。この点についての判断は,原判決が37頁以下の(2),(3)で説示したとおりであるが,なお次のとおり補足して判断する。本件明細書(甲2)の記載によれば,本件発明は,「ホストコンピュータおよび/またはメディアプレーヤー上のメディアコンテンツをシンクロまたは管理するための改良されたアプローチのための改良された技術」(段落【0005】)として,メディアコンテンツのシンクロ処理において,ファイル名や更新日ではなく,「メディア情報」を比較することにより,シンクロを「データ転送の量が比較的低いか最小限にされるよう適切に管理されるよう」(段落【0022】)にし,「その結果,シンクロプロセスは,よりインテリジェントに実行されえる」(段落【0010】)ようにしたものであり,また,本件特許請求の範囲における文言上,「ファイル情報」と規定することなくあえて「メディア情報」と規定しているばかりか,本件明細書等においても,「メディアアイテムが有するファイル情報」などとの用語ではなく,あえて「メディア情報」の用語が用いられ,しかも,その用語は,「メディア情報は,メディアアイテムの特徴または属性に関する」(段落【0040】)などと,メディアアイテムに関連付けて表現されていることが認められるから,本件発明における「メディア情報」とは,一般的なファイル情報の全てを包含するものではなく,音楽,映像,画像等のメディアアイテムに関する種々の情報のうち,メディアアイテムに特有の情報を意味するものと解するのが相当である。「メディア情報」なる用語はその語そのものからいかなる情報までを包含するか明確でなく,当該発明の技術的課題や作用効果を参酌してその意義を解釈しなければならないところ,原判決は,特許請求の範囲における構\成要件の記載や本件明細書の記載等を踏まえて,「メディア情報」を上記のように解釈したものであり,引用した上記各記載に照らしても,その判断を支持することができる。以上の説示に照らし,ファイルサイズが「メディア情報」に含まれないことは,原判決も「原告の主張について」と題して39頁以下のイの項で詳細に説示しているとおりであり,当裁判所が付加すべき理由はない。控訴人の上記主張は理由がない。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成23(ワ)27941
 

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平成23(ワ)6868 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年03月15日 東京地方裁判所

 真円度の測定方法について別の条件で測定した場合には範囲に入らないイ号について、裁判所は、明細書に測定方法が記載されていない以上、いずれの測定方法でも該当する必要があるとの判断をしました。
 本件発明の真円度を測定するに当たっては,乾式の試料又は湿式処理をした試料のいずれを用いても差し支えないことは,前記ウで認定したとおりである。ところで,本件発明の真円度の測定に当たり乾式の試料を測定対象とするか,又は湿式処理をした試料を測定対象とするかによって真円度の数値に有意の差が生じる場合,当業者がいずれか一方の試料を測定対象として測定した結果,構成要件所定の真円度の数値範囲外であったにもかかわらず,他方の試料を測定対象とすれば上記数値範囲内にあるとして構\成要件を充足し,特許権侵害を構成するとすれば,当業者に不測の不利益を負担させる事態となるが,このような事態は,特許権者において,特定の測定対象試料を用いるべきことを特許請求の範囲又は明細書において明らかにしなかったことにより招来したものである以上,上記不利益を当業者に負担させることは妥当でないというべきであるから,乾式の試料及び湿式処理をした試料のいずれを用いて測定しても,本件発明の構\成要件Dが規定する粒径30μm未満の粒子の真円度の数値範囲(「0.73〜0.90」)を充足する場合でない限り,構成要件Dの充足を認めるべきではないと解するのが相当である。しかるところ,前記(ア)のとおり,原告測定データ3は,被告製品の乾式の試料を対象として粒径30μm未満の粒子の真円度を測定した場合に,被告製品が構成要件Dの数値範囲内にあることを示している。しかし,他方で,本件においては,被告製品の湿式処理をした試料を対象として粒径30μm未満の粒子の真円度を測定した場合に,被告製品が構\成要件Dの数値範囲内にあることを認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記(イ)のとおり,湿式処理をした試料を対象にした被告測定データ1によれば,被告製品は構成要件Dに規定する数値の範囲外にあるというべきである。したがって,被告製品は,構\成要件Dを充足するものと認めることはできない。
(2) まとめ
以上のとおり,被告製品は,構成要件Dを充足しないから,本件発明の技術的範囲に属するものと認めることはできない\n

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