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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

実質上拡張変更

令和5(行ケ)10014  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和5年11月29日  知的財産高等裁判所

審決は、文言追加する訂正を実質上変更するものと判断しました。知財高裁(3部)も同様です。

そうすると、訂正前の請求項1の発明においては、地点候補がシンボルマ ークで表示がされている間は、位置情報を取得し得る地点は、このシンボル\nマークに対応した位置に限られ、それ以外の地点の位置情報は取得し得ない こととなる。これは、本件明細書の発明の詳細な説明の【発明の効果】に、 「請求項1に記載の発明によれば、候補抽出手段によって地点候補を絞り込 み、絞り込まれた地点候補を地図画面上にシンボルマークで表示するととも\nに、そのシンボルマークの表示のある間、位置情報を取得可能\な地点をシン ボルマークに対応する位置に制限するので、表示されたシンボルマークを選\n択するだけで、地図画面上から所望の位置情報を取得することができる。」 (段落【0015】)と記載され、シンボルマークが表示されている間に位\n置情報が取得可能な地点は、シンボルマークが表\示されている位置のみとさ れていることからも明らかである。さらには、前記(1)イのとおり、本件発明 はユーザーに煩雑な操作を強いることなく地図画面上から所望の位置情報 を取得することのできるナビゲーション装置を提供するものとし、そのため 「地図画面上のカーソルで地点を指定することによって対象位置の位置情\n報を取得する位置情報取得手段46を備え」(段落【0030】)、「地点候補 以外のシンボルマークが消失する大縮尺の地図表示になっても、地点候補を\n示すシンボルマークが残るように設定されており、それによって利便性の向 上が図れている」(段落【0038】)、「経由地を設定する際には、シンボル マークに対応する位置以外は位置情報の取得が制限されるため、縮尺の大き い地図画面であっても不要な地点を誤って設定してしまうことがない」(段 落【0040】)及び「地図画面上のシンボルマークに対応する地点以外の 位置情報を取得できないようにしているが、単に、取得できないだけでなく、 位置情報の選択カーソルを地点候補(シンボルマーク)以外には移動できな\nいようにしても良い」(段落【0042】)とする本件明細書の各記載の内容 にも沿うものである。
エ 本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の発明の意義
これに対し、訂正後の請求項1の発明は、「前記地点候補がシンボルマー クで表示されている間は、」「地点候補の位置情報を取得し得る地点を前記シ\nンボルマークに対応する位置に制限する」とするものであるところ、前記イ のとおり、特許請求の範囲の記載によれば、候補抽出手段で抽出された後の 地点候補が地図画面上にシンボルマークで表示されているのであるから、\n「前記シンボルマークに対応する位置」とは、すなわち地図画面上にシンボ ルマークで表示されている地点候補の地球上の所在地であり、これは、地図\n画面上における「地点候補の位置情報を取得し得る地点」と同じものを意味 している。そうすると、訂正後の請求項1においては、位置情報を取得し得 る地点についての「制限」は何らなされていないこととなる。 加えて、前記イのとおり、位置情報取得手段は地点についての位置情報を 取得するものであり、地点候補についての位置情報を取得するものではない から、訂正後の請求項1においては、地点候補以外の地図画面上に表示され\nた任意の場所である地点について、地点候補がシンボルマークで表示されて\nいる間、位置情報取得手段により位置情報を取得し得るのか否かについて、 明らかにしないものとなる。
すなわち、訂正後の請求項1の発明では、「地点候補の」との文言を加え ることにより、位置情報を取得し得る「地点」についての「制限」をなくし、 位置情報を取得できる範囲を不明とするものであり、特許請求の範囲の記載 のうち、「前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表\ 示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地 点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限する」との文言(構成要件\nG)を無意味とし、発明特定事項の一部を削除するものということができる。 オ 本件訂正前の請求項1の発明と本件訂正後の請求項1の発明の対比 そうすると、訂正事項1により、請求項1に係る発明は、本件訂正前の請 求項1に記載される地点の位置情報を取得し得るのがシンボルマークに対 応した位置に限られ、それ以外の地点の位置情報は取得し得ないこととなる ものから、位置情報を取得し得る地点についての「制限」をなくし、位置情 報の取得範囲を不明として、発明特定事項の一部を削除するものに変更され ることになるから、この変更は、特許請求の範囲を変更するものであるとこ ろ、その変更は、減縮的な変更には当たらず、また、「明瞭でない記載の釈 明」を目的としたものともいえず、本件訂正前の請求項1の記載の表示を信\n頼した第三者に不測の不利益を与えることになることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を変更するものと認め られるから、特許法126条6項の要件に適合しないというべきである。こ れと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

◆判決本文

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