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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

審判手続

平成26(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 創作容易であるので登録できないとした審決が維持されました。「複数表示された静止画や動画等の選択表\示枠をクリックすることにより当該画像等を拡大表示したり,静止画や動画等の選択表\示枠を左右又は上下の移動操作に合わせて移動させることは,携帯情報端末の当業者にとって本願の出願前に極めて広く知られた手法であるから,審決がこれを顕著な事実と認め,その手法を理由中に提示しなかった点に,拒絶理由を通知しなかった違法や判断遺脱の違法はない」との被告の主張が認められました。
 原告は,審決が,態様(D)及び(E)について何らの証拠を示すことなく,この種物品分野において広く知られた手法であるとして創作非容易性を否定した点で,拒絶理由を通知することなく審決をした違法及び判断遺脱の違法があると主張する(前記第3の3)。しかるに,当該物品分野において広く知られた手法については,発明の属する技術の分野における周知技術と同様,当業者が熟知している事項であるため,本来,審決においてその認定根拠を示すまでもないのであり,このような認定根拠となる文献を示さなかったとしても,意匠法50条3項の準用する特許法50条に違反するということはできない。 そして,態様(D)及び(E)に係る手法が携帯情報端末の当業者にとって広く知られた手法であると認められることは,前記3のとおりであるから,審決において,特段の証拠を示すことなく同旨の判断を示したことは,意匠法50条3項の準用する特許法50条に違反するものではない。また,この点に関して判断の遺脱があったということもできないから,意匠法52条の準用する特許法157条に違反するということもできない。 よって,原告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

◆関連事件はこちらです。平成26(行ケ)10077

◆平成26(行ケ)10076

◆平成26(行ケ)10075

◆平成26(行ケ)10074

◆平成26(行ケ)10073

◆平成26(行ケ)10072

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平成25(行ケ)10337  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月29日  知的財産高等裁判所

 原告の無効理由に関する主張に関して判断を遺漏したという違法があるとして、無効理由無しとした審決が取り消されました。
「請求の理由の要約」欄には記載があるものの,その後の無効理由を詳細に記載した部分では具体的な主張がないものが散見される場合には,審判長は,記載要件に違反する不適法な審判請求で,補正が不可能でない限り,その違反又は不備の程度に応じて,補正を命じなければならず,あるいは釈明することが望まれる」
 上記認定事実によれば,審判請求書(甲31)の「本件特許を無効にすべき理由」欄に具体的な記載はないものの,審判請求書の「請求の理由の要約」欄には,請求項3について甲10を引用例とする公然実施に関する記載が明確に存在し,その後も,口頭審理陳述要領書(甲33)別紙において同趣旨の記載があり,しかも,証拠の記載が一部追加されていることからして,同主張が維持されていることが明白である。また,甲10が写真とその説明であることからすると,「請求の理由の要約」欄の「・写真1 左側前に立て掛けてある半製品の角部に非カット部分(イグサ繊維)がみられる」という記載によって,「非カット部分」と甲10という証拠との関係が特定されるとともに,甲10の証拠のうちの具体的にどの部分が「非カット部分」という請求項3独自の構成要件に当たるかの特定もなされている以上,無効理由として実質的な理由が記載されていると十\\分評価することができる。そして,その後の審判手続において同主張を撤回したと認められないことは,上記認定のとおりである。他方,被告らも,請求項3について甲10を引用例とする公然実施に関する記載がないことを前提に反論をしていたとは認められず,この点を審決が判断することが,被告らにとって不意打ちとなるものではない。 したがって,無効審判手続において,請求項3について甲10を引用例とする公然実施に関する主張があり,当事者双方でその点について攻防が尽くされたと認められるにもかかわらず,審決は,その点についての判断を何ら示さなかったことになる。
3 小括
以上によれば,審決には,無効請求不成立の判断をするに当たり,原告の無効理由に関する主張に関して判断を遺漏したという違法があることは明らかである。そして,この点は,審決の結論に影響を及ぼすおそれがあると認められる。 よって,原告の取消事由3は理由があり,その余の取消事由について判断するまでもなく,審決は取消しを免れない。 なお,審決は,原告が主張していない無効理由,すなわち,甲1を引用例とする 請求項3についての進歩性欠如の無効理由の審理判断をしており(上記第2の4(1)オ),これについての通知及び意見申立ての機会が付与されていないから,手続が適正になされたとはいい難い(特許法153条2項参照)。また,無効理由の主張を具体的かつ明確にすることは,本来,審判請求人である原告自身の責務というべきであるが,本件のように,審判請求書に記載された原告の無効理由の主張の中に,「請求の理由の要約」欄には記載があるものの,その後の無効理由を詳細に記載した部分では具体的な主張がないものが散見される場合には,審判長は,記載要件に違反する不適法な審判請求で,補正が不可能\\でない限り,その違反又は不備の程度に応じて,補正を命じなければならず,あるいは釈明することが望まれる(特許法133条1項,134条4項,135条参照)。今後,審判手続において,原告の無効理由の主張を整理し,請求項ごとの無効理由とその証拠の関連を改めて明らかにした上で(例えば,請求項1及び2に関する甲10を引用例とする公然実施の主張は,審判請求書の「請求の理由の要約」欄中,「理由の要点」欄には記載があるが,請求項ごとの「証拠」欄に甲10が挙げられておらず,主張の意思があるか否か判然としない。また,請求項3に関する甲6ないし9を引用例とする公然実施の主張は,同「理由の要点」欄における「(甲第10号証等)」の「等」に含まれていたと解する余地があるが,甲6ないし9において「非カット部分」がどれに該当するかの具体的な主張がない。その他,請求項1ないし5に関する甲6ないし10を引用例とする進歩性の欠如の主張は,引用例の認定やそれを前提とした相違点の指摘がない。),整理された無効理由について,適切な判断が示されなければならない。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10288  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年7月17日 知的財産高等裁判所

 無効審判で提出したDVDの証拠力について争われました。裁判所は、公然実施されたとした審決を維持しました。
 原告は,甲9号証の1のビデオ映像は重要な部分に関し編集された疑いがあり,その提出経緯も不自然であるから,甲9号証の1には証拠価値が認められないと主張する。 しかし,甲49号証によれば,甲9号証の1のDVDに収録された映像は,もともとビデオカセットに撮影された映像であるところ,甲45号証の映像が収録されていたのは8ミリビデオテープカセットであり,カセットの背面には,「スカーフジョインタ DATE:97.3.14サンテック用」とのラベルが貼り付けられている。甲46,47号証の映像が収録されていたのはデジタルビデオカセットであり,カセットの表\面には,それぞれ「97.3.14サンテックスカーフ」等,「97.6.17サンテックNo.1」と記載されたラベルが貼り付けられている。また,被告の説明によれば,甲9号証の1のビデオ映像は,平成9年10月29日から同年11月2日まで開催された第33回名古屋国際木工機械展において上映する目的等で製作したものであり,甲9の1本体映像には,不鮮明な部分があったため,甲45ないし47号証の映像を差し込んで,甲9号証の1の映像を作成したものとされている(甲119)。これらの作成経緯,差し込まれた甲45ないし47号証の原映像の保存状況,甲9号証の1の内容に照らせば,甲9号証の1の証拠価値を疑わせるような事情は見当たらず,原告の主張を採用することはできない。原告は,先行侵害訴訟や審決における提出経緯が不自然であると主張するが,原告の主張する事情が訴訟や審決の進行に照らして特段不自然なものとは認められないし,先行侵害訴訟において最初に証拠として提出した際に,編集の経緯について説明していなかったことをもって,証拠価値を疑わせる事情とは認められない。\n

◆判決本文

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平成24(行ケ)10406 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所 

 取消理由の一つとして、拒絶査定不服審判にて、独立特許要件を満たさない場合にも、意見書提出の機会を与えるべきと主張しましたが、裁判所はこれを否定しました。
 原告は,拒絶査定不服審判を請求し,特許請求の範囲について拒絶査定の理由を解消するような限定を付加して補正をした特許出願人(審判請求人)に対する補正却下の理由が,特許出願人が想定し得ない新たな引用文献を引用した新たな拒絶の理由である独立特許要件違反の場合には,特許出願人に何ら責任はなく,かかる場合にまで意見書提出の機会を与えないことは,特許庁審判官による再度の審査(審理)を適正に受ける権利を,特許出願人から不当に奪うものであること,そもそも特許法159条1項及び2項の立法趣旨は,拒絶査定不服審判請求時にした補正が新規事項を追加するものである場合において優先的に補正却下を適用することにあるのであって,拒絶査定不服審判請求時に原査定の拒絶理由を解消すべく請求項を減縮した補正を,意見書・補正書の提出機会を与えずに,新たな拒絶理由によって補正却下するような事態に適用することは想定されていないのであるから,拒絶査定不服審判請求時にした補正を,補正違反の態様にかかわらず一律に補正却下の対象とした同法159条1項後段及び2項後段の規定自体が立法の誤りであり,憲法31条に反し違憲であって,本件審決もまた違憲な規定に則ったものであるから違憲である旨主張する。特許法159条1項後段及び2項後段は,平成5年法律第26号により規定されたものであることから,その立法経緯等について検討するに,従前の特許法においては,特許請求の範囲の補正については,出願公告の決定謄本の送達前に出願当初の明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を増加,減少又は変更する補正は,明細書の要旨を変更しないものとみなすと規定されているのみであったことから,拒絶理由通知後であっても,特許請求の範囲の拡張,変更等の補正を行うことが許容されていたのみならず,特許請求の範囲の補正の回数も制限されていなかったため,一つの出願において拒絶理由が通知されるたびに特許請求の範囲の補正を行うことも許容されていた。そして,このような補正がされた場合には,審査対象が変更されるため,そのたびに新たな先行技術の調査及びその結果に基づく対比判断等の新たな審査を行わざるを得なかったが,実際の出願において何回も特許請求の範囲についての補正が行われた場合は,出願間の取扱いに公平性を欠くことになるのみならず,このような出願が存在することにより,他の出願の審査の遅延をも生じるおそれがあるという弊害が生じていた。さらに,第三者にとっては,出願公開後に補償金請求権が発生するにもかかわらず,特許請求の範囲の補正が何回も行われることにより,特許が付与がされる対象が何回も変更されることとなり,その監視負担が過大となるという弊害も生じていた。そこで,平成4年12月にとりまとめられた工業所有権審議会の答申(以下「審議会答申\」という。)においては,昭和63年に我が国の特許法に主要国と同様の多項制が既に導入されており,その利用も拡大しつつあること等も踏まえ,出願公告の決定謄本送達前の特許請求の範囲の補正について,制度及び審査実務等の運用の国際的調和,出願間の取扱いの公平性及び迅速な権利付与等の観点から適正化を図るべきであるとされた。また,従前の特許法においては,出願公告の決定謄本の送達前に拒絶査定不服審判を請求する際には,特許請求の範囲の拡張,減縮,変更を含めた広範な補正を行うことが認められているとともに,審判請求時に補正がされた場合には,審査前置制度により,審査官が再度審査を行い,拒絶査定の対象となった請求項が削除される等,拒絶査定をした理由が解消されている場合には,審査官に拒絶査定を取り消す機会が与えられていた。この審査前置制度の趣旨は,審判請求時に補正がされた場合は,審判合議体による審理の前に審査官に再度審査をさせることにより,審査段階において得られた調査結果や出願内容の知識を活用し,出願内容の理解や調査に要する時間を節約して処理を行うことにあった。しかしながら,審査前置制度は,我が国の特許法が単項制を採用していた頃に導入されたものであり,拒絶査定不服審判請求時に特許請求の範囲の拡張,変更を行う補正も許容されていたことから,そのようは補正がされた場合は,拒絶査定を受けた発明とは別の発明について,審査官による再度の審査(または審判官による審理)が行われることとなり,その結果,もとの審査における審理の手続や結果が軽視され,新たに最初から審理がし直されることともなりかねなかったことから,審理の迅速性及び的確性が十分に確保され難いという問題を有していた。また,拒絶査定不服審判請求時に,特許請求の範囲を拡張,変更する補正がされると,多項性の利用が拡大しつつある状況においては,多項制を有意義に活用し,特許請求の範囲の請求項の削除等の補正のみを行う出願との間において,出願の取扱いの公平性が担保されないこととなっていたのみならず,前者の出願が存在することにより,後者の出願の審理が遅延するという弊害をも生じていた。このため,審議会答申\においては,拒絶査定不服審判における補正の範囲に関する主要国の制度及び運用も考慮しつつ,行政処分である拒絶査定の瑕疵の是正をより迅速,的確かつ公平に行うため,出願公告の決定謄本送達前の拒絶査定不服審判の請求時における補正の範囲の適正化を行うべきであるとされた。そこで,平成5年法律第26号において,最後の拒絶理由通知に対する補正について,明細書及び図面に新規事項を追加しないものであるほか,特許請求の範囲の減縮に当たる補正がされた場合においても,補正後の発明が独立して特許を受けることができるもののみを許容すること(独立特許要件)を含めて補正の範囲の適正化を図るべく特許法17条の2の規定が整備され,拒絶理由の通知について同法50条ただし書の規定が設けられるとともに,不適法な補正は却下することとして同法53条1項ないし3項の規定が設けられた。このように,最後の拒絶理由通知に対する補正が独立特許要件を含めて特許法17条の2の規定に違反する不適法なものであることが出願公告の決定謄本の送達前に認められた場合に,拒絶理由を通知することなく当該補正を却下することとした理由は,補正により特許可能となる発明については補正を認めることによって迅速に権利付与を行うことが出願人の利益となるのに対し,補正後の発明が特許性を有しない場合に再度拒絶理由を通知することとした場合には拒絶理由通知に対して再度の補正が可能\であるため,審査官は当該補正について再度審査する必要があり,審査の迅速性が十分に確保され難く,出願間の取扱いの公平性を欠くことになるためである。そして,出願公告の決定謄本送達前に拒絶査定不服審判を請求する際の補正ができる範囲についても,審判制度の改善の一環として,制度の国際的調和を図るとともに,拒絶査定不服審判の審理の迅速化を図る観点から,最後の拒絶理由通知に対する補正と同じ範囲とするとともに,特許法159条1項後段及び2項後段を規定し,同法53条及び50条ただし書を準用することにより,独立特許要件を含めてその補正が不適法な場合には,新たにその旨の拒絶理由を通知することなく,その補正を却下することとした(以上について,乙1〜9)。上記でみたところによれば,特許法159条1項後段及び2項後段は,独立特許要件違反を含め拒絶査定不服審判請求時にされた不適法な補正に対し,拒絶理由を通知することなくこれを却下することにより,審理の迅速化,出願間の公平性の確保及び第三者の監視負担の軽減等を図った合理的な規定であるというべきであるから,これらの規定が憲法31条に違反する旨の原告の前記主張は採用することができない。
(3) 原告は,本件のように拒絶査定不服審判請求時に原査定の拒絶理由を解消するために特許請求の範囲を減縮した補正を,新たな引用文献に基づく新たな拒絶理由で却下する場合には,審判合議体は,いきなり補正却下・拒絶審決をするのではなく,まず拒絶理由を通知するとの運用をすることが,特許制度の趣旨及び憲法31条に沿うものであるから,本件審決は,特許法159条1項後段及び2項後段の規定を適切に運用することを怠った違法性,違憲性がある旨主張するが,かかる運用を特許庁に義務づけることは,前記(2)で検討した平成5年法律第26号による改正の趣旨を没却する結果となるものであることは明らかであるから,原告の上記主張を採用することはできない。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10226 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年03月13日 知的財産高等裁判所

ゴルフクラブ「KAMUI」について、周知性が否定されました。特許庁は同一証拠ではないとして10号の無効理由ありと判断しましたが、裁判所は同一事実同一証拠に基づくとして、審決を取り消しました。理由は一事不再理の適用誤りです。侵害事件では、本件被告に先使用権が認められています。
 そうすると,無効審判請求においては,「同一の事実」とは,同一の無効理由に係る主張事実を指し,「同一の証拠」とは,当該主張事実を根拠づけるための実質的に同一の証拠を指すものと解するのが相当である。そして,同一の事実(同一の立証命題)を根拠づけるための証拠である以上,証拠方法が相違することは,直ちには,証拠の実質的同一性を否定する理由にはならないと解すべきである。このような理解は,平成23年法律第63号による特許法167条の改正により,確定審決の第三者効を廃止することとし,他方で当事者間(参加人を含む。)においては,紛争の一回的解決を実現させた趣旨に,最も良く合致するものというべきである。
・・・・
(3) 判断
ア 同一事実について
本件商標が商標法4条1項10号に該当するとの事項についての被告の主張事実は,被告が使用する商標は,本件商標登録の出願時には,被告がゴルフクラブに使用する商標として,日本国内の取引者・需要者に広く認識されており,その状態は本件商標の登録査定時においても継続していること,本件商標は被告が使用する商標と類似すること,本件商標の指定商品は被告の商標が使用されているゴルフクラブと類似することであり,その主張事実は,前審判及び本件審判において同一であると評価できる。なお,本件審判では,周知であるとの被告の主張に係る商標が,以下の1)ないし3)のいずれであるか必ずしも明確ではない。1)「KAMUI」単体商標のみ2)「KAMUI」単体商標及び「K∧MUI+くさび図形」商標3)1)又は2)に「KAMUIPRO」,「TYPHOONPRO」及び「KAMUITYPHOONPRO」の各文字からなる商標を含むしかし,本件審判において被告が周知であると主張する商標が上記のいずれであっても,それらは,前審判において判断の対象とした商標に含まれるというべきである。すなわち,1)「KAMUI」単体商標は,前審判における別紙前審判引用商標目録1,2及び4記載の商標に含まれる。2)「K∧MUI+くさび図形」商標は,前審判における別紙前審判引用商標目録4記載の商標に図形を付加した商標である。3)「KAMUIPRO」及び「KAMUI TYPHOONPRO」の各文字からなる商標について原告が周知であると主張する部分は,いずれも「KAMUI」部分であると合理的に解される(「TYPHOONPRO」の文字からなる商標は,本件審決の判断の当否に直接関連するものではない。)。以上によれば,前審判と本件審判とでは,被告が周知性を有すると主張する被告使用の商標は,互いに同一と評価できる。(なお,本件審決は,前審判における無効理由が商標法4条1項10号及び19号該当性であるのに対して,本件審判における無効理由が同項7号又は10号該当性であるから,前審判と本件審判とは「同一の事実」に基づく審判請求ではないと判断する。しかし,同項10号所定の無効理由の存否について判断した審決が確定した後に,それと異なる無効理由を追加さえすれば,同項10号所定の無効理由の存否について判断した審決の確定効がなくなると解する審決の判断が,誤った理解に基づくことは明らかである。)
イ 同一証拠について
前記のとおり,前審判と本件審判とでは,被告が使用する商標の周知性を裏付ける主張事実は,ほとんど同一であり,周知性を立証するための証拠は,そのほとんどが同一である。なお,本件審判では,前審判とは異なり,「被告の2000年版商品カタログ」(甲10),「カムイ社の出荷明細」(甲11−1−1ないし11−1−9),「カムイ社の平成15年度ないし平成18年度の決算報告書」(甲11−2ないし11−5),「使用プロ一覧表」(甲11−31)が,証拠として提出されている。そこで,上記各証拠の性質につき,念のため検討する(なお,本件審判で新たに提出された上記以外の証拠は,商標法4条1項10号該当性に関連するものではない。)。(ア) 「被告の2000年版商品カタログ」(甲10)前審判において,被告は,他のカタログ(甲53,54)を提出したが,前審決において,提出に係る当該カタログは作成年月日が確認できないとされたことから(甲112),本件審判において,作成年月日の確認ができるカタログを提出したと解される。(イ) 「カムイ社の出荷明細及び決算報告書」(甲11−1−1ないし11−1−9,11−2ないし11−5)前審判において,被告は,カムイ社が販売した被告ゴルフクラブの本数の表(甲11−1)を提出したが,前審決において,販売数の裏付けがないことなどから同表\に記載された本数が採用されなかったため,本件審判において,同表の信憑性を裏付けるために提出された証拠と解される。(ウ) 「使用プロ一覧表」(甲11−31)前審判において,被告は,使用プロ一覧表\(甲40)を提出したが,本件審判において,その形式を変更し,被告ゴルフクラブを使用するプロゴルファーの氏名等を追加記載したものを証拠として提出したと解される。上記によれば,本件審判で提出された上記各証拠は,前審決における被告の主張を排斥した判断に対し,同判断を蒸し返す趣旨で提出された証拠の範囲を超えるものではない。
ウ 小括
 以上によると,前審判と本件審判とでは,商標法4条1項10号違反の根拠として主張されている事実において同一であり,また,これを立証するために提出された証拠も実質的に同一であると評価できる。したがって,本件審判における本件商標が同項10号に該当することを理由とする無効審判請求は,前審決の確定効に反するものとして許されないというべきである。本件商標が同項10号に該当するとして本件商標登録が無効であるとした本件審決には,上記の点における誤りがある。なお,被告は,本件商標が同項7号に該当しないとした審決の判断に対して誤りがある旨を指摘する。しかし,この点については取消事由とされておらず,判断しない。

◆判決本文

 

◆侵害事件はこちらです。平成22(ワ)32483

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平成25(行ケ)10048 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年02月26日 知的財産高等裁判所 

 知財高裁は、補正についての手続き違反があるとして、審決を取り消しました。
概要は以下の通り。  旧請求項19は、請求項1の従属請求項。旧19について、拒絶理由が示されていなかったので、補正にて、旧19の限定を新請求項1に追加したが、審決では、請求項の減縮であると判断して審査をし、独立特許要件を満たしていないとして、補正却下しました。
 本件出願に係る平成23年7月8日付けの拒絶査定は,上記(1)ウに記載のとおり,請求項1〜18,21〜26,29〜33に係る発明は特許を受けることができないとするもので,請求項19に係る発明は拒絶査定の理由となっていない。平成23年11月14日付け手続補正書による補正(本件補正)は,上記(1)エに記載のとおり,上記拒絶査定の拒絶理由を解消するためにされたもので,本件補正後の請求項(新請求項)1は,原告が審判請求書で主張しているように,本件補正前の請求項(旧請求項)1を引用する形式で記載されていた旧請求項19を,当該引用部分を具体的に記載することにより引用形式でない独立の請求項としたものであると認められる。そうすると,新請求項1は,旧請求項1を削除して,旧請求項19を新請求項1にしたものであるから,旧請求項1の補正という観点からみれば,同請求項の削除を目的とした補正であり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものではないから,前記のとおり,独立特許要件違反を理由とする補正却下をすることはできない。また,旧請求項19の内容は,新請求項1と同一であるから,旧請求項19の補正という観点から見ても,特許請求の範囲の限縮を目的とする補正ではない。したがって,審決は,実質的には,項番号の繰上げ以外に補正のない旧請求項19である新請求項1を,独立特許要件違反による補正却下を理由として拒絶したものと認められ,その点において誤りといわなければならない。そして,旧請求項19は,拒絶査定の理由とはされていなかったのであるから,特許法159条2項にいう「査定の理由」は存在しない。すなわち,平成22年11月10日付け拒絶理由通知では,当時の請求項19についても拒絶の理由が示されているが,平成23年3月16日付け手続補正により旧請求項19として補正され,その後の拒絶査定では,旧請求項19は拒絶査定の理由とされていない。したがって,審決において,旧請求項19である新請求項1を拒絶する場合は,拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならない。しかしながら,本件審判手続において拒絶理由は通知されなかったのであるから,旧請求項19についての拒絶理由は,査定手続においても,審判手続においても通知されておらず,本件審決に係る手続は違法なものといわざるを得ない(なお,仮に,本件補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,条文上,独立特許要件違反を理由に補正却下することが可能とされる場合であったとしても,審決において,審査及び審判の過程で全く拒絶理由を通知されていない請求項のみが進歩性を欠くことを理由として,補正却下することは,適正手続の保障の観点から,許されるものではないと解される。)。\n

◆判決本文

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平成25(行ケ)10127 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟  平成26年02月05日 知的財産高等裁判所

 商標無効審判における一事不再理が争われました。裁判所は、一事不再理の原則に必ずしも反するものではないと判断しました。また、先頭文字Mを図案化してMとは認識できないとして非類似と判断しました。
 改正前特許法167条を準用した改正前商標法56条1項の趣旨は,商標権者における応訴の繰返しによる煩わしさを避けるとともに,訴訟経済の観点から蒸し返し請求を防止し,無効審判をする者の利益と商標権の安定を図る点にあるところ,本件では,本件審判請求の請求人である原告が第一次審判請求の請求人である明治製菓株式会社の承継人であり実質的に前件と当事者が同一であるという事実関係が認められるから,第三者による再度の審判請求の場合と比較してみると,相対的には,蒸し返し請求防止の要請がより重視され,事実や証拠の同一性についてある程度緩和して解釈されてもやむを得ないというべきである。そうすると,本件審判請求が改正前商標法56条1項に反しないものとして,新たな「証拠」に基づく適法な審判請求といえるためには,形式的に第一次無効審判請求で提出されたものと異なる証拠が提出されてさえいれば許されることとなるわけではなく,新たに提出された証拠が,実質的に見て,これまでの無効原因を基礎付ける事情以外の新たな事実関係を証明する価値を有する証拠といえる必要があるというべきである。以上を前提に本件につき検討するに,本件審判請求では,第一次審判請求で提出なされなかった甲7,8,23ないし27が新たに提出されているところ(弁論の全趣旨),それ以外の大半の証拠は共通しているといわざるを得ない。しかしながら,追加された証拠は,本件商標中の「『二つのだ円形をハート型に重ねた形状に図案化され』た部分」である本件図形がローマ字「M」と認定できるかに関わる証拠(甲7),被告が明治パン株式会社の新工場が設立されることを契機として,そこで使用する伝票や名刺,封筒などに記載される商標として本件商標をデザインし,登録出願したという本件商標の称呼に関わる証拠(甲8)や本件商標の実際の使用態様を明らかにする証拠(甲23ないし27)であるから,実質的には,第一次無効審判請求において商標法4条1項11号,同15号該当性を基礎付けていた事情とは異なる,新たな事実関係を証明する価値を有する証拠が提出されたと評価できるものといえる。したがって,本件証拠関係に鑑みれば,本件審判請求は一事不再理の原則に必ずしも反するものではないというべきであり,本件審決の判断は結論において正当である。被告の主位的な主張は理由がない。
・・・
本件商標は,オレンジ色に彩色した三つの半円をドームのように模した図形の下に,青色に彩色した二つのだ円形をハート型に重ねた本件図形と,その左側に同色に彩色した「eiji」の欧文字とを配した構成態様からなるが,伝票や名刺,封筒にマークとして使用することがあるものの,商品に直接付することはなく,これ自体に発音はない。本件商標を構\成する本件図形は,青色に彩色した二つのだ円形をハート型に重ねて表現した独創的なものと認識し,いずれかの字形を表\現したものかなどと推測して取引に当たるものともいい難く,本件商標からは直ちに「メイジ」の称呼を生じるものということはできない。本来的には発音はないが,強いていえば,普通の書体で表された「eiji」の文字部分から自然に「エイジ」の称呼が生じる。原告は,ローマ字「M」をハート型に図案化することは,図案化の態様として普通に用いられる手法の一つであると主張するが,原告提出の証拠によれば,東京メトロ(甲38)とエムハートツーリスト(甲39)の二例にすぎず,このことのみをもって,図案化の態様として普通に用いられる手法とはいえない。さらに,東京メトロの図形は,ウサギや猫などの動物の耳をモチーフにした図形にも見えるとことから,原告の主張のように,「M」や「ハート」を直ちに看取することはできず,甲37の3頁目の中段の「シンボルマーク」に関する説明書きによって,「メトロ(METRO)」の頭文字「M」をハート型に図案化したものと理解できる程度にすぎない。また,甲39の公報の【ウィーン分類(参考情報)】には,「27.5.1.13」以外にも複数の図形コードが複数付与されている。そうすると,原告が主張するように,当該図形商標から直ちに,ローマ字「M」をハート型に図案化することが,図案化の態様として普通に用いられる手法の一つであるということはできない。したがって,本件商標に接する取引者・需要者は,下段部分を一連の文字列であると理解するのが最も自然であるとはいえず,本件図形は「M」を図案化したものであると比較的容易に理解されることは決してない。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10131 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年02月05日 知的財産高等裁判所

 拒絶査定の段階では、公知技術としたのに対し,審決では周知技術と評価して補正却下した審決について、意見書及び補正をする機会を与えなくとも,手続違背なしと判断されました。
 拒絶査定不服審判において,本件のように審判請求時の補正として限定的減縮がなされ独立特許要件が判断される場合に,仮に査定の理由と全く異なる拒絶の理由を発見したときには,審判請求人に対し拒絶の理由を通知し,意見書の提出及び補正をする機会を与えなければならないと解される。これに対し,当該補正が他の補正の要件を欠いているような場合は,当然,補正を却下すべきであるし,当該補正が限定的減縮に該当するような場合であっても,当業者にとっての周知の技術や技術常識を適用したような限定である場合には,査定の理由と全く異なる拒絶の理由とはいえず,その周知技術や技術常識に関して改めて意見書の提出及び補正をする機会を与えることなく進歩性を否定して補正を却下しても,当業者である審判請求人に過酷とはいえず,手続保障の面で欠けることはないといえよう。そうすると,審判請求時の補正が独立特許要件を欠く場合には,拒絶理由通知をしなくとも常に補正を却下することができるとする被告の主位的主張は,上記の説示に反する限度で採用することができない。(2) 以上の点を踏まえて更に検討するに,本件において,拒絶査定の理由は,「補正前発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して,引用文献2に開示された技術及び周知技術を適用して容易に発明をすることができた」というものであるのに対し,審決の補正却下の理由は,「補正発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して周知技術を適用して容易に発明することができた」というものである。そうすると,両者の相違は,引用文献2に開示された技術について,拒絶査定ではこれを公知技術としたのに対し,審決ではこれを周知技術と評価して例示したのであって,審判請求人である原告にとって不意打ちとはいえないから,審判段階の独立特許要件の判断において改めてこの点について意見書の提出及び補正をする機会を与えなくとも,手続保障の面から審決に違背はないといえる。この点について原告は,審決が,拒絶理由通知書及び拒絶査定において引用されなかった参考文献1ないし3を引用しており,これらに対して補正できないことにかんがみれば十分な反論を行うことは困難であり,審理手続を尽くすことができたとはいえないと主張する。しかし,参考文献1ないし3は,審決において周知技術や常套手段を示すものとして引用されたものであり,後記3(2)及び(3)のとおり,いずれも実際に当業者にとっての周知の技術や常套手段を示したものと認められるのであるから,これに対する補正の機会が与えられなくとも(参考文献1及び2は,審判の審尋において示されたものであり,原告からこれらに対する反論として回答書(甲14)が提出されている。),当業者である審査請求人にとって格別の不利益はないものと解され,原告の主張には理由がない。また,原告は,審決が,引用文献1及び2の記載の中から拒絶理由通知書及び拒絶査定で引用した箇所とは異なる箇所を引用しており,審理手続を尽くすことができなかったと主張する。しかし,拒絶理由通知書(甲7)及び拒絶査定(甲10)では,引用文献1の一部を適示して,引用発明の本質的部分である「Internet Explorerのツールバーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表\示させるシステム」という技術事項が開示されていることを示したのに対し,審決では,当該摘示箇所を示した上で,引用発明の背景や目的効果等を示すために別途の箇所を摘記したもの認められるから,原告にとって不利益がないことは明らかであり,原告の主張には理由がない。したがって,審決が,補正発明は独立特許要件を満たさないことを理由として,審判段階で改めて拒絶理由通知をすることなく本件補正を却下したことに誤りはなく,原告の主張する取消事由1は理由がない。

◆判決本文

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