知財みちしるべロゴマーク
知財みちしるべトップページへ

更新メール
購読申し込み
購読中止

知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著名表示(不競法)

令和5(ワ)73  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年12月14日  大阪地方裁判所

厚底ソールの形状について、特別顕著性なし、周知性なしとして、不競法2条1項1号の周知商品等表\示に該当しないと判断されました。具体的なソール形状などは不明です。\n

原告ソール1が、合成樹脂を用いた厚底ソ\ールであり、原告主張の特徴1な いし特徴4の形態を備えていること、一部の溝の形状が略コの字状となってい ることについては、当事者間に争いがない。そこで、これらの形態やその組み 合わせが、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴といえるか、以下検討 する。
ア 合成樹脂を用いた厚底のソールであるとの形態について\n証拠(乙20)によれば、イタリアのVibram社(ソールのメーカー)\nが、原告商品1の販売の相当前である昭和59年(1984年)にカジュア ルシューズ向けの合成樹脂(EVA)製の超軽量ソールの製造を開始したこ\nとが認められるところ、合成樹脂製のソールの厚みを厚くすることが製造技\n術上困難であるような事情は見当たらない(令和5年7月時点では、複数の 他社から合成樹脂製の厚底ソールを使用した婦人靴が販売されていた(乙2\n1、22)。)。そうすると、合成樹脂を用いた厚底ソールである形態が、従来\nの同種商品と異なる形態とはいえない。
イ 特徴1(靴底裏面に複数の縦溝1及び横溝2、3を有することで、裏面視 において全体として略格子状のイメージを奏すること)について
証拠(乙7の1、7の3ないし7の6)によれば、原告商品の販売開始前 に、複数の他社から靴底裏面に複数の縦溝と横溝が施されて全体として略格 子状の形態の靴底の意匠登録出願がされ、その後、いずれも意匠登録がされ たことが認められるから、特徴1の形態はありふれた形態というべきである。 また、ソールの溝の深さを深くすることによって排水機能\や防滑機能が実現\nされることは一般的な知見といえる(乙8)から、特徴1の形態は技術的機 能に由来する形態といえる。\n
ウ 特徴2(靴底裏面の前方部分に、i)左右一対の2本の前記縦溝1と、i i)左右端から形成され前記各縦溝1とそれぞれ交差し、先端(中央側端部) 同士が対向する左右3対の前記横溝2と、iii)前記左右3対の横溝2よ りもつま先側において左端から右端にかけて形成される横溝3とが配され ていること)について
証拠(乙7の1、7の4、7の5)によれば、原告商品の販売開始前に、 複数の他社から靴底裏面の中央より前方(つま先)部分に概ね2本の縦溝と、 左右端から形成され上記縦溝と交差し、先端同士が対向する左右3ないし5 対の横溝と、同横溝よりつま先側において左端から右端に形成される横溝と が配された靴底の意匠登録出願がされ、その後いずれも意匠登録されたこと が認められる。また、上記横溝の数を原告ソール1の「横溝2」のように3\n対とすることに特別な意義があると解する理由は見当たらない。そうすると、 特徴2の形態は、ありふれた形態というべきである。また、特徴2の形態は、 上記イと同様の理由から、技術的機能に由来する形態ともいえる。\n
エ 特徴3(靴底裏面において、つま先部分から指の付け根に相当する部分に、 横方向に伸びる畝状の複数の段部4を有し、この段部4が、後方につれて裏 面側に傾斜するテーパー面4aを有すること)について 証拠(乙7の4、7の6、10の1、10の5)によれば、原告商品の販 売開始前に、複数の他社から、1)つま先から指の付け根付近に複数の横方向 の段部が配され、2)この段部が後方につれて裏面側に傾斜するテーパー面を 有する靴底の意匠登録出願がされ、その後いずれも意匠登録されたことが認 められる(ただし、乙7の4の登録意匠の靴底には、上記2)の構成は含まれ\nていない。)。そうすると、特徴3に係る形態は、ありふれた形態というべき である。
オ 特徴4(靴底裏面において、踵に相当する部分に、横方向に伸びる畝状の 複数の段部5を有し、この段部5が、後方につれて表面側に傾斜するテーパ\nー面5aを有すること)について
証拠(乙7の4、10の5)によれば、原告商品の販売開始前に、複数の 他社から、靴底裏面の踵に相当する部分に横方向に伸び、後方につれて表面\n側に傾斜するテーパー面を有する複数の段部が配された靴底の意匠登録出 願がされ、その後いずれも意匠登録されたことが認められる。そうすると、 特徴4に係る形態は、ありふれた形態というべきである。
カ 一部の溝の形状が略コの字状となっているとの形態について 当該形態は、原告の主張によっても、原告代表者の名字の頭文字「F」を\nなぞったデザインの一つにすぎない。また、当該形態が施された範囲は、親 指から薬指にかけた部分及び小指部分であって、原告ソール1全体の約6分\nの1程度と非常に狭く(甲5)、需要者が着目するとは解し難い。
キ 以上によれば、原告ソール1の形態は、客観的に他の同種商品とは異なる\n顕著な特徴を有するとはいえないから、原告ソール1の形態に特別顕著性が\nあると認めることはできず、原告の主張は理由がない。
(3) 周知性又は著名性について
なお、周知性について、念のため検討する。 原告は、原告商品の販売開始後、1)平成30年以降に複数の展示会に原告商 品を出展したことや、2)多数の業界雑誌や業界外雑誌に原告商品が紹介された こと、3)国内直営店舗や複数のECサイトで原告商品が販売されたこと、4)平 成28年以降の原告の靴製品の売上高が伸び、業界内で上位となったことなど から、原告ソール1が令和2年秋頃には周知になったと主張する。\n しかしながら、そもそも原告主張の原告商品の販売開始時期をその通り認定 できないことは前記のとおりであるが、原告ソール1の需要者は、婦人靴の購\n入を検討する一般消費者(及びその取引業者)であるところ、当該需要者は、 靴全体のデザイン(中でも人目を引くアッパーの部分)や着用感に着目し、仮 にソールに注意を払うとしても、その注意はおおむね機能\的な観点で向けられ るものと解され、ソールの形態や材質それ自体から出所を認識するとの一般的\nな経験則は認め難いものと解されるから、原告主張の事情は直ちに原告ソール\n1が周知であることを基礎づけるものではない。
その上で検討すると、上記1)については、各展示会に原告商品が出展された としても、原告ソール1がどのように展示されていたかは明らかではない。\n上記2)については、令和2年5月号から令和4年1月号の業界雑誌「フット ウェア・プレスFW」には原告ソール1の画像が掲載されているが(甲22の\n2ないし22の22)、同誌は一般消費者向けの媒体としての性質は薄いもの と認められるうえ、原告商品が掲載された業界外雑誌(甲26、28、30(い ずれも枝番を含む。))は、大半において通信販売の媒体としてのものであって、 商品それ自体を紹介するものとは性質を異にするうえ、原告ソール1は掲載さ\nれておらず、掲載されている場合でも掲載範囲は小さく(甲24の1ないし2 4の4、26の1ないし26の4、28の1、28の2、30の1、30の2、 32)、需要者が原告ソール1の形態に着目するとは解し難い。\n上記3)については、原告の国内直営店舗数は10店舗にとどまる(甲53)。 また、複数のECサイトに原告ソール1を用いた商品が掲載されているが、原\n告ソール1の画像が掲載されていない例も多数存在するうえ、掲載されている\n場合も、複数の商品画像中の3枚目以降に掲載されているから、需要者が原告 ソール1の形態に着目するとはいえない。また、ECサイトに掲載された原告\nソール1を用いた商品は、原告とは異なる他社ブランド名で販売されているも\nのが多く、このような掲載方法によって、掲載されたソールが原告のソ\ールで あると需要者が認識するとはいえない(甲44の1ないし47の6、弁論の全 趣旨)。
上記4)については、原告の主張を前提としても、業界内における売上高が 極めて上位にあるものとはいえない。 以上によれば、原告ソール1の形態が周知であると認めることはできず、\n他に、本件証拠上、原告ソール1の形態が周知性又は著名性を有すると認め\nるに足りる証拠はない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 周知表示(不競法)
 >> 著名表示(不競法)
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP