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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

特許庁手続

平成27(行ウ)627  手続却下処分取消等請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年7月19日  東京地方裁判所

 国内書面提出期限から3月以上経過してから提出した翻訳文を却下したことについて、国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出できなかったことについて「正当な理由」なしと判断されました。
 原告は,本件期間徒過の直接の原因につき,本件特許事務所において受 信班の受信第1担当者が,本件メールを,日付フォルダ直下の「新件午後」 フォルダへ移動すべきところ,誤って日付フォルダ直下の「印刷済み」フォ ルダに移動したためであるとしつつ,同ミスを回避することはできなかった 旨主張し,本件特許事務所の従業員が作成した陳述書にも同様の記載がある。 そこで検討するに,上記1(2)で認定した受信処理の手順の定めによれば, ALPの共有端末から本件特許事務所内のネットワーク上への受信メールの 移動は,受信班のスタッフが手作業で行うのであるから,移動先のフォルダ を誤るミスが生じ得ることは容易に予想される。それにもかかわらず,本件\n特許事務所においては,受信第1担当者が,ALPの共有端末から本件特許 事務所内のネットワーク上の日付フォルダ直下の「新件午後」フォルダ直下 に全ての受信メールを移動したことについて,何らこれを確認する態勢を採 っていなかったのであって(上記1(2)イ),その結果,本件期間徒過に至っ たものである。 また,上記1(2)の手順の定めによれば,まず,受信第1担当者が受信メー ルの件数をカウントし,受信第2担当者においてそれが正しいことを確認し た上で(上記1(2)ア),その後,印刷担当者が「新件午後」フォルダ直下に ある受信メールを印刷し,これを「新件午後」フォルダ直下の「印刷済み」 フォルダに移動した後,受信第1担当者が受信メールの印刷物の件数及び内 容と受信メールの件数及び内容とを確認する作業を行うのであるから(上記 1(2)ウ,エ),受信第1担当者が定められた手順どおりに受信メールの印刷 物の件数と受信メールの件数とを対照していれば,本件メールが印刷されて おらず,その受信処理においてミスがあったことは容易に判明したはずであ る。このように,本件期間徒過の原因についての原告の主張を前提とすると, 本件特許事務所は,受信第1担当者による受信メールの移動ミスに気付くこ とができたはずの機会があったにもかかわらず,これを看過したこととなる のであって,本件特許事務所において上記1(2)の手順の定めが遵守されてい たのかについても疑問がある。 以上によれば,本件期間徒過について「正当な理由」があったとはいえな い。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10186  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成28年7月13日  知的財産高等裁判所

 取り消し理由の一つが「審判時に提出されていなかった証拠の提出が許されるか」です。知財高裁は、許容されると判断しました。また、周知技術の根拠を審判で初めて示した点についても違法性はないと判断しました。
 原告は,乙第9及び10号証は,いずれも審判時に提出されていなかったもので あり,本件審決の違法性を争う本件訴訟において,このような証拠は許容すべきで はない旨主張する。 審決取消訴訟においては,審判手続において審理判断されていなかった資料に基 づく発明と対比して無効理由の存否を認定し,審決の適法,違法を判断することは 許されないが(最高裁昭和42年(行ツ)第28号同51年3月10日大法廷判決・ 民集30巻2号79頁参照),審判手続において審理判断されていた資料に基づく発 明と対比して無効理由の存否を認定し,審決の適法,違法を判断するに当たり,審 判手続には現れていなかった資料に基づいて上記発明が属する技術分野の当業者の 出願当時における技術常識を認定し,これによって上記発明の有する意義を明らか にした上で無効理由の存否を認定したとしても,審判手続において審理判断されて いなかった資料に基づく発明と対比して無効理由の存否を認定し,審決の適法,違 法を判断したものということはできない(最高裁昭和54年(行ツ)第2号同55 年1月24日第一小法廷判決・民集34巻1号80頁参照)。 本件審決は,審判手続において審理判断されていた引用発明1と対比して,「挿入 部(13)」の成形に関する相違点2の容易想到性の判断をするに当たり,審判手続 には現れていなかった周知例1及び2に基づいて,当業者の技術常識を認定し,こ れによって,引用発明1において,上記周知技術を採用して相違点2に係る本願発 明の構成とすることは,当業者にとって容易であった旨の判断をした。\nそして,乙第9及び10号証は,本件審決による上記判断の誤りの有無を判断す るに当たり,本願出願日当時の上記周知技術に関する技術常識としてテーパ形状の 拡底部を有するアンカーボルトにおける一体成形に関する技術を立証するものであ るから,本件訴訟の判断資料とすることは,許容されるものということができる。
・・・・
3 取消事由2(手続違背)について
(1)原告は,平成27年2月23日付け拒絶理由通知において,アンカーピン自 体を一体成形することは周知技術であることが示されたのに対し,同年4月27日 付けの意見書において,上記周知技術の根拠の明示を求めたが,これに対する回答 はなく,本件審決において,初めて周知例1及び2が示され,これらを根拠とした 周知技術が認定されて請求不成立の判断が出されたとして,このような手続は,原 告に対して周知例1及び2に関する反論の機会を与えることなく,不意打ちをする ものということができ,違法である旨主張する。
(2) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,本願に係る出願の経緯につき,以下の とおり認められる。
・・・
エ 原告は,平成27年2月23日付けで拒絶理由通知(甲9)を受けた。同拒 絶理由通知には,「アンカーピン自体を一体成形とすることは,本願の出願日前に周 知の技術である。」と記載され,また,前記アの特許請求の範囲請求項1の補正につ き,「本願の出願当初の明細書等には,中間部と係止部とが一体成形されるという記 載はないが,アンカーピン自体を一体成形とすることは,本願の出願日前に周知の 技術であるので,中間部と係止部を一体成形とすることは,出願当初の明細書等か ら自明な事項であると判断した。」と記載されている。 オ 原告は,平成27年4月27日付け手続補正書(甲10)により本件補正を 行い,同日付け意見書(甲11)において,前記エの拒絶理由通知記載の周知技術 につき,その根拠が示されていないことを指摘するとともに,「本願の手続補正は, 図4及び図5(判決注:別紙1の【図4】及び【図5】と同じ。)に記載のアンカー ピンは接続部分がなく,当業者が見れば中間部14と係止部16とが一体成形され ていることが自明であるのであって,これをもって出願前にアンカーピンが一体成 形されることが周知の技術であるわけではないことは明らかである。」と主張した。
(3) 前記(1)のとおり,平成27年2月23日付け拒絶理由通知において,アンカ ーピン自体を一体成形とすることは,本願の出願日前において既に周知の技術であ った旨が明記されている。 そして,原告は,同年4月27日付け意見書において,上記拒絶理由通知記載の 周知の技術に関し,平成25年11月25日付け手続補正書による補正事項につい て,当業者が別紙1の【図4】及び【図5】を見れば中間部14と係止部16とが 一体成形されていることが自明であり,これをもって,アンカーピン自体を一体成 形とすることが周知の技術であるわけではない旨主張しているが,同主張のとおり, 当業者が上記図面を見て上記一体成形を自明のこととして理解するのは,まさに, アンカーピン自体を一体成形することが,当業者に周知の技術であったからにほか ならない。 以上によれば,本件審決が周知技術として認定した「テーパ形状の拡底部を有す る杭において,テーパ形状の拡底部と拡底部以外の部分とを滑らかに連接し,一体 の外周面を形成するように一体成形すること」の主要な内容である一体成形の技術 については,周知技術であることが平成27年2月23日付けの拒絶理由通知に示 されており,しかも,これに関する原告の意見書の内容自体から,一体成形の技術 が当業者に周知されていたということができる。このような経過に鑑みると,本件 審決が,それまで審判手続において示されていなかった周知例1及び2を根拠とす る周知技術を認定したことは,原告に対する不意打ちということはできず,手続違 背には当たらないというべきである。

◆判決本文

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平成27(行コ)10004  異議申立却下決定取消請求控訴事件  特許権  行政訴訟 平成28年6月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 国内移行の翻訳文を期限経過後に提出し、必要な代表者資格証明を提出しなかったために補正命令に応ぜず却下処分となりました。この異議申\し立ての行政訴訟です。知財高裁は却下処分妥当と判断しました。
 控訴人らが本件異議申立てに際して代表\者の資格証明に関する書面及び代理人であることを証明する書面(以下,両者を併せて,「資格証明所等」という。)を添付しなかったことから,特許庁長官は,補正期間を30日と定める本件補正命令を発したが,控訴人らが上記期間内に資格証明書等を提出しなかったため,本件決定をした。本件補正命令の内容は,資格証明書等の提出を求めるという明確なものであり,また,控訴人らのような種類の法人についても,補正を命じられた不備を補正することは困難なことではないから(現に,控訴人らは,本訴提起に当たっては,控訴人らの資格証明書等を提出している。),控訴人らは,相当の期間を定めて命じた補正に従って資格証明書等を提出することをしなかったのであって,本件異議申立ては,行政不服審査法13条1項に違反し,不適法である。したがって,これらをいずれも却下した本件決定に違法は認められない。\n

◆判決本文

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平成27(行ウ)348  異議申立却下裁決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年1月29日  東京地方裁判所

 翻訳文提出期間経過後に提出した翻訳文の却下が争われました。特許庁は、代表資格証明書が補正指令をしても提出されなかったので、行審法における異議申\し立てを却下しました。裁判所もこれを認めました。
 しかしながら,本件代表資格証明書1)及び同2)は,いずれも,「WATER IP LLC」又は「Water IP, L.L.C.」(名称LLC)に係る書面であるところ,一般に,米国 におけるLLC(limited liability company)とINC(Incorporated)とは,法人の形態として異なり,コーポレートガバナンスや課税等においても異なる規整を受け得るものであるから(弁論の全趣旨),名称LLCが示す法的主体の代表者の資格について言及されるにとどまる本件代表\資格証明書1)及び同2)をもって,本件出願人の名称たる「WATER INTELLECTUAL PROPERTIES, INC.」(名称INC)が示す法的主体の代表者の資格を証明することにはならないことは明らかである。\nこの点について,原告は,1)名称LLCと名称INCとが,会社形態の部分を除いて同一の名称といえ,住所も共通すること,2)米国において,一事業体が事業ごとに名称を使い分けることは一般的であり,商号(Doing Business As)を用いることも一般的であることから,名称LLCが示す法的主体と名称INCが示す法的主体が同一であることは明らかである旨主張するが,上記1)及び2)の事情及びA弁理士が提出した上申書(乙14)の記載のみをもって,直ちに両法的主体が同一のものであると認めることは,困難というほかない。\nしたがって,本件異議申立ては,異議申\立人の代表者の資格を証明する書面が提出されなかったという点において,行審法13条1項の規定に違反する不適法なものであったというべきである。\n

◆判決本文

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