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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

特許庁手続

平成28(行ケ)10279  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月30日  知的財産高等裁判所

 基礎出願Xでは新規性喪失の例外主張および証明書提出をしていましたが、これを基礎出願とする国内優先権主張出願では、かかる手続きをせず、その分割出願にて、新規性喪失の例外の利益を受けられるのかについて争われました。裁判所は、規定がそうなっている以上できないと判断しました。法改正でかかる証明書は、国内優先・分割いずれも省略できます。
 1 平成23年改正前特許法30条4項は,同条1項の適用を受けるための手続 的要件として,1)特許出願と同時に,同条1項の適用を受けようとする旨を記載し た書面(4項書面)を特許庁長官に提出するとともに,2)特許出願の日から30日 以内に,特許法29条1項各号の一に該当するに至った発明が平成23年改正前特 許法30条1項の適用を受けることができる発明であることを証明する書面(4項 証明書)を特許庁長官に提出すべきことを定めているが,同条4項には,その適用 対象となる「特許出願」について,特定の種類の特許出願をその適用対象から除外 するなどの格別の定めはない。 また,平成16年改正前特許法41条に基づく優先権主張を伴う特許出願(以下, 「国内優先権主張出願」という。)は,同条2項に「前項の規定による優先権の主張 を伴う特許出願」と規定されるとおり,基礎出願とは別個独立の特許出願であるこ とが明らかである。 そうすると,国内優先権主張出願について,平成23年改正前特許法30条4項 の適用を除外するか,同項所定の手続的要件を履践することを免除する格別の規定 がない限り,国内優先権主張出願に係る発明について同条1項の適用を受けるため には,同条4項所定の手続的要件として,所定期間内に4項書面及び4項証明書を 提出することが必要である。
2 そこで,国内優先権主張出願について,平成23年改正前特許法30条4項 の適用を除外するか,同項所定の手続的要件を履践することを免除する格別の規定 があるかどうかについて検討すると,まず,分割出願については,平成18年改正 前特許法44条4項が原出願について提出された4項書面及び4項証明書は分割出 願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす旨を定めているが,国内優先権主 張出願については,これに相当する規定はない。 また,平成16年改正前特許法41条2項は,国内優先権主張出願に係る発明の うち基礎出願の当初明細書等に記載された発明についての平成23年改正前特許法 30条1項の適用については,国内優先権主張出願に係る出願は基礎出願の時にさ れたものとみなす旨を定めているが,これは,同項が適用される場合には,同項中 の「その該当するに至った日から6月以内にその者がした特許出願」にいう「特許 出願」については,国内優先権主張出願の出願日ではなく,基礎出願の出願日を基 準とする旨を規定するに止まるものである。平成16年改正前特許法41条2項の 文理に照らし,同項を根拠として,基礎出願において平成23年改正前特許法30 条4項所定の手続を履践している場合には,国内優先権主張出願において同項所定 の手続を履践したか否かにかかわらず,基礎出願の当初明細書等に記載された発明 については同条1項が適用されると解釈することはできない。 特許法のその他の規定を検討しても,国内優先権主張出願について,平成23年 改正前特許法30条4項の適用を除外するか,同項所定の手続的要件を履践するこ とを免除する格別の規定は,見当たらない。
3 平成16年改正前特許法41条2項は,基本的にパリ条約による優先権の主 張の効果(パリ条約4条B)と同等の効果を生じさせる趣旨で定められたものであ り,国内優先権主張出願に係る発明のうち基礎出願の当初明細書等に記載された発 明について,その発明に関する特許要件(先後願,新規性,進歩性等)の判断の時 点については国内優先権主張出願の時ではなく基礎出願の時にされたものとして扱 うことにより,基礎出願の日と国内優先権主張出願の日の間にされた他人の出願等 を排除し,あるいはその間に公知となった情報によっては特許性を失わないという 優先的な取扱いを出願人に認めたものである(甲19)。 そして,平成16年改正前特許法41条2項が,国内優先権主張出願に係る発明 のうち,基礎出願の当初明細書等に記載された発明の平成23年改正前特許法30 条1項の規定の適用については,上記国内優先権主張出願は,上記基礎出願の時に されたものとみなす旨を規定していることは,上記趣旨(国内優先権主張出願が, 基礎出願の日から国内優先権主張出願の日までにされた他人の出願等やその間に公 知となった情報によって不利な取扱いを受けないものとすること)を超えるものと いえるが,その趣旨は,同条1項が「第29条第1項各号の一に該当するに至った 発明は,その該当するに至った日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明 についての同条第1項及び第2項の規定の適用については,」と規定して,特許出願 の日を基準として新規性喪失の例外の範囲を定めていることから,国内優先権主張 出願の日を基準としたのでは,上記趣旨により基礎出願の日を基準とすることにな る新規性の判断に対する例外として認められる範囲が通常の出願に比べて極めて限 定されるという不都合が生じることに鑑み,国内優先権主張出願の日ではなく基礎 出願の日を基準とすることを定めたものと解するのが相当である。 そうすると,平成16年改正前特許法41条2項が平成23年改正前特許法30 条1項の適用について規定していることは,その趣旨に照らしても,上記規定が適 用された場合には,国内優先権主張出願の日ではなく基礎出願の日を基準とする旨 を規定するに止まり,これをもって,同条1項の適用について,基礎出願の当初明 細書等に記載された発明については,基礎出願において手続的要件を具備していれ ば,国内優先権主張出願において改めて手続的要件を具備しなくても,上記規定の 適用が受けられるとすることはできない。
4 以上によると,国内優先権主張出願に係る発明(基礎出願の当初明細書等に 記載された発明を含む。)について,平成23年改正前特許法30条1項の適用を受 けるためには,同条4項所定の手続的要件として,所定期間内に4項書面及び4項 証明書を提出することが必要であり,基礎出願において提出した4項書面及び4項 証明書を提出したことをもって,これに代えることはできないというべきである。
5 本願は,出願Aの分割出願である本願の原出願をさらに分割出願したもので あるところ,分割出願については,原出願について提出された4項書面及び4項証 明書は分割出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす旨の定めがあるが, 原告は,出願Aにおいて,その出願と同時に,4項書面を特許庁長官に提出しなか ったのであるから,本願は,平成23年改正前特許法30条1項の適用を受けるこ とはできない。 そして,同条1項が適用されないときには,審決の刊行物A発明の認定並びに本 願発明との一致点及び相違点の認定及び判断に争いはないから,本願発明は,刊行 物A発明であるか,同発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの である。 そうすると,本願は,その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきも のであるから,これと同旨の審決の判断に誤りはない。
6 これに対して,原告は,国内優先権制度における優先権の発生時期は,パリ 条約4条Bに規定される優先権の発生時期から類推して,先の出願がされた時であ る,基礎出願において平成23年改正前特許法30条4項所定の手続をした場合の 国内優先権主張出願については,国内優先権の本質からみて,基礎出願の当初明細 書等に記載された発明について優先権が発生し,平成16年改正前特許法41条4 項の手続をすることにより,上記発明に係る特許法29条,平成23年改正前特許 法30条1項〜3項等の適用については基礎出願の時にされたものとみなされる効 果が発生するが,新規性・進歩性についての規定(特許法29条)の適用に係る前 記効果については,基礎出願において平成23年改正前特許法30条4項所定の手 続をしている場合には,新規性喪失の例外規定(同法30条1項〜3項)に係る前 記効果についても発生しているから,この効果をも含む上記発明の新規性について の優先権の主張の効果が発生するというべきであるなどと主張する。 しかし,平成16年改正前特許法41条1項の「優先権」(国内優先権)の主張の 効果は,同条2項に規定されたものであり,パリ条約の規定を類推することによっ て定まると解することはできない。 また,既に判示した平成16年改正前特許法41条2項の文言及び同項の趣旨に 照らすと,同項は,国内優先権主張出願に係る発明のうち,基礎出願の当初明細書 等に記載された発明について,特許法29条を適用する際には,同条中の「特許出 願前に」にいう「特許出願」は基礎出願時にされたものとみなし,平成23年改正 前特許法30条1項を適用する際には,同項中の「その該当するに至った日から6 月以内にその者がした出願」にいう「特許出願」は基礎出願時にされたものとみな すことを規定するものであり,新規性喪失の例外規定(同法30条1項)と新規性・ 進歩性についての規定(同法29条)とを一体として取り扱うべきことは,平成1 6年改正前特許法41条2項の文理上はもとより,その趣旨からも導くことはでき ない。
7 原告は,平成16年改正前特許法41条には,同条2項に列挙される各条項 が適用されるための手続として,平成23年改正前特許法30条4項のような手続 は規定されていないから,そのような手続は不要であり,例えば,特許法29条の 適用について基礎出願の時にされたものとみなされるための手続として,平成16 年改正前特許法41条4項の手続をすれば十分であるなどと主張する。\nしかし,国内優先権主張の効果である平成16年改正前特許法41条2項が,基 礎出願において平成23年改正前特許法30条4項所定の手続を履践している場合 には,国内優先権主張出願において同項所定の手続を履践したか否かにかかわらず, 同条1項が適用されることを定めるものではないことは,前記2,3のとおりであ る。平成16年改正前特許法41条4項に平成23年改正前特許法30条4項のよ うな手続が定められていないからといって,国内優先権主張出願に係る発明のうち 基礎出願の当初明細書等に記載された発明について,平成23年改正前特許法30 条1項が適用される手続的要件として,国内優先権主張出願において同条4項所定 の手続を履践することを不要とする理由にはならない。 また,特許法29条の適用には格別の手続的要件はないから,平成23年改正前 特許法30条4項所定の手続の履践を手続的要件とする同条1項の適用と同列に論 じることはできない。
8 原告は,平成23年改正前特許法30条4項が,基礎出願の際に既に同項所 定の手続を履践した国内優先権主張出願に際し,同主張出願における平成16年改 正前特許法41条2項に規定の発明について同項で列挙された所定の条項の規定の 適用につき,改めてその手続を履践させるための規定でもあるとすると,それは単 なる重複手続のための規定であって,法がそのようなことを求めていると解するこ とはできないなどと主張する。 しかし,平成23年改正前特許法30条4項がその対象となる「特許出願」から, 基礎出願において同項所定の手続を履践している国内優先権主張出願において,基 礎出願の当初明細書等に記載された発明について同条1項の適用を求める場合の当 該国内優先権主張出願を除外していると解することができないことは,前記1〜4 のとおりであって,原告の主張は,法令上の根拠がなく,理由がない。
9 原告は,平成23年改正前特許法30条4項は,国内優先権主張を伴わない 通常の出願,あるいは,国内優先権主張出願であって,基礎出願において同条1項 又は3項の新規性喪失の例外適用を求めた発明以外の発明について,同条1項又は 3項の適用を求めようとする場合に適用されるものであり,基礎出願において同条 4項所定の手続により同条1項又は3項の適用を求めた発明について優先権を主張 する出願には,適用されないと主張する。 しかし,同条4項が,基礎出願において同項所定の手続を履践している国内優先 権主張出願について,その対象となる「特許出願」から除外しているとは解釈でき ないことは,前記1〜4のとおりであって,原告の主張は,理由がない。
10 原告は,平成23年改正前特許法施行規則31条1項は,基礎出願におい て平成23年改正前特許法30条1項又は3項の新規性喪失の例外適用を求めた発 明以外の発明について,同条1項又は3項の適用を求める出願に適用される規定で あると主張する。 しかし,同条4項が,基礎出願において同項所定の手続を履践している国内優先 権主張出願について,その対象となる「特許出願」から除外しているとは解釈でき ないことは,前記1〜4のとおりであるから,平成23年改正前特許法施行規則3 1条1項を原告が主張するように解することはできず,原告の主張は,理由がない。
11 原告は,基礎出願において新規性喪失の例外規定が適用された発明に基づ いて国内優先権を主張する場合,出願人が敢えて,国内優先権主張出願では上記発 明について新規性喪失の例外規定の適用を受けないことは通常考えにくいから,国 内優先権主張出願の際に改めて新規性喪失の例外適用申請の意思を確認する必要は\nないし,また,国内優先権主張出願の願書には必ず基礎出願の番号を記載している ことなどの事情から,出願人にとっても第三者にとっても,国内優先権主張出願に おいて新規性喪失の例外適用のための書面等を再度提出する必要性は何ら存在しな いなどと主張する。 しかし,基礎出願において平成23年改正前特許法30条4項所定の手続を履践 している国内優先権主張出願において,基礎出願の当初明細書等に記載された発明 について同条1項又は3項の適用を求める場合の同条4項所定の手続の履践の必要 性について,仮に原告主張のような見方が成り立つとしても,立法論としてはとも かく,同項の解釈として,同項がその対象となる「特許出願」から,基礎出願にお いて同項所定の手続を履践している国内優先権主張出願を除外していると解するこ とは,法令上の根拠がなく,できないことは,前記1〜4のとおりである。
12 原告は,平成11年法律第41号による特許法の改正において,平成11 年改正前特許法44条の分割出願制度については,手続簡素化のための規定が新た に検討され,同条4項が新設されたが,国内優先権制度については,出願人の手続 の簡素化を図る趣旨は同様にあてはまるはずであるにもかかわらず,手続規定の見 直しも,手続簡素化のための新たな規定の導入などの検討もされなかったという事 実は,国内優先権制度については,法改正をするまでもなく,既に手続が簡略化さ れた規定となっていることの証左であると主張する。 しかし,平成23年改正前特許法30条4項が,基礎出願において同項所定の手 続を履践している国内優先権主張出願について,その対象となる「特許出願」から 除外しているとは解釈できないことは,前記1〜4のとおりであって,そのことは, 平成11年改正において国内優先権制度について改正がされなかったとの原告上記 主張事実により左右されるものではない。
13 原告は,国内優先権主張出願に係る発明のうち,基礎出願において平成2 3年改正前特許法30条4項所定の手続を履践することにより同条1項の適用を受 けた発明について,国内優先権主張出願において同項の適用を受けるために同条4 項の手続を求めている特許庁の運用は違法であると主張する。 しかし,特許庁の上記運用が違法でないことは,既に説示したところから明らか である。
14 原告は,平成16年改正前特許法41条2項が平成23年改正前特許法3 0条4項を対象としていない趣旨は,平成18年改正前特許法44条2項が平成2 3年改正前特許法30条4項を適用除外している趣旨とは異なるなどと主張する。 しかし,同項が,基礎出願において同項所定の手続を履践している国内優先権主 張出願について,その対象となる「特許出願」から除外しているとは解釈できない ことは,前記1〜4のとおりであって,平成16年改正前特許法41条2項が平成 23年改正前特許法30条4項を対象としていない趣旨により左右されるものでは ない。
15 原告は,被告が国内優先権主張出願において,新たな事項を追加すること が想定されること,出願後に通常出願に戻り得ることが,なぜ平成11年法律第4 1号により導入された分割出願に係る手続の簡素化を,国内優先権主張出願にも導 入することを困難にするのかについての理由は,不明であるなどと主張する。 しかし,平成23年改正前特許法30条4項が,基礎出願において同項所定の手 続を履践している国内優先権主張出願について,その対象となる「特許出願」から 除外しているとは解釈できないことは,前記1〜4のとおりであって,平成11年 法律第41号により導入された分割出願に係る手続の簡素化の趣旨が国内優先権主 張出願に妥当するかどうかによって上記解釈が左右されるものではない。
16 原告は,第三者は,基礎出願において新規性喪失の例外規定が適用された 発明について,国内優先権主張出願において敢えてその適用を受けないことなど予\n測する必要はないから,その適用の有無は基礎出願において表示されていれば十\分 であり,国内優先権主張出願においてその表示がないことによる不測の不利益は生\nじないなどと主張する。 しかし,平成23年改正前特許法30条4項が,基礎出願において同項所定の手 続を履践している国内優先権主張出願について,その対象となる「特許出願」から 除外しているとは解釈できないことは,前記1〜4のとおりであって,仮に第三者 に不測の不利益を与えることがないとしても,それによって上記解釈が左右される ものではない。

◆判決本文

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平成28(受)632  特許権侵害差止等請求事件 平成29年7月10日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  知的財産高等裁判所

 最高裁(第2小法廷)判決です。特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に特許法104条の4第3号所定の特許請求の範囲の訂正をすべき旨の審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことはできないと判断されました。本件については、別途無効審判が継続(審取中を含む)しており、法上、訂正審判の請求ができなかったという特殊事情があります。この点については、訂正審判を請求しなくても、訂正の抗弁まで禁止されていたわけではないと判断されました。
 特許権侵害訴訟の終局判決の確定前であっても,特許権者が,事実審の 口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に訂 正審決等の確定を理由として事実審の判断を争うことを許すことは,終局判決に対 する再審の訴えにおいて訂正審決等が確定したことを主張することを認める場合と 同様に,事実審における審理及び判断を全てやり直すことを認めるに等しいといえ る。 そうすると,特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張し なかったにもかかわらず,その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判 断を争うことは,訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえ るだけの特段の事情がない限り,特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させ るものとして,特許法104条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許 されないものというべきである。
(2) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,上告人は,原審の 口頭弁論終結時までに,原審において主張された本件無効の抗弁に対する訂正の再 抗弁を主張しなかったものである。そして,上告人は,その時までに,本件無効の 抗弁に係る無効理由を解消するための訂正についての訂正審判の請求又は訂正の請 求をすることが法律上できなかったものである。しかしながら,それが,原審で新 たに主張された本件無効の抗弁に係る無効理由とは別の無効理由に係る別件審決に 対する審決取消訴訟が既に係属中であることから別件審決が確定していなかったた めであるなどの前記1(5)の事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁 を主張するために現にこれらの請求をしている必要はないというべきであるから, これをもって,上告人が原審において本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張 することができなかったとはいえず,その他上告人において訂正の再抗弁を主張し なかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれない。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成25(ワ)32665

◆2審はこちら。平成26(ネ)10124

◆無効審判の取消訴訟はこちら。平成26(行ケ)10198

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平成28(ワ)35838  特許法違反請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年3月23日  東京地方裁判所

 事件の表示が、「特許法違反請求事件」となっているので、どんな事件かと思ったら、出願人の指示の通りしなかったので、応答ないし補正義務違反,詐欺\,ねつ造及だという事件でした。被告は弁理士です。判決文を読む限り、特に変な対応をしたところはないようです。出願人は何をしたかったんでしょうか?
 上記アの事実関係によれば,1)本件特許出願に係る書類及び本件拒絶 理由通知に対する手続補正書ないし意見書の作成に当たり,原告が表明し\nた意向を受けて被告が書面の案を作成して説明を行い,これを受けて原告 が意向を改めるなどした結果,本件特許出願に係る書類につき平成28年 2月13日頃に,上記手続補正書及び意見書の内容につき同年9月11日 にそれぞれ原告と被告との間で合意した内容を原告が本件委任契約に基づ き被告に対して記載を求める内容として確定させたこと,2)被告が上記各 合意内容どおりの内容を記載した上記各文書を特許庁に対して提出したこ とが明らかであるから,被告が特許庁に対して提出した上記各文書に記載 のないものは,原告が被告に対して記載を求めた内容に含まれないとみる べきである。そうすると,アイデア書(甲5)の内容,モータ駆動部に関 する文章及び原告の主張する前記補正内容につき上記各文書に記載されて いない部分があるとしても,被告がこれを記載しなかったことが応答ない し補正義務違反等に当たるとは解されない。

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平成28(行コ)10002  手続却下処分取消請求控訴事件  特許権  行政訴訟 平成29年3月7日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 国際出願に関して国内移行期間経過後に提出した翻訳文の却下処分について、国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったことについて特段の事情があった、とは認められませんでした。
 ア 国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出しなければ,外国語特許出願は 国際出願日にされた特許出願とはみなされないのであるから,国際特許出願の対象 となる国及び広域の移行期限を確認することは,当該国際特許出願を行う出願人に 当然に求められるというべきであるところ,控訴人は,現地事務所は,移行期限を 徒過しないよう十分な体制を構\築していたと主張する。
イ 前記認定のとおり(引用に係る原判決3の1(2)ウ) 本件出願の処理に当 たり,現地事務所では,補助者であるA氏が,依頼人が移行手続を指示した国及び 広域について,締切リスト(甲14)及びWIPOの期限表(甲13)を用いて,\n移行期限が30か月であるかあるいは31か月であるかを確認した上で,移行期限 が30か月である国について指示書を作成したものである。 しかし,前記認定のとおり(引用に係る原判決3の1(2)カ),締切リストには, 対象となる国又は広域の移行期限が30か月であるか31か月であるかについて区 別して記載されていない。また,前記認定のとおり(引用に係る カ),WIPOの期限表は,アルファベット順に行ごとに国名ないし広域名が記載\nされ,その国名等の右側の離れた位置に移行期限が「30」あるいは「31」など の数字で記載されているものであるから,同期限表を目視するときは「30」ない\nし「31」という移行期限の表記が縦方向に混在して記載されているように見える\nものである。 そうすると,本件出願の処理に当たり,補助者であるA氏が,締切リスト及びW IPOの期限表を用いて移行期限を確認するだけでは,同人が特許管理業務に豊富\nな経験を有していたことを考慮しても,移行期限を看過するという人的ミスが生じ 得ることは当然に想定されるものであったというべきである。
ウ そして,前記認定(引用に係る3の1(2)キ)によれば、現地事務所 において,管理者は,補助者が起案した指示書が適切に作成されているか否かにつ いて,本件システム上のリストを用いてチェックしたことは認められるものの,そ れがどのような内容のリストであるか,また,いかなる事項についてチェックした ものかについては明らかではない。これを,管理者が,締切リストを用いて移行期 限をチェックしたものと解したとしても,前記のとおり,締切リストには,対象と なる国又は広域の移行期限が30か月であるか31か月であるかについて区別して 記載されておらず,C氏作成に係る陳述書(甲50)によっても,本件において, 管理者が移行期限について,締切リストのほかに,どのような資料を用いて確認し たかについては明らかではないから,管理者が,移行指示を受けた国及び広域の移 行期限を確認したものということはできない。なお,同陳述書において,管理者は 「専門的データベース」を用いて指示書等を確認した旨記載があるものの,「専門 的データベース」の具体的内容は明らかではなく,これが移行期限を確認するに当 たり,有用なものであると認めるに足りる証拠はない。 また,平成25年3月12日付けメール(甲34)によれば,B氏が,イスラエ ル,米国,カナダについて指示書の書状及び付属書類の確認をしたことは認められ るものの,その際,B氏が,各国の移行期限の確認作業を行ったとまでは認められ ない。C氏作成に係る宣誓書(甲9の1)及び陳述書(甲12)によっても,管理 者による確認作業が,いかなる事項を対象に,どのような資料をもとに行われたか については明らかではない。その他,本件において,管理者が移行期限の確認作業 を行ったとの事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件出願の処理に当たり,現地事務所が,管理者をして,移行指示 を受けた国及び広域の移行期限の再確認作業を行ったとの事実を認めることはでき ない。また,現地事務所において管理者が移行期限の確認作業を行う体制が構築さ\nれていたとの事実も認められない。
エ このように,本件出願の処理において,移行期限を看過するという補助者に よる人的ミスが生じ得ることは当然に想定されるところ,管理者などが,移行期限 の再確認作業を行ったとの事実も,現地事務所において移行期限の再確認作業を行 う体制が構築されていたとの事実も認められない。よって,現地事務所が,本件出\n願の処理に当たり,移行期限を徒過しないよう相当な注意を尽くしていたというこ とはできない。

◆判決本文

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