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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

実質上拡張変更

平成24(行ケ)10135 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月03日 知的財産高等裁判所

 訂正要件を満たさないとした審決が維持されました。
 原告らは,実施形態【図7】と実施形態【図3】とは,パーツの形態が大きく相違するにもかかわらず,実施形態【図3】の前身頃及び後身頃の各パーツの実線を強引に実施形態【図7】のパーツの実線に引きずり込んで,実施形態【図7】の前身頃及び後身頃の各位置を解釈しているにほかならず,実施形態【図7】のパーツの本来の前身頃及び後身頃の各位置を正しく解釈していることにはならないから,審決の訂正要点aの認定手法は誤りであると主張する。しかし,実施形態【図3】については,各パーツの図面符号「12」,「14」,「16」,「18」は,図面上のそれぞれ実線で区劃された範囲のものを指していることが見て取れるから,「前身頃」や「後身頃」は,「股部パーツ」や「大腿部パーツ」と同じく下肢用衣料を構成するパーツであって,「前身頃」は図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲のもので,「後身頃」も同様に,図面符号「14」で指示された実線で区劃された範囲のものと解することができる。そして,実施形態【図3】と実施形態【図7】とは,下肢用衣料が「前身頃12」,「後身頃14」,「股部パーツ16」及び「大腿部パーツ18」で構\成されていることには変わりがないので,実施形態【図7】においても実施形態【図3】と同様に,前身頃と後身頃は,図面符号「12」と「14」で指示された実線で区劃された範囲のもの(パーツ)と解するのが自然であり,このように解することに,格別,不都合な点は見当たらない。よって,審決における「前身頃」及び「後身頃」の認定及びその手法に誤りはない。
イ 原告らは,実施形態【図7】のパーツの前身頃及び後身頃の各位置を正しく判断するには,実施形態【図7】の各パーツを縫製して下肢用衣料とした場合に,実施形態【図7】のパーツはどこが前身頃及び後身頃に位置するか正しく判断することが必要であり,また,前身頃と後身頃の意味はそれぞれ「衣類の身頃のうち,胴体の前の部分をおおうもの」と「衣類の身頃で胴体の後ろの部分をおおうもの」であって(甲1),その意味を下肢用衣料(ショーツ)に当てはめると,前身頃とは,下肢用衣料(ショーツ)の身頃のうち,下半身の前の部分を覆うものとなり,後身頃とは,下肢用衣料(ショーツ)の身頃で下半身の後ろの部分を覆うものとなり,さらに,1つのパーツにおいて,前の部分を覆うものを前身頃とし,この前の部分を覆う境界の箇所から後側に直ちに回り込む箇所(本件帯状部分)を後身頃とすることは,例えば甲13〜甲18に示されるように,当業者において周知であるから,審決における「前身頃」及び「後身頃」の認定には誤りがあると主張する。しかし,本件明細書において,【図7】の左右において下方に垂下する2つの本件帯状部分が「後身頃」の構成部分である旨の記載や示唆は存在せず,本件帯状部分が「後身頃」の構\成部分であるとは,窺えない。また,「前身頃」の意味が「衣類の身頃のうち,胴体の前の部分をおおうもの」であり,「後身頃」の意味が「衣類の身頃で胴体の後ろの部分をおおうもの」であって(甲1),1つのパーツにおいて,前の部分を覆うものを「前身頃」といい,この前の部分を覆う境界の箇所から後側に直ちに回り込む箇所を「後身頃」ということがあるとしても(甲13〜甲18),乙1及び乙2によれば,下肢用衣料において,下半身の前の部分の延長となる後ろの部分の一部をも覆うパーツも加えて「前身頃」ということもあるのであり,この場合には訂正前の実施形態【図7】と同様のものとなる。したがって,前身頃及び後身頃という用語の解釈として,原告らが主張するような解釈において当該技術分野の常識となっているということはできない。よって,「前身頃」及び「後身頃」という用語の意味は,明細書及び図面の記載全体から把握する必要があり,そのようにして理解される意味は上記のとおりであって,審決の「前身頃」及び「後身頃」の認定及びその手法に誤りはない。
・・・
2 取消事由3(審決の訂正目的に対する判断の誤り)について
上記1で判示したとおり,本件明細書の段落【0030】及び【図7】には,実施形態【図7】が記載され,この実施形態における「前身頃」が図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲のものを指していること,そして,「後身頃」が,図面符号「14」で指示されたものを指していることは,自然に理解できるもので,不明瞭な記載や誤記の存在は見当たらず,逆に,【図7】において図面符号「12」で指示される前身頃の本件帯状部分が後身頃の構成部分であることは,窺えない。そうである以上,訂正要点aが,誤記の訂正,或いは,明瞭でない記載の釈明を目的にしているということはできない。
・・・
3 取消事由4(審決の実質変更・拡張に対する判断の誤り)について
 本件明細書の請求項1は,本件訂正によって訂正されていないから,本件発明は,本件訂正の前後において,「後身頃」を,「足刳り形成部を有した」と限定されたものとして発明特定事項としている。次に,上記1で認定したところを踏まえ,本件訂正前の本件発明についてみると,本件明細書の記載全体からして,先に(上記1で)説示したように,本件発明の「前身頃」は,実施形態【図3】,実施形態【図7】及び実施形態【図8】の,いずれも図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲のもの,「後身頃」も同様に「14」で指示された範囲のものと解することができる。これに対し,本件訂正の,特に訂正要点aにより,【図7】の図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲内にある本件帯状部分が,「後身頃」の構成部分となり,本件訂正後の本件発明の「前身頃」は,【図7】を参照した実施形態でいえば,図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲から上記本件帯状部分を除いた範囲のものということになり,本件発明の発明特定事項である「前身頃」の技術的内容が変更されており,併せて,「後身頃」の技術的内容も実質的に変更されている。また,実施形態【図7】が,図面符号「14」で指示された実線で区劃された範囲のものである「後身頃」に足刳り形成部を有していないため,本件発明の発明特定事項を満たしておらず,本件発明の構\成に含まれないものであったが,本件訂正後では,実施形態【図7】は,本件発明の構成に取り込まれており,特許請求の範囲は,拡張又は変更されている。以上のとおりの判断を示した審決に誤りはない。\n

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 補正・訂正
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