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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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平成27(ワ)36667  商標権侵害行為差止(等請求事件  商標権  民事訴訟 平成28年12月21日  東京地方裁判所(40部)

 飲食業の店舗名について商標権を保有していましたが、営業譲渡とともに譲渡対象となっていたので、民法1条3項所定の権利濫用に該当すると判断されました。
 前記1の各事実によれば,原告は,被告に対し,本件店舗の設備のみなら ず,第三者との関係における契約上の地位や権利義務なども含めて店舗の営 業一切を譲渡していること,本件同意書において,原告と被告の発起人であ るB及びCとの間で,「のれん」や「新高揚」との店名が記載された外看板 も含めて本件店舗を譲渡する旨合意していること,ここでいう「のれん」に は「新高揚」の店名が含まれると考えられること,原告は,家紋を使用しな いことについては,被告に本件念書を差入れさせ,違約金についてまで約束 をさせたにもかかわらず,本件店舗の名称の使用については何ら文書を作成 し又は作成させていないことが認められ,これらを総合考慮すると,本件営 業譲渡契約は,被告が「新高揚」の名称を使用することを前提として締結さ れたものであると認めるのが相当である。
(2) この点に関して原告は,本件営業譲渡の交渉時に,「新高揚」の名称を使 用しないことを条件に減額に応じたとか,本件同意書の原案について,Cに 対し,「のれん」を削除するようにいったところ,Cから契約書のときに書 き換えればよいといわれて削除されなかったなどと主張し,それに沿う供述 をしている。 しかし,上記各主張を認めるべき客観的証拠はないばかりか,前記1(2) エのとおり,Cは,本件同意書について,原告の要望を受けて複数の修正に 応じていたのであるから,被告が「新高揚」の名称を使用しないことを前提 として本件営業譲渡に係る交渉がされていたとすれば,Cが「のれん」につ いてのみ本件同意書の記載の修正に応じないとはおよそ考えられない。また, 原告は,原告本人尋問において,本件営業譲渡契約書には「のれん」の記載 がなかったのでよろしいと思っていたなどとも供述するが,本件営業譲渡契 約締結時には,本件営業譲渡契約書には「引き継ぐ財産」が記載された別紙 が添付されておらず,本件営業譲渡契約書をみても「のれん」が譲渡対象と なっているか否かが明らかとなるものではないし,さらに,本件店舗の引渡 時に作成された本件営業譲渡契約書の別紙(甲6)には,本件店舗内に存在 していた物品である「商品,貯蔵品,店舗造作,器具備品,その他営業物品」 について「一式」と記載されているにすぎず,現に本件営業譲渡により引き 継がれた契約上の地位や債権債務は記載されていないから,上記別紙の記載 をもっても,本件営業譲渡の対象に「新高揚」の名称ないし「のれん」が含 まれていないということはできない。 また,本件同意書において譲渡される営業権の内容として「外看板」が記 載されていることについて,原告は,原告本人尋問において,外看板は本件 店舗が所在する部屋の賃貸借契約の貸主である大家のものであり,壊すこと もできないから気にしなかったなどと供述するが,前記1(2)クのとおり, 原告は大家に対し,被告が店舗の名称を変更する予定であり外看板の変更が\n必要である旨を告げたこともなく,被告代表者らとの間で被告がどのような\n名称を使用するかについて話をしたこともないというのであり,さらには, 原告本人尋問によれば,Cから「名称をおいおい変更する」と言われたもの のそれが具体的にいつなのかの確認もしていないというのであるから,原告 が,C又はBとの間で,「新高揚」の名称を使用しないことを条件として本 件営業譲渡に係る交渉をしていたと認めることはできない。 (3) そして,原告は,当初,Bに対し,原告の跡を継ぎ本件店舗を購入するよ う持ちかけ,「新高揚」という店名も含めて本件店舗を売却する意向を示し, 平成24年10月中旬以降,B及びCと本件店舗の譲渡に関し交渉を始めた にもかかわらず,その直前である同年9月24日に原告自ら個人として原告 商標権の商標登録出願をしていた事実をB及びCに一切告げないまま,同人 らがその事実を知らない状況で,本件営業譲渡契約を締結して1700万円 もの譲渡代金を受領した後,自らは原告商標を全く使用しておらず,将来に おいてこれを使用するための店舗の営業等の具体的な計画を有しているわ けでもないのに,被告に対し,被告標章の使用の差止めと損害賠償を求め ていることが認められる。 そうすると,「新高揚」の名称を使用できるものと信頼して本件営業譲渡 契約を締結した被告に対し,本件営業譲渡の当事者である訴外会社の代表者\nであった原告が原告商標権を行使することは,民法1条3項所定の権利濫用 に当たり許されないと認めるのが相当である。

◆判決本文

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